特許第6613489号(P6613489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6613489
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】起動回路
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20191125BHJP
【FI】
   B60R16/02 645A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-27586(P2018-27586)
(22)【出願日】2018年2月20日
(65)【公開番号】特開2019-142327(P2019-142327A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2018年2月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
(74)【代理人】
【識別番号】100088199
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 岑生
(74)【代理人】
【識別番号】100094916
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 啓吾
(74)【代理人】
【識別番号】100127672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 憲治
(72)【発明者】
【氏名】末竹 成規
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−271456(JP,A)
【文献】 特開2005−186685(JP,A)
【文献】 特開2002−158574(JP,A)
【文献】 特開2010−142002(JP,A)
【文献】 特開平11−187644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから供給されるイグニッション電圧が予め定められた起動判定値以上であるときに起動信号を出力する起動回路において、
前記イグニッション電圧が印加される入力端子と、
前記入力端子に接続された第1のラインと、
前記起動信号を出力する出力端子と、
コレクタ端子又はドレイン端子が前記出力端子に接続され、オンになったときに前記出力端子に前記起動信号を出力するスイッチング素子と、
前記第1のラインとグランドとの間で逆方向に接続され、予め定められたクランプ電圧でクランプする定電圧素子と、
前記定電圧素子と直列に接続された抵抗と、
前記定電圧素子と前記抵抗の接続点を前記スイッチング素子のベース端子又はゲート端子に接続する第2のラインと、
前記スイッチング素子と並列に接続され、前記スイッチング素子のコレクタ電圧によりオンになる第2のスイッチング素子とを備え、
前記定電圧素子は前記第1のラインとグランドとの間で1つ接続され、
前記第2のスイッチング素子のコレクタ端子又はドレイン端子は、抵抗を介して前記第2のラインに接続されて、オンとなっている前記第2のスイッチング素子により前記スイッチング素子のベース・エミッタ間電圧又はゲート・ソース間電圧が拡大されることを特徴とする起動回路。
【請求項2】
前記スイッチング素子は、エミッタ端子が前記第1のラインに接続されたPNPトランジスタであり、前記抵抗は、前記定電圧素子と前記第1のラインの間に接続されている請求項1に記載の起動回路。
【請求項3】
前記第2のスイッチング素子は、エミッタ端子が前記グランドに接続されたNPNトランジスタである請求項1または2に記載の起動回路。
【請求項4】
前記スイッチング素子は、エミッタ端子が前記グランドに接続されたNPNトランジスタであり、前記抵抗は、前記定電圧素子と前記グランドの間に接続されている請求項1に記載の起動回路。
【請求項5】
