特許第6614095号(P6614095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6614095音響波フィルター装置、音響波フィルター装置製造用パッケージ、及び音響波フィルター装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614095
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】音響波フィルター装置、音響波フィルター装置製造用パッケージ、及び音響波フィルター装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20191125BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20191125BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   H03H9/25 A
   H03H9/64 Z
   H01L23/02 C
【請求項の数】23
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-207270(P2016-207270)
(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公開番号】特開2017-139734(P2017-139734A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2016年10月21日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0014261
(32)【優先日】2016年2月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カン、ユン スン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ピル ジョーン
(72)【発明者】
【氏名】キム、クァン ス
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ジ ヒエ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジェオン スオン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジェオン イル
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジョン ヒョン
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−173557(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128210(WO,A1)
【文献】 特開2008−292312(JP,A)
【文献】 特開平07−086730(JP,A)
【文献】 特開平09−213702(JP,A)
【文献】 特開2006−135264(JP,A)
【文献】 特開2008−258353(JP,A)
【文献】 特開2006−156513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/007− 9/76
H01L 23/00 −23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響波フィルター部と、
前記音響波フィルター部が一面に形成され、前記音響波フィルター部の周りに接合部が形成されるベースと、
前記接合部に対応する接合対応部が形成され、前記ベースに接合されるキャップと、
を含み、
前記接合部は、金材質からなる第1の接合層を備え、
前記接合対応部は、前記第1の接合層に接合され、スズ材質からなる第2の接合層を備え、
前記接合対応部において、前記第2の接合層と前記キャップとの間に金材質からなる補助接合層がさらに含まれ、
前記接合対応部の全体に対する前記接合対応部に含まれる金の量が1/40〜1/20である、音響波フィルター装置。
【請求項2】
前記第1の接合層の厚さt1/前記第2の接合層の厚さt2で表される比は、1.2かそれより大きく、2かそれより小さい、請求項1に記載の音響波フィルター装置。
【請求項3】
前記第1の接合層の厚さt1は、1.5〜3μmである、請求項1または請求項2に記載の音響波フィルター装置。
