(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自車両の進行方向前方に存在する物標を検出する物標検出部(12)を備える車両に適用され、前記物標検出部により検出された前記物標のうち、前記自車両が走行する走行車線としての自車線内を先行して走行する前記物標を追従対象物標として認識し、前記追従対象物標を対象として追従走行制御を実施する追従走行制御部(10)を備える走行制御装置(10)であって、
前記追従対象物標が前記自車線内に存在する確率を算出する確率算出部と、
前記追従走行制御部により認識された前記追従対象物標に対する前記物標検出部の認識度合いが所定度合いよりも弱い弱認識状態であるか否かを判定する判定部と、
前記確率算出部により算出される前記確率と、前記判定部による判定結果と、に基づいて、前記追従走行制御部により認識された前記追従対象物標の信頼度を設定する信頼度設定部と、
前記追従走行制御部による前記追従走行制御を実施期間中に、前記信頼度設定部により設定された前記追従対象物標の前記信頼度が低いほど、加速度の微分値である加加速度が小さくなるように前記自車両の前記加速度を制御する加速度制御部と、を備える走行制御装置。
前記加速度制御部は、前記自車両と前記追従対象物標との距離が所定距離よりも離れていることを条件として、前記信頼度設定部により設定された前記追従対象物標の前記信頼度が低いほど、前記加加速度が小さくなるように前記加速度を制御する請求項1に記載の走行制御装置。
前記判定部は、前記追従走行制御部により認識された前記追従対象物標が前記物標検出部により検出されなくなってから所定時間が経過するまでの期間中、前記追従走行制御部により認識された前記追従対象物標に対する前記物標検出部の認識度合いが前記弱認識状態であると判定する請求項1又は2に記載の走行制御装置。
前記信頼度設定部は、前記確率算出部により算出された前記確率が第一閾値よりも大きい場合に前記信頼度を第一信頼度に設定し、前記確率算出部により算出された前記確率が前記第一閾値よりも小さく設定された第二閾値よりも大きく、且つ、第一閾値よりも小さい状態であり、加えて、前記判定部により前記追従対象物標に対する前記物標検出部の認識度合いが前記弱認識状態ではないと判定された場合に前記信頼度を前記第一信頼度よりも低い第二信頼度に設定し、前記確率算出部により算出された前記確率が前記第二閾値よりも大きく、且つ、第一閾値よりも小さい状態であり、加えて、前記判定部により前記追従対象物標に対する前記物標検出部の認識度合いが前記弱認識状態であると判定された場合に前記信頼度を前記第二信頼度よりも低い第三信頼度に設定し、前記確率算出部により算出された前記確率が前記第二閾値よりも小さい状態であり、加えて、前記判定部により前記追従対象物標に対する前記物標検出部の認識度合いが前記弱認識状態ではないと判定された場合に前記信頼度を前記第三信頼度よりも低い第四信頼度に設定し、前記確率算出部により算出された前記確率が前記第二閾値よりも小さい状態であり、加えて、前記判定部により前記追従対象物標に対する前記物標検出部の認識度合いが前記弱認識状態であると判定された場合に前記信頼度を前記第四信頼度よりも低い第五信頼度に設定される請求項1乃至4のいずれか1項に記載の走行制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、駆動輪20が回転駆動することで走行する車両に適用される走行制御システム100を説明する。走行制御システム100は、検出ECU10とレーダ装置12と電動式パワーステアリング13とを備えている。
【0013】
レーダ装置12は、例えば、ミリ波帯の高周波信号を送信波とする公知のミリ波レーダであり、自車両の前端部に設けられ、所定の検知角に入る領域を物標を検知可能な検知範囲とし、検知範囲内の物標の位置を検出する。具体的には、所定周期で探査波を送信し、複数のアンテナにより反射波を受信し、受信した反射波の強度(物標を検出するためのパラメータに該当)が第一所定強度(第一所定値に該当)よりも高い場合に自車両の進行方向前方に物標が存在すると判定し、探査波の送信時刻と反射波の受信時刻とにより、物標との距離を算出する。また、物標に反射された反射波の、ドップラー効果により変化した周波数により、相対速度(詳しくは車両の進行方向における相対速度)を算出する。加えて、複数のアンテナが受信した反射波の位相差により、物標の方位を算出する。なお、物標の位置及び方位が算出できれば、その物標の、自車両の進行方向に直交する横方向における自車両に対する位置を表す横位置を特定することができる。よって、レーダ装置12は、物標検出部に該当する。レーダ装置12は、所定周期毎に、探査波の送信、反射波の受信、反射位置及び相対速度の算出を行い、算出した反射位置と相対速度とを検出ECU10に送信する。
【0014】
