特許第6614053号(P6614053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614053
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】エレベータ装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20191125BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   B66B7/06 N
   B66B5/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-142477(P2016-142477)
(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公開番号】特開2018-12570(P2018-12570A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207826
【弁理士】
【氏名又は名称】尾畑 誠治
(72)【発明者】
【氏名】遠田 真也
(72)【発明者】
【氏名】辻本 明弘
(72)【発明者】
【氏名】堤 一真
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−102156(JP,A)
【文献】 特開2009−126640(JP,A)
【文献】 特開2010−132448(JP,A)
【文献】 特開2009−012944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端がかごに連結されて昇降路内に懸垂されたトラベリングケーブルと、前記トラベリングケーブルと昇降路内壁との間に配置された保護体と、昇降路下部の前記昇降路内壁と前記保護体との間に配置された制御盤又はインバータ盤と、を備え、
常時は、昇降路中央側から見て、前記保護体が前記制御盤又は前記インバータ盤前記保護体と対向する側の少なくとも一部に掛かる構成のものにおいて、
前記保護体の下部が、昇降路の平断面内で、回動可能な構成になっており、回動位置では、昇降路中央側から見て、前記保護体の前記制御盤又は前記インバータ盤前記保護体と対向する側に掛かる部分が、前記常時に比べて少なくなるように構成されていることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記保護体は、常時は前記制御盤又は前記インバータ盤前記保護体と対向する側と平行に配置され、回動位置では、前記制御盤又は前記インバータ盤前記保護体と対向する側と直角方向になるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記保護体は、回動位置が、前記常時の位置よりも高くなるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのトラベリングケーブルの保護装置に係るものであり、特にトラベリングケーブルの保護装置が昇降路内の制御盤等のエレベータ機器の点検口を覆う状態になる場合の対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータは、図4に示すように、昇降路1内に、かご2とカウンターウェイト3が主ロープ4によって吊るされている。主ロープ4は機械室5内の巻上機(図示省略)の駆動シーブ6及びそらせシーブ7に巻き掛けられており、巻上機の駆動シーブ6に駆動されて、かご2とカウンターウェイト3が昇降路1内を昇降する。
【0003】
10は機械室5に設置された制御盤、11はかご2と制御盤10とを連結したトラベリングケーブルであり、このトラベリングケーブル11は、各種の信号や電力の授受を行なうものであり、テールコード等と称されることもある。12は昇降路1の中間に配置されたトラベリングケーブル11の固定具であり、トラベリングケーブル11は固定具12とかご2との間に吊り下げられている。13は吊り下げられたトラベリングケーブル11が昇降路1の壁に接触するのを防止する保護金網である(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、近年は機械室を省略し、巻上機や制御盤を昇降路内に配置するタイプのエレベータが増加している。この種のエレベータの場合、昇降路内にエレベータを構成する機器を配置しているため、トラベリングケーブルと他の機器とが干渉する可能性が高くなる。例えば、図5及び図5の平断面図である図6のような場合がある。
【0005】
図において、図4と同一符号は同一のものを示している。主ロープ4はその一端が昇降路上部の引止部20に固定され、かご2の吊シーブ21,22を介して、昇降路上部のそらせシーブ23に巻き掛けられ、更に昇降路下部に設置された巻上機24の駆動シーブ25に巻き掛けられている。そこから更に上昇して、昇降路上部のそらせシーブ26に巻き掛けられ、次にカウンターウェイト3の吊シーブ27に巻き掛けられて、他端が昇降路上部の引止部28に固定される。
【0006】
