(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から3に開示されているように、植物の苗夫々の良/不良を判定するためには、苗を異なる方向からの撮像、苗を動かしながらの撮像等、特別な方法での撮像が必要になる。また、パターンマッチング等、より複雑な画像解析を行ない、高精度で判別する試みがなされている。
【0006】
養液の補給、光源等を考慮すると、効率化するために複数の植物を平面的に並べて栽培するケースが多い。したがって、1つの株の中でも俯瞰画像又は側面画像内でも葉が重なって写っている場合、又は異なる株の葉が重なって写っている場合があり、複雑な画像解析を行なっても判別は困難な実情がある。1つずつ撮像するためには特許文献1に開示されているように1株だけ高さを変えたり回転させたりする機構が特別に必要になり、コストを要する。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、簡易な方法で苗選別のための検査を行なう検査装置、移植装置、検査方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る検査装置は、植物の苗を撮像した撮像画像に基づいて前記苗の状態を検査する検査装置において、前記撮像画像における前記苗の葉の部分の輪郭の外接円を特定する特定部と、該特定部により特定された外接円のサイズに基づき指標値を算出する算出部と、該算出部によって算出した指標値に基づき、前記苗の良/不良を判定する判定部とを備える。
【0009】
本開示に係る検査装置は、前記算出部は、前記葉の部分に相当する領域の面積又は前記葉の部分に相当する領域の周囲長と、前記外接円のサイズとを用いて指標値を算出する。
【0010】
本開示に係る検査装置は、前記算出部は、前記葉の部分の内、前記苗の茎部分を中心とし、前記外接円の半径よりも短い半径とする円形内の部分を除外して残る複数の部分間の面積比に基づき指標値を算出する。
【0011】
本開示に係る検査装置は、前記撮像画像は、前記植物の複数株の苗を上方から撮像した画像であり、前記特定部は、前記撮像画像に写っている苗の葉の部分に相当する領域を株毎に特定し、前記算出部は株毎に指標値を算出する。
【0012】
本開示に係る移植装置は、植物の複数株の苗が植えられている培地を撮像する撮像部と、該撮像部にて撮像された撮像画像に基づき検査を行なう前記に記載の検査装置と、該検査装置における検査結果に基づき、前記培地から、前記複数株の苗を他の栽培パネルへ移植する移植部とを備え、前記移植部は、前記検査結果にて不良と判定された苗が植えられている苗床部を、前記培地から取り除く除去部を備える。
【0013】
本開示に係る検査方法は、植物の苗を撮像した撮像画像に基づいて前記苗の状態を検査する検査方法において、前記撮像画像における前記苗の葉の部分の輪郭の外接円を特定するステップ、特定された外接円のサイズに基づき指標値を算出するステップ、及び算出された指標値に基づき、前記苗の良/不良を判定するステップを含む。
【0014】
本開示に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、植物の苗を撮像した撮像画像を取得するステップ、前記撮像画像における前記苗の葉の部分の輪郭の外接円を特定するステップ、特定された外接円のサイズに基づき指標値を算出するステップ、及び算出された指標値に基づき、前記苗の良/不良を判定するステップを実行させる。
【0015】
本開示の一態様では、苗を撮像した撮像画像における苗の葉の部分の輪郭の外接円が特定され、外接円のサイズに基づいて良/不良の判定に用いられる指標値が算出される。個の構成により、外接円を特定するという比較的簡易な方法で得られる定量的な情報に基づいて良/不良の判定が可能である。
【0016】
本開示の一態様では、外接円のサイズに加えて葉の部分に相当する領域の面積、又は葉の部分の領域の周囲長を加味して指標値が算出される。より緑化が十分に進んで葉の部分として認識され、且つ、十分に拡がった葉であることを示す面積、及び周囲長を用いて総合的に判定し、複雑な画像処理を行なわずとも精度を維持して判定することが可能になる。
【0017】