検出ECU10には、レーダ装置12が接続されている。検出ECU10は、CPU、RAM、ROM、I/O等を備えたコンピュータであり、CPUが、ROMにインストールされているプログラムを実施することで、様々な機能を実現する。したがって、検出ECUは、確率算出部、判定部、信頼度設定部、加速度制御部、及び追従走行制御部に該当する。
【0015】
本実施形態において、ROMにインストールされているプログラムは、レーダ装置12が検出した物標の情報(算出した位置と相対速度など)に基づいて、自車両が走行する走行車線としての自車線内を先行して走行する先行車両を捕捉し、先行車を捕捉している間は規定の追従走行制御を実施させるための制御プログラムである。なお、先行車両を捕捉していない場合は、設定された所定の車速で走行する走行制御を実施する。
【0016】
本制御プログラムでは、レーダ装置12により検出された自車両前方に存在する物標の自車両に対する横位置に基づいて、該物標が自車線内に存在する確率としての自車線存在確率を算出する。自車線存在確率は、物標の横位置が小さいほど大きく算出される。算出した自車線存在確率が所定確率(例えば50%に設定される)よりも高い物標を自車線内を先行して走行する先行車両であると判定して、該先行車両を追従対象物標として認識する。そして、自車両と追従対象物標との車間距離が目標車間距離に維持されるように、目標加速度を設定する。なお、目標車間距離は自車両の車速に応じて変化する。また、車両と追従対象物標との車間距離はレーダ装置12から取得する。
【0017】
設定した目標加速度に基づいて図示しないエンジン及びブレーキ装置へ制御指令を送信することで自車両を加減速させながら、追従対象物標に追従して自車両を走行させるべく、自車両の進行方向を制御する操舵処理を実施する。したがって、自車両には、検出ECU10からの操舵指令により駆動する装置として、電動式パワーステアリング13が備えられている。
【0018】
電動式パワーステアリング13は、車両が有する駆動輪20の操舵角を操作するステアリング13bと、操舵用電動機13aとを備えている。操舵用電動機13aは、ステアリング13bの操作力を補助する操舵力(トルク)を発生する。このトルクが大きいほど、駆動輪20の操舵角は大きくなる。また、操舵用電動機13aは、追従走行制御時にステアリング13bを操作する操舵力(トルク)を発生する。
【0019】
例えば、
図2に記載されるように、二車線のうち内側の車線を自車両が走行しており、他車両が外側の車線を走行している状況で、追従走行制御を実施する場合を想定する。この場合、他車両が自車両に対して先行して走行している状況で左に曲がることで、自車両の進行方向前方に左に曲がる他車両が捕捉される可能性がある。この際、
図4(a)に記載されるように、他車両の横位置が小さくなるに伴い他車両の自車線存在確率が所定確率よりも高くなることで、自車両は他車両を追従対象物標と誤認識することがある。このとき、自車両の進行方向における他車両に対する自車両の相対速度は大きくなる傾向にある。それに加え、自車両と追従対象車両との車間距離が目標車間距離よりも短くなった場合、
図4(a)下図の点線に示されるように、目標加速度が負の値に設定されることで不要に減速されるおそれがある。
【0020】
この対策として、追従対象物標が自車線内に真に存在するか否かを判定するために、所定確率とは別に、第一閾値と、第一閾値よりも小さく、且つ、所定確率よりも大きく設定された第二閾値と、を設けている。これにより、物標の自車線存在確率が第一閾値よりも大きい場合には、追従対象物標が自車線内に存在する可能性が最も高いと判定することができる。また、追従対象物標の自車線存在確率が第二閾値よりも大きく、第一閾値よりも小さい場合には、追従対象物標の自車線存在確率が第一閾値よりも大きい場合と比較して、追従対象物標が自車線内に存在する可能性は低くなるが、概ね自車線内に追従対象物標が存在していると判定することができる。追従対象物標の自車線存在確率が第二閾値よりも小さく、所定確率よりも大きい場合には、追従対象物標は自車線内に存在していると思われるが、その一方で追従対象物標が自車線内に存在していない可能性もありえる曖昧な状態であると判定することができる。
【0021】
ところで、本実施形態ではレーダ装置12を用いて物標を検出しているが、物標が継続して存在する場合でも、レーダ装置12により継続して物標が検出され続けるとは限らず、ある検出サイクル時に該物標を検出できなかったりすることがある。この場合、物標が本当にいなくなったのか、物標の検出に失敗したのかを判別することは困難である。このため、ある検出サイクル時に物標を検出できなくなった場合には、それから所定時間が経過するまでの間、物標は存在するものと仮定して物標を継続して検出する処理を従来より実施している。そして、所定時間の経過後も物標を検出できなかった場合に、物標は消失したものとして物標の検出を終了する。このような処理を実施することを考慮し、追従対象物標と認識された物標がレーダ装置12により検出されなくなってから所定時間が経過するまでの期間中、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが所定度合いよりも弱い弱認識状態であると判定する。
