特許第6614162号(P6614162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614162
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20191125BHJP
   F16H 19/02 20060101ALI20191125BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20191125BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20191125BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   B62D5/04
   F16H19/02 D
   F16H25/22 C
   F16H25/20 E
   F16H25/24 M
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-573189(P2016-573189)
(86)(22)【出願日】2015年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2015083303
(87)【国際公開番号】WO2016125368
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2018年10月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-19525(P2015-19525)
(32)【優先日】2015年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-19526(P2015-19526)
(32)【優先日】2015年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金子 哲也
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 正芳
(72)【発明者】
【氏名】藤田 聡史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 龍司
(72)【発明者】
【氏名】山口 真司
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−000594(JP,A)
【文献】 特開2004−217046(JP,A)
【文献】 特開2009−067166(JP,A)
【文献】 特開平06−255503(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/017672(WO,A1)
【文献】 特開2006−224945(JP,A)
【文献】 特開2014−227048(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009000575(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
F16H 19/02
F16H 25/20
F16H 25/22
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状のねじ溝が設けられた外周面と軸とを有し、軸方向に往復移動する転舵シャフトと、
複数のボールを介して前記転舵シャフトに螺合する円筒状のナットを有するボールねじ機構であって、前記ナットの内周面には、前記転舵シャフトのねじ溝に対向する螺旋状のねじ溝が設けられているボールねじ機構と、
モータの回転軸と一体に回転する駆動プーリと、前記ナットの外周面に固定される従動プーリと、前記駆動プーリおよび前記従動プーリの間に巻き掛けられるベルトとを有するベルト減速機と、
前記転舵シャフト、前記ボールねじ機構、および前記ベルト減速機を収容するハウジングと、
前記転舵シャフトの両端をそれぞれ覆うように設けられ、前記ハウジングに接続される端部とタイロッドに接続される端部とを有するブーツと、
前記ハウジングの内周面と前記ナットの外周面との間に介在される軸受とを備え、
前記従動プーリおよび前記ナットは、プーリユニットを構成し、
前記プーリユニットには、前記プーリユニットの軸方向両側を連通する連通路が設けられ
前記ナットは、第1の端部と、前記第1の端部と反対側に第2の端部とを有し、
前記ナットの第1の端部には、フランジ部が設けられ、
前記連通路は、
前記ナットの外周面に設けられかつ前記第2の端部から中間位置に亘って設けられた第1の溝と、
前記フランジ部の軸方向における端面に設けられかつ前記フランジ部の径方向に直線状に設けられた第2の溝と、
前記フランジ部の外周面において軸方向に直線状に設けられ、前記第2の溝と連通する第3の溝と、
前記従動プーリの内周面に設けられ、かつ前記従動プーリの軸方向において、前記ナットの中間位置と前記第2の端部との間の部分に対応して設けられると共に、前記第1の溝および前記第3の溝と連通する第4の溝と
により構成されているステアリング装置。
【請求項2】
請求項に記載のステアリング装置は、更に、
前記従動プーリの内周面に螺合する締結体を備え、
前記ナットの外周面には、周方向全域に亘ってフランジ部が設けられ、
前記従動プーリと前記締結体との間に前記フランジ部を挟み込むことにより、前記ナットと前記従動プーリとが締結され、
前記締結体の内径を前記ナットの内径よりも大きくすることにより、前記フランジ部の端面に設けられた前記連通路の部分は、前記締結体と前記転舵シャフトとの間で前記ハウジングの内部空間に露出しているステアリング装置。
【請求項3】
螺旋状のねじ溝が設けられた外周面と軸とを有し、軸方向に往復移動する転舵シャフトと、
複数のボールを介して前記転舵シャフトに螺合する円筒状のナットを有するボールねじ機構であって、前記ナットの内周面には、前記転舵シャフトのねじ溝に対向する螺旋状のねじ溝が設けられているボールねじ機構と、
モータの回転軸と一体に回転する駆動プーリと、前記ナットの外周面に固定される従動プーリと、前記駆動プーリおよび前記従動プーリの間に巻き掛けられるベルトとを有するベルト減速機と、
前記転舵シャフト、前記ボールねじ機構、および前記ベルト減速機を収容するハウジングと、
前記転舵シャフトの両端をそれぞれ覆うように設けられ、前記ハウジングに接続される端部とタイロッドに接続される端部とを有するブーツと、
前記ハウジングの内周面と前記ナットの外周面との間に介在される軸受とを備え、
前記従動プーリおよび前記ナットは、プーリユニットを構成し、
前記プーリユニットには、前記プーリユニットの軸方向両側を連通する連通路が設けられ
前記連通路は、前記ナットの外周面において前記ナットの軸方向全長に亘って設けられた溝であり、
前記従動プーリの内周面に螺合する締結体を備え、
前記ナットの外周面には、周方向全域に亘ってフランジ部が設けられ、
前記従動プーリと前記締結体との間に前記フランジ部を挟み込むことにより、前記ナットと前記従動プーリとが締結され、
前記締結体の内径を前記ナットの内径よりも大きくすることにより、前記フランジ部の端面に設けられた前記連通路の部分は、前記締結体と前記転舵シャフトとの間で前記ハウジングの内部空間に露出しているステアリング装置。
【請求項4】
螺旋状のねじ溝が設けられた外周面と軸とを有し、軸方向に往復移動する転舵シャフトと、
複数のボールを介して前記転舵シャフトに螺合する円筒状のナットを有するボールねじ機構であって、前記ナットの内周面には、前記転舵シャフトのねじ溝に対向する螺旋状のねじ溝が設けられているボールねじ機構と、
モータの回転軸と一体に回転する駆動プーリと、前記ナットの外周面に固定される従動プーリと、前記駆動プーリおよび前記従動プーリの間に巻き掛けられるベルトとを有するベルト減速機と、
前記転舵シャフト、前記ボールねじ機構、および前記ベルト減速機を収容するハウジングと、
前記転舵シャフトの両端をそれぞれ覆うように設けられ、前記ハウジングに接続される端部とタイロッドに接続される端部とを有するブーツと、
前記ハウジングの内周面と前記ナットの外周面との間に介在される軸受とを備え、
前記従動プーリおよび前記ナットは、プーリユニットを構成し、
前記プーリユニットには、前記プーリユニットの軸方向両側を連通する連通路が設けられ
前記連通路は、
前記ナットの外周面において前記ナットの軸方向の端部から中間地点に亘って設けられた溝と、
