特許第6613250号(P6613250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6613250非水電解質二次電池用負極活物質及び非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6613250
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極活物質及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20191118BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 B
   H01M4/36 C
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-571838(P2016-571838)
(86)(22)【出願日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】JP2016000219
(87)【国際公開番号】WO2016121323
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2018年8月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-14158(P2015-14158)
(32)【優先日】2015年1月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-214262(P2015-214262)
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 博之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 善雄
(72)【発明者】
【氏名】砂野 泰三
【審査官】 森 透
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−161705(JP,A)
【文献】 特開2013−084549(JP,A)
【文献】 特開2013−235685(JP,A)
【文献】 特開2012−094490(JP,A)
【文献】 特開2011−222151(JP,A)
【文献】 特開2014−103019(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103400971(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/38
H01M 4/36
H01M 4/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li2zSiO(2+z){0<z<2}で表されるリチウムシリケート相と、
前記リチウムシリケート相中に分散した粒子であって、シリコン(Si)からなるコア粒子及びSiを含有する鉄合金(FeSi合金)からなる表面層を含む粒子と、
を備え、
XRD測定により得られるXRDパターンにおいて、2θ=45°付近のFeSi合金の回折ピークの半値幅が0.40°以上、且つ2θ=28°付近のSiの(111)面の回折ピークの半値幅が0.40°以上であ
前記XRDパターンの2θ=25°にSiO2の回折ピークが観察されない、非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記XRDパターンにおけるリチウムシリケートの(111)面の回折ピークの半値幅が0.05°以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項3】
Feの含有量は、前記リチウムシリケート相と前記粒子とで構成される母粒子の総質量の5質量%以下である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記コア粒子の平均粒径は、初回充電前において200nm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記リチウムシリケート相は、Li2SiO3及びLi2Si25の少なくとも一方からなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項6】
前記リチウムシリケート相と前記粒子とで構成される母粒子の表面には、導電層が形成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極活物質を用いた負極と、正極と、非水電解質と、を備えた非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池用負極活物質及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン(Si)、SiOxで表されるシリコン酸化物などのシリコン材料は、黒鉛などの炭素材料と比べて単位体積当りに多くのリチウムイオンを吸蔵できることが知られている。特にSiOxは、Siよりもリチウムイオンの吸蔵による体積変化が小さいことから、リチウムイオン電池等の負極への適用が検討されている。例えば、特許文献1は、SiOxを黒鉛と混合して負極活物質とした非水電解質二次電池を開示している。
【0003】
