(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機リチウム化合物の量に対する前記極性化合物の量の割合が、モル比で、1/15〜1/1である、請求項1又は2に記載の芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造方法及び上記芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造方法を用いたゴム組成物の製造方法について説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造方法(本発明の方法1)]
本発明の方法1は、
芳香族ビニルとジエンとの共重合体である、芳香族ビニル−ジエン共重合体であって、
芳香族ビニルに由来する繰り返し単位の含有量が、18質量%以上であり、
ジエンに由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造の割合が8モル%以下であり、1,4−トランス構造の割合が60モル%以下であり、1,4−シス構造の割合が40〜95モル%である、芳香族ビニル−ジエン共重合体を製造する、芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造方法であって、
有機リチウム化合物と、アルキルアルミニウムと、金属アルコラートと、水及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の極性化合物とを用いて調製された開始剤を用いて芳香族ビニル及びジエンを含むモノマーを共重合することで、上記芳香族ビニル−ジエン共重合体を製造する、芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造方法である。
【0012】
本発明の方法1は、有機リチウム化合物と、アルキルアルミニウムと、金属アルコラートと、水及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の極性化合物とを用いて調製された開始剤(特定開始剤)を用いるため、所望の効果が得られるものと考えらえる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと考えられる。
上述のとおり、本発明の方法1では、特定開始剤を用いてモノマーを共重合する。特定開始剤中の有機リチウム化合物、アルキルアルミニウム及び金属アルコラートはジエンの1,4−構造(トランス、シス)を安定化させる。さらに、特定開始剤中のアルキルアルミニウムと極性化合物との反応物は特にジエンの1,4−シス構造を安定化させる。その結果、本発明の方法1から得られる芳香族ビニル−ジエン共重合体は、1,4−構造の割合が高く、特に、比較的結晶化し難い1,4−シス構造の割合が高い。結果として、本発明の方法1を用いた場合、ガラス転移温度の低い芳香族ビニル−ジエン共重合体が得られるものと考えられる。
なお、特許文献1に記載の方法との主な違いは水及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の極性化合物を用いる点であり、本発明の方法1によれば、容易にガラス転移温度の低い芳香族ビニル−ジエン共重合体を得ることができる。
【0013】
以下、本発明の方法1に用いられる各成分について詳述する。
【0014】
〔特定開始剤〕
上述のとおり、本発明の方法1では、有機リチウム化合物と、アルキルアルミニウムと、金属アルコラートと、水及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の極性化合物とを用いて調製された開始剤(特定開始剤)を用いてモノマーを共重合する。
【0015】
特定開始剤は、ガラス転移温度がより低くなり、また、ゴム製品(例えば、タイヤ)にしたときに耐摩耗性、氷上性能、機械的特性、WET性能、低燃費性能、耐熱性、耐寒性、耐劣化性、耐汚染性、耐光性及び操縦安定性に優れる理由から、さらに芳香族ジビニルを用いたものであることが好ましい。すなわち、有機リチウム化合物と、アルキルアルミニウムと、金属アルコラートと、水及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の極性化合物と、芳香族ジビニルとを用いて調製されたものであることが好ましい。
以下、「ガラス転移温度がより低くなり、また、ゴム製品(例えば、タイヤ)にしたときに耐摩耗性、氷上性能、機械的特性、WET性能、低燃費性能、耐熱性、耐寒性、耐劣化性、耐汚染性、耐光性及び操縦安定性に優れる」ことを「本発明の効果等がより優れる」とも言う。
【0016】
<有機リチウム化合物>
有機リチウム化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム(n−BuLi)、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4−ジリチオブタン、1,5−ジリチオペンタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,10−ジリチオデカン、1,1−ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。特に、本発明の効果等がより優れる理由から、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましい。
【0017】
特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物の量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、重合するモノマーに対して、0.001〜10モル%であることが好ましい。
【0018】
<アルキルアルミニウム>