前記従動プーリの径方向に延びると共に前記溝と連通する貫通孔と
を有しているステアリング装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載のステアリング装置において、
前記ナットには、前記ナットの回転方向の位置を確認するための回転位置決め部が設けられ、前記ナットをその軸方向に直交する方向から見たとき、前記連通路および前記回転位置決め部は、前記ナットの軸線に沿って延びる同一直線上に設けられているステアリング装置。
【請求項6】
請求項に記載のステアリング装置において、
前記回転位置決め部は、
前記ナットの外周面に設けられかつ前記ナットを前記転舵シャフトに組み付ける際に用いられる回転位相確認用溝と、
前記ナットの軸方向の端面に設けられかつ前記ナットのねじ溝を加工する際の基準となる転動面加工基準用溝と
を含むステアリング装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載のステアリング装置において、
前記ナット及び前記従動プーリのそれぞれには、径方向に延びるピン孔が、互いに連通するように設けられ、前記ナット及び前記従動プーリの各ピン孔には、ピンが挿入されているステアリング装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載のステアリング装置において、
前記連通路の一部は、前記従動プーリに設けられ、
前記ナットには、径方向に延びるピン孔が設けられ、
前記ナットのピン孔には、ピンが挿入され、
前記ピンは、前記ナットの外周面から突出し、
前記ピンの突出部分は、前記従動プーリに設けられた前記連通路の部分に収容されると共に、前記連通路を完全に塞がないように設けられているステアリング装置。
【請求項9】
螺旋状のねじ溝が設けられた外周面と軸とを有し、軸方向に往復移動する転舵シャフトと、
複数のボールを介して前記転舵シャフトに螺合する円筒状のナットを有するボールねじ機構であって、前記ナットの内周面には、前記転舵シャフトのねじ溝に対向する螺旋状のねじ溝が設けられているボールねじ機構と、
モータの回転軸と一体に回転する駆動プーリと、前記ナットの外周面に固定される従動プーリと、前記駆動プーリおよび前記従動プーリの間に巻き掛けられるベルトとを有するベルト減速機と、
前記転舵シャフト、前記ボールねじ機構、および前記ベルト減速機を収容するハウジングと、
前記転舵シャフトの両端をそれぞれ覆うように設けられ、前記ハウジングに接続される端部とタイロッドに接続される端部とを有するブーツと、
前記ハウジングの内周面と前記ナットの外周面との間に介在される軸受とを備え、
前記従動プーリおよび前記ナットは、プーリユニットを構成し、
前記プーリユニットには、前記プーリユニットの軸方向両側を連通する連通路が設けられ
前記連通路の一部は、前記従動プーリに設けられ、
前記ナットには、径方向に延びるピン孔が設けられ、
前記ナットのピン孔には、ピンが挿入され、
前記ピンは、前記ナットの外周面から突出し、
前記ピンの突出部分は、前記従動プーリに設けられた前記連通路の部分に収容されると共に、前記連通路を完全に塞がないように設けられているステアリング装置。
【請求項10】
請求項に記載のステアリング装置において、
前記連通路は、前記ナットの外周面において前記ナットの軸方向全長に亘って設けられた溝であるステアリング装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のステアリング装置において、
前記ナットには、前記ナットの回転方向の位置を確認するための回転位置決め部が設けられ、前記ナットをその軸方向に直交する方向から見たとき、前記連通路および前記回転位置決め部は、前記ナットの軸線に沿って延びる同一直線上に設けられているステアリング装置。
【請求項12】
請求項11に記載のステアリング装置において、
前記回転位置決め部は、
前記ナットの外周面に設けられかつ前記ナットを前記転舵シャフトに組み付ける際に用いられる回転位相確認用溝と、
前記ナットの軸方向の端面に設けられかつ前記ナットのねじ溝を加工する際の基準となる転動面加工基準用溝と
を含むステアリング装置。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか一項に記載のステアリング装置において、
前記ナットには、前記ボールを循環させるための循環路が設けられ、
前記ピン孔は、前記ナットの径方向において前記循環路と反対側に設けられているステアリング装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のステアリング装置は、更に、
前記軸受の軸方向両側にそれぞれ設けられる弾性部材と、
前記ハウジングの内周面において前記軸方向に並ぶように設けられた2つの壁とを備え、
前記軸受は、前記ハウジングに対して軸方向に揺動可能に設けられると共に、前記弾性部材を介して前記2つの壁に挟まれた状態で支持されているステアリング装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のステアリング装置において、
前記軸受は、内輪と外輪とを有し、
前記内輪及び前記外輪間には、隙間が設けられ、
前記ベルトに面する前記軸受の端部には、前記隙間を埋めるようにシール部材が設けられているステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の操舵機構にモータの動力を付与することにより、運転者のステアリング操作を補助する電動パワーステアリング装置(EPS)が知られている。例えば、特許文献1のEPSでは、ラックシャフトと平行にモータが取り付けられている。EPSは、ボールねじ機構がモータの回転運動をラックシャフトの直線運動に変換することによって、運転者のステアリング操作を補助する。
【0003】
特許文献1のEPSは、モータの回転軸に取り付けられた歯付ベルトによりボールねじを駆動するシステムを採用している。運転者の操舵等によってラックシャフトが直線運動するとき、ラックシャフトの両端にそれぞれ設けられたラックブーツのうち一方は膨張し、他方は収縮する。ラックブーツが膨張と収縮を繰り返すことによって、ラックブーツの耐久性は低下するおそれがある。このため、ラックシャフトを収容するハウジングには、連通路が設けられている。この連通路により、一方のラックブーツの内部空間と他方のラックブーツの内部空間との間で空気が出入り可能になり、ラックブーツの膨張および収縮は抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2009 000 575号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のEPSでは、ハウジングに連通路を設けたことで、ハウジングの強度が低下するおそれがある。
本発明の目的は、ハウジングの強度を維持できるステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第一の態様によれば、螺旋状のねじ溝が設けられた外周面と軸とを有し、軸方向に往復移動する転舵シャフトと、複数のボールを介して転舵シャフトに螺合する円筒状のナットを有するボールねじ機構であって、ナットの内周面には、転舵シャフトのねじ溝に対向する螺旋状のねじ溝が設けられているボールねじ機構と、モータの回転軸と一体に回転する駆動プーリと、ナットの外周面に固定される従動プーリと、駆動プーリおよび従動プーリの間に巻き掛けられるベルトとを有するベルト減速機と、転舵シャフト、ボールねじ機構、およびベルト減速機を収容するハウジングと、転舵シャフトの両端をそれぞれ覆うように設けられ、ハウジングに接続される端部とタイロッドに接続される端部とを有するブーツと、ハウジングの内周面とナットの外周面との間に介在される軸受とを備え、従動プーリおよびナットは、プーリユニットを構成し、プーリユニットには、プーリユニットの軸方向両側を連通する連通路が設けられている。
【0007】
ハウジングに連通路を設けた場合、その分、ハウジングの厚さが小さくなり、ハウジングの強度が低下する。この構成によれば、プーリユニットに連通路を設たため、ハウジングの強度を維持することができる。つまり、プーリユニットには余肉があるため、プーリユニットに連通路を設けることができ、それにより、ハウジングの強度を維持することができる。また、プーリユニットのナットに連通路を設けることにより、プーリユニットの軸方向両側の空間を連通することができる。