一方、SiOxを負極活物質として用いた非水電解質二次電池は、黒鉛を負極活物質とした場合に比べて、初回充放電効率が低いという課題がある。これは、充放電時の不可逆反応によりSiOxがLi4SiO4(不可逆反応物)に変化することが主な要因である。そこで、かかる不可逆反応を抑制して初回充放電効率を改善すべく、SiLixy(0<x<1.0、0<y<1.5)で表される負極活物質が提案されている(特許文献2参照)。また、特許文献3は、Li4SiO4を主成分とするリチウムシリケート相がシリコン酸化物中に含まれた負極活物質を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−233245号公報
【特許文献2】特開2003−160328号公報
【特許文献3】特開2007−59213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2,3に開示された技術は、いずれもSiOx及びリチウム化合物の混合物を高温で熱処理して、SiO2を不可逆反応物であるLi4SiO4に予め変換することにより、初回充放電効率の改善を図っている。しかし、当該プロセスでは、粒子内部にSiO2が残り、粒子表面のみにLi4SiO4が生成する。粒子内部まで反応させるためには、さらなる高温プロセスが必要であるが、熱処理温度を高くするとSi及びLi4SiO4の結晶増大が助長されると共に、Si及びLi4SiO4がそれぞれ偏在し、粒子内の分散性が低下する。また、Siの結晶性が高くなれば、Siの体積変化が大きくなり、活物質粒子の膨張も大きくなる。他方、Li4SiO4の結晶性が高くなると、リチウムイオン導電性が低下する。これにより、充電容量が低下する。さらに、Si及びLi4SiO4の分散性不良は、粒子内の反応均一性を低下させ、充放電時に粒子崩壊が起こり易くなる。
【0006】
ところで、非水電解質二次電池では、充電容量及び初回充放電効率が高いだけでなく、充放電サイクルによる容量低下を抑制することが求められている。本開示の目的は、シリコン材料を含む非水電解質二次電池用負極活物質であって、充電容量及び初回充放電効率が高く、且つサイクル特性に優れた非水電解質二次電池を構築することが可能な負極活物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用負極活物質は、Li2zSiO(2+z){0<z<2}で表されるリチウムシリケート相と、リチウムシリケート相中に分散した粒子であって、シリコン(Si)からなるコア粒子及びSiを含有する鉄合金(FeSi合金)からなる表面層を含む粒子とを備え、XRD測定により得られるXRDパターンにおいて、2θ=45°付近のFeSi合金の回ピークの半値幅が0.40°以上、且つ2θ=28°付近のSiの(111)面の回ピークの半値幅が0.40°以上である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用負極活物質によれば、充電容量及び初回充放電効率が高く、且つサイクル特性に優れた非水電解質二次電池を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の一例である負極活物質を模式的に示す断面図である。
図2】実施形態の一例である負極活物質の粒子断面のXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の一例について詳細に説明する。
実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0011】
本開示の一態様である負極活物質は、Li2zSiO(2+z)(0<z<2)で表されるリチウムシリケート相と、リチウムシリケート相中に分散したSiを主成分とする粒子とを備える。当該粒子は、Siからなるコア粒子及びFeSi合金からなる表面層を含む。本開示の一態様である負極活物質は、例えばSiからなるコア粒子の表面に形成される自然酸化膜程度のSiO2を含有していてもよい。なお、自然酸化膜のSiO2と、従来のSiOx粒子のSiO2は性質が大きく異なる。例えば、本開示の一態様である負極活物質のXRD測定により得られるXRDパターンには、2θ=25°にSiO2の回ピークが観察されない。これは、自然酸化膜が極めて薄いため、X線が回折しないためであると考えられる。一方、従来のSiOx粒子のXRDパターンには、2θ=25°にSiO2の回ピークが観察される。
【0012】
従来のSiOxは、SiO2のマトリクスの中に微小なSi粒子が分散したものであり、充放電時には下記の反応が起こる。
(1)SiOx(2Si+2SiO2)+16Li++16e-
→3Li4Si+Li4SiO4
Si、2SiO2について式1を分解すると下記の式になる。
(2)Si+4Li++4e- → Li4Si
(3)2SiO2+8Li++8e- → Li4Si+Li4SiO4
上記のように、式3が不可逆反応であり、Li4SiO4の生成が初回充放電効率を低下させる主な要因となっている。
【0013】
本開示の一態様である負極活物質は、Siを主成分とする粒子がLi2zSiO(2+z)(0<z<2)で表されるリチウムシリケート相に微小且つ均一に分散したものであり、例えば従来のSiOxに比べてSiO2の含有量が大幅に少ない。また、本負極活物質に含有されるSiO2は自然酸化膜であり、従来のSiOx粒子のSiO2と性質が大きく異なる。したがって、当該負極活物質を用いた非水電解質二次電池では、式3の反応が起こり難く、初回充放電効率が向上するものと考えられる。