前記第2のスイッチング素子は、エミッタ端子が前記第1のラインに接続されたPNPトランジスタである請求項1または4に記載の起動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、車両に搭載され、イグニッション信号により電気駆動部品の起動及び停止を行う制御装置に用いられる起動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された電気駆動部品の起動及び停止を制御する制御装置に用いられる起動回路は、電気駆動部品を起動/停止させるトランジスタを有し、このトランジスタのオン/オフを切り替えることで電気駆動部品を起動/停止させている。このような起動回路は、イグニッションスイッチを介してバッテリーラインと接続され、上位コントローラからのオン指令によってバッテリーラインと導通し、トランジスタのベース端子に所定値以上の電圧を印加させてトランジスタをオンにするとともに、上位コントローラからのオフ指令によりバッテリーラインから遮断されて、トランジスタをオフにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−184084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなものでは、イグニッションスイッチが容量性等の負荷と接続されている場合、負荷の影響により電圧の応答性が悪化し、トランジスタがオフに切り替わるまでの時間が長くなるなど、電気駆動部品の停止判定に対する遅れ要素が発生する。このため、起動判定値が低くせざるを得なくなり起動/停止判定が遅れ、上位コントローラのオフ指令に対する遮断時間遅れが発生してしまう。なお、比較器を用いることで起動判定値を任意に設定することもできるが、比較器の電源構成や起動判定値の設定など、構成が複雑となるとともに、回路の大型化によるコスト増大、部品の信頼性の低下を招いてしまう。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、簡単な構成で起動判定値を任意に設定可能とし、遮断時間遅れを抑制することができる起動回路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される起動回路は、バッテリから供給されるイグニッション電圧が予め定められた起動判定値以上であるときに起動信号を出力する起動回路において、イグニッション電圧が印加される入力端子と、入力端子に接続された第1のラインと、起動信号を出力する出力端子と、コレクタ端子又はドレイン端子が前記出力端子に接続され、オンになったときに出力端子に起動信号を出力するスイッチング素子と、第1のラインとグランドとの間で逆方向に接続され、予め定められたクランプ電圧でクランプする定電圧素子と、定電圧素子と直列に接続された抵抗と、定電圧素子と抵抗の接続点を前記スイッチング素子のベース端子又はゲート端子に接続する第2のラインと、スイッチング素子と並列に接続され、スイッチング素子のコレクタ電圧によりオンになる第2のスイッチング素子とを備え、定電圧素子は第1のラインとグランドとの間で1つ接続され、第2のスイッチング素子のコレクタ端子又はドレイン端子は、抵抗を介して第2のラインに接続されて、オンとなっている第2のスイッチング素子によりスイッチング素子のベース・エミッタ間電圧又はゲート・ソース間電圧が拡大されるものである。

【発明の効果】
【0007】
本願に開示される起動回路によれば、簡単な構成で起動判定値を任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における起動回路を示す回路図である。
図2】実施の形態2における起動回路を示す回路図である。
図3】実施の形態3における起動回路を示す回路図である。
図4】実施の形態4における起動回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1を図1に基づいて説明する。図1は、実施の形態1における起動回路を示す回路図である。起動回路10は、上位コントローラ90と接続され、イグニッション信号IGが入力されるイグニッション信号入力端子11と、後段インターフェース(図示なし)に接続され、出力電圧V1、すなわち起動信号を出力する出力端子12と、コレクタ端子が出力端子12と接続されたPNPトランジスタTr1、すなわちスイッチング素子と、PNPトランジスタTr1のエミッタ端子とイグニッション信号入力端子11とを接続する高電位ラインLH、すなわち第1のラインと、カソード端子が抵抗R1を介して高電位ラインLHに接続され、アノード端子がグランドGNDに接続されたツェナーダイオードZ1、すなわち逆方向に接続された定電圧素子とを備えている。抵抗R1及びツェナーダイオードZ1の接続点とPNPトランジスタTr1のベース端子とは、抵抗R2が直列に設けられたラインL1、すなわち第2のラインにより接続されている。
【0010】
