(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機(2)、熱源側熱交換器(3)、第2膨張機構(27)、受液器(7)、第1膨張機構(5)、及び満液式蒸発器(1A)をこの順で冷媒配管により接続してなる冷媒回路と、前記満液式蒸発器(1A)により冷却される被冷却媒体を循環させる循環回路とを備えている製氷システムであって、
前記冷媒回路は、
前記圧縮機(2)の吐出側に接続され、前記圧縮機(2)から吐出された冷媒を前記熱源側熱交換器(3)側及び前記満液式蒸発器(1A)側のいずれかに切り換えて流すことで製氷運転と解氷運転とを切り換える四路切換弁(4)と、
前記受液器(7)と前記第1膨張機構(5)との間の第1冷媒経路(R1)に配置された第1伝熱管(41)、及び、前記満液式蒸発器(1A)と前記圧縮機(2)との間の第2冷媒経路(R2)に配置された第2伝熱管(42)を備え、前記第1伝熱管(41)を流れる冷媒と前記第2伝熱管(42)を流れる冷媒との間で熱交換を行う過熱器(6)と、
前記解氷運転の際に、満液式蒸発器(1A)から排出された冷媒を、前記第1伝熱管(41)を回避して前記受液器(7)に流入させる回避手段と、を備えている製氷システム。
前記回避手段が、前記第1冷媒経路(R1)において、前記第1伝熱管(41)と前記第1膨張機構(5)との間の第1位置(A1)と、前記第1伝熱管(41)と前記受液器(7)との間の第2位置(A2)とをバイパスするバイパス経路(B)と、
前記製氷運転では、前記第1位置(A1)と前記第2位置(A2)との間において前記バイパス経路(B)の冷媒の流れを阻止し、前記解氷運転では、前記第1位置(A1)と前記第2位置(A2)との間において前記第1冷媒経路(R1)における冷媒の流れを阻止する冷媒流制御部と、を備えている、請求項1に記載の製氷システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された製氷用冷凍装置は、圧縮機に液冷媒が流入するのを抑制するために気液分離器を備えている。しかし、単に気液分離器を備えるだけでは満液式蒸発器から排出される冷媒の湿り状態、すなわち乾き度を制御することが困難である。
【0006】
本開示は、満液式蒸発器から排出される冷媒の乾き度を制御することができる製氷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の製氷システムは、
圧縮機、熱源側熱交換器、第2膨張機構、受液器、第1膨張機構、及び満液式蒸発器をこの順で冷媒配管により接続してなる冷媒回路と、前記満液式蒸発器により冷却される被冷却媒体を循環させる循環回路とを備えている製氷システムであって、
前記冷媒回路は、
前記圧縮機の吐出側に接続され、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記熱源側熱交換器側及び前記満液式蒸発器側のいずれかに切り換えて流すことで製氷運転と解氷運転とを切り換える四路切換弁と、
前記受液器と前記第1膨張機構との間の第1冷媒経路に配置された第1伝熱管、及び、前記満液式蒸発器と前記圧縮機との間の第2冷媒経路に配置された第2伝熱管を備え、前記第1伝熱管を流れる冷媒と前記第2伝熱管を流れる冷媒との間で熱交換を行う過熱器と、
前記解氷運転の際に満液式蒸発器から排出された冷媒を前記第1伝熱管を回避して前記受液器に流入させる回避手段と、を備えている。
【0008】
以上の構成を有する製氷システムは、第1膨張機構と受液器との間の第1冷媒経路に配置された第1伝熱管、及び、満液式蒸発器と圧縮機との間の第2冷媒経路に配置された第2伝熱管とを備え、第1伝熱管を流れる冷媒と第2伝熱管を流れる冷媒との間で熱交換を行う過熱器を備えているので、当該過熱器によって満液式蒸発器から排出される湿り状態の冷媒に所望の過熱度を付与することができ、満液式蒸発器から排出される冷媒の乾き度も適切に制御することができる。
