(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コアとカバーとの間に中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コア硬度分布において、コア中心のJIS−C硬度を(Cc)、コア中心から5mmの位置のJIS−C硬度を(C5)、コア中心から10mmの位置のJIS−C硬度を(C10)、コア中心から15mmの位置のJIS−C硬度を(C15)、コア表面のJIS−C硬度を(Cs)とするとき、下記式(i)〜(vi)及び(iii−a)
18≦(Cs)−(Cc) ・・・(i)
0<(C10)−(Cc)≦10 ・・・(ii)
(C10)−(Cc)<(Cs)−(C10) ・・・(iii)
10<(Cs)−(C10) ・・・(iv)
(Cs)≧68 ・・・(v)
(Cc)≧48 ・・・(vi)、及び
1.5≦{(Cs)−(C10)/(C10)−(Cc)}≦3.0 ・・・(iii−a)
の関係を満足すると共に、上記コアの周囲に中間層が被覆された球体(中間層被覆球体)及びボールの表面硬度がショアD硬度で、
(ボール表面のショアD硬度)≦(中間層被覆球体表面のショアD硬度)・・・(1)
の関係を満たし、中間層の厚さ及びカバーの厚さが、
カバーの厚さ≦中間層の厚さ ・・・(2)
の関係を満たし、中間層被覆球体の初速及びコアの初速が、
(中間層被覆球体の初速)/(コアの初速)≧0.995 ・・・(3)
の関係を満たし、コア、中間層被覆球体及びボールに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときまでのたわみ量(mm)をそれぞれA、B及びCとすると、
A+B+C≧11.5 ・・・(4)
(但し、A≧4.0、C≧3.2)
の数式を満足することを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、内側からソリッドコア、中間層及びカバーを有するものである。
図1に本発明のゴルフボールの一例を示す内部構造を示した。
図1に示したゴルフボールGは、コア1と、該コア1を被覆する中間層2と、該中間層2を被覆するカバー3とを有している。また、上記カバー3の表面には、通常、空力特性の向上のためにディンプルDが多数形成される。以下、上記の各層について詳述する。
【0011】
コアの直径は、特に制限はないが、通常、34.9〜40.3mmであり、好ましくは、36.1〜39.4mm、さらに好ましくは37.3〜38.5mmである。この直径が小さすぎると、ドライバー(W#1)打撃時にはスピンが多くなり、狙い通りの飛距離が得られなくなることがある。また、コア直径が大き過ぎると、繰り返し打撃耐久性が悪くなり、或いは打感が悪くなることがある。
【0012】
コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは4.0〜5.3mm、より好ましくは4.1〜5.1mm、さらに好ましくは4.3〜4.9mmである。上記の値が大きすぎると、打感が軟らかくなりすぎ、または、繰り返し打撃した時の耐久性が悪くなり、或いは、フルショット時の実打初速が低くなり狙いの距離が得られない場合がある。逆に、上記値が小さすぎると、打感が硬くなりすぎ、またはフルショット時のスピンが多くなり狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0013】
次に、コア硬度分布については、コアの表面と中心との硬度差がJIS−C硬度で15以上の場合と10以内の場合とにより具体的な硬度範囲が異なる。これらの技術事項について以下に説明する。
【0014】
I.
コアの表面と中心との硬度差がJIS−C硬度で15以上の場合
このコア硬度分布は、コア中心から所定位置までは勾配はないが、所定位置から表面に向かって急勾配の硬度態様を有するものであり、特に、低スピン化が十分に図られ、飛び性能を良好に得ることができる。コア内部の各所定位置における硬度の説明は、以下のとおりである。
【0015】
コア表面硬度(Cs)は、JIS−C硬度で、好ましくは68〜80、より好ましくは70〜78、さらに好ましくは72〜76である。このコア表面硬度のJIS−C硬度の値が大きすぎると、打感が硬くなり、或いは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記値が小さすぎると、スピンが増え過ぎ、反発が低くなって飛ばなくなることがある。
【0016】
コアの中心硬度(Cc)は、JIS−C硬度で、好ましくは48〜62、より好ましくは51〜60、さらに好ましくは53〜58である。このコア中心硬度のJIS−C硬度の値が大きすぎると、スピンが増えすぎて飛ばなくなることがあり、または打感が硬く感じられることがある。逆に、上記値が小さすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがあり、または打感が軟らかくなりすぎることがある。
【0017】
コアの中心から5mm位置でのJIS−C硬度(C5)は、好ましくは52〜62、より好ましくは54〜60、さらに好ましくは56〜68である。また、コアの中心から10mm位置でのJIS−C硬度(C10)は、好ましくは56〜67、より好ましくは58〜65、さらに好ましくは60〜63である。上記硬度値が大きすぎると、スピンが増えすぎて飛ばなくなることがあり、或いは打感が硬く感じられることがある。逆に、上記値が小さすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがあり、または打感が軟らかくなりすぎることがある。
【0018】
コアの中心から15mm位置でのJIS−C硬度(C15)は、好ましくは64〜78、より好ましくは66〜76、さらに好ましくは68〜74である。上記硬度値が大きすぎると、打感が硬くなり、または繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記硬度値が小さすぎると、スピンが増え過ぎ、反発が低くなって飛ばなくなることがある。
【0019】
(Cs)−(C15)の値は、好ましくは1〜9、より好ましくは2〜7、さらに好ましくは3〜5である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、スピンが増えすぎて飛距離が出なくなることがある。
【0020】
(C15)−(C10)の値は、好ましくは4〜15、より好ましくは6〜13、さらに好ましくは8〜11である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、スピンが増えすぎて飛距離が出なくなることがある。
【0021】
(C10)−(C5)の値は、好ましくは1〜7、より好ましくは2〜5、さらに好ましくは3〜4である。この値が上記範囲を外れると、フルショット時にスピンが増えすぎてしまい飛距離が出なくなり、または、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0022】
(C5)−(Cc)の値は、好ましくは0〜7、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは2〜3である。この値が大きすぎると、スピンが増えすぎてしまい飛距離が出なくなることがある。
【0023】
(C10)−(Cc)の値は、好ましくは0超10以下であり、より好ましくは2〜8である。この規定は、コア中心から10mmまではそれ程急勾配ではないことを意味する。この値が大きすぎると、フルショット時にスピンが増えすぎてしまい飛距離が出ないことがある。
【0024】
(Cs)−(C10)の値は、好ましくは10以上であり、より好ましくは11〜15である。この規定は、コア中心から10mmの位置(C10)からコア表面(Cs)までは、JIS−C硬度で10を超える程に急勾配であることを意味する。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、フルショット時にスピンが増えすぎてしまい飛距離が出ないことがある。
【0025】
(Cs)−(C10)の値は(C10)−(Cc)の値よりも大きいことを要する。これは、コア内部よりも外側の方が急傾斜であることを意味する。即ち、{(Cs)−(C10)/(C10)−(Cc)}の値が1.0〜5.0であることが好ましく、より好ましくは1.2〜4.0、さらに好ましくは1.5〜3.0である。上記の値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記値が小さすぎると、スピンが増えすぎてしまい飛距離が出なくなることがある。
【0026】
コアの表面と中心との硬度差、即ち、(Cs)−(Cc)の値は、好ましくは15〜30、より好ましくは16〜24、さらに好ましくは18〜20である。この硬度差の値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記の硬度差の値が小さすぎると、スピンが増えすぎて飛距離が出なくなることがある。
【0027】
II.