上位コントローラ90は、イグニッション信号IGを起動回路10に送信するもので、バッテリBattと、イグニッション信号IGを外部に出力するイグニッション信号出力端子91と、バッテリBattとイグニッション信号出力端子91との間に接続されたイグニッションスイッチSWを備え、イグニッションスイッチSWがオンになるとバッテリBattとイグニッション信号出力端子91との間が導通し、イグニッション信号IGが起動回路10に送信される。また、イグニッションスイッチSWがオフになるとバッテリBattとイグニッション信号出力端子91との間が遮断され、イグニッション信号IGの送信が停止する。なお、バッテリBattのバッテリ電圧はツェナーダイオードZ1のツェナー電圧Vz1、すなわちクランプ電圧よりも十分に大きい。
【0011】
次に、動作について説明する。イグニッションスイッチSWがオンになると、イグニッション信号出力端子91から起動回路10にイグニッション信号IGが送信され、イグニッション信号入力端子11にイグニッション電圧Vigが印加される。イグニッション電圧Vigは、バッテリBattのバッテリ電圧と等しくなって安定し、ツェナーダイオードZ1に印加される電圧がツェナー電圧Vz1でクランプされて、高電位ラインLHとラインL1の間にVig−Vz1の電位差が生じる。この結果、PNPトランジスタTr1のベース・エミッタ間にベース・エミッタ間飽和電圧Vbe以上の電圧が印加されてベース・エミッタ間に電流が流れ、PNPトランジスタTr1がオンになる。PNPトランジスタTr1がオンになるとコレクタ電圧がHとなり、出力電圧V1として出力端子12から出力されて、後段インターフェースでH判定がなされて起動処理が行われる。PNPトランジスタTr1がオンのとき、PNPトランジスタTr1のベース・エミッタ間電圧はベース・エミッタ間飽和電圧Vbeでほぼ一定となる。
【0012】
イグニッションスイッチSWに容量性の負荷(図示なし)が接続されている場合、負荷の影響によりイグニッションスイッチSWをオンにしてからイグニッション電圧Vigがバッテリ電圧に達するまでには所定の時間がかかる。ここで、イグニッション電圧Vigとツェナー電圧Vz1の差がベース・エミッタ間飽和電圧Vbeより小さいときはベース・エミッタ間に電流が流れずPNPトランジスタTr1はオフのままである。イグニッション電圧Vigとツェナー電圧Vz1の差がベース・エミッタ間飽和電圧Vbe以上になると、ベース・エミッタ間に電流が流れてPNPトランジスタTr1はオンになる。
【0013】
イグニッションスイッチSWがオフになると、イグニッション電圧Vigはゼロになるが、イグニッションスイッチSWに容量性の負荷が接続されている場合、イグニッションスイッチSWをオフにしてからイグニッション電圧Vigがゼロになるまでには所定の時間かかる。ここで、イグニッション電圧Vigとツェナー電圧Vz1の差がベース・エミッタ間飽和電圧Vbe以上であるときは、ベース・エミッタ間に電流が流れるのでPNPトランジスタTr1はオンのままである。イグニッション電圧Vigとツェナー電圧Vz1の差がベース・エミッタ間飽和電圧Vbeを下回ると、ベース・エミッタ間に電流が流れなくためPNPトランジスタTr1がオフになり、後段インターフェースに送られる出力電圧V1がゼロになって停止処理が行われる。
【0014】
このように、イグニッション電圧Vigとツェナー電圧Vz1の差がベース・エミッタ間飽和電圧Vbe以上のときはPNPトランジスタTr1がオンになって起動処理が行われ、イグニッション電圧Vigとツェナー電圧Vz1の差がベース・エミッタ間飽和電圧Vbeより小さいときPNPトランジスタTr1がオフになって停止処理が行われるため、起動回路10における起動判定値及び停止判定値は、ツェナー電圧Vz1とベース・エミッタ間飽和電圧Vbeの和である。ここで、ベース・エミッタ間飽和電圧VbeはPNPトランジスタTr1の特性によりほぼ一定に決まるが、ツェナー電圧Vz1は任意の値に調整することが可能であるので、起動回路10の起動判定値はツェナー電圧Vz1を調整することで任意に設定可能である。
【0015】
実施の形態1によれば、簡単な構成で起動判定値を任意に設定可能とし、遮断時間遅れを抑制することができる。より具体的には、バッテリから供給されるイグニッション電圧が予め定められた起動判定値以上であるときに起動信号を出力する起動回路において、ツェナーダイオードのツェナー電圧とPNPトランジスタのベース・エミッタ間飽和電圧の和がイグニッション電圧の起動判定値となっており、所望のツェナー電圧を持つツェナーダイオードを用いることで起動判定値を調整できる。このように、簡単な構成で起動判定値を任意に設定可能であるため、起動判定値を適切に設定することで上位コントローラからのオフ指令に対する遮断時間遅れを抑制することができる。また、比較器などの機器を用いることがなく、回路規模を縮小することができるため製品サイズをコンパクトにすることができるとともに、低コスト化及び信頼性向上を図ることができる。