【0009】
また、満液式蒸発器内で氷が固まって付着したり、満液式蒸発器内で氷スラリーが滞留したりしてしまうと適切に氷スラリーを作ることができなくなるが、上記構成の製氷システムでは、四路切換弁によって圧縮機から吐出された高温の冷媒を満液式蒸発器側に流す解氷運転が可能であるため、満液式蒸発器内の氷を溶かすことができる。この解氷運転の際に、冷媒は満液式蒸発器において凝縮され受液器に向けて流れるが、その途中で過熱器の第1伝熱管を通過すると第2伝熱管を流れる冷媒によって加熱され、満液式蒸発器で凝縮された液冷媒が過熱器で気液二相冷媒になり、受液器内に気液二相冷媒が流入する可能性が高まる。この点、上記構成の製氷システムでは、満液式蒸発器から排出された冷媒を第1伝熱管を回避して受液器に流入させる回避手段を備えているので、受液器への気液二相冷媒の流入を抑制することができる。
【0010】
(2)好ましくは、前記回避手段が、前記第1冷媒経路において、前記第1伝熱管と前記第1膨張機構との間の第1位置と、前記第1伝熱管と前記受液器との間の第2位置とをバイパスするバイパス経路と、
前記製氷運転では、前記第1位置と前記第2位置との間において前記バイパス経路の冷媒の流れを阻止し、前記解氷運転では、前記第1位置と前記第2位置との間において前記第1冷媒経路における冷媒の流れを阻止する冷媒流制御部と、を備えている。
このような構成によって、満液式蒸発器から排出された冷媒をバイパス経路に流すことができる。
【0011】
(3)好ましくは、前記冷媒流制御部が、前記バイパス経路において前記第1位置から前記第2位置への冷媒の流れを許容しその逆の冷媒の流れを阻止する第1逆止弁と、前記第1冷媒経路において前記第2位置から前記第1位置への冷媒の流れを許容しその逆の冷媒の流れを阻止する第2逆止弁とを含む。
このような構成によって、簡単な構成で冷媒流を制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、製氷システムの実施形態を詳細に説明する。なお、本開示は以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
[第1の実施形態]
<製氷システムの全体構成>
図1は、第1の実施形態に係る製氷システムAの概略構成図である。
本実施形態の製氷システムAは、海水タンク8に貯めた海水を原料として製氷機1にてより氷スラリーを連続的に生成し、生成した氷スラリーを海水タンク8に戻すシステムである。
【0015】
氷スラリーとは、水または水溶液に微細な氷が混濁したシャーベット状の氷のことをいう。氷スラリーは、スラリー氷、アイススラリー、スラリーアイス、スラッシュアイス、リキッドアイスとも呼ばれる。
本実施形態の製氷システムAは、海水をベースとした氷スラリーを連続的に生成可能である。このため、本実施形態の製氷システムAは、例えば漁船や漁港などに設置され、海水タンク8に戻された氷スラリーは鮮魚の保冷などに利用される。
【0016】
また、本実施形態の製氷システムAは、製氷機1において製氷を行う製氷運転と、製氷機1内の氷を溶かす解氷運転とを切り換えて行う。
【0017】
製氷システムAは海水を被冷却媒体とする。製氷システムAは、利用側熱交換器である製氷機1、圧縮機2、熱源側熱交換器3、四路切換弁4、利用側膨張弁(第1膨張機構)5、過熱器6、レシーバ(受液器)7、熱源側膨張弁(第2膨張機構)27、送風ファン10、海水タンク8、及びポンプ9等を備えている。また、製氷システムAは、制御装置50を備えている。
【0018】