【0008】
上記のステアリング装置において、ナットは、第1の端部と、第1の端部と反対側に第2の端部とを有し、ナットの第1の端部には、フランジ部が設けられ、連通路は、ナットの外周面に設けられかつ第2の端部から中間位置に亘って設けられた第1の溝と、フランジ部の軸方向における端面に設けられかつフランジ部の径方向に直線状に設けられた第2の溝と、フランジ部の外周面において軸方向に直線状に設けられ、第2の溝と連通する第3の溝と、従動プーリの内周面に設けられ、かつ従動プーリの軸方向において、ナットの中間位置と第2の端部との間の部分に対応して設けられると共に、第1の溝および第3の溝と連通する第4の溝とにより構成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、連通路はナットおよび従動プーリに設けられるため、ハウジングの強度は維持される。
上記のステアリング装置において、連通路は、ナットの外周面においてナットの軸方向全長に亘って設けられた溝であることが好ましい。
【0010】
ナットには、循環路の無い部分に余肉があり、また、ナットは、強度を確保しやすい部材でもある。このため、ナットに連通路を設けても、ナットの強度を十分に確保できる。
上記のステアリング装置において、従動プーリの内周面に螺合する締結体を備え、ナットの外周面には、周方向全域に亘ってフランジ部が設けられ、従動プーリと締結体との間にフランジ部を挟み込むことにより、ナットと従動プーリとが締結され、締結体の内径をナットの内径よりも大きくすることにより、フランジ部の端面に設けられた連通路の部分は、締結体と転舵シャフトとの間でハウジングの内部空間に露出していることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、締結体によってナットと従動プーリとが締結されている状態で、フランジ部の端面に設けられた連通路の部分は、ハウジングの内部空間に露出している。このため、連通路は、ナットの端部にてハウジングの内部空間と連通する。
【0012】
上記のステアリング装置において、連通路は、ナットの外周面においてナットの軸方向の端部から中間地点に亘って設けられた溝と、従動プーリの径方向に延びると共に溝と連通する貫通孔とを有していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、連通路はナットおよび従動プーリに設けられるため、ハウジングの強度は維持される。
上記のステアリング装置において、ナットには、ナットの回転方向の位置を確認するための回転位置決め部が設けられ、ナットをその軸方向に直交する方向から見たとき、連通路および回転位置決め部は、ナットの軸線に沿って延びる同一直線上に設けられていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、プーリユニットに連通路を設けることによって、モータの配置レイアウトが変更されても、連通路を再度設計する手間が軽減される。また、回転位置決め部を連通路と同一直線上に設けたことで、ナットの周方向における連通路および回転位置決め部の位置合わせが不要となる。
【0015】
上記のステアリング装置において、回転位置決め部は、ナットの外周面に設けられかつナットを転舵シャフトに組み付ける際に用いられる回転位相確認用溝と、ナットの軸方向の端面に設けられかつナットのねじ溝を加工する際の基準となる転動面加工基準用溝とを含むことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、回転位相確認用溝と転動面加工基準用溝を用いることにより、ナットの組み付けおよびねじ溝の加工をより確実に行うことができる。
上記のステアリング装置において、ナット及び従動プーリのそれぞれには、径方向に延びるピン孔が、互いに連通するように設けられ、ナット及び従動プーリの各ピン孔には、ピンが挿入されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、ナットおよび従動プーリのピン孔にピンを挿入することにより、ナットおよび従動プーリが別々に回転することが規制される。このため、ナットおよび従動プーリを、さらに確実に固定することができる。
【0018】
上記のステアリング装置において、連通路の一部は、従動プーリに設けられ、ナットには、径方向に延びるピン孔が設けられ、ナットのピン孔には、ピンが挿入され、ピンは、ナットの外周面から突出し、ピンの突出部分は、従動プーリに設けられた連通路の部分に収容されると共に、連通路を完全に塞がないように設けられていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、ナットの外周面から突出したピンの突出部分が連通路に収容されることにより、ナットおよび従動プーリが別々に回転することが規制される。また、連通路内のピンは連通路を完全に塞がないため、連通路は、プーリユニットの軸方向両側を連通することができる。
【0020】
上記のステアリング装置において、ナットには、ボールを循環させるための循環路が設けられ、ピン孔は、ナットの径方向において循環路と反対側に設けられていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、ナットの径方向においてナットの循環路と反対側にピン孔を設けたことで、ピン孔と循環路とが離間するため、ナットの強度を維持することができる。
上記のステアリング装置において、軸受の軸方向両側にそれぞれ設けられる弾性部材と、ハウジングの内周面において軸方向に並ぶように設けられた2つの壁とを備え、軸受は、ハウジングに対して軸方向に揺動可能に設けられると共に、弾性部材を介して2つの壁に挟まれた状態で支持されていることが好ましい。
【0022】
連通路は、ナットに設けられることで、軸受の近傍に設けられなくなる。このため、軸受の弾性支持構造を採用しても、軸受とハウジングとの間に塗布される潤滑剤が漏れ出して連通路が潤滑剤により塞がれることを抑制できる。
【0023】
上記のステアリング装置において、軸受は、内輪と外輪とを有し、内輪及び外輪間には、隙間が設けられ、ベルトに面する軸受の端部には、隙間を埋めるようにシール部材が設けられていることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、シール部材によって、ベルトから飛散する摩耗粉が軸受に侵入することが抑制される。尚、軸受の軸方向両端面にシール部材を設けた場合、軸方向片側にシール部材を設けた場合と比較して、シール部材の数が1つだけ多い分、軸受の摺動抵抗が高くなる。その点、この構成によれば、シール部材を軸受の軸方向片側にしか設けないため、軸受の摺動抵抗が高くなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のステアリング装置によれば、ハウジングの強度を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】電動パワーステアリング装置の構成を示す構成図。
図2】第1実施形態の電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構の概略構成を示す部分断面図。
図3】第2実施形態の電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構の概略構成を示す部分断面図。
図4】第3実施形態の電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構の概略構成を示す部分断面図。
図5】(a)は、第3実施形態の電動パワーステアリング装置におけるナットの上面図、(b)は、ナットの端面図、(c)は、他の実施形態の電動パワーステアリング装置におけるナットの上面図。
図6】第4実施形態の電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構の概略構成を示す部分断面図。
図7】(a)は、第4実施形態の電動パワーステアリング装置におけるナットの上面図、(b)は、ナットにラックシャフトが螺合している状態の図7(a)の7b−7b線に沿った断面図、(c)は、ナットの端面図。
図8】(a)は、従動プーリにナットおよびロックスクリューが組み付けられた状態の図6の8a−8a線に沿った断面図、(b)は、従動プーリにナットおよびロックスクリューが組み付けられた状態の図6の8b−8b線に沿った断面図。