コアの表面と中心との硬度差がJIS−C硬度で10以内の場合
このコア硬度分布は、コアの表面から中心までの勾配がなく、平坦に近い態様であり、特に耐久性の改善が得られる。コア内部の各所定位置における硬度の説明は、以下のとおりである。
【0028】
コア表面硬度(Cs)は、JIS−C硬度で、好ましくは59〜73、より好ましくは61〜71、さらに好ましくは63〜69である。このコア表面硬度のJIS−C硬度の値が大きすぎると、打感が硬くなり、或いは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記値が小さすぎると、スピンが増え過ぎ、反発が低くなって飛ばなくなることがある。
【0029】
コアの中心硬度(Cc)は、JIS−C硬度で、好ましくは56〜68、より好ましくは58〜66、さらに好ましくは60〜64である。このコア中心硬度のJIS−C硬度の値が大きすぎると、スピンが増えすぎて飛ばなくなることがあり、または打感が硬く感じられることがある。逆に、上記値が小さすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがあり、または打感が軟らかくなりすぎることがある。
【0030】
コアの中心から5mm位置でのJIS−C硬度(C5)は、好ましくは56〜68、より好ましくは58〜66、さらに好ましくは60〜64である。また、コアの中心から10mm位置でのJIS−C硬度(C10)は、好ましくは56〜68、より好ましくは58〜66、さらに好ましくは60〜64である。上記硬度値が大きすぎると、スピンが増えすぎて飛ばなくなることがあり、或いは打感が硬く感じられることがある。逆に、上記値が小さすぎると、反発が低くなって飛ばなくなることがあり、または打感が軟らかくなりすぎることがある。
【0031】
コアの中心から15mm位置でのJIS−C硬度(C15)は、好ましくは57〜69、より好ましくは59〜67、さらに好ましくは61〜65である。上記硬度値が大きすぎると、打感が硬くなり、または繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記硬度値が小さすぎると、スピンが増え過ぎ、反発が低くなって飛ばなくなることがある。
【0032】
(Cs)−(C15)の値は、好ましくは9以下、より好ましくは0〜7、さらに好ましくは1〜5である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、スピンが増えすぎて飛距離が出なくなることがある。
【0033】
(C15)−(C10)の値は、好ましくは0〜±3、より好ましくは0〜±2、さらに好ましくは0〜±1である。この値が上記範囲を逸脱すると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が優れたものではない場合がある。
【0034】
(C10)−(C5)の値は、好ましくは0〜±3、より好ましくは0〜±2、さらに好ましくは0〜±1である。この値が上記範囲を逸脱すると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が優れたものではない場合がある。
【0035】
(C5)−(Cc)の値は、好ましくは0〜±3、より好ましくは0〜±2、さらに好ましくは0〜±1である。この値が上記範囲を逸脱すると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が優れたものではない場合がある。
【0036】
コアの表面と中心との硬度差、即ち、(Cs)−(Cc)の値は、好ましくは0〜10、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは2〜6である。この硬度差の値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記の硬度差の値が小さすぎると、スピンが増えすぎて飛距離が出なくなることがある。
【0037】
なお、上記の中心硬度(Cc)及び所定位置における断面硬度とは、コアを半分に(中心を通るように)切断して得た断面の中心及び所定位置において測定される硬度を意味し、表面硬度(Cs)は上記コアの表面(球面)において測定される硬度を意味する。
【0038】
上記硬度分布やたわみを有するコアの材料としては、ゴム材を主材として用いることが好適である。具体的には、主材である(A)基材ゴム、(B)有機過酸化物のほか、共架橋剤、不活性充填剤、必要により有機硫黄化合物等を配合するゴム組成物を採用し得る。
【0039】
(A)基材ゴムとしては、ポリブタジエンを用いることが好適である。ポリブタジエンについては、そのポリマー鎖中に、シス−1,4−結合を60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上有することが好適である。分子中の結合に占めるシス−1,4−結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。
【0040】
なお、(A)基材ゴムには、上記ポリブタジエン以外にも他のゴム成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。上記ポリブタジエン以外のゴム成分としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエン、その他のジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0041】
(B)有機過酸化物としては、特に制限されるものではないが、1分間半減期温度が110〜185℃である有機過酸化物を用いることが好適であり、1種または2種以上の有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物の配合量としては、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限値としては、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。上記の有機過酸化物は、市販品を用いることができ、具体的には、商品名「パークミルD」、「パーヘキサC−40」、「ナイパーBW」、「パーロイルL」等(いずれも日油社製)、または、Luperco 231XL(アトケム社製)などを例示することができる。
【0042】
共架橋剤としては、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の金属塩等が挙げられる。不飽和カルボン酸として具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。不飽和カルボン酸の金属塩としては特に限定されるものではないが、例えば上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0043】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩は、上記基材ゴム100質量部に対し、通常10質量部以上、好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、上限として通常60質量部以下、好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、最も好ましくは40質量部以下配合する。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0044】
また、上記コアは、所望の硬度分布を満たすことを実現するため、下記(A)〜(C)成分