【0014】
上述のように、Siを主成分とする粒子とリチウムシリケートが活物質粒子内で微小且つ均一に分散した状態を作製することで、初回充放電効率及び充電容量を向上させることができ、また充放電に伴う体積変化を低減して粒子崩壊を抑制できる。しかし、Si粒子とリチウムシリケートを用いて負極活物質を合成した場合は、Si粒子とリチウムシリケートの結着性を高めるための熱処理時においてSiとリチウムシリケートが反応して充放電に寄与するSiが減少し、容量低下を引き起こすことが判明した。また、一般的にSiの結晶性が低いほどサイクル特性が良くなる傾向にあるが、当該熱処理によりSiの結晶性が高くなりサイクル特性が低下することが分かった。なお、Si粒子を単独で熱処理した場合と、Si粒子とリチウムシリケートの混合物を熱処理した場合とでは、熱処理条件が同じであっても、後者のSiの方が結晶性が高くなる。即ち、リチウムシリケートがSiの結晶化を促進していると考えられる。
【0015】
そこで、本発明者らは、上述の容量低下及びサイクル特性の低下を抑制すべく鋭意検討した結果、Si粒子の表面にFeSi合金の層を形成することにより、熱処理時におけるリチウムシリケートの影響を低減できることを見出したのである。つまり、熱処理時におけるSiとリチウムシリケートの反応、及びSiの結晶化を抑制することに成功したのである。但し、この効果を得るためには、負極活物質のXRDパターンにおいて、2θ=45°付近のFeSi合金の回ピークの半値幅が0.40°以上、且つ2θ=28°付近のSiの(111)面の回ピークの半値幅が0.40°以上であることが要求される。本開示の一態様である負極活物質を用いることにより、充電容量及び初回充放電効率が高く、且つサイクル特性に優れた非水電解質二次電池を構築することができる。
【0016】
実施形態の一例である非水電解質二次電池は、上記負極活物質を含む負極と、正極と、非水溶媒を含む非水電解質とを備える。正極と負極との間には、セパレータを設けることが好適である。非水電解質二次電池の構造の一例としては、正極及び負極がセパレータを介して巻回されてなる電極体と、非水電解質とが外装体に収容された構造が挙げられる。或いは、巻回型の電極体の代わりに、正極及び負極がセパレータを介して積層されてなる積層型の電極体など、他の形態の電極体が適用されてもよい。非水電解質二次電池は、例えば円筒型、角型、コイン型、ボタン型、ラミネート型など、いずれの形態であってもよい。
【0017】
[正極]
正極は、例えば金属箔等からなる正極集電体と、当該集電体上に形成された正極合材層とで構成されることが好適である。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質の他に、導電材及び結着材を含むことが好適である。また、正極活物質の粒子表面は、酸化アルミニウム(Al23)等の酸化物、リン酸化合物、ホウ酸化合物等の無機化合物の微粒子で覆われていてもよい。
【0018】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム遷移金属酸化物が例示できる。リチウム遷移金属酸化物は、例えばLixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-y2、LixCoy1-yz、LixNi1-yyz、LixMn24、LixMn2-yy4、LiMPO4、Li2MPO4F(M;Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも1種、0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3)である。これらは、1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0019】
導電材は、正極合材層の電気伝導性を高めるために用いられる。導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
結着材は、正極活物質及び導電材間の良好な接触状態を維持し、且つ正極集電体表面に対する正極活物質等の結着性を高めるために用いられる。結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等が例示できる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩(CMC−Na、CMC−K、CMC-NH4等、また部分中和型の塩であってもよい)、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
[負極]
負極は、例えば金属箔等からなる負極集電体と、当該集電体上に形成された負極合材層とで構成されることが好適である。負極集電体には、銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質の他に、結着材を含むことが好適である。結着剤としては、正極の場合と同様にフッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。水系溶媒を用いて合材スラリーを調製する場合は、CMC又はその塩(CMC−Na、CMC−K、CMC-NH4等、また部分中和型の塩であってもよい)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩(PAA−Na、PAA−K等、また部分中和型の塩であってもよい)、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることが好ましい。