本開示の一態様では、1株の苗における複数の葉どうしの葉の大きさ及び拡がりのバランスから良/不良が判定される。良好に生育している苗は、複数の葉がバランスよく拡がっていることから、複雑な画像処理を行なわずとも精度を維持して判定することが可能になる。
【0018】
本開示の一態様では、複数の苗が植えられた状態を撮像した撮像画像から各苗について良/不良が判定される。苗を1株ずつ撮像することなく、複数の苗をまとめて撮像した撮像画像から、複数の苗夫々の状態を検査することが可能である。
【発明の効果】
【0019】
本開示の検査装置による場合、苗を撮像した撮像画像から簡易な方法で苗選別のための検査を行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、検査装置1の構成を示すブロック図である。検査装置1は、制御部10、記憶部11、撮像部12、表示部13、及び操作部14を備える。
【0023】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを用いる。制御部10は、記憶部11に記憶してある検査プログラム1Pに基づいた各処理を実行することによって汎用コンピュータを検査装置1として機能させる。
【0024】
記憶部11はフラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Disk)等の不揮発性記憶媒体を用いる。記憶部11には検査プログラム1Pが記憶されているほか、制御部10が処理の際に参照する情報を記憶する。
【0025】
撮像部12は、カメラモジュールを用いる。制御部10は、撮像部12へ静止画像の撮像を指示し、撮像部12で撮像された静止画像を取得することができる。撮像部12は撮像して得られる画像の画像データを記憶部11に記憶して出力することができる。
【0026】
表示部13は、液晶パネル又は有機ELディスプレイ等のディスプレイ装置を用いる。表示部13は、制御部10の制御により操作画面を含むモニタ画面を出力する。
【0027】
操作部14は、ユーザの操作を受け付けるインタフェースであり、物理ボタン、ディスプレイ内蔵のタッチパネルデバイス等を用いる。操作部14は、物理ボタンで操作を受け付けるか、又はタッチパネルにて表示部13で表示している操作画面上で操作を受け付ける。
【0028】
このように構成される検査装置1は、ウレタン製の矩形平板状の培地に植えられている複数の植物Pをその上方から撮像部12で撮像して得られる静止画像に基づき、植物P夫々の状態を検査する。
【0029】
図2は、検査装置1の外観の一例を示す模式図である。検査装置1は、筐体20、載置台21、及びフレーム22を備えている。載置台21には、検査対象の植物Pが複数収容されているパネルDが載置される。載置台21の周縁部の一箇所に立設されたL字状のフレーム22の先端部に、撮像部12が取り付けられており、載置台21全体を撮像範囲とするように設定されている。フレーム22には検査装置1の制御部10、記憶部11、表示部13、及び操作部14が収容された筐体20が取り付けられており、制御部10は撮像部12とケーブルを介して接続されている。表示部13及び操作部14は筐体20から露出するように収容されている。
【0030】
なお検査装置1の態様は
図2に示したものに限らず、例えばタブレット端末、スマートフォン等であってもよいし、カメラモジュールである撮像部12と検査装置1の他の構成部とは無線により通信可能に構成されており、検査装置1は撮像部12にて撮像された静止画像のデータを無線により取得して処理を行なってもよい。
【0031】
図3は、検査装置1の制御部10による検査処理の手順の一例を示すフローチャートである。制御部10は、検査プログラム1Pに基づき、操作部14にて例えば検査スタートの指示を受け付けた場合に、以下の処理を開始する。
【0032】
制御部10は、撮像部12へ撮像を指示し(ステップS101)、撮像部12から撮像画像を取得する(ステップS102)。制御部10は、取得した撮像画像を複数の部分画像に分別し(ステップS103)、分別後の複数の部分画像を一つずつ選択する(ステップS104)。
【0033】
