特許第6614194号(P6614194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614194
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】音響処理システムおよび信号処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20191125BHJP
【FI】
   H04R3/00
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-73856(P2017-73856)
(22)【出願日】2017年4月3日
(65)【公開番号】特開2017-208807(P2017-208807A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2018年9月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-95217(P2016-95217)
(32)【優先日】2016年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】長澤 哲弥
【審査官】 鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−204205(JP,A)
【文献】 特開平05−347069(JP,A)
【文献】 特開2014−107658(JP,A)
【文献】 特開平11−150783(JP,A)
【文献】 特開平05−251950(JP,A)
【文献】 特開2008−227764(JP,A)
【文献】 特表2011−523810(JP,A)
【文献】 実開昭60−064699(JP,U)
【文献】 実開昭53−160903(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に別体である複数の信号処理装置を具備し、
前記複数の信号処理装置の各々は、
前記複数の信号処理装置のうち当該信号処理装置以外の他の信号処理装置に接続された少なくともひとつの接続端子と、
前記少なくともひとつの接続端子に接続されたアナログバスと、
前記アナログバスに接続されて第1音響信号の入力を受付ける入力端子と、
前記アナログバスに接続されて放音機器に第2音響信号を出力する出力端子と
前記入力端子と前記アナログバスとの間の経路から分岐した経路に供給される音響信号の音量を調整する第3調整部であって、当該音響信号とは逆相の音響信号を生成する逆相生成部を含む第3調整部と、
前記アナログバスと前記出力端子との間に配置され、前記アナログバスから供給される音響信号と前記第3調整部による調整後の音響信号とを加算する信号加算部とを含む
音響処理システム。
【請求項2】
前記逆相生成部は、
前記分岐した経路に供給される音響信号の位相を反転する位相反転部と、
前記位相反転部による反転後の音響信号の音量を調整する逆相調整部とを含む
請求項1の音響処理システム。
【請求項3】
自装置とは別体である他の信号処理装置に接続可能な少なくともひとつの接続端子と、
前記少なくともひとつの接続端子に接続されたアナログバスと、
前記アナログバスに接続されて第1音響信号の入力を受付ける入力端子と、
前記アナログバスに接続されて放音機器に第2音響信号を出力する出力端子と
前記入力端子と前記アナログバスとの間の経路から分岐した経路に供給される音響信号の音量を調整する第3調整部であって、当該音響信号とは逆相の音響信号を生成する逆相生成部を含む第3調整部と、
前記アナログバスと前記出力端子との間に配置され、前記アナログバスから供給される音響信号と前記第3調整部による調整後の音響信号とを加算する信号加算部と
を具備する信号処理装置。
【請求項4】
前記逆相生成部は、
前記分岐した経路に供給される音響信号の位相を反転する位相反転部と、
前記位相反転部による反転後の音響信号の音量を調整する逆相調整部とを含む
請求項3の信号処理装置。
【請求項5】
相異なる信号処理装置に接続される複数の前記接続端子
を具備する請求項3または請求項4の信号処理装置。
【請求項6】
前記入力端子と前記アナログバスとの間に配置された第1抵抗素子
を具備する請求項3から請求項5の何れかの信号処理装置。
【請求項7】
前記入力端子と前記アナログバスとの間に配置されて前記第1音響信号の音量を調整する第1調整部
を具備する請求項3から請求項6の何れかの信号処理装置。
【請求項8】
前記アナログバスと前記出力端子との間に配置されて、前記アナログバスから供給される音響信号の音量の調整により前記第2音響信号を生成する第2調整部
を具備する請求項3から請求項7の何れかの信号処理装置。
【請求項9】
第2抵抗素子と、
前記他の信号処理装置が前記接続端子に接続された状態では、前記第2抵抗素子を前記アナログバスから絶縁する一方、前記他の信号処理装置が前記接続端子に接続されていない状態では、前記第2抵抗素子を前記アナログバスに接続する接続切替部と