【0022】
図1に実施形態の一例である負極活物質粒子10の断面図を示す。
図1で例示するように、負極活物質粒子10は、リチウムシリケート相11と、当該相中に分散した粒子12とを備える。粒子12は、Siからなるコア粒子15の表面にFeSi合金からなる表面層16が形成された粒子である。負極活物質粒子10に含まれるSiO2は、自然酸化膜程度であって、負極活物質粒子10のXRD測定により得られるXRDパターンの2θ=25°にSiO2の回ピークが観察されないことが好ましい。リチウムシリケート相11及び粒子12で構成される母粒子13の表面には、導電層14が形成されていることが好適である。
【0023】
母粒子13は、リチウムシリケート相11及び粒子12以外の第3成分を含んでいてもよい。母粒子13に自然酸化膜のSiO2が含まれる場合、その含有量は、好ましくは10質量%未満、より好ましくは7質量%未満である。なお、粒子12の粒径が小さいほど表面積が大きくなり、自然酸化膜のSiO2が多くなる。
【0024】
粒子12は、上述の通りSiを主成分とする。Siは、黒鉛等の炭素材料と比べてより多くのリチウムイオンを吸蔵できることから、粒子12を含む負極活物質粒子10を負極活物質に適用することで電池の高容量化に寄与する。負極合材層には、負極活物質として負極活物質粒子10のみを単独で用いてもよい。但し、シリコン材料は黒鉛よりも充放電による体積変化が大きいことから、高容量化を図りながらサイクル特性を良好に維持すべく、かかる体積変化が小さな他の活物質を併用してもよい。他の活物質としては、黒鉛等の炭素材料が好ましい。
【0025】
黒鉛には、従来から負極活物質として使用されている黒鉛、例えば鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛(MAG)、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等の人造黒鉛などを用いることができる。黒鉛を併用する場合、負極活物質粒子10と黒鉛との割合は、質量比で1:99〜30:70が好ましい。負極活物質粒子10と黒鉛の質量比が当該範囲内であれば、高容量化とサイクル特性向上を両立し易くなる。一方、黒鉛に対する負極活物質粒子10の割合が1質量%よりも低い場合は、負極活物質粒子10を添加して高容量化するメリットが小さくなる。
【0026】
リチウムシリケート相11は、Li2zSiO(2+z)(0<z<2)で表されるリチウムシリケートからなる。即ち、リチウムシリケート相11を構成するリチウムシリケートには、Li4SiO4(Z=2)が含まれない。Li4SiO4は、不安定な化合物であり、水と反応してアルカリ性を示すため、Siを変質させて充放電容量の低下を招く。リチウムシリケート相11は、安定性、作製容易性、リチウムイオン導電性等の観点から、Li2SiO3(Z=1/2)及びLi2Si25(Z=1)の少なくとも一方からなり、Li2SiO3又はLi2Si25を主成分とすることが好適である。Li2SiO3又はLi2Si25を主成分(最も質量が多い成分)とする場合、当該主成分の含有量はリチウムシリケート相11の総質量に対して50質量%超過であることが好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0027】
リチウムシリケート相11は、例えば微細な粒子の集合により構成され、好ましくは粒子12よりもさらに微細な粒子から構成される。負極活物質粒子10のXRDパターンでは、例えばSiの(111)面の回ピークの強度が、リチウムシリケートの(111)面の回ピークの強度よりも大きい。
【0028】
充放電後の負極活物質粒子10には、Li4SiO4が含まれないことが好適である。負極活物質粒子10の出発原料には、自然酸化膜程度のSiO2が含まれるだけなので、初回充放電において、上述した式(3)の反応が起こり難く、不可逆反応物であるLi4SiO4が生成し難い。
【0029】
粒子12は、リチウムシリケート相11中に略均一に分散していることが好適である。負極活物質粒子10(母粒子13)は、例えばリチウムシリケートのマトリックス中に微細な粒子12が分散した海島構造を有し、任意の断面において粒子12が一部の領域に偏在することなく略均一に点在している。粒子12の含有量は、高容量化及びサイクル特性の向上等の観点から、例えば母粒子13の総質量に対して20質量%〜75質量%であり、好ましくは35質量%〜50質量%である。粒子12の含有量が少なすぎると、粒子12に含まれるSiの量が減少するため、例えば充放電容量が低下し、またリチウムイオンの拡散不良により負荷特性が低下する。他方、粒子12の含有量が多すぎると、例えば粒子12の一部がリチウムシリケートで覆われず露出して電解液が接触し、サイクル特性が低下する。
【0030】
粒子12は、上述のようにSiのコアとFeSi合金のシェルからなるコアシェル粒子である。FeSi合金からなる表面層16を形成することにより、熱処理時におけるSiとリチウムシリケートの反応が抑制されると共に、Siの結晶化が抑制される。粒子12におけるFeの含有量は、例えば粒子12の総質量に対して15質量%以下であり、好ましくは0.03質量%〜12質量%である。換言すると、Siの含有量は、例えば粒子12の総質量に対して85質量%以上であり、好ましくは87質量%〜99.97質量%である。Feの含有量が多すぎると、例えば充放電容量が低下し、またリチウムイオンの拡散不良により負荷特性が低下する。Feの含有量が少なすぎると、例えば熱処理時におけるリチウムシリケートの影響を低減する効果が減少する。