【請求項4】
前記接合対応部は、前記第2の接合層の下部に金材質からなる補助接合層を備える、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の音響波フィルター装置。
【請求項5】
前記接合部は、第1の接合層と前記ベースとの接合のための第1の接着剤層を備える、請求項4に記載の音響波フィルター装置。
【請求項6】
前記第1の接着剤層は、クロムまたはチタン材質からなる、請求項5に記載の音響波フィルター装置。
【請求項7】
前記接合対応部は、キャップとの接合のための第2の接着剤層を備える、請求項4から請求項6の何れか一項に記載の音響波フィルター装置。
【請求項8】
前記第2の接着剤層は、クロムまたはチタン材質からなる、請求項7に記載の音響波フィルター装置。
【請求項9】
前記キャップには、前記音響波フィルター部に対応する位置に配置されるように湾入溝が形成される、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の音響波フィルター装置。
【請求項10】
前記第1の接合層と前記第2の接合層は、熱及び圧力が加えられて接合される、請求項1から請求項9の何れか一項に記載の音響波フィルター装置。
【請求項11】
前記第1及び第2の接合層は、280度以上350度未満の温度環境下で接合される、請求項10に記載の音響波フィルター装置。
【請求項12】
少なくとも一つ以上の音響波フィルター部と、
前記音響波フィルター部が一面に形成され、前記音響波フィルター部の周りに接合部が形成されるベースウェハと、
前記接合部に対応する接合対応部が形成されるキャップウェハと、
を含み、
前記接合部は、金材質からなる第1の接合層を備え、
前記接合対応部は、前記第1の接合層に接合され、スズ材質からなる第2の接合層を備え、
前記接合対応部において、前記第2の接合層と前記キャップウェハとの間に金材質からなる補助接合層がさらに含まれ、
前記接合対応部の全体に対する前記接合対応部に含まれる金の量が1/40〜1/20である、音響波フィルター装置製造用パッケージ。
【請求項13】
前記第1の接合層の厚さt1/前記第2の接合層の厚さt2で表される比は、1.2かそれより大きく、2かそれより小さい、請求項12に記載の音響波フィルター装置製造用パッケージ。
【請求項14】
前記第1の接合層の厚さt1は、1.5〜3μmである、請求項12または請求項13に記載の音響波フィルター装置製造用パッケージ。
【請求項15】
前記キャップウェハには、前記音響波フィルター部に対応する位置に配置されるように湾入溝が形成される、請求項12から請求項14の何れか一項に記載の音響波フィルター装置製造用パッケージ。
【請求項16】
前記第1及び第2の接合層は、280度以上350度未満の温度環境下で圧力が加えられて接合される、請求項12から請求項15の何れか一項に記載の音響波フィルター装置製造用パッケージ。
【請求項17】
ベースウェハの音響波フィルター部の周りに第1の金属を備える接合部を形成する段階と、
キャップウェハに第2の金属を備える接合対応部を形成する段階と、
前記接合部と前記接合対応部とを接合する段階と、
を含み、
前記第1及び第2の金属の合金は、前記接合部と前記接合対応部との間の境界面で形成され、
前記第1の金属は金材質であり、
前記第2の金属はスズ材質であり、
前記接合対応部において、前記第2の金属からなる層と前記キャップウェハとの間に金材質からなる補助接合層がさらに含まれ、
前記接合対応部の全体に対する前記接合対応部に含まれる金の量が1/40〜1/20であり
前記合金は、AuSn、AuSn及びAuSnで構成される群より選択された少なくとも一つを備える、音響波フィルター装置の製造方法。
【請求項18】
前記接合部及び前記接合対応部は、280度以上350度未満の温度環境下で接合される、請求項17に記載の音響波フィルター装置の製造方法。
【請求項19】
前記接合部の厚さ(t1)/前記接合対応部の厚さ(t2)で表される比は、1.2かそれより大きく、2かそれより小さい、請求項17または請求項18に記載の音響波フィルター装置の製造方法。
【請求項20】
音響波フィルター部を備えるベースと、
前記ベース上に配置される音響波フィルター部を覆うキャップと、
前記キャップと前記ベースとを接合するための接合構造と、
を含み、
前記接合構造は、ベース上に配置される第1の金属を備える第1の接合層、及びキャップ上に配置される第2の金属を備える第2の接合層を備え、
前記第1の金属及び前記第2の金属の合金は、前記第1の接合層と前記第2の接合層との境界面で形成され、