(A)基材ゴム
(B)有機過酸化物
(C)水及び/又はモノカルボン酸金属塩
を必須成分として配合するゴム組成物の加熱成形物により形成されることが好適である。
【0045】
即ち、コア材料に直接的に水(水を含む材料)を配合することにより、コア配合中の有機過酸化物の分解を促進することができる。また、コア用ゴム組成物中の有機過酸化物は、温度によって分解効率が変化することが知られており、ある温度よりも高温になるほど分解効率が上がる。温度が高すぎると、分解したラジカル量が多くなりすぎてしまい、ラジカル同士で再結合や不活性化してしまうことになる。その結果、架橋に有効に働くラジカルが減ることになる。ここで、コア加硫の際に有機過酸化物が分解することで分解熱が発生するとき、コア表面付近は加硫モールドの温度とほぼ同程度を維持しているが、コア中心付近は外側から分解していった有機過酸化物の分解熱が蓄積されるため、モールド温度よりもかなり高温になる。コアに直接的に水(水を含む材料)を配合した場合、水は有機過酸化物の分解を助長する働きがあるため、上述したようなラジカル反応をコア中心とコア表面において変化させることができる。即ち、コア中心付近では有機過酸化物の分解が更に助長され、ラジカルの不活性化がより促されることで有効ラジカル量が更に減少するため、コア中心とコア表面との架橋密度が大きく異なるコアを得ることができ、且つ、コア中心部の動的粘弾性特性の異なるコアを得ることができる。そして、このようなコアを有するゴルフボールは、低スピン化を実現すると共に、耐久性に優れ、反発性の経時変化を少なくすることができる。なお、上記の水に代えて、モノアクリル酸亜鉛を使用した場合、配合材料の混練中の熱によってモノアクリル酸亜鉛から水が発生する。これによって水を配合したときと同様の効果を得ることができる。
【0046】
上記(A)成分及び(B)成分については上述したとおりである。
上記(C)成分の水については、特に制限はなく、蒸留水であっても水道水であってもよいが、特には、不純物を含まない蒸留水を使用することが好適に採用される。水の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上配合することが好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限としては、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは4質量部以下である。
【0047】
また、上記の水を適量配合することにより、加硫前のゴム組成物における水分含有率が1000ppm以上となることが好ましく、より好ましくは1500ppm以上である。上限としては、好ましくは8500ppm以下であり、より好ましくは8000ppm以下である。上記ゴム組成物の水分含有率が小さすぎると、適切な架橋密度・Tan δを得ることが困難となり、エネルギーロスが少なく低スピン化を図ったゴルフボールを成形することが困難となる場合がある。上記ゴム組成物の水分含有率が大きすぎると、コアが軟らかくなりすぎてしまい、適切なコア初速を得ることが困難となる場合がある。
【0048】
上記ゴム組成物に水を直接配合することも可能ではあるが、下記の(i)〜(iii)の方法を採用することができる。
(i)スチームや超音波によりミスト状の水をゴム組成物(配合材料)の全部または一部にあてる方法
(ii)ゴム組成物の全部または一部を水に浸漬させる方法
(iii)ゴム組成物の全部または一部を恒湿槽等の湿度管理可能な場所において高湿度環境下に一定時間放置する方法
なお、高湿度環境とはゴム組成物等を湿らせることができる環境であれば特に制限されるものではないが湿度40〜100%であることが好ましい。
【0049】
また、水をゼリー状に加工して上記ゴム組成物に配合することができる。或いは、予め水を、充填剤,未加硫ゴム,ゴム粉等に担持した材料を用い、これを上記ゴム組成物に配合することができる。このような態様は、直接水を配合するよりも作業性に優れるため、ゴルフボールの生産効率を向上させることができる。水を所定量含有させた材料の種類については特に制限はないが、十分に水を含有させた充填剤、未加硫ゴム、ゴム粉等が挙げられ、特に、耐久性や反発性を損なうことがない材料を使用することが好適である。上記の材料の水分含有率としては、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、上限として、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0050】
また、上記の水の代わりに、モノカルボン酸金属塩を採用することができる。モノカルボン酸金属塩は、カルボン酸が金属に対して配位結合していると推定され、例えば〔CH
2=CHCOO〕
2Znで表わされるジアクリル酸亜鉛のようなジカルボン酸金属塩とは区別される。モノカルボン酸金属塩は、脱水縮合反応をすることによりゴム組成物中に水をもたらすため、上記水と同様の効果を得ることができる。また、モノカルボン酸金属塩は、粉体としてゴム組成物に配合することができるため、作業工程を簡略化することができると共に、ゴム組成物中に均一に分散させることが容易である。なお、上記の反応を効果的に行うためには、モノ塩であることが必要である。モノカルボン酸金属塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して1質量部以上配合することが好ましく、より好ましくは3質量部以上である。上限としては、モノカルボン酸金属塩の配合量は、60質量部以下配合することが好ましく、より好ましくは50質量部以下である。上記モノカルボン酸金属塩の配合量が少なすぎると、適切な架橋密度・Tan δを得ることが困難となり、十分にゴルフボールの低スピン効果を得ることができないことがある。また、配合量が多すぎる場合には、コアが硬くなりすぎるため、適切な打感を保つことが困難になる場合がある。
【0051】
上記のカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ステアリン酸等を使用することができる。置換金属としては、Na、K、Li、Zn、Cu、Mg、Ca、Co、Ni、Pb等が挙げられるが、好ましくはZnが好適に用いられる。具体例としては、モノアクリル酸亜鉛、モノメタクリル酸亜鉛等が挙げられ、特に、モノアクリル酸亜鉛を用いることが好ましい。
【0052】
コアの製造方法としては、常法に従って、140℃以上180℃以下、10分以上60分以下の加硫条件で加熱圧縮し、球状成形物(コア)を成形することができる。
【0053】
加硫後のコアにおいては、コア中心はコア表面より水分含有率が高くなることが好適である。上記の水分含有率は、ゴム組成物に配合される水の配合量、成形温度及び成形時間等により、成形後のコアの水分含有率を適宜制御することができる。
【0054】
次に、中間層について説明する。
中間層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度で好ましくは48〜68、より好ましくは52〜62、さらに好ましくは55〜57である。また、中間層を被覆した球体の表面硬度は、ショアD硬度で好ましくは55〜75、より好ましくは59〜69、さらに好ましくは62〜64である。上記中間層が軟らかすぎると、フルショット時のスピン量が増えすぎてしまい飛距離が出なくなることがある。また、中間層が硬すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなり、またはパターやショートアプローチ実施時の打感が硬くなりすぎることがある。
【0055】