圧縮機2、熱源側熱交換器3、熱源側膨張弁27、レシーバ7、利用側膨張弁5、製氷機1、及び過熱器6は、この順で冷媒配管により接続されて冷媒回路を構成している。
製氷機1、海水タンク8、及びポンプ9は海水配管により接続されて循環回路を構成している。
【0019】
四路切換弁4は、圧縮機2の吐出側に接続され、圧縮機2から吐出された冷媒を熱源側熱交換器3側又は製氷機1側に切り換えて流す機能を有する。この四路切換弁4によって、製氷運転と解氷運転とが切り換えられる。
【0020】
圧縮機2は、冷媒を圧縮し、冷媒回路内で冷媒を循環させるものである。圧縮機2は、可変容量型(能力可変型)である。具体的に、圧縮機2は、内蔵されているモータをインバータ制御することによって、このモータの運転回転数を段階的又は連続的に変更することができる。
【0021】
送風ファン10は、熱源側熱交換器3を空冷するものである。送風ファン10は、インバータ制御によって運転回転数が段階的又は連続的に変更されるモータを備えている。
利用側膨張弁5及び熱源側膨張弁27は、例えばパルスモータ駆動方式の電子膨張弁で構成され、開度を調整可能である。
【0022】
過熱器6は、製氷機1と圧縮機2との間に配置され、製氷機1から排出された冷媒を過熱するものである。具体的に、過熱器6は、製氷機1から排出された冷媒を、熱源側熱交換器3から流出しレシーバ7を経た冷媒によって過熱する。本実施形態では、2つの過熱器6が直列に接続されている。なお、2つの過熱器6は並列に接続することもできる。過熱器6の具体的な構成については後述する。
【0023】
図2は、製氷機の側面説明図である。
図3は、製氷機とこれに接続される冷媒配管とを概略的に示す説明図である。
製氷機1は、二重管式製氷機により構成されている。この製氷機1は、蒸発器1Aと、ブレード機構15とを備える。蒸発器1Aは、円筒形状に形成された内管12と外管13とを備えている。また、蒸発器1Aは、横置き型であり、内管12及び外管13の軸心が水平に配置されている。
【0024】
内管12は、内部を被冷却媒体である海水が通過する要素である。内管12は、金属材料で形成されている。内管12の軸心方向の両端は閉止されている。内管12にはブレード機構15が配設されている。ブレード機構15は、内管12の内周面に生成されたシャーベット状のスラリー氷を掻き上げて内管12内に分散させる。
【0025】
内管12の軸方向一端側(
図2において右側)には、海水入口16が設けられている。海水は、海水入口16から内管12内に供給される。内管12の軸方向他端側(
図2において左側)には、海水出口17が設けられている。内管12内の海水は、海水出口17から排出される。
【0026】
外管13は、内管12の径方向外側において当該内管12と同軸に設けられている。外管13は、金属材料で形成されている。外管13の下部には1又は複数(本実施形態では3つ)の冷媒入口18が設けられている。外管13の上部には1又は複数(本実施形態では2つ)の冷媒出口19が設けられている。外管13の内周面と内管12の外周面との間の環状スペース14は、海水との間で熱交換を行う冷媒が流入する領域である。冷媒入口18から供給された冷媒は、環状スペース14を通過して冷媒出口19から排出される。
【0027】
ブレード機構15は、回転軸20と、支持バー21と、ブレード22と、駆動部24とを備えている。回転軸20の軸方向の他端は内管12の軸方向一端に設けられたフランジ23から外部に延び、駆動部24としてのモータに接続されている。回転軸20の周面には所定間隔で支持バー21が立設されており、この支持バー21の先端にブレード22が取り付けられている。ブレード22は例えば金属製の帯板部材よりなる。ブレード22の回転方向の前方側の側縁は鋭利な先細り形状とされている。
【0028】