制御部10は、選択された部分画像の画素値分布に基づいて苗を1株ずつ特定する(ステップS105)。ステップS105において制御部10は、葉の部分の画素を抽出する。具体的に制御部10は、部分画像の画素値を走査方向に順次参照し、所定の輝度、色味の画素を特定できた場合、特定した画素の周辺画素の画素値を参照して連続して葉の色として識別されるべき色の画素であるか否かを判定する。葉の色として識別されるべき色の画素であると判定された場合、制御部10はその画素を最初に特定した画素と同一群に属する画素であると判断する。部分画像に対応する縦横マトリックス状の二値(0(ゼロ)又は1)のマップを作成し、同一群に属する画素であると判断された画素に相当する値を「1」に設定し、他の画素を「0」として葉に対応する画素群の画像中の座標を特定する。その他、葉の部分の画素の抽出方法は、これに限らない。
【0034】
制御部10は、特定された苗に相当する領域(画素群)の面積を1株毎に特定する(ステップS106)。制御部10は、同一群に属する画素であるか否かを判定しながら画素数を計上することで面積を特定できる。制御部10は、抽出された葉の部分の画素群の輪郭の長さ(周囲長)を苗毎に特定する(ステップS107)。輪郭についても制御部10は、同一群に属する画素であるか否かを判定しながら輪郭に相当する画素の数を計上することで特定できる。
【0035】
制御部10は、1株の苗に相当する領域(画素群)の外接円を特定し(ステップS108)、その半径を算出する(ステップS109)。
【0036】
制御部10は、ステップS106で特定した面積、ステップS107で特定した周囲長、ステップS109で算出した外接円の半径を用いて指標値を株毎に算出する(ステップS110)。ステップS110において制御部10は例えば、面積、周囲長、及び半径を乗算して指標値を算出する。面積、周囲長及び半径に夫々重み係数を乗じてから乗算してもよい。
【0037】
制御部10は、ステップS110で算出した指標値、並びに、ステップS106で特定した面積、ステップS107で特定した周囲長、ステップS109で算出した外接円の半径が所定の条件を満たすか否かにより、各株に対して良/不良を判定する(ステップS111)。
【0038】
ステップS111における所定の条件とは例えば、指標値が第1の閾値以上であって、第1の閾値よりも大きい第2の閾値未満であり、且つ、半径が第3の閾値以上であって、第3の閾値よりも大きい第4の閾値未満である等である。指標値の算出方法に応じて条件は異なり、記憶部11に記憶されていればよい。指標値の算出方法及び所定の条件は、植物Pの種類に応じて異なるとよい。また良/不良の判定は、予め記憶してある第1から第4の閾値を用いた絶対評価ではなく、他の撮像画像、他の部分画像で算出された面積、周囲長、外接円半径等に対する標準偏差を利用した相対評価に基づいて行なってもよい。
【0039】
制御部10は、分別した複数の部分画像の全てについて検査処理を行なったか否かを判断し(ステップS112)、全てについて検査処理を行なっていないと判断された場合(S112:NO)、処理をステップS104へ戻す。
【0040】
全てについて検査処理を行なったと判断された場合(S112:YES)、制御部10は、判定結果を表示部13に表示させ(ステップS113)、1回の撮像に対する検査処理を終了する。ステップS113において制御部10は、表示部13に株夫々を識別する情報(パネルD内における位置、番号等)と共に判別結果を表示させるとよい。
【0041】
このようにして制御部10は、ステップS101の外接円の特定処理によって特定部として機能し、ステップS110の指標値の算出処理によって算出部として機能し、ステップS111の判定処理によって判定部として機能する。
【0042】
図4及び
図5は、検査処理の一例を示す模式図である。
図4は、撮像部12から得られる撮像画像を線図にて示している。
図5は、植物Pの苗に対して株毎に特定された外接円を太線で示し、算出された指標値を文字で示し、良/不良の判定結果を「G:良」及び「B:不良」の文字で示している。表示部13には、
図5に示すような判定結果を表示させてもよい。この場合、良/不良の判定結果は文字のみならず、色、網掛けの有無、又は点滅等の態様で表してもよい。
【0043】