30,31はかご2の昇降を案内するかご側ガイドレール、32,33はカウンターウェイト3の昇降を案内するカウンターウェイト側ガイドレールである。34は制御盤、35は巻上機24を駆動するためのインバータを収納したインバータ盤であり、カウンターウェイト側ガイドレール32に取り付けられている。このインバータ盤35は制御盤34と一体に製作される場合もあるが、ノイズ発生等の問題から、インバータ盤として独立して設置する場合がある。
【0007】
40はトラベリングケーブル11の中間部を吊る吊具であり、かご側ガイドレール31に取り付けられている。41はトラベリングケーブル11が昇降路1の壁やインバータ盤35等に接触するのを防止する保護金網である。
【0008】
上記のように、昇降路1内に多くのエレベータ機器を配置しているため、現場によってはトラベリングケーブル11や保護金網41がインバータ盤35等の機器に接近して配置せざるを得ない場合がある。
この点について、図7により説明する。図7(a)は、図5の要部説明図、図7(b)は、図7(a)の動作説明図である。
【0009】
図7(a)に示すように、保守点検時にインバータ盤35の点検作業を行なう場合、点検口があるインバータ盤35の正面35a側(点検側)には、トラベリングケーブル11の固定側11aと保護金網41があるため、点検作業の邪魔になるという問題がある。
【0010】
そこで、図7(b)に示すように、カウンターウェイト側ガイドレール32(図6参照)に第2吊具40aを取り付け、トラベリングケーブル11の固定側11aをインバータ盤35の背面35b側を通すように構成することが考えられている。
更に、保守点検時には保護金網41の下部41aを取り外し、保守点検終了後に保護金網41の下部41aを元の位置に取り付けることが考えられている。
【0011】
これにより、トラベリングケーブル11の固定側11aや保護金網41に邪魔されることなく、インバータ盤35の保守点検作業を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011―102156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記の先行技術では、保守点検毎に保護金網41の下部41aを取り外し及び取り付けるため、保護金網41の下部41aの着脱に時間が掛かるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも一端がかごに連結されて昇降路内に懸垂されたトラベリングケーブルと、前記トラベリングケーブルと昇降路内壁との間に配置された保護体と、昇降路下部の前記昇降路内壁と前記保護体との間に配置された制御盤又はインバータ盤と、を備え、 常時は、昇降路中央側から見て、前記保護体が前記制御盤又は前記インバータ盤前記保護体と対向する側の少なくとも一部に掛かる構成のものにおいて、 前記保護体の下部が、昇降路の平断面内で、回動可能な構成になっており、回動位置では、昇降路中央側から見て、前記保護体の前記制御盤又は前記インバータ盤前記保護体と対向する側に掛かる部分が、前記常時に比べて少なくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
また本発明は、常時は前記制御盤又は前記インバータ盤前記保護体と対向する側と平行に配置され、回動位置では、前記制御盤又は前記インバータ盤前記保護体と対向する側と直角方向になるように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
更に本発明は、前記保護体は、回動位置が、前記常時の位置よりも高くなるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保護金網近辺に配置されているインバータ盤等のエレベータ機器の保守点検作業が行ないやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態による保護金網の正面図である。
図2】本発明の実施の形態による保守点検時の動作説明図である。
図3】本実施の形態による保護金網の取付具を示す図である。
図4】従来のエレベータの概略断面図である。
図5】従来の他のエレベータの概略断面図である。
図6図5の平断面図である。
図7図5の要部説明図及び動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図により説明する。図1は本実施の形態による保護金網の正面図であり、図7(a)の下部を右方から見た図に相当する図、図2は保守点検時の動作説明図であり、図2(a)は通常の状態(常時)を示す正面図及び平面図、図2(b)は保守点検時の状態(回動位置)を示す正面図及び平面図である。図3は本実施の形態による保護金網の取付具を示す図である。
【0020】
図において、50は本実施の形態による保護金網であり、取付具51,52によってかご側ガイドレール31に取り付けられている。インバータ盤35は取付具53,54によってカウンターウェイト側ガイドレール32(図6参照)に取り付けられており、図1において(昇降路中央側から見て)、保護金網50がインバータ盤35の正面35a側(点検側)の一部に掛かる配置になっている。
【0021】
