特許第6613627号(P6613627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6613627核酸増幅の成否判定方法、及び核酸増幅の検査キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6613627
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】核酸増幅の成否判定方法、及び核酸増幅の検査キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20191125BHJP
【FI】
   C12Q1/6806 ZZNA
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-108920(P2015-108920)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-220589(P2016-220589A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆明
(72)【発明者】
【氏名】一色 淳憲
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−270867(JP,A)
【文献】 特開2001−275700(JP,A)
【文献】 特開2003−289880(JP,A)
【文献】 Nucleic Acids Research, 1999, Vol.27, No.19, e28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00− 3/00
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCR法による核酸増幅の検査方法であって、
検出対象の試料と、
前記検出対象の試料のDNAにおける第一の増幅対象領域を増幅するための第一のプライマーセットと、
同一の塩基配列からなるフォワードプライマーとリバースプライマーを備えた第二のプライマーセットと、
内部標準用のDNAの二本鎖のそれぞれに、前記第二のプライマーセットにより増幅される第二の増幅対象領域を隔てて前記同一の塩基配列と相補的な塩基配列、もしくは前記第二の増幅対象領域を増幅可能な前記同一の塩基配列と相同性を有する塩基配列相補的な塩基配列を挿入して得られた人工合成DNAと、を用いて、
前記第一のプライマーセットによって、前記第一の増幅対象領域における核酸を増幅させると共に、
前記第二のプライマーセットによって、前記第二の増幅対象領域における核酸を増幅させ、当該第二の増幅対象領域における核酸の増幅産物の有無にもとづいて、核酸増幅の成否を判定する
ことを特徴とする核酸増幅の検査方法。
【請求項2】
前記第二のプライマーセットとして、前記第一のプライマーセットにおけるいずれか一方のプライマーの塩基配列と、それぞれ同一の塩基配列からなるフォワードプライマーとリバースプライマーを用いる
ことを特徴とする請求項記載の核酸増幅の検査方法。
【請求項3】
同一の塩基配列からなるフォワードプライマーとリバースプライマーを備えたプライマーセットと、
内部標準用のDNAの二本鎖のそれぞれに、前記プライマーセットにより増幅される増幅対象領域を隔てて前記同一の塩基配列と相補的な塩基配列、もしくは前記増幅対象領域を増幅可能な前記同一の塩基配列と相同性を有する塩基配列相補的な塩基配列を挿入して得られた人工合成DNAと、を含むことを特徴とする核酸増幅の検査キット。
【請求項4】
前記同一の塩基配列が、検出対象の試料のDNAにおける増幅対象領域を増幅するためのプライマーセットのいずれか一方の塩基配列と同一の塩基配列、もしくは前記増幅対象領域を増幅可能な前記プライマーセットのいずれか一方の塩基配列と相同性を有する塩基配列、であることを特徴とする請求項記載の核酸増幅の検査キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物の種類等を遺伝子配列にもとづき特定する遺伝子検査技術に関し、特に核酸増幅反応における非特異的な増幅を低減して、検査精度を高める核酸増幅方法、核酸増幅の成否判定方法、及び核酸増幅の検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品検査や環境検査等において、食品や環境に存在する微生物などの生物の種類等を遺伝子配列にもとづき特定するために、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法などの核酸増幅法を用いて、標的とする遺伝子におけるDNAを増幅し、その増幅産物を検出して、生物の種類等を特定することが行われている。