図5に示すように、指標値は低過ぎる場合も高過ぎる場合もいずれも「不良」と判定されている。実施の形態1では上述したように、指標値が第1の閾値以上であって、第1の閾値よりも大きい第2の閾値未満である場合に「良」と判定されるからである。半径はより小さい場合は「不良」と判定されやすく、面積は広い程「良」と判定されやすく、周囲長は長すぎると「不良」と判定されやすい等、夫々指標値に影響させるとよい。特定された面積、周囲長、半径夫々に対する閾値を設けて判定してもよい。
【0044】
面積等による判定は従来も行なわれていたが、外接円を特定してその半径を指標値に加えることによって、簡易な方法で良/不良の判定が可能である。外接円を用いることで、より拡がっている葉を持つ株を良株として判定することが可能である。
【0045】
なお制御部10は、ステップS113において
図5に示した外接円を重畳させたパネルDの撮像画像を表示させるようにしてもよい。
【0046】
上述の処理に用いられる撮像画像は、
図2に示したようなフレーム22に、真上からの画角及び撮像範囲が固定されて取り付けられている撮像部12によって1回の撮像で取得される画像とした。しかしながらこれに限らず、斜め上方から撮像した撮像画像に対して処理を行なう構成としてもよい。例えば検査装置1がカメラモジュールを内蔵するタブレット端末であり、作業者が手動でタブレット端末を操作する場合には、固定された角度や撮像範囲での撮像は困難である。また、固定されていない又は可動式のフレーム22にて異なる撮像角度、例えば敢えて斜め上方からの2つ以上の異なる角度で撮像した撮像画像を用いてもよい。制御部10は、異なる角度で撮像した撮像画像夫々に対して
図3のフローチャートに示した処理を行ない、指標値の平均値を算出してこれを使用して良/不良を判定してもよい。制御部10は、一方の角度で撮像した撮像画像を用いて、他方の角度で撮像した撮像画像における葉夫々に対応する画素群を補正し、補正後の画素群に対して
図3のフローチャートに示した処理手順を行なうようにしてもよい。
【0047】
(実施の形態2)
実施の形態2の検査装置1の構成は、検査処理の詳細が異なる点以外のハードウェア構成は実施の形態1と同様であるので、共通する構成には実施の形態1と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
図6は、実施の形態2における制御部10による検査処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6のフローチャートに示す処理手順の内、実施の形態1の
図3のフローチャートに示した処理手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
実施の形態2において制御部10は、外接円の半径を算出した後、株の中心となる座標を特定する(ステップS121)。ステップS121における株の中心の特定は種々の方法が考えられるが例えば、制御部10は、2つの本葉の間の最も幅が狭い箇所を中心として特定してもよいし、株が植えられているパネルDの培地の孔を特定してこれを中心としてもよい。外接円の中心と同心としてもよい。
【0050】
制御部10は、特定された中心を同心とする円形状の株中心に相当するマスク画像を作成する(ステップS122)。マスク画像の半径は、ステップS109で算出した外接円の半径に対して所定の割合(例えば40%)の大きさとする。
【0051】
制御部10は、ステップS122で作成したマスク画像により、S105で特定した同一の株に相当する画素群を2つに分別し、分別された画素群間のバランスを算出する(ステップS123)。ステップS123において具体的に制御部10は、ステップS105で特定された一連の画素群の内、マスク画像と重複しない画素を抽出して、夫々連続する画素をグループ化する。制御部10は、グループ化された画素群の内、画素数が多い順に2つのグループを選択し、選択したグループ間の面積(画素数)比を算出する。これにより、2つの本葉の大きさのバランスに相当する数値を算出することができる。
【0052】
制御部10は、ステップS123で算出したバランスを加味して指標値を算出し(S110)、処理を次のステップへ進める。なお指標値の算出は例えば以下のように行なわれる。面積、半径、及び周囲長等は、撮像画像におけるピクセル単位、ミリ単位等任意の単位で表されてよい。
指標値=(面積×外接円の半径×バランス)
