特許第6613835号(P6613835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6613835
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/80 20130101AFI20191125BHJP
【FI】
   H04B10/80
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-222238(P2015-222238)
(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公開番号】特開2017-92769(P2017-92769A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】田中 弘巳
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−021446(JP,A)
【文献】 特開2015−012367(JP,A)
【文献】 特開2012−175356(JP,A)
【文献】 特開2012−165081(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0215545(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0317086(US,A1)
【文献】 特開2016−219986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号の送信あるいは受信において電気信号を補正する補正回路であって、
第1の制御信号に応じて前記電気信号を補正する信号補正回路と、
第2の制御信号に応じて、前記信号補正回路への第1の電力の供給と、該第1の電力の遮断と、を交互に行う電源回路と、
第2の電力の供給を受けて前記信号補正回路を初期設定するための設定データを保持する保持回路と、
第3の制御信号に応じて、前記保持回路に前記設定データを設定し、前記設定データに基づいて前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号を生成する第1の制御回路と、
を具備する前記補正回路と、
外部装置から動作モードが通常モードおよび待機モードのいずれか一方であることを表す動作モード情報を受信し、
該動作モード情報前記通常モードである第1モードを表すとき、前記電源回路が前記第1の電力を供給するように、前記第3の制御信号を用い前記設定データのうち前記第2の制御信号に関するデータを前記第1の制御回路に設定させ、
該動作モード情報前記待機モードである第2モードを表すとき、前記電源回路が前記第1の電力を遮断するように、前記第3の制御信号を用い前記設定データのうち前記第2の制御信号に関するデータを前記第1の制御回路に設定させる、
第2の制御回路と、
を備え、
前記保持回路は、前記動作モード情報が前記第1モードおよび前記第2モードのいずれを表すときも前記第2の電力の供給を受けて前記設定データを保持する、
光トランシーバ。
【請求項2】
前記信号補正回路は、前記電気信号のタイミングを再生するタイミング再生回路を備え、
前記電源回路は、
前記動作モード情報が前記第1モードを表すとき、前記タイミング再生回路に前記第1の電力の一部を供給し、
前記動作モード情報が前記第2モードを表すとき、前記第1の電力の前記一部を遮断する、
請求項1に記載の光トランシーバ。
【請求項3】
第1の光信号を送信する光送信回路をさらに備え、
前記補正回路は、前記第1の光信号の送信において前記電気信号として第1の電気信号を補正する第1の補正回路を備え、
前記光送信回路は、補正された前記第1の電気信号を増幅して駆動信号を生成する駆動回路と、該駆動信号に応じて前記第1の光信号を生成する発光素子と、を備え、
第2の制御回路は、
前記動作モード情報が前記第1モードを表すとき、前記駆動回路を稼動させ、
前記動作モード情報が前記第2モードを表すとき、前記駆動回路を停止させる、
請求項1または2に記載の光トランシーバ。
【請求項4】
第2の光信号を受信する光受信回路をさらに備え、
前記補正回路は、前記第2の光信号の受信において前記電気信号として第2の電気信号を補正する第2の補正回路をさらに備え、
前記第1の補正回路は複数の送信チャネルに相当する複数の前記第1の電気信号を補正し、
前記光送信回路は前記複数の第1の電気信号を互いに波長の異なる複数の前記第1の光信号に変換し、
前記光受信回路は互いに波長の異なる複数の受信チャネルに相当する複数の前記第2の光信号を複数の前記第2の電気信号に変換し、
前記第2の補正回路は前記複数の第2の電気信号を補正する、請求項3に記載の光トランシーバ。
【請求項5】
前記第1の補正回路は、
対応する複数の前記第1の電気信号を補正する各々前記複数の送信チャネルに相当する複数の信号補正回路を備え、
前記第2の補正回路は、
対応する複数の前記第2の電気信号を補正する各々前記複数の受信チャネルに相当する複数の信号補正回路を備える、
請求項4に記載の光トランシーバ。
【請求項6】
前記第1の補正回路の前記第2の制御回路は、前記複数の送信チャネルのうち、前記第2の補正回路の前記複数の信号補正回路の異常または前記複数の第1の電気信号の異常を示す送信チャネルの前記第1の光信号の出力を停止する、請求項5に記載の光トランシーバ。
【請求項7】
前記光送信回路は、それぞれ前記複数の送信チャネルに対応する前記複数の第1の光信号を出力する複数の発光素子と、それぞれ前記複数の信号補正回路が補正した前記複数の第1の電気信号を増幅し前記複数の発光素子を駆動する複数の駆動回路と、
を備え、
前記第1の補正回路の前記第2の制御回路は、前記複数の駆動回路のうち前記異常を示す送信チャネルに相当する駆動回路を停止する、請求項6に記載の光トランシーバ。
【請求項8】
前記第2の補正回路の前記第2の制御回路は、前記第2の補正回路の前記複数の信号補正回路の異常または前記複数の第2の電気信号が異常を示す受信チャネルの前記第2の電気信号の出力を停止する、請求項5に記載の光トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光トランシーバに関し、例えば信号補正回路を有する光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
