【実施例】
【0063】
以下の実施例は、本発明の種々の実施形態を説明する目的のみのために示されるものであり、いずれの意味においても本発明を限定するものでない。当業者は、添付のクレームによって規定される本発明が目的を達成し、上述の結果及び効果を得るよう十分に適応されることを容易に理解するであろう。
【0064】
MMP−8の免疫蛍光分析検査
MMP−8濃度は、時間分解免疫蛍光分析検定(IFMA)によって判定した。単クローン性MMP−8フラグメント特定抗体1491−E6−F7及び1492−B3−C11(Medix Biochemica、フィンランド、カウニアイネン)を各々、捕捉抗体及びトレーサー抗体として使用した。トレーサー抗体は、ユーロピウムキレートを使用してラベル付けした(Hemmilaら、1984年)。検定緩衝剤は、20mMのtris−HCl(pH7.5)と、0.5MのNaClと、5mMのCaCl2と、50μMのZnCl2と、0.5%BSAと、0.05%アジ化ナトリウムと、20mg/lのジエチレントリアミンペンタアセテート酸(DTPA)とを含有した。試料を検定緩衝剤中で希釈し、1時間培養した後、トレーサ抗体とともに1時間培養した。増進剤を添加し、5分後、1234Delfia Research Fluorometer(Wallac、フィンランド、トゥルク)を使用して蛍光を測定した。MMP−8に対する単クローン性抗体の特異度は、多クローン性MMP−8に対する特異度に対応するものであった。
【0065】
ウェスタンイムノブロッティング
製造メーカー(GE Healthcare、英国、アマシャム)により推奨されたプロトコルに準じ、改定ECLウェスタンブロッティングキットでMMP−8の分子形態を検出した。指摘の組み換えヒトMMP−8と、指摘の体液/分泌液と、血清試料とを、還元剤を用いることなくLaemmliの緩衝剤と混合し、5分間加熱した後、11%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲルでタンパク質分離を行った。電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜(Protran、Whatman GmbH、ドイツ、ダッセル)上に電気泳動転写した。TBST緩衝剤(22mMのNaCl及び0.05%triton−Xを含有した10mMのtris−HCl(pH7.5))中、5%粉乳(Valio Ltd.、フィンランド、ヘルシンキ)で1時間、非特異結合を妨害した。その後、膜を一晩、1次抗体1491−E6−F7(Medix Biochemica、フィンランド、カウニアイネン)で培養した後、西洋わさびペルオキシダーゼ結合2次抗体(GE Healthcare、英国、バッキンガムシャー)で1時間、培養した。この膜は、各ステップの間にTBSTにおいて、15分間4回洗浄した。改良化学発光(ECL)システム(GE Healthcare)を使用してタンパク質を可視化した。
【0066】
密度計解析
異なる分子量形態のMMP−8の強度を走査し、GS−700Imaging Densitometer Scanner(Bio−Rad、米国、カリフォルニア州ハーキュリーズ)と、バックグランド値に合わせて補正したBio−Rad Quantity Oneプログラムを使用して解析した。
【0067】
シークエンシング
Turunenら(2012年)によって説明された方法に準じて、タンパク質特定及びプロテオームデータ解析を実施した。
【0068】
MDmAb免疫染色に匹敵する切除ゲルバンドを洗浄し、アセトニトリル(ACN)で脱水した。タンパク質を20mMのジチオトレイトールで還元し、室温の暗所にて15分間、55mMのイオドアセトアミド−0.1Mの炭化水素アンモニウム(NH
4HCO
3)でアルキル化を行うのに先立ち、56℃で30分間、培養した。0.1MのNH
4HCO
3で洗浄し、ACNで脱水した後、最終的なトリプシンの濃度が0.01μg/μlとなるまで、0.1MのNH
4HCO
3中において10〜15μlシークエンシンググレード修飾トリプシン(Promega、米国)中でゲル片を再水和し、消化のため、37℃で一晩培養を行った。各々室温で15分間、25mMのNH
4HCO