を具備する請求項3から請求項8の何れかの信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽音または音声等の音を表す音響信号を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の楽器を使用して複数の演奏者が合奏するための各種の技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、複数のユニットで構成された合奏用のシステムが開示されている。複数のユニットの各々には電気楽器から音響信号が供給される。電気楽器から1個のユニットに供給された音響信号は、相異なる経路を介してさらに他のユニットに供給される。各ユニットは、電気楽器から供給される音響信号と他のユニットから供給される音響信号とを混合してヘッドホンに出力する混合器を具備する。特許文献1の技術によれば、周囲に演奏音を放音することなく、各演奏者が他者の演奏音を聴取しながら複数の演奏者で合奏することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8119900号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、電気楽器からユニットに供給される音響信号を相異なる経路で他のユニットに供給する構成、および、複数の音響信号を混合する混合器をユニット毎に個別に設置した構成が必要である。したがって、装置構成が複雑化するという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、複数の音響信号を混合して混合後の信号を出力するための構成を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る信号処理装置は、自装置とは別体である他の信号処理装置に接続可能な少なくともひとつの接続端子と、少なくともひとつの接続端子に接続されたアナログバスと、アナログバスに接続されて第1音響信号の入力を受付ける入力端子と、アナログバスに接続されて放音機器に第2音響信号を出力する出力端子とを具備する。以上の態様では、入力端子と出力端子とに接続されたアナログバスが接続端子を介して他の信号処理装置に接続されるから、各信号処理装置に入力された複数の第1音響信号が混合された第2音響信号を、簡便な構成により生成して放音機器に出力することが可能である。
【0006】
本発明の好適な態様において、少なくともひとつの接続端子は、相異なる信号処理装置に接続される複数の接続端子である。すなわち、複数の接続端子の各々が別個の信号処理装置に接続される。したがって、信号処理装置が1個の接続端子を具備する構成と比較して、信号処理装置の接続数を増加させることが可能である。また、入力端子とアナログバスとの間に配置された第1抵抗素子を具備する構成も好適である。
【0007】
本発明の好適な態様に係る信号処理装置は、入力端子とアナログバスとの間に配置されて第1音響信号の音量を調整する第1調整部を具備する。以上の態様では、第1調整部が第1音響信号の音量を調整するから、第2音響信号における複数の第1音響信号の音量比を制御することが可能である。
【0008】
本発明の好適な態様に係る信号処理装置は、アナログバスと出力端子との間に配置されて、アナログバスから供給される音響信号の音量の調整により第2音響信号を生成する第2調整部を具備する。以上の態様では、アナログバスから供給される音響信号の音量の調整により第2音響信号を生成するから、複数の第1音響信号の音量比を維持しながら第2音響信号の音量を調整することが可能である。
【0009】
本発明の好適な態様に係る信号処理装置は、第2抵抗素子と、他の信号処理装置が接続端子に接続された状態では、第2抵抗素子をアナログバスから絶縁する一方、他の信号処理装置が接続端子に接続されていない状態では、第2抵抗素子をアナログバスに接続する接続切替部とを具備する。以上の態様では、他の信号処理装置が接続端子に接続された状態では第2抵抗素子がアナログバスから絶縁される一方、他の信号処理装置が接続端子に接続されていない状態では、第2抵抗素子がアナログバスに接続される。したがって、信号処理装置の接続数の増加に対する第2音響信号の電圧の低下が抑制される。
【0010】
本発明の好適な態様に係る信号処理装置は、入力端子とアナログバスとの間の経路から分岐した経路に供給される音響信号の音量を調整する第3調整部と、アナログバスと出力端子との間に配置され、アナログバスから供給される音響信号と第3調整部による調整後の音響信号とを加算する信号加算部とを具備する。以上の態様では、アナログバスから供給される音響信号と第3調整部による調整後の音響信号とが加算されるから、複数の信号処理装置にわたるアナログバスの音響信号に影響することなく、第2音響信号のうち自装置の音響信号の音量を選択的に調整することが可能である。
【0011】
本発明の好適な態様に係る音響処理システムは、以上に例示した何れかの態様に係る複数の信号処理装置を具備する。具体的には、音響処理システムは、相互に別体である複数の信号処理装置を含む音響処理システムであって、複数の信号処理装置の各々は、複数の信号処理装置のうち当該信号処理装置以外の他の信号処理装置に接続される少なくともひとつの接続端子と、少なくともひとつの接続端子に接続されたアナログバスと、アナログバスに接続されて第1音響信号の入力を受付ける入力端子と、アナログバスに接続されて放音機器に第2音響信号を出力する出力端子とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る音響処理システムの構成図である。
図2】信号処理装置の構成図である。
図3】複数の信号処理装置が接続された状態の説明図である。
図4】第2実施形態における信号処理装置の構成図である。
図5】第2実施形態における複数の信号処理装置が接続された状態の説明図である。
図6図5の等価回路図である。
図7】第3実施形態における信号処理装置の外観図である。
図8】第3実施形態における信号処理装置の構成図である。