光トランシーバは、入力された電気信号を光信号に変換して送信し、受信した光信号を電気信号に変換して出力する。光トランシーバは、電気信号を補正する補正回路を備えている。特許文献1には、光トランシーバの状態が通常モードから待機モードに切り替わったときに、補正回路の電源を遮断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−165081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光トランシーバの状態を通常モードから待機モードに切り替えることにより消費電力を削減することができる。しかしながら、待機モードから通常モードに切り替えるときに、補正回路を再起動させるために初期設定を行なう。このためモード切り替えに時間を要することがある。
【0005】
本発明は、モードの切り替えを短時間で行なうことが可能な光トランシーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る光トランシーバは、光信号の送信あるいは受信において電気信号を補正する補正回路であって、第1の制御信号に応じて前記電気信号を補正する信号補正回路と、第2の制御信号に応じて、前記信号補正回路への第1の電力の供給と、該第1の電力の遮断と、を交互に行う電源回路と、第2の電力の供給を受けて設定データを保持する保持回路と、第3の制御信号に応じて、前記保持回路に前記設定データを設定し、前記設定データに基づいて前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号を生成する第1の制御回路と、を具備する前記補正回路と、外部装置から動作モードの情報を受信し、該動作モードの情報が第1モードを表すとき、前記電源回路が前記第1の電力を供給するように、前記第3の制御信号を用い前記設定データのうち前記第2の制御信号に関するデータを前記第1の制御回路に設定させ、該動作モードの情報が第2モードを表すとき、前記電源回路が前記第1の電力を遮断するように、前記第3の制御信号を用い前記設定データのうち前記第2の制御信号に関するデータを前記第1の制御回路に設定させる、第2の制御回路と、を備え、前記保持回路は、前記動作モードの情報が前記第1モードおよび前記第2モードのいずれを表すときも前記第2の電力の供給を受けて前記設定データを保持する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る光トランシーバによればモードの切り替えを短時間で行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、比較例1に係る光トランシーバの構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施例1に係る光トランシーバの構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施例1における補正回路の構成を示すブロック図である。
図4図4は、実施例1における光送信回路の構成を示すブロック図である。
図5図5は、実施例1における光受信回路の構成を示すブロック図である。
図6図6は、実施例1における制御回路10の構成を示すブロック図である。
図7図7(a)から図7(c)は、実施例1において保持回路に保持されるデータの例である。
図8図8は、実施例1における制御回路10の行なう処理工程を示すフローチャートである。
図9図9は、図8におけるステップS14の処理を示すフローチャートである。
図10図10は、実施例1においてLOS信号およびLOL信号の処理を行なう処理回路の回路図である。
図11図11は、図8のステップS22において制御回路10が行なう処理の例を示すフローチャートである。
図12図12は、図8のステップS22において制御回路10が行なう処理の例を示すフローチャートである。
図13図13は、図8のステップS22において制御回路10が行なう処理の別の例を示すフローチャートである。
図14図14は、図8のステップS22において制御回路10が行なう処理の別の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本願発明は、光信号の送信あるいは受信において電気信号を補正する補正回路であって、第1の制御信号に応じて前記電気信号を補正する信号補正回路と、第2の制御信号に応じて、前記信号補正回路への第1の電力の供給と、該第1の電力の遮断と、を交互に行う電源回路と、第2の電力の供給を受けて設定データを保持する保持回路と、第3の制御信号に応じて、前記保持回路に前記設定データを設定し、前記設定データに基づいて前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号を生成する第1の制御回路と、を具備する前記補正回路と、外部装置から動作モードの情報を受信し、該動作モードの情報が第1モードを表すとき、前記電源回路が前記第1の電力を供給するように、前記第3の制御信号を用い前記設定データのうち前記第2の制御信号に関するデータを前記第1の制御回路に設定させ、該動作モードの情報が第2モードを表すとき、前記電源回路が前記第1の電力を遮断するように、前記第3の制御信号を用い前記設定データのうち前記第2の制御信号に関するデータを前記第1の制御回路に設定させる、第2の制御回路と、を備え、前記保持回路は、前記動作モードの情報が前記第1モードおよび前記第2モードのいずれを表すときも第2の電力の供給を受けて前記設定データを保持する、光トランシーバ。
【0010】
第2モードにおいて電源回路が信号補正回路への第1の電力を遮断するため、消費電力を削減できる。第1モードおよび第2モードにおいて保持回路が第2の電力の供給を受けて設定データを保持する。これにより、第2モードから第1モードに切り替わるときに、設定データの転送を行なわなくてもよい。よって、モードが切り替えを短時間で行なうことができる。
【0011】
前記信号補正回路は、前記電気信号のタイミングを再生するタイミング再生回路を備え、前記電源回路は、前記動作モードの情報が前記第1モードを表すとき、前記タイミング再生回路に前記第1の電力の一部を供給し、前記動作モードの情報が前記第2モードを表すとき、前記第1の電力の前記一部を遮断することが好ましい。第2モードにおいて消費電力の大きなタイミング再生回路の電源を遮断するため、消費電力をより削減できる。
【0012】