3中と5%ギ酸で2度、連続培養を行うことにより、ゲル片からトリプシンペプチドを溶出した。結果として得られたトリプシン消化ペプチドを、Zip TipのμC−18逆フェーズカラム(Millipore、米国)を使用して脱塩し、MALDI標的板上に50%ACN−0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)で直接溶出した。33%ACN−0.1%TFA中のα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)(Sigma、米国)の飽和マトリクス溶液を添加した。
【0069】
SmartBeam(登録商標)レーザー(355nm)を備え、ポジティブモード及びリフレクティブモードで作動するAutoflex III(Bruker Daltonics、ドイツ、ブレーメン)により、MALDI−TOF解析を実施した。通常、MS/MSスペクトルについては2000レーザーショットと10000までのスペクトルを積算することにより、マススペクトルを得た。ペプチドキャリブレーション標準(Bruker Daltonik GmbH、ドイツ、ライプツィヒ)を使用して、分子配置を行うために外部キャリブレーションを実施した。トリプシン自己分解ペプチドの質量を使用して、キャリブレーションのチェック又は補正を行った。これらの自己分解ペプチドと、存在する場合には派生したものであるがケラチンとを、検索に供する前に除去した。ファイル(同一箇所から得たPMF及び僅かなLiftスペクトル(MSMS))とSwissProtデータベースの検索とを組み合わせることにより、タンパク質の特定を実施した。Matrix ScienceのMascot(Matrix Science Ltd.、英国)を使用して、「その他の細菌」を分類法フィールド(42100を上回る配列)から選択した。FlexAnalysis(登録商標)v3.0及びBiotools(登録商標)v3.1ソフトウェア(Bruker Daltonics)を分子同位体質量のMSスペクトルのピークへの割り当てに使用し、各々、マスリストデータ転送とMascotサーバ内のデータベースとの間の検索エンジンインタフェースとして使用した。検索には、以下のパラメータを設定した。MS及びMS/MSの組み合わせ検索には、0.1Daの前駆体トレランスと0.5Da又は1DaのMS/MSフラグメントトレランスを設定し、固定及び可変の修飾を考慮し(各々、カルバミドメチル化システイン及び酸化メチオニン)、1つのトリプシン切断部位を許容した。算出分子質量及び観察分子質量と、MS/MS質量スペクトルと特定したペプチドに匹敵するアミノ酸配列の評価とを比較することにより、タンパク質特定をさらに評価した。
【0070】
実施例1
材料及び方法
ランダムに選択した一般の歯科診療所の192名の患者をこの横断的研究の対象とした。研究プロトコルは、Leppilahti JMら(2011年)により詳述されている。簡潔に述べると、口腔検査は、2名の適応一般歯科医師によるフロリダプローブによる歯周ポケット深さ(PPD)の測定とプロービング値の出血(BOP)の測定とからなる。背景特性を質問票で記録し、すべての患者から口濯ぎ液試料を回収した。すべての患者がインフォームドコンセントを与え、歯科医療研究所、ヘルシンキ大学、及びヘルシンキ大学中央病院の倫理委員会によって研究プロトコルを承認された。
研究対象患者は、歯周組織炎症負荷指標(Lindy Oら、2008年)とBOP%(Leppilahti JMら、2011年)の組み合わせによる歯周組織炎症負荷レベルに基づき、4つの群に分類した。形成された患者群は、1)深い(≧4mm)歯周ポケットが無く、且つ、BOP<10%である31名の健康な歯周の被験者(群1)と、2)BOP≧10%であるものの、軽度の歯周組織炎症負荷とみなされる深い歯周ポケットの無い17名の患者(群2)と、3)PIBI×BOP≦100の97名の患者(中程度歯周組織炎症負荷レベル:群3)と、4)PIBI×BOP>100の47名の患者(高度歯周炎症レベル:群4)とである。
【0071】
口濯ぎ液試料
使い捨てプラスチックピペットにより、1mlの水道水を患者の口に入れ、1分間濯いだ後、濯ぎ液をチューブ内に回収した。この試料は、さらなる解析のため直ちに冷凍した(Leppilahti JMら、2011年)。
【0072】
MMP−8解析
口濯ぎ液試料を解凍した後、Hanemaaijer Rら(1997年)らによって述べられるとおり、時間分解免疫蛍光検定(IFMA)によってMMP−8レベルの解析を行った。簡単に述べると、単クローン性MMP−8フラグメント特定抗体1491−E6−F7及び1492−B3−C11を各々、捕捉抗体及びトレーサ抗体として使用した。トレーサ抗体をユーロピウムキレートを使用してラベル付けした(Hemmilaら、1984年。時間分解免疫蛍光分析検定におけるラベルとしてのユーロピウム。Anal Biochem137:335〜343)。検定緩衝剤は、20mMのtris−HCl(pH7.5)、0.5MのNaClと、5mMのCaCl