図9】変形例における音響処理システムの構成図である。
図10】変形例における音響処理システムの構成図である。
図11】変形例における信号処理装置の構成図である。
図12】変形例における信号処理装置の構成図である。
図13】変形例における信号処理装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る音響処理システム100の構成図である。第1実施形態の音響処理システム100は、複数(N人)の利用者U[1]〜U[N]による楽器の演奏に使用されるシステムである(Nは2以上の自然数)。図1に例示される通り、第1実施形態の音響処理システム100は、相互に別体に構成された複数(N個)の信号処理装置10[1]〜10[N]と、各信号処理装置10[n](n=1〜N)を相互に接続する複数((N-1)本)の接続ケーブル12とを具備する。
【0014】
各信号処理装置10[n]には、信号源22[n]と放音機器24[n]とが接続される。信号源22[n]は、楽音または音声等の音を表すアナログの音響信号(第1音響信号の例示)X[n]を信号処理装置10[n]に供給する。例えば、利用者U[n]による演奏に応じた演奏音の音響信号X[n]を出力する電気楽器が信号源22[n]の好例である。具体的には、弦楽器(ギターまたはバイオリン),鍵盤楽器(ピアノ),または打楽器(ドラム)等の種々の形態の電気楽器が信号源22[n]として利用される。また、楽器の演奏音または歌唱者による歌唱音声を収音して音響信号X[n]を生成する収音機器(マイクロホン)を信号源22[n]として利用することも可能である。記録媒体に記憶された音響信号X[n]を出力する再生装置(例えば携帯型音楽プレイヤ)も信号源22[n]として好適である。なお、音響信号X[n]はステレオまたはモノラルである。
【0015】
信号処理装置10[n]は、相異なる信号源22[n]が生成したN系統の音響信号X[1]〜X[N]が混合された音響信号(第2音響信号の例示)Y[n]を放音機器24[n]に供給するためのアナログミキサである。放音機器24[n]は、例えば利用者U[n]の両耳に装着されるヘッドホンまたはイヤホンであり、信号処理装置10[n]から供給される音響信号Y[n]が表す音(すなわち合奏音)を再生する。したがって、各利用者U[n]は、N人の利用者U[1]〜U[N]による合奏音を放音機器24[n]により聴取しながら演奏することが可能である。なお、N個の信号処理装置10[1]〜10[N]の構成は共通するから、以下の説明では任意の1個の信号処理装置10[n]に着目して構成を説明する。
【0016】
図1に例示される通り、信号処理装置10[n]は、略直方体の箱状に形成された筐体11を具備する。筐体11の上面には、利用者U[n]からの操作を受付ける複数の操作子P(P1およびP2)が設置される。第1実施形態の各操作子Pは、利用者U[n]が任意に回転させることが可能なツマミである。利用者U[n]は、所望の操作子Pを適宜に操作することで、信号処理装置10[n]が生成する音響信号Y[n]の特性を調整することが可能である。なお、複数の操作子Pの位置は筐体11の上面に限定されない。
【0017】
図1に例示される通り、信号処理装置10[n]は複数の端子(TIN,TOUT,TC1およびTC2)を具備する。具体的には、入力端子TINと出力端子TOUTと接続端子TC1と接続端子TC2とが筐体11の側面に設置される。なお、複数の端子の位置は筐体11の側面に限定されない。
【0018】
入力端子TINは、信号源22[n]が着脱可能に接続されるステレオジャックであり、信号源22[n]から供給される音響信号X[n]の入力を受付ける。他方、出力端子TOUTは、放音機器24[n]が着脱可能に接続されるステレオジャックであり、信号処理装置10[n]にて生成された音響信号Y[n]を放音機器24[n]に出力する。なお、音響信号X[n]が無線により信号源22[n]から信号処理装置10[n]に送信される構成、または、音響信号Y[n]が無線により信号処理装置10[n]から放音機器24[n]に送信される構成も採用され得る。信号源22[n]と信号処理装置10[n]との間の無線通信、または、信号処理装置10[n]と放音機器24[n]との間の無線通信の方式は任意であるが、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信が好適である。
【0019】
信号処理装置10[n]の接続端子TC1および接続端子TC2は、当該信号処理装置10[n](自装置)を他の信号処理装置(以下「他装置」という)に接続するための端子である。第1実施形態の接続端子TC1および接続端子TC2は、接続ケーブル12の端部のプラグが着脱可能に接続されるステレオジャックである。接続ケーブル12は、信号処理装置10[n1]と信号処理装置10[n2](n1=1〜N、n2=1〜N,n1≠n2)とを電気的に接続するためのケーブルである。例えばステレオシールドケーブルが接続ケーブル12として好適に利用される。
【0020】
図1に例示される通り、各信号処理装置10[n]における接続端子TC1および接続端子TC2の一方または双方が、接続ケーブル12を介して他装置の接続端子TC1または接続端子TC2に接続される。したがって、図1の例示の通り、N個の信号処理装置10[1]〜10[N]が直列に接続される。具体的には、第2段目から第N段目の各信号処理装置10[n]の接続端子TC1が、前段の信号処理装置10[n-1]の接続端子TC2に接続される。N個の配列の一端に位置する信号処理装置10[1]の接続端子TC1と、他端に位置する信号処理装置10[N]の接続端子TC2とは、他装置に接続されない開放状態にある。ただし、信号処理装置10[1]の接続端子TC1と信号処理装置10[N]の接続端子TC2とを相互に接続する(すなわちN個の信号処理装置10[1]〜10[N]を環状に接続する)ことも可能である。