二重管式製氷機1の蒸発器1Aは、満液式蒸発器により構成されている。満液式蒸発器1Aは、外管13と内管12との間の環状スペース14の大部分が液冷媒とされることによって、冷媒と海水と間の熱交換効率を高めたものである。また、環状スペース14の大部分が液冷媒とされることによって、満液式蒸発器1A内の冷凍機油を満液式蒸発器1Aから排出させやすくすることができ、排出された冷凍機油を圧縮機2へ戻すことによって圧縮機2の潤滑不足を抑制し、信頼性を高めることができる。
【0029】
図3に示すように、過熱器6は、二重管熱交換器により構成されている。過熱器6は、外管としての第1伝熱管41と、内管としての第2伝熱管42とを有する。第1伝熱管41は、レシーバ7と利用側膨張弁5との間の第1冷媒経路R1に設けられている。また、第2伝熱管42は、圧縮機2と製氷機1との間の第2冷媒経路R2に設けられている。したがって、製氷運転の際には、製氷機1から排出されて過熱器6の第2伝熱管42に流入した冷媒は、熱源側熱交換器3から熱源側膨張弁27、レシーバ7を経て第1伝熱管41に流入する冷媒によって過熱される。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の製氷システムAは、解氷運転の際に、満液式蒸発器1Aから排出された冷媒を第1伝熱管41を回避して受液器7に流入させる回避手段を備えている。この回避手段は、第1冷媒経路R1における過熱器6(第1伝熱管41)と利用側膨張弁5との間の第1位置A1と、第1冷媒経路R1における過熱器6(第1伝熱管41)とレシーバ7との間の第2位置A2との間をバイパスするバイパス経路Bを備えている。また、回避手段は、バイパス経路Bに、第1位置A1から第2位置A2への冷媒の流れを許容しその逆の冷媒の流れを阻止する第1逆止弁51を備えている。また、回避手段は、第1冷媒経路R1における第2位置A2と過熱器6(第1伝熱管41)との間に、第2位置A2から過熱器6(第1伝熱管41)への冷媒の流れを許容しその逆の冷媒の流れを阻止する第2逆止弁52を備えている。これらの逆止弁51,52は冷媒流制御部を構成している。
【0031】
図1に示すように、製氷システムAは、制御装置50を備えている。制御装置50は、CPUとメモリとを備える。メモリには、RAM、ROMなどが含まれる。
【0032】
制御装置50は、メモリに格納されたコンピュータプログラムをCPUが実行することにより、製氷システムAの運転に関する各種の制御を実現する。具体的に、制御装置50は、利用側膨張弁5、熱源側膨張弁27の開度を制御する。また、制御装置50は、圧縮機2及び送風ファン10の運転周波数を制御する。なお、制御装置50は、製氷機1側と、熱源側熱交換器3側とに分けて設けられていてもよく、この場合、例えば、熱源側膨張弁27、送風ファン10、圧縮機2の動作制御を熱源側熱交換器3側の制御装置で行い、利用側膨張弁5の動作制御を製氷機1側の制御装置で行うことができる。
【0033】
製氷システムAにおける冷媒回路には、複数のセンサが設けられている。
図1に示すように、圧縮機2の吸込側には吸込圧力センサ31が設けられ、吐出側には吐出圧力センサ32が設けられている。また、製氷機1を通過した後の過熱器6の下流側には、ガス冷媒温度センサ34が設けられている。製氷機1には駆動部24の電流値を検出する電流センサ35が設けられている。これらのセンサの検出信号は制御装置50に入力され、各種の制御のために利用される。
【0034】
<製氷システムの動作>
(製氷運転)
図4は、製氷運転の際の冷媒の流れを示す製氷システムの概略的な構成図である。
図5は、製氷運転の際の冷媒の流れを示す製氷機とこれに接続された冷媒配管とを概略的に示す説明図である。
通常の製氷運転を行うには、四路切換弁4が、
