特許第6613718号(P6613718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6613718
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/52 20060101AFI20191125BHJP
【FI】
   B29D30/52
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-165671(P2015-165671)
(22)【出願日】2015年8月25日
(65)【公開番号】特開2017-42959(P2017-42959A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 幹太
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭34−002242(JP,B1)
【文献】 特開2008−284777(JP,A)
【文献】 特開2004−188858(JP,A)
【文献】 特開昭55−059865(JP,A)
【文献】 特開平03−072975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
B60C 1/00
11/00
C08J 7/04−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムコンパウンドを溶解したソリューションと、
加硫されてタイヤのトレッドを形成し、トレッド面を形成する表面を備えるトレッド部材本体とが準備される準備工程と、
上記ソリューションが上記トレッド部材本体の上記表面に塗布される塗布工程と、
上記ソリューションを乾燥させて上記表面を覆うコーティング層部材が形成される乾燥工程とを備えており、
上記コーティング層部材が加硫されて上記トレッド面を覆うコーティング層を形成しており、
上記コーティング層部材の粘着性が上記表面における上記トレッド部材本体の粘着性より低くされており、
上記コーティング層部材のタックが1.0(N)以上3.0(N)以下にされているトレッド部材の製造方法。
【請求項2】
上記表面における上記トレッド部材本体のタックが5.0(N)以上にされている請求項1に記載のトレッド部材の製造方法。
【請求項3】
上記塗布工程において、上記ソリューションが、下向きにされた上記表面に塗布される請求項1又は2に記載のトレッド部材の製造方法。
【請求項4】
上記コーティング層部材の厚さが、0.1mm以上1.0mm以下にされている請求項1から3のいずれかに記載のトレッド部材の製造方法。
【請求項5】
上記ソリューションが、上記ゴムコンパウンドをナフサに溶解して得られており、
上記ソリューションにおいて、上記ゴムコンパウンドが100質量部に対して、上記ナフサが500質量部以上1300質量部以下にされている請求項1から4のいずれかに記載のトレッド部材の製造方法。
【請求項6】
路面に接地するトレッド面を形成するトレッドと、このトレッド面を覆うコーティング層を備えており、
上記コーティング層が、コーティング層部材が加硫された架橋ゴムからなっており、
上記トレッドが、トレッド部材本体が加硫された架橋ゴムからなっており、
上記コーティング層の厚さが、0.1mm以上1.0mm以下にされている、タイヤが得られる未加硫の生タイヤであって、
上記コーティング層部材の粘着性が、上記トレッド面を形成する表面における上記トレ
ッド部材本体の粘着性より低くされており、
上記コーティング層部材のタックが1.0(N)以上3.0(N)以下である生タイヤ
【請求項7】
上記トレッド面を構成する表面における上記トレッド部材本体のタックが5.0(N)以上である請求項6に記載の生タイヤ

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法に関する。詳細には、本発明は、タイヤのトレッド部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造方法は、予備成形工程及び加硫成型工程を備えている。予備成型工程では、タイヤの各部を構成する部材が貼り合わされてローカバー(生タイヤ)が形成される。加硫成形工程では、このローカバーが金型で加硫成型されて、タイヤが得られる。予備成型工程において、タイヤの各部を構成する部材の一つとして、トレッドを構成するトレッド部材が準備される。このトレッド部材は、粘着性の高い未加硫ゴムからなっている。
【0003】
特開2015−89664号公報には、このトレッド部材、又はトレッド部材が接触するトレイの少なくとも一方の表面を、粗面化することが開示されている。これにより、トレッド部材がトレイに密着するこが抑制されている。このトレッド部材は、容易にトレイから剥がされる。特開2003−118319号公報には、トレッド面にローレット状突起帯を形成したタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−89664号公報
