特許第6613401号(P6613401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6613401
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】制御アダプタ及び電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20191125BHJP
   B25F 5/02 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   B25F5/00 C
   B25F5/00 H
   B25F5/02
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-62899(P2018-62899)
(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2019-171523(P2019-171523A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年4月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519157727
【氏名又は名称】マクセルイズミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽石 功雄
(72)【発明者】
【氏名】上條 敬一郎
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−515718(JP,A)
【文献】 特開2016−209997(JP,A)
【文献】 特開2014−018868(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/025677(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/133991(WO,A1)
【文献】 特開2011−251374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接続部を有する本体部と、前記第1接続部に係脱可能な第2接続部を有するバッテリパックと、を備えた電動工具に、着脱可能に装着される制御アダプタであって、
前記バッテリパックに対して平面視外形形状が同一に形成されており、
前記第1接続部に係脱可能な第3接続部と、前記第2接続部に係脱可能な第4接続部と、が互いに逆向きとなる面に各々設けられており、
前記第3接続部が前記第1接続部に係合され、且つ前記第4接続部が前記第2接続部に係合された状態で前記バッテリパックから前記本体部に通電可能な通電回路と、
所定のコントローラと一対一で無線通信する通信部と、を備え、
前記コントローラと前記通信部との無線通信をON・OFFとする切替スイッチのON・OFFの状態を示す表示手段が前記電動工具に装着された状態で前記本体部の作動スイッチが設けられている面に対して反対側の面に設けられていること
を特徴とする制御アダプタ。
【請求項2】
前記通信部を介して受信する前記コントローラからの所定の信号によって前記通電回路をON・OFFとする制御を行う制御部を備えていること
を特徴とする請求項1記載の制御アダプタ。
【請求項3】
前記制御部は、GPS回路およびメモリを有し、前記通信部を介して受信する前記コントローラからの所定の信号に応じて、現在または過去の位置情報を返信する制御を行うこと
を特徴とする請求項2記載の制御アダプタ。
【請求項4】
前記制御部は、検電回路を有し、前記通信部を介して受信する前記コントローラからの所定の信号に応じて、通電情報を返信する制御を行うこと
を特徴とする請求項2または請求項3記載の制御アダプタ。
【請求項5】
前記通信部は、前記電動工具に装着された状態で前記本体部および前記バッテリパックに当接しない面に設けられていること
を特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の制御アダプタ。
【請求項6】
前記電動工具は、圧縮工具、圧着工具、曲げ工具、穴あけ工具、切断工具または電線皮むき工具であること
を特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の制御アダプタ。
【請求項7】
本体部と、前記本体部に着脱可能に装着されるバッテリパックと、前記本体部と前記バッテリパックとの間に着脱可能に装着される制御アダプタと、前記制御アダプタを遠隔操作するコントローラと、を備える電動工具であって、