図4において実線で示される状態に維持される。圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は四路切換弁4を経て凝縮器として機能する熱源側熱交換器3に流入し、送風ファン10の作動により空気と熱交換して凝縮・液化する。液化した冷媒は、全開状態の熱源側膨張弁27を通り、レシーバ7を経て過熱器6の第1伝熱管41へ流れる。このとき、第1冷媒経路R1から分岐するバイパス経路Bには第1逆止弁51が設けられているので、冷媒は当該バイパス経路Bを通過せず、過熱器6の第1伝熱管41に流入する。第1伝熱管41を通過した冷媒は利用側膨張弁5に流れる。
【0035】
冷媒は、利用側膨張弁5により所定の低圧に減圧され、気液二相冷媒となり、製氷機1の冷媒入口18(
図2参照)から当該製氷機1を構成する内管12と外管13との間の環状スペース14内に供給される。
環状スペース14内に供給された冷媒は、ポンプ9により内管12内に流入された海水と熱交換して蒸発する。ポンプ9は、海水タンク8から海水を吸い込んで製氷機1の海水流路に海水を圧送する。海水流路で生成された氷スラリーは、ポンプ圧によって海水とともに海水タンク8に戻される。
【0036】
製氷機1で蒸発した冷媒は、第2冷媒経路R2を通り過熱器6の第2伝熱管42を経て圧縮機2に吸い込まれる。過熱器6は、製氷機1から排出され第2伝熱管42を流れる冷媒を、第1伝熱管41を流れる冷媒によって過熱する。これは、製氷機1から排出される冷媒は湿り状態であり、そのまま圧縮機2に吸い込まれると、シリンダ内部の急激な圧力上昇(液圧縮)や冷凍機油の粘度低下により圧縮機2が故障する原因となるからである。以下、製氷機1から排出される冷媒の湿り状態と過熱との関係について説明する。
【0037】
図6は、冷凍サイクルを示すp−h線図である。
本実施形態の製氷システムAは、満液式蒸発器1Aの環状スペース14における液冷媒の液面を高く維持させるために、満液式蒸発器1Aの冷媒出口19から排出される冷媒の乾き度xを1未満の所定の目標範囲、例えばx=0.9〜0.95に収めるように構成されている。そして、満液式蒸発器1Aの冷媒出口19から排出された冷媒に対して過熱器6により過熱度SHを付与することによって圧縮機2への液冷媒の流入が抑制されている。過熱器6は、乾き度xが0.9〜0.95の冷媒に5〜8度の過熱度SHを付与することができる能力を有している。
【0038】
本実施形態の制御装置50は、満液式蒸発器1Aから排出される冷媒の乾き度を所定範囲に収めるために、次のような処理を行う。
本実施形態の制御装置50は、吸込圧力センサ31により検出された吸込圧力によって冷媒の飽和温度(蒸発温度)を算出する。また、制御装置50は、ガス冷媒温度センサ34により検出された温度と飽和温度との差分により、冷媒の過熱度SHを求める。制御装置50は、当該過熱度SHと所定の目標値(目標過熱度)とを比較し、両者が一致するように利用側膨張弁5の開度を制御する。具体的には、制御装置50は、過熱器6により、満液式蒸発器1Aから排出される冷媒の乾き度xを所定範囲(例えばx=0.9〜0.95の範囲)に収めることができる過熱度SHが冷媒に付与されるように、利用側膨張弁5の開度を制御する。
【0039】
これにより、満液式蒸発器1Aの環状スペース14において、液冷媒の液面の高さを高位置で一定に維持することができ、液冷媒と海水との熱交換効率を高めることができる。また、満液式蒸発器1Aに流入した冷凍機油は、湿り状態の冷媒とともに満液式蒸発器1Aから排出され、圧縮機2に戻り易くなる。そのため、圧縮機2の潤滑不足を抑制することができる。
【0040】
(解氷運転)
