特許第6614056号(P6614056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614056
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】分光光度計
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/06 20060101AFI20191125BHJP
   G01J 3/18 20060101ALI20191125BHJP
   G01J 3/32 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   G01J3/06
   G01J3/18
   G01J3/32
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-143116(P2016-143116)
(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公開番号】特開2018-13412(P2018-13412A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2018年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−202189(JP,A)
【文献】 特開平3−115936(JP,A)
【文献】 特開昭62−180229(JP,A)
【文献】 特開昭62−153719(JP,A)
【文献】 特開平3−276315(JP,A)
【文献】 特開昭63−275922(JP,A)
【文献】 特開2010−261885(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0018261(US,A1)
【文献】 米国特許第5280338(US,A)
【文献】 米国特許第4488051(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
試料セルと、
前記試料セルを経た光を検出するための光検出器と、
前記光源からの光を前記試料セルに導く光学系を構成し、前記光源からの光を分光するグレーティングと、
モータの駆動により前記グレーティングを回転させるグレーティング駆動機構と、
前記グレーティングが予め設定されたホームポジションにあることを検知するホームポジションセンサと、
前記グレーティングを所定の位置に位置決めするように前記モータを駆動するとともに、ソフトウェア上で電源オフの入力がなされたときに当該分光光度計の電源をオフにするように構成された制御部と、を備え、
前記制御部は、さらに、ソフトウェア上で電源オフの入力がなされたときに、前記グレーティングが前記ホームポジションにあることを前記ホームポジションセンサが検知するまで前記グレーティングを回転させる第1ホームポジション探索動作を行ない、その後、前記グレーティングを所定角度だけ一定方向へ回転させる退避動作を行ない、当該分光光度計の電源が投入されたときに、前記グレーティングが前記ホームポジションにあることを前記ホームポジションセンサが検知するまで前記第1ホームポジション探索動作よりも細かく前記グレーティングを回転させる第2ホームポジション探索動作を行なうように構成されている分光光度計。
【請求項2】
前記制御部は、前記退避動作において、前記モータの励磁が切れたときに発生する前記グレーティングのずれ量を考慮した角度だけ前記グレーティングを回転させるように構成されている請求項1に記載の分光光度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフなどの分析装置の検出器として使用される分光光度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ用の検出器として分光光度計が知られている。分光光度計の1つとして、光源からの光をグレーティングで分光し、分光された光のうち測定に用いる波長の光を試料セルに導いて、試料セルを経た光の強度を検出することにより、試料セル内の試料の吸光度を測定する分光光度計がある(特許文献1参照。)。
【0003】
上記のような分光光度計では、グレーティングをモータによって駆動するようになっている。グレーティングを駆動するための原点位置としてホームポジションがあり、そのホームポジションをセンサによって検知し、そのホームポジションから所定のパルス数だけモータを駆動することで、グレーティングを所定位置に位置決めする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−202189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定開始時にグレーティングのホームポジションを探索する必要がある。グレーティングのホームポジションはセンサによって検知することができるようになっているが、ホームポジションの正確な位置を見つけるためにはグレーティングを細かく(例えば、1パルスずつ)回転させる必要があり、ホームポジションの探索にある程度の時間を要し、その間は測定を開始できずに待機する必要があるため、測定をすぐに開始することができない。