前記本体部は、第1接続部を有し、
前記バッテリパックは、前記第1接続部に係脱可能な第2接続部を有し、
前記制御アダプタは、
前記バッテリパックに対して平面視外形形状が同一に形成され、
互いに逆向きとなる面に設けられた、前記第1接続部に係脱可能な第3接続部と、前記第2接続部に係脱可能な第4接続部と、
前記第1接続部と前記第3接続部とが係合され、且つ前記第2接続部と前記第4接続部とが係合された状態で前記バッテリパックから前記本体部に通電可能な通電回路と、
所定のコントローラと一対一で無線通信する通信部と、を有しており、
前記コントローラと前記通信部との無線通信をON・OFFとする切替スイッチのON・OFFの状態を示す表示手段が前記電動工具に装着された状態で前記本体部の作動スイッチが設けられている面に対して反対側の面に設けられていること
を特徴とする電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に着脱可能に装着される制御アダプタ及び当該電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
活線作業は、感電の危険を伴う作業である。そのため、作業の安全性を向上させる様々な工夫がなされており、その一つに無線通信による遠隔操作技術がある。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2017−225326号公報)には、自走式送電線点検装置による遠隔操作技術が開示されている。また、電動工具について、特許文献2(特表2014−525840号公報)あるいは特許文献3(特開2017−121681号公報)には、当該工具を遠隔操作する目的ではないものの、電動工具に装着された通信アダプタから外部装置へ、バッテリ残存容量等のメンテナンス情報を無線通信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−225326号公報
【特許文献2】特表2014−525840号公報
【特許文献3】特開2017−121681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2あるいは特許文献3に例示される電動工具は、通信アダプタによる無線通信機能を備えるように設計された電動工具である。これに対し、着脱式バッテリパックによって駆動される、無線通信機能を備えていない電動工具も、広く用いられている。しかしながら、こうした無線通信機能の有無に関わらず、いずれの電動工具も、遠隔操作によって作動されるものではなかったため、遠隔操作機能を備えた電動工具の実現が望まれていた。このうち、無線通信機能を備えていない電動工具に対しては、部品の交換や改修をすることなく遠隔操作機能を持たせることができれば、コストを抑えることができるため、とりわけ望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、着脱式バッテリパックによって駆動される、無線通信機能を備えていない電動工具に対して、部品の交換や改修をすることなく遠隔操作を実現し得る着脱可能な制御アダプタを提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係る制御アダプタは、第1接続部を有する本体部と、前記第1接続部に係脱可能な第2接続部を有するバッテリパックと、を備えた電動工具に、着脱可能に装着される制御アダプタであって、前記バッテリパックに対して平面視外形形状が同一に形成されており、前記第1接続部に係脱可能な第3接続部と、前記第2接続部に係脱可能な第4接続部と、が互いに逆向きとなる面に各々設けられており、前記第3接続部が前記第1接続部に係合され、且つ前記第4接続部が前記第2接続部に係合された状態で前記バッテリパックから前記本体部に通電可能な通電回路と、所定のコントローラと一対一で無線通信する通信部と、を備え、前記コントローラと前記通信部との無線通信をON・OFFとする切替スイッチのON・OFFの状態を示す表示手段が前記電動工具に装着された状態で前記本体部の作動スイッチが設けられている面に対して反対側の面に設けられていることを要件とする。
【0009】
これによれば、無線通信機能を備えていない電動工具に対して、部品の交換や改修をすることなく、コントローラと無線通信することができる制御アダプタを電動工具における本体部とバッテリパックとの間にそのまま挟んで装着することができる。このとき、通電回路によってバッテリパックから本体部への通電が可能であるため、制御アダプタを挟んだ状態で引き続きバッテリパックによって電動工具を駆動させることができる。したがって、従来の電動工具に制御アダプタを装着するだけで、コントローラから当該工具を遠隔操作することができる。