【特許文献2】特開2003−118319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粘着性の高いトレッド部材同士が直接に接すると、密着し剥がし難い。剥がす際に、トレッド部材を損傷する恐れがある。一般に、トレッド部材同士が接しないように、ポリシートでトレッド部材の表面が覆われる。例えば、押し出し成形されたトレッド部材が、一旦リールに捲き取られることがある。このリールに巻きとされるときに、トレッド部材が直接に接しないように、ポリシートが間に挟まれる。トレッド部材は、このリールから繰り出されて、ポリシートが剥がされる。このトレッド部材が所定の長さに切断される。切断されたトレッド部材は、予備成形工程に送られる。
【0006】
粘着性が特に高いトレッド部材では、ポリシートが剥がれ難い。自動ラインでは、このポリシートを剥がすために、作業者の補助作業が必要とされることがある。粘着性が特に高いトレッド部材は、生産性を低下させることがある。トレッド部材の表面やポリシートの表面に凹凸を形成して、ポリシートを剥がれ易くする工夫がされている。しかしながら、粘着性の高いトレッド部材では、トレッド部材の表面やポリシートの表面に凹凸を形成しただけでは、ポリシートが上手く剥がれないことがある。近年、タイヤ性能の向上の観点から、従来より更に粘着性の高いトレッド部材が使用される。かかるトレッド部材では、タイヤの生産性が損なわれやすい。
【0007】
本発明の目的は、生産性に優れたトレッド部材の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るトレッド部材の製造方法では、
ゴムコンパウンドを溶解したソリューションと、加硫されてタイヤのトレッドを形成し、トレッド面を形成する表面を備えるトレッド部材本体とが準備される準備工程と、
上記ソリューションが上記トレッド部材本体の上記表面に塗布される塗布工程と、
上記ソリューションを乾燥させて上記表面を覆おうコーティング層部材が形成される乾燥工程とを備えている。
上記コーティング層部材は、加硫されて上記トレッド面を覆うコーティング層を形成している。上記コーティング層部材の粘着性は、上記表面における上記トレッド部材の粘着性より低くされている。
【0009】
好ましくは、上記ソリューションが、下向きにされた上記表面に塗布される。
【0010】
好ましくは、上記コーティング層部材の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下にされている。
【0011】
好ましくは、上記表面における上記トレッド部材のタックは、5.0(N)以上にされている。上記コーティング層部材のタックは、1.0(N)以上3.0(N)以下にされている。
【0012】
好ましくは、上記ソリューションは、上記ゴムコンパウンドをナフサに溶解して得られている。上記ソリューションにおいて、上記ゴムコンパウンドが100質量部に対して、上記ナフサが500質量部以上1300質量部以下にされている。
【0013】
本発明に係るタイヤのトレッド部材の製造装置は、トレッド部材本体を搬送する搬送装置と、このトレッド部材本体の表面にソリューションを塗布するコーティング装置とを備えている。上記コーティング装置は、上記搬送装置が搬送する上記トレッド部材本体の上記表面に、上記ソリューションを塗布するコーティング用具を備えている。上記トレッド部材本体は、加硫されてタイヤのトレッドを形成する未加硫ゴムである。上記トレッド部材本体の上記表面は、トレッド面を形成する表面である。上記ソリューションは、ゴムコンパウンドを溶解した溶液である。このトレッド部材は、上記トレッド部材本体と、上記ソリューションから形成されて上記トレッド部材の上記表面を覆うコーティング層部材とからなっている。
【0014】
好ましくは、上記コーティング装置は、下向きにされた上記表面に、上記ソリューションを塗布する上記コーティング用具を備えている。
【0015】
本発明に係るタイヤは、路面に接地するトレッド面を形成するトレッドと、このトレッド面を覆うコーティング層を備えている。上記コーティング層は、架橋ゴムからなっている。上記コーティング層の粘着性は、上記トレッド面における上記トレッドの粘着性より低くされている。上記コーティング層の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下にされている。
【0016】