【0053】
図7は、実施の形態2における検査処理の一例を示す模式図である。
図7は、実施の形態1で示した
図4の撮像画像に対し、植物Pの株夫々に対して特定された外接円を太線で示し、マスク画像をハッチングにて示している。また
図7では、算出されたバランス及び指標値を文字で示し、良/不良の判定結果を「G:良」及び「B:不良」の文字で示している。
図5に示した例と比較すると、最左列の上の株は「不良」と判定され、最左列の下の株は「良」と判定され、最右列の下の株は「不良」と判定されている。バランスの良し悪しにより、2つの本葉に分かれて拡がっている株が良と判断される。
【0054】
実施の形態1及び2に示した判定方法は、指標値の算出方法及び指標値に対する所定の条件を調整することで簡易に、且つ、より精度よく良/不良を判定させることが可能になる。
【0055】
(実施の形態3)
実施の形態3では、検査装置1の機能を備える移植装置の例を挙げて説明する。
図8は、実施の形態3における移植装置3の模式的斜視図である。以下の説明では、
図8の矢符により示す上下、前後、及び左右を使用する。
【0056】
移植装置3は、移植部300及び検査部100を備える。移植部300は、栽培パネルTを保持するフレーム25、培地の収容部40を移送する移送部4、移植アーム50を駆動する移植アーム駆動部5、収容部40の移送及び移植アーム50の駆動を指示する移植制御部30(
図8では外箱を示す)を備える。
【0057】
フレーム25は、複数の支柱と、支柱間を連結する複数の横架材とから構成される。フレーム25の中央部の所定の高さに、ガイドフレームが前後及び左右方向に沿って架設されている。栽培パネルTは、ガイドフレームに取り付け及び取り外しが可能に固定されている。栽培パネルTについては詳細を後述する。
【0058】
移植アーム駆動部5は、栽培パネルTの下方にあって移植アーム50、支持台51、駆動部52、走行ガイド53及び左右方向ガイド54を備える。走行ガイド53はフレーム25の下部に前後方向に架設されている。走行ガイド53の架設位置は、栽培パネルTの下である。走行ガイド53には、支持台51が走行可能に取り付けられている。支持台51には駆動部52が設けられており、駆動部52には移植アーム50が取り付けられている。走行ガイド53は、左右方向ガイド54に沿って左右方向に動くことが可能に構成されている。これにより移植アーム50は、栽培パネルTの下方にて栽培パネルTの全ての孔T1の下部へ移動することが可能である。移植アーム50は、駆動部52の動作によって支持台51に対して上昇することが可能であり、移植アーム50の先端部に設けられている移植ハンド55は、栽培パネルTよりも低い初期位置と、栽培パネルTの孔T1を貫通して栽培パネルTよりも高い上昇位置との間で昇降可能である。
【0059】
なお移植アーム50には、除去部56が設けられている。除去部56は、移植アーム50の移植ハンド55が栽培パネルTよりも低い位置にある際に、移植ハンド55に掴持されていた苗床部を除去する機構である。
図9は、除去部56の一例を示す図である。
図9Aでは、除去部56は例えばエアノズルであって、移植アーム駆動部5を介して移植ハンド55が掴持を解除した状態にエアを吹きかけ、苗床部をフレーム25の下に設置された除去皿(図示せず)に飛ばしてもよい。
図9Bでは、除去部56は栽培パネルTと略同一高さに栽培パネルTに隣接するようにして、栽培パネルTと略平行に設けられたU字板状のハンドである。この場合、ハンドの内寸は栽培パネルTの孔T1の縮径部分と略同寸であって、移植アーム駆動部5は移植アーム50の移植ハンド55を除去部のハンドの位置に移動させ、上下に移動させて移植ハンド55に掴持されていた苗床部を除去するようにしてもよい。
【0060】
移送部4は、栽培パネルTの上方にあって、収容部40、左右方向ガイド41、及び前後方向ガイド42を備える。前後方向ガイド42は、栽培パネルTの上部中央後側の位置に、前後方向に架設されている。前後方向ガイド42には、左右方向に延びる左右方向ガイド41が取り付けられている。左右方向ガイド41の前面には、矩形枠状の収容部40の一長辺側が取り付けられている。これにより収容部40は、左右方向ガイド41が前後方向ガイド42における最前に位置する培地の受け渡し位置を基準として、左右方向ガイド41に沿って左右方向に移動し、更に左右方向ガイド41と共に前後方向ガイド42に沿って前後方向に移動することが可能である。