【0031】
コア粒子15の平均粒径は、例えば初回充電前において500nm以下であり、200nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。充放電後においては、400nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。コア粒子15を微細化することにより、充放電時の体積変化が小さくなり電極構造の崩壊を抑制し易くなる。コア粒子15の平均粒径は、負極活物質粒子10の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより測定され、具体的には100個のコア粒子15の最長径を平均して求められる。
【0032】
表面層16の厚みは、熱処理時におけるリチウムシリケートの影響の低減とコア粒子15へのリチウムイオンの拡散性を考慮して、3nm〜50nmが好ましく、5nm〜40nmがより好ましい。表面層16の厚みは、SEM又はTEM等を用いた粒子の断面観察により計測できる。表面層16は、詳しくは後述するようにSi粒子の表面にFe粒子を付着させた後、高温で熱処理することにより形成されるため、例えば表面層16をSEM等で観察すると、Fe粒子に由来する粒子界面が確認できる。表面層16は、コア粒子15の表面の一部を覆って形成されていても、略全域を覆って形成されていてもよい。
【0033】
表面層16に含まれるFeは、コア粒子15のSiと合金化しており、負極活物質粒子10のXRDパターンにはFeSi合金の回ピークが表れる。但し、負極活物質粒子10には、コア粒子15に付着せずSiと合金化していないFe粒子が存在していてもよい。Feの含有量は、例えば母粒子13の総質量の7質量%以下であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.02質量%〜5質量%、特に好ましくは0.5質量%〜3質量%である。Feの含有量が多すぎると、重量あたりの容量が低下する。一方、Feの含有量が少なすぎるとコア粒子15の表面に形成されるFeSi合金の量が少なくなり、熱処理時におけるリチウムシリケートの影響を低減する効果が減少する。なお、コア粒子15に付着せずリチウムシリケート相11中に分散しているFe粒子の含有量は、母粒子13に含まれる全Feの30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0034】
表面層16を構成する粒子、即ちコア粒子15の表面に付着したFeSi合金からなる粒子の平均粒径は、コア粒子15の平均粒径よりも小さく、例えば100nm以下である。コア粒子15を保護し、且つ粒子内のリチウムイオンの拡散を阻害しない表面層16を形成するためには、当該粒子の平均粒径は10nm〜30nmであることが好ましい。平均粒径は、コア粒子15の場合と同様の方法により測定することができる。
【0035】
負極活物質粒子10(母粒子13)は、XRD測定により得られるXRDパターンにおいて、2θ=45°付近のFeSi合金の回ピークの半値幅が0.40°以上、且つ2θ=28°付近のSiの(111)面の回ピークの半値幅が0.40°以上である。上記FeSi合金の半値幅が0.40°以上であれば、熱処理時におけるSiとリチウムシリケートの反応、及びSiの結晶化を抑制することができる。そして、上記Siの半値幅が0.40°よりも大きくなると、サイクル特性が向上する。上記FeSi合金の半値幅は、好ましくは0.50以上であり、より好ましくは0.54以上である。上記Siの半値幅は、好ましくは0.42以上であり、より好ましくは0.45以上である。
【0036】
負極活物質粒子10(母粒子13)は、XRD測定により得られるXRDパターンにおいて、リチウムシリケートの(111)面の回ピークの半値幅が0.05°以上であることが好ましい。当該半値幅を0.05°以上に調整することで、リチウムシリケート相の結晶性が低くなり、粒子内のリチウムイオン導電性が向上し、充放電に伴う粒子12の体積変化がより緩和されると考えられる。好適なリチウムシリケートの(111)面の回ピークの半値幅は、リチウムシリケート相11の成分によっても多少異なるが、より好ましくは0.09°以上、例えば0.09°〜0.55°である。
【0037】
リチウムシリケート相11がLi2Si25を主成分とする場合、負極活物質粒子10のXRDパターンにおけるLi2Si25の(111)面の回ピークの半値幅は0.09°以上であることが好ましい。例えば、Li2Si25がリチウムシリケート相11の総質量に対して80質量%以上である場合、好適な当該回ピークの半値幅の一例は0.09°〜0.55°である。また、リチウムシリケート相11がLi2SiO3を主成分とする場合、負極活物質粒子10のXRDパターンにおけるLi2SiO3の(111)の回ピークの半値幅は0.10°以上であることが好ましい。例えば、Li2SiO3がリチウムシリケート相11の総質量に対して80質量%以上である場合、好適な当該回ピークの半値幅の一例は0.10°〜0.55°である。
【0038】