アルキルアルミニウムは、アルミニウム原子(Al)にアルキル基(鎖状、分岐状、環状)が結合した化合物であれば特に制限されない。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1〜20であることが好ましく、5〜10であることがより好ましい。アルキルアルミニウムの具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ペンチルジエチルアルミニウム、2−メチルペンチル−ジエチルアルミニウム、ジシクロヘキシルエチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリ(2,2,4−トリメチルペンチル)アルミニウム、トリドデシルアルミニウム、トリ(2−メチルペンチル)アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライドなどが挙げられ、なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、トリオクチルアルミニウムが好ましい。
【0019】
特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対するアルキルアルミニウムの割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.1〜50モル当量であることが好ましく、0.5〜10モル当量であることがより好ましい。ここで1モル当量とは、有機リチウム化合物を1モル用いた場合に、アルキルアルミニウムを1モル添加するときの量を示している。つまり、特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対するアルキルアルミニウムの割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、10〜5000モル%であることが好ましく、50〜1000モル%であることがより好ましい。
【0020】
<金属アルコラート>
金属アルコラート(金属アルコキシド)は、アルコールのヒドロキシ基の水素を金属で置換した化合物であれば特に制限されない。
上記金属としては特に制限されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属(3〜11族の金属)、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモンなどが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、アルカリ土類金属が好ましく、バリウムであることがより好ましい。
上記アルコールは、鎖状、分岐状または環状の炭化水素の水素原子をヒドロキシ基で置換した化合物であれば特に制限されない。アルコールの炭素数は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
【0021】
金属アルコラートは、本発明の効果等がより優れる理由から、バリウムアルコラート(バリウムアルコキシド)であることが好ましい。バリウムアルコキシドとしては、例えば、バリウムジメトキシド、バリウムジエトキシド、バリウムジプロポキシド、バリウムジブトキシド、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)などが挙げられる。
【0022】
特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する金属アルコラートの割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.01〜5モル当量であることが好ましく、0.1〜3モル当量であることがより好ましい。ここで1モル当量とは、有機リチウム化合物を1モル用いた場合に、金属アルコラートを1モル添加するときの量を示している。つまり、特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する金属アルコラートの割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1〜500モル%であることが好ましく、10〜300モル%であることがより好ましい。
【0023】
<極性化合物>
上述のとおり、本発明の方法1では、特定開始剤の調製に、水及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の極性化合物が使用される。
上記アルコールは、鎖状、分岐状または環状の炭化水素の水素原子をヒドロキシ基で置換した化合物であれば特に制限されない。アルコールの炭素数は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。
上記極性化合物は、本発明の効果等がより優れる理由から、水であることが好ましい。
【0024】
特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する上記極性化合物の割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、モル比で、1/100〜1/1であることが好ましく、1/50〜1/2であることがより好ましく、1/20〜1/4であることがさらに好ましく、1/14〜1/6であることが特に好ましい。
以下、「特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する上記極性化合物の割合(モル比)」を「極性化合物/Li」とも言う。
【0025】
また、特定開始剤の調製に使用されるアルキルアルミニウムに対する上記極性化合物の割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、モル比で、1/100〜1/0.1であることが好ましく、1/50〜1/0.2であることがより好ましく、1/20〜1/0.3であることがさらに好ましく、1/10〜1/0.5であることが特に好ましい。
以下、「特定開始剤の調製に使用されるアルキルアルミニウムに対する上記極性化合物の割合(モル比)」を「極性化合物/Al」とも言う。
【0026】
なお、上記極性化合物の代わりにアミン化合物を用いてもよい。
ここで、アミン化合物とはアミノ基(−NH
2、−NHR、−NR
2)を有する化合物を意図する。ここで、Rは置換基を表す。−NR
2の2つのRは同一であっても、異なっていてもよい。
上記置換基としては、1価の置換基であれば特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、シリル基、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1〜30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2〜30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2〜30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6〜18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0027】