【0021】
相互に接続される信号処理装置10[n]の個数(以下「接続数」という)Nは任意に変更され得る。具体的には、実際に演奏に参加する利用者U[n]の人数に相当する接続数Nの信号処理装置10[1]〜10[N]が接続される。例えば、利用者U[1]および利用者U[2]の2人(N=2)で合奏する場合には、信号処理装置10[1]と信号処理装置10[2]とが1本の接続ケーブル12で相互に接続される。また、利用者U[1]〜U[5]の5人(N=5)で合奏する場合には、5個の信号処理装置10[1]〜10[5]が4本の接続ケーブル12で相互に接続される。
【0022】
ところで、特許文献1には、所定個の収容部(dock)が形成されたステーション(docking station)を具備する構成(以下「対比例1」という)が開示されている。対比例1では、音響信号の入出力用の複数のユニットの各々がステーションの各収容部に収容されるから、収容部の総数を上回る個数のユニットを接続することはできない。したがって、合奏に参加する演奏者の総数が制限されるという問題がある。第1実施形態では、信号処理装置10[n]の接続数Nが任意に変更され得るから、利用者U[n]の人数が制限されないという利点がある。また、対比例1のシステムを実際に利用する場面では、ステーションを所有および管理する利用者が現れるまで合奏を待機する必要がある。第1実施形態では、例えば参加者の全員が集合していない段階でも、到着済の利用者U[n]の人数に相当するN個の信号処理装置10[1]〜10[N]を相互に接続することで随時に合奏の練習を開始することができる。また、対比例1では特定の利用者がステーションを購入および管理する必要があるが、第1実施形態では、個々の利用者U[n]が自分の信号処理装置10[n]を購入および管理すればよいという利点もある。
【0023】
図2は、信号処理装置10[n]の電気的な構成図である。図2に例示される通り、第1実施形態の信号処理装置10[n]は、アナログバス42と抵抗素子44と第1調整部46と第2調整部48とを具備するアナログ回路である。以上の要素は筐体11の内部に設置される。なお、実際には、左右のチャネルの各々についてアナログバス42と抵抗素子44と第1調整部46と第2調整部48とが設置されるが、以下の説明では、左右の一方のチャネルに関する要素のみに便宜的に着目する。なお、例えば第1調整部46または第2調整部48を筐体11の外部に設置した構成、または、第1調整部46および第2調整部48を信号処理装置10[n]から省略した構成も想定される。第1調整部46および第2調整部48を省略した構成によれば、信号処理装置10[n]の回路規模または製造コストを低減できるという利点がある。
【0024】
アナログバス42は、アナログ信号を伝送する信号線である。図2に例示される通り、アナログバス42は、接続端子TC1および接続端子TC2に接続される。具体的には、アナログバス42の一端が接続端子TC1に接続され、他端が接続端子TC2に接続される。したがって、図1の例示のようにN個の信号処理装置10[1]〜10[N]が相互に接続された状態では、N個の信号処理装置10[1]〜10[N]にわたり各信号処理装置10[n]のアナログバス42が電気的に接続される。すなわち、N個の信号処理装置10[1]〜10[N]のアナログバス42を接続ケーブル12で相互に連結した単体のバスが形成される。なお、図1では、信号処理装置10[n]の接続端子TC1と信号処理装置10[n-1]の接続端子TC2とを接続した構成を例示した。しかし、図2から理解される通り、接続端子TC1と接続端子TC2とは電気的に等価であるから、各信号処理装置10[n]の接続端子TC1同士の接続、または各信号処理装置10[n]の接続端子TC2同士の接続も可能である。すなわち、接続端子TC1と接続端子TC2とを使用時に区別する必要はない。図1の例示のようにN個の信号処理装置10[1]〜10[N]が直列に接続された状態では、N系統の音響信号X[1]〜X[N]が混合された共通の音響信号Qが各信号処理装置10[n]のアナログバス42に発生する。
【0025】
図2に例示される通り、入力端子TINとアナログバス42との間の経路WA上に抵抗素子44と第1調整部46とが配置される。抵抗素子44(第1抵抗素子の例示)は、入力端子TINとアナログバス42との間に配置された電気抵抗である。第1調整部46は、入力端子TINと抵抗素子44との間に配置され、信号源22[n]から入力端子TINに供給される音響信号X[n]の音量を調整する。具体的には、第1調整部46は、音響信号X[n]を可変のゲインGA[n]で増幅する増幅器である。第1調整部46のゲインGA[n]は、信号処理装置10[n]の操作子P1に対する操作(操作子P1の回転角)に応じて可変に設定される。以上の説明から理解される通り、信号源22[n]から入力端子TINに供給された音響信号X[n]は、第1調整部46による音量の調整後に抵抗素子44を経由してアナログバス42に供給される。第1実施形態の第1調整部46は、信号源22[n]の出力インピーダンスの影響を低減するバッファアンプとしても機能する。
【0026】