【0061】
移植装置3における培地から栽培パネルへの植物Pの移植について、
図10及び
図11を参照して概要を述べる。
図10は、植物の移植元の培地Bの一例を示す斜視図であり、
図11は、培地B、収容部40、栽培パネルT、及び移植アーム50を示す斜視図である。なお培地B、収容部40、栽培パネルT及び移植アーム50はあくまで例示であってこれに限定されない。
【0062】
培地Bは例えばウレタン製であって
図10に示すように矩形平板状をなす。培地Bは縦横各複数列に並ぶ複数の苗床部に区分されている。複数の苗床部は夫々、各辺の中央部で隣接する苗床部と連結部B2を介して連結している。培地Bの一面には、苗床部の夫々に、植物Pを育苗するための1つの孔B1が設けられている。
【0063】
収容部40は、矩形枠と縦横各複数列に並ぶ孔が設けられた底板とを有しており、培地Bが収まるようにしてある。収容部40の底板に設けられた孔の大きさ及び数は、使用される培地Bの苗床部の大きさ及び分割数に対応している。収容部40は、培地Bの種類に応じて交換可能にしてある。
【0064】
ホルダ401は、金属等の強度のある材料から形成され、縦横各複数列に並ぶ孔が設けられた板部の一面側に保持ピンを設けて構成されている。板部の孔は、培地Bの苗床部の大きさ及び分割数に対応している。保持ピンは、板部の孔の間に、培地Bの切れ目の苗床部の角部に相当する箇所に挿入される位置に設けられている。ホルダ401は、保持ピンを下に向けて、培地Bの上面からその切れ目に挿入させた状態で培地Bと共に収容部40に収容される。
【0065】
栽培パネルTは例えば発砲スチロール製であって矩形平板状をなす。栽培パネルTには、複数の孔T1が縦横に並べて設けられている。各孔T1は円形であって、パネルの一面側から約半分の深さに至るまではテーパ状に縮径されている。孔T1間の間隔は植物Pの種類に応じて生育に適した間隔となるように設計される。
【0066】
移植装置3により、培地Bから栽培パネルTへ植物Pが1株ずつ移植される工程について
図11を参照して説明する。作業者によって設置された培地Bはホルダ401と共に収容部40に収容され、収容部40が移植部300の制御によって栽培パネルTの上方を前後左右に移動する。移植アーム50の支持台51は、移植部300の制御により栽培パネルTの下方を前後左右に移動する。培地Bの苗床部が栽培パネルTにおける空き孔T1の真上の位置に存在するとき、移植部300は移植アーム50がその真下に位置するように支持台51を移動させる。続けて移植部300は、移植アーム50の先端部の移植ハンド55が上昇位置へ上昇するように駆動部52を動作させる。移植アーム50が移植ハンド55ごと、空いている孔T1及び収容部40の底板の孔を貫通し、移植ハンド55が培地Bへ到達する上昇位置へ上昇すると、移植ハンド55は培地Bの苗床部の1つを掴持する。このとき移植部300は移植アーム50を下降させる。移植ハンド55に掴持された苗床部は、移植アーム50と共に下降することによって連結部B2が破断され、更に下降して栽培パネルTの孔T1に入り、孔T1の縮径された部分で保持される。移植部300は、苗床部が孔T1に保持されたところで移植ハンド55による掴持を解除し、更に移植アーム50は下降して移植ハンド55は初期位置に戻る。このように、移植部300の指示によって収容部40、支持台51及び移植アーム50が前後左右及び上下に移動することで、培地Bの苗床部が栽培パネルTへ移植される。
【0067】
図12は、実施の形態3における移植装置3の内部構成を示すブロック図である。移植装置3を構成する移植部300は、移送部4及び移植アーム駆動部5と、これらを制御する移植制御部30とで構成されている。移植制御部30は、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller )である。移植制御部30は、マイクロプロセッサである制御部31と、フラッシュメモリ等を用いた記憶部32と、通信部33と、移送部4及び移植アーム駆動部5と接続される入出力インタフェース34とを備える。
【0068】