前記第1の金属は金材質であり、
前記第2の金属はスズ材質であり、
前記接合構造において、前記第2の接合層と前記キャップとの間に金材質からなる補助接合層がさらに含まれ、
前記第2の接合層と前記補助接合層とを含む接合対応部の全体に対する前記接合対応部に含まれる金の量が1/40〜1/20であり
前記合金は、AuSn、AuSn及びAuSnで構成される群より選択された少なくとも一つを備える、音響波フィルター装置。
【請求項21】
前記接合構造は、前記キャップと前記第2の接合層との間に配置される第1の金属を備える第3の接合層をさらに備える、請求項20に記載の音響波フィルター装置。
【請求項22】
前記第1の金属は金からなり、前記第2の金属はスズからなる、請求項20に記載の音響波フィルター装置。
【請求項23】
前記キャップには、前記ベース、前記キャップ、及び前記接合構造内に形成される空間内に前記音響波フィルター部が配置されるように湾入溝が形成され、
前記湾入溝は下部から上部に行くほど狭くなる形状を有する、請求項20から請求項22の何れか一項に記載の音響波フィルター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響波フィルター装置、音響波フィルター装置製造用パッケージ、及び音響波フィルター装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、無線通信システム分野で小型化、多機能化及び高性能化を実現させるために、体積弾性波フィルター素子(BAW filter device)を利用した素子が、必須の部品として非常に重要な役割を果たしている。一方、体積弾性波フィルター素子の特性を発現するためには、水分などの浸透を封止することで信頼性のある真空状態の密封を維持することができる気密封止(hermetic seal)が必要である。
【0003】
一方、体積弾性波フィルター素子の製造の際に一般的に使用される接合技術の中で、気密封止を維持するためのウェハレベル接合(wafer level bonding)技術としては、ケイ素−ケイ素(Si−Si)直接接合、ケイ素−ガラス(Si−Glass)陽極接合及びフリットガラス(Flit glass)を利用する接合などがある。
【0004】
このような技術は、多くの場合、接合温度が高い又は加工性が悪化する等の短所があり、体積弾性波フィルター素子(BAW filter device)のパッケージ(package)処理には適していないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第2007−16855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐酸化性に優れ、破壊靭性などの機械的特性に優れた音響波フィルター装置及び音響波フィルター装置製造用パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例による音響波フィルター装置は、音響波フィルター部と、上記音響波フィルター部が一面に形成され、上記音響波フィルター部の周りに接合部が形成されるベースと、上記接合部に対応する接合対応部が形成され、上記ベースに接合されるキャップとを含み、上記接合部は、金材質からなる第1の接合層を備え、上記接合対応部は、上記第1の接合層に接合され、スズ材質からなる第2の接合層を備えることができる。
【発明の効果】
【0008】
耐酸化性に優れ、破壊靭性などの機械的特性に優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施例による音響波フィルター装置を示す概略構成図である。
図2図1のA部の構成を示す分解図である。
図3】本発明の第2の実施例による音響波フィルター装置を示す概略構成図である。
図4図3のB部の構成を示す分解図である。
図5】本発明の第3の実施例による音響波フィルター装置を示す概略構成図である。
図6図5のC部の構成を示す分解図である。
図7】本発明の第1の実施例による音響波フィルター装置製造用パッケージを示す概略構成図である。
図8】本発明の第1の実施例による音響波フィルター装置製造用パッケージに備えられるベースウェハを示す平面図である。
図9】本発明の第1の実施例による音響波フィルター装置製造用パッケージに備えられるキャップウェハを示す底面図である。