2と、50μMのZnCl
2と、0.5%ウシ血清アルブミンと、0.05%アジ化ナトリウムと、20mg/リットルのDTPAとを含有させた。試料を検定緩衝剤で希釈し、1時間培養した後、トレーサ抗体で1時間培養した。増強液を添加し、5分後、1234Delfia Research Fluorometer(Wallac、フィンランド、トゥルク)を使用して蛍光を測定した。上述のIEMA法により、MMP−8レベルも解析した。また走査画像解析により異なる分子形態(21、25、35、45、55、及び60〜70kDa)のMMP−8を特定するIFMA法のトレーサ抗体(1492−B3−C11)を使用し、上述のようなウェスタンイムノブロッテイングで試料を解析した。
【0073】
データ解析
異なるMMP−8分子形態の有病率と全MMP−8の割合を走査画像より解析し、すべての患者について算出した。MMP−8のIFMA及びIEMAレベル、各MMP−8分子形態の絶対量、それらの割合、及び組み合わせについて、異なる試験群と、喫煙者及び非喫煙者との間でノンパラメトリック検査(一対比較のためのマンホイットニー検査、複数の群についてのクラスカルウォリス検査、順序付対立の動向を調べるヨンクヒールタプストラ検査)を行って比較した。異なる検査群における異なるMMP−8kDa種の有病率/発現をカイ2乗検査で解析した。
【0074】
以下のロジスティック回帰を非調整及び多変量調整で実施した。
1)IFMAレベル及びIEMAレベルと異なるMMP−8kDa種(従変数)との相関。多変量調整ロジスティック回帰分析では、歯数、BOP%、連続変数としての4〜5mm及び≧6mmのポケット数、及び二分(yes/no)変数としての喫煙。
2)MMP−8kDa種の割合及び絶対走査単位と、その高度IFMAレベル及びIEMAレベル(≧高度歯周組織炎症負荷を伴う群4の歯数レベルを考慮した中央値IFMA及びIEMA)との組み合わせの相関。多変量調整では、モデルBOP%、連続変数としての4〜5mm及び≧6mmのポケット数、及び二分(yes/no)変数としての喫煙。
3)MMP−8kDa種と高度歯周組織炎症負荷レベル(群4)との相関。多変量調整では、モデルBOP%、連続変数としての4〜5mm及び≧6mmのポケット数、及び二分(yes/no)変数としての喫煙。
4)MMP−8kDa種と喫煙との相関。多変量調整では、モデル歯数、BOP、連続変数としての4〜5mm及び≧6mmのポケット数。
高度歯周組織炎症負荷下の患者の認識モデルを前進型段階的ロジスティック回帰解析で実施した。IFMAレベル及びIEMAレベル(歯数を考慮)、BOP%、及び喫煙ステータス(yes/no)を有病率、21kDa、25kDa、35kDaのMMP−8種の絶対量及び割合とともに1つずつ、及び組み合わせにより検査した。
【0075】
受信者動作特性(ROC)解析を実施し、MMP−8のIFMAレベル及びIEMAレベルの診断感度及び特異度と、試験群における25+35kDa種の有病率とを評価した。
【0076】
p値<0.05を統計的に有意であるとみなした。IBMのSPSS統計バージョン20で統計解析を実施した。
【0077】
結果
表1は、歯周組織炎症負荷に基づく、4つの試験群の特性を表示している。群1及び群2では、喫煙者が4名(12.9%)及び3名(17.6%)であり、喫煙者全員につき≦10本/日であった。群3及び群4では、喫煙がより一般的であり[各々、20名(20.6%)及び23名(48.9%)]、群3では10名(50%)の患者と群4では17名(73.9%)の患者につき>10本/日であった。男性患者数は、歯周組織炎症負荷(p=0.011)の増加に合わせて増加した。
【0078】
【表1】
【0079】
MMP−8kDa種の有病率、絶対量、及び割合
すべての試験群につき、異なるMMP−8kDa種の有病率パーセンテージ、絶対量(走査単位)の中央値(IQR)レベル、及び割合を表3に示した。さらに、すべての試験群の間で顕著な差を示したMMP−8分子形態、すなわち25kDa種と35kDa種の有病率及び絶対量を、喫煙者及び非喫煙者について別々に計算し、表2に示した。
【0080】