図9】他の実施形態の電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構の概略構成を示す部分断面図。
図10】他の実施形態の電動パワーステアリング装置におけるアシスト機構の概略構成を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、ステアリング装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、EPS1は、運転者のステアリングホイール10の操作に基づいて転舵輪16を転舵させる操舵機構2と、運転者のステアリング操作を補助するアシスト機構3とを備えている。
【0028】
操舵機構2は、ステアリングホイール10と、ステアリングホイール10と一体回転するステアリングシャフト11とを備えている。ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール10に連結されたコラムシャフト11aと、コラムシャフト11aの下端に連結されたインターミディエイトシャフト11bと、インターミディエイトシャフト11bの下端に連結されたピニオンシャフト11cとを有している。ピニオンシャフト11cの下端は、ラックアンドピニオン機構13を介して、転舵シャフトとしてのラックシャフト12に連結されている。したがって、ステアリングシャフト11の回転運動は、ピニオンシャフト11cおよびラックシャフト12からなるラックアンドピニオン機構13を介して、ラックシャフト12の軸方向(図1の左右方向)の直線運動に変換される。ラックシャフト12の両端にはそれぞれ、ラックエンド14が連結されている。ラックシャフト12の直線運動は、ラックエンド14を介して、タイロッド15に伝達される。更に、タイロッド15の運動は、左右の転舵輪16にそれぞれ伝達される。これにより、転舵輪16の転舵角が変化する。
【0029】
ラックハウジング17の両端とタイロッド15との間には、蛇腹筒状体のラックブーツ19がそれぞれ配置されている。ラックエンド14およびタイロッド15の一部分は、対応するラックブーツ19により覆われている。ラックブーツ19は、埃や水などの異物が、ラックハウジング17の内部およびラックエンド14の内部に侵入することを抑制する。左側のラックブーツ19の内部空間S1と、右側のラックブーツ19の内部空間S2とは、ラックハウジング17の内部を通じて、互いに連通している。
【0030】
アシスト機構3は、ラックシャフト12に設けられている。アシスト機構3は、アシスト力の発生源であるモータ20と、ラックシャフト12の周囲に取り付けられたボールねじ機構30と、モータ20の回転軸21の回転力をボールねじ機構30に伝達する減速機40からなる。アシスト機構3は、モータ20の回転軸21の回転力を、減速機40およびボールねじ機構30を介して、ラックシャフト12の軸方向の直線運動に変換する。ラックシャフト12に付与される軸方向の力が、アシスト力となり、運転者のステアリング操作を補助する。
【0031】
ボールねじ機構30、減速機40、ピニオンシャフト11c、およびラックシャフト12は、ラックハウジング17により覆われている。ラックハウジング17は、減速機40の付近でラックシャフト12の軸方向に分割された第1ハウジング17aおよび第2ハウジング17bを連結することにより、構成されている。ラックハウジング17は、減速機40の一部を収容する減速機ハウジング18を備えている。第1ハウジング17aおよび第2ハウジング17bを連結する端部はそれぞれ、ラックシャフト12の軸線と交差する方向(図1の上方)に突出している。減速機ハウジング18は、第1ハウジング17aおよび第2ハウジング17bの各突出端部を突き合わせて組み付けることにより、構成されている。減速機ハウジング18の突出部分の右側壁には、貫通孔22が設けられている。モータ20の回転軸21は、貫通孔22を通じて、減速機ハウジング18の突出部分の内部にまで延びている。回転軸21は、ラックシャフト12に対して平行である。モータ20は、ボルト23により、減速機ハウジング18の右側壁に固定されている。また、ラックシャフト12とラックハウジング17との間には、わずかに隙間が設けられている。
【0032】
つぎに、アシスト機構3について詳細に説明する。
図2に示すように、ボールねじ機構30は、ラックシャフト12に複数のボール32を介して螺合する円筒状のナット31と、ナット31を従動プーリ42に締結する円筒状のロックスクリュー34と、ナット31をラックハウジング17に対して回転可能に支持する軸受35とを備えている。また、減速機40は、モータ20の回転軸21に取り付けられた駆動プーリ41と、ナット31の外周に取り付けられた従動プーリ42と、および駆動プーリ41と従動プーリ42とに巻き掛けられたベルト43とを備えている。ナット31の第1の端部である右端の外周面には、周方向全域に亘ってフランジ部31aが設けられている。ロックスクリュー34の外周面に設けられたねじ溝は、従動プーリ42に設けられたねじ溝と螺合している。これにより、ロックスクリュー34は、軸方向に移動する。ロックスクリュー34と従動プーリ42との間にフランジ部31aを挟み込むことにより、ナット31は、従動プーリ42と一体回転可能に取り付けられている。ベルト43には、芯線を含むゴム製の歯付きベルト(はす歯ベルト)等が採用される。駆動プーリ41および従動プーリ42には、はす歯が設けられている。駆動プーリ41における軸方向両端部には、ベルト43が駆動プーリ41から脱落することを抑制するためのつば41aが設けられている。ナット31と従動プーリ42は、一体回転可能に互いに固定されることで、プーリユニットを構成している。
【0033】
ラックシャフト12の外周面には、螺旋状のねじ溝12aが設けられている。ナット31の内周面には、ねじ溝12aに対応する螺旋状のねじ溝33が設けられている。ナット31は、円筒状の軸受35を介して、ラックハウジング17の内周面に対して回転可能に支持されている。軸受35には、複列アンギュラ玉軸受等が用いられる。ナット31のねじ溝33とラックシャフト12のねじ溝12aにより囲まれる螺旋状の空間は、ボール32が転動する転動路Rとして機能する。また、ナット31には、転動路Rに設けられた2箇所の開口を短絡する循環路Cが設けられている。したがって、ボール32は、ナット31内の循環路Cを介して転動路R内を無限循環することができる。循環路Cには、エンドデフレクタ形式の循環路等が採用される。
【0034】
アシスト機構3では、モータ20の回転軸21が回転すると、回転軸21と一体に駆動プーリ41が回転する。駆動プーリ41の回転がベルト43を介して従動プーリ42に伝達されると、従動プーリ42と共にナット31も回転する。このとき、ナット31は、ラックシャフト12に対して回転する。また、複数のボール32は、ナット31とラックシャフト12との間に介在されているため、ナット31及びラックシャフト12の双方から負荷を受けて転動路R内を無限循環する。ボール32が転動路R内を無限循環することにより、ナット31に付与されたモータ20のトルクは、ラックシャフト12の軸方向の力に変換される。このため、ラックシャフト12は、ナット31に対して軸方向に移動する。このときラックシャフト12に付与される軸方向の力が、アシスト力となり、運転者のステアリング操作を補助する。
【0035】
ボールねじ機構30と減速機40を収容するラックハウジング17と減速機ハウジング18の内部には、ナット31の左端とラックハウジング17との間に隙間S1aが設けられ、ナット31の右端とラックハウジング17との間に隙間S2aが設けられている。また、ナット31の外周面には、ナット31の軸方向両側に位置する隙間S1a,S2aを連通する溝50が設けられている。溝50は、連通路として機能する。溝50は、ナット31に設けられた循環路Cを避けて設けられている。溝50は、フランジ部31aと反対側に位置するナット31の左端からフランジ部31aに亘って、ナット31の軸方向に直線状に設けられている。更に、溝50は、ナット31のフランジ部31aに沿ってクランク状に設けられている。溝50を介して、ナット31の軸方向両側の隙間S1a,S2a、ひいては、左側のラックブーツ19の内部空間S1と右側のラックブーツ19の内部空間S2とが、互いに連通されている。また、ナット31と従動プーリ42との間には、周方向の一部において軸方向の全域に亘って当接しない部分が設けられている。
【0036】