以上のような製氷運転を行った結果、内管12内に氷が固まって付着し、ブレード機構15のブレード22が氷に引っ掛かって回転負荷が大きくなる現象(この現象を「アイスロック」ともいう)が生じたり、製氷機1の内管12内の海水の流れが滞り、内管12内に氷スラリーが蓄積される現象(この現象を「アイスアキュームレーション」ともいう)が生じると、製氷機1を継続して運転することが困難となる。この場合、内管12内の氷を溶かすために解氷運転(クリーニング運転)が行われる。
【0041】
図1に示すように、制御装置50は、電流センサ35からの電流値を常時監視しており、この電流値が所定の閾値を超えると製氷運転から解氷運転に切り換える処理を行う。具体的に、制御装置50は、四路切換弁4を、
図1において破線で示される状態に切り換えるように制御する。
【0042】
図7は、解氷運転の際の冷媒の流れを示す製氷システムの概略的な構成図である。
図8は、解氷運転の際の冷媒の流れを示す製氷機とこれに接続された冷媒配管とを概略的に示す説明図である。
圧縮機2から吐出された高温のガス冷媒は、四路切換弁4及び過熱器6の第2伝熱管42を経て満液式蒸発器1Aの内管12と外管13との間の環状スペース14内に流入し、内管12内の氷を含む海水と熱交換して凝縮・液化する。このとき、内管12内の氷は冷媒によって加熱され解氷する。満液式蒸発器1Aから排出された液冷媒は、全開状態の利用側膨張弁5を通過し、その後、第1冷媒経路R1からバイパス経路Bへ流れ、レシーバ7に流入する。このとき、第1冷媒経路R1に第2逆止弁52が設けられているので、液冷媒が過熱器6の第1伝熱管41に流入することが抑制される。そのため、当該過熱器6において、液冷媒が加熱されるのを抑制することができる。
【0043】
この点について、
図10を参照して詳しく説明する。
図10は、比較例としてバイパス経路を備えていない場合の冷媒の流れを示す
図8に対応した説明図である。
図10において、製氷機1から排出された液冷媒は、全開状態の利用側膨張弁5を通過した後、過熱器6の第1伝熱管41に流入する。過熱器6の第2伝熱管42には、圧縮機2から吐出された高温のガス冷媒が流れているので、第1伝熱管41内の液冷媒が加熱され、気液二相冷媒となる。気液二相冷媒がレシーバ7に流入すると、当該レシーバ7内の冷媒中の液冷媒の割合が少なくなり、熱源側熱交換器3へ流入する冷媒量が低下する。そのため、熱源側熱交換器3の蒸発器としての能力が低下する。また、圧縮機2から過熱器6の第2伝熱管42を流れる高温のガス冷媒は、第1伝熱管41を流れる冷媒によって冷却され、温度が低下する。そのため、製氷機1における解氷能力の低下を招く。
【0044】
これに対して本実施形態の製氷システムAでは、
図8に示すように、冷媒回路がバイパス経路Bと逆止弁51,52とを備えることによって、以上のような不都合が生じることがなく効率よく解氷運転を行うことができる。
図7及び
図8において、レシーバ7から排出された冷媒は、熱源側膨張弁27によって減圧された後、熱源側熱交換器3において蒸発し、圧縮機2に吸い込まれる。
【0045】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態に係る製氷システムの製氷機とこれに接続される冷媒配管を示す概略的な説明図である。
本実施形態の製氷システムAは、第1の実施形態の第1、第2逆止弁51,52に代えて、冷媒流制御部として流路切換弁53を備えている。この流路切換弁53は、第2位置A2に設けられており、レシーバ7から過熱器6の第1伝熱管41へ向かう第1流路f1と、バイパス経路Bからレシーバ7へ向かう第2流路f2とを切り換えるものである。そして、制御装置50は、製氷運転を行う場合には、流路切換弁53を第1流路f1に切り換え、解氷運転を行う場合には、流路切換弁53を第2流路f2に切り換える。これによって、第1の実施形態の逆止弁51,52と同様に機能する。なお、流路切換弁53は、第1位置A1に設けられていてもよい。
【0046】