【0010】
また、前記通信部を介して受信する前記コントローラからの所定の信号によって前記通電回路をON・OFFとする制御を行う制御部を備えていることが好ましい。これによれば、コントローラから遠隔操作することによって電動工具を作動・停止させることができる。
【0013】
また、前記制御部は、GPS回路およびメモリを有し、前記通信部を介して受信する前記コントローラからの所定の信号に応じて、現在または過去の位置情報を返信する制御を行うことが好ましい。これによれば、電動工具の位置を把握することができ、当該工具を紛失した際、速やかに発見することができる。
【0014】
また、前記制御部は、検電回路を有し、前記通信部を介して受信する前記コントローラからの所定の信号に応じて、通電情報を返信する制御を行うことが好ましい。これによれば、接触あるいは接近する外部の物体の通電状態を検知することができるため、とりわけ活線作業においては、送電線の活線状態を把握することができる。また、上記GPS機能を伴って、活線箇所を記録し、作業場所の活線状態をマッピングすることができる。
【0015】
また、前記通信部は、前記電動工具に装着された状態で前記本体部および前記バッテリパックに当接しない面に設けられていることが好ましい。これによれば、通信部とコントローラとの間で送受信される電波が本体部あるいはバッテリパックによって阻害されることを防止することができる。
【0016】
また、前記電動工具は、圧縮工具、圧着工具、曲げ工具、穴あけ工具、切断工具または電線皮むき工具であることが好ましい。これによれば、活線作業に用いられる様々な工具をコントローラから遠隔操作して作動・停止させることができる。
【0017】
次に、本発明に係る電動工具は、本体部と、前記本体部に着脱可能に装着されるバッテリパックと、前記本体部と前記バッテリパックとの間に着脱可能に装着される制御アダプタと、前記制御アダプタを遠隔操作するコントローラと、を備える電動工具であって、前記本体部は、第1接続部を有し、前記バッテリパックは、前記第1接続部に係脱可能な第2接続部を有し、前記制御アダプタは、前記バッテリパックに対して平面視外形形状が同一に形成され、互いに逆向きとなる面に設けられた、前記第1接続部に係脱可能な第3接続部と、前記第2接続部に係脱可能な第4接続部と、前記第1接続部と前記第3接続部とが係合され、且つ前記第2接続部と前記第4接続部とが係合された状態で前記バッテリパックから前記本体部に通電可能な通電回路と、所定のコントローラと一対一で無線通信する通信部と、を有しており、前記コントローラと前記通信部との無線通信をON・OFFとする切替スイッチのON・OFFの状態を示す表示手段が前記電動工具に装着された状態で前記本体部の作動スイッチが設けられている面に対して反対側の面に設けられていることを要件とする。
【0018】
これによれば、無線通信によってコントローラから遠隔操作することができる電動工具を簡易な構成によって低コストで実現することができる。したがって、活線作業に用いられる様々な工具に適用することによって活線作業の安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無線通信機能を備えていない電動工具に対し、制御アダプタを電動工具における本体部とバッテリパックとの間にそのまま挟んで装着することができ、また、通電回路によって制御アダプタを挟んだ状態でバッテリパックによって電動工具を駆動させることができる。すなわち、電動工具に元々備わっていた係合部位を利用して、制御アダプタを装着することができ、装着後も同様に、バッテリパックによって電動工具を作動させることができるため、部品の交換や改修をすることなく、制御アダプタを挟んで装着するだけで、無線通信機能を備えた電動工具を実現することができる。また、制御アダプタは通信部によってコントローラと無線通信することができるため、コントローラから遠隔操作することができる電動工具を実現することができる。したがって、本発明に係る制御アダプタは、無線通信機能を備えていない電動工具に対し、着脱式バッテリパックを備える構成であれば広く適用可能であり、部品の交換や改修をすることなく、遠隔操作が低コストで実現され、活線作業の安全性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電動工具の基本構成であって、バッテリパックが装着される前の状態を示す斜視図である。
図2】電動工具の基本構成であって、バッテリパックが装着された状態を示す斜視図である。