群4では、喫煙者で、25kDa種、35kDa種、及び25+35kDa種の有病率及び絶対量がともに著しく高かった。24kDa種の有病率はすべての群(p=0.025)の間で著しく異なり、喫煙者(p=0.011)及び非喫煙者(p=0.046)のいずれの25+35kDa有病率も群4で高かった。非喫煙者中、35kDa種の総量はすべての試験群間で著しく異なった。組み合わせ群1〜3対群4で差異を解析したとき、群4の喫煙者の25kDa種、35kDa種、及び25+35kDa種の有病率が著しく高かった(各p値は、0.011、0.038、及び0.005)。
【0081】
【表2-1】
【0082】
【表2-2】
【0083】
【表2-3】
【0084】
【表3-1】
【0085】
【表3-2】
【0086】
【表4-1】
【0087】
【表4-2】
【0088】
MMP−8IFMAレベル及びIEMAレベル
IFMA解析結果とIEMA解析結果の相関は非常に高かった(ピアソン相関係数は0.954、p<0.01レベルで有意)。現在のIFMA解析と依然のIFMA解析(Leppilahtiら、2011年)の間のピアソン相関係数は0.627でp<0.01レベルで有意であった。
【0089】
表4は、すべての試験群について、歯数及び喫煙ステータスを考慮に入れた際のIFMA及びIEMAで解析したMMP−8レベルを示している。MMP−8IFMAレベルの上昇に対して群1〜4で有意な動向が存在し、動向は順序付対立について検査した際(p=0.035)で有意となり、IFMAについて検査した際(p=0.058)で有意となった。歯数を考慮した場合、IFMA及びIEMAの双方についての動向が群1〜4で有意であった(各々、p=0.016及びp=0.025)。群4のレベルを群1〜3のレベルと比較したとき、すべての比較において、p値0.035、0.033、0.013、及び0.011で有意な結果となった。群1〜3の間のレベルは類似していた(各々、p値0.643、0.822、0.647、及び0.816)。
【0090】
喫煙を考慮にいれたとき、非喫煙者において動向はより強くなり、IFMAについてはp=0.020、IEMAについてはp=0.038であり、歯数も考慮に入れたとき、IFMAについてはp=0.010、IEMAについてはp=0.028であった(表4、
図1)。喫煙者については有意な動向が見られなかった。群4の喫煙者レベル及び非喫煙者レベルを考慮し、歯数を群1〜3の喫煙者レベル及び非喫煙者レベルと比較したとき、群4の非喫煙患者のIFMAレベル及びIEMAレベルは他の試験群(各々、p値が0.009及び0.013)より著しく高かった。しかしながら、群3及び4の研究被験者を非喫煙者、≦10本/日の喫煙患者、又は>10本/日の喫煙患者に分けたとき、統計的有意性は見られなかったものの、>10本/日の喫煙者における分布が≦10本/日の喫煙患者における分布より幅広く、特に群4の非喫煙者と類似していた(
図1)。
【0091】
異なるMMP−8kDa種との関連におけるIFMAレベル及びIEMAレベル
IFMAレベル及びIEMAレベルは、21kDaMMP−8種陽性患者において著しく高レベルであった(各々、p値は0.011及び0.003であった。非喫煙者については、0.005及び0.002であった。喫煙者については、差は顕著でなかった)。しかしながら、喫煙は21kDa種の有病率に顕著な作用を及ぼすことはなかった。
【0092】
多変量調整ロジスティック回帰解析では、IFMAレベル及びIEMAレベルは、21kDa(IFMAについてはOR=1、95%CI1〜1.001、p=0.008。IEMAについてはOR=1、95%CI1〜1.001、p=0.004)と、21及び25kDaの組み合わせ(IFMAについてはOR=1、95%CI1〜1.001、p=0.002。IEMAについてはOR=1、95%CI1〜1.001、p=0.001)と、25及び35kDa種(21〜35kDa)(IFMAについてはOR=1、95%CI1〜1.001、p=0.002。IEMAについてはOR=1、95%CI1〜1.001、p=0.001)を合わせたものとの有病率とに相関したものの、25kDa種及び35kDa種単独の有病率とは相関しなかった。また非調整ロジスティック回帰解析(双方について、OR=1、95%CI1〜1.001、p=0.028)では、21+45kDa種の組み合わせがIFMAレベル及びIEMAレベルと相関した。多変量調整ロジスティック回帰解析における他の共変量のうち、IFMAが共変量であるとき、又はIEMAが共変量であるときの双方で、喫煙は25、35、25+35、21+35kDa種と有意に相関し、BOPは45、21+45、21−45、25+45、及び35+45kDa種と相関した。
【0093】