また、上述したアルキルアルミニウムと極性化合物の代わりに、アルキルアルミノキサンを用いてもよい。
【0028】
<芳香族ジビニル>
芳香族ジビニルは、ビニル基を2つ有する芳香族化合物であれば特に制限されない。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0029】
特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する芳香族ジビニルの割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.1〜5モル当量であることが好ましく、0.3〜3モル当量であることがより好ましい。ここで1モル当量とは、有機リチウム化合物を1モル用いた場合に、芳香族ジビニルを1モル添加するときの量を示している。つまり、特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する芳香族ジビニルの割合は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、10〜500モル%であることが好ましく、30〜300モル%であることがより好ましい。
【0030】
<特定開始剤の調製方法>
特定開始剤の調製方法は特に制限されないが、上述した有機リチウム化合物、アルキルアルミニウム、金属アルコラート及び上記極性化合物等を、溶媒に溶解させる方法などが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、有機リチウム化合物と、アルキルアルミニウムと、金属アルコラートとを混合した後、上記極性化合物を添加するのが好ましい。
溶媒の種類は特に制限されず、例えば、有機溶剤などを使用することができるが、本発明の効果等がより優れる理由から、アルコール以外であることが好ましい。
【0031】
〔モノマー〕
本発明の方法1で用いられるモノマーは、芳香族ビニル及びジエンを含む。なお、本発明の方法1で用いられるモノマーは、芳香族ビニル及びジエンに加え、さらに別のモノマーを含んでいてもよい。
【0032】
<芳香族ビニル>
上記芳香族ビニルは特に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、およびジメチルアミノエチルスチレンなどを挙げることができる。これらの中でも、本発明の効果等がより優れる理由から、スチレン、α−メチルスチレン、および4−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。これらの芳香族ビニルは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
<ジエン>
上記ジエンは特に制限されないが、例えば、ブタジエン(例えば、1,3−ブタジエン)、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、1,3−ブタジエン、イソプレンであるのが好ましい。これらのジエンは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
<その他のモノマー>
上述のとおり、本発明の方法1で使用されるモノマーは、芳香族ビニル及びジエンに加え、さらに別のモノマーを共重合した共重合体であってもよい。そのようなモノマーとしては、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、および無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−へプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、および5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンなどを挙げることができる。
【0035】
次に、本発明の方法1によって得られる芳香族ビニル−ジエン共重合体(以下、「本発明の共重合体1」とも言う)の構造等について詳述する。
【0036】
〔モノマーの共重合〕
上述のとおり、本発明の方法1では、特定開始剤を用いて芳香族ビニル及びジエンを含むモノマーを共重合する。特定開始剤およびモノマーについては上述のとおりである。
【0037】
モノマーの共重合方法は特定に制限されないが、上述した特定開始剤を含有する有機溶媒溶液に上述したモノマーを加え、0〜120℃(好ましくは30〜100℃)の温度範囲で撹拌する方法などが挙げられる。
【0038】
重合を停止する方法は特に制限されないが、重合溶液にアルコール(特にメタノール)を添加する方法などが挙げられる。また、後述する本発明の方法2のように特定求電子剤を用いて重合を停止してもよい。
【0039】
〔芳香族ビニル含有量〕
本発明の共重合体1における、芳香族ビニルに由来する繰り返し単位の含有量(以下、「芳香族ビニル含有量」とも言う)は、18質量%以上である。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、90質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
〔ジエン含有量〕
本発明の共重合体1における、ジエンに由来する繰り返し単位の含有量(以下、「ジエン含有量」とも言う)は、本発明の効果等がより優れる理由から、82質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。また、下限は、本発明の効果等がより優れる理由から、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。
【0041】
〔ミクロ構造〕
以下、本発明の共重合体1のミクロ構造について説明する。
<ビニル構造>