【0022】
検出ECU10は、算出した自車線存在確率と、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であるか否かの判定結果と、に基づいて追従対象物標の信頼度を設定する。換言すれば、認識された追従対象物標が、真に追従走行制御の対象として適しているか否かを、算出した自車線存在確率と追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であるか否かの判定結果とに基づいて信頼度として数値化している。
【0023】
追従対象物標の自車線存在確率が小さいほど、追従対象物標が自車線内に存在していない可能性は高い。仮に追従対象物標が自車線内を走行していない場合、追従対象物標として認識した物標は追従走行制御の対象として不適であると考えられることから、追従対象物標の自車線存在確率が小さいほど追従対象物標の信頼度を低く設定する。
【0024】
また、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態である場合、追従対象物標として認識した物標がそもそも存在していない可能性がある。この場合も、追従対象物標として認識した物標は追従走行制御の対象として不適である可能性があるため、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であると判定した場合には、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であると判定されなかった場合と比較して追従対象物標の信頼度を低く設定する。より詳細な追従対象物標の信頼度の設定方法は後述する。
【0025】
検出ECU10は、追従対象物標として認識した物標に対して設定した信頼度が低いほど、加速度の時間変化量が小さくなるように自車両の加速度を制御する。より詳細には、追従対象物標として認識した物標に対して設定した信頼度が低いほど、加速度を時間微分した値(加速度の微分値)である加加速度(ジャーク)が小さくなるように目標加速度を設定する。
【0026】
追従対象物標の信頼度の設定方法をより詳細に説明する。追従対象物標の自車線存在確率が上記所定確率よりも小さい場合は、自車線内を先行して走行する先行車両が存在しないとして、そもそも信頼度を設定しない。追従対象物標の自車線存在確率が所定確率よりも大きく、且つ、第二閾値よりも小さい状態であり、加えて、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であると判定した場合には、追従対象物標の信頼度を最も低い第五信頼度に設定する。追従対象物標の自車線存在確率が所定確率よりも大きく、且つ、第二閾値よりも小さい状態であり、加えて、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態ではないと判定した場合には、追従対象物標の信頼度を第五信頼度よりも高い第第四信頼度に設定する。
【0027】
追従対象物標の自車線存在確率が第二閾値よりも大きく、且つ、第一閾値よりも小さい状態であり、加えて、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であると判定した場合には、追従対象物標の信頼度を第四信頼度よりも高い第三信頼度に設定する。追従対象物標の自車線存在確率が第二閾値よりも大きく、且つ、第一閾値よりも小さい状態であり、加えて、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態ではないと判定した場合には、追従対象物標の信頼度を第三信頼度よりも高い第二信頼度に設定する。
【0028】
追従対象物標の自車線存在確率が第一閾値よりも高い場合には、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であるか否かの判定結果に関わらず信頼度を第二信頼度よりも高い(最も高い)第一信頼度に設定する。追従対象物標の自車線存在確率が第一閾値よりも高い場合には、追従対象物標が自車線内に存在する可能性が最も高い。この状況において、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であると判定されたからと、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であると判定されなかった場合と比較して追従対象物標の信頼度を低く設定した場合を想定する。この場合、設定した信頼度に応じて後述の目標加速度制御を実施すると、信頼度がより高い場合と比較して加加速度が小さくなるように自車両の目標加速度を制御するため、追従対象物標が存在した場合に追従対象物標と衝突する可能性が高まる。したがって、追従対象物標の自車線存在確率が第一閾値よりも高い場合には、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いの判定結果に関わらず信頼度を最も高い第一信頼度に設定する。これにより、追従対象物標が自車線内に存在する場合には、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であったとしても、追従対象物標が存在することを前提とした追従走行制御を実施でき、追従走行の安全性を高めることができる。