つぎに、内部空間S1,S2の間における空気の移動経路を説明しつつ、溝50の作用を説明する。
内部空間S1は、ラックシャフト12とラックハウジング17との間に設けられる隙間と連通しており、この隙間は、隙間S1aと連通している。隙間S1aは、溝50を介して隙間S2aと連通している。また、隙間S2aは、ラックシャフト12とラックハウジング17との間に設けられる隙間と連通しており、この隙間は、内部空間S2と連通している。すなわち、内部空間S1と内部空間S2とは、溝50を介して、互いに連通している。
【0037】
このように、両ラックブーツ19の内部空間S1,S2を相互に連通する経路が設けられている場合、ラックシャフト12が左側に移動したとき、左側のラックブーツ19の蛇腹が延びるため、内部空間S1は膨張する。これと同時に内部空間S2が収縮し始めるため、内部空間S1の空気は、直ちに溝50を通って内部空間S2へ移動する。理想的には、ラックシャフト12が軸方向に移動しても、内部空間S1および内部空間S2の圧力は変化しない。理想的な状況でなくとも、内部空間S1が膨張し始め、同時に内部空間S2が収縮し始めると、空気が溝50を通って直ちに移動し始めるため、内部空間S1,S2の圧力は、大きくは変化しない。
【0038】
減速機ハウジング18の内部では、ベルト43の駆動に伴って摩耗粉が発生する。摩耗粉は、特に、駆動プーリ41の近傍で発生する。たとえば、ベルト43が、駆動プーリ41のはす歯の噛み合わせにより、駆動プーリ41に対してラックシャフト12の軸方向に移動することがある。この場合、ベルト43がつば41aに接触することで、摩耗粉が発生する。また、ラックハウジング17の内部を通って内部空間S1,S2の間で空気が移動したり、ベルト43の駆動により減速機ハウジング18の内部で空気が移動したりすると、減速機ハウジング18の内部で摩耗粉が飛散し易い。
【0039】
この点、第1実施形態では、溝50をナット31に設けたことにより、駆動プーリ41の近傍に、空気が通る経路を設ける必要がない。このため、摩耗粉が多く発生する駆動プーリ41の近傍では、空気の流れが生じ難くなる。
【0040】
つぎに、溝50をナット31に設けられたことによる利点を説明する。
たとえば、溝50を、ラックハウジング17の内周面に設けることも考えられる。この場合、ラックハウジング17に溝50を設けると、その分、ラックハウジング17の厚さが小さくなり、ラックハウジング17の強度が低下するおそれがある。この点、第1実施形態では、ナット31に溝50を設けたため、ラックハウジング17の強度は低下しない。
【0041】
また、循環路Cは、ナット31の一部にのみ設けられている。すなわち、ナット31は、循環路Cの無い部分に、十分な厚さを有している。循環路Cの無い部分において、ナット31は、本来、薄くても構わない。また、ナット31は、金属などの材質からなるため、本来、強度を確保しやすい部分である。このため、ナット31は、その一部を薄くしても、必要とされる強度を確保することができる。また、ナット31に溝50を設けることで、ナット31を軽くすることもできる。
【0042】
第1実施形態の効果について説明する。
(1)溝50をナット31に設けることにより、ラックハウジング17の強度を維持することができる。
【0043】
(2)溝50をナット31に設けることにより、内部空間S1と内部空間S2を連通することができる。この場合、駆動プーリ41の近傍に、空気が通る経路を設ける必要がない。このため、摩耗粉が多く発生する駆動プーリ41の近傍では、空気の流れが生じ難くなる。このため、空気の流れによる摩耗粉の飛散を抑制することができる。また、軸受35の近傍に溝50が設けられていないため、軸受35に摩耗粉が侵入することも抑制できる。
【0044】
(3)芯線を含むゴム製の歯付きベルトなどをベルト43に採用する場合、ベルト43の駆動に伴って摩耗粉が生じることがある。このため、車両レイアウトによっては、摩耗粉が、ラックハウジング17の一部に集中して滞留するおそれがある。たとえば、モータ20をラックシャフト12の下部に設け、連通路をラックシャフト12の下部に設けた構成を想定する。この場合、ラックシャフト12の下部に摩耗粉が集中して堆積し易い。このため、連通路により空気の移動が生じると、摩耗粉が連通路に侵入して連通路を塞ぐおそれがある。この点、第1実施形態では、ナット31が回転するため、摩耗粉の連通路への侵入は分散される。すなわち、ナット31と共に溝50も回転するため、摩耗粉が溝50に侵入することを抑制できる。
【0045】
<第2実施形態>
つぎにステアリング装置の第2実施形態について説明する。ここでは、第1実施形態との違いを中心に説明する。
【0046】
図3に示すように、第1実施形態の溝50とは異なり、溝51は、フランジ部31aと反対側に位置するナット31の左端から中間位置に亘って設けられている。即ち、溝51は、ナット31の左端から軸受35の右端をわずかに越える位置に亘って設けられている。
【0047】
また、従動プーリ42には、従動プーリ42を径方向に貫通する貫通孔52が設けられている。貫通孔52は、ナット31の中間位置に対応して設けられている。貫通孔52の下端は、溝51の第1の端部である右端と繋がっている。溝51および貫通孔52は、連通路として機能する。貫通孔52の第2の端部である上端は、ベルト43や駆動プーリ41が配置されている減速機ハウジング18の内部空間S3へと繋がっている。このため、隙間S1aは、溝51および貫通孔52を介して、内部空間S3へと連通している。内部空間S3は、ラックハウジング17とナット31との間およびラックハウジング17と従動プーリ42との間に設けられた軸方向に延びる隙間を介して、隙間S2aへと連通している。
【0048】
また、軸受35の右端には、シール部材35aが設けられている。シール部材35aは、軸受35におけるベルト43近傍の端部に設けられている。シール部材35aは、軸受35の内輪35bと外輪35cとの隙間を埋めるように設けられている。
【0049】
つぎに、溝51および貫通孔52の作用を説明する。
内部空間S1は、ラックシャフト12とラックハウジング17との間に設けられる隙間と連通しており、この隙間は、隙間S1aと連通している。隙間S1aは、溝51および貫通孔52を介して内部空間S3と連通している。内部空間S3は、ラックハウジング17とナット31との間およびラックハウジング17と従動プーリ42との間に設けられた軸方向に延びる隙間を介して、隙間S2aへと連通している。隙間S2aは、ラックシャフト12とラックハウジング17との間に設けられる隙間と連通しており、この隙間は、内部空間S2と連通している。すなわち、内部空間S1と内部空間S2とは、溝51および貫通孔52を介して、互いに連通している。
【0050】
貫通孔52の上端は、内部空間S3と繋がっている。このため、内部空間S1と内部空間S2の間で空気が移動する際に、ベルト43で生じる摩耗粉が飛散するおそれがある。しかし、軸受35におけるベルト43近傍の端部に設けられたシール部材35aにより、軸受35の内部に摩耗粉が侵入することが抑制される。
【0051】
軸受35の軸方向の両端に、シール部材35aを設けることも考えられる。この場合、ナット31をラックハウジング17に対して回転させる際の軸受35の摺動抵抗が高くなる。これに対して、軸受35の両端のうちの一方にのみシール部材35aを設けることで、軸受35の両端にシール部材35aを設けた場合に比べて、軸受35の摺動抵抗を小さくすることができる。また、軸受35の両端のうち、摩耗粉等の異物が軸受35の内部に侵入し易いベルト43近傍の端部にシール部材35aが設けられている。このため、軸受35の内部への異物の侵入をより効果的に抑制できる。
【0052】
第2実施形態の効果について説明する。第2実施形態は、第1実施形態と同様の効果も有している。
(1)軸受35の軸方向の両端のうちの一方にシール部材35aが設けられることにより、ナット31をラックハウジング17に対して回転する際の軸受35の摺動抵抗を小さくすることができる。このため、シール部材35aにより、摩耗粉などの異物が軸受35に侵入することを抑制しつつ、軸受35の摺動抵抗を小さくすることができる。
【0053】