図10】本発明の一実施例による音響波フィルター装置の製造方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に理解させるために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施例による音響波フィルター装置を示す概略構成図であり、図2は、図1のA部の構成を示す分解図である。
【0012】
図1及び図2を参照すると、本発明の第1の実施例による音響波フィルター装置100は、一例として、音響波フィルター部110、ベース120、及びキャップ130を含んで構成することができる。
【0013】
音響波フィルター部110は、ベース120上に形成される。一例として、音響波フィルター部110は、図面には詳しく図示していないが、下部電極、圧電体、及び上部電極を含んで構成されることが可能である。
【0014】
一方、圧電体は、一例として、酸化亜鉛(ZnO)、または窒化アルミニウム(AIN)のような薄膜で製造可能な圧電材料を含んで構成される。
【0015】
音響波フィルター部110は、バルク弾性波(BAW、Bulk Acoustic wave)フィルターで構成されることができる。但し、これに限定されず、音響波フィルター部110は、広い範囲の異なる弾性波フィルターの種類、即ち、バルク弾性波(BAW)フィルター、表面弾性波(SAW)フィルター及び/または積層型水晶フィルター(SCF)から選択されることができる。
【0016】
ベース120の一面には音響波フィルター部110が形成され、音響波フィルター部110の周りに接合部122が形成される。ベース120は、後述するベースウェハ420からカットによって形成される。また、接合部122は、音響波フィルター部110の周りを囲むようにベース120の上面に形成される。
【0017】
一例として、接合部122は、四角形の帯状の形状を有することができ、接合部122の高さは音響波フィルター部110の高さより高く形成される。但し、接合部122の形状及び厚さは、このような形状及び厚さに限定されず、発明の実施に際して多様に変更可能である。
【0018】
一方、接合部122は、金(Au)材質からなるようにしてもよい。但し、接合部122の材質はこれに限定されず、接合部122は、金(Au)を含有する材質からなっていてもよい。
【0019】
接合部122は単一の接合層または複数の接合層で形成することができる。一例として、図1に示すように、接合部122は単一の接合層からなる第1の接合層からなるようにしてもよい。
【0020】
キャップ130には、音響波フィルター部110に対応する位置に配置されるように湾入溝132が形成され、接合部122に対応する接合対応部134が形成される。
【0021】
即ち、ベース120とキャップ130とを接合する際に、音響波フィルター部110は、湾入溝132の下部に配置される。また、音響波フィルター部110の周りには、接合部122と接合対応部134が音響波フィルター部110を囲むように配置される。
【0022】
即ち、接合部122と接合対応部134との接合によって、ベース120とキャップ130とが接合される。換言すると、ベース120とキャップ130との接合の際に、ベース120の接合部122上にキャップ130の接合対応部134が積層され、接合部122と接合対応部134との接合によって接合構造が形成される。
【0023】
これにより、ベース120の接合部122とキャップ130の接合対応部134は、音響波フィルター110が収容される空間内の気密封止(Hermetic seal)を形成する。
【0024】
一方、湾入溝132は、上部に行くほど面積が小さくなる形状を有するように形成される。
【0025】
また、接合対応部134も、四角形の帯状の形状を有することができ、スズ(Sn)材質からなることができる。但し、接合対応部134の材質はこれに限定されず、接合対応部134は、スズ(Sn)を含有する材質からなっていてもよい。
【0026】
接合対応部134は、第2の接合層からなるようにしてもよい。
【0027】
接合部122と接合対応部134は、一例として、拡散接合(diffusion bonding)によって接合することができる。但し、接合部122と接合対応部134との間の接合態様はこれに限定されず、接合部122と接合対応部134とは、他の接合方式によって接合することもできる。
【0028】
接合部122の厚さt1は、接合対応部134の厚さt2の1.2倍かそれより大きく、接合対応部134の厚さt2の2倍かそれより小さくてよい。即ち、第1の接合層の厚さt1/第2の接合層の厚さt2で表される比は、1.2かそれより大きく、2かそれより小さくてよい。