PCR法では、2種類の異なるプライマー、すなわちフォワードプライマーとリバースプライマーからなるプライマーセットが使用され、これらを起点として核酸合成酵素により塩基が繋ぎ合わされて、プライマーセットに特有の大きさの増幅産物が生成される。そして、増幅産物の大きさを電気泳動法などによって測定することにより、その増幅産物に対応する生物の種類等が特定される。
【0003】
ところで、複数の増幅対象領域(増幅の標的とする遺伝子領域)を一つの反応液で同時に増幅させる場合、その増幅対象領域を増幅するために用いる複数種類のプライマーセットを反応液に添加する必要がある。しかしながら、核酸増幅反応においてプライマーの種類数が増加すると、非特異的な増幅産物の生じる可能性が高くなり、検査を正確に行えないケースが増加するという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2007−75052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、核酸増幅反応において非特異的な増幅産物が生じる可能性を低減する手法について鋭意研究し、1種類のみのプライマーを用いて、PCRを実現可能にすることに想到した。すなわち、従来のように、フォワードプライマーとリバースプライマーとして、2種類の異なる塩基配列からなるものを用いるのではなく、同一の塩基配列からなるものを用いてPCRを行う方法について研究し、1種類のみのプライマーを用いてPCRを行うことに成功した。これにより、PCRに用いるプライマーの種類数を低減することができ、非特異的な増幅産物が生じる可能性を低減することが可能となった。
【0006】
ここで、フォワードプライマーとリバースプライマーとして同一の塩基配列からなるものを用いて増幅対象領域を増幅可能にするためには、標的とする遺伝子の二本鎖のそれぞれに、増幅対象領域を隔てて当該同一の塩基配列に対して相補的な塩基配列が存在している必要がある。しかしながら、検出対象生物の遺伝子において、このような塩基配列を見いだすことは、容易ではなかった。
【0007】
そこで、本発明者らは、このような構成を備えた人工合成DNAを製造した。そして、この人工合成DNAを試料として、1種類のみのプライマー(以下、人工合成DNA検出用プライマー)を用いてPCRを実行することにより、対象とする増幅産物を得ることに成功した。
【0008】
また、このような人工合成DNAと人工合成DNA検出用プライマーを、試料検出のためのPCRを行うに際して内部標準として利用することで、使用するプライマーの種類数を減らしつつ、PCR自体が成功したか否かを確認可能にすることに成功した。
このようにPCR自体が成功したか否かを確認可能にすることで、陰性の結果がでた場合に、それがPCRの失敗によるものではなく、試料が存在しなかったことによるものであることを確認することが可能となった。
【0009】
また、人工合成DNA検出用プライマーとして、試料を検出するためのプライマー(以下、試料検出用プライマー)セットの一方と同一の塩基配列からなるものを用いると共に、人工合成DNAとして、二本鎖のそれぞれに、増幅対象領域を隔てて人工合成DNA検出用プライマーの塩基配列に対して相補的な塩基配列を挿入したものを製造することもできる。
このような人工合成DNAと人工合成DNA検出用プライマーを内部標準として利用すれば、PCRに用いるプライマーの種類数をさらに減らしてPCR自体が成功したか否かを確認でき、非特異的な増幅産物が生じる可能性を一層低減することが可能となる。
【0010】
ここで、特許文献1には、単一蛍光標識オリゴヌクレオチドを用いた核酸の検出法が開示されている。しかしながら、この文献には、フォワードプライマーとリバースプライマーとして、同一の塩基配列からなるものを用いてPCRを行うことについては、記載も示唆もされていない。その他に、本発明と同一又は近い技術が開示された先行文献は、見あたらなかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、核酸増幅反応において、増幅対象領域を1種類のみのプライマーを用いて増幅することで、非特異的な増幅産物が生じる可能性を低減することが可能な核酸増幅方法、核酸増幅の成否判定方法、及び核酸増幅の検査キットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の核酸増幅の成否判定方法は、PCR法による核酸増幅の検査方法であって、検出対象の試料と、前記検出対象の試料のDNAにおける第一の増幅対象領域を増幅するための第一のプライマーセットと、同一の塩基配列からなるフォワードプライマーとリバースプライマーを備えた第二のプライマーセットと、内部標準用のDNAの二本鎖のそれぞれに、前記第二のプライマーセットにより増幅される第二の増幅対象領域を隔てて前記同一の塩基配列と相補的な塩基配列、もしくは前記第二の増幅対象領域を増幅可能な前記同一の塩基配列と相同性を有する塩基配列と相補的な塩基配列、を挿入して得られた人工合成DNAとを用いて、前記第一のプライマーセットによって、前記第一の増幅対象領域における核酸を増幅させると共に、前記第二のプライマーセットによって、前記第二の増幅対象領域における核酸を増幅させ、当該第二の増幅対象領域における核酸の増幅産物の有無にもとづいて、核酸増幅の成否を判定する方法としてある。