好ましくは、上記トレッドは、トレッド部材本体が加硫された架橋ゴムからなっている。上記トレッド面を構成する表面における上記トレッド部材のタックは、5.0(N)以上である。上記コーティング層は、コーティング層部材が加硫された架橋ゴムからなっている。上記コーティング層部材のタックは、1.0(N)以上3.0(N)以下である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るトレッド部材の製造方法では、コーティン層部材が形成されている。このコーティング層部材により、トレッド部材は、他のトレッド部材やシートなどと密着することが抑制されている。この製造方法は、生産性に優れている。この製造方法では、コーティング層部材が形成されることで、従来より粘着性の高いトレッド部材を用いたタイヤが、効率的に生産されうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤが示された断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法の説明図である。
図3図3は、図2に示されたコーティング装置のコーティング用具が示された断面図である。
図4図4は、図3のコーティング用具の使用状態が示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0020】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、赤道面に対して対称である。このタイヤ2は、例えば、レース用車両(四輪車)に装着される。このタイヤ2は、トレッドに溝が形成されていない。このタイヤ2は、所謂スリックタイヤである。
【0021】
タイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、インナーライナー18及びコーティング層20を備えている。
【0022】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。このトレッド4は、トレッド面22を備えている。このトレッド面22は、コーティング層20が摩滅後に、路面に接地する。図されないが、トレッド4は、ベース層とキャップ層とを有している。キャップ層は、ベース層の半径方向外側に位置している。キャップ層は、ベース層に積層されている。ベース層の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。レース用車両に装着されるタイヤ2では、キャップ層は、高いグリップ力を得るため、特に粘着性に優れた架橋ゴムからなっている。このキャップ層がトレッド面22を形成している。
【0023】
カーカス12は、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿って一方のビード10と他方のビード10との間に架け渡されている。このカーカス12は、タイヤ2の骨格を形成する。。
【0024】
ベルト14は、トレッド4の半径方向内側において、カーカス12に積層されている。ベルト14は、カーカス12の半径方向外側に積層されてもよく、内側に積層されてもよい。バンド16は、トレッド4の半径方向内側において、カーカス12及びベルト14の半径方向外側に積層されている。このベルト14及びバンド16は、それぞれ並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。このベルト14とバンド16は、カーカス12を補強する。このベルト14とバンド16は、補強層を構成している。
【0025】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置している。インナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。このタイヤ2は、空気入りタイヤである。
【0026】
コーティング層20は、トレッド面22に積層されている。コーティング層20は、トレッド面22の全面を覆っている。コーティング層20は、初期トレッド面24を備えている。初期トレッド面24は、走行初期において路面に接地する。コーティング層20は、グリップ性に優れた架橋ゴムからなる。コーティング層20の粘着性は、トレッド4のキャップ層の粘着性より、低くされている。
【0027】
図1の点Pcは、初期トレッド面24と赤道面との交点を表している。点Peは、初期トレッド面24におけるトレッド端を表している。このトレッド端Peは、正規内圧の空気が充填され、正規荷重が負荷された状態で、路面に接地する初期トレッド面24の軸方向端を表している。
【0028】
このコーティング層20の厚さは、トレッド端Peから軸方向端に向かって、徐々に薄くされている。このタイヤ2では、一方のトレッド端Peから他方トレッド端Peまで、コーティング層の厚さは略一定にされている。一方のトレッド端Peから他方トレッド端Peまで、このコーティング層の厚さは、異なってもよい。
【0029】
図2には、搬送装置26及びコーティング装置28が示されている。この図2の左右方向左向きが搬送装置26及びコーティング装置28の前後方向前向きであり、図2の紙面に垂直方向が搬送装置26及びコーティング装置28の左右方向である。図2には、更に、トレッド部材29が示されている。このトレッド部材29は、トレッド部材本体30と、その表面30aを覆うコーティング層部材32とを備えている。図2の紙面に垂直方向は、このトレッド部材29の幅方向でもある。
【0030】