【0029】
上記の方法により設定された追従対象物標の信頼度に応じて、具体的に以下のように目標加速度を設定する。例えば、第一信頼度と設定した追従対象物標を対象として追従走行制御を実施する場合、目標加速度は従来同様に設定する。対して、第二信頼度と設定した追従対象物標を対象として追従走行制御を実施する場合、第一信頼度と設定した追従対象物標を対象として追従走行制御を実施する場合と比較して、加加速度が小さくなるように目標加速度を制御する。このように、追従対象物標の信頼度が低いほど、加加速度が小さくなるように目標加速度を制御するので、本実施形態では、信頼度の最も低い第五信頼度と設定した追従対象物標を対象として追従走行制御を実施する場合、加加速度が最も小さくなるように目標加速度を制御することになる。
【0030】
本実施形態では、検出ECU10により後述する
図3に記載の目標加速度制御を実施する。
図3に示す目標加速度制御は、検出ECU10が電源オンしている期間中に検出ECU10によって所定周期で繰り返し実施される。
【0031】
まず、ステップS100にて、レーダ装置12により物標が検出されたか否かを判定する。ステップS100による判定処理にてYES判定だった場合には、ステップS110に進み、レーダ装置12により検出された物標の自車線存在確率を算出する。
【0032】
ステップS120では、ステップS110で算出した物標の自車線存在確率が上記所定確率よりも小さいか否かを判定する。ステップS120による判定処理にてNO判定だった場合には、ステップS130に進み、検出された物標を追従対象物標として認識する。
【0033】
ステップS140では、追従対象物標の自車線存在確率が第二閾値よりも小さいか否かを判定する。ステップS140による判定処理にてYES判定だった場合には(S140:YES)、ステップS150に進む。
【0034】
ステップS150では、追従対象物標と認識された物標がレーダ装置12により検出されなくなってから所定時間が経過するまでの期間中であるか否かを判定することで、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であるか否かを判定する。ステップS150による判定処理にてNO判定だった場合には、ステップS160に進み、追従対象物標の信頼度を第四信頼度に設定する。そして、ステップS170に進む。ステップS150による判定処理にてYES判定だった場合には、ステップS190に進み、追従対象物標の信頼度を第五信頼度に設定する。そして、ステップS170に進む。
【0035】
ステップS140による判定処理にてNO判定だった場合には、ステップS200に進む。ステップS200では、追従対象物標の自車線存在確率が第一閾値(>第二閾値>所定確率)よりも小さいか否かを判定する。ステップS200による判定処理にてYES判定だった場合には、ステップS210に進む。
【0036】
ステップS210では、追従対象物標と認識された物標がレーダ装置12により検出されなくなってから所定時間が経過するまでの期間中であるか否かを判定することで、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であるか否かを判定する。ステップS210による判定処理にてYES判定だった場合には、ステップS220に進み、追従対象物標の信頼度を第三信頼度に設定する。そして、ステップS170に進む。ステップS210による判定処理にてNO判定だった場合には、ステップS230に進み、追従対象物標の信頼度を第二信頼度に設定する。そして、ステップS170に進む。
【0037】
ステップS200による判定処理にてNO判定だった場合には、ステップS240に進み、追従対象物標の信頼度を第一信頼度に設定する。そして、ステップS170に進む。
【0038】
ステップS170では、ステップS160、ステップS190、ステップS220、ステップS230、ステップS240のいずれかで設定した追従対象物標の信頼度に応じて加加速度を制限しつつ、目標加速度を設定する。そして、ステップS180にて、ステップS170で設定した目標加速度に基づいてエンジン及びブレーキ装置へ制御指令を送信することで自車両を加減速させつつ、追従対象物標に追従して走行するよう追従走行制御を実施する。そして、本制御を終了する。
【0039】