本発明の共重合体1において、ジエンに由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造の割合は8モル%以下である。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、7モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、4モル%以下であることが特に好ましい。下限は特に制限されず、0モル%である。
ここで、ビニル構造の割合とは、ジエンに由来する全繰り返し単位のうち、ビニル構造(例えば、ジエンが1,3−ブタジエンである場合は1,2−ビニル構造)を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0042】
<1,4−トランス構造>
本発明の共重合体1において、ジエンに由来する繰り返し単位のうち、1,4−トランス構造の割合は60モル%以下である。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることがさらに好ましい。
ここで、1,4−トランス構造の割合とは、ジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4−トランス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0043】
<1,4−シス構造>
本発明の共重合体において、ジエンに由来する繰り返し単位のうち、1,4−シス構造の割合は40〜95モル%である。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、65モル%以上であることがさらに好ましく、70モル%以上であることがよりさらに好ましく、75モル%以上が特に好ましく、80モル%以上が最も好ましい。1,4−シス構造の割合の上限は、本発明の効果がより優れる理由から、90モル%以下であることが好ましい。
ここで、1,4−シス構造の割合とは、ジエンに由来する全繰り返し単位のうち、1,4−シス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0044】
なお、以下、ジエンに由来する繰り返し単位のうち「ビニル構造の割合(モル%)、1,4−トランス構造の割合(モル%)、1,4−シス構造の割合(モル%)」を「ビニル/トランス/シス」とも表す。
【0045】
〔ガラス転移温度〕
本発明の共重合体1のガラス転移温度(Tg)は、本発明の効果等がより優れる理由から、−80℃以下であることが好ましい。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、−85℃以下であることが好ましく、−90℃以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、−100℃以上であることが好ましい。
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものとする。
【0046】
〔分子量〕
本発明の共重合体1の分子量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、重量平均分子量(Mw)で1,000〜10,000,000であることが好ましく、2,000〜5,000,000であることがより好ましく、3,000〜2,000,000であることがさらに好ましい。また、本発明の効果等がより優れる理由から、数平均分子量(Mn)で500〜5,000,000であることが好ましく、1,000〜2,500,000であることがより好ましく、1,500〜1,000,000であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:RI検出器
【0047】
[芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造方法(本発明の方法2)]
本発明の方法2は、
芳香族ビニルとジエンとの共重合体である、芳香族ビニル−ジエン共重合体であって、
芳香族ビニルに由来する繰り返し単位の含有量が、18質量%以上であり、
ジエンに由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造の割合が8モル%以下であり、1,4−トランス構造の割合が60モル%以下であり、1,4−シス構造の割合が40〜95モル%であり、
末端が、ハロゲン化チタン、ハロゲン化錫、環状シラザン、アルコキシシラン、エポキシド、アミン、ケトン及び下記式(N)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の求電子剤(以下、「特定求電子剤」とも言う)で変性された、芳香族ビニル−ジエン共重合体を製造する、芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造方法であって、
有機リチウム化合物と、アルキルアルミニウムと、金属アルコラートと、水及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の極性化合物とを用いて調製された開始剤を用いて芳香族ビニル及びジエンを含むモノマーを共重合し、
その後、上記求電子剤を用いて重合を停止することで、上記芳香族ビニル−ジエン共重合体を製造する、芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造方法である。
【0048】
本発明の方法2は、特定求電子剤を用いてモノマーの重合を停止する点以外、上述した本発明の方法1と同じである。
本発明の方法2によって得られる芳香族ビニル−ジエン共重合体(以下、「本発明の共重合体2」とも言う)の構造等(具体的には、芳香族ビニル含有量、ジエン含有量、ミクロ構造、ガラス転移温度及び分子量)は、末端が特定求電子剤で変性されている点以外、上述した本発明の共重合体1と同じである。
本発明の共重合体2は、末端が特定求電子剤で変性されているため、末端が充填剤と相互作用し、ゴム製品(例えば、タイヤ)に耐摩耗性、氷上性能、機械的特性、WET性能、低燃費性能、耐熱性、耐寒性、耐劣化性、耐汚染性、耐光性及び操縦安定性に優れる。
なお、特定求電子剤がハロゲン化チタン、ハロゲン化錫または後述する式(N)で表される化合物である場合、本発明の共重合体2の末端はカーボンブラックと相互作用すると推測され、特定求電子剤が環状シラザン、アルコキシシランまたはアミンである場合、本発明の共重合体2の末端はシリカと相互作用すると推測され、特定求電子剤がエポキシドまたはケトンである場合、本発明の共重合体2の末端はシリカまたはカーボンブラックと相互作用すると推測される。