FeSi合金、Si、及びリチウムシリケートの回ピークの半値幅の測定は、下記の条件で行う。複数のリチウムシリケートを含む場合は、全てのリチウムシリケートの(111)面のピークの半値幅(°(2θ))を測定する。また、リチウムシリケートの(111)面の回ピークが、他の面指数の回ピーク又は他の物質の回ピークと重なる場合は、リチウムシリケートの(111)面の回ピークを単離して半値幅を測定する。
測定装置:株式会社リガク社製、X線回折測定装置(型式RINT−TTRII)
対陰極:Cu
管電圧:50kv
管電流:300mA
光学系:平行ビーム法
[入射側:多層膜ミラー(発散角0.05°、ビーム幅1mm)、ソーラスリット(5°)、受光側:長尺スリットPSA200(分解能:0.057°)、ソーラスリット(5°)]
走査ステップ:0.01°又は0.02°
計数時間:1〜6秒
【0039】
負極活物質粒子10の平均粒径は、高容量化及びサイクル特性の向上等の観点から、1〜15μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。ここで、負極活物質粒子10の平均粒径とは、一次粒子の粒径であって、レーザー回折散乱法(例えば、HORIBA製「LA−750」を用いて)で測定される粒度分布において体積積算値が50%となる粒径(体積平均粒径)を意味する。負極活物質粒子10の平均粒径が小さくなり過ぎると、表面積が大きくなるため、電解質との反応量が増大して容量が低下する傾向にある。一方、平均粒径が大きくなり過ぎると、充放電による体積変化量が大きくなるため、サイクル特性が低下する傾向にある。なお、母粒子13の表面には導電層14を形成することが好ましいが、導電層14の厚みは薄いため、負極活物質粒子10の平均粒径に影響しない(負極活物質粒子10の粒径≒母粒子13の粒径)。
【0040】
母粒子13は、例えば下記の工程1〜3を経て作製される。以下の工程は、いずれも不活性雰囲気中で行う。
(1)いずれも平均粒径が数μm〜数十μm程度に粉砕されたSi粉末及びFe粉末を混合して混合物を作製する。
(2)次に、ボールミルを用いて上記混合物を粉砕し微粒子化する。このとき、例えば平均粒径200nm以下のSi粒子の表面に、平均粒径30nm以下のFe粒子が付着する。なお、それぞれの原料粉末を微粒子化してから、混合物を作製することも可能である。
(3)次に、(2)で粉砕処理された混合物、即ちSi粒子の表面にFe粒子が付着したものに平均粒径が数μm〜数十μm程度に粉砕されたリチウムシリケート粉末を混合した後、ボールミルを用いてさらに粉砕処理する。
(4)次に、(3)で粉砕処理された混合物を、例えば600〜800℃で熱処理する。当該熱処理では、ホットプレスのように圧力を印加して上記混合物の燒結体を作製してもよい。このとき、Si粒子の表面にFeSi合金からなる表面層が形成され、当該表面層によってSiとリチウムシリケートとの反応が抑制されると共に、Siの結晶化が抑制される。
【0041】
負極活物質粒子10は、粒子12を包むリチウムシリケート相11よりも導電性の高い材料から構成される導電層14を粒子表面に有することが好適である。導電層14を構成する導電材料としては、電気化学的に安定なものが好ましく、炭素材料、金属、及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。当該炭素材料には、正極合材層の導電材と同様に、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、及びこれらの2種以上の混合物などを用いることができる。当該金属には、負極の電位範囲で安定な銅、ニッケル、及びこれらの合金などを用いることができる。当該金属化合物としては、銅化合物、ニッケル化合物等が例示できる(金属又は金属化合物の層は、例えば無電解めっきにより母粒子13の表面に形成できる)。中でも、炭素材料を用いることが特に好ましい。
【0042】
母粒子13の表面を炭素被覆する方法としては、アセチレン、メタン等を用いたCVD法、石炭ピッチ、石油ピッチ、フェノール樹脂等を母粒子13と混合し、熱処理を行う方法などが例示できる。また、カーボンブラック、ケッチェンブラック等を結着材を用いて母粒子13の表面に固着させることで炭素被覆層を形成してもよい。
【0043】
導電層14は、母粒子13の表面の略全域を覆って形成されることが好適である。導電層14の厚みは、導電性の確保と母粒子13へのリチウムイオンの拡散性を考慮して、1nm〜200nmが好ましく、5nm〜100nmがより好ましい。導電層14の厚みが薄くなり過ぎると、導電性が低下し、また母粒子13を均一に被覆することが難しくなる。一方、導電層14の厚みが厚くなり過ぎると、母粒子13へのリチウムイオンの拡散が阻害されて容量が低下する傾向にある。導電層14の厚みは、SEM又はTEMを用いた粒子の断面観察により計測できる。
【0044】
[非水電解質]
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質(非水電解液)に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。
【0045】
上記エステル類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)等の環状カルボン酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0046】