図3図1の電動工具に本発明の実施形態に係る制御アダプタが装着される例であって、装着前の状態を示す上方のからの斜視図である。
図4図1の電動工具に本発明の実施形態に係る制御アダプタが装着される例であって、装着前の状態を示す下方のからの斜視図である。
図5図1の電動工具に本発明の実施形態に係る制御アダプタが装着される例であって、装着後の状態を示す斜視図である。
図6図3の制御アダプタを拡大した斜視図である。
図7図3の制御アダプタを遠隔操作するコントローラの例を示す正面図である。
図8図3の制御アダプタの内部構成および制御機構の例を示すブロック図である。
図9図3の制御アダプタの内部構成および制御機構の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。最初に、本実施形態に係る制御アダプタ32が装着される電動工具10の基本構成について説明する。
【0022】
図1、2は、電動工具10の基本構成を示す斜視図であって、図1は、バッテリパックが装着される前の状態を示し、図2は、バッテリパックが装着された状態を示している。電動工具10として、以下、切断工具を例に挙げて説明する。
【0023】
図1に示す電動工具10は、当該工具の機能を発揮する本体部12と、電池が収容されるバッテリパック14とによって構成されている。本体部12底面には、係合用の凹凸部位を有する第1接続部16が設けられている。一方、バッテリパック14上面には、係合用の凸凹部位を有する第2接続部18が設けられている。ここで、第1接続部16の凹凸部位と第2接続部18の凸凹部位とは、互いに係合可能に対応する形状に構成されている。これによって、バッテリパック14を本体部12に着脱させることができる。
【0024】
ここで、本体部12は、被切断物である対象物(以下、単に「対象物」と称する)を切断する刃20を有する動作部12aと、使用時に電動工具10を手で握って支持するグリップ12bからなる。このうち、グリップ12bにおける動作部12a近傍の前方には、動作部12aを作動・停止させる作動スイッチ24が設けられている。これによって、グリップ12bを手で握った状態で指先で作動スイッチ24を操作することができる。
【0025】
次に、上記電動工具10に本発明の実施形態に係る制御アダプタ32が装着される機構について説明する。図3〜5は、電動工具10に本発明の実施形態に係る制御アダプタ32が装着される例を示す斜視図である。このうち、図3は当該制御アダプタ32が電動工具10に装着される前の状態を上方から、図4は下方から示している。また、図5は当該制御アダプタ32が電動工具10に装着された状態を示している。
【0026】
図3に示す制御アダプタ32は、電動工具10における本体部12とバッテリパック14との間に挟んで着脱可能に装着される。すなわち、制御アダプタ32は、上面には第3接続部34が設けられ、逆向きとなる底面には第4接続部36が設けられている。このうち、第3接続部34は電動工具10本体部12底面の第1接続部16に係脱可能に設けられ、第4接続部36は電動工具10バッテリパック14上面の第2接続部18に係脱可能に設けられている。
【0027】
より詳しくは、第3接続部34はバッテリパック14上面の第2接続部18と同一(係合可能に対応する場合を含む)の凸凹部位を有し(図3)、第4接続部36は本体部12底面の第1接続部16と同一(係合可能に対応する場合を含む)の凹凸部位を有している(図4)。したがって、第3接続部34の凸凹部位と第1接続部16の凹凸部位とが、第4接続部36の凹凸部位と第2接続部18の凸凹部位とが係合可能となっている。その結果、制御アダプタ32は、電動工具10における本体部12とバッテリパック14との間に挟んで着脱可能に装着される(図5)。これによって、電動工具10に元々備わっていた機構を利用して、部品の交換や改修をすることなく制御アダプタ32を装着することができる。
【0028】
なお、ここでいう第3接続部34の凸凹部位における第2接続部18の凸凹部位に対する「同一」の程度は、第2接続部18の凸凹部位が第1接続部16の凹凸部位に係合させることができ、本体部12に着脱可能に装着させることができるという作用効果を、第3接続部34の凸凹部位によっても奏することができる程度の同一性で足りる。同様にして、第4接続部36の凹凸部位における第1接続部16の凹凸部位に対する「同一」の程度は、第1接続部16の凹凸部位が第2接続部18の凸凹部位に係合させることができ、バッテリパック14に着脱可能に装着させることができるという作用効果を、第4接続部36の凹凸部位によっても奏することができる程度の同一性で足りる。したがって、完全に同一の構成を有していることまでは必要でなく、例えば、端子数等が異なっていても差し支えない(図3)。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係る制御アダプタ32および当該制御アダプタ32を遠隔操作するコントローラ38について詳しく説明する。図6は、図3の制御アダプタ32を拡大した斜視図である。図8は、当該制御アダプタ32の内部構成および制御機構の例を示すブロック図である。また、図7は、当該制御アダプタ32を遠隔操作するコントローラ38の例を示す正面図である。