本発明の効果等がより優れる理由から、特定求電子剤は、環状シラザン、アルコキシシラン、又は、後述する式(N)で表される化合物であることが好ましく、環状シラザンであることがより好ましい。
【0049】
〔特定求電子剤〕
以下、各特定求電子剤について説明する。
【0050】
<ハロゲン化チタン>
ハロゲン化チタンは特に制限されないが、例えば、TiCl
3、TiBr
3、Ti(OC
2H
5)Cl
2、Ti(OC
4H
9)Cl
2、TiCl
4、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(OC
4H
9)Cl
3等が挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、TiCl
3(トリクロロチタン)、TiCl
4(テトラクロロチタン)が好ましく、テトラクロロチタンがより好ましい。
【0051】
<ハロゲン化錫>
ハロゲン化錫は特に制限されないが、例えば、フッ化錫、塩化錫、臭化錫、ヨウ化錫、アスタチン化錫などが挙げられる。
【0052】
<環状シラザン>
環状シラザンは環状のシラザンであれば特に制限されない。
ここで、シラザンとは、ケイ素原子と窒素原子とが直接結合した構造を有する化合物(Si−N結合を有する化合物)を意図する。
環状シラザンは、本発明の効果等がより優れる理由から、下記式(S)で表される化合物であることが好ましい。
【0054】
上記式(S)中、R
1〜R
3は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基の具体例は、後述する式(P)中のRと同じである。
R
1は、本発明の効果等がより優れる理由から、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アルキルシリル基(好ましくは、炭素数1〜10)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6〜18)であることが好ましい。
R
2は、本発明の効果等がより優れる理由から、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10)であることが好ましい。
上記式(S)中、Lは、2価の有機基を表す。
2価の有機基としては、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基。好ましくは炭素数1〜8)、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基(例えば、アリーレン基。好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−SO
2−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基(−C
mH
2mO−:mは正の整数)、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
Lは、本発明の効果等がより優れる理由から、アルキレン基(好ましくは、炭素数1〜10)であることが好ましい。
【0055】
上記式(S)で表される化合物としては、例えば、N−n−ブチル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン、N−フェニル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン、N−トリメチルシリル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン、N−トリメチルシリル−1,1−ジエトキシ−2−アザシラシクロペンタンなどが挙げられる。
なお、環状シラザンのケイ素原子は求電子性を示すと考えられる。
【0056】
<アルコキシシラン>
アルコキシシランは、アルコキシシリル基を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビストリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビストリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
アルコキシシリル基中のアルコキシ基の数は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、2個以上であることが好ましい。
なお、アルコキシシランのケイ素原子は求電子性を示すものと考えられる。
【0057】
<エポキシド>
エポキシドは、オキサシクロプロパン(オキシラン)構造を有する化合物であれば特に制限されない。
エポキシドの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、1−フェニルプロピレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグルシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、1−メトキシ−2−メチルプロピレンオキシド、アリルグリシジルエーテル、2−エチルオキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ラウリルアルコールグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、パルミチルグリシジルエーテル、ミリスチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、カプリルグリシジルエーテルおよびカプロイルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0058】
<アミン>
アミンは、アミノ基(−NR
2:Rは水素原子又は炭化水素基を表す。2つのRは同一であっても異なっていてもよい。)を有する化合物であれば特に制限されない。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、アジリジンであることが好ましい。アジリジンとしては、例えば、N−メチルアジリジン、N−エチルアジリジン、N−イソプロピルアジリジン、N−フェニルアジリジン、N−(4−メチルフェニル)アジリジン、N−メチル−2−メチルアジリジンなどが挙げられる。