第1の光信号を送信する光送信回路をさらに備え、前記補正回路は、前記第1の光信号の送信において前記電気信号として第1の電気信号を補正する第1の補正回路を備え、前記光送信回路は、補正された前記第1の電気信号を増幅して駆動信号を生成する駆動回路と、該駆動信号に応じて前記第1の光信号を生成する発光素子と、を備え、第2の制御回路は、前記動作モードの情報が前記第1モードを表すとき、前記駆動回路を稼動させ、前記動作モードの情報が前記第2モードを表すとき、前記駆動回路を停止させることが好ましい。第2モードにおいて消費電力の大きな駆動回路の電源を遮断するため、消費電力をより削減できる。
【0013】
第2の光信号を受信する光受信回路をさらに備え、前記補正回路は、前記第2の光信号の受信において前記電気信号として第2の電気信号を補正する第2の補正回路をさらに備え、前記第1の補正回路は複数の送信チャネルに相当する複数の前記第1の電気信号を補正し、前記光送信回路は前記複数の第1の電気信号を互いに波長の異なる複数の前記第1の光信号に変換し、前記光受信回路は互いに波長の異なる複数の受信チャネルに相当する複数の前記第2の光信号を複数の前記第2の電気信号に変換し、前記第2の補正回路は前記複数の第2の電気信号を補正することが好ましい。第1補正回路および第2補正回路が複数のチャネルの電気信号を補正する場合、制御のためのデータが大きくなり、モードの切り替えの時間が長くなる。このような場合でもモードの切り替えを短時間で行なうことができる。
【0014】
前記第1の補正回路は、対応する複数の前記第1の電気信号を補正する各々前記複数の送信チャネルに相当する複数の信号補正回路を備え、前記第2の補正回路は、対応する複数の前記第2の電気信号を補正する各々前記複数の受信チャネルに相当する複数の信号補正回路を備えることが好ましい。これにより、チャネルごとに信号補正回路の電源を遮断できる。
【0015】
前記第1の補正回路の前記第2の制御回路は、前記複数の送信チャネルのうち、前記第2の補正回路の前記複数の信号補正回路の異常または前記複数の第1の電気信号の異常を示す送信チャネルの前記第1の光信号の出力を停止することが好ましい。これにより、異常のあるチャネルの光信号の出力を停止できる。
【0016】
前記光送信回路は、それぞれ前記複数の送信チャネルに対応する前記複数の第1の光信号を出力する複数の発光素子と、それぞれ前記複数の信号補正回路が補正した前記複数の第1の電気信号を増幅し前記複数の発光素子を駆動する複数の駆動回路と、を備え、前記第1の補正回路の前記第2の制御回路は、前記複数の駆動回路のうち前記異常を示す送信チャネルに相当する駆動回路を停止することが好ましい。これにより、異常のあるチャネルの光信号を停止し、かつ消費電力を抑制できる。
【0017】
前記第2の補正回路の前記第2の制御回路は、前記第2の補正回路の前記複数の信号補正回路の異常または前記複数の第2の電気信号が異常を示す受信チャネルの前記第2の電気信号の出力を停止することが好ましい。これにより、異常のあるチャネルの電気信号の出力を停止できる。
【0018】
[比較例1]
比較例および実施例として、MSA(Multiple Source Agreement)仕様の100Gbps用QSFP28−LR4を例に説明する。この例では、送信および受信それぞれが4つのチャネルを有し、1つのチャネルの伝送速度は25Gbpsである。光信号の波長は1.3μm帯である。
【0019】
図1は、比較例1に係る光トランシーバの構成を示すブロック図である。図1に示すように、比較例1に係る光トランシーバ110は、制御回路10、補正回路11、16、光送信回路12、光受信回路17および電源回路15を備えている。光送信回路12は駆動回路13および発光部14を備える、光受信回路17は増幅回路18および受光部19を備える。補正回路11はホスト装置90から伝送された4チャネルCh1からCh4の電気信号E1を補正する。駆動回路13は電気信号E1に基づき発光部14を駆動する。発光部14は電気信号E1を光信号O1に変換する。
【0020】
受光部19は光信号O2を受光し電気信号E2に変換する。増幅回路18は電気信号E2を増幅する。補正回路16は電気信号E2を補正し、ホスト装置90に出力する。制御回路10はホスト装置90と制御信号L5の通信を行なう。制御回路10はホスト装置90にアラーム信号L6を出力する。制御回路10は、各回路11、13、16および18と制御信号L4の通信を行なう。制御回路10は、補正回路11、16および増幅回路18からそれぞれ異常信号L1からL3を受信する。制御回路10は駆動回路13に停止信号L7を出力する。制御回路10はモード信号L8を受信する。モード信号L8は例えば通常モードと待機モードを示す信号である。モード信号が通常モードのとき、制御回路10は電源回路15に各回路11、13、14、16、18および19に電力を供給するよう指示信号L11を送る。モード信号が待機モードのとき、制御回路10は電源回路15に補正回路11、16および駆動回路13への電力の供給を遮断するよう指示信号L11を送る。電源回路15は電源線L10によって各回路11、13、14、16、18および19に電力を供給する。
【0021】
待機モードにおいて、消費電力の大きな補正回路11、16および駆動回路13への電力の供給を遮断する。これより、光トランシーバ110の待機モードでの消費電力を削減できる。
【0022】
しかしながら、待機モードから通常モードに切り替えるときに、制御回路10は補正回路11、16を再起動するために初期設定用の設定データを制御信号L4を用い送信する。設定データは、補正回路11および16が電気信号E1およびE2を補正するときに用いるデータである。例えば4チャネルでかつ高機能な補正回路においては、設定データは数十バイトから数百バイトである。この設定データを例えばI2C(Inter−integrated Circuit)またはSPI(Serial Peripheral Interface)等のシリアルインターフェースを用いて伝送するには、例えば数ミリ秒から数百ミリ秒かかる場合がある。これにより、待機モードから通常のモードの復帰に時間を要する。
【0023】
以下、モード切り替えを短時間で行なうことができる実施例1について説明する。
【実施例1】
【0024】