上記エーテル類の例としては、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、1,8−シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチル等の鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0047】
上記ハロゲン置換体としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステル等を用いることが好ましい。
【0048】
電解質塩は、リチウム塩であることが好ましい。リチウム塩の例としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(P(C24)F4)、LiPF6-x(Cn2n+1x(1<x<6,nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li247、Li(B(C24)F2)等のホウ酸塩類、LiN(SO2CF32、LiN(C12l+1SO2)(Cm2m+1SO2){l,mは1以上の整数}等のイミド塩類などが挙げられる。リチウム塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これらのうち、イオン伝導性、電気化学的安定性等の観点から、LiPF6を用いることが好ましい。リチウム塩の濃度は、非水溶媒1L当り0.8〜1.8molとすることが好ましい。
【0049】
[セパレータ]
セパレータには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータは、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
<実施例1>
[負極活物質の作製]
不活性雰囲気中で、Si粉末(3N、10μm粉砕品)及びFe粉末(高純度化学製、99.9%、3〜5μm粉砕品)を40:3の質量比で混合し、遊星ボールミル(フリッチュ製、P−5)のポット(SUS製、容積:500mL)に充填した。当該ポットにSUS製ボール(直径20mm)を24個入れてフタを閉め、200rpmで10時間粉砕処理した。その後、不活性雰囲気で、粉砕処理した混合粉末に対してLi2SiO3粉末(10μm粉砕品)を43:57の質量比となるように追加投入し、200rpmで50時間粉砕処理した。その後、不活性雰囲気中で粉末を取り出し、温度600℃の条件で、不活性雰囲気・4時間の熱処理を行った。熱処理した粉末(以下、母粒子という)を粉砕し、40μmのメッシュに通した後、石炭ピッチ(JFEケミカル製、MCP250)と混合して、温度800℃の条件で、不活性雰囲気・5時間の熱処理を行い、母粒子の表面を炭素で被覆して導電層を形成した。炭素の被覆量は、母粒子、導電層を含む活物質粒子の総質量に対して5質量%である。その後、篩を用いて平均粒径を5μmに調整することにより負極活物質を得た。なお、Feの含有量は上記母粒子の総重量の3質量%である。
【0052】
[負極活物質の分析]
上記負極活物質の粒子断面をSEMで観察した結果、Si粒子の平均粒径は200nm未満であった。また、Li2SiO3からなるマトリックス中に表面層が形成されたSi粒子が略均一に分散していることが確認された。
【0053】
図2は、上記負極活物質のXRDパターンを示す。負極活物質のXRDパターンには、主にSi、FeSi、及びLi2SiO3に由来する回ピークが確認された。2θ=45°付近のFeSi合金の回ピークの半値幅は0.546°、2θ=28°付近のSiの(111)面の回ピークの半値幅は0.480°であった。また、2θ=27.0°付近に現れるLi2SiO3の面指数(111)の半値幅は0.233°であった。なお、2θ=25°にSiO2の回ピークは観察されなかった。負極活物質A1をSi−NMRで測定した結果、SiO2の含有量は7質量%未満(検出下限値以下)であった。後述の実施例、比較例の各負極活物質についても同様に半値幅を求め、表1及び表2に示した。
【0054】
[負極の作製]
次に、上記負極活物質及びポリアクリロニトリル(PAN)を、95:5の質量比で混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加した後、混合機(シンキー製、あわとり練太郎)を用いて攪拌して、負極合材スラリーを調製した。そして、銅箔の片面に負極合材層の1m2当りの質量が25gとなるように当該スラリーを塗布し、大気中、105℃で塗膜を乾燥した後、圧延することにより負極を作製した。負極合材層の充填密度は、1.50g/cm3とした。
【0055】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、3:7の体積比で混合した混合溶媒に、LiPF6を濃度が1.0mol/Lとなるように添加して非水電解液を調製した。
【0056】
[非水電解質二次電池の作製]
不活性雰囲気中で、Niタブを取り付けた上記負極及びリチウム金属箔を、ポリエチレン製セパレータを介して対向配置させることにより電極体とした。当該電極体をアルミニウムラミネートフィルムで構成される電池外装体内に入れ、非水電解液を電池外装体内に注入し、電池外装体を封止して電池A1を作製した。
【0057】
実施例1及び後述の実施例、比較例の各電池について、以下の方法で評価を行った。評価結果は、負極活物質の分析結果と共に表1及び表2に示した。
【0058】
[充電容量比の評価]