中間層を被覆した球体、即ち中間層被覆球体に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは3.2〜4.6mm、より好ましくは3.4〜4.4mm、さらに好ましくは3.6〜4.2mmである。上記の値が大きすぎると、打感が軟らかくなりすぎ、または繰り返し打撃した時の耐久性が悪くなり、或いは、フルショット時の実打初速が低くなり狙いどおりの飛距離が得られない場合がある。逆に、上記の値が小さすぎると、打感が硬くなりすぎ、フルショット時のスピンが多くなり狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0056】
中間層の厚さは、好ましくは0.9〜2.4mm、より好ましくは1.2〜2.1mm、さらに好ましくは1.5〜1.8mmである。また、中間層の厚さは、後述するカバー(最外層)よりも厚いことが好適である。中間層の厚さが上記の範囲を逸脱し、或いはカバーより薄くなると、ドライバー(W#1)ショット時において低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。
【0057】
中間層の材料については、特に制限はないが、各種の熱可塑性樹脂材料を好適に採用することができる。特には、本発明の所望の効果を十分に奏することができる点から、高反発な樹脂材料を中間層の材料として採用することが好適であり、例えば、アイオノマー樹脂材料や後述する高中和型樹脂材料を使用することが好適である。
【0058】
例えば、中間層の材料としては、(a)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、(b)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを特定量配合したベース樹脂を必須成分とする材料を好適に用いることができる。
【0059】
上記(a)成分と上記(b)成分は、市販品を使用してもよく、例えば、(a)成分のランダム共重合体として、ニュクレルN1560、同N1214、同N1035、同AN4221C(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)等を、(b)成分のランダム共重合体として、例えば、ニュクレルAN4311、同AN4318、同AN4319(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)等を挙げることができる。
【0060】
また、(a)成分のランダム共重合体の金属イオン中和物として、例えば、ハイミラン1554、同1557、同1601、同1605、同1706、同AM7311(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン7930(DuPont社製)等を、(b)成分のランダム共重合体の金属イオン中和物として、例えば、ハイミラン1855、同1856、同AM7316(いずれも三井・デュポンポリケミカル社製)、サーリン6320、同8320、同9320、同8120(いずれもDuPont社製)等をそれぞれ挙げることができる。上記ランダム共重合体の金属イオン中和物として好適なナトリウム中和型アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1605、同1601、同1555等を挙げることができる。
【0061】
上記ベース樹脂の調製に際しては、(a)成分と(b)成分との配合を質量比で通常100:0〜0:100とすることができる。また、(a)成分と(b)成分との全量に対する(a)成分の割合を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、最も好ましくは100質量%とすることができる。
【0062】
上記ベース樹脂には、打撃時のフィーリング、反発性をより一層向上させるために、(e)非アイオノマー熱可塑性エラストマーを配合することができる。この(e)成分の具体例としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。本発明では、反発性をより高めることができる点から、ポリエステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、特に、結晶性ポリエチレンブロックをハードセグメントとして含む熱可塑性ブロック共重合体からなるオレフィン系エラストマーを好適に使用することができる。
【0063】
上記(e)成分は、市販品を使用してもよく、具体的には、ダイナロン(JSR社製)、ポリエステル系エラストマーとして、ハイトレル(東レ・デュポン社製)等を挙げることができる。
【0064】
上記(e)成分の配合量は0超とすることができる。また、配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは上記ベース樹脂100質量部に対して100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、最も好ましくは40質量部以下とすることができる。(e)成分の配合量が多すぎると、混合物の相溶性が低下し、ゴルフボールの耐久性が著しく低下する可能性がある。
【0065】
次に、上記ベース樹脂に(c)成分として、分子量228以上1500以下の脂肪酸又はその誘導体を配合することができる。この(c)成分は、上記ベース樹脂と比較して分子量が極めて小さいものであり、混合物の溶融粘度を適度に調整し、特に流動性の向上に寄与する成分である。また、上記(c)成分は、比較的高含量の酸基(誘導体)を含み、反発性の過度の損失を抑制できる。
【0066】
上記(c)成分の配合量は、上記(a)成分、(b)成分及び(e)成分を適宜配合した樹脂成分100質量部に対して、5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは18質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、80質量部以下とすることができ、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下とすることができる。(c)成分の配合量が少なすぎると、溶融粘度が低くなり加工性が低下することがあり、多すぎると耐久性が低下することがある。
【0067】
(d)成分として、上記ベース樹脂及び(c)成分中の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物を加えることができる。(d)成分の配合により、上記ベース樹脂と(c)成分中の酸基が中和され、これら各成分配合による相乗効果により、樹脂組成物の熱安定性が高まると同時に、良好な成形性が付与され、成形物の反発性が向上することができる。
【0068】
上記(d)成分の配合量は、上記樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部以上とすることができ、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、17質量部以下とすることができ、好ましくは15質量部以下、より好ましくは13質量部以下、更に好ましくは10質量部以下とすることができる。(d)成分の配合量が少なすぎると、熱安定性、反発性の向上が見られず、多すぎると過剰の塩基性無機金属化合物によりゴルフボール用材料の耐熱性がかえって低下することがある。
【0069】
上述したように(a)成分及び(b)成分を所定量配合したベース樹脂と、任意成分の(e)成分を配合した樹脂成分に対し、所定量の(c)成分と(d)成分とをそれぞれ配合することにより、熱安定性、流動性、成形性に優れる材料とすることができ、更に成形物の反発性を飛躍的に向上させることができる。