【0016】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2を図2に基づいて説明する。図2は、実施の形態2における起動回路を示す回路図である。なお、図1と同一又は相当部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。起動回路20は、上位コントローラ90と接続され、イグニッション信号IGが入力されるイグニッション信号入力端子21と、後段インターフェース(図示なし)に接続され、出力電圧V1を出力する出力端子22と、出力端子22に接続されたラインL2にコレクタ端子が接続されたPNPトランジスタTr1と、PNPトランジスタTr1のエミッタ端子とイグニッション信号入力端子21とを接続する高電位ラインLHと、カソード端子が抵抗R1を介して高電位ラインLHに接続され、アノード端子がグランドGNDに接続されたツェナーダイオードZ1とを備えている。抵抗R1及びツェナーダイオードZ1の接続点とPNPトランジスタTr1のベース端子とは、抵抗R2が直列に設けられたラインL1により接続されている。
【0017】
ツェナーダイオードZ1とPNPトランジスタTr1との間には、抵抗R3とNPNトランジスタTr2、すなわち第2のスイッチング素子の直列接続体が、ツェナーダイオードZ1及びPNPトランジスタTr1と並列に接続されている。NPNトランジスタTr2は、コレクタ端子が抵抗R3及びラインL1を介してPNPトランジスタTr1のベース端子に接続され、ベース端子がラインL2を介してPNPトランジスタTr1のコレクタ端子及び出力端子22に接続されている。また、エミッタ端子がグランドGNDに接続されている。ラインL2は、抵抗R4を介してグランドGNDに接続されている。
【0018】
次に、動作について説明する。実施の形態1と同様に、イグニッションスイッチSWがオンになるとイグニッション信号入力端子21にイグニッション電圧Vigが印加され、ツェナーダイオードZ1に印加される電圧がツェナー電圧Vz1でクランプされる。高電位ラインLHとラインL1の間にVig−Vz1の電位差が生じてPNPトランジスタTr1のベース・エミッタ間にベース・エミッタ間飽和電圧Vbe以上の電圧が印加されてPNPトランジスタTr1がオンになる。また、PNPトランジスタTr1がオンになることでコレクタ電圧がHとなり出力電圧V1として出力端子22から出力され、後段インターフェースでH判定がなされて起動処理が行われる。
【0019】
PNPトランジスタTr1がオンになってコレクタ電圧が生じると、抵抗R4における電圧降下によりラインL2とグランドGNDとの間に電位差が生じ、NPNトランジスタTr2のベース・エミッタ間にベース・エミッタ間飽和電圧Vbe2以上の電圧が印加されてNPNトランジスタTr2がオンになる。NPNトランジスタTr2がオンになると、抵抗R1、抵抗R3及びNPNトランジスタTr2を通って高電位ラインLHからグランドGNDに電流が流れ、抵抗R1における電圧降下により高電位ラインLHとラインL1の間に電位差が生じる。この結果、PNPトランジスタTr1のベース・エミッタ間電圧が拡大し、PNPトランジスタTr1をオンの状態で維持するために必要なイグニッション電圧Vigが小さくなるので、PNPトランジスタTr1をオフにする停止判定値が起動判定値よりも小さくなり、ヒステリシスが発生する。
その他については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0020】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0021】
また、簡単な構成で起動時にヒステリシスを発生させるため、低コストでチャタリングを回避し、信頼性をさらに向上させることができる。より具体的には、イグニッションスイッチがオンになったときに出力電圧を発生させるPNPトランジスタのコレクタ端子と、これと並列に接続されたNPNトランジスタのベース端子とを接続し、このNPNトランジスタのコレクタ端子とPNPトランジスタのベース端子を接続した。これにより、PNPトランジスタがオンになるとNPNトランジスタもオンになり、PNPトランジスタのベース・エミッタ間電圧を拡大させる。このため、PNPトランジスタをオンの状態で維持するために必要なイグニッション電圧が下がり、停止判定値が起動判定値よりも小さくなった。このようにヒステリシスを発生させることにより、ノイズ等の影響により起動判定値付近でイグニッション電圧が振動してもチャタリングが発生しにくくなるので、信頼性がさらに向上している。
【0022】
実施の形態3.