このトレッド部材本体30は未加硫ゴムからなっている。トレッド部材本体30は、加硫されてトレッド4を構成する。トレッド部材本体30は、トレッド4のキャップ層を構成するキャップ層部材と、ベース層を構成するベース層部材とが重ね合わされている。コーティング層部材32は未加硫ゴムからなっている。コーティング層部材32は、加硫されてコーティング層20を構成する。
【0031】
搬送装置26は、搬送ローラー34と、図示されない駆動装置を備えている。搬送装置26は、トレッド部材29を搬送する。図2の矢印Fは、トレッド部材29が搬送される向きを示している。この搬送装置26は、トレッド部材29を、その長手方向に沿って搬送する。
【0032】
この搬送装置26は、コーティング装置28の上方において、トレッド部材本体30の表面30aを下向きにして搬送している。トレッド部材本体30は、水平方向に搬送されている。搬送ローラー34は、トレッド部材本体30の搬送向きを上方向きに変更している。トレッド部材本体30は、上方に向かって搬送されている。トレッド部材本体30の表面30aは、斜め上方に向けられている。トレッド部材本体30及びコーティング層部材32は、上方に向かって搬送されている。
【0033】
コーティング装置28は、コーティング用具としてのスポンジローラー36と、トレイ38とを備えている。
【0034】
図3に示される様に、スポンジローラー36は、ローラー本体40及びスポンジ42を備えている。ローラー本体40は円筒形状を備えている。スポンジ42は円筒形状を備えている。スポンジ42はローラー本体40の外周面を覆っている。スポンジローラー36は、左右方向を回転軸として、回転可能にされている。
【0035】
図4では、このスポンジローラー36の外周面36aがトレッド部材本体30の表面30aに接している。スポンジ42は、トレッド部材本体30の表面30aの形状に合わせて変形している。言い換えると、スポンジローラー36の外周面36aは、表面30aの形状に沿って変形している。このトレッド部材本体30が搬送られることで、トレッド部材本体30に接するスポンジローラー36は回転させられる。
【0036】
図2に示されるトレイ38には、ソリューション44が蓄えられている。このソリューション44は、コーティング層部材32を構成するゴムコンパウンドが溶解されて得られる溶液である。このソリューション44は、流動性に優れている。
【0037】
図2及び図4を参照しつつ、本発明に係るタイヤ2の製造方法が説明される。このタイヤ2の製造方法は、トレッド部材製造工程と、予備成型工程と、加硫成型工程とを備えている。
【0038】
トレッド部材29の製造方法としての、トレッド部材製造工程は、準備工程、塗布工程、乾燥工程及び巻き取り工程を備えている。
【0039】
図示されないが、準備工程では、トレッド4のキャップ層用配合ゴムが加熱されながら練られる。練られたキャップ層用配合ゴムは、キャップ層押出機に投入される。キャップ層押出機は、キャップ層部材の断面形状に設定された口金を備えている。キャップ層用配合ゴムが、この口金から押し出されて、キャップ層部材が得られる。同様にして、トレッド4のベース層用配合ゴムが、ベース層押出機に投入される。ベース層押出機は、ベース層部材の断面形状に設定された口金を備えている。ベース層用配合ゴムが、この口金から押し出されて、ベース層部材が得られる。このキャップ層部材とベース層部材とが重ね合わされてトレッド部材本体30が準備される。
【0040】
更に、コーティング層部材32を構成するゴムコンパウンドがナフサに溶解されて、ソリューション44が準備される。このソリューション44は、例えば、100質量部のゴムコンパウンドに対して900質量部のナフサが準備されて、このゴムコンパウンドがこのナフサに溶解されて得られている。
【0041】
図2に示される様に、塗布工程では、このトレッド部材本体30が、搬送装置26によって搬送される。トレッド部材本体30は、その表面30aが下向きに面する姿勢にされている。トレッド部材本体30は、その姿勢で、コーティング装置28に向かって搬送される。ここでは、搬送装置26は、トレッド部材本体30をトレッド押出機から連続に搬送しているが、これに限られない。押出機から押し出されたトレッド部材本体30がリールに捲き取られてもよい。このリールから繰り出されるトレッド部材本体30を、搬送装置26が、コーティング装置28に向かって搬送してもよい。
【0042】
コーティング装置28では、スポンジローラー36の下部は、ソリューション44に浸されている。スポンジローラー36は、ソリューション44を吸い込んでいる。図4に示される様に、このトレッド部材本体30の表面30aは、スポンジローラー36に接触している。トレッド部材本体30がその長手方向に送られることで、スポンジローラー36が回転する。スポンジローラー36は、トレッド部材本体30の表面30aに、ソリューション44を塗布する。
【0043】