【0029】
また、第1の接合層の厚さt1は、1.5〜3μmとすることが可能である。
【0030】
ここで、接合部122と接合対応部134との接合についてみると、接合部122と接合対応部134は一定の温度及び圧力下で接合される。一例として、接合部122と接合対応部134はおおよそ280℃〜350℃の間の温度下で相互拡散接合によって接合することができる。例えば、金(Au)及びスズ(Sn)からは、AuSn、AuSn、AuSnを含む複数種類の合金を形成することができる。このような合金のうち、AuSn及びAuSnで形成された接合構造は強靭な機械的特徴及び高い信頼性を示す。また、おおよそ280℃〜350℃の間の接合温度を接合条件として用いることにより強靭な機械的特徴及び高い信頼性を有する接合構造を得ることができる。
【0031】
一方、第1の実施例によれば、接合部122が金(Au)からなるのに対し、キャップ130の接合対応部134はスズ(Sn)からなる。これにより、スズ(Sn)に比べて相対的に高価な金(Au)に代わってスズ(Sn)を用いることにより、接合対応部134の製造費用を節減することができる。さらに、第1の実施例によれば、接合部122と接合対応部134との間における接合の信頼性が向上し、接合物質が拡散する間に接合に寄与するスズ(Sn)の量が充分に確保される。
【0032】
また、上記のように、キャップ130の接合対応部134に含有される金(Au)が除去されて、接合対応部134が主としてスズ(Sn)材質のみからなるような接合構造とすることができる。このように、接合に寄与する溶融スズ(Sn)の量を確保するために、温度上昇区間で形成される金−スズ(Au−Sn)金属間化合物に消耗されるスズ(Sn)の量を減らすことができる構造を有する。
【0033】
即ち、温度上昇区間における金−スズ金属間化合物の生成を抑制して、実際の接合に寄与する溶融スズ(Sn)の量を増加させることができる。
【0034】
さらに詳しく説明すると、接合対応部134の第2の接合層の表面に酸化防止を目的として金(Au)やその他の貴金属材料で積層する場合、接合のために温度を上昇させると、温度上昇区間で表面に積層された金(Au)とスズ(Sn)が反応して、溶融温度の高い金属間化合物を形成し、このような金属間化合物がベース120の接合部122と接触して、接合の際に溶融せず固相状態で存在するようになる。金属化合物の高い溶融温度が原因で、金属化合物はベース120とキャップ130に接合工程が完了するまで圧力が加えられた状態で固まる。
【0035】
これにより、キャップ130とベース120との間の接合面に開いた隙間に空き空間による気孔が残留する。このような気孔は、音響波フィルター部110の周りのシールされた内部空間に水分やその他の汚染物質が浸透されるようにして音響波フィルター装置100の信頼性を低くすることがある。従って、本発明の第1の実施例によれば、金(Au)やその他の貴金属材料は腐食を防止するために第2の接合層の表面に形成されない。
【0036】
しかし、本発明の第1の実施例によれば、キャップ130の接合対応部134に含有される金(Au)の量を減らすことで、温度上昇区間におけるスズ(Sn)の消耗が減り、実際の接合の際に寄与するスズ(Sn)の量が相対的に増える。
【0037】
結局、接合部122と接合対応部134との間の接合面に気孔が形成されない緻密な組織の接合面の形成が可能である。
【0038】
従って、水分やその他の不純物が音響波フィルター部110を収容する内部空間に浸透されることを防止することができる。また、音響波フィルター装置100の酸化を防止することができる。さらに、上記のように構成された接合構造は連続的な製造工程において耐酸化性に優れ、破壊靭性などの機械的特性に優れたものとすることができる。
【0039】
以下では、図面を参照して、音響波フィルター装置の変形実施例について説明する。
【0040】
図3は、本発明の第2の実施例による音響波フィルター装置を示す概略構成図であり、図4は、図3のB部の構成を示す分解図である。
【0041】
図3及び図4を参照すると、本発明の第2の実施例による音響波フィルター装置200は、一例として、音響波フィルター部110、ベース120、及びキャップ230を含んで構成されることができる。
【0042】
一方、下記で説明する接合対応部234を除いた音響波フィルター部110、ベース120、及びキャップ230は、上記で説明した構成要素と同一の構成要素であり、ここでは詳しい説明を省略する。ここで、本発明の第2の実施例による音響波フィルター装置200と上記音響波フィルター装置100との差異点は、接合対応部134に代わって接合対応部234を含むことだけである。