以下に、実施の形態3を図3に基づいて説明する。図3は、実施の形態3における起動回路を示す回路図である。なお、図1図2と同一又は相当部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。起動回路30は、上位コントローラ90と接続され、イグニッション信号IGが入力されるイグニッション信号入力端子31と、後段インターフェース(図示なし)に接続され、出力電圧V2、すなわち起動信号を出力する出力端子32と、コレクタ端子が出力端子32と接続され、エミッタ端子がグランドGNDに接続されたNPNトランジスタTr3、すなわちスイッチング素子と、高電位ラインLHを介してカソード端子がイグニッション信号入力端子31と接続され、アノード端子が抵抗R5を介してグランドGNDに接続されたツェナーダイオードZ2、すなわち定電圧素子とを備えている。ツェナーダイオードZ2のツェナー電圧V2は、バッテリBattのバッテリ電圧よりも小さい。ツェナーダイオードZ2及び抵抗R5の接続点とNPNトランジスタTr3のベース端子とは、抵抗R6が直列に設けられたラインL3、すなわち第2のラインにより接続されている。ラインL3は、抵抗R5を介してグランドGNDに接続されている。
【0023】
次に、動作について説明する。イグニッションスイッチSWがオンになると、イグニッション信号出力端子91から起動回路30にイグニッション信号IGが送信され、イグニッション信号入力端子31にイグニッション電圧Vigが印加される。イグニッション電圧Vigは、バッテリBattのバッテリ電圧と等しくなって安定し、ツェナーダイオードZ2に印加される電圧がツェナー電圧Vz2、すなわちクランプ電圧でクランプされて、ラインL3とグランドGNDの間にはVig−Vz2の電位差が生じる。この結果、NPNトランジスタTr3のベース・エミッタ間にベース・エミッタ間飽和電圧Vbe3以上の電圧が印加されてベース・エミッタ間に電流が流れ、NPNトランジスタTr3がオンになる。NPNトランジスタTr3がオンになるとコレクタ電圧がLとなり、出力電圧V2として出力端子32から出力されて、後段インターフェースでL判定がなされて起動処理が行われる。NPNトランジスタTr3がオンのとき、NPNトランジスタTr3のベース・エミッタ間電圧はベース・エミッタ間飽和電圧Vbe3でほぼ一定となる。
【0024】
イグニッションスイッチSWをオンにしてからイグニッション電圧Vigがバッテリ電圧に達するまでに所定の時間がかかる場合、実施の形態1と同様に、イグニッション電圧Vigとツェナー電圧Vz2の差がベース・エミッタ間飽和電圧Vbe3より小さいときNPNトランジスタTr3はオフのままであり、イグニッション電圧Vigとツェナー電圧Vz2の差がベース・エミッタ間飽和電圧Vbe3以上にNPNトランジスタTr3がオンになる。イグニッションスイッチSWをオフにした場合も実施の形態1と同様に、イグニッション電圧Vigとツェナー電圧Vz2の差がベース・エミッタ間飽和電圧Vbe3以上であるときNPNトランジスタTr3はオンのままであり、イグニッション電圧Vigとツェナー電圧Vz2の差がベース・エミッタ間飽和電圧Vbe3を下回るとNPNトランジスタTr3がオフになり、後段インターフェースに送られる出力電圧V1がゼロになって停止処理が行われる。このように、起動回路30における起動判定値及び停止判定値はツェナー電圧Vz2とベース・エミッタ間飽和電圧Vbe3の和となる。ベース・エミッタ間飽和電圧Vbe3はNPNトランジスタTr3の特性によりほぼ一定に決まるが、ツェナー電圧Vz2は任意の値に調整することが可能であるので、起動回路30の起動判定値及び停止判定値はツェナー電圧Vz2を調整することで任意に設定可能である。
その他については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0025】
実施の形態3によれば、後段インターフェースでL判定が行われる場合に実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0026】
実施の形態4.