【0070】
上述した樹脂成分、(c)成分及び(d)成分を所定量配合した材料は、中和度が高い(高中和化されている)ことが推奨され、具体的には、材料中の酸基の50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上が中和されていることが推奨される。材料中の酸基を高中和化することにより、上述した従来技術のベース樹脂と脂肪酸(誘導体)のみを使用した場合に問題となる交換反応をより確実に抑制し、脂肪酸の発生を防ぐことができる上、熱的安定性が著しく向上し、成形性が良好で、従来のアイオノマー樹脂と比較して反発性に非常に優れた成形物を得ることができる。
【0071】
ここで、中和度とは、ベース樹脂と(c)成分の脂肪酸(誘導体)の混合物中に含まれる酸基の中和度であり、ベース樹脂中のランダム共重合体の金属イオン中和物としてアイオノマー樹脂を使用した場合におけるアイオノマー樹脂自体の中和度とは異なる。中和度が同じ混合物と、同中和度のアイオノマー樹脂のみとを比較した場合、本発明の前記の混合物は、(d)成分が配合されていることにより非常に多くの金属イオンを含むため、反発性の向上に寄与するイオン架橋が高密度化し、成形物に優れた反発性を付与できる。
【0072】
中間層材料には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、上記(a)〜(e)成分の総和100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0073】
中間層材料については、後述するように、カバー(最外層)として好適に用いられるポリウレタンとの密着度を高めるために中間層表面を研磨することが好適である。更に、その研磨処理の後にプライマー(接着剤)を中間層表面に塗布するか、もしくは材料中に密着強化材を添加することが好ましい。
【0074】
中間層材料の比重は、通常1.1未満であり、好ましくは0.90〜1.05、さらに好ましくは0.93〜0.99である。その範囲を逸脱すると、反発が低くなり飛距離が伸びなくなり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0075】
次に、ボールの最外層に相当するカバーについて説明する。
カバー(最外層)の材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度で、好ましくは44〜58、より好ましくは48〜56、更に好ましくは52〜54である。
【0076】
カバー(最外層)を被覆した球体、即ちボールの表面硬度は、ショアD硬度で、好ましくは52〜67、より好ましくは56〜65、更に好ましくは60〜63である。上記範囲よりも軟らかすぎると、ドライバー(W#1)打撃時やアイアンフルショット時にはスピンが多くなりすぎてしまい飛距離が出なくなることがある。上記範囲よりも硬すぎると、アプローチ時にスピンが不足し、或いは打感が硬くなりすぎる場合がある。
【0077】
カバー(最外層)を被覆した球体、即ちボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは3.2〜4.1mm、より好ましくは3.3〜3.9mm、さらに好ましくは3.4〜3.7mmである。上記の値が大きすぎると、打感が軟らかくなりすぎ、または繰り返し打撃した時の耐久性が悪くなり、或いは、フルショット時の実打初速が低くなり狙いどおりの飛距離が得られなくなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、打感が硬くなりすぎ、フルショット時のスピンが多くなり狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0078】
カバー(最外層)の厚さは、特に制限はないが、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.45〜1.2mm、更に好ましくは0.6〜0.9mmである。その範囲よりも厚すぎると、W#1やアイアンショット時に反発が足りなくなるとともにスピンが多くなり、その結果として飛距離が出なくなることがある。逆に、上記範囲よりも薄すぎると、耐擦過傷性が悪くなり、または、アプローチでのスピンが掛からなくなりコントロール性が不足することがある。
【0079】
カバー(最外層)の材料については、特に制限はなく、各種の熱可塑性樹脂材料を好適に用いることができる。本発明のカバー材料としては、コントロール性と耐擦過傷性の観点から、ウレタン樹脂を使用することが好適である。特に、ボール製品の量産性の観点から、熱可塑性ポリウレタンを主体としたものを使用することが好適であり、より好ましくは、(O)熱可塑性ポリウレタン及び(P)ポリイソシアネート化合物を主成分とする樹脂配合物により形成することができる。
【0080】
上記の(O)及び(P)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物においては、ボール諸特性をより一層改善させるために、本必要十分量の未反応のイソシアネート基がカバー樹脂材料中に存在すればよい。具体的には、上記の(O)成分と(P)成分とを合わせた合計質量が、カバー層全体の質量の60%以上であることが推奨されるものであり、より好ましくは、70%以上である。上記(O)成分及び(P)成分については以下に詳述する。
【0081】
上記(O)熱可塑性ポリウレタンについて述べると、その熱可塑性ポリウレタンの構造は、長鎖ポリオールである高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、鎖延長剤およびポリイソシアネート化合物からなるハードセグメントとを含む。ここで、原料となる長鎖ポリオールとしては、従来から熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの長鎖ポリオールは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、反発弾性率が高く低温特性に優れた熱可塑性ポリウレタンを合成できる点で、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0082】
鎖延長剤としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量400以下の低分子化合物であることが好ましい。鎖延長剤としては、1,4−ブチレングリコール、1,2−エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。鎖延長剤としては、これらのうちでも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールが好ましく、1,4−ブチレングリコールがより好ましい。
【0083】
ポリイソシアネート化合物としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はない。具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−(又は)2,6−トルエンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。ただし、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。本発明においては生産時の安定性と発現される物性とのバランスとの観点から、芳香族ジイソシアネートである4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが最も好ましい。