図2に例示される通り、第2調整部48は、アナログバス42と出力端子TOUTとの間の経路WBに配置され、アナログバス42から供給される音響信号Qの音量の調整により音響信号Y[n]を生成する。具体的には、第2調整部48は、音響信号Qを可変のゲインGB[n]で増幅する増幅器である。第2調整部48のゲインGB[n]は、信号処理装置10[n]の操作子P2に対する操作(操作子P2の回転角)に応じて可変に設定される。第2調整部48による調整後の音響信号Y[n]が出力端子TOUTから放音機器24[n]に出力される。第1実施形態の第2調整部48は、アナログバス42から放音機器24[n]に対する電流を遮断するヘッドホンアンプとしても機能する。なお、第1調整部46および第2調整部48は、例えば筐体11の内部に収容された電池から供給される電力により動作する。ただし、外部電源から供給される電力により第1調整部46および第2調整部48を動作させることも可能である。
【0027】
図3は、音響信号X[n](X[1]〜X[N])と音響信号Y[n](Y[1]〜Y[N])との関係の説明図である。図3に例示される通り、N個の信号処理装置10[1]〜10[N]にわたりアナログバス42が相互に接続された状態を想定する。キルヒホッフの法則により、アナログバス42に発生する音響信号Qは、以下の数式(1)で表現される(VMIX=GA[1]X[1]+……+GA[N]X[N])。
【数1】
したがって、信号処理装置10[n]の出力端子TOUTから出力される音響信号Y[n]は、以下の数式(2)で表現される。
【数2】
数式(1)および数式(2)から理解される通り、相異なる信号源22[n]から供給されるN系統の音響信号X[1]〜X[N]が混合された音響信号Y[n]が信号処理装置10[n]から放音機器24[n]に出力される。
【0028】
数式(2)から理解される通り、第1調整部46が音響信号X[n]の音量を調整することで、音響信号Y[n]におけるN系統の音響信号X[1]〜X[N]の音量比を制御することが可能である。また、数式(2)から理解される通り、第2調整部48による音量の調整により、N系統の音響信号X[1]〜X[N]の音量比を維持しながら音響信号Y[n]の音量(すなわち、放音機器24[n]による再生音量)を調整することが可能である。
【0029】
以上に説明した通り、第1実施形態では、入力端子TINと出力端子TOUTとに接続されたアナログバス42が接続端子TC1または接続端子TC2を介して他装置に接続される。したがって、各信号処理装置10[n]の入力端子TINに供給されたN系統の音響信号X[1]〜X[N]が混合された音響信号Y[n]を、簡便な構成により生成して各放音機器24[n]に供給することが可能である。
【0030】
ところで、抵抗素子44の抵抗値が充分に小さい構成(以下「対比例2」という)を想定すると、接続ケーブル12および接続端子TC(TC1およびTC2)の抵抗成分が相対的に優勢となり、結果的に、N系統の音響信号X[1]〜X[N]の音量比が接続ケーブル12および接続端子TCの抵抗成分に大きく影響される可能性がある。また、対比例2の構成では、例えば信号処理装置10[n]の第1調整部46の出力側からアナログバス42を経由して他装置の第1調整部46の出力側に過度な電流が流れる可能性がある。以上の事情を考慮すると、各信号処理装置10[n]の抵抗素子44を充分に大きい抵抗値とした構成が好適である。例えば、抵抗素子44の抵抗値は3.3kΩに設定される。以上の構成によれば、接続ケーブル12および接続端子TCの抵抗成分がN系統の音響信号X[1]〜X[N]の音量比に与える影響を低減するとともに、アナログバス42を経由した過度の電流の発生を抑制することが可能である。
【0031】
また、ミキサ等の複数の音響機器を相互に接続する場面では、一般的に、一方の音響機器の入力端子と他方の音響機器の出力端子とを接続する必要がある。第1実施形態の信号処理装置10[n]においては、各接続端子TCに信号の入力/出力の区別がないから、接続端子TC1および接続端子TC2の何れを他装置に接続してもよい。したがって、信号処理装置10[n]の誤接続という問題が発生しない。また、信号処理装置10[n]はアナログの回路で実現されるから、例えばA/D変換およびD/A変換に起因した信号の遅延および回路の複雑化等の問題が発生しないという利点もある。
【0032】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態では、前掲の数式(1)から理解される通り、信号処理装置10[n]の接続数Nが増加するほど、音響信号Y[n]の電圧が低下するという傾向がある。第2実施形態は、接続数Nの増加に対する音響信号Y[n]の電圧の低下を抑制するための構成である。なお、以下に例示する各形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0033】
図4は、第2実施形態における信号処理装置10[n]の構成図である。図4に例示される通り、第2実施形態では、信号処理装置10[n]の各接続端子TC(TC1またはTC2)に抵抗素子52と接続切替部54とが接続される。抵抗素子52(第2抵抗素子の例示)は、抵抗値R2の電気抵抗である。
【0034】
接続切替部54は、抵抗素子52とアナログバス42との電気的な接続(導通または絶縁)を切替えるスイッチである。具体的には、接続切替部54は、信号処理装置10[n]の接続端子TCに接続ケーブル12の端部のプラグが挿入された状態(すなわち、他装置が接続された状態)では、抵抗素子52をアナログバス42から電気的に絶縁する。他方、接続切替部54は、信号処理装置10[n]の接続端子TCに接続ケーブル12の端部のプラグが挿入されていない状態(すなわち、他装置が接続されていない状態)では、抵抗素子52をアナログバス42に対して電気的に接続する。例えば公知のスイッチ付きのジャックにより、接続端子TCと抵抗素子52と接続切替部54とが実現される。