乾燥工程では、表面30aにソリューション44が塗布されたトレッド部材本体30が搬送される。このトレッド部材本体30は、搬送ローラー34に向かって搬送される。更に、トレッド部材本体30は、搬送ローラー34から、図示されないリールに向かって搬送される。この搬送の過程で、ソリューション44が乾燥させられる。ソリューション44から主にナフサが蒸発する。ソリューション44からコーティング層部材32が形成される。この様にして、トレッド部材本体30の表面30aがコーティング層部材32に覆われたトレッド部材29が得られる。
【0044】
図示されないが、この乾燥工程に、乾燥装置が用いられてもよい。コーティング装置28より、トレッド部材本体30の搬送方向下流側に、乾燥装置を設置してもよい。例えば、搬送方向において、搬送ローラー34の下流に、乾燥装置が設置される。この乾燥装置によって、ソリューション44からコーティング層部材32が形成されることが促進されてもよい。
【0045】
図示されないが、巻き取り工程では、シートが、コーティング層部材32の表面32aに重ねられる。シートがコーティング層部材32の表面32aの全面を覆う。このシートは、表面32aに異物などが付着するのを防止する。このシートとしては、ポリシート(ポリエチレン樹脂からなる薄い帯状のシート)が例示される。このトレッド部材29は、シートと共に、図示しないリールに捲き取られる。
【0046】
予備成型工程では、トレッド部材29の他に、サイドウォール6、クリンチ8、ビード10、カーカス12等、タイヤ2の各部を構成する部材が準備される。これらの部材が組み合わされて、未加硫のローカバー(生タイヤ)が得られる。
【0047】
この予備成型工程では、このトレッド部材29は、シートと共にリールに捲き取られた状態で準備される。このリールから、トレッド部材29がシートと共に繰り出される。このシートが、コーティング層部材32から剥がされる。トレッド部材29は、その長手方向に所定の長さで切断される。所定の長さに切断されたトレッド部材29が、他の各部を構成する部材と組み合わされて、未加硫のローカバーが得られる。シートは、所定の長さに切断された後に剥がされてもよい。シートは、ローカバーから剥がされてもよい。
【0048】
加硫成型工程では、このローカバーが金型に投入される。ローカバーが、所定の圧力及び温度で加硫成型される。このローカバーからタイヤ2が得られる。
【0049】
本発明のトレッド部材29の製造方法では、ソリューション44が、トレッド部材本体30の表面30aに塗布されている。このソリューション44は、ゴムコンパウンドそのものに比べて流動性に優れている。このソリューション44が塗布されることで、表面30aは、ソリューション44でムラなく覆われる。これにより、表面30aの全面に、コーティング層部材32が形成されている。この方法によれば、表面30aに、薄くムラなくコーティング層部材32を形成しうる。
【0050】
図4に示される様に、このトレッド部材本体30は、表面30aを下向きにした姿勢にされている。この姿勢で、ソリューション44が塗布されている。表面30aが下向きにされているので、ソリューション44が裏面30bに付着することが抑制されている。これにより、コーティン層部材32が裏面30bに形成されることが抑制されている。
【0051】
この表面30aの下向きは、鉛直方向真下の向きに限られない。この表面30aを下向きにした姿勢は、ソリューション44が裏面30bに付着することを抑制できればよい。この観点から、トレッド部材本体30の表面30aに垂直に交差する直線と鉛直方向の直線とのなす角度の絶対値は、好ましくは、60°以下であり、更に好ましくは45°以下であり、特に好ましくは30°以下である。この角度は、トレッド部材本体30の長手方向において、スポンジローラー36と表面30aとが接触する位置で測定される。このスポンジローラ36では、スポンジローラー36の回転中心を通り、鉛直方向に延びる直線が表面30aと交差する位置で測定される。
【0052】
更に、下向きされた表面30aに、ソリューション44を薄くムラなく塗布する観点から、この表面30aに垂直に交差する直線と鉛直方向の直線とのなす角度の絶対値は、好ましくは、20°以下であり、更に好ましくは15°以下であり、特に好ましくは10°以下である。
【0053】
下向きにされた表面30aは、その幅方向両端部において、軸方向内側から外側に向かって、下方から上方向きに傾斜して延びている。ソリューション44は、この幅方向両端部において、傾斜して延びる表面30aに沿って流動する。これにより、幅方向両端部において、コーティング層部材32の厚さを、幅方向端に向かって薄くすることが、容易にされている。
【0054】
このソリューション44は、ゴムコンパウンドをナフサに溶解することで、優れた流動性を発揮する。更に、このソリューション44は、ナフサを使用することで、速乾性に優れている。優れた流動性を発揮させる観点から、100質量部のゴムコンパウンドに対して、ナフサは好ましくは500質量部以上にされ、更に好ましくは700質量部以上にされる。一方で、トレッド部材本体30の表面30aをコーティング層部材32で幅方向一端から他端までの全面をムラなく覆う観点から、100質量部のゴムコンパウンドに対して、ナフサは好ましくは1300質量部以下にされ、更に好ましくは1100質量部以下にされる。