【0014】
さらに、本発明の核酸増幅の検査キットは、同一の塩基配列からなるフォワードプライマーとリバースプライマーを備えたプライマーセットと、内部標準用のDNAの二本鎖のそれぞれに、前記プライマーセットにより増幅される増幅対象領域を隔てて前記同一の塩基配列と相補的な塩基配列、もしくは前記増幅対象領域を増幅可能な前記同一の塩基配列と相同性を有する塩基配列と相補的な塩基配列、を挿入して得られた人工合成DNAとを含む構成としてある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、核酸増幅反応において、増幅対象領域を1種類のみのプライマーを用いて増幅することで、非特異的な増幅産物が生じる可能性を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】試料のDNA及び人工合成DNAのそれぞれの増幅反応の結果と、PCRの成否及び試料の存否との関係を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る核酸増幅方法、核酸増幅の成否判定方法、及び核酸増幅の検査キットの実施例で用いられた人工合成DNA、人工合成DNA検出用プライマー、及び試料検出用プライマーの塩基配列を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る核酸増幅方法の実施例1における人工合成DNAの増幅産物の検出結果を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る核酸増幅の成否判定方法、及び核酸増幅の検査キットの実施例2における試料のDNA及び人工合成DNAの増幅産物の検出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る核酸増幅方法、核酸増幅の成否判定方法、及び核酸増幅の検査キットについて、詳細に説明する。
本実施形態に係る核酸増幅方法は、PCR法による核酸増幅方法であって、プライマーセットとして同一の塩基配列からなるフォワードプライマーとリバースプライマーを用いると共に、核酸増幅対象の試料として、試料のDNAの二本鎖のそれぞれに、プライマーセットの増幅対象領域を隔てて前記同一の塩基配列もしくは前記増幅対象領域を増幅可能な相同性を有する塩基配列が存在するものを用いて、1種類のプライマーで増幅対象領域における核酸を増幅させることを特徴とする。
本明細書及び図面において、塩基配列は、5’末端から3’末端方向に把握するものとする。
【0018】
PCR法では、検出対象の試料のDNAと、そのDNAにおける増幅対象領域を増幅させるための2種類のプライマー(フォワードプライマーとリバースプライマー)からなるプライマーセットと、核酸合成酵素と、核酸合成基質(G,C,A,T)等を含むPCR反応液を用いて、核酸の増幅が行われる。
このようなフォワードプライマーとリバースプライマーとしては、検出対象の試料のDNAにおける増幅対象領域を特異的に増幅可能なものが設計されるため、通常は互いに異なる塩基配列からなり、一般にPCRには検出対象の試料ごとに2種類のプライマーが必要であると考えられている。
【0019】
一方、PCRにおいて使用するプライマーの種類が増えるほど、非特異的な増幅が生じるリスクが高くなることから、本発明者らは、そのリスクを低減するために、これまでの常識に反する同一の塩基配列からなるフォワードプライマーとリバースプライマーを用いることを案出した。また、このような1種類のプライマーを用いてPCRを実行可能にするため、あるDNAの二本鎖のそれぞれに、増幅対象領域を隔ててその1種類のプライマーの塩基配列に対して相補的な塩基配列を挿入して、人工合成DNAを製造した。そして、この1種類のみのプライマーを用いて、人工合成DNAの増幅対象領域における核酸を増幅させることに成功した。
【0020】
さらに、このような人工合成DNAと人工合成DNA検出用プライマーを、試料を検出するにあたってのPCRの成否を確認するための内部標準として利用することが好ましい。