さらに有病率、MMP−8kDa種の総走査単位及び絶対走査単位からの有病率、割合、及び高IFMAレベル(≧歯数を考慮した群4の中間レベル)との組み合わせの相関について解析した。非調整回帰解析及び多変量回帰解析の双方において、21kDa(p=0.011)、25kDa(p=0.050)、21+25kDa(p=0.011)、21+35kDa(p=0.006)、21+45kDa(p=0.012)、21−35kDa(p=0.009)、及び21−45kDa(p=0.010)の絶対量(多変量回帰解析のp値については括弧内)と、MMP−8総量(p=0.010)が高IFMAレベル(
図2A)と相関した。
【0094】
高IEMAレベルについても同様の検査を実施した。多変量調整回帰解析では、21kDa(p=0.013)、25kDa(p=0.044)、21+25kDa(p=0.011)、21+35kDa(p=0.006)、21+45kDa(p=0.014)、21−35kDa(p=0.007)、及び21−45kDa(p=0.008)の総量並びにMMP−8(p=0.007)の総量が有意であった。
【0095】
21kDa種に対する他のMMP−8分子形態の有病率
25kDa種及び35kDa種の有病率を、21kDa種陽性被験者及び21kDa種陰性被験者について解析した。すべての研究被験者をともに解析したとき、35kDa種有病率は、21kDa陰性患者(56.5%)に比して21kDa陽性患者(89.6%)において著しく高かった(p<0.001)。21kDa種が陽性/陰性であるとき(p<0.001)、群3における25kDa種別は88.3%/44.3%と顕著な差が見られた。また群4における各値は、21kDa種が陽性/陰性であるとき、35kDa種については94.7%/71.4%(p=0.046)であり、25kDa種については100%/71.4%(p=0.011)であった。
【0096】
IFMA、IEMA、及びMMP−8分子形態の高度歯周組織炎症負荷との相関
25kDa(OR2.566、95%CI1.114〜5.909、p=0.027)、25+35kDa(OR2.586、95%CI1.221〜5.477、p=0.013)、及び21−45kDa(OR3.10、95%CI1.121〜8.568、p=0.029)種の有病率は、高度歯周組織炎症負荷(群4)と有意に相関した。しかしながらこの相関は、多変量調整解析では有意でなかった(25+35kDa種の組み合わせで有意となった。p=0.053)。
【0097】
非調整解析において、IFMAレベル及びIEMAレベルの双方は、高度歯周組織炎症負荷の群4に相関した。IFMAについては、OR1、95%CI1.0〜1.001、p=0.029であり、IEMAについては、OR1、95%CI1.0〜1.001、p=0.046であった。
代わりに、共変量BOP%及び喫煙が高度歯周組織炎症負荷の群4と強く相関し、すべての解析において、BOP%についてはp値<0.001であり、喫煙については<0.001〜0.002であった。
【0098】
IFMa及びMMP−8kDa種と喫煙との相関
非調整ロジスティック回帰解析及び調整ロジスティック回帰解析の双方において、35kDaMMP−8種と25+35kDaMMP−8種の有病率は喫煙と有意に相関しており、多変量調整モデルにおいてp値は各々0.033及び0.008であった。45kDa種は、非調整解析においては有意でなかったものの、調整モデルでは防御可能であった(p=0.033)(
図3B)。
【0099】
また35kDa(p<0.001)の割合、25+35(p<0.001)、25−45(0.003)、35+45(0.010)、21−45(p=0.012)、及び21+35(p=0.002)kDa種の組み合わせの割合が喫煙と相関した(
図3C)(各々、MMP−8種について述べた後、多変量調整モデルのp値を括弧内に示した)。いずれのMMP−8種別の絶対量も、喫煙とは有意に相関しなかった。すべての多変量調整回帰解析において、4〜5mmのポケット数は喫煙と有意に相関した。
【0100】
BOP%と異なるMMP−8種別の相関
すべての研究被験者において、45kDa種の有病率は、BOP≧25%の患者でBOP<25%の患者より高かった(p=0.003、カイ2乗)。この差は、45kDa種別(p=0.002)の少量についても、非喫煙者(p=0.001)においても統計的に有意であった。しかしながら有病率≧25%のプロービング値の出血は、群1において0、群2及び3の双方において9.1%、群4において81.8%であった。従って≧25%のケースの最大BOPは、主として群4に属するものであった。群4では、45kDa種の絶対量、有病率、及び割合が、BOP<25%の患者に比してBOP≧25%の患者において顕著に高かった(各々、p値は0.009、0.022、及び0.037)。群4の喫煙者と非喫煙者との間には有意な差は見られなかった。