【0059】
<ケトン>
ケトンは、ケトン基(−CO−)を有する化合物であれば特に制限されない。
ケトンの具体的としては、アセトン、ベンゾフェノン、および、これらの誘導体などが挙げられる。
ベンゾフェノンの誘導体としては、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラエチル(4,4’−ジアミノ)−ベンゾフェノン、N,N−ジメチル−1−アミノベンゾキノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノベンゾキノン、N,N−ジメチル−1−アミノアントラキノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノアントラキノン、4,4’−ジアセチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0060】
<式(N)で表される化合物>
以下、下記式(N)で表される化合物について説明する。
【0062】
上記式(N)中、R
1は水素原子またはアルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)を表し、R
2はアルキレン基(好ましくは、炭素数2〜10)を表す。
【0063】
上記式(N)で表される化合物の具体例としては、N−メチルピロリドン(上記式(N)中、R
1がメチル基、R
2がプロピレン基)などが挙げられる。
【0064】
特定開始剤に対する特定求電子剤の量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、有機リチウム化合物に対する特定求電子剤の割合(特定求電子剤/有機リチウム化合物)はモル比で、0.1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
本発明の効果等がより優れる理由から、アルキルアルミニウム(アルキルAl)に対する特定求電子剤の割合(特定求電子剤/アルキルAl)はモル比で、0.1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
本発明の効果等がより優れる理由から、金属アルコラートに対する特定求電子剤の割合(特定求電子剤/金属アルコラート)はモル比で、0.1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
【0065】
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物の製造方法は、上述した本発明の方法1又は本発明の方法2(以下、まとめて「本発明の方法」とも言う)を用いて、上述した本発明の共重合体1又は本発明の重合体2(以下、まとめて「本発明の共重合体」とも言う)を製造する共重合体製造工程と、
得られた本発明の共重合体と充填剤とを混合することでゴム組成物を得る混合工程とを備える、ゴム組成物の製造方法である。
【0066】
〔共重合体製造工程〕
共重合体製造工程(本発明の方法1又は本発明の方法2)については上述のとおりである。
【0067】
〔混合工程〕
混合工程は共重合体製造工程によって得られた本発明の共重合体と充填剤とを混合することでゴム組成物を得る工程である。
【0068】
<充填剤>
混合工程で使用される充填剤は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、カーボン及び/又はシリカであることが好ましい。
【0069】
上記混合工程では、本発明の共重合体及び充填剤以外の成分を混合してもよい。
そのような成分としては、シランカップリング剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、接着用樹脂、素練り促進剤、老化防止剤、ワックス、加工助剤、アロマオイル、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤が挙げられる。
また、上記ゴム組成物は本発明の重合体以外のゴム成分を含有していてもよい。そのようなゴム成分としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、本発明の重合体以外のスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
【0070】
[用途]
上述した本発明の共重合体及び上述した本発明のゴム組成物の製造方法によって得られるゴム組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、タイヤ、コンベヤベルト、ホースなどのゴム製品に広く使用することができる。なかでも、タイヤに使用するのが好ましい。
【0071】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明の組成物を用いて製造された空気入りタイヤである。なかでも、本発明の組成物をタイヤトレッド(キャップトレッド)に用いた(配置した)空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表す空気入りタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0072】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
【0073】
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、空気入りタイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
〔芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造〕
以下のとおり、芳香族ビニル−ジエン共重合体を製造した。
【0076】
<比較例1:SBR>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),18mL,28.8mmol)、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)(Ba(OCH
2CH(C
2H
5)CH
2CH
2CH
2CH
3)