すなわち、本実施形態に係る核酸増幅の成否判定方法は、PCR法による核酸増幅の検査方法であって、検出対象の試料と、検出対象の試料のDNAにおける第一の増幅対象領域を増幅するための第一のプライマーセットと、同一の塩基配列からなるフォワードプライマーとリバースプライマーを備えた第二のプライマーセットと、内部標準用のDNAの二本鎖のそれぞれに、第二のプライマーセットにより増幅される第二の増幅対象領域を隔てて前記同一の塩基配列もしくは前記第二の増幅対象領域を増幅可能な相同性を有する塩基配列を挿入して得られた人工合成DNAとを用いて、第一のプライマーセットによって、第一の増幅対象領域における核酸を増幅させると共に、第二のプライマーセットによって、第二の増幅対象領域における核酸を増幅させ、当該第二の増幅対象領域における核酸の増幅産物の有無にもとづいて、核酸増幅の成否を判定することを特徴とする。
【0021】
ここで、図1を参照して、試料のDNA及び人工合成DNAの増幅反応の結果と、PCRの成否及び試料の存否との関係について説明する。
同図の左側には、試料のDNAにおける増幅対象領域を増幅させるための2種類のプライマーからなる試料検出用プライマーと、人工合成DNAにおける増幅対象領域を増幅させるための1種類のプライマーからなる人工合成DNA検出用プライマーとを含むPCR反応液を用いて、それぞれの増幅対象領域を1つのPCR反応液で同時に増幅させる場合の増幅反応の結果を示している。
【0022】
図1に示すように、増幅反応の結果には、(1)試料のDNA及び人工合成DNAの両方の増幅産物が得られる場合と、(2)試料のDNAの増幅産物が得られ、人工合成DNAの増幅産物が得られない場合と、(3)試料のDNAの増幅産物が得られず、人工合成DNAの増幅産物が得られる場合と、(4)試料のDNA及び人工合成DNAの両方の増幅産物が得られない場合の4通りのパターンが存在する。
【0023】
(1)の場合は、試料のDNA及び人工合成DNAの両方の増幅産物が得られていることから、PCRが成功したことが確認できると共に、PCR反応液中に試料が存在していることが確認できる。
【0024】
(2)の場合は、試料のDNAの増幅産物が得られていることから、PCRが成功したことが確認できる。また、PCR反応液中に試料が存在していることが確認できる。人工合成DNAの増幅産物は得られていないが、これは、例えばPCR反応液に人工合成DNA又は人工合成DNA検出用プライマーを入れ忘れた場合など、生じる可能性が小さいケースである。
【0025】
(3)の場合は、人工合成DNAの増幅産物が得られていることから、PCRが成功したことが確認できる。また、試料のDNAの増幅産物が得られていないことから、PCR反応液中に試料が存在していないことが確認できる。これにより、試料のDNAの増幅産物が得られていない理由が、PCRの失敗にもとづく偽陰性反応によるものではなく、PCR反応液中に試料が存在していないことによるものであることを確認することが可能となる。
【0026】
(4)の場合は、試料のDNAと人工合成DNAの両方の増幅産物が得られていないことから、PCRが失敗した可能性の高いことが推定される。したがって、PCR反応液中における試料の存否は不明であり、再度試験を行う必要があることを確認できる。
【0027】
本実施形態に係る核酸増幅の成否判定方法によれば、このように人工合成DNAと人工合成DNA検出用プライマーを内部標準として用いて、PCRの成否を確認することができる。このため、非特異的な増幅産物が生じる可能性を低減しつつ、PCRの成否を確認でき、PCRの検査精度を向上させることが可能になっている。
【0028】
また、本実施形態に係る核酸増幅の検査キットは、同一の塩基配列からなるフォワードプライマーとリバースプライマーを備えたプライマーセットと、内部標準用のDNAの二本鎖のそれぞれに、プライマーセットにより増幅される増幅対象領域を隔てて前記同一の塩基配列もしくは前記増幅対象領域を増幅可能な相同性を有する塩基配列を挿入して得られた人工合成DNAとを含むことを特徴とする。
すなわち、このような核酸増幅の検査キットを用いることによって、非特異的な増幅産物が生じる可能性を低減しつつ、PCRの成否を確認可能なPCR反応液を作成することが可能となる。
【0029】
本実施形態に係る核酸増幅方法、核酸増幅の成否判定方法、及び核酸増幅の検査キットを用いるにあたり、試料からDNAを抽出する方法は、特に限定されないが、例えば次のように行うことができる。
まず、検出対象の微生物などが培養された培養液等を回収し、遠心分離を行う。次に、上清を廃棄し、得られた沈殿にリゾチーム溶液を加えて、溶菌処理を行う。さらに、カラム精製を行って、DNA抽出液を得ることができる。そして、このDNA抽出液を、PCRで使用する試料とすることができる。
【0030】
PCR反応液としては、試料のDNA、プライマーセット、核酸合成基質、核酸合成酵素、緩衝液、及び残りの成分として水を含むものなどを好適に使用することができる。
PCR反応を行う装置としては、一般的なサーマルサイクラーなどを用いることができる。
【0031】
PCRの反応条件としては、例えば以下の通りに行うことができる。
(a)94℃ 2分、(b)94℃(DNA変性工程) 30秒、(c)63℃(アニーリング工程) 30秒、(d)72℃(DNA合成工程) 60秒((b)〜(d)を35サイクル)、(e)72℃ 3分