【0035】
図5には、第2実施形態におけるN個の信号処理装置10[1]〜10[N]が直列に接続された状態が例示されている。信号処理装置10[1]の接続端子TC1と信号処理装置10[N]の接続端子TC2とは開放状態にある。したがって、図5に例示される通り、信号処理装置10[1]の接続端子TC1と信号処理装置10[N]の接続端子TC2とには抵抗素子52が接続される一方、他の接続端子TCについては抵抗素子52から絶縁される。図6は、図5の等価回路である。図6から理解される通り、キルヒホッフの法則により以下の数式が成立する。なお、記号R1は、抵抗素子44の抵抗値である。
【数3】
【0036】
したがって、アナログバス42に発生する音響信号Qは、以下の数式(3)で表現される。
【数4】
【0037】
数式(3)から理解される通り、第2実施形態によれば、第1実施形態と比較して、接続数Nの増加に対する音響信号Y[n]の電圧の低下を抑制することが可能である。例えば、第1実施形態では、接続数Nを2個から8個に増加した場合に、音響信号Y[n]の電圧の低下量は12dBである。他方、第2実施形態では、例えば定数aを8と仮定すると(R1=4R2)、接続数Nを2個から8個に増加した場合の音響信号Y[n]の電圧の低下量は4dBに抑制される。なお、第1実施形態では、操作子P2に対する操作で音響信号Y[n]の音量を調整することで、接続数Nの増加に起因した音響信号Y[n]の音量の低下を補償することが可能である。
【0038】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態における信号処理装置10[n]の外観を例示する平面図である。図7に例示される通り、第3実施形態の信号処理装置10[n]の筐体11には、第1実施形態で説明した操作子P1および操作子P2に加えて操作子P3が設置される。操作子P3は、操作子P1および操作子P2と同様に、利用者U[n]が任意に回転させることが可能なツマミである。
【0039】
図8は、第3実施形態における信号処理装置10[n]の電気的な構成図である。図8に例示される通り、第3実施形態の信号処理装置10[n]は、第3調整部62と信号加算部64とを第1実施形態に追加した構成である。第3調整部62および信号加算部64は、第1調整部46および第2調整部48と同様に、電池または外部電源から供給される電力により動作する。
【0040】
第3調整部62は、入力端子TINとアナログバス42との間の経路WAから分岐した経路WCに設置される。具体的には、図8の経路WCは、第1調整部46と抵抗素子44との間の地点から分岐した経路であり、アナログバス42を経由することなく信号加算部64に到達する。第1調整部46による調整後の音響信号GA[n]X[n]は、第1実施形態と同様に抵抗素子44を経由してアナログバス42に供給されるほか、経路WCを介して第3調整部62に供給される。第3調整部62は、第1調整部46による調整後の音響信号GA[n]X[n]の音量を調整する。第3調整部62による調整後の音響信号Z[n]が信号加算部64に供給される。
【0041】
図8に例示される通り、第3実施形態の第3調整部62は、正相調整部622と逆相生成部623とを具備する。正相調整部622と逆相生成部623とは相互に並列に接続される。正相調整部622は、経路WAから経路WCに供給される音響信号GA[n]X[n]の音量を調整する。具体的には、正相調整部622は、音響信号GA[n]X[n]を可変のゲインGCa[n]で増幅する増幅器である。正相調整部622のゲインGCa[n]は、操作子P3に対する操作(操作子P3の回転角)に応じて可変に設定される。
【0042】
逆相生成部623は、音響信号GA[n]X[n]とは逆相の音響信号(すなわち、信号の極性を反転した信号)を生成する。具体的には、逆相生成部623は、図8に例示される通り、位相反転部624と逆相調整部626とを具備する。位相反転部624は、音響信号GA[n]X[n]の位相を反転する。位相反転部624による位相の反転には公知の技術が任意に採用され得る。逆相調整部626は、位相反転部624による反転後の音響信号(−1)GA[n]X[n]の音量を調整する。具体的には、逆相調整部626は、音響信号(−1)GA[n]X[n]を可変のゲインGCb[n]で増幅する増幅器である。逆相調整部626のゲインGCb[n]は、操作子P3に対する操作(操作子P3の回転角)に応じて可変に設定される。具体的には、ゲインGCa[n]およびゲインGCb[n]の一方が増加するほど他方が減少するようにゲインGCa[n]およびゲインGCb[n]は相互に連動して調整される。すなわち、正相調整部622と逆相調整部626とにより、音響信号GA[n]X[n]とその逆相成分との音量比が調整される。なお、位相反転部624による位相の反転と逆相調整部626による音量の調整との順序を逆転することも可能である。以上の説明から理解される通り、逆相生成部623は、音響信号GA[n]X[n]について位相の反転と音量の調整とを実行する。
【0043】
正相調整部622による調整後の音響信号GCa[n]GA[n]X[n]と逆相調整部626による調整後の音響信号GCb[n](−1)GA[n]X[n]とを加算した音響信号Z[n]が第3調整部62から信号加算部64に供給される。すなわち、音響信号Z[n]は、以下の数式(4)で表現される。
【数5】
【0044】