ステップS100による判定処理がNO判定だった場合、ステップS120による判定処理がYES判定だった場合には、本制御を終了する。
【0040】
次に、
図4(a)及び
図4(b)を参照して、本実施形態にかかる目標加速度制御の態様を説明する。なお、
図4(a)及び
図4(b)はともに、本制御を実線で、従来制御を点線で記載している。また、説明の便宜上、追従対象物標を対象として追従走行制御を実施している期間中、追従対象物標として認識された物標に対するレーダ装置12の認識度合いは弱認識状態であると判定されたことを前提とする。
【0041】
図4(a)及び
図4(b)において、自車線存在確率が所定確率よりも大きくなった物標が存在しないために、追従対象物標が補足されていない状況では、自車両が所定の車速で走行するよう目標加速度が設定される(時間t0−t1参照)。そして、自車線存在確率が所定確率(50%)を越えて大きくなった物標が検出された場合に、その物標が追従対象物標として認識される(時間t1参照)。
図4(a)及び
図4(b)では、追従対象物標として認識された物標と自車両との車間距離が目標車間距離よりも短い状況を想定している。このため、目標加速度が負の方向に大きくなるように制御される。
【0042】
図4(a)では、追従対象物標の自車線存在確率は、所定確率よりも大きく、且つ、第二閾値よりも小さく算出されている。また、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いは弱認識状態であると判定されたことが前提であるため、追従対象物標の信頼度は第五信頼度に設定されることになる。この場合、従来制御と比較して、加加速度が小さくなるように目標加速度が制御される。そして、追従対象物標の自車線存在確率が所定確率よりも小さくなったと判定された場合に、追従対象物標として認識された物標を対象にした追従走行制御が解除され、それに伴って目標加速度制御も解除される(時間t2参照)。そして、追従対象物標が補足されていない状況であるとして、自車両が所定の車速で走行するよう目標加速度が設定される。
【0043】
図4(b)では、追従対象物標の自車線存在確率が、所定確率よりも大きく、且つ、第二閾値よりも小さい期間(時間t1−t12参照)、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いは弱認識状態であると判定されたことも考慮して、追従対象物標の信頼度は第五信頼度に設定される。このため、目標加速度は、
図4(a)における時間t1−t2期間中に実施される目標加速度制御と同様、従来制御と比較して、加加速度が小さくなるように目標加速度が制御される。そして、追従対象物標の自車線存在確率が増加し、追従対象物標の自車線存在確率が第二閾値よりも大きく、且つ、第一閾値よりも小さくなったと判定された場合(時間t12参照)、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いは弱認識状態であると判定されたことも考慮して、追従対象物標の信頼度は第三信頼度に設定される。このため、追従対象物標の信頼度が第五信頼度に設定された場合と比較して加加速度がより大きくなるように目標加速度が設定される。
【0044】
追従対象物標の自車線存在確率が減少し、追従対象物標の自車線存在確率が、所定確率よりも大きく、且つ、第二閾値よりも小さくなった場合には、追従対象物標の信頼度は第五信頼度に設定される。それに伴って、追従対象物標の信頼度が第三信頼度に設定された場合と比較して加加速度がより小さくなるように目標加速度が設定される(時間t13参照)。そして、追従対象物標の自車線存在確率が所定確率よりも小さくなったと判定された場合には、追従対象物標として認識された物標を対象にした追従走行制御が解除され、それに伴って目標加速度制御も解除される(時間t14参照)。そして、追従対象物標が補足されていない状況であるとして、自車両が所定の車速で走行するよう目標加速度が設定される。
【0045】
上記構成により、本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0046】
・追従対象物標の自車線存在確率と、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であるか否かの判定結果に基づいて、追従対象物標の信頼度を適切に設定することができる。また、設定された追従対象物標の信頼度が低いほど、加加速度が小さくなるように自車両の加速度が制御される。これにより、追従走行制御の対象として適していない物標を誤って追従対象物標として認識した可能性が高いほど、自車両の加速度の変動を小さく抑えることができる。
【0047】
・追従対象物標がレーダ装置12により検出されなくなってから所定時間が経過するまでの期間中、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であると判定される。これにより、追従対象物標の検出に失敗したことにより物標が一時的に消失した状況を考慮した追従対象物標に対する信頼度の設定を実施することができる。