(2)従動プーリ42とロックスクリュー34とによりフランジ部31aを挟み込むことで、ナット31は、従動プーリ42に固定されている。第2実施形態では、フランジ部31aに溝50が設けられていない。このため、フランジ部31aに溝50が設けられた場合と異なり、従動プーリ42とフランジ部31aの当接面、およびロックスクリュー34とフランジ部31aの当接面(座面)の接触面積を同じにすることができる。このため、従動プーリ42とフランジ部31aとの間およびロックスクリュー34とフランジ部31aとの間の接触面積を十分に確保することができ、ナット31と従動プーリ42とをより確実に固定することができる。
【0054】
<第3実施形態>
つぎにステアリング装置の第3実施形態について説明する。ここでは、第2実施形態との違いを中心に説明する。
【0055】
図4に示すように、ナット31の左側の隙間S1aと右側の隙間S2aを連通するため、ナット31の外周面に溝60が設けられると共に、従動プーリ42を径方向に貫通する貫通孔61が従動プーリ42に設けられている。溝60は、フランジ部31aと反対側に位置するナット31の左端から中間位置に亘って設けられている。即ち、溝60は、ナット31の左端から、ナット31の右端から少し離れた位置に亘って設けられている。溝60は、図3に示す溝51と比べて長い。貫通孔61の下端は、溝60の第1の端部である右端と繋がっている。
【0056】
ナット31は、溝60とフランジ部31aとの間の部分に、ピン孔62を有している。また、従動プーリ42には、従動プーリ42を径方向に貫通するピン孔63が設けられている。ピン孔62,63の位置は、互いに一致している。また、ピン孔62,63には、ピン64が挿入されている。ピン64は、ピン孔62,63の内周面とそれぞれ嵌合し、ナット31および従動プーリ42にそれぞれ固定されている。このため、ナット31および従動プーリ42の相対回転は、規制されている。
【0057】
つぎに、ナット31について詳しく説明する。
図5(a)に示すように、ナット31の外周面には、溝60が設けられている。溝60は、フランジ部31aと反対側に位置するナット31の左端から中間位置に亘って設けられると共に、直線状に延びている。ピン孔62は、ナット31の外周面において、溝60の延長上に設けられている。また、フランジ部31aには、ボールねじの転動面を加工する際の基準となる溝65と、回転位相確認用の溝66が設けられている。溝66は、フランジ部31aの周面に設けられている。ナット31をその軸方向に直交する方向から見たとき、溝66は、溝60の延長上に位置している。溝66は、フランジ部31aの全長に亘って、軸方向に直線状に延びている。また、溝65は、ナット31の軸方向の端面に設けられている。図5(b)のように、ナット31の軸方向からフランジ部31aを見たとき、溝65は、フランジ部31aの径方向に直線状に延びている。溝65は、ナット31の内周面とフランジ部31aの外周面とを繋ぐように延びている。ナット31をその軸方向に直交する方向から見たとき、溝60、ピン孔62、溝65、および溝66は、一直線上に位置している。
【0058】
溝65は、図示しない工作機械を用いてナット31の内周面にねじ溝33を設ける際の基準となる。ねじ溝33を設ける際、工作機械の工具は、ナット31の内部へ入り込んでしまう。このため、溝65をナット31の内周面に設けた場合、溝65がナット31の周方向のどの部分に位置しているのか確認できなくなる。また、ねじ溝33を形成する際にナット31が回転してしまうと、要求通りに、螺旋状のねじ溝33を形成することができなくなる。このため、ねじ溝33を形成する際は、ナット31が回転したり、軸方向に移動したりしないように、ナット31の外周面を、図示しない治具によって固定する必要がある。そのため、溝65は、ナット31の内周面および外周面ではなく、ナット31の軸方向の端面に設けられている。工作機械および治具によって隠されない位置に設けられた溝65を基準として、ねじ溝33が形成される。
【0059】
また、溝66は、ナット31をラックシャフト12に組み付ける際に用いられる。すなわち、ナット31はボール32を介してラックシャフト12と螺合するが、ねじ溝33とねじ溝12aの螺旋を互いに対応させるように配置しなければ、ボール32を転動路Rに配置することはできない。このため、ナット31をラックシャフト12に組み付ける際、ねじ溝33とねじ溝12aの螺旋の位相を合わせる必要がある。ボール組み付け時、ナット31の内周面に、ラックシャフト12およびボール32が配置される。このため、溝66をナット31の内周面に設けると、溝66を確認できないため、好ましくない。このため、溝66は、ナット31のフランジ部31aの外周面に設けられている。溝66を基準として、ねじ溝33とねじ溝12aの螺旋の位相合わせが行われる。
【0060】
つぎに、溝60をナット31に、貫通孔61を従動プーリ42にそれぞれ設けることにより得られる利点を説明する。まず、比較例として、溝60をラックハウジング17に設けた場合を説明する。
【0061】
たとえば、連通路としての溝60を、ラックハウジング17の内周面に設けることも考えられる。この場合、溝60は、モータ20やモータ20を制御する図示しないMCUの配置レイアウトを考慮して設計される。MCUは、たとえば、モータ20と一体に設けられる。また、モータ20の回転軸21に取り付けられた駆動プーリ41の近傍では、ベルト43の摩耗粉が発生し易くなっている。このため、ラックシャフト12の軸方向から見たとき、溝60は、ラックハウジング17においてモータ20から離れた位置に設けられる。このため、モータ20の配置を変更する場合、ラックハウジング17における溝60の位置も、再度考慮しなければならい。
【0062】
この点、第3実施形態では、ナット31に溝60が設けられ、従動プーリ42に貫通孔61が設けられている。すなわち、プーリユニットに、連通路が設けられている。このため、モータ20の配置レイアウトが変更されても、溝60および貫通孔61の位置を、再度考慮しなくてもよい。これは、駆動プーリ41の近傍で摩耗粉が発生した場合、ナット31の周方向のどの部分に溝60を設けても、摩耗粉の影響はほとんど変わらないためである。
【0063】
即ち、EPS1が運転者の操舵をアシストしているとき、ナット31および従動プーリ42と共に、溝60および貫通孔61も回転する。例えば、ラックハウジング17に溝60を設けた場合、モータ20に対する溝60の位置は変わらず、固定されている。これに対し、ナット31に溝60を設けた場合は、ナット31が回転するため、モータ20に対する溝60の位置は変化する。このため、ナット31に設けられた溝60の位置によって摩耗粉の影響が極端には悪くならない。このように、ナット31における溝60の位置には、自由度が確保されている。このため、溝60を一度設計すれば、モータ20の配置レイアウトが変更されても、以前と同様の設計を用いることができるため、設計の手間を軽減することができる。貫通孔61についても、溝60と同様に一度設計すればよい。
【0064】
第3実施形態の効果について説明する。第3実施形態は、第1実施形態と同様の効果も有している。
(1)溝60をナット31に設け、貫通孔61を従動プーリ42に設けることによって、モータ20などの配置やラックハウジング17の形状を変更する場合に、溝60を再度設計する手間を軽減することができる。また、右ハンドルおよび左ハンドルのいずれに対応したステアリング装置を設計する場合も、溝60を再度設計する手間を省くことができる。この効果は、プーリユニットに連通路を設けた第1および第2実施形態においても、共通して得られる。
【0065】
(2)溝60、ピン孔62、ボールねじの転動面を加工する際の基準となる溝65、回転位相確認用の溝66が一直線上に設けられていなければ、ナット31の軸方向の位置合わせだけでなく、周方向の位置合わせも行わなければならない。この点、第3実施形態では、ナット31には、溝60、ピン孔62、溝65、溝66が、一直線上に設けられている。この場合、溝60,65,66、ピン孔62を設ける工程を、簡素化することができる。すなわち、溝60,65,66、ピン孔62の周方向の位置合わせを省くことができる。また、溝60、ピン孔62、溝66、溝65の順に、工作機械の工具をナット31の軸方向に移動させながら一連の動作で加工すればよいため、工程数が少なくなる。また、ナット31に加工すべき箇所の数も少なくなる。
【0066】
(3)ピン孔62,63にピン64が挿入されることにより、ナット31および従動プーリ42の相対回転、および軸方向における相対移動が規制される。このため、ナット31と従動プーリ42とを、より確実に固定することができる。
【0067】
<第4実施形態>
つぎにステアリング装置の第4実施形態について説明する。ここでは、第1実施形態との違いを中心に説明する。