【0043】
接合対応部234は、四角形の帯状の形状を有することができる。一方、接合対応部234は、第2の接合層234aと、第2の接合層234aの下部に形成される補助接合層234bとを備えることができる。例えば、第2の接合層234aは、スズ(Sn)材質からなることができ、補助接合層234bは、金(Au)材質からなることができる。
【0044】
ここで、接合部122と接合対応部234との接合についてみると、接合部122と接合対応部234は、一定の温度(例えば、約280℃以上〜350℃未満)及び圧力下で接合される。
【0045】
また、上記のように、キャップ130の接合対応部134に含有される金(Au)の量を接合対応部134の全体の厚さの1/40〜1/20に減らすことで、接合に寄与する溶融スズ(Sn)の量を充分に確保することができる。即ち、温度上昇区間で形成される金−スズ(Au−Sn)金属間化合物に消耗されるスズ(Sn)の量を減らすことができる構造を有する。
【0046】
換言すると、温度上昇区間における金−スズ金属間化合物の生成を抑制して、実際の接合に寄与する溶融スズ(Sn)の量を増加させることができる。
【0047】
さらに詳しく説明すると、接合対応部234の第2の接合層234aの表面に酸化防止を目的として金(Au)やその他の貴金属材料で積層する場合、接合のために温度を上昇させると、温度上昇区間で表面に積層された金(Au)とスズ(Sn)が反応して、溶融温度の高い金属間化合物を形成し、このような金属間化合物がベース120の接合部122と接触して、接合の際に溶融せず固相状態で存在するようになる。
【0048】
これにより、接合面に開いた隙間に空き空間による気孔が残留する。
【0049】
従って、本実施例によれば、金(Au)やその他の貴金属類材料が腐食を防止するために接合対応部234の第2の接合層234aの表面に形成されなくてもよい。さらに、本実施例によれば、接合対応部234に含有される金(Au)の量を減らし、キャップ230の接合対応部234に含有されるスズ(Sn)の量が増えるため接合温度に達するまで温度が上昇する間に、速い拡散及び金属化合物の形成に起因してスズ(Sn)が消耗することを減少させることができる。スズ(Sn)は、低い溶融温度を有するため、金(Au)やその他の貴金属に比べてさらに速く拡散する傾向がある。
【0050】
即ち、本実施例では、キャップ230の接合対応部234に含有される金(Au)の量を減らすことで、温度上昇区間におけるスズ(Sn)の消耗が減り、実際の接合の際に寄与するスズ(Sn)の量が相対的に増える。
【0051】
結局、本実施例によれば、気孔が形成されない緻密な組職の接合面の形成が可能である。
【0052】
従って、本発明の第2の実施例による音響波フィルター装置200は、耐酸化性に優れ、破壊靭性などの機械的特性に優れたものとすることができる。
【0053】
図5は、本発明の第3の実施例による音響波フィルター装置を示す概略構成図であり、図6は、図5のC部の構成を示す分解図である。
【0054】
図5及び図6を参照すると、本発明の第3の実施例による音響波フィルター装置300は、一例として、音響波フィルター部110、ベース320、及びキャップ330を含んで構成することができる。
【0055】
一方、下記で説明する接合部322と接合対応部334を除いた音響波フィルター部110、ベース320、及びキャップ330は、上記で説明した構成要素と同一の構成要素であり、ここでは詳しい説明を省略する。
【0056】
接合部322は、四角形の帯状を有することができ、音響波フィルター部110より高く形成される。接合部322は、第1の接合層322a、及びベース320と第1の接合層322aとの間に配置され、第1の接合層322aの下部に形成される第1の接着剤層322bとからなるようにしてもよい。
【0057】
第1の接合層322aは、金(Au)材質からなるようにしてもよく、第1の接合層322aの下部に形成される第1の接着剤層322bは、クロムまたはチタン材質からなるようにしてもよい。但し、第1の接合層322aおよび第1の接着剤層322bの材質はこれらに限定されず、第1の接合層322aは、金(Au)を含有する材質からなるようにしてもよく、第1の接着剤層322bは、クロムまたはチタン材質を含有する材質からなるようにしてもよい。
【0058】