【0084】
具体的な(O)成分の熱可塑性ポリウレタンとしては、市販品を用いることもでき、例えば、パンデックスT8295,同T8290,同T8283,同T8260(いずれもディーアイシーバイエルポリマー社製)などが挙げられる。
【0085】
上記(O)及び(P)成分の他成分としては、必須成分ではないが、上記熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーを配合することができる。この(Q)成分を上記樹脂配合物に配合することにより、樹脂配合物の更なる流動性の向上や反発性、耐擦過傷性等、ゴルフボールカバー材として要求される諸物性を高めることができる。
【0086】
上記(O)、(P)及び(Q)成分の組成比については、特に制限はないが、本発明の効果を十分に有効に発揮させるためには、質量比で(O):(P):(Q)=100:2〜50:0〜50であることが好ましく、さらに好ましくは、(O):(P):(Q)=100:2〜30:8〜50(質量比)とすることである。
【0087】
さらに、上記の樹脂配合物には、必要に応じて、上記の熱可塑性ポリウレタンを構成する成分以外の種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
【0088】
上述したコア,中間層及びカバー(最外層)の各層を積層して形成されたマルチピースソリッドゴルフボールの製造方法については、公知の射出成形法等の常法により行なうことができる。例えば、ゴム材を主材とした加硫成形物をコアとして所定の射出成形用金型内に配備し、中間層材料を射出して中間球状体を得、次いで、該球状体を別の射出成形用金型内に配備してカバー(最外層)の材料を射出成形することによりマルチピースのゴルフボールを得ることができる。また、カバー(最外層)を中間球状体に被覆する方法により、カバーを積層することもでき、例えば、予め半殻球状に成形した2枚のハーフカップで該中間球状体を包み加熱加圧成形することができる。
【0089】
次に、上記のゴルフボールについては、更に、以下の要件を満たすことが好適である。
(1)
コアとボールとの所定荷重負荷のたわみ量の関係
コアとボールの所定荷重負荷のたわみ量の関係を所定範囲に適正化する。即ち、コアの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をA、ボールの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をCとするとき、A−Cの値は、好ましくは0.7〜1.5、より好ましくは0.9〜1.3、さらに好ましくは1.0〜1.2である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、またはフルショット時の打感が軟らかくなりすぎることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、フルショット時にスピンが増えすぎてしまい狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0090】
(2)
中間層とカバーとの厚さ関係
中間層とカバーとの厚さの取り合いを所定範囲に特定するものである。即ち、中間層厚さからカバー厚さを引いた値は、好ましくは0〜2.0mm、より好ましくは0.1〜1.5mm、さらに好ましくは0.3〜1.0mmである。上記の値が大きすぎると、打感が硬くなりすぎ、またはコアが軟らかくなりすぎて繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、フルショットした時のスピンが多くなりすぎてしまい狙いの飛距離が得られなくなることがある。
また、中間層厚さとカバー厚さとの合計は、好ましくは1.6〜3.0mm、より好ましくは1.8〜2.8mm、さらに好ましくは2.0〜2.6mmである。この合計厚さが大きすぎると、初速が低くなり、ドライバー(W#1)打撃時に飛距離が出なくなることがある。逆に、上記値が小さすぎると、繰り返し打撃した時の耐久性が悪くなることがある。
【0091】
(3)
ボールと中間層被覆球体との表面硬度の関係
ボール表面硬度と中間層被覆球体の表面硬度については、内硬外軟のカバーおよび中間層が硬いボール構造にすべく、ボール表面硬度≦中間層被覆球体の関係を満たすものである。即ち、ボール表面硬度から中間層被覆球体の表面硬度を引いた値は、ショアD硬度で、好ましくは−20〜0、より好ましくは−15〜−1、さらに好ましくは−10〜−2である。この値が大きすぎると、フルショット時のスピンが増えすぎて狙いの飛距離が得られなくなり、またはカバーが硬くなりショートゲームにてスピンが足りずコントロール性が悪くなることがある。上記の値が小さすぎると、カバーが軟らかくなり過ぎ、フルショット時にスピンが増えすぎ、初速が低くなりすぎたりして、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0092】
(4)
コアとボールとの表面硬度の関係
コアとボールとの表面硬度の関係を所定範囲に適正化する。即ち、コアの表面硬度からボールの表面硬度を引いた値は、ショアD硬度で、好ましくは−22〜0、より好ましくは−18〜−5、さらに好ましくは−15〜−10である。この値が大きすぎると、カバーが硬くなりすぎてショートゲーム性が劣り、またはコアが軟らかくなり繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる場合がある。逆に、上記の値が小さすぎると、フルショット時のスピンが増えすぎて狙いの飛距離が得られなくなる場合がある。
【0093】
(5)
コアと中間層被覆球体との所定荷重負荷時のたわみ量の関係
コアの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をA、中間層被覆球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をBとするとき、A−Bの値は、好ましくは0.3〜1.4、より好ましくは0.5〜1.2、さらに好ましくは0.6〜1.0である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、またはフルショットした時の実打初速が低くなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、フルショットした時のスピンが多くなり過ぎて、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0094】
(6)
コアと中間層被覆球体とボールのたわみ量の総和
コア、中間層被覆球体及びボールに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときまでのたわみ量(mm)をそれぞれA、B及びCとすると、A+B+Cの値は11.5以上であり、好ましくは11.5〜13.0、より好ましくは11.7〜12.8、さらに好ましくは11.9〜12.5である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、またはフルショットした時の実打初速が低くなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、フルショットした時のスピンが多くなりすぎて狙いの飛距離が得られなくなり、或いは打感が硬くなりすぎる場合がある。
【0095】
(7)
中間層被覆球体とコアとの表面硬度の関係