【0006】
そこで、本発明は、グレーティングのホームポジション探索に要する時間を短縮することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る分光光度計は、光源と、試料セルと、前記試料セルを経た光を検出するための光検出器と、前記光源からの光を前記試料セルに導く光学系を構成し、前記光源からの光を分光するグレーティングと、モータの駆動により前記グレーティングを回転させるグレーティング駆動機構と、前記グレーティングが予め設定されたホームポジションにあることを検知するホームポジションセンサと、前記グレーティングを所定の位置に位置決めするように前記モータを駆動するとともに、ソフトウェア上で電源オフの入力がなされたときに当該分光光度計の電源をオフにするように構成された制御部と、を備えている。さらに、前記制御部は、ソフトウェア上で電源オフの入力がなされたときに、前記グレーティングが前記ホームポジションにあることを前記ホームポジションセンサが検知するまで前記グレーティングを回転させる第1ホームポジション探索動作を行ない、その後、前記グレーティングを所定角度だけ一定方向へ回転させる退避動作を行ない、当該分光光度計の電源が投入されたときに、前記グレーティングが前記ホームポジションにあることを前記ホームポジションセンサが検知するまで前記第1ホームポジション探索動作よりも細かく前記グレーティングを回転させる第2ホームポジション探索動作を行なうように構成されている。
【0008】
前記制御部は、前記退避動作において、前記モータの励磁が切れたときに発生する前記グレーティングのずれ量を考慮した角度だけ前記グレーティングを回転させるように構成されていることが好ましい。そうすれば、モータの励磁が切れたときに発生するグレーティングのずれによってグレーティングがホームポジションのどちら側にあるのかがわからなくなるという事態を防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の分光光度計では、制御部は、ソフトウェア上で電源オフの入力がなされたときに、前記グレーティングが前記ホームポジションにあることを前記ホームポジションセンサが検知するまで前記グレーティングを回転させる第1ホームポジション探索動作を行ない、その後、前記グレーティングを所定角度だけ一定方向へ回転させる退避動作を行ない、当該分光光度計の電源が投入されたときに、前記グレーティングが前記ホームポジションにあることを前記ホームポジションセンサが検知するまで前記第1ホームポジション探索動作よりも細かく前記グレーティングを回転させる第2ホームポジション探索動作を行なうように構成されているので、電源投入後は、第2ホームポジション探索動作のみを実行するだけでホームポジション探索が完了し、ホームポジション探索に要する時間が従来よりも短くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】分光光度計の一実施例を示す概略構成図である。
図2】同実施例の電源オフ時の動作を示すフローチャートである。
図3】同実施例の電源オン時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、分光光度計の一実施例について説明する。
【0012】
図1を用いて一実施例の分光光度計の構成について説明する。
【0013】
この実施例の分光光度計1は、光源2からの光をグレーティング8によって波長成分ごとに分光し、分光された光のうち測定に用いる波長成分の光をフローセル14に導いてフローセル14内を流れる液の吸光度を測定するように構成された前分光方式の吸光分光光度計である。
【0014】
光源2により発せられた光をフローセル14に導く光学系として、スリット4、ミラー6、グレーティング8及びミラー10が設けられている。スリット4を介してミラー6に入射した光はグレーティング8に導かれ、波長成分ごとに分光される。グレーティング8は、測定に用いる波長成分の光がミラー10へ導かれるようにその位置が調整される。ミラー10で反射した測定波長の光がフローセル14へ導かれる。
【0015】
フローセル14内には液を流通させるための試料セル16が設けられている。試料セル16内は、例えば液体クロマトグラフの分離カラムから溶出した溶出液が流れている。フローセル14のミラー10側(図において右側)の面とその反対側(図において左側)の面にはそれぞれ、測定光を透過させる入射窓及び出射窓が設けられている。ミラー10からの光は入射窓を介して試料セル16内に入射し、試料セル16内を通過した光が出射窓から出射する。
【0016】
フローセル14の出射窓側に、試料セル16を通過した光を検出するための光検出器18が設けられている。光検出器18は、例えば光電子増倍管である。
【0017】
グレーティング8は、モータ20を含むグレーティング駆動機構によって駆動される。グレーティング8の近傍に、グレーティング8がホームポジションにあることを検知するホームポジションセンサ22が設けられている。ホームポジションセンサ22は、例えばマイクロスイッチである。ホームポジションセンサ22の信号は後述する制御部24に取り込まれる。
【0018】