取付具52は、かご側ガイドレール31に固定された固定具60と、固定具60に着脱自在に取り付けられた取付ブラケット61と、保護金網50を取付ブラケット61に取り付ける取付プレート62と、保守点検時に使用される支持プレート63を備えている。
取付ブラケット61は、取付プレート62が取り付けられる平坦部64と、固定具60に取り付けられる屈曲部65を有しており、この屈曲部65には支持プレート63が取り付けられている。
【0022】
図2(a)及び図3に示すように、常時(通常の状態)は、2つのボルト66によって、屈曲部65が固定具60に取り付けられている。また、図2(b)に示すように、保守点検時には、2つのボルト66によって、支持プレート63の取付穴63aを介して、支持プレート63が固定具60に取り付けられている。
67,67は取付プレート62を取付ブラケット61の平坦部64に取り付けるボルト、68,68は支持プレート63を取付ブラケット61の屈曲部65に取り付けるボルトである。
【0023】
70は保護板であり、保護金網50の下端部と昇降路底1aとの間にトラベリングケーブル11の懸垂部下端が挟まらないように設置されるものである。
この保護板70には一対の長穴71,71が設けられており、ボルト67が、取付プレート62,保護金網50,保護板70の長穴71を介して取付ブラケット61の平坦部64の取付穴(図示省略)に螺合されている。保護板70はその下端が昇降路底1aに接触するように、長穴71によって取付位置を調整する。72はラベルであり、保守点検時の取付具52等の着脱手順を記載してある。
【0024】
通常の状態では、図1図2(a)及び図3に示すように、2つのボルト66によって、取付ブラケット61の屈曲部65が、固定具60に取り付けられており、保護板70の下端が昇降路底1aに接触している。このため、トラベリングケーブル11はインバータ盤35や昇降路1の壁に接触することはない。
【0025】
インバータ盤35を保守点検するときには、ボルト66を外して取付ブラケット61を固定具60から取り外す。次に、取付ブラケット61を上昇させながら時計方向に90度回転する(図2(a)矢印)ことにより、図2(b)の状態にする。そして2つのボルト66によって、支持プレート63の取付穴63aを介して、支持プレート63を固定具60に取り付ける。
【0026】
これにより、保護金網50がインバータ盤35の正面35a側から外れ、インバータ盤35の保守点検が可能になる。また、保護金網50を元に戻すときには、前記と逆の操作を行なう。
【0027】
以上のように、本実施の形態によれば、保護金網50を取り外すことなく、インバータ盤35の保守点検を行なうことができる。
【0028】
前記の実施の形態では、支持プレート63を利用して取付ブラケット61を上昇させているが、これは保護金網50の下部がスムーズに回転できるように、保護金網50に余裕を持たせたものである。
【0029】
従って、保護金網50が十分な可撓性を有しておれば、取付ブラケット61を上昇させることなく、単に取付ブラケット61を90度回転させて、取付ブラケット61の屈曲部65を固定具60に取り付けるだけでよい。この場合、支持プレート63は不要である。また保護金具50は、柔軟性のある金網やシート状のものを使用することができる。
更に、取付ブラケット61を90度回転させるのみでよい場合、取付ブラケット61の屈曲部65と固定具60を蝶番で連結し、常時は蝶番が回転しないようにボルト等で止めておけば作業が容易になる。
【0030】
また保護金網50は1枚物である必要はなく、上下方向に複数枚に分割しておき、インバータ盤35に相当する部分の保護金網のみ、回転可能な構成にしてもよい。
更に、インバータ盤35の上方に保守点検を必要とする別のエレベータ機器が配置されている場合には、保護金網を上下方向に分割し、それぞれ回転可能な構成にしておくこともできる。
【0031】
また、前記の実施の形態では、保護金網50の下部を90度回転しているが、必ずしも90度である必要はなく、インバータ盤35の保守点検ができる位置に変位できればよい。この場合、保護金網50の下部の回転角度は、屈曲部65の角度を変更すれば容易に実現できる。
更に、保護板70のラベル72は省略することもできる。更にまた、保護板70の代わりに保護用の鉄線など、他の引っ掛かり防止手段を設けることもできる。
【0032】
また、ボルト66を蝶ボルトにすれば、工具を使用することなく着脱が容易に行なえる。また、ボルト66の箇所にU字型のクリップを使用して、クリップで固定具60を挟む構成にすることもできる。
更にまた、前記実施の形態では、インバータ盤35について説明したが、制御盤34等の、保守点検を必要とするンバータ盤35以外のものと、保護金網50とが重なる場合も同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 昇降路
2 かご
3 カウンターウェイト
4 主ロープ
11 トラベリングケーブル
34 制御盤(エレベータ機器)
35 インバータ盤(エレベータ機器)
35a 正面(点検側)
50 保護金網(保護体)
51,52,53,54 取付具
60 固定具
61 取付ブラケット
62 取付プレート
63 支持プレート
64 平坦部
65 屈曲部
70 保護板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7