図2は、本発明の実施例1に係る光トランシーバの構成を示すブロック図である。図2に示すように、実施例1に係る光トランシーバ100は、制御回路10、補正回路11、16、駆動回路13、光送信回路12および光受信回路17を備えている。補正回路11(第1の補正回路)は、例えばCDR(Clock Data Recovery)集積回路であり、光信号O1(第1の光信号)の送信において、ホスト装置90から伝送された4つのチャネルCh1からCh4に相当する電気信号E1をそれぞれ補正する。補正回路11は、電気信号E1の補正として例えば波形整形およびタイミング再生を行なう。駆動回路13は、例えばレーザドライバ集積回路であり、補正回路11が補正した4チャネルCh1からCh4の電気信号E1をそれぞれ増幅し駆動信号を生成し、駆動信号に応じて発光部14(発光素子)を駆動する。発光部14は、例えばTOSA(Transmitter Optical Subassembly)であり、駆動回路13が増幅した4つのチャネルCh1からCh4に相当する電気信号E1を互いに波長の異なる4つのチャネルCh1からCh4の光信号にそれぞれ変換する。発光部14は、さらに、変換されたそれぞれの光信号を光信号O1に多重化してファイバ等に出力する。
【0025】
受光部19は、例えばROSA(Receiver Optical Subassembly)であり、ファイバを伝送した互いに波長の異なる4つのチャネルCh1からCh4の光信号が多重化された光信号O2を受光し4つのチャネルCh1からCh4の電気信号E2に変換する。増幅回路18は、例えばTIA(Transimpedance Amplifier)であり、受光部19が変換した4つのチャネルCh1からCh4の電気信号E2をそれぞれ増幅する。補正回路16(第2の補正回路)は、例えばCDR集積回路であり、光信号O2(第2の光信号)の受信において、増幅回路18が増幅した4つのチャネルCh1からCh4に相当する電気信号E2(第2の電気信号)をそれぞれ補正し、ホスト装置90に出力する。
【0026】
制御回路10とホスト装置90との間の制御信号L5の通信には例えばI2CまたはMDIO(Management Data Input/Output)等のシリアル通信方式を用いる。制御回路10はホスト装置90にアラーム信号L6を出力する。制御回路10はホスト装置90からモード信号L8を受信する。モード信号L8は、例えば、2値のデジタル信号であり、待機モードのときハイレベル、通常モードのときローレベルである。制御回路10と各回路11、13、16および18との制御信号L4の通信にI2CまたはSPI等のシリアル通信方式を用いる。
【0027】
制御回路10が補正回路11から受信する異常信号L1は、例えばチャネルCh1からCh4ごとのLOS(Loss of Signal)信号およびLOL(Loss of Lock)信号である。LOS信号は、電気信号E1の信号強度が所定値以下であることを示す信号である。LOL信号は補正回路11内のPLL(Phase Locked Loop)回路において周波数がロックされていないことを示す信号である。制御回路10が補正回路16から受信する異常信号L2は、例えばLOL信号である。制御回路10が増幅回路18から受信する異常信号L3は例えばLOS信号である。制御回路10は異常信号L1を受信すると駆動回路13に停止信号L7を出力する。停止信号L7は、チャネルCh1からCh4ごとに光信号の出力を停止させる信号である。
【0028】
図3は、実施例1における補正回路の構成を示すブロック図である。補正回路11および16は、例えば各々1チップの半導体集積回路として形成されている。図3に示すように、補正回路11および16は、信号補正回路20、制御回路25、電源回路26、27および保持回路28を備えている。信号補正回路20は、チャネルCh1からCh4に対応して設けられている。信号補正回路20は、波形整形回路21、タイミング再生回路22および出力回路23を備えている。波形整形回路21は、例えばイコライザ回路であり、電気信号E1またはE2の波形を整形する。また、波形整形回路21は、電気信号E1の信号強度が所定値以下の場合、LOS信号L21を制御回路25に出力する。なお、補正回路16内の波形整形回路21はLOS信号L21を出力しない。タイミング再生回路22は、例えばCDR回路であり、PLL回路を用い電気信号E1またはE2からクロック信号を生成し、生成したクロック信号を用い電気信号E1またはE2のタイミングを再生する。タイミング再生回路22は、PLLが周波数をロックしていないときLOL信号L22を制御回路25に出力する。出力回路23は、集積回路内の信号レベルを集積回路間の通信に適した信号レベルに変換する。
【0029】
電源回路26は制御回路25の指示信号L26に基づき、タイミング再生回路22に電力L28を供給する。電源回路26はチャネルCh1からCh4ごとにタイミング再生回路22の電源をオン・オフすることができる。電源回路27は制御回路25の指示信号L27に基づき、出力回路23に電力L29を供給する。電源回路27はチャネルCh1からCh4ごとに出力回路23の電源をオン・オフすることができる。なお、電源回路26および27は、波形整形回路21に供給される電力を遮断してもよい。保持回路28は、例えばレジスタ等の揮発性メモリであり、信号補正回路20を初期設定するための設定データ、LOS信号L21およびLOL信号L22に係るデータ等を保持する。保持回路28は、電力L30が供給されている間は設定データを保持するが、電力L30が遮断されると保持していた設定データを消失する。制御回路25は、制御回路10と制御信号L4の通信を行なう。また、制御回路25は、保持回路28に保持されたLOS信号L21およびLOL信号L22に係るデータを含む異常信号L1またはL2を制御回路10に出力する。さらに、制御回路25は、保持回路28に保持された設定データに基づき、制御信号L23をタイミング再生回路22に送信する。
【0030】
このように、制御回路25(第1の制御回路)は、制御回路10(第2の制御回路)からの制御信号L4(第3の制御信号)に応じて保持回路28の設定データを設定する。また、制御回路25は、設定データに基づいて指示信号L26およびL27(第1の制御信号)および制御信号L23(第2の制御信号)を生成する。信号補正回路20内のタイミング再生回路22は、制御信号L23に応じて電気信号を補正する。電源回路26および27は、指示信号L26およびL27に応じて、信号補正回路3への電力L28およびL29(第1の電力)の供給と、電力の遮断とを交互に行なう。保持回路28には、電力L28およびL29とは別に電力L30(第2電力)が供給されている。
【0031】
図4は、実施例1における光送信回路の構成を示すブロック図である。図4に示すように、光送信回路12内の駆動回路13は、チャネルCh1からCh4ごとにLDD(Laser Diode Driver)回路30を備える。各LDD回路30は、チャネルCh1からCh4の電気信号E1を増幅する。各LDD回路30に停止信号L7を入力することができる。停止信号L7が入力される(すなわち停止信号がアクティブとなる)と、対応するLDD回路30の電源がオフとなる。