分光光度計1には制御部24が設けられており、制御部24に演算処理部30が電気的に接続されている。演算処理部30は、専用のコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータによって実現されるものである。光検出器18の信号は制御部24を介して演算処理部30に取り込まれる。演算処理部30では、光検出器18からの信号に基づいて試料セル16を流れる試料の測定波長における吸光度が求められる。ユーザは、演算処理部30を介して分光光度計1を管理することができ、演算処理部30に設けられたモニタ上で測定結果を確認することができる。
【0019】
制御部24は電源スイッチ部26とグレーティング位置調整部28を備えている。
【0020】
電源スイッチ部26は、演算処理部30におけるソフトウェア上でユーザによる電源オフの入力があったときに、その旨の信号を演算処理部30から受け取り、後述する第1ホームポジション探索動作及び退避動作が実行された後、分光光度計1の電源をオフにするように構成されている。グレーティング8の第1ホームポジション探索動作及び退避動作については後述する。
【0021】
グレーティング位置調整部28は、グレーティング8の位置を、グレーティング8により分光された光のうち測定に用いられる光をミラー10を介してフローセル14へ導くための所定の位置に位置決めするように構成されている。グレーティング8の所定の位置への位置決めは、まず、ホームポジションセンサ22からの信号に基づいてグレーティング8を予め決められたホームポジションに位置決めし、そのホームポジションから所定のパルス数だけモータ20を駆動することによりなされる。
【0022】
また、グレーティング位置調整部28は、ユーザにより演算処理部30を介して電源オフの入力がなされたときに、第1ホームポジション探索動作及び退避動作を実行し、さらに分光光度計1の電源が投入されたときには、第2ホームポジショ探索動作を行なうように構成されている。
【0023】
分光光度計1の電源オフ時の動作について、図2のフローチャートを図1とともに参照して説明する。
【0024】
ユーザにより電源オフの入力がソフトウェア上でなされると、グレーティング8がホームポジションにきたことをホームポジションセンサ22が検知するまで、モータ20の一定パルス分ずつグレーティング8をホームポジション側(例えば、図1において反時計回り)へ回転させる(第1ホームポジション探索動作)。第1ホームポジション探索動作が完了した後、モータ20の所定パルス(例えば、数十パルス)分だけ反対側(例えば、図1において時計回り)へグレーティング8を回転させる(退避動作)。退避動作が完了した後、分光光度計1の電源をオフにする。
【0025】
上記退避動作でのグレーティング8の退避パルス数は、電源がオフにされてモータ20の励磁が切られたときのグレーティング8のぶれ量を考慮して設定されている。すなわち、モータ20の励磁が切られた後でグレーティング8の位置がぶれた場合でも、グレーティング8がホームポジションに対してどちら側の位置にあるかが変化しないように、退避パルス数が設定されている。退避パルス数がこのように設定されていないと、後述する第2ホームポジション探索動作において、グレーティング8をどちら側へ移動させればよいのかがわからなくなるからである。
【0026】
次に、分光光度計1の電源投入時の動作について、図3のフローチャートを図1とともに参照して説明する。
【0027】
分光光度計1の電源が投入されたときは、上記の上記第1ホームポジション探索動作及び退避動作によって、グレーティング8がホームポジションから一定の方向側(例えば、図1において反時計回り側)へわずかにずれた位置にある。この状態から、グレーティング8がホームポジションにきたことをホームポジションセンサ22が検知するまで、グレーティング8を、モータ20の1パルス分ずつホームポジション側へ回転させる(第2ホームポジション探索動作)。
【0028】
第2ホームポジション探索動作では、第1ホームポジション探索動作よりも細かくグレーティング8を回転させていくことで、グレーティング8を正確にホームポジションに位置決めすることができる。第2ホームポジション探索動作によってグレーティング8をホームポジションに位置決めした後、その位置から予め決められたパルス数だけモータ20を駆動してグレーティング8を回転させ、グレーティング8を測定用の位置に位置決めする。これにより、測定を行なうための準備動作が完了する。
【0029】
以上において説明したように、この実施例の分光光度計1は、電源がオフになる前に、グレーティング8がホームポジションの近傍の位置まで回転した状態となっているので、電源が投入された後は、ホームポジションの近傍の位置からグレーティング8を細かく回転させてグレーティング8のホームポジションの正確な位置を短時間で探索することができる。これにより、電源投入後のグレーティング8のホームポジションの探索に要する時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0030】
2 光源
4 入口スリット
6,10 ミラー
8 グレーティング
14 フローセル
16 試料セル
18 光検出器
20 モータ
22 ホームポジションセンサ
24 制御部
26 電源スイッチ部
28 グレーティング位置調整部
30 演算制御部
図1
図2
図3