【0055】
このコーティング層部材32の粘着性は、トレッド部材本体30の表面30aの粘着性より低い。粘着性の高い表面30aをコーティング層部材32で覆うことで、表面30aに異物が付着することが抑制される。このコーティング層部材32にシートを貼り合わせることで、表面30aにシートを貼り合わせるときに比較して、シートが剥がし易い。自動ラインにおいて、シートが容易に剥がされる。シートを剥がす際に、シートが破れることが抑制される。この方法は、トレッド部材29の生産性に優れている。
【0056】
この製造方法では、搬送装置26が、トレッド部材本体30をその長手方向に搬送する。コーティング装置28が、搬送されるトレッド部材本体30の表面30aにソリューション44を塗布する。このコーティング装置28は、ソリューション44を蓄えるトレイ38と、このソリューション44を表面30aに塗布するスポンジローラー36を備えている。この搬送装置26及びコーティング装置28を備えるトレッド部材の製造装置は、トレッド部材本体30の表面30aの全面に容易にコーティング層部材32を形成できる。この製造装置によって、タイヤ2にコーティング層20を容易に形成できる。搬送装置26及びコーティング装置28は、従来の生産ラインに容易に後付けできる。
【0057】
このタイヤ2は、トレッド部材30の表面30aがコーティング層部材32に覆われている。表面30aの粘着性を高くしても、生産性が損なわれることが抑制されている。表面30aの粘着性を高くしても、保管や運搬の際の手間の増加が抑制されている。これにより、特に粘着性の高い表面30aを備えるトレッド部材30を用いても、効率よくタイヤ2を生産できる。特に粘着性の高いトレッド部材30を用いることで、トレッド4のキャップ層に特に粘着性に優れる架橋ゴムを容易に採用しうる。これにより、優れたグリップ力を発揮するタイヤ2を効率的に生産できる。
【0058】
レース用車両では、タイヤ2に特に優れたグリップ力を要求される。レースでは、スタート前にフォーメーションラップが行われる。このフォーメーションラップでは、レース用車両が蛇行走行させられる。このタイヤ2のコーティング層20は薄いので、フォーメンションラップで除去されうる。このタイヤ2は、早期にトレッド面22が路面に接地する。このタイヤ2は、優れたグリップ力を要求されるレース用タイヤに特に適している。
【0059】
コーティング層部材32を厚くすることで、タイヤ2の製造工程において、トレッド部材本体30の表面30aやトレッド面20の露出が抑制される。更には、走行初期まで、トレッド面20の露出が抑制される。この観点から、コーティング層部材32の厚さは、好ましくは、0.1mm以上にされている。この厚さは、更に好ましくは0.3mm以上であり、特に好ましくは0.5mm以上である。このコーティング層部材32の厚さは、トレッド部材本体30の長手方向に垂直に切り出された断面において、測定される。この厚さは、トレッド部材本体30の幅方向中央において、測定される。トレッド部材本体30の表面30aの幅方向一端から他端まで、この厚さにされることが好ましい。
【0060】
同様の観点から、コーティング層20の厚さは、好ましくは、0.1mm以上にされている。この厚さは、更に好ましくは0.3mm以上であり、特に好ましくは0.5mm以上である。このコーティング層20の厚さは、タイヤ2の周方向に対して垂直に切り出された断面において、測定される。この厚さは、タイヤ2の赤道面において、測定される。トレッド面22の幅方向一端から他端まで、この厚さにされることが好ましい。
【0061】
一方で、このタイヤ2では、走行初期に、コーティング層20を摩滅させ、トレッド面22が路面に接地することが好ましい。この観点から、コーティング層部材30の厚さは、好ましくは、1.0mm以下である。この厚さは、更に好ましくは0.8mm以下であり、特に好ましくは0.7mm以下である。
【0062】
同様の観点から、タイヤ2のコーティング層20の厚さは、好ましくは、1.0mm以下にされている。この厚さは、更に好ましくは0.8mm以下であり、特に好ましくは0.7mm以下である。
【0063】
優れたグリップ力を得る観点から、トレッド面22におけるトレッド4は高い粘着性を発揮することが好ましい。この観点から、表面30aにおけるトレッド部材本体30のタックは、好ましくは5.0(N)以上にされる。更に好ましくは、このタックは、6.0(N)以上にされる。このタックは、好ましくは7.0(N)以下にされる。また、生産性等の観点から、コーティング層部材32のタックは、好ましくは3.0(N)以下にされ、更に好ましくは2.0(N)以下にされる。一方で、このコーティング層20は、タイヤ2の走行初期において、路面に接地する。タイヤ2の初期走行におけるグリップ力を確保する観点から、コーティング層部材32のタックは、好ましくは1.0(N)以上にされる。