【0032】
光送信回路12内の発光部14は、発光素子32および光合波器34を備える。発光素子32はチャネルCh1からCh4ごとに設けられている。発光素子32は、例えばレーサダイオードであり、チャネルCh1からCh4ごとに電気信号E1を光信号O3に変換する。発光素子32が出力する光信号O3は、チャネルCh1からCh4ごとに波長が異なる。光合波器34は、各チャネルCh1からCh4の光信号O3を合波して光信号O1を生成する。発光部14は、ファイバ等に光信号O1を出力する。光信号O1は波長分割多重(WDM:Wave Devision Multiplex)信号となる。光信号O1は例えば1.3μm波長帯の信号である。駆動回路13はTOSA内に設けられていてもよい。
【0033】
図5は、実施例1における光受信回路の構成を示すブロック図である。図5に示すように、光受信回路17内の受光部19は、受光素子36および光分波器38を備える。光分波器38はファイバ等から受信した光信号O2を各チャネルCh1からCh4ごとの光信号O4に分波する。光信号O4は互いに波長が異なる。受光素子36は、チャネルCh1からCh4ごとに設けられている。受光素子36は、例えばフォトダイオードであり、チャネルCh1からCh4ごとに光信号O4を電気信号E2に変換する。受光素子36が出力する電気信号E2は例えば電流信号である。
【0034】
光受信回路17内の増幅回路18は、チャネルCh1からCh4ごとにTIA(Transimpedance Amplifier)回路35を備える。各TIA回路35は、チャネルCh1からCh4の電流信号を電圧信号に変換するとともに増幅する。各TIA回路35は、受光素子36から入力された電気信号E2の信号強度が所定値以下となると異常信号L3としてLOS信号を制御回路10に出力する。
【0035】
図6は、実施例1における制御回路10を示すブロック図である。制御回路10は例えば1チップの半導体集積回路に形成されたCPU(Crentral Processing Unit)である。制御回路10は、FPGA(Field Programmable Gate Array)またはCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のロジック回路で形成することもできる。また、制御回路10はCPU、FPGA、CPLDおよびその他のロジック回路を組み合わせて形成されていてもよい。
【0036】
図6に示すように、制御回路10は、プロセッサ40、記憶回路41、温度センサ44a、通信インターフェース(I/F)44b、44c、タイマカウント44d、ADC(アナログデジタル変換回路)44e、外部入力回路44f、外部出力回路44gおよびバス46を備える。プロセッサ40は例えばCPUコアであり、記憶回路41に格納されたプログラムを実行して各種処理を行なう。記憶回路41は、ROM(Read Only Memory)41aおよびRAM(Random Access Memory)41bを備える。ROM41aは各種データ42aおよびプログラム42bを格納する。
【0037】
温度センサ44aは温度を検知し、プロセッサ40からの問合せに応じて温度情報をプロセッサ40に出力する。通信I/F44bはホスト装置90と制御信号L5の通信を行なうためのインターフェースである。通信I/F44cは、光トランシーバ100内の回路との制御信号L4の通信、異常信号L1からL3の受信、および停止信号L7の出力等を行なうためのインターフェースである。タイマカウント44dは、タイマーである。ADC44eは、アナログ信号をデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換されるアナログ信号としては、例えば電源電圧、受光素子36のバイアス電圧、光信号O3およびO4の光信号強度のモニタ信号等である。外部入力回路44fは、ホスト装置90からモード信号L8等を受信する。外部出力回路44gは、ホスト装置90にアラーム信号L6等を出力する。
【0038】
図7(a)から図7(c)は、実施例1において保持回路に保持されるデータの例である。図7(a)は、保持回路28内のレジスタアドレスとレジスタ名称を示す図である。図7(a)に示すように、レジスタアドレス05h、20hのレジスタ名称は、それぞれCH_ModeおよびLOS_LOL_Alarmである。アドレスxxxからyyyのレジスタ名称はDATAである。
【0039】
図7(b)は、CH_Modeの例である。図7(b)に示すように、CH_Modeではビットb0−b3は予備(Reserved)となっていて使用していない。ビットb4−b7は、それぞれCh1_PWRからCh4_PWRを示す。Ch1_PWRからCh4_PWRは、それぞれチャネルCh1からCh4のタイミング再生回路22および出力回路23の電源のオンおよびオフを指示する1ビットのバイナリデータである。Ch1_PWRからCh4_PWRが”0”のとき電源回路26および27は、対応するタイミング再生回路22および出力回路23の電源をオンする。Ch1_PWRからCh4_PWRが”1”のとき電源回路26および27は、対応するタイミング再生回路22および出力回路23の電源をオフする。制御回路10は、制御回路25にCh1_PWRからCh4_PWRを書き換えさせることにより、タイミング再生回路22および出力回路23の電源をオンおよびオフさせる。
【0040】
図7(c)は、LOS_LOL_Alarmの例である。LOS_LOL_Alarmではビットb0−b3はそれぞれCh1_LOSからCh4_LOSを示し、ビットb4−b7は、それぞれCh1_LOLからCh4_LOLを示す。Ch1_LOSからCh4_LOSは、それぞれチャネルCh1からCh4のLOS信号を示すデータである。Ch1_LOSからCh4_LOSが”1”のとき対応するチャネルCh1からCh4のLOS信号がアサート(発出)されていることを示す。すなわち、波形整形回路21が受信する対応するチャネルCh1からCh4の電気信号E2の信号強度が所定値以下である。Ch1_LOSからCh4_LOSが”0”のとき対応するチャネルCh1からCh4のLOS信号がアサートされていないことを示す。すなわち、波形整形回路21が受信する対応するチャネルCh1からCh4の電気信号E2の信号強度が所定値以上である。受信側の補正回路16の場合は、Ch1_LOSからCh4_LOSは設定されていなくともよい。
【0041】