【0030】
先ず、図6に示す制御アダプタ32は、バッテリパック14と概ね同一形状に形成されている。これによって、当該制御アダプタ32が本体部12とバッテリパック14との間に挟んで装着される際、本体部12からバッテリパック14に至る形状に一体感を持たせることができる。その結果、装着された制御アダプタ32が使用や保管の際に邪魔にならず、また、優れたデザイン性をも有している。なお、制御アダプタ32は、バッテリパック14に対して必ずしも厚みが同一であることは要しないが、少なくとも平面形状は同一であることが好ましい。
【0031】
ここで、制御アダプタ32の側面の後方には、制御アダプタ32と、当該制御アダプタ32を遠隔操作するコントローラ38との無線通信をON・OFFに切替える切替スイッチ40が設けられている。これによって、電動工具10本体部12の作動スイッチ24を直接操作することによる作動機構と、コントローラ38から遠隔操作することによる作動機構とを選択的に変更することができる。これら作動機構については、後述する。
【0032】
また、切替スイッチ40直下には、切替スイッチ40のON・OFFの状態、制御アダプタ32とコントローラ38との通信状態、およびコントローラ38の操作を表示する表示手段42が設けられている。これによって、作動機構の選択状態を把握することができる。また、表示手段42が後方に設けられていることによって、電動工具10のグリップ12bを握った状態で表示手段42を確認することができる。
【0033】
なお、本実施形態における表示手段42は、複数のLEDであって、上からアダプタ作動LED42a、アダプタリンクLED42b、アダプタ電源LED42cが設けられている。これらは、後述する所定の点灯方法よって上記情報を表示することができる。ただし、表示手段42はLEDに限られず、例えば文字、図形、記号等が表示されるモニタ等を用いる構成も考えられる。
【0034】
次に、図8に示す制御アダプタ32内部には、電動工具10に装着された状態でバッテリパック14から本体部12に通電可能な通電回路54を備えている。これによって、制御アダプタ32を本体部12とバッテリパック14との間に挟んだ状態で、引き続き本体部12の作動スイッチ24を操作して電動工具10を作動させることができる。
【0035】
また、制御アダプタ32内部には、コントローラ38からの所定の信号によって通電回路54をON・OFFとする制御を行う制御部56、およびコントローラ38と無線通信する通信部58が設けられている。制御アダプタ32が本体部12とバッテリパック14との間に挟んで装着されることから、通信部58は、本体部12およびバッテリパック14に当接しない面に設けられていることが好ましい。これによって、通信部58とコントローラ38との間で送受信される電波が、本体部12あるいはバッテリパック14によって阻害されることを防止することができる。
【0036】
続いて、コントローラ38について説明する。図7に示すように、本実施形態に係るコントローラ38は、リモートコントローラの一般的形状である方形に形成されている。右側面には、電源スイッチ44が設けられている。また、正面位置には、複数の操作ボタン46(第1ボタン46aと第2ボタン46b)が設けられている。その近傍には、電源スイッチ44のON・OFFの状態、コントローラ38と制御アダプタ32(通信部58)との通信状態、およびコントローラ38の操作を表示するLEDである表示部48が設けられている。これによって、当該情報を制御アダプタ32(表示手段42)のみならず、コントローラ38によっても把握することができる。また、コントローラ38内部には、制御部と電池収容部(ともに不図示)が設けられている。なお、符号50は電池残量表示部を示している。
【0037】
次に、電動工具10に装着された制御アダプタ32における制御機構および動作について説明する。先ず、図6に示す切替スイッチ40がOFFにされている場合、制御部56は作動せず、何らの制御も行われない。この場合、通電回路54によってバッテリパック14から本体部12への通電は可能であるため、本体部12の作動スイッチ24をONにすることによって電動工具10を作動させることができる。