[実施形態の作用効果]
以上説明したように、上記各実施形態の製氷システムAは、圧縮機2、熱源側熱交換器3、熱源側膨張弁27、レシーバ7、利用側膨張弁5、及び満液式蒸発器1Aをこの順で冷媒配管により接続してなる冷媒回路と、満液式蒸発器1Aにより冷却される被冷却媒体を循環させる循環回路とを備えている。冷媒回路は、四路切換弁4と過熱器6とをさらに備える。四路切換弁4は、圧縮機2の吐出側に接続され、圧縮機2から吐出された冷媒を熱源側熱交換器3側及び満液式蒸発器1A側のいずれかに切り換えて流すことで製氷運転と解氷運転とを切り換える。過熱器6は、レシーバ7と利用側膨張弁5との間の第1冷媒経路R1に配置された第1伝熱管41と、製氷機1と圧縮機2との間の第2冷媒経路R2に配置された第2伝熱管42とを備え、第1伝熱管41を流れる冷媒と第2伝熱管42を流れる冷媒との間で熱交換を行う。冷媒回路は、さらに回避手段を備える。回避手段は、満液式蒸発器1Aから排出された冷媒を第1伝熱管41を回避してレシーバ7に流入させる。
【0047】
以上のような構成によって、本実施形態の製氷システムAは、製氷運転を行っているときに、過熱器6によって製氷機1から排出される冷媒に過熱度を付与することができ、満液式蒸発器1Aから排出される冷媒の湿り状態も適切に制御することができる。
また、解氷運転を行う場合には、製氷機1を通過した高温の液冷媒が過熱器6の第1伝 熱管41を通過することなくレシーバ7に流入するので、このレシーバ7に気液二相冷媒が流入することがなく、レシーバ7内において液冷媒の割合が低下するのを抑制し、十分な冷媒量を熱源側熱交換器3に流入させることができる。
【0048】
また、回避手段は、バイパス経路Bと冷媒流制御部51,52とを備える。バイパス経路Bは、第1冷媒経路R1において、第1伝熱管41と利用側膨張弁5との間の第1位置A1と、第1伝熱管41とレシーバ7との間の第2位置A2とをバイパスする。冷媒流制御部51,52は、製氷運転では、第1位置A1と第2位置A2との間においてバイパス経路Bの冷媒の流れを阻止し、かつ、解氷運転では、第1位置A1と第2位置A2との間において第1冷媒経路における冷媒の流れを阻止する。
このような構成によって、満液式蒸発器1Aから排出された冷媒をバイパス経路に流し、当該冷媒が過熱器6で加熱されるのを抑制することができる。
【0049】
また、第1の実施形態の製氷システムAは、冷媒流制御部が、バイパス経路Bにおいて第1位置A1から第2位置A2への冷媒の流れを許容しその逆の冷媒の流れを阻止する第1逆止弁51と、第1冷媒経路R1において第2位置A2から第1位置A1への冷媒の流れを許容しその逆の冷媒の流れを阻止する第2逆止弁52とを含むので、解氷運転の際に、製氷機1から排出された液冷媒が過熱器6の第1伝熱管41へ流入するのを抑制するための構成を簡素化することができる。
【0050】
[その他の変形例]
本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、上記第1の実施形態では、第2逆止弁52が、第1冷媒経路R1における第2位置A2と過熱器6(第1伝熱管41)との間に設けられていたが、過熱器6(第1伝熱管41)と第1位置A1との間に設けられていてもよい。また、第1、第2逆止弁51,52に代えて、それぞれ制御装置50によって開閉制御される電磁弁等の開閉弁を設けてもよい。
【0051】
前述した実施形態では、製氷機の満液式蒸発器として二重管式のものが用いられていたが、例えば、冷媒が流れる外管の内部に、被冷却媒体が流れる複数の内管を備えた構成であってもよい。また、上記実施形態では、製氷機が1台であったが、複数台の製氷機を直列に接続したものであってもよい。また、上記実施形態では、圧縮機が1台であったが、複数台の圧縮機を並列に接続してもよい。