・充電
0.2Itの電流で電圧が0Vになるまで定電流充電を行い、その後0.05Itの電流で電圧が0Vになるまで定電流充電を行った。
比較例1の電池B1の充電容量を100として、各電池の充電容量の比率(充電容量比)を算出した。
充電容量比(%)=(各電池の充電容量/電池B1の充電容量)×100
【0059】
[容量維持率比(サイクル特性)の評価]
・充電
0.2Itの電流で電圧が0Vになるまで定電流充電を行い、その後0.05Itの電流で電圧が0Vになるまで定電流充電を行った。
・放電
0.2Itの電流で電圧が1.0Vになるまで定電流放電を行った。
・休止
上記充電と上記放電との間の休止期間は10分とした。
電池B1の20サイクル後の容量維持率を100として、各電池の20サイクル後の容量維持率の比率(容量維持率比)を算出した。
容量維持率比(%)=(各電池の20サイクル後の容量維持率/電池B1の20サイクル後の容量維持率)×100
【0060】
[初回充放電効率の評価]
上記サイクル特性評価の1サイクル目の充電容量に対する放電容量の割合を、初回充放電効率とした。
初回充放電効率(%)=1サイクル目の放電容量/1サイクル目の充電容量×100
【0061】
[負極活物質粒子の外観評価(粒子崩壊の確認)]
1サイクルの充放電(充放電条件は上記サイクル特性の評価と同様)を行った電池を不活性雰囲気下で分解した。分解した電池から負極を取り出し、不活性雰囲気下でクロスセクションポリッシャー(日本電子製)を用いて負極活物質断面を露出させ、当該断面をSEMで観察して粒子崩壊の有無を確認した。粒子断面において、元々1つの粒子が2個以上の微粒子に割れている状態を粒子崩壊と定義した。
【0062】
<実施例2>
熱処理時間を800℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で負極活物質及び電池A2を作製した。
【0063】
<実施例3>
Li2SiO3粉末を添加した後の粉砕時間を20時間にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で負極活物質及び電池A3を作製した。
【0064】
<実施例4>
Li2SiO3粉末を添加した後の粉砕時間を10時間にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で負極活物質及び電池A4を作製した。
【0065】
<実施例5>
Li2SiO3粉末に代えてLi2Si25粉末を添加したこと以外は、実施例1と同様の方法で負極活物質及び電池A5を作製した。
【0066】
<比較例1>
Fe粉末を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で負極活物質及び電池B1を作製した。
【0067】
<比較例2>
熱処理温度を500℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で負極活物質及び電池B2を作製した。
【0068】
<比較例3>
熱処理温度を850℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で負極活物質及び電池B3を作製した。
【0069】
<比較例4>
熱処理時間を1000℃に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法で負極活物質及び電池B4を作製した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、実施例の電池A1〜A5はいずれも、容量維持率比が121%以上であり、比較例の電池B1〜B4よりも優れたサイクル特性を有していた。また、電池A1〜A5では、充放電による負極活物質の粒子崩壊がなく、高い充電容量と初回充放電効率が得られた。つまり、XRDパターンにおいて、2θ=45°付近のFeSi合金の回ピークの半値幅が0.40°以上、且つ2θ=28°付近のSiの(111)面の回ピークの半値幅が0.40°以上である負極活物質を用いることにより、充電容量及び初回充放電効率が高く、且つサイクル特性に優れた非水電解質二次電池を構築することができる。
【0072】
<実施例6>
Fe粉末の添加量を5質量%に変更(Li2SiO3が55質量%)したこと以外は、実施例1と同様の方法で負極活物質及び電池A6を作製した。
【0073】
<実施例7>
Fe粉末の添加量を6質量%に変更(Li2SiO3が54質量%)したこと以外は、実施例1と同様の方法で負極活物質及び電池A7を作製した。
【0074】
<実施例8>
Fe粉末の添加量を0.5質量%に変更(Li2SiO3が59.5質量%)したこと以外は、実施例1と同様の方法で負極活物質及び電池A8を作製した。
【0075】
<実施例9>
Fe粉末の添加量を0.02質量%に変更(Li2SiO3が59.98質量%)したこと以外は、実施例1と同様の方法で負極活物質及び電池A9を作製した。
【0076】
【表2】
【0077】
表2に示すように、実施例の電池A6〜A9(Fe含有量が0.02質量%〜6質量%である場合)についても、充電容量及び初回充放電効率が高く、且つ優れたサイクル特性が得られた。中でも、Feの含有量が0.5質量%〜5質量%である場合に特に良好な特性が得られた。
【符号の説明】
【0078】
10 負極活物質粒子、11 リチウムシリケート相、12 粒子、13 母粒子、14 導電層、15 コア粒子、16 表面層
図1
図2