制御部31は、記憶部32に予め記憶されてある移植プログラム3Pに基づき、移送部4へ収容部40の移動及び停止を指示する。更に制御部31は、移植アーム駆動部5へ移植アーム50の支持台51の前後左右移動及び停止、及び移植アーム50の上下駆動を指示する。
【0069】
記憶部32には、上述の移植プログラム3Pが記憶されている。移植プログラム3Pには、移植装置3に載置される栽培パネルTの孔T1の数及び大きさ、並びに収容部40に収容される培地Bの苗床部の分割数に応じた移植手順が組み込まれている。例えば1つの培地Bから3枚等の複数の栽培パネルTへの移植手順が組み込まれている。
【0070】
移植プログラム3Pは、制御部31による制御を実行させるプログラムである。移植プログラム3Pは記憶部32に予め記憶されているか、又は制御部31に組み込まれる。移植プログラム3Pは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体37に記録されている態様でもよい。記憶部32は、図示しない読出装置によって記録媒体37から読み出された移植プログラム38を記憶する。記録媒体37は、CD−ROM、DVD−ROM、BD等の光ディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、半導体メモリ等である。また図示しない公衆通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから移植プログラム38をダウンロードし、記憶部32に記憶させてもよい。
【0071】
通信部33は、Bluetooth (登録商標)若しくはWi-Fi 等の近距離無線通信により通信を実現する通信モジュールである。通信部33は無線に限らず、LAN、USBケーブル等を用いた有線による通信を実現するものであってもよい。制御部31は、通信部33により検査部100から送信される検査結果を受信することが可能である。
【0072】
移植装置3を構成する検査部100は、実施の形態1又は2に示した検査装置1と同様に、制御部10、記憶部11、撮像部12、表示部13、操作部14及び通信部15を備える。記憶部11、撮像部12、表示部13及び操作部14の構成は、実施の形態1における検査装置1の内部構成と同様であるので同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0073】
検査部100の通信部15は、移植部300の通信部33と対応する通信を実現する通信モジュールである。通信部15は、通信部33へ向けて情報を送信することができれば通信規格、有線又は無線は問わない。
【0074】
検査部100の制御部10は、記憶部11に記憶されている検査プログラム1Pに基づいて実施の形態1又は2で説明した検査処理を実行する。制御部10は、検査によって得られる良/不良の判定結果を、培地Bに植えられている複数の植物の株を夫々識別する識別情報(番号)と対応付けて、通信部15から移植制御部30へ送信する。
【0075】
このように構成される検査部100を備えた移植装置3による植物Pの移植制御について詳細を説明する。
図13及び
図14は、実施の形態3における移植制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13に検査部100における処理手順を示す。移植制御の処理は、作業者が培地Bを収容部40内にホルダ401と共に収容させ、操作部14にて例えば検査スタートのボタンを押下した場合に開始される。なお以下に示す処理手順では、検査部100による処理として実施の形態1に示した検査処理を採用する。
図13のフローチャートにおける検査部100の処理手順の内、実施の形態1の
図3のフローチャートに示した処理手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0076】
制御部10は、ステップS102にて培地B全体を撮像した撮像画像を撮像部12から取得すると(S102)、培地Bに対する検査結果を示す検査情報を作成する(ステップS131)。
【0077】
制御部10は、ステップS103にて複数の部分画像に分別するが、12行25列で構成される培地Bに対しては例えば4行5列毎の部分画像に分別する(S103)。制御部10はステップS104において部分画像を端から順に1つずつ選択する(S104)。