【0048】
上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。ちなみに、以下の別例の構成を、上記実施形態の構成に対して、個別に適用してもよく、また、任意に組み合わせて適用しても良い。
【0049】
・上記実施形態では、レーダ装置12が物標を検出していた。このことについて、レーダ装置12に限る必要はなく、例えば、撮像装置が物体を検出してもよい。撮像装置は、例えばCCDカメラ、CMOSイメージセンサ、近赤外線カメラ等を用いた単眼カメラやステレオカメラ等が含まれる。この場合、撮像装置により撮影された画像に基づいて自車線を区切る白線を検出することができれば、物標が自車線内に存在するか否かをより正確に判定することができる。ひいては、追従対象物標に対してより正確な信頼度を設定することができる。
【0050】
・上記実施形態では、自車両と追従対象物標との車間距離に関係なく、追従対象物標の信頼度に応じて、加加速度が小さくなるように目標加速度を制御していた。このことについて、自車両と追従対象物標との車間距離が所定距離よりも離れていることを条件として、追従対象物標の信頼度に応じて、加加速度が小さくなるように目標加速度を制御する処理を実施してもよい。なお、本別例において、所定距離は目標車間距離と同等の距離に設定されるが、所定距離を目標車間距離よりも長く設定しても短く設定してもよい。
【0051】
自車両と追従対象物標との車間距離が離れているほど、レーダ装置12による物標検出の精度が低下する。また、自車両と追従対象物標との車間距離が離れているほど、追従対象物標の横位置を正確に検出することが困難となり、ひいては追従対象物標の自車線存在確率に誤差が生じることになる。したがって、自車線を走行しない物標にも関わらず追従対象物標と誤認識する確率が高まる。つまり、自車両と追従対象物標との車間距離が離れているほど、追従対象物標の信頼度は低下することが想定される。よって、自車両と追従対象物標との距離が所定距離よりも離れている場合に、本制御を実施することが好適である。
【0052】
一方で、自車両と追従対象物標との車間距離が所定距離よりも近い場合において、追従対象物標の信頼度が低いからと、加加速度が小さくなるように目標加速度が制御されると、追従対象物標が存在したとしても自車両を十分に減速させることができず、追従対象物標と衝突する可能性がある。したがって、自車両と追従対象物標との距離が所定距離よりも近い場合には、本制御を実施せず、従来の追従走行制御を実施することで、自車両と追従対象物標との距離に応じて、適宜加加速度が大きくなるよう加速度を制御することができるので、追従走行の安全性を高めることができる。
【0053】
・上記実施形態では、レーダ装置12を用いて物標を検出しているが、レーダ装置12により検出された物体が現実に必ず存在しているとは限らない。つまり、レーダ装置12は、物標が存在していなくても何らかの要因で物体が存在すると誤検出する場合もある。したがって、レーダ装置12により物体が検出されたとしても、レーダ装置12により検出された物標を対象として追従走行制御を実施することが不適当な状況が存在する。
【0054】
物標を誤検出した場合のアンテナにより受信された反射波の強度は、物標を検出するために設けられた第一所定強度よりも大きかったとしても、物標を正常に検出した場合におけるアンテナにより受信された反射波の強度と比較して小さいものとなることが想定される。したがって、第一所定強度に加えて、第一所定強度よりも大きな第二所定強度(第二所定値)を設け、反射波の強度が第一所定強度よりも大きく、且つ、第二所定強度よりも小さいと判定した場合に、物標を誤検出した可能性があるとして、追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であると判定してもよい。これにより、物標の誤検出の可能性を考慮した追従対象物標の信頼度を設定することができる。
【0055】
本別例に係る、反射波の強度が第一所定強度よりも大きく、且つ、第二所定強度よりも小さいか否かの判定(以下、仮フラグ判定と呼称)は、上記実施形態に記載の追従対象物標と認識された物標がレーダ装置12により検出されなくなってから所定時間が経過するまでの期間中であるか否かの判定(以下、外挿状態判定と呼称)に代えて実施してもよい。
【0056】
あるいは、仮フラグ判定及び外挿状態判定の両方を行い、少なくとも一方の判定が肯定判定だった場合に追従対象物標に対するレーダ装置12の認識度合いが弱認識状態であると判定してもよい。または、外挿状態判定及び仮フラグ判定のそれぞれに信頼度の高低を決めてもよい。例えば、外挿状態判定で肯定判定された場合の方が、仮フラグ判定で肯定判定された場合よりも追従対象物標の信頼度は高く設定されてもよい。