【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような基本的な解決手法を採択してある。すなわち、
運転者が着座される車室が車体構造体により規定されると共に、車室外にエンジンと該エンジンの排気音を低減させる消音器が配設された車両における車両用サウンドシステムであって、
エンジン音または排気音を、運転席に着座される運転者よりも前方位置において車室内に導入すると共に、その導入レベルを調整可能な第1導入手段と、
エンジン音または排気音を、運転席に着座される運転者よりも後方位置において車室内に導入すると共に、その導入レベルを調整可能な第2導入手段と、
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記走行状態検出手段で検出された走行状態に応じて、前記第1導入手段からの導入レベルと前記第2導入手段からの導入レベルとを変更する導入レベル制御手段と、
を備えているようにしてある。
【0008】
上記基本的な解決手法によれば、車室内に積極的にエンジン音又は排気音を導入することから、運転席乗員は、エンジン音または排気音に基づいて車両状態を的確に把握して、スポーツ走行を行う上で好ましいものとなり、また安全確保の上でも好ましいものとなる。また、エンジン音又は排気音が前後方向に隔置された状態で車室内に導入されることから、運転席乗員は、エンジン音又は排気音をその音像位置から容易に識別して、上記の効果をより十分に得ることができる。さらに、車両の走行状態に応じてエンジン音または排気音が聞こえてくる位置を前後方向に変化させて、車室内の運転席乗員にとってエンジン音あるいは排気音を車両の走行状態に応じて好適に聞くことができる。
【0009】
上記基本的な解決手法を有していることに加えて、本件第1発明にあっては、次のような解決手法をさらに採択してある。
前記走行状態検出手段が、エンジン回転数を検出するものとされ、
前記導入レベル制御手段は、エンジン回転数の上昇に応じて、車室内で聞こえるエンジン音または排気音の位置が前方から後方へと移行されるように、前記第1導入手段からの導入レベルと前記第2導入手段からの導入レベルとを制御し、
エンジン回転数が第1所定回転数よりも低い回転数域において、前記導入レベル制御手段は、前記第1導入手段からの導入レベルが大きくなるように、かつ前記第2導入手段からの導入レベルが小さくなるように制御し、
エンジン回転数が該第1所定回転数よりも高回転に設定された第2所定回転数よりも大きい高回転域において、前記導入レベル制御手段は、前記第1導入手段からの導入レベルが小さくなるように、かつ前記第2導入手段からの導入レベルが大きくなるように制御する、
ようにしてある(請求項1対応)。本件第1発明によれば、エンジン回転数はスポーティな走行度合いを示す指標となることから、スポーティな走行度合が高まるほど、エンジン音または排気音が後方へ移動した位置から聞こえるようにすること、つまり音を置き去りにするような爽快感を感じさせる上で好ましいものとなる。
【0010】
以上に加えて、低回転でおとなしい運転を行っているときは、後方からの音が押さえられることから、いたずらに運転席乗員を刺激してしまうことが抑制される。
【0011】
上記基本的な解決手法を有していることに加えて、本件第2発明にあっては、次のような解決手法をさらに採択してある。
エンジン音または排気音を、前記第1導入手段による導入位置と前記第2導入手段による導入位置との間において車室内に導入する共に、その導入レベルを調整可能な第3導入手段をさらに備え、
前記導入レベル制御手段が、前記第3導入手段をも制御し、
前記走行状態検出手段が、エンジン回転数を検出するものとされ、
前記導入レベル制御手段は、エンジン回転数の上昇に応じて、車室内で聞こえるエンジン音または排気音の位置が前方から後方へと移行されるように、前記第1導入手段からの導入レベルと前記第2導入手段からの導入レベルと前記第3導入手段からの導入レベルとを制御し、
エンジン回転数が第1所定回転数よりも低い回転数域において、前記導入レベル制御手段は、前記第1導入手段からの導入レベルが大きくなるように、かつ前記第2導入手段からの導入レベルおよび前記第3導入手段からの導入レベルがそれぞれ小さくなるように制御し、
エンジン回転数が該第1所定回転数よりも高回転に設定された第2所定回転数よりも大きい高回転域において、前記導入レベル制御手段は、前記第1導入手段からの導入レベルおよび前記第3導入手段からの導入レベルがそれぞれ小さくなるように、かつ前記第2導入手段からの導入レベルが大きくなるように制御し、
エンジン回転数が該第1所定回転数と前記第2所定回転数との間となる中回転域において、前記導入レベル制御手段は、前記第1導入手段からの導入レベルおよび前記第2導入手段からの導入レベルがそれぞれ小さくなるように、かつ前記第3導入手段からの導入レベルが大きくなるように制御する、
ようにしてある(請求項2対応)。本件第2発明によれば、前後方向中間位置からもエンジン音または排気音を導入させて、前述した効果をより一層効果的に得る上で好ましいものとなる。
【0012】
また、エンジン音または排気音が、エンジン回転数の上昇に応じて後方へと移動する感覚をより滑らかに得ることができる。さらに、エンジン回転数の上昇に応じて、エンジン音または排気音が聞こえてくる位置を後方へと滑らかに移動させることができる。
【0013】
【0014】
本発明の好ましい態様は次のとおりである。
前記第1導入手段からはエンジン音が導入され、
前記第2導入手段からは排気音が導入される、
ようにしてある(
請求項3対応)。この場合、エンジン音および排気音を共に車室内に導入して、この両方の音に基づいて運転席乗員は車両状態をより的確に把握することができる。また、車両においては、車室前方にエンジンが配設されてエンジン音が前方から聞こえてくる一方、車室後方に消音器が配設されて後方から排気音が聞こえてくるのが一般的なことから、エンジンや消音器の配設位置を一般的な車両とは異なる設定を採択した場合でも、聞こえてくるエンジン音位置や排気音位置を、広く普及している形式の車両の場合と同じような設定とすることができる。
【0015】
車室前方に前記エンジンが配設され、
車室後方に前記消音器が配設されている、
ようにしてある(
請求項4対応)。この場合、エンジンおよび消音器の配設位置が一般的な形態とされている車両に対応して、
請求項3に対応した効果をより一層十分に発揮させる上で好ましいものとなる。
【0016】
前記第3導入手段は、フロアパネルに形成されたトンネル部内の空間を経由して伝達されるエンジン音または排気音を車室内に導入する、ようにしてある(
請求項5対応)。この場合、トンネル部内の空間を、エンジン音または排気音の伝達空間として有効利用することができる。また、トンネル部は前後方向に長いことから、第3導入手段からの導入位置の前後方向での選択の自由度が高くなり、車室内に導入される音のうちエンジン音と排気音との割合(レベル割合)を所望のものにすることも可能となる。