【0032】
また、本実施形態及び後述する実施例において、人工合成DNA及び各プライマーは、それぞれの塩基配列そのものに限定されるものではなく、それぞれの塩基配列において1又は数個の塩基が欠損、置換又は付加されたものを用いることができる。また、それぞれの塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるものを用いることもできる。
【0033】
なお、ストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、各塩基配列からなるDNAに対し高い相同性(相同性が90%以上、好ましくは95%以上)を有するDNAが、各塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAと、ハイブリダイズする条件が挙げられる。通常、完全ハイブリッドの溶解温度(Tm)より約5℃〜約30℃、好ましくは約10℃〜約25℃低い温度でハイブリダイゼーションが起こる場合をいう。ストリンジェントな条件については、J.Sambrookら,Molecular Cloning,A Laboratory Mannual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、特に11.45節「Conditions for Hybridization of Oligonucleotide Probes」に記載されている条件等を使用することができる。
【0034】
以上説明した通り、本実施形態に係る核酸増幅方法、核酸増幅の成否判定方法、及び核酸増幅の検査キットによれば、増幅対象の試料のDNAと1種類のみのプライマーを用いてPCRを実行して、増幅産物を得ることができる。
また、このようにして増幅可能な人工合成DNAと人工合成DNA検出用プライマーを内部標準として利用することで、試料検出のためのPCRを行うに際し、使用するプライマーの種類数を少なくしつつ、PCR自体が成功したか否かを確認することが可能になる。
【0035】
さらに、人工合成DNA検出用プライマーとして、試料検出用プライマーセットの一方と同一の塩基配列からなるものを用いることも好ましい。このような人工合成DNA検出用プライマーとこれにより増幅可能な人工合成DNAを内部標準とすることによって、PCRに用いるプライマーの種類数を減らすことができ、非特異的な増幅産物が生じる可能性を一層低減することが可能である。
【実施例】
【0036】
(試験1)
本実施形態の核酸増幅方法を用いて、1種類のみのプライマーを用いて、増幅対象の試料のDNAにおける増幅対象領域を増幅できるかを確認するための検証試験を行った。
増幅対象の試料のDNAとしては、図2の配列番号1に示す塩基配列及びその相補配列からなる二本鎖の人工合成DNAを、10^7copy/μlで使用した。また、その増幅対象領域を増幅するためのプライマーとして、図2の配列番号2に示す塩基配列からなる人工合成DNA検出用プライマーを使用した。これらは、ライフテクノロジージャパン株式会社より合成した。
【0037】
PCR反応液としては、以下の組成のものを使用した。人工合成DNA及び人工合成DNA検出用プライマー以外は、タカラバイオ株式会社製である。なお、以下の組成において、人工合成DNA検出用プライマー以外のプライマーは、試験2のためのものであるが、試験1のPCR反応液でもこれらを含むものを使用した。
【0038】
・緩衝液 10×Ex Taq buffer(20mM Mg 2+ plus) 5.0μl
・核酸合成基質 dNTP Mixture(dATP、dCTP、dGTP、dTTP各2.5mM) 4.0μl
・16SrRNA検出用フォワードプライマー(10μM) 1.25μl
・16SrRNA検出用リバースプライマー (10μM) 1.5μl
・rpo検出用フォワードプライマー(10μM) 0.2μl
・rpo検出用リバースプライマー (10μM) 0.3μl
・人工合成DNA検出用プライマー (10μM) 0.4μl
・核酸合成酵素 EX Taq Hot Start Version (5U/μl) 0.25μl
・人工合成DNA 2.5μl
・滅菌水 34.6μl
(全量 50μl)
【0039】
PCR法による核酸の増幅には、epグラジエント(エッペンドルフ株式会社製)を使用した。また、PCRの反応条件は、実施形態で説明したものと同一の次の条件で行った。
(a)94℃ 2分
(b)94℃ 30秒(DNA鎖の乖離工程)
(c)63℃ 30秒(アニーリング工程)
(d)72℃ 60秒(DNA合成工程)
(e)72℃ 3分
(b)〜(d)を35サイクル
【0040】
次に、PCR法による増幅産物を、アガロースゲル電気泳動により泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。電気泳動は、MultiNA(R)(株式会社島津製作所製)を用いて行った。その結果を図3に示す。