接合対応部334は、四角形の帯状の形状を有することができる。一方、接合対応部334は、第2の接合層334aと、第2の接合層334aの下部に形成される補助接合層334b、及び補助接合層334bの下部に形成される第2の接着剤層334cを備えることができる。第2の接合層334aは、スズ(Sn)材質からなるようにしてもよく、補助接合層334bは、金(Au)材質からなるようにしてもよく、第2の接着剤層334cは、クロムまたはチタン材質からなるようにしてもよい。
【0059】
図7は、本発明の第1の実施例による音響波フィルター装置製造用パッケージを示す概略構成図であり、図8は、本発明の第1の実施例による音響波フィルター装置製造用パッケージに備えられるベースウェハを示す平面図であり、図9は、本発明の第1の実施例による音響波フィルター装置製造用パッケージに備えられるキャップウェハを示す底面図である。
【0060】
図7図9を参照すると、本発明の第1の実施例による音響波フィルター装置製造用パッケージ400は、一例として、音響波フィルター部410、ベースウェハ420、及びキャップウェハ430を含んで構成されることができる。
【0061】
音響波フィルター部410は、ベースウェハ420上に少なくとも一つ以上が形成される。即ち、図8に示すように、音響波フィルター部410は、ベースウェハ420上に複数個が列と行をなすように形成することができる。
【0062】
また、図面には詳しく示していないが、音響波フィルター部410は、上記で説明したように、下部電極、圧電体、及び上部電極を含んで構成することができる。
【0063】
一方、圧電体は、一例として、酸化亜鉛(ZnO)、または窒化アルミニウム(AIN)などを素材とする薄膜を用いて製造することができる圧電材料を含んでなる。
【0064】
音響波フィルター部410は、バルク弾性波フィルター(BAW)で構成されることができる。但し、音響波フィルター部410の構成はこれに限定されず、音響波フィルター部410は、広範囲にわたる異なる種類の弾性波フィルター、即ち、バルク弾性波(BAW)フィルター、表面弾性波(SAW)フィルター及び/または積層型水晶フィルター(SCF)の中から選択されることが可能である。
【0065】
ベースウェハ420には、少なくとも一つ以上の音響波フィルター部410が一面に形成され、音響波フィルター部410の周りに接合部422が形成される。接合部422は格子状を有する。即ち、格子状の形態を有する接合部422の中央部に音響波フィルター部410が形成される。
【0066】
また、接合部422の高さは、音響波フィルター部410の厚さより高くてよい。
【0067】
一方、接合部422は、第1の接合層422a、及びベースウェハ420と第1の接合層422aとの間に配置され、第1の接合層422aの下部に形成される第1の接着剤層422bからなることができる。第1の接合層422aは、第1の接着剤層422bを通じてベースウェハ420に接合される。
【0068】
第1の接合層422aは、金(Au)材質からなるようにしてもよく、第1の接合層422aの下部に形成される第1の接着剤層422bは、クロムまたはチタン材質からなるようにしてもよい。但し、第1の接合層422aおよび第1の接着剤層422bの材質これに限定されず、他の実施例として、第1の接合層422aは、金(Au)を含有する材質からなるようにしてもよく、第1の接着剤層422bは、クロムまたはチタン材質を含有する材質からなるようにしてもよい。
【0069】
上述の他の実施例によれば、接合部422は第1の接着剤層422bを含まなくてもよい。即ち、接合部422は、第1の接着剤層422bなしで直接ベースウェハ420に接合される第1の接合層422aを含むことが可能である。
【0070】
キャップウェハ430には、音響波フィルター部410に対応する位置に配置されるように湾入溝432が形成され、接合部422に対応する接合対応部434が形成される。
【0071】
即ち、ベースウェハ420とキャップウェハ430との接合の際に、音響波フィルター部410は湾入溝432の下部に配置される。また、音響波フィルター部410の周りには、接合部422と接合対応部434が音響波フィルター部410を囲むように配置される。
【0072】
つまり、接合対応部434もまた格子状の形態を有し、接合対応部434の中央部に湾入溝432が形成される。
【0073】
湾入溝432は、上部に行くほど面積が小さくなる形状を有するように形成される。
【0074】
接合対応部434は、第2の接合層434a、第2の接合層434a上に形成される補助接合層434b、及び補助接合層434b上に形成される第2の接着剤層434cを備えることができる。第2の接合層434aは、スズ(Sn)材質からなるようにしてもよく、補助接合層434bは、金(Au)材質からなることができ、第2の接着剤層434cは、クロムまたはチタン材質からなるようにしてもよい。