【0038】
一方、切替スイッチ40がONにされると、制御部56による制御が開始され、制御部56によってアダプタ電源LED42cが点灯される。このときは、コントローラ38と通信部58との通信が不可能な状態(非リンク状態)である。続いて、コントローラ38の電源スイッチ44がONにされると、通信部58が起動され、コントローラ38と通信部58との通信が可能な状態(リンク状態)になる。このとき、アダプタリンクLED42bおよび表示部48が点滅(非リンク状態表示)から点灯(リンク状態表示)になるとともに、制御部56によって通電回路54がOFFにされる(以下、「通信待機状態」と称する)。通信待機状態では、本体部12の作動スイッチ24をONにしても電動工具10は作動しない。すなわち、切替スイッチ40は、制御アダプタ32の電源スイッチとしての機能を有するとともに、当該切替スイッチ40によって、電動工具10本体部12の作動スイッチ24を直接操作することによる作動機構と、コントローラ38から遠隔操作することによる作動機構とを選択的に変更することができる。
【0039】
ここで、電動工具10を遠隔操作する場合、先ず、通信待機状態で結束バンド等の固定器具(不図示)を用いて作動スイッチ24をONの状態(押したままの状態)で固定させる。続いて、電動工具10の位置決めを行う。本実施形態における切断工具では、被切断物に刃20を挟んで載置する(固定および位置決めは、安全のため非リンク状態で行うことが好ましい)。その上で、コントローラ38から制御部56を遠隔操作して、通電回路54をONにさせることによって電動工具10を作動させる。これによって、対象物を切断することができる。
【0040】
このとき、制御部56は、通信部58を介してコントローラ38からの所定の信号を受け取った場合に限って、通電回路54をONにさせる。本実施形態では、第1ボタン46a押した状態で第2ボタン46bを押し、2つの操作ボタン46を押した状態で2秒間維持することによってコントローラ38から所定の電波が送信される。当該電波を受信した通信部58からの信号によって制御部56による制御が開始され、通電回路がONにされる。これによって、誤って操作ボタン46が押された場合に電動工具10が作動されることを防止することができる。この操作の過程で、第1ボタン46aを押すとアダプタ作動LED42aが点灯する。次いで第2ボタン46bを押すとアダプタ作動LED42aが点滅する。これによって、コントローラ38による操作に対する制御アダプタ32の受信状態を把握することができる。なお、操作ボタン46の操作方法は一例であって、これに限られるものではない。
【0041】
また、通信部58は、所定のコントローラ38と一対一でのみ無線通信をすることができる。これによって、予期せぬ作動による事故を防止することができる。ただし、必ずしも一対一でのみ通信可能であることは要しない。
【0042】
さらに、電動工具10の作動を継続する(刃20による切断動作を継続する)には、コントローラ38の2つの操作ボタン46を押した状態を維持して、通信部58に対して所定の信号を送り続ける必要がある。これによって、コントローラ38から電動工具10(刃20)の作動について、開始、継続、停止の各動作を遠隔操作することができる。
【0043】
その後、電動工具10は作動が終了する(被切断物が切断される)と、本体部12のモータ21が自動停止する。当該モータ21の自動停止を検知した制御部56は、一時的にコントローラ38による遠隔操作が不可能な状態(非リンク状態)を作り出す。これに伴ってアダプタリンクLED42bおよび表示部48が点灯(リンク状態表示)から点滅(非リンク状態表示)になるため、当該表示は、切断の完了を表示するアンサーバック信号として機能する。これを合図にしてコントローラ38の2つの操作ボタン46を離すことによって、所定の信号の中断を検知した制御部56は、非リンク状態を解除(リセット)し、再びリンク状態となって通信待機状態に戻る。
【0044】
上記の通り、制御部56は、前述した切替スイッチ40のON・OFFの状態の他、制御アダプタ32とコントローラ38との通信状態、およびコントローラ38の操作を表示手段42に表示させる制御を行う。また、コントローラ38内部に設けられた制御部(不図示)も、当該情報を表示部48に表示させる制御を行う。これによって、表示手段42や表示部48から電動工具10や制御アダプタ32の状態を確認しながら電動工具10を作動させることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、変形例として、制御部56は、GPS回路60あるいは検電回路62を備えることができる。当該変形例における制御アダプタ32の内部構成および制御機構を、図6にブロック図で示す。