2)(STREM製:1M(トルエン/ヘキサン溶液)7.5mL)、トリオクチルアルミニウム(Aldrich製:25wt%(ヘキサン溶液),45mL)及びシクロヘキサン(関東化学製:10mL)を混合して、開始剤溶液(上述した特定開始剤に該当しない)を調製した。
得られた開始剤溶液のうち、60mLを、1,3−ブタジエン(708g,13098mmol)とスチレン(380g,3649mmol)との混合物のシクロヘキサン(4.23kg)溶液に加えて、60℃で14時間攪拌した。室温に冷却後、メタノール(関東化学製:3.44g)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)を得た。
【0077】
<実施例1:SBR>
n−BuLi(関東化学製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),18mL,28.8mmol)、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)(Ba(OCH
2CH(C
2H
5)CH
2CH
2CH
2CH
3)
2)(STREM製:1M(トルエン/ヘキサン溶液)7.5mL)、トリオクチルアルミニウム(Aldrich製:25wt%(ヘキサン溶液),45mL)及びシクロヘキサン(関東化学製:10mL)を混合し、さらに、極性化合物として0.035mLの水(n−BuLiの量に対する水の添加量の割合(モル比):1/15)を添加して、開始剤溶液(上述した特定開始剤に該当)を調製した。
得られた開始剤溶液のうち、60mLを、1,3−ブタジエン(708g,13098mmol)とスチレン(380g,3649mmol)との混合物のシクロヘキサン(4.24kg)溶液に加えて、60℃で14時間攪拌した。室温に冷却後、メタノール(関東化学製:3.58g)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)を得た。
【0078】
<実施例2:SBR>
n−BuLiの量に対する水の添加量の割合(モル比)を1/15から1/12に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、SBRを得た。
【0079】
<実施例3:SBR>
n−BuLiの量に対する水の添加量の割合(モル比)を1/15から1/5に変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、SBRを得た。
【0080】
<実施例4:ハロゲン化チタン末端変性SBR>
メタノールの代わりにテトラクロロチタン(Aldrich製:14.7g)を投入して重合を停止した以外は、実施例2と同様の手順に従ってSBRを得た。得られたSBRは、末端がハロゲン化チタンで変性されたスチレン−ブタジエン共重合体(ハロゲン化チタン末端変性SBR)であった。
【0081】
<実施例5:ハロゲン化錫末端変性SBR>
メタノールの代わりに塩化スズ(SnCl
4)(関東化学製:18.9g)を投入して重合を停止した以外は、実施例2と同様の手順に従ってSBRを得た。得られたSBRは、末端がハロゲン化錫で変性されたスチレン−ブタジエン共重合体(ハロゲン化錫末端変性SBR)であった。
【0082】
<実施例6:環状シラザン末端変性SBR>
メタノールの代わりにN−トリメチルシリル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン(以下構造)(17.0g)およびリチウムジイソプロピルアミド(アルドリッチ製(2M溶液):11mL)のシクロヘキサン(10mL)混合溶液を投入して重合を停止した以外は、実施例2と同様の手順に従ってSBRを得た。得られたSBRは、末端が環状シラザンで変性されたスチレン−ブタジエン共重合体(環状シラザン末端変性SBR)であった。
【0083】
【化3】
【0084】
<実施例7:アルコキシシラン末端変性SBR>
メタノールの代わりにN,N−ビストリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(22.2g)及びリチウムジイソプロピルアミド(アルドリッチ製(2M溶液):11mL)のシクロヘキサン(10mL)混合溶液を投入して重合を停止した以外は、実施例2と同様の手順に従ってSBRを得た。得られたSBRは、末端がアルコキシシランで変性されたスチレン−ブタジエン共重合体(アルコキシシラン末端変性SBR)であった。
【0085】
<実施例8:N−メチルピロリドン末端変性SBR>
メタノールの代わりにN−メチルピロリドン(8.48g)を投入して重合を停止した以外は、実施例2と同様の手順に従ってSBRを得た。得られたSBRは、末端がN−メチルピロリドンで変性されたスチレン−ブタジエン共重合体(N−メチルピロリドン末端変性SBR)あった。
【0086】
得られた芳香族ビニル−ジエン共重合体について、その芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量)、ビニル/トランス/シス、Tg及び分子量を下記表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1から分かるように、特定開始剤を用いた実施例1〜8は、1,4−シス構造の割合が高く、ガラス転移温度が低かった。なかでも、極性化合物/Liが1/14以上である実施例2〜8は、1,4−シス構造の割合がより高く、ガラス転移温度がより低かった。そのなかでも、極性化合物/Liが1/6以下である実施例2及び4〜8は、1,4−シス構造の割合がさらに高く、ガラス転移温度がさらに低かった。
ジエンに由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造の割合が8モル%以下であり、1,4−トランス構造の割合が60モル%以下であり、1,4−シス構造の割合が40〜95モル%である、芳香族ビニル−ジエン共重合体を製造する、芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造方法であって、
有機リチウム化合物とアルキルアルミニウムと金属アルコラートと水及びアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の極性化合物とを用いて調製された開始剤を用いて芳香族ビニル及びジエンを含むモノマーを共重合することで、上記芳香族ビニル−ジエン共重合体を製造する、芳香族ビニル−ジエン共重合体の製造方法。