Ch1_LOLからCh4_LOLは、それぞれチャネルCh1からCh4のLOL信号を示すデータである。Ch1_LOLからCh4_LOLが”1”のとき対応するタイミング再生回路22内のPLLがロックされていないことを示す。Ch1_LOLからCh4_LOLが”0”のとき対応するタイミング再生回路22内のPLLがロックされていることを示す。タイミング再生回路22は、PLLがロックすると正常にタイミング再生を行うことができるが、PLLがロックされないとタイミング再生は出来なくなる。制御回路10は、Ch1_LOSからCh4_LOSおよびCh1_LOLからCh4_LOLを読み出すことにより、LOS信号およびLOL信号を取得し、それらの値に応じて必要な処理をする。
【0042】
DATAは、信号補正回路20の設定に使用される設定データである。DATAには、例えばCDRオン/オフ切り替え、LOSの閾値、入力信号の伝送レート、出力信号のオン/オフ切り替え、イコライザ調整、スケルチ設定、振幅調整および波形調整のためのデータなどが含まれる。これらのデータは複数のチャネルCh1からCh4それぞれについて設定できる。
【0043】
CDRオン/オフ切り替えデータは、タイミング再生回路22のオンおよびオフを指定するデータである。CDRオン/オフ切り替えデータがオンのとき、電気信号はタイミング再生回路22で補正される。CDRオン/オフ切り替えデータがオフのとき、電気信号はタイミング再生回路22をバイパスして波形整形回路21から出力回路23に伝送される。
【0044】
LOSの閾値データは、LOS信号をアサート(発出)する電気信号の信号強度に関する閾値レベルを設定するデータである。入力信号の伝送レートは、入力する電気信号の信号速度を設定するデータである。出力信号のオン/オフ切り替えデータは、正常に動作しているときに、出力回路23からの出力信号をオンするかオフするかを設定する。イコライザ調整は、波形整形回路21の周波数特性を調整するパラメータを設定する。スケルチ設定は、LOS信号がアサートのときに、出力回路23からの出力信号を自動的にオフするか否かを設定する。振幅調整は、主に受信側の補正回路16において出力回路23の出力信号の振幅を調整するためのパラメータを設定する。波形調整は、主に受信側の補正回路16において出力回路23の出力信号の波形を調整するためのパラメータを設定する。設定データは、例えば上記データの少なくとも1つを含む。設定データは、上記データ以外のデータを含んでもよい。
【0045】
図8は、実施例1における制御回路10が行なう処理工程を示すフローチャートである。図8に示すように、光トランシーバ100がホスト装置90にホットプラグインされたとき、または光トランシーバ100がリセットされたとき、制御回路10は起動のための初期設定を行なう(ステップS10)。初期設定において、制御回路10は、各回路11、12、16および17の電源をオンする。制御回路10は、ホスト装置90から初期設定のための制御信号L5を受信する。また、制御回路10は、各回路11、13、16および18に初期設定のための制御信号L4を出力する。例えば、制御回路10は、制御信号L4として、補正回路11および16に設定データを送信する。補正回路11および16の制御回路25は、設定データを保持回路28に保持させる。この後、補正回路11および16は設定データに基づき補正処理を行なう。
【0046】
制御回路10は、ホスト装置90と制御信号L5の通信を行なう。また、制御回路10は、ホスト装置90からモード信号L8を取得する(ステップS12)。制御回路10は、モード信号L8に応じ処理を行なう(ステップS14)。詳細は後述する。制御回路10は、各種ADC値を取得し、各種判定を行なう(ステップS16)。例えば制御回路10は、電源電圧、受光素子36のバイアス電圧、光信号O3およびO4の光パワーをデジタル変換したADC値を取得する。制御回路10は、ADC値に基づき、各種判定を行なう。例えば、制御回路10はホスト装置90にアラーム信号L6を出力する。制御回路10はAPC(Auto Power Cntrol)制御を行なう(ステップS18)。例えば制御回路10は、各チャネルCh1からCh4において光信号O3のパワーが所望レベルとなるように、駆動回路13を制御する。
【0047】
制御回路10は、補正回路11、16および増幅回路18から異常信号L1からL3を取得する(ステップS20)。例えば、制御回路10は保持回路28からLOS信号およびLOL信号を取得する。例えば、制御回路10は、LOS信号およびLOL信号がアサートされた場合に割り込みをかける。制御回路10は、異常信号に対応する処理を行なう(ステップS22)。例えば制御回路10は、保持回路28内のLOS信号およびLOL信号がアサートされた場合に割り込みが入り後述する処理を行なう。制御回路10は終了か判定する(ステップS24)。Yesの場合終了し、Noの場合ステップS12に戻り、ステップS12からS22の処理を繰り返す。
【0048】
図9は、図8におけるステップS14の処理を示すフローチャートである。図9に示すように、制御回路10は、モード信号が待機モードか通常モードか判定する(ステップS30)。例えば、制御回路10は、モード信号L8がローレベルのとき通常モード、ハイレベルのとき待機モードと判断する。通常モードのとき、制御回路10は、制御信号L4を用い制御回路25に電源オンを指示する(ステップS32)。例えば、制御回路25は、図7(a)および図7(b)のアドレス05hのビットb4からb7を“0”とする。これにより、電源回路26は全てのチャネルCh1からCh4のタイミング再生回路22および出力回路23に電力を供給する。制御回路10は、駆動回路13の全chの停止信号L7を解除する(ステップS33)。これにより、駆動回路13内の全チャネルCh1からCh4のLDD回路30の電源がオンとなる。制御回路25は、保持回路28内の設定データ(例えば図7(a)のアドレスxxx−yyyのDATA)を用い信号補正回路20の各種制御を行なう(ステップS34)。その後終了する。
【0049】
ステップS30において、待機モードと判断されたとき、制御回路10は、制御信号L4を用い補正回路11、16内の制御回路25に電源オフを指示する(ステップS36)。例えば、制御回路25は、図7(a)および図7(b)のアドレス05hのビットb4からb7を“1”とする。これにより、電源回路26は全てのチャネルCh1からCh4のタイミング再生回路22および出力回路23への電力の供給を遮断する。待機モードのとき、制御回路25および保持回路28には電力が供給されている。よって、保持回路28内の設定データは保持される。制御回路10は、駆動回路13に全チャネルCh1からCh4の停止信号L7を出力する(ステップS38)。これにより、駆動回路13内の全チャネルCh1からCh4のLDD回路30の電源がオフとなる。