【0101】
非調整ロジスティック回帰解析では、45kDa種別のMMP−8の有病率がBOP≧25%と相関し、OR3.66、95%CI1.523〜8.797、p=0.004であった。多変量調整ロジスティック回帰解析では、45kDa種別の有病率がBOP≧25%と相関し、OR3.66、95%CI1.309〜8.634、p=0.012であった。その他の共変量は有意でなかった。その他のMMP=8分子形態はBOP≧25%と相関しなかった。
【0102】
モデル化及び受信者動作特性解析
前進型段階的ロジスティック回帰解析により、口濯ぎ液試料から高度歯周組織炎症負荷下の患者(群4)の認識モデルを実行した。IFMA及びIEMA(歯数を考慮)、BOP%、及び喫煙ステータス(yes/no)とともに、21、25、及び35kDa種1つずつ、及びその組み合わせの有病率、絶対量、及び割合を検査した。ベストモデルは、25+35kDa種のBOP%、喫煙ステータス、及び有病率の組み合わせであり、各々、p値が<0.001、0.006、及び0.044であった。
【0103】
受信者動作特性(ROC)解析を実施し、試験群におけるMMP−8のIFMAレベル及びIEMAレベル、25+35kDa種の有病率の診断感度及び特異度を評価した。群4のIFMA、IEMA、及び25+35kDa種について、相違は状態変数として有意であった(
図4)。群4のIFMAについては、ROC曲線下方の領域が0.602であり、95%信頼区間(CI)が0.507〜0.698、p値が0.035であった。IEMAについては、ROC下方の領域が0.604であり、95%CIが0.510〜0.697、p値が0.033であった。25+35kDaの有病率については、ROC曲線下方の領域が0.604、95%CIが0.514〜0.693、p値が0.033であった。BOP値については、ROC曲線下方の領域が0.880、95%CIが0.832〜0.928、p値が0.025であった。ROC解析により、25+35kDaMMP−8活性化物質は、55〜70kDaMMP−8種とは異なり、IFMA及びIEMAの解析とともに歯周炎患者を識別するものであることを明らかにした。
【0104】
実施例2
SDS−PAGE(10%)解析をKiili Mら(2002年)に準じて実施した。
【0105】
rhMMP−8の量及び培養時間を
図4に示す。
図4Aは、組み換えヒトMMP−8(Proteaimmun)に対する有機水銀化合物APMAの作用を示し、
図4Bは、NaOCl活性化因子の作用を示す。APMA及びNaOClはともに活性化に際して低分子量MMP−8種の生成を誘発する。20〜30kDa活性化フラグメントの時間依存形成を矢印で示す。
上述のウェスタンイムノブロッティング法を使用してウェスタンイムノブロット解析を実施した。
図4Cは、APMA及びNaOCl並びに血清及び異なるヒトの体液により、活性化rhMMP−8の1491−E6−F7−単クローン性anti−MMP−8抗体(Proteaimmun、Merck、及び本発明のMMP−8抗原)を使用したウェスタンイムノブロット解析を示す。
【0106】
ヒトの歯周炎歯肉溝浸出液(GCF)、ヒトのインプラント周囲炎内縁流体(PISF)、ヒトの矯正治療歯のGCF、ヒトの歯周炎唾液、ヒトの歯周炎口濯ぎ液、ヒトの羊水の感染試料、ヒトの脳脊髄液、及びヒトの敗血症血清の試料を以下のレーン10〜レーン17に使用した。
【0107】
レーン1:ProteaimmunによるrMMP−8
レーン2:レーン1と同一のものプラスAPMA
レーン3:レーン1と同一のものプラスNaOCl
レーン4:MerckによるrhMMP−8
レーン5:レーン4と同一のものプラスAPMA
レーン6:レーン4と同一のものプラスNaOCl
レーン7:本発明のMMP−8抗原
レーン8:レーン7と同一のものプラスAPMA
レーン9:レーン7と同一のものプラスNaOCl
レーン10:ヒトの歯周炎歯肉溝滲出液(GCF)
レーン11:ヒトのインプラント周囲炎内縁流体(PISF)
レーン12:ヒトの矯正治療を行った歯のGCF
レーン13:ヒトの歯周炎唾液
レーン14:ヒトの歯周炎口濯ぎ液
レーン15:感染したヒトの羊水
レーン16:ヒトの脳脊髄液
レーン17:ヒトの敗血症血清
【0108】