同図において、人工合成DNAの増幅産物を示す578bp付近にバンドが示された。
したがって、本実施形態の核酸増幅方法を用いて、1種類のみのプライマーを用いて、増幅対象の試料のDNAにおける増幅対象領域を増幅できることが確認された。
【0041】
(試験2)
本実施形態の核酸増幅の成否判定方法、及び核酸増幅の検査キットを用いて、検出対象の試料のDNAと人工合成DNAにおける各増幅対象領域を一つの反応液を用いて同時に増幅させ、その増幅産物の有無を確認するための検証試験を行った。
【0042】
人工合成DNAとしては、試験1と同じものを10^4copy/μlで使用した。また、人工合成DNA検出用プライマーも試験1と同じものを使用した。
検出対象の試料としては、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum) NBRC15891を、10ng/μl(菌数換算で10^8〜10^9程度)で使用した。
【0043】
試料からのDNAの抽出は、次のようにして行った。
まず、5000×gで10分間の遠心分離を行った。次に、上清を廃棄し、得られた沈殿に、20mg/mL濃度のリゾチーム溶液(20mM Tris−HCl,pH8.0/2mM EDTA,1.2%TritonX−100)を加えて、37℃で30分間溶菌処理を行った。さらに、DNeasy Blood&Tissue Kit(株式会社キアゲン製)を用いて、カラム精製を行うことにより、DNA抽出液を得た。
【0044】
検出対象の試料のDNAにおける増幅対象領域を増幅するためのプライマーとしては、図2の配列番号3〜6に示す塩基配列からなるものを使用した。配列番号3と4のプライマーは、それぞれ16SrRNA遺伝子領域を増幅するためのフォワードプライマーとリバースプライマーであり、配列番号5と6のプライマーは、それぞれRNAポリメラーゼ(rpo)遺伝子領域を増幅するためのフォワードプライマーとリバースプライマーである。
【0045】
PCR反応液としては、以下の組成のものを使用した。人工合成DNA及び人工合成DNA検出用プライマー以外は、タカラバイオ株式会社製である。
・緩衝液 10×Ex Taq buffer(20mM Mg 2+ plus) 5.0μl
・核酸合成基質 dNTP Mixture(dATP、dCTP、dGTP、dTTP各2.5mM) 4.0μl
・16SrRNA検出用フォワードプライマー(10μM) 1.25μl
・16SrRNA検出用リバースプライマー (10μM) 1.5μl
・rpo検出用フォワードプライマー(10μM) 0.2μl
・rpo検出用リバースプライマー (10μM) 0.3μl
・人工合成DNA検出用プライマー (10μM) 0.4μl
・核酸合成酵素 EX Taq Hot Start Version (5U/μl) 0.25μl
・人工合成DNA 2.5μl
・検出対象の試料のDNA 2.5μl
・滅菌水 32.1μl
(全量 50μl)
【0046】
PCR法による核酸の増幅は、試験1と同様に行った。また、PCR法による増幅産物を、試験1と同様にアガロースゲル電気泳動により泳動させ、人工合成DNA及び検出対象の試料のDNAのそれぞれについて、正しい増幅産物が得られているかを確認した。その結果を図4に示す。
【0047】
図4において、人工合成DNAの増幅産物を示す578bp付近にバンドが示されると共に、L. plantarumの16SrRNA遺伝子領域の増幅産物を示す505bp付近にバンドが示され、L. plantarumのrpo遺伝子領域の増幅産物を示す266bp付近にバンドが示された。
したがって、本実施形態の核酸増幅の成否判定方法、及び核酸増幅の検査キットを用いて、検出対象の試料のDNAと人工合成DNAにおける各増幅対象領域を同時に増幅させて、増幅産物が得られることが確認された。
【0048】
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能である。例えば、人工合成DNA及び人工合成DNA検出用プライマーの塩基配列は、これらに限定されず、1種類のみのプライマーを用いて増幅対象領域を増幅できるものであれば良い。また、検出対象の試料として、複数種類の生物のDNAを用いるなど適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、食品検査、疫学的環境検査、環境検査、臨床試験、及び家畜衛生等において、内部標準を使用してPCRを行う場合などに、好適に利用することが可能である。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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