【0050】
図10は、実施例1においてLOS信号およびLOL信号の処理を行なう処理回路の回路図である。異常信号L1からL3として、LOS信号およびLOL信号を例に説明する。補正回路11が出力する異常信号L1に含まれるLOS信号およびLOL信号の処理を行なう処理回路50は、例えば補正回路11内に設けられている。補正回路16が出力する異常信号L2に含まれるLOL信号の処理を行なう処理回路50は、例えば補正回路16内に設けられている。増幅回路18が出力する異常信号L3に含まれるLOS信号の処理を行なう処理回路50は、例えば増幅回路18内に設けられている。LOS信号およびLOL信号は図7(a)および図7(c)の保持回路28内のアドレス20hのビットb0からb7のデータに相当する。
【0051】
図10に示すように、処理回路50は、OR回路52を備えている。OR回路52は、チャネルCh1からCh4のLOS信号またはLOL信号のOR処理を行なう。OR回路52の出力信号L50は制御回路10に入力する。LOS信号およびLOL信号は、ローレベルがノーマル(正常状態)を示し、ハイレベルがアラーム(シグナルのロスまたはロックのロス)を示す。チャネルCh1からCh4のうちいずれかのチャネルCh1からCh4でLOS信号がハイレベルのとき、LOS信号の出力信号L50はハイレベルとなる。チャネルCh1からCh4の全てにおいて、LOS信号がローレベルのとき、LOS信号の出力信号L50はローレベルとなる。LOL信号についても同じである。図8のステップS20においては、例えば制御回路10は出力信号L50が変化した場合に割り込みをかける。
【0052】
図11および図12は、図8のステップS22において制御回路10が行なう処理を示すフローチャートである。図11は、送信側の処理であり、図12は受信側の処理を示す。
【0053】
図11に示すように、出力信号L50が変化し割り込みが入ると、制御回路10は、補正回路11から出力されたLOS信号の出力信号L50がアラームかノーマルかを判断する(ステップS40)。ノーマルのとき、制御回路10は、補正回路11から出力されたLOL信号の出力信号L50がアラームかノーマルかを判断する(ステップS42)。ステップS40またはS42においてアラームのとき、制御回路10は、補正回路11の保持回路28内の各チャネルCh1からCh4のLOS信号およびLOL信号を取得する(ステップS46)。制御回路10は、LOS信号およびLOL信号のいずれかがアラームのチャネルCh1からCh4に対応するLDD回路30に停止信号L7を出力する(ステップS48)。これにより、LOS信号およびLOL信号のいずれかがアラームのチャネルCh1からCh4の光信号O3は発光素子32から出力されない。その後終了し、図8のステップS22が終了する。
【0054】
ステップS42においてノーマルのとき、制御回路10は、全てのチャネルCh1からCh4の停止信号L7を解除する(ステップS44)。これにより、全てのチャネルCh1からCh4の光信号O3が発光素子32から出力される。
【0055】
ステップS40からS48は、定期的(例えば数ミリ秒間隔)に実行する。これにより、LOS信号またはLOL信号がアラームとなったチャネルから遅れてアラームとなったチャネルに対しても停止信号L7を出力できる。
【0056】
図12に示すように、出力信号L50が変化し割り込みが入ると、制御回路10は、増幅回路18から出力されたLOS信号の出力信号L50がアラームかノーマルかを判断する(ステップS40)。ノーマルのとき、制御回路10は、補正回路16から出力されたLOL信号の出力信号L50がアラームかノーマルかを判断する(ステップS42)。ステップS40またはS42においてアラームのとき、ステップS46の後に、制御回路10は、LOS信号およびLOL信号のいずれかがアラームのチャネルCh1からCh4に対応するタイミング再生回路22および出力回路23の電源をオフさせる(ステップS47)。例えば制御回路10は図7(a)および図7(b)のアドレス05hのビットb4からb7のうち対応するビットを“1”とする。これにより、LOS信号およびLOL信号のいずれかがアラームのチャネルCh1からCh4の電気信号E2は補正回路16から出力されない。その後終了し、図8のステップS22が終了する。
【0057】
ステップS42においてノーマルのとき、制御回路10は、全てのチャネルCh1からCh4のタイミング再生回路22および出力回路23の電源のオフを解除する(ステップS45)。例えば制御回路10は図7(a)および図7(b)のアドレス05hのビットb4からb7を全て“0”とする。これにより、全てのチャネルCh1からCh4の電気信号E2が補正回路16から出力される。その他の処理は図11と同じであり説明を省略する。
【0058】
図13および図14は、図8のステップS22において制御回路10が行なう処理の別の例を示すフローチャートである。図13は、送信側の処理であり、図14は受信側の処理を示す。
【0059】
図13に示すように、ステップS40またはS42においてアラームのとき、制御回路10は、全てのチャネルCh1からCh4のLDD回路30に停止信号L7を出力する(ステップS52)。これにより、全てのチャネルCh1からCh4の光信号O3は発光素子32から出力されない。ステップS40およびS42においてノーマルのとき。制御回路10は、全てのチャネルCh1からCh4の停止信号L7を解除する(ステップS50)。これにより、全てのチャネルCh1からCh4の光信号O3が発光素子32から出力される。その他の処理は図11と同じであり説明を省略する。
【0060】
図14に示すように、ステップS40またはS42においてアラームのとき、制御回路10は、全てのチャネルCh1からCh4のタイミング再生回路22および出力回路23の電源をオフさせる(ステップS53)。これにより、全てのチャネルCh1からCh4の電気信号E2は補正回路16から出力されない。ステップS40およびS42においてノーマルのとき、制御回路10は、全てのチャネルCh1からCh4のタイミング再生回路22および出力回路23の電源をオンさせる(ステップS51)。これにより、全てのチャネルCh1からCh4の電気信号E2が補正回路16から出力される。その他の処理は図13と同じであり説明を省略する。