MMP−8の活性化に際して形成される優勢な20〜30kDaフラグメントを矢印で示す。
【0109】
実施例3
非感染(#16)及び感染(#12、#13、及び#19)ヒト羊水試料を使用し、上述のウェスタンイムノブロッティング法によりウェスタンイムノブロット解析を実施した。解析に用いたIFMAで査定の異なる試料、及び異なるMMP−8濃度について次の各レーンに示す。使用したゲルは11%であった。検査は3つの異なる抗体、すなわち単クローン性MMP−8特定抗体1491−E6−F7(7.)、1492−B3−C11(4.)(Medix Biochemica、フィンランド、カウニアイネン)、及び多クローン性抗体(3.)(Lauhio Aら、1994年)を使用して実施した。その他、使用したすべての抗体についてレーンは同一であったが、多クローン性anti−MMP−8についてレーン8及び10には試料がなかった。結果を
図5に示す。MMP−8フラグメント25kDa+35kDaのレベルは、IFMAで査定したMMP−9レベルに相関した。
【0110】
レーン1 標準
レーン2 #16、210μg/l MMP−8(14μl×15μg・l)/well
レーン3 #12、210μg/l MMP−8
レーン4 #12、2000μg/l MMP−8
レーン5 #12、40000μg/l MMP−8
レーン6 #12、76160μg/l MMP−8(14μl×5440μg・l)/well
レーン7 #13、210μg/l MMP−8
レーン8 #13、2000μg/l MMP−8
レーン9 #13、40000μg/l MMP−8
レーン10 #13、186088μg/l MMP−8(14μl×13292μg・l)/well
レーン11 #19、210μg/l MMP−8
レーン12 #19、2000μg/l MMP−8
レーン13 #19、40000μg/l MMP−8
レーン14 #19、127666μg/l MMP−8(14μl×9119μg・l)/well
【0111】
実施例4
SDS−PAGE(10%)解析をKiili Mら(2002年)に準じて実施した。組み換えヒトMMP−8(Proteaimmun)をAPMAで活性化した。rhMMP−8の量と培養時間を次に示す。シークエンシングに使用したバンドを
図6に示す。
【0112】
レーン1 1.5μL分子量基準(Bio−Rad)
レーン2 2μl分子量基準(Bio−Rad)
レーン3 1μl MMP−8(0.15μg/μl)+3μl TNC緩衝剤(50mM Tris−HCl、pH7.8:0.2M NaCl:0.75mM CaCl
2)
レーン4 空
レーン5 1μl MMP−8(0.15μg/μl)+4μl 2mM APMA+3μl TNC緩衝剤、培養時間2時間(37℃)
レーン6 空
レーン7 1μl MMP−8(0.15μg/μl)+4μl 2mM APMA+3μl TNC緩衝剤、培養時間5.5時間(37℃)
【0113】
シークエンシングは、上述のシークエンシング法に準じて実施した。
図6のゲルバンド1〜8にシークエンシングを施した。バンドのサイズは次のとおりであった。
【0114】
バンド2=32kDa
バンド3=25kDa
バンド4=21kDa
バンド5=25kDa
バンド6=21kDa
バンド7=12kDa
バンド8=5kDa
【0115】
バンド3、4、5、及び8は配列番号1を含み、バンド2、3、4、5、及び6は配列番号2を含む。バンド7はMMP−8のその他のフラグメントを特定した。バンド1にはいずれのMMP−8フラグメントも特定されなかった。バンド3、4、及び5のMMP−8活性化物質は配列番号1及び配列番号2の双方を含む。配列番号1のアミノ酸119〜132と配列番号2のアミノ酸151〜165は全体MMP−8配列の中間領域ドメインからであった。
【0116】
実施例5
実施例2及び実施例3でフラグメントを示すのに使用した単クローン性抗体により、ヒトの胎盤から抽出した精製ヒトaMMP−8にSDS−PAGE解析及びウェスタンブロット解析を実施した。
【0117】