【0046】
本例によれば、GPS回路60によって電動工具10の位置情報を取得することができる。制御部56は、コントローラ38からの所定の操作によって出力された信号を通信部58を介して受信し、当該信号に応じてメモリ64に蓄積された現在または過去の位置情報を返信する制御を行う。本例では、コントローラ38の表示部48をモニタ等を用いる構成とすること、あるいはコントローラ38を外部の表示機器に接続すること等によって、制御アダプタ32が装着された電動工具10の位置情報を表示させることができる。これによって、電動工具10の位置を把握することができ、電動工具10を紛失した際、速やかに発見することができる。
【0047】
また、本例では、検電回路62によって電動工具10に接触あるいは接近する外部の物体の通電状態を検知することができる。制御部56は、コントローラ38からの所定の操作によって出力された信号を通信部58を介して受信し、当該信号に応じて通電情報を返信する制御を行う。本例では、コントローラ38の表示部48に、検知結果に応じた所定のLED点灯を行うこと等によって、通電情報を表示させることができる。
【0048】
これによって、対象物の通電状態を把握することができるため、とりわけ活線作業においては、送電線の活線状態を把握することができる。また、上記GPS機能を伴って、活線箇所を記録し、作業場所の活線状態をマッピングすることができる。
【0049】
なお、本例において、現在の位置情報あるいは通電情報のみの取得を目的とする場合、メモリは必ずしも必要ではない。この場合、メモリを介さずGPS回路あるいは通電回路から直接に各情報がコントローラへ返信される。
【0050】
以上、説明した通り、本発明に係る制御アダプタによれば、無線通信機能を備えていない電動工具に対し、制御アダプタを電動工具における本体部とバッテリパックとの間にそのまま挟んで装着することができ、また、通電回路によって制御アダプタを挟んだ状態でバッテリパックによって電動工具を駆動させることができる。すなわち、電動工具に元々備わっていた係合部位を利用して、制御アダプタを装着することができ、装着後も同様に、バッテリパックによって電動工具を作動させることができるため、部品の交換や改修をすることなく、制御アダプタを挟んで装着するだけで、無線通信機能を備えた電動工具を実現することができる。また、制御アダプタは通信部によってコントローラと無線通信することができるため、コントローラから遠隔操作することができる電動工具を実現することができる。したがって、本発明に係る制御アダプタは、無線通信機能を備えていない電動工具に対し、着脱式バッテリパックを備える構成であれば広く適用可能であり、部品の交換や改修をすることなく、遠隔操作が低コストで実現され、活線作業の安全性をさらに向上させることができる。
【0051】
また、本発明に係る制御アダプタは、切替スイッチを備えることによって電動工具本体部の作動スイッチを直接操作することによる作動機構と、コントローラから遠隔操作することによる作動機構とを選択的に変更することができる。これによって、切替スイッチをONにして通信待機状態に切替えて安全に電動工具の位置決めを行うことができ、その上で操作ボタンに所定の操作を行うことによって工具を遠隔操作して安全に作動させることができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、電動工具として、切断工具を例に挙げて説明したが、本発明の実施形態に係る制御アダプタは、切断工具に限られず、圧縮工具、圧着工具、曲げ工具、穴あけ工具、電線皮むき工具等、着脱式バッテリパックによって駆動される電動工具であれば広く適用可能である。本発明に係る制御アダプタが、活線作業に用いられる様々な電動工具に適用されることで、作業の安全性のさらなる向上が可能となる。
【0053】
最後に、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 電動工具
12 本体部
14 バッテリパック
16 第1接続部
18 第2接続部
24 作動スイッチ
32 制御アダプタ
34 第3接続部
36 第4接続部
38 コントローラ
40 切替スイッチ
42 表示手段
44 電源スイッチ
46 操作ボタン
48 表示部
54 通電回路
56 制御部
58 通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9