【0068】
図6に示すように、ナット31には、溝70が設けられている。溝70は、フランジ部31aと反対側に位置するナット31の左端から中間位置に亘って設けられている。即ち、溝70は、ナット31の左端から軸受35の右端をわずかに越える位置に亘って設けられている。
【0069】
また、従動プーリ42の内周面には、溝71が設けられている。溝71は、従動プーリ42の第1の端部である右端から、溝70と径方向に重なる中間位置にかけて延びている。溝70と溝71とは、互いに連通している。溝71は、従動プーリ42の内周面においてフランジ部31aを収容する部分と同程度の深さを有している。従動プーリ42の外周面には、第1の端部から一定の範囲に亘って、フランジ部42aが設けられている。フランジ部42aの外周面には、ベルト43と噛み合うはす歯が設けられている。溝71は、フランジ部42aの内周面に設けられている。フランジ部31aは、フランジ部42aの内部に収容されている。この状態において、溝71は、従動プーリ42におけるフランジ部31aと対面する部分から、従動プーリ42の第2の端部である左端に向けて延びると共に、一定の範囲に亘って設けられている。また、フランジ部31aの外周面には、溝72,73が設けられている。溝72は、ナット31の軸方向におけるフランジ部31aの全長に亘って設けられている。溝72は、溝72の底面とナット31におけるフランジ部31aの無い部分の外周面とが略面一になる程度の深さを有している。溝72は、溝71と互いに連通している。溝73は、ナット31の第1の端部であるフランジ部31aの右端に設けられ、フランジ部31aの径方向に直線状に設けられている。溝73は、ナット31の内周面とフランジ部31aの外周面とを繋ぐように延びている。また、ナット31の溝70とフランジ部31aとの間には、ピン孔74が設けられている。ピン孔74は、ナット31の外周面から内側へ延びると共に、ナット31を貫通しない程度の深さを有している。
【0070】
図7(a)に示すように、ナット31をその軸方向と直交する方向から見たとき、溝70、ピン孔74、溝72、および溝73は、同一直線上に位置している。ピン孔74の直径は、溝70の幅Wと同程度に設定されている。溝70の幅Wは、ナット31の軸方向に直交する方向の寸法である。ピン孔74には、ピン75が挿入される。ピン75の直径は、溝71の幅Wよりもわずかに小さい。溝71の幅Wは、従動プーリ42の軸方向に直交する方向の寸法である。また、軸方向に直交する径方向から見たとき、溝71も、溝70、ピン孔74、溝72、および溝73と共に、一直線上に設けられている。
【0071】
図7(b)に示すように、ピン孔74は、ナット31の径方向において、循環路Cと反対側に位置している。ピン孔74は、循環路Cを避けるように設けられている。ピン孔74は、循環路Cから離れている方が、好ましい。これは、循環路Cの近傍にピン孔74を設けた場合、ナット31に循環路Cおよびピン孔74を設けた部分の強度が、局所的に低下するためである。これに対し、ナット31の径方向において循環路Cと反対側、即ち、ナット31を軸方向から見て循環路Cから最も離れた位置にピン孔74を設けた場合、循環路Cからピン孔74を離すことができるため、ナット31の強度が局所的に低下することを抑制できる。
【0072】
図7(c)に示すように、溝72および溝73も、ナット31の径方向において、循環路Cと反対側に位置している。このため、ピン孔74の場合と同様に、ナット31の強度が局所的に低下することを抑制できる。図7(a)に示すように、溝72および溝73と共に一直線上に設けられる溝70も、循環路Cと反対側に設けられている。このことも、ナット31の強度の維持に寄与している。
【0073】
図7(b)に示すように、ピン75は、ピン孔74の奥まで挿入されている状態で、ナット31における溝70および溝72の無い部分の外周面から突出している。すなわち、ピン75の軸方向の寸法は、ピン孔74の軸方向の寸法よりも大きい。ピン75の突出長は、ピン75の先端がフランジ部31aの外径よりも径方向内側に位置する程度に、設定されている。
【0074】
図8(b)に示すように、溝71とピン75との間には、わずかに隙間が設けられている。ナット31が従動プーリ42に対して軸周りに回転した場合、ピン75が溝71に当接することにより、ナット31が従動プーリ42に対して回転することが規制される。
【0075】
図8(a)に示すように、従動プーリ42に螺合するロックスクリュー34の外径は、従動プーリ42の内径とほぼ等しい。ロックスクリュー34の内周面には、凹部と凸部とが、周方向に交互に設けられている。ロックスクリュー34の内径、即ち、径方向における凸部間及び凹部間の各距離は、ナット31の内径よりも大きい。ロックスクリュー34を軸方向から見たとき、ロックスクリュー34の凹部、即ち、ロックスクリュー34の内径とナット31の内径との差が最大となる部分は、溝73と一致している。溝73は、ナット31の軸方向において隙間S2aに露出することで、隙間S2aと連通している。
【0076】
図6に示すように、従動プーリ42の第2の端部には、径方向内側へ突出する縮径部42bが設けられている。縮径部42bの内径は、ナット31における溝70および溝72の無い部分の外径よりも小さい。縮径部42bの内径は、ラックシャフト12の外径よりも大きい。縮径部42bとナット31との間には、隙間が設けられている。縮径部42bとラックシャフト12との間にも、隙間S1aが設けられている。
【0077】
このため、溝70、溝71、溝72、および溝73は、内部空間S1と内部空間S2との間の連通路として機能する。内部空間S1と隙間S1aとの間および内部空間S2と隙間S2aとの間の連通状態は、第1実施形態と同様である。隙間S1aは、ナット31と縮径部42bとの間の隙間を介して、溝70と連通している。溝70は、溝71、溝72および溝73を介して、隙間S2aと連通している。このように、内部空間S1と内部空間S2とが連通することで、内部空間S1および内部空間S2の間で空気が移動する。
【0078】
図6に示すように、ラックハウジング17には、軸受35をその軸方向に揺動可能に支持する弾性支持構造が設けられている。弾性支持構造は、軸受35の軸方向両側にそれぞれ設けられたプレート36と、各プレート36及び軸受35間に設けられた弾性部材としての皿ばね37とからなる。プレート36がラックハウジング17の一部に当接されることにより、プレート36の軸方向への移動が規制されている。プレート36は、断面L字形状を有している。皿ばね37は、プレート36と軸受35の外輪とによって挟み込まれている。軸受35の内輪は、従動プーリ42のフランジ部42aの端面と環状の固定部材38とによって挟み込まれている。固定部材38の内径は、従動プーリ42におけるフランジ部42aの無い部分の外径よりもわずかに大きい。また、従動プーリ42におけるフランジ部42aの無い部分の外周面には、ねじ溝が設けられている。ねじ溝は、従動プーリ42の第2の端部から一定の範囲に亘り、第1の端部へと延びている。固定部材38の内周面には、従動プーリ42のねじ溝と螺合するねじ溝が設けられている。従動プーリ42のねじ溝と固定部材38のねじ溝とが螺合することにより、固定部材38が従動プーリ42に取り付けられている。また、固定部材38における軸受35と当接する部分の外径は、軸受35の内輪の外径よりもわずかに小さい。固定部材38における軸受35と当接する部分の外径は、軸受35の外輪の内径よりも小さければよい。また、固定部材38における軸受35と当接する部分の外径は、プレート36および皿ばね37の内径よりも小さい。固定部材38は、従動プーリ42の第2の端部から第1の端部に向けて挿入される。フランジ部42aおよび固定部材38によって軸受35が挟み込まれてから、止め輪39を従動プーリ42に嵌め込むことにより、固定部材38は、従動プーリ42に固定されて、従動プーリ42に対して軸方向に移動不能となる。これらによって、軸受35は、ラックハウジング17に対して軸方向に揺動可能に支持される。
【0079】
弾性支持構造では、軸受35を軸方向に揺動しやすくするため、軸受35とラックハウジング17とが接触する面に、潤滑油が塗布されている。連通路(溝70〜72)は軸受35の近傍を通らないため、接触面に塗布された潤滑剤が漏れ出して連通路が潤滑剤により塞がれることを抑制できる。
【0080】
第4実施形態の効果について説明する。溝70〜73によって構成される第4実施形態の連通路は、第1実施形態と同様の効果を発揮する。第4実施形態は、第3実施形態の効果(1)と同様の効果も有している。