【0075】
他の実施例において、接合対応部434は、キャップウェハ430に直接接合される第2の接合層434aだけを含むか、または第2の接着剤層434cを設けずにキャップウェハ430に直接接合される補助接合層434b及び第2の接合層434aを含むことができる。
【0076】
ここで、接合部422と接合対応部434との接合についてみると、接合部422と接合対応部434は、一定の温度(例えば、約280℃以上〜350℃未満)と圧力下で接合する。
【0077】
また、上記のように、キャップウェハ430の接合対応部434に含有される金(Au)の量を1/40〜1/20に減らすことで、接合に寄与する溶融スズ(Sn)の量を充分に確保することができる。即ち、温度上昇区間で形成される金−スズ(Au−Sn)金属間化合物に消耗されるスズ(Sn)の量を減らすことができる構造を有する。
【0078】
換言すると、温度上昇区間における金−スズ金属間化合物の生成を抑制して、実際の接合に寄与する溶融スズ(Sn)の量を増加させることができる。
【0079】
さらに詳しく説明すると、接合対応部434の第2の接合層434aの表面に酸化防止を目的として金(Au)やその他の貴金属材料で積層する場合、接合のために温度を上昇させると、温度上昇区間で表面に積層された金(Au)とスズ(Sn)が反応して、溶融温度の高い金属間化合物を形成し、このような金属間化合物がベースウェハ420の接合部422と接触して、接合の際に溶融せず固相状態で存在するようになる。
【0080】
これにより、接合面に開いた隙間に空き空間による気孔が残留する。
【0081】
しかし、キャップウェハ430の接合対応部434に含有される金(Au)の量を減らすことで、温度上昇区間におけるスズ(Sn)の消耗が減り、実際の接合の際に寄与するスズ(Sn)の量が相対的に増える。
【0082】
結局、本実施例によれば、気孔が形成されない緻密な組職の接合面の形成が可能である。
【0083】
一方、音響波フィルター装置300は、本発明の第1の実施例による音響波フィルター装置製造用パッケージ400のダイシング(Dicing)工程を通じて製造することができる。
【0084】
図10は、本発明の一実施例による音響波フィルター装置の製造方法を示す流れ図である。
【0085】
図10を参照すると、段階S510において音響波フィルター部110(例えば、410)がベースウェハ(例えば、420)の表面(例えば、上面)に実装される。また、段階S520において接合部(例えば、122、322または422)が音響波フィルター部を囲むようにウェハの表面に形成される。一例として、接合部は金(Au)を含有する材質からなることができる。
【0086】
段階S530において、接合対応部(例えば、134、234、334または434)は、湾入溝(例えば、432)が形成されたキャップウェハ(例えば、430)の底面に形成される。一例として、接合対応部は、スズ(Sn)を含有する材質からなる。その後、段階S540において、接合対応部が接合部上に配置され、キャップウェハは音響波フィルター部が湾入溝に整列されるように位置する。また、音響波フィルター部は、ベースウェハ、接合部、接合対応部、及びキャップウェハによって形成される内部空間に配置される。
【0087】
段階S550において、接合部と接合対応部は、接合温度及び接合圧力が接合部と接合対応部に加えられることでパッケージを形成するよう、相互接合される。接合は、接合部と接合対応部との接合面において温度上昇領域での金−スズ(Au−Sn)金属化合物の生成量が抑制されるよう、そして、接合部と接合対応部との間で接合に寄与する溶融されたスズ(Sn)の適切な量が提供される。これにより、気孔が存在しない緻密な組織の接合面が提供される。
【0088】
上述の通り、本実施例によれば、音響波フィルター装置は、耐酸化性に優れ、破壊靭性などの機械的特性に優れたものとすることができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0090】
100、200、300 音響波フィルター装置
400 音響波フィルター装置製造用パッケージ
110 音響波フィルター部
120、320 ベース
130、230、330 キャップ
420 ベースウェハ
430 キャップウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10