以下に、実施の形態4を図4に基づいて説明する。図4は、実施の形態4における起動回路を示す回路図である。なお、図1から図3と同一又は相当部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。起動回路40は、上位コントローラ90と接続され、イグニッション信号IGが入力されるイグニッション信号入力端子41と、後段インターフェース(図示なし)に接続され、出力電圧V2を出力する出力端子42と、出力端子42に接続されたラインL4にコレクタ端子が接続され、エミッタ端子がグランドGNDに接続されたNPNトランジスタTr3と、抵抗R8が設けられ、イグニッション信号入力端子41とラインL4とを接続する高電位ラインLHと、カソード端子がイグニッション信号入力端子1と接続され、アノード端子が抵抗R5を介してグランドGNDに接続されたツェナーダイオードZ2とを備えている。ツェナーダイオードZ2及び抵抗R5の接続点とNPNトランジスタTr3のベース端子とは、抵抗R6が直列に設けられたラインL3により接続されている。
【0027】
ツェナーダイオードZ2とPNPトランジスタTrとの間には、PNPトランジスタTr4、すなわち第2のスイッチング素子と抵抗R7の直列接続体がツェナーダイオードZ2及びNPNトランジスタTr3と並列に接続されている。PNPトランジスタTr4は、コレクタ端子が抵抗R7及びラインL3を介してNPNトランジスタTr3のベース端子に接続され、ベース端子がラインL4を介してNPNトランジスタTr3のコレクタ端子及び出力端子42に接続されている。また、エミッタ端子が高電位ラインLHに接続されている。


【0028】
次に、動作について説明する。実施の形態3と同様に、イグニッションスイッチSWがオンになるとイグニッション信号入力端子41にイグニッション電圧Vigが印加され、ツェナーダイオードZ2に印加される電圧がツェナー電圧Vz2でクランプされる。ラインL3とグランドGNDの間にVig−Vz2の電位差が生じてNPNトランジスタTr3のベース・エミッタ間にベース・エミッタ間飽和電圧Vbe3以上の電圧が印加されてNPNトランジスタTr3がオンになる。また、NPNトランジスタTr3がオンになることでコレクタ電圧がLとなり出力電圧V2として出力端子42から出力され、後段インターフェースでL判定がなされて起動処理が行われる。
【0029】
NPNトランジスタTr3がオンになってコレクタ電圧が生じると、抵抗R8における電圧降下によりラインL4と高電位ラインLHとの間に電位差が生じ、PNPトランジスタTr4のベース・エミッタ間にベース・エミッタ間飽和電圧Vbe4以上の電圧が印加されてPNPトランジスタTr4がオンになる。PNPトランジスタTr4がオンになると、PNPトランジスタTr4、抵抗R7及び抵抗R5を通って高電位ラインLHからグランドGNDに電流が流れ、抵抗R5における電圧降下によりラインL3とグランドGNDの間に電位差が生じる。この結果、NPNトランジスタTr3のベース・エミッタ間電圧が拡大し、NPNトランジスタTr3をオンの状態で維持するために必要なイグニッション電圧Vigが小さくなるので、NPNトランジスタTr3をオフにする停止判定値が起動判定値よりも小さくなり、ヒステリシスが発生する。
その他については実施の形態3と同様であるので、その説明を省略する。
【0030】
実施の形態4によれば、後段インターフェースでL判定が行われる場合に実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0031】
なお、各実施の形態では定電圧素子として1つのツェナーダイオードを用いているが、降伏電圧を所定の値に設定できるものであればよく、複数のツェナーダイオードを直列に接続したものを用いてもよい。また、アバランシェダイオードを用いてもよい。また、スイッチング素子及び第2のスイッチング素子としてPNPトランジスタ及びNPNトランジスタ用いたが、これらをMOSFETなどの他の半導体スイッチング素子に置き換えてもよい。MOSFETを用いる場合、PNPトランジスタ及びNPNトランジスタのエミッタ端子、ベース端子、コレクタ端子は、MOSFETのソース端子、ゲート端子、ドレイン端子にそれぞれ置き換わり、ベース・エミッタ間電圧は、ゲート・ソース間電圧に置き換わる。
【0032】
なお、本願において以上のとおり開示した技術は、各実施の形態や構成を適宜組み合わせたり、構成を一部変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
10、20、30、40 起動回路、11、21、31、41 イグニッション信号入力端子、12、22、32、42 出力端子、90 上位コントローラ、91 イグニッション信号出力端子、Batt バッテリ、R1、R5 抵抗、Tr1、Tr4 PNPトランジスタ、Tr2、Tr3 NPNトランジスタ、Z1、Z2 ツェナーダイオード、GND グランド、LH 高電位ライン、L1〜L4 ライン、V1、V2 出力電圧
図1
図2
図3
図4