【0081】
(1)ピン孔74にピン75が挿入されることにより、ナット31および従動プーリ42の相対回転が規制される。このため、ナット31と従動プーリ42とが、さらに確実に固定される。また、溝71とピン75との間には、わずかな隙間が設けられている。このため、溝71は、ピン75を収容すると共に、連通路の一部として機能することができる。
【0082】
上記各実施形態は、次のように変更してもよい。以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・各実施形態において、軸受35は、複列アンギュラ玉軸受であったが、4点接触玉軸受でもよいし、単列アンギュラ玉軸受であってもよい。
【0083】
・各実施形態において、ベルト43に歯付ベルトを用いたが、Vベルトを用いてもよい。
・各実施形態において、ロックスクリュー34以外の固定部材を用いて、ナット31と従動プーリ42を固定してもよい。
【0084】
・第1実施形態において、ナット31の外周面に溝50を設けたが、 ナット31を軸方向に貫通する孔を連通路としてもよい。
・第1実施形態および第3実施形態において、溝50および溝60を、ナット31の外周面に設けたが、従動プーリ42に設けてもよい。すなわち、溝50および溝60は、プーリユニットに設けられればよい。
【0085】
・第2実施形態において、溝51をナット31に設け、貫通孔52を従動プーリ42に設けたが、溝51を従動プーリ42の左端から中間位置まで設け、貫通孔52を従動プーリ42の中間位置で溝51に連通させてもよい。
【0086】
・第3実施形態において、溝60をナット31に設け、貫通孔61を従動プーリ42に設けたが、溝60を従動プーリ42の左端から中間位置まで設け、貫通孔61を従動プーリ42の中間位置で溝60に連通させてもよい。
【0087】
・第1実施形態において、溝50を、ナット31のフランジ部31aに沿ってクランク状に設けたが、溝50は、ナット31の軸方向に延びる直線状の切欠であってもよい。この場合、溝50は、フランジ部31aを軸方向に貫通している。この場合、ナット31の製造が容易である。
【0088】
・各実施形態においても、第3実施形態と同様に、ボールねじの転動面を加工する際の基準となる溝65や回転位相確認用の溝66を、フランジ部31aに設けてもよい。この場合、既に設けられている連通路としての溝に、上記の溝65や溝66の機能を持たせることが好ましい。
【0089】
たとえば、第1実施形態の溝50に、上記の溝65や溝66の機能を持たせてもよい。図2および図5(c)に示すように、第3実施形態の溝60とは異なり、第1実施形態の溝50は、ナット31の軸方向全長に亘って設けられている。溝50は、フランジ部31aと反対側に位置するナット31の左端とフランジ部31aの右端との間に、軸方向に直線状に延びる第1の部分と、第1の部分に連続すると共にフランジ部31aに沿ってクランク状に延びる第2の部分とを有している。溝50は、第2の部分において、ロックスクリュー34近傍のナット31の端面上を、ロックスクリュー34の内周面よりも内側の位置まで延びている。このため、ナット31の軸方向両側の隙間S1aとS2aとの間、ひいては、内部空間S1と内部空間S2とは、溝50を介して、互いに連通している。
【0090】
また、フランジ部31aに設けられた溝50は、ボールねじの転動面を加工する際の基準となる溝65や、回転位相確認用の溝66として機能する。すなわち、フランジ部31aの溝50のうち、ナット31の端面に設けられた部分が溝65として、ナット31の周方向に延びる部分が溝66としてそれぞれ機能する。
【0091】
・第4実施形態において、ピン孔74は、ナット31の径方向において循環路Cから離れていることが好ましいが、ナット31の周方向において循環路Cとピン孔74との間の位置に、ピン孔74を設けてもよい。すなわち、ピン孔74は、循環路Cを避けて設けられていればよい。また、溝70、溝72、および溝73も同様に、循環路Cを避けて設けられればよい。
【0092】
・第3実施形態において、ピン孔62,63、およびピン64を削除してもよい。この場合も、第3実施形態と同様の経路を通じて、内部空間S1,S2を互いに連通することができる。また、第4実施形態においても、ピン孔74およびピン75を削除してもよい。この場合も、第4実施形態と同様の経路を通じて、内部空間S1,S2を互いに連通することができる。
【0093】
・第1および第2実施形態において、ナット31および従動プーリ42の相対回転を規定するためのピン孔およびピンを設けてもよい。この場合、第3実施形態のように、ナット31および従動プーリ42の相対回転および軸方向における相対移動を規制してもよく、第4実施形態のように、ナット31および従動プーリ42の相対回転を規制してもよい。
【0094】
・第2実施形態において、シール部材35aを、軸受35の軸方向両側に設けてもよい。この場合、軸受35の摺動抵抗は高くなるが、摩耗粉が軸受35の内部に侵入することをより確実に抑制できる。また、第2実施形態以外の実施形態において、シール部材35aを、軸受35の軸方向片側に設けてもよく、軸方向両側に設けてもよい。
【0095】
・第1〜第3実施形態において、軸受35をラックハウジング17に固定したが、軸受35をラックハウジング17に固定しない弾性支持構造(フローティング構造)を採用してもよい。図9および図10に示すように、第1実施形態に弾性支持構造を採用する場合、環状のプレート36を軸受35の軸方向両側に設け、プレート36と軸受35との間に皿ばね37を設ければよい。軸受35に弾性支持構造を採用することによって、軸受35は、軸方向に揺動可能に支持される。また、この場合、軸受35を軸方向に揺動しやすくするため、軸受35とラックハウジング17とが接触する面に潤滑油を塗布してもよい。たとえば、第1実施形態において、溝50は軸受35の近傍を通らないため、接触面に塗布された潤滑剤が漏れ出して溝50が潤滑剤により塞がれることを抑制できる。
【0096】
・各実施形態において、本発明は、EPS1以外に、ベルト43を用いた減速機40を備えるステアリング装置に具体化してもよい。また、本発明は、ステアリング操作に連動するラックシャフト12の直線運動を、モータ20の回転力を利用して補助する電動パワーステアリング装置以外に、ステアバイワイヤ(SBW)に適用してもよい。ステアバイワイヤの場合、本発明は、前輪操舵装置としてだけでなく、後輪操舵装置あるいは4輪操舵装置(4WS)として具体化することもできる。SBWの場合、ラックを有するラックシャフト12に限らず、ラックを有さないシャフトを、転舵シャフトとして採用してもよい。この場合、ボールねじ機構を用いることにより、転舵シャフトに転舵力を付与する。
【符号の説明】
【0097】
1…EPS、2…操舵機構、3…アシスト機構、10…ステアリングホイール、11…ステアリングシャフト、11a…コラムシャフト、11b…インターミディエイトシャフト、11c…ピニオンシャフト、12…ラックシャフト(転舵シャフト)、12a…ねじ溝、13…ラックアンドピニオン機構、14…ラックエンド、15…タイロッド、16…転舵輪、17…ラックハウジング(ハウジング)、17a…第1ハウジング、17b…第2ハウジング、18…減速機ハウジング、19…ラックブーツ(ブーツ)、20…モータ、21…回転軸、22…貫通孔、23…ボルト、30…ボールねじ機構、31…ナット(プーリユニット)、31a…フランジ部、32…ボール、33…ねじ溝、34…ロックスクリュー(締結体)、35…軸受、35a…シール部材、35b…内輪、35c…外輪、R…転動路、36…プレート、37…皿ばね、38,39…止め輪、40…減速機(ベルト減速機)、41…駆動プーリ、41a…つば、42…従動プーリ(プーリユニット)、42a…フランジ部、42b…縮径部、43…ベルト、50,51…溝(連通路)、52…貫通孔(連通路)、60…溝(連通路)、61…貫通孔(連通路)、62,63…ピン孔、64…ピン、65…ボールねじ転動面加工基準用溝(回転位置決め部)、66…回転位相確認用溝(回転位置決め部)、70…溝(連通路、第1の溝)、71…溝(連通路、第4の溝)、72…溝(連通路、第3の溝)、73…溝(連通路、第2の溝)、74…ピン孔、75…ピン、S1,S2,S3…内部空間、S1a,S2a…隙間、R…転動路、W…幅。
図1
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