アフィニティクロマトグラフィーカラム(30mlセファロースカラム(Bio Rad)用にanti−hMMP−8−Ab(マウスanti−hMMP8MoAB1491−E6−F7(Medix Biochemica)をNHS−セファロース(NHS−活性化セファロース4Fast Flow(GE Healthcare))に結合した。胎盤素材(ヒトのMMP−8−胎盤抽出物(in.vent.Diagnostica))の濃縮は、遠心濃縮器(Vivaspin(登録商標)Turbo15及びVivaspin(登録商標)2 (Sartorius))により実施した。アフィニティクロマトグラフィは、各ラン(ゲル電気泳動「Mini Protean 3 cell」及びブロッティング機器「Mini Trans−Blot cell」(Bio Rad))につき10mlの濃縮素材胎盤抽出物を使用して実施した。酸性溶出は、pH2.2のクエン酸緩衝剤によって実施した。5mlの画分を回収した。画分をプールし、遠心濃縮器で濃縮した。緩衝剤塑性を調整して(ミニダイアライザーMD1000(Scienova)精製ヒトaMMP−8を得た。SDS−PAGE(Pierce Silver Stain Kit(Thermo Scientific))及びウェスタンブロット(Protein−standards Precision Plus Protein Dual Xtra(Bio Rad)を使用したmmun−Blot PVDF膜0,2μm、7×8,4cm(Bio Rad))を実施した。SDS−PAGE及びWBには、分離ゲル12%及び回収ゲル4%のSDSゲルを利用した。
【0118】
その結果を、SDS−PAGEについては
図7に、ウェスタンブロットについては
図8に示す。
【0119】
SDS−PAGEの銀色染色ゲルは、全試料の比較バンドを表示しており、これまで知られていた35kDa超のフラグメントとともに、10〜15kDaのフラグメント及び20〜35kDaのフラグメントを顕著に示している。丸で囲んだウェスタンブロットバンドは比較的弱いものの、本来のブロット上に観察することができた。「*」マークを付した分子量マーカーの75kDa及び25kDaバンドは、赤色であり、本来のブロット内に明らかに見ることができる。免疫学的染色では、10〜15kDaを増幅し、より高度に濃縮された試料中では20〜35kDaフラグメントもマークする。
【0120】
結果を実施例2及び3で示した結果と相互に関連づけ、確認する。
【0121】
・参照文献
・Dejonckheere E.ら「マトリクスメタロプロテアーゼ−8は炎症及び癌進行の中心的役割を果たす」Cytokine&Growth Factor Reviews22:73〜81、2011年
・Hanemaaijerら、「マトリクスメタロプロアーゼ−8はリウマチ滑膜線維芽細胞及び内皮細胞に発現する。腫瘍壊死因子−α及びドキシサイクリンによる調節」J.Biol.Chem.278:40967〜40972、1997年
・Hemmilaら「時間分解免疫蛍光分析検定におけるラベルとしてのユーロピウム」Anal Biochem137:335〜343、1984年
・Holtfreter B.ら「ドイツ歯科調査(DMSIV)に基づく歯周病有病率及び治療必要性」Journal of Clinical Periodontology、第37巻、第3版、211〜219頁、2010年3月
・Kiili Mら「成人歯周病におけるコラゲナーゼ−2(MMP−8)及びコラゲナーゼ−3(MMP−13)。分子が歯肉組織の歯肉溝浸出貯留液及び免疫学的局在決定を形成及び水平化する」J.Clin.Periodontol、29:224〜232、2002年
・Lauhio Aら「急性反応性関節炎のドキシサイクリン及び非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)による長期併用治療中のヒト好中球コラゲナーゼ(MMP−8)活性の生体内の阻害」Clin.Exp.Immunol.、98:21〜28、1994年
・Leppilahti JMら「口濯ぎ液によるMMP−8ポイントオブケア免疫検査により高度歯周組織炎症負荷下にある患者を特定する」Oral Dis.17:115〜122、2011年
・Lindy Oら「スタチン使用が歯肉病変抑制に関連する」BMC Oral Health15;8:16、2008年
・Ma Jら「異なるカテゴリーのインプラント周囲上下骨喪失におけるコラゲナーゼ」J Dent Res;79:1870〜1873、2000年
・Turunenら「マロンジアルデヒド修飾低密度リポタンパク質への天然IgM結合によるポリフィロモナスジンジルバリスジンジパインエピトープの認識」PloS ONE7(4):e34910.Doi:10.1371/journal.pone.0034910、2012年
・Xu Lら「歯周炎及びインプラント周囲炎の患者における歯肉溝滲出液及びインプラント周囲内縁流体から得たコラゲナーゼ−2の特性」Acta Odont Scand;66:219−224、2008年