【0061】
実施例1によれば、図8のステップS12のように、制御回路10(第2の制御回路)は、ホスト装置90(外部装置)からモード情報(動作モードの情報)を受信する。図9のステップS30のように、モード情報が通常モード(第1モード)を表すとき、ステップS32のように、制御回路10は、電源回路26が電力(第1の電力)を供給するように、制御信号L4を用い設定データのうち指示信号L26に関するデータ(例えば、図7(a)および図7(b)のアドレス05hのビットb4からb7)を制御回路25に設定させる。
【0062】
図9のステップS30のように、モード情報が待機モード(第2モード)を表すとき、ステップS36のように、制御回路10は、電源回路26が電源(第1の電力)を遮断するように、制御信号L4を用い設定データのうち指示信号L26に関するデータを制御回路25に設定させる。保持回路28は、モード情報が通常モードおよび待機モードのいずれを表すときも電力L30(第2電力)の供給を受けて設定データを保持する。
【0063】
電源回路26および27が待機モードにおいて信号補正回路20への電力を遮断するため、消費電力を削減できる。例えば、QSFP28−LR用の光トランジーバでは、通常モードの消費電力が3.5W以下であり、待機モードの消費電力を1.5W以下とすることができる。保持回路28が待機モードにおいて信号補正回路20を制御する設定データを保持する。これにより、比較例1のように、待機モードから通常モードに切り替わるときに、制御回路10から補正回路11および16に設定データを転送しなくてもよい。よって、モード切り替えを短時間で実行することができる。例えばQSFP28−LR用の光トランジーバでは、待機モードから通常モードへの切り替えを1ミリ秒以下で行なうことができる。
【0064】
なお、実施例1では、補正回路11および16の両方で保持回路28が設定データを保持する例を説明したが、補正回路11および16の少なくとも一方で保持回路28が設定データを保持すればよい。
【0065】
また、信号補正回路20のうちタイミング再生回路22の消費電力が大きい。このため、通常モードにおいてタイミング再生回路22に電力を供給し、待機モードにおいて少なくともタイミング再生回路22の電力を遮断することが好ましい。すなわち、電源回路26は、モード情報が通常モードを表すとき、タイミング再生回路22に電力L28(第1電力の一部)を供給し、モード情報が待機モードを表すとき、電力L28を遮断することが好ましい。波形整形回路21および出力回路23の電源はオフしなくともよい。出力回路23は、集積回路の内部信号レベルをより大きい外部信号レベルに変換する。このため、出力回路23の消費電力はタイミング再生回路22の次に大きい。よって、実施例1のように、待機モードにおいて出力回路23の電力を遮断することが好ましい。待機モードにおいて波形整形回路21の電源をオフしてもよい。
【0066】
駆動回路13は発光部14を駆動させるため消費電力が大きい。そこで、図9のように、制御回路10は、待機モードにおいて駆動回路13を停止させる(ステップS38)。制御回路10は、通常モードにおいて駆動回路13を稼動させる(ステップS33)。これにより、諸費電力を削減できる。
【0067】
さらに、実施例1では、補正回路11(第1の補正回路)が複数のチャネルCh1からCh4(送信チャネル)に相当する電気信号E1(第1の電気信号)を補正する。光送信回路12が複数のチャネルCh1からCh4に相当する電気信号E1を互いに波長の異なる光信号O3(第1の光信号)に変換する。光受信回路17は互いに波長の異なる複数のチャネルCh1からCh4(受信チャネル)に相当する複数の光信号O2(第2の光信号)を複数の電気信号E2(第2の電気信号)に変換する。補正回路16は複数のチャネルCh1からCh4に相当する複数の電気信号E2を補正する。このように、複数のチャネルCh1からCh4に対応する補正回路11および16においては、補正回路11および16の設定データが大きくなる。よって、保持回路28に設定データを保持することが好ましい。
【0068】
また、図3のように、送信側の補正回路11が複数のチャネルCh1からCh4に相当する複数の信号補正回路20を備える。このとき、図11のように、複数のチャネルCh1からCh4のうち、複数の信号補正回路20の異常(例えばLOL)または複数の電気信号E1の異常(例えばLOS)を示すとき、制御回路10は異常を示すチャネルCh1からCh4の光信号O3の出力を停止する。これにより、異常のあるチャネルCh1からCh4を停止できる。異常信号の例としてLOS信号およびLOL信号を説明したが、異常信号は他の信号でもよい。
【0069】
制御回路10は異常を示すチャネルCh1からCh4に相当するLDD回路30(駆動回路)を停止させる。LDD回路30は消費電力が大きいため、消費電力を抑制できる。
【0070】
受信側の補正回路16が複数のチャネルCh1からCh4に相当する複数の信号補正回路20を備える。このとき、図12のように、複数の信号補正回路20の異常(例えばLOL)または複数の電気信号E2が異常(例えばLOS)のとき、制御回路10は電気信号E2の出力を停止する。これにより、異常のあるチャネルCh1からCh4を停止できる。
【0071】
実施例では、MSA仕様の100Gbps用QSFP28−LR4を例に説明したが、他の光トランシーバでもよい。また、1つのチャネルCh1からCh4の伝送速度として25Gbpsを例に説明したが、他の伝送速度でもよい。チャネル数が4の場合を例に説明したが、チャネル数は1または複数であればよい。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
10、25 制御回路
11、16 補正回路
12 光送信回路
13 駆動回路
14 発光部
15 電源回路
17 光受信回路
18 増幅回路
19 受光部
20 信号補正回路
21 波形整形回路
22 タイミング再生回路
23 出力回路
26、27 電源回路
28 保持回路
30 LDD回路
32 発光素子
34 光合波器
35 TIA回路
36 受光素子
38 光分波器
40 プロセッサ
41a ROM
41b RAM
42a データ
42b プログラム
44a 温度センサ
44b、44c 通信インターフェース
44d タイマカウント
44e ADC
44f 外部入力回路
44g 外部出力回路
50 処理回路
52 OR回路
90 ホスト装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14