【0064】
本発明のタックは、粘着性試験機として、東洋精機製作所製「PICMAタックテスター」を用いて測定された粘着力(N)を表している。12.7(mm)×152(mm)の未加硫ゴムからなる試験片を準備する。この試験片が、JIS T9233に準拠して、温度23℃、圧着荷重4.9(N)、圧着時間10秒の条件で、アルミニウム製の接着部円盤に圧着される。その後、速度10(mm/min)の条件で、接着部円盤から引きはがされる。この引きはがすときの力の最大値が求められる。この最大値が、本発明のタックの値である。このタックの値は、5回の測定の平均値として求められる。本発明において、このタックの値が大きいほど、粘着性が高いとされる。
【0065】
このタイヤ2では、コーティング層20の厚さは、軸方向端部において、端に向かって徐々に薄くされている。このタイヤ2では、トレッド端Peから軸方向外側に向かって徐々に薄くされている。トレッド端Peの軸方向外側の初期トレッド面24は、一定速度の通常走行では接地し難い。トレッド端Peの軸方向外側のトレッド面24は、旋回走行、制動及び加速の際に接地する。トレッド端Peの軸方向外側では、コーティング層20が薄くされている。これにより、トレッド端Peの軸方向外側でも、早期にコーティング層20が摩滅する。早期にトレッド面22の全面が露出する。
【0066】
このトレッド部材本体30の製造方法では、スポンジローラー36が用いられた。スポンジローラー36は、吸液性に優れているので、ソリューション44を吸い込み易い。スポンジローラー36は、ソリューション44を保持し易い。更に、スポンジローラー36は、トレッド部材本体30の表面30aの形状に沿って変形し易い。このスポンジローラー36は、表面30aにソリューション44を塗布するコーティング用具に適している。スポンジローラー36の外周面36aが、表面30aの形状に沿った形状に、予めされていてもよい。
【0067】
このコーティング装置28のコーティング用具は、スポンジローラー36に限られない。ソリューション44をトレッド部材本体30の表面30aに塗布可能であり、かつ表面30aの形状に沿って変形可能なものであればよい。このコーティング用具は、例えば、ローラー本体40の外周面に、布が厚く巻かれていてもよい。
【0068】
このトレッド部材29の製造方法では、押出機に連続して、トレッド部材本体30に、コーティング層部材32が形成されている。押出機から押し出されたトレッド部材本体30の表面30aが、この押し出し工程に連続して、コーティング層部材32で覆われている。この方法では、コーティング装置28に送られる前のトレッド部材本体30で、その表面30aをシート等で覆う必要がない。この方法は、生産性に優れている。
【0069】
ここでは、押出機に連続してトレッド部材本体30にコーティング層部材32が形成されたが、この方法に限られない。押出機から押し出されたトレッド部材本体30が、一旦、リールに巻かれてもよい。このリールに巻かれるときに、表面30aがシート等で覆われていてもよい。このリールからトレッド部材本体30が繰り出されてもよい。このトレッド部材本体30からシートが剥がされて、コーティング装置28に送られてもよい。
【0070】
図示されないが、コーティング装置28は、塗布ガイドローラーを備えてもよい。この塗布ガイドローラーは、円筒形状を備える。塗布ガイドローラーは、左右方向を回転軸として、回転可能にされる。塗布ガイドローラーは、上下方向においてトレッド部材本体30を間にして、スポンジローラー36の上方に配置される。この塗布ガイドローラーの軸線は、スポンジローラー36の軸線と平行に配置される。トレッド部材本体30の裏面30bが塗布ガイドローラーに支持された状態で、スポンジローラー36がトレッド部材本体30の表面30aにソリューション44を塗布する。この方法では、塗布ガイドローラーがトレッド部材本体30の裏面30bを支持することで、スポンジローラー36と表面30aとの接触が安定する。表面30aに塗布されるソリューション44の量がより均一化される。
【0071】
図示されないが、コーティング装置28は、厚さ調整装置を備えていてもよい。厚さ調整装置は、ガイド板とガイドローラーとを備える。ガイド板は、トレッド部材本体30の表面30aの下方に配置される。ガイド板の上端縁は、コーティング層部材32の表面32aの形状に略沿った形状にされる。ガイドローラーは、円筒形状を備えている。ガイドローラーは、左右方向を回転軸にして回転可能にされる。ガイドローラーは、上下方向においてトレッド部材を間にして、ガイド板の上方に配置される。
【0072】
ソリューション44が塗布されたトレッド部材本体30は、厚さ調整装置40に向かって送られる。厚さ調整装置40では、トレッド部材本体30の裏面30bは、ガイドローラーに接触する。ガイド板は、トレッド部材本体30に塗布されたソリューション44に接する。トレッド部材本体30がその長手方向に送られることで、ガイドローラーが回転する。ガイド板の上端縁によって、余分に塗布されたソリューション44が除去される。