図8の信号加算部64は、アナログバス42と出力端子TOUTとの間に配置される。信号加算部64は、アナログバス42から供給される音響信号Qと第3調整部62による調整後の音響信号Z[n]とを加算することで音響信号Y[n](Y[n]=Q+Z[n])を生成する。なお、図8においてはアナログバス42と第2調整部48との間に信号加算部64を配置したが、第2調整部48と出力端子TOUTとの間に信号加算部64を配置することも可能である。
【0045】
第3調整部62のゲインGCa[n]が小さい数値に設定された場合(ゲインGCb[n]が大きい数値に設定された場合)、数式(4)から理解される通り、音響信号GA[n]X[n]の位相を反転した信号GCb[n](−1)GA[n]X[n]が音響信号Z[n]において相対的に優勢となる。したがって、N系統の音響信号X[1]〜X[N]が混合された音響信号Qのうち音響信号X[n]の信号成分を抑圧した音響信号Y[n]が生成される。他方、第3調整部62のゲインGCa[n]が大きい数値に設定された場合(ゲインGCb[n]が小さい数値に設定された場合)、数式(4)から理解される通り、音響信号GA[n]X[n]が音響信号Z[n]において相対的に優勢となる。したがって、音響信号Qのうち音響信号X[n]の信号成分を強調した音響信号Y[n]が生成される。すなわち、ゲインGCa[n]が小さい数値に設定されるほど音響信号Qにおける音響信号X[n]の信号成分が抑圧され、ゲインGCa[n]が大きい数値に設定されるほど音響信号Qにおける音響信号X[n]の信号成分が強調される。他方、N個の信号処理装置10[1]〜10[N]にわたり共通する音響信号QはゲインGCa[n]およびゲインGCb[n]に影響されない。
【0046】
以上の説明から理解される通り、第3実施形態では、他装置の再生音に影響することなく、信号処理装置10[n]の再生音(音響信号Y[n])のうち当該信号処理装置10[n]に入力された音響信号X[n]の音量の割合を調整することが可能である。すなわち、利用者U[n]は、N人の利用者U[1]〜U[N]による合奏音を放音機器24[n]により聴取しながら、操作子P3を適宜に操作することで自身の演奏音の音量のみを選択的に調整することが可能である。
【0047】
なお、以上の説明では、第1実施形態の構成を基礎として第3実施形態を説明したが、各接続端子TC(TC1またはTC2)に抵抗素子52と接続切替部54とを接続する第2実施形態の構成を第3実施形態に適用することも可能である。
【0048】
<変形例>
以上に例示した態様は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2個以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0049】
(1)前述の各形態では、2個の接続端子TC(TC1およびTC2)を具備する信号処理装置10[n]を例示したが、信号処理装置10[n]の接続端子TCの個数は以上の例示に限定されない。例えば、信号処理装置10[n]に3個以上の接続端子TCを設置することも可能である。例えば3個の接続端子TCを具備する信号処理装置10[n]には、信号処理装置10[n]に最大3個の他装置が接続され得る。
【0050】
また、信号処理装置10[n]に1個の接続端子TCを設置することも可能である。信号処理装置10[n]が1個の接続端子TCを具備する構成では、2個の信号処理装置10(10[1]および10[2])が1本の接続ケーブル12を介して接続される。なお、前述の各形態のように信号処理装置10[n]が複数の接続端子TCを具備する構成によれば、信号処理装置10[n]が1個の接続端子TCを具備する構成と比較して、多数の信号処理装置10[n]を簡便な方法で直列に接続できるという利点がある。なお、図9に例示される通り、複数に分岐した接続ケーブル12を利用することで、1個の接続端子TCを具備する信号処理装置10[n]の3個以上を相互に接続することも可能である。
【0051】
(2)前述の各形態では、各信号処理装置10[n]の接続に接続ケーブル12を利用したが、各信号処理装置10[n]を接続するための方法は以上の例示に限定されない。例えば、接続端子TCとしてコネクタを採用すれば、図10に例示される通り、信号処理装置10[n]の接続端子TCと信号処理装置10[n+1]の接続端子TCとを直接に接続することも可能である。
【0052】
(3)前述の各形態では、利用者U[n]が回転させ得るツマミを操作子Pとして例示したが、操作子Pの具体的な形態は任意である。例えば、利用者U[n]が直線的に移動させ得るフェーダー型の操作子Pを配置することも可能である。
【0053】
また、例えばステレオの左右チャネルの音量比(音像の方向)を調整する操作子P4を設置することも可能である。具体的には、図11に例示される通り、右調整部49Rと左調整部49Lとが、前述の各形態に係る信号処理装置10[n]に設置される。右調整部49Rは、信号源22[n]から入力端子TINに供給される右チャンネル(Rch)の音響信号X[n]の音量を調整する。左調整部49Lは、信号源22[n]から入力端子TINに供給される左チャンネル(Lch)の音響信号X[n]の音量を調整する。右調整部49Rおよび左調整部49Lの各々のゲインは、操作子P4に対する操作(例えば操作子P4の回転角)に応じて調整される。具体的には、右調整部49Rおよび左調整部49Lの一方のゲインが増加するほど他方のゲインが減少するように、右調整部49Rのゲインと左調整部49Lのゲインとが相互に連動して調整される。右調整部49Rによる調整後の音響信号X[n]が右チャネルの第1調整部46に供給され、左調整部49Lによる調整後の音響信号X[n]が左チャネルの第1調整部46に供給される。以上の説明から理解される通り、図11に例示された構成では、右チャネルの音響信号X[n]と左チャネルの音響信号X[n]との音量比(すなわちパン)が調整される。