【0078】
制御部10は、ステップS111における判定結果に基づき、ステップS131で作成した検査情報を更新する(ステップS132)。
図15は、検査情報の内容例を示す図である。検査情報は
図15に示すように、培地Bの苗床部の縦横の配列に対応する「良:1」又は「不良:0」の二値の行列で表されてもよいし、苗床部の培地B上の所定の順序(端からジグザグ状に進む順序)に対応付けた二値群であってもよい。
【0079】
制御部10は、ステップS112にて全部分画像を処理したと判断された場合(S112:YES)、全部分画像に基づいて更新された検査情報に基づき、移植を行なうべきか否かを判断する(ステップS133)。ステップS133において制御部10は、検査情報に含まれる各株についての判定結果に基づき、培地B全体で株が小さく、良と判定された株が所定の割合未満である場合には、育苗期間を延長して移植は待機と判断する。
【0080】
ステップS133にて移植を行なうべきと判断された場合(S133:YES)、制御部10は、検査情報を通信部15から移植制御部30へ送信し(ステップS134)、検査部100での処理を終了する。
【0081】
ステップS133にて移植を行なうべきでないと判断された場合(S133:NO)、制御部10は、表示部13に移植は待機して育苗を行なうべき旨のメッセージを表示させ(ステップS135)、検査部100での処理を終了する。
【0082】
次に、
図14にて移植制御部30における処理手順を示す。移植制御部30では、収容部40に収容されている培地Bの検査情報を通信部33により受信すると(ステップS301)、制御部31は、培地Bの苗床部を端から順に選択する(ステップS302)。制御部31は、選択した苗床部に対応する株の検査結果を検査情報から参照し(ステップS303)、良/不良を判断する(ステップS304)。
【0083】
制御部31は、良と判断された場合(S304:YES)、ステップS302で選択した苗床部に対応する移植先の栽培パネルTの孔T1を順に選択する(ステップS305)。制御部31は、選択した苗床部及び選択した孔T1夫々に対応する位置に収容部40及び移植アーム50を移動させるべく、移送部4及び移植アーム駆動部5へ移動を指示し(ステップS306)、移植アーム駆動部5へ移植を指示する(ステップS307)。
【0084】
制御部31は、培地Bの全ての苗床部を選択したか否かを判断し(ステップS308)、全ての苗床部を選択していないと判断した場合(S308:NO)、処理をステップS302へ戻す。
【0085】
ステップS304で不良と判断された場合(S304:NO)、制御部31は、選択した苗床部への収容部40及び移植アーム50の移動を移送部4及び移植アーム駆動部5へ指示する(ステップS309)。制御部31は、除去部での除去を移植アーム駆動部5へ指示し(ステップS310)、処理をステップS308へ進める。
【0086】
ステップS308にて全ての苗床部を選択したと判断された場合(S308:YES)、制御部31は、培地Bについての移植処理を終了する。
【0087】
これにより、検査部100による検査結果を用いた自動移植が実現される。不良と判定された株が収容されている苗床部は除去部で除去されながら、苗床部が培地Bから順次破断され、培地Bに苗床部を残すことなく自動移植を行なうことができる。なお制御部31は、途中で栽培パネルTの孔T1が全て埋まった場合、栽培パネルTの交換を促すメッセージを図示しない液晶パネルへ表示するか又は図示しないスピーカから警告音等を出力するとよい。交換を促すメッセージを、検査部100の表示部13にて表示させるように情報を通信部33から送信するようにしてもよい。
【0088】
なお、上述のように開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【解決手段】植物Pの苗を撮像した撮像画像に基づいて苗の状態を検査する検査装置において、撮像画像における苗の葉の部分の輪郭の外接円を特定する特定部と、特定部により特定された外接円のサイズに基づき指標値を算出する算出部と、算出部によって算出した指標値に基づき、苗の良/不良を判定する判定部とを備える検査装置。