【0073】
ガイド板の上端縁とトレッド部材本体30の表面30aとの間には、塗布されたソリューション44の厚さを調整する間隔が形成されている。この間隔は、トレッド部材本体30の幅方向中央で略一定にされる。この間隔は、トレッド部材本体30の幅方向端部で、中央側から端に向かって徐々に薄くされてもよい。このトレッド部材本体30及びソリューション44は、ガイドローラーとガイド板との間を通って、搬送ローラー34に向かって搬送される。これにより、コーティング層部材32の厚さの調整が更に容易にできる。
【0074】
本発明では、特に言及しない限り、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。本明細書において正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【実施例】
【0075】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0076】
この実施例では、ゴムコンパウンドC1及びC2が準備された。これらの配合は、下記の表1に示されている。ゴムコンパウンドC1及びC2は、表1に示された質量%で配合されていた。
【0077】
【表1】
【0078】
100質量部のゴムコンパウンドC1が、900質量部のナフサに溶解されて、ソリューションC1が得られた。同様にして、100質量部のゴムコンパウンドC2が900質量部のナフサに溶解されて、ソリューションC2が得られた。
【0079】
[実施例1]
図2に示されたトレッド部材の製造装置を用いて、トレッド部材を製造した。このトレッド部材の表面に、ソリューションC2により、コーティング層部材が形成された。このコーティング層部材の厚さは0.5(mm)であった。この厚さは、トレッド部材の赤道面位置において測定された。このトレッド部材を用いて、10本のタイヤが製造された。このタイヤは、レース用車両(四輪車)に装着されるスリックタイヤであった。このタイヤサイズは「300/680R18 SLICK」であった。
【0080】
[比較例]
コーティング層が形成されない他は、実施例1と同様にして10本のタイヤが得られた。
【0081】
[実施例2−4]
コーティング層部材の厚さが表2に示される様にされた他は、実施例1と同様にして10本のタイヤが得られた。
【0082】
[実施例5]
ソリューションC2に代えてソリューションC1を用いた。その他は、実施例2と同様にして10本のタイヤが得られた。
【0083】
[作業性及びシート破損の評価]
タイヤの予備成型工程において、トレッド部材は、シートと共にリールに捲き取られた状態で準備された。このリールから、トレッド部材がシートと共に繰り出された。このリールから繰り出されるときに、シートが自動で剥がされた。シートを自動で剥がす際に、問題なく剥がすことができたか否か、作業者の補助が必要であったどうかが評価された。また、シートを剥がす際に、シートの破れ等の破損を生じたか否かが評価された。この評価結果が表2に示されている。作業性及びシート破損の評価は、相対評価であり、Aが最も優れており、Cが最も劣っている。比較例のタイヤを基準値Cとして、評価がされた。作業性において、比較例及び実施例5のタイヤでは、シートを剥がす際に作業者の補助が必要であった。シート破損において、比較例のタイヤでは、剥がされたシートに破れが確認された。
【0084】
[コーティング層厚さの測定]
タイヤがレース用車両に装着された。この車両が、4kmのサーキットコースを1周走行した。このときに、レースのスタート前のフォーメーションラップと同様にして、この車両が蛇行走行させられた。走行後のタイヤのコーティング層の厚さが測定された。この厚さは、タイヤの赤道面において測定された。その結果が表2に示されている。
【0085】
[総合評価]
タイヤの生産性と、タイヤ性能の早期発揮の観点から、総合評価がされた。この評価は、相対評価であり、Aが最も優れており、Cが最も劣っている。比較例のタイヤを基準値Cとして、評価がされた。その結果が表2に示されている。
【0086】
【表2】
【0087】
表2に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明された方法は、タイヤのトレッドの製造方法として広く適用されうる。特に、優れたグリップ力を要求されるレース用タイヤで、大きな効果を得られる。
【符号の説明】
【0089】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
20・・・コーティング層
22・・・トレッド面
24・・・初期トレッド面
26・・・搬送装置
28・・・コーティング装置
29・・・トレッド部材
30・・・トレッド部材本体
32・・・コーティング層部材
34・・・搬送ローラー
36・・・スポンジローラー
40・・・ローラー本体
42・・・スポンジ
48・・・ソリューション
図1
図2
図3
図4