【0054】
(4)第3実施形態における第3調整部62の構成は図8の例示に限定されない。例えば、図12に例示された構成の第3調整部62を採用することも可能である。図12の第3調整部62は、正相調整部622と逆相生成部623と可変抵抗628とを具備する。正相調整部622と逆相生成部623との機能は第3実施形態と同様である。ただし、正相調整部622のゲインGCa[n]と逆相調整部626のゲインGCb[n]とは所定の固定値に設定される。もっとも、ゲインGCa[n]とゲインGCb[n]とを例えば利用者からの指示に応じて可変に設定することも可能である。
【0055】
可変抵抗628は、正相調整部622による調整後の音響信号GCa[n]GA[n]X[n]と逆相生成部623が生成した音響信号GCb[n](−1)GA[n]X[n]との混合比率を可変に設定する要素であり、操作子P3に対する操作(操作子P3の回転角)に応じて抵抗値が変化する。すなわち、音響信号Z[n]における音響信号GCa[n]GA[n]X[n]と音響信号GCb[n](−1)GA[n]X[n]との混合比率が操作子P3に対する操作に応じて可変に設定される。具体的には、可変抵抗628は、正相調整部622の出力端と逆相生成部623の出力端との間に接続された抵抗素子と、当該抵抗素子に接触する接点とを具備する。操作子P3に対する操作に応じて抵抗素子に対する接点の位置は変化する。したがって、音響信号GCa[n]GA[n]X[n]と音響信号GCb[n](−1)GA[n]X[n]とが接点の位置に応じた混合比率で混合された音響信号Z[n]が接点に発生し、当該接点から信号加算部64に供給される。したがって、図12の構成でも、第3実施形態と同様に、アナログバス42に発生する音響信号Q(ひいては他装置の再生音)に影響することなく、信号処理装置10[n]の再生音(音響信号Y[n])のうち利用者U[n]自身の演奏音の音量を選択的に調整することが可能である。
【0056】
図12に例示した第3調整部62は、経路WCに供給される音響信号GA[n]X[n]を可変のゲインGC[n]で増幅する増幅器として機能する。第3調整部62のゲインGC[n]は、最小値−GCb[n]以上かつ最大値GCa[n]以下の範囲内(−GCb[n]≦GC[n]≦GCa[n])で操作子P3に対する操作に応じて可変に設定される。ゲインGC[n]が正数である場合(GC[n]>0)、音響信号Qのうち音響信号X[n]の信号成分(すなわち利用者U[n]自身の演奏音)を選択的に強調した音響信号Y[n]が生成される。他方、ゲインGC[n]が負数である場合(GC[n]<0)、音響信号Qのうち音響信号X[n]の信号成分を選択的に抑圧した音響信号Y[n]が生成される。
【0057】
なお、図13に例示される通り、正相調整部622による調整後の音響信号GCa[n]GA[n]X[n]と逆相生成部623が生成した音響信号GCb[n](−1)GA[n]X[n]との何れかを選択して音響信号Z[n]として出力するスイッチ629を、可変抵抗628の代わりに設置することも可能である。図13のスイッチ629は、正相調整部622の出力を選択する状態と逆相生成部623の出力を選択する状態との何れかに、例えば利用者からの操作に応じて制御される。
【0058】
(5)図8図12または図13に例示した第3調整部62における逆相生成部623(位相反転部624および逆相調整部626)を省略することも可能である。例えば、第3調整部62を正相調整部622のみで構成した場合、音響信号Y[n]における音響信号X[n]の信号成分を選択的に抑圧することはできないが、音響信号X[n]の強調の度合をゲインGCa[n]に応じて調整することは可能である。同様に、図8図12または図13における正相調整部622を省略することも可能である。また、図8図12および図13では、第1調整部46と抵抗素子44との間の経路から分岐した経路WCに第3調整部62を設置したが、入力端子TINと第1調整部46との間の経路から経路WCを分岐して第3調整部62を設置することも可能である。
【0059】
(6)図1および図7に例示された構成では、筐体11のひとつの側面に入力端子TINおよび出力端子TOUTを設置し、筐体11の左側の側面に接続端子TC1を設置し、筐体11の右側の側面に接続端子TC2を設置したが、複数の端子(TIN,TOUT,TC1およびTC2)の位置は以上の例示に限定されない。例えば、筐体11のひとつの側面に接続端子TC1と接続端子TC2と出力端子TOUTとを設置し、他の側面に入力端子TINを設置することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
100…音響処理システム、10[n](10[1]〜10[N])…信号処理装置、11…筐体、12…接続ケーブル、22[n](22[1]〜22[N])…信号源、24[n](24[1]〜24[N])…放音機器、42…アナログバス、44…抵抗素子(第1抵抗素子)、46…第1調整部、48…第2調整部、49R…右調整部、49L…左調整部、52…抵抗素子(第2抵抗素子)、54…接続切替部、62…第3調整部、622…正相調整部、623…逆相生成部、624…位相反転部、626…逆相調整部、628…可変抵抗、629…スイッチ、64…信号加算部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13