中間層被覆球体とコアとの表面硬度の関係を所定範囲に適正化する。即ち、中間層被覆球体の表面硬度からコアの表面硬度を引いた値は、ショアD硬度で、好ましくは7〜24、より好ましくは10〜20、さらに好ましくは13〜16である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、または打感が悪くなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、フルショットした時のスピンが多くなりすぎ、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0096】
(8)
中間層被覆球体とコアとの初速の関係
中間層被覆球体とコアとの初速の関係を所定範囲に適正化する。即ち、中間層被覆球体の初速からコアの初速を引いた値は、好ましくは0〜0.8m/s、より好ましくは0.1〜0.6m/s、さらに好ましくは0.2〜0.4m/sである。上記の値が大きすぎると、ボールにした時の初速がR&A規格外となり、公認球として認められなくなることがある。逆に、上記値が小さすぎると、ドライバー(W#1)打撃時にスピンが多くなり、狙いの飛距離が出なくなることがある。
また、(中間層被覆球体の初速)を(コアの初速)で割った値、即ち、(中間層被覆球体の初速)/(コアの初速)の値が0.995以上であり、好ましくは1.000〜1.008、より好ましくは1.004〜1.006である。上記の値が大きすぎると、ボールにした時の初速がR&A規格外となり、公認球として認められなくなることがある。逆に、上記値が小さすぎると、ドライバー(W#1)打撃時にスピンが多くなり、狙いの飛距離が出なくなることがある。
【0097】
ここで、上記(8)の関係において、コアの初速は、好ましくは76.4〜78.1m/s、より好ましくは76.8〜77.9m/s、さらに好ましくは77.2〜77.5m/sである。また、中間層被覆球体の初速は、好ましくは77.0〜78.1m/s、より好ましくは77.2〜77.9m/s、さらに好ましくは77.5〜77.7m/sである。これらの値が大きすぎると、ボールにした時の初速がR&A規格外となり、公認球として認められなくなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、ボールにした時の初速も低くなり、W#1打撃時に初速が低くなり、飛距離が出なくなることがある。
【0098】
また、ボールの初速は、通常76.5m/s以上、好ましくは76.8m/s以上であり、より好ましくは77.0〜77.7m/sである。上記の初速の値が77.724m/sを超えると、R&A規格外となり、公認球として認められなくなる。逆に、上記値が小さすぎると、ドライバー(W#1)打撃時に初速が低くなり、飛距離が出なくなることがある。また、上記ボールの初速は、中間層被覆球体の初速及びコアの初速との関係において、(ボールの初速)<(コアの初速)<(中間層被覆球体の初速) の式を満足することが好適である。
【0099】
なお、上記のコア、中間層被覆球体及びボールの初速は、R&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速計と同方式の初速測定器を用いて測定することができる。この場合、コア及び中間層被覆球体は23±1℃の温度で3時間以上温度調節し、室温23±2℃の部屋でテストすることができる。
【0100】
上記カバー(最外層)の外表面には多数のディンプルを形成することができる。カバー表面に配置されるディンプルについては、特に制限はないが、好ましくは280個以上、より好ましくは300個以上、更に好ましくは320個以上であり、上限として、好ましくは360個以下、より好ましくは350個以下、更に好ましくは340個以下具備することができる。ディンプルの個数が上記範囲より多くなると、ボールの弾道が低くなり、飛距離が低下することがある。逆に、ディンプル個数が少なくなると、ボールの弾道が高くなり、飛距離が伸びなくなる場合がある。
【0101】
ディンプルの形状については、円形、各種多角形、デュードロップ形、その他楕円形など1種類又は2種類以上を組み合わせて適宜使用することができる。例えば、円形ディンプルを使用する場合には、直径は2.5mm以上6.5mm以下程度、深さは0.08mm以上0.30mm以下とすることができる。
【0102】
ディンプルがゴルフボールの球面に占めるディンプル占有率、具体的には、ディンプルの縁に囲まれた平面の面縁で定義されるディンプル面積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率(SR値)については、空気力学特性を十分に発揮し得る点から60%以上90%以下であることが望ましい。また、各々のディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値V
0は、ボールの弾道の適正化を図る点から0.35以上0.80以下とすることが好適である。更に、ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計がディンプルが存在しないと仮定したボール球容積に占めるVR値は、0.6%以上1.0%以下とすることが好ましい。上述した各数値の範囲を逸脱すると、良好な飛距離が得られない弾道となり、十分満足した飛距離を出せない場合がある。
【0103】
なお、本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、ボール外径としては42.672mm内径のリングを通過しない大きさで42.80mm以下、重さとしては好ましくは45.0〜45.93gに形成することができる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0105】
〔実施例1
,2、参考例I〜III、比較例1〜6〕
コアの形成
表1に示したゴム組成物を調製した後、同表に示す加硫条件により加硫成形することにより、各実施例、比較例
及び参考例のソリッドコアを作製した。
【0106】
【表1】
【0107】
なお、表1に記載した各成分の詳細は以下の通りである。
・ポリブタジエンA:JSR社製、商品名「BR01」
・ポリブタジエンB:JSR社製、商品名「BR51」
・アクリル酸亜鉛:日本触媒社製
・有機過酸化物(1):ジクミルパーオキサイド、日油社製、商品名「パークミルD」
・有機過酸化物(2):1,1ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカの混合物、日油社製、商品名「パーヘキサC−40」
・「水」:蒸留水、和光純薬工業社製
・老化防止剤:2,2−メチレンビス(4−メチル−6−ブチルフェノール)、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラックNS−6」
・硫酸バリウム:商品名「バリコ#300」(ハクスイテック社製)
・酸化亜鉛:商品名「酸化亜鉛3種」(堺化学工業社製)
【0108】
中間層及びカバーの形成
上記で得たコアの周囲に、表2に示した配合の中間層材料を用いて射出成形法により中間層被覆球体を得た。次に、上記で得た中間層被覆球体の周囲に、表2に示した配合のカバー材料を用いて射出成形法によりカバー(最外層)を形成し、コアの周囲に中間層及びカバー(最外層)を備えたゴルフボールを作製した。この際、各実施例、比較例のカバー表面には、特に図示してはいないが、共通するディンプルが形成される。
【0109】
【表2】
【0110】
なお、表2に記載した材料の詳細は下記の通りである。
・「T−8295、T−8290」:DIC Bayer Polymer社製の「(商標)パンデックス」、MDI−PTMGタイプ熱可塑性ポリウレタン
・「ハイミラン1706、ハイミラン1557」:三井・デュポンポリケミカル社製のアイオノマー
・「AN4319、AN4221C」:三井・デュポンポリケミカル社製の「(商標)ニュクレル」、未中和のエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル3元共重合体、及び未中和のエチレン−アクリル酸2元共重合体
・「ハイトレル4001」:東レデュポン社製のポリエステルエラストマー
・「ポリエチレンワックス」:三洋化成社製「サンワックス161P」
・「イソシアネート化合物」:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
・「ステアリン酸マグネシウム」:日油社製「マグネシウムステアレートG」
・「水酸化カルシウム」:白石カルシウム社製「水酸化カルシウムCLS−B」
・「酸化マグネシウム」:協和化学工業社製「キョーワマグMF150」
・「ポリテールH」:三菱化学社製
【0111】
この際、各実施例、比較例のカバー表面には、特に図示してはいないが、共通するディンプルが形成される。
【0112】
得られた各ゴルフボールにつき、コア硬度分布、各層の厚さ及び材料硬度、各被覆球体の表面硬度等の諸物性を下記の方法で評価し、表3(各実施例)及び表4(各比較例)に示す。
【0113】
コア硬度分布
コアの表面は球面であるが、その球面に硬度計の針をほぼ垂直になるようにセットし、JIS K6301−1975規格に従ってJIS−C硬度でコア表面硬度を計測した。
コアの中心及び所定位置における断面硬度については、コアを半球状にカットして断面を平面にして測定部分に硬度計の針を垂直に押し当てて測定した。JIS−C硬度の値で示される。
なお、コア表面のショアD硬度をASTM D2240−95規格に準拠したタイプDデュロメータによっても計測した。
【0114】
コアまたは中間層被覆球体の外径
23.9±1℃の温度で、任意の表面5箇所を測定し、その平均値を1個のコア、中間層被覆球体の測定値とし、測定個数5個のコアまたは中間層被覆球体の平均値を求めた。
【0115】
ボールの直径
23.9±1℃の温度で、任意のディンプルのない部分を5箇所測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数5個のボールの平均値を求めた。
【0116】
コア、中間層被覆球体、ボールのたわみ量
コア、中間層被覆球体又はボールを硬板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときまでのたわみ量をそれぞれ計測した。なお、上記のたわみ量は、いずれも23.9℃に温度調整した後の測定値である。表中、コアのたわみ量をA、中間層被覆球体のたわみ量をB、及び、ボールのたわみ量をCをとし、たわみ量の差(A−Bの値及びA−Cの値)とたわみ量の総和(A+B+Cの値)を計算した。
【0117】
コア、中間層被覆球体、ボールの初速
R&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速計と同方式の初速測定器を用いて測定した。コア、包囲層被覆球体、中間層被覆球体及びボールを23.9±1℃環境下で3時間以上温度調整した後、室温23.9±2℃の部屋でテストした。250ポンド(113.4kg)のヘッド(ストライキングマス)を用いて打撃速度143.8ft/s(43.83m/s)にて各対象球体を打撃し、1ダースのボールを各々4回打撃して6.28ft(1.91m)の間を通過する時間を測定し、初速(m/s)を算出した。約15分間でこのサイクルを行なった。
【0118】
中間層及びカバーの材料硬度(ショアD硬度)
中間層及びカバーの樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、2週間以上放置した。その後、ショアD硬度はASTM D2240−95規格に準拠して計測した
【0119】
中間層被覆球体、ボールの表面硬度(ショアD硬度)
中間層被覆球体又はボール(カバー)の表面に対して針を垂直になるように押し当てて計測した。なお、ボール(カバー)の表面硬度は、ボール表面においてディンプルが形成されていない陸部における測定値である。ショアD硬度はASTM D2240−95規格に準拠したタイプDデュロメータによって計測した。
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
そして、各実施例、比較例のゴルフボールの飛び性能(W#1)、アプローチスピン性能、打感及び割れ耐久性を下記の基準に従って評価した。その結果を表5に示す。
【0123】
飛び性能(W#1打撃)
ゴルフ打撃ロボットにドライバー(W#1)をつけてヘッドスピード(HS)35m/sにて打撃した時の飛距離を測定し、下記基準により評価した。クラブはブリヂストン社製「PHYZIIIドライバー(2015モデル)」(ロフト 11.5°)を使用した。また、スピン量は同様に打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定した。
〔判定基準〕
トータル飛距離152.0m以上 ・・・ ○
トータル飛距離151.0m以上152.0m未満 ・・・ △
トータル飛距離151.0m未満 ・・・ ×
【0124】
アプローチスピン性能
ゴルフ打撃ロボットにサンドウエッジをつけてヘッドスピード(HS)20m/sにて打撃した時のスピンの量を下記の基準により判断した。
〔判定基準〕
スピン量5600rpm以上 ・・・ ○
スピン量5600rpm未満 ・・・ ×
【0125】
打感
ドライバー(W#1)のヘッドスピード(HS)が30〜40m/sのアマチュアゴルファーによる実打における官能評価を行い、下記基準により評価した。
〔判定基準〕
良好な打感と評価した人が10人中6人以上 ・・・ ○
良好な打感と評価した人が10人中3〜5人 ・・・ △
良好な打感と評価した人が10人中2人以下 ・・・ ×
なお、上記の「良好な打感」とは、適度な軟らかさと弾き感が感じられるものをいう。
【0126】
割れ耐久性
ゴルフ打撃ロボットに飛び評価と同様のドライバー(W#1)を付けて、ヘッドスピード45m/sにて繰り返し打撃した。各ボールについて、初期10回の平均初速対比で、初速が97%以下になった時の回数を耐久性低下と判断した。測定個数3個のゴルフボールの平均値を評価対象値とした。そして、実施例2の回数を100とした場合の各々の指数を算出し、その指数について下記基準にて評価した。
〔判定基準〕
◎:耐久値110以上
△:耐久値95以上110未満
×:耐久値95未満
【0127】
【表5】
【0128】
比較例1は、所定荷重負荷時のボールのたわみ量、中間層被覆球体のたわみ量、及びコアのたわみ量が小さく、各球体が硬くなり、その結果、W#1のフルショット時のスピンが多くなり、飛距離が出ない。また、打感が硬く感じられる。
比較例2は、所定荷重負荷時のボールのたわみ量、中間層被覆球体のたわみ量、及びコアのたわみ量が小さく、各球体が硬くなり、その結果、W#1のフルショット時のスピンが多くなり、飛距離が出ない。また、打感が硬く感じられる。
比較例3は、ボールの表面硬度が中間層被覆球体の表面硬度よりも硬くなり、その結果、アプローチでのスピン性能に劣る。
比較例4は、中間層厚さがカバー厚さよりも薄いものであり、その結果
、繰り返し打撃による耐久性も悪くなる。
比較例5は、中間層被覆球体の初速/コア初速の値が0.995よりも小さいものであり、その結果、ボール初速が低くなると共に、フルショット時のスピンが増えてしまい、狙いの飛距離が出ない。
比較例6は、中間層被覆球体の初速/コア初速が0.995よりも小さいものであり、その結果、ボール初速が低くなると共に、フルショット時のスピンが増えてしまい、狙いの飛距離が出ない。