特許第6614405号(P6614405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6614405-吐水装置 図000002
  • 特許6614405-吐水装置 図000003
  • 特許6614405-吐水装置 図000004
  • 特許6614405-吐水装置 図000005
  • 特許6614405-吐水装置 図000006
  • 特許6614405-吐水装置 図000007
  • 特許6614405-吐水装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614405
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/10 20060101AFI20191125BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   E03C1/10
   C02F1/461 A
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-198462(P2014-198462)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-69859(P2016-69859A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100123641
【弁理士】
【氏名又は名称】茜ヶ久保 公二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】黒石 正宏
【審査官】 舟木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−168235(JP,A)
【文献】 特開2007−301520(JP,A)
【文献】 特開平06−315685(JP,A)
【文献】 特開平07−313976(JP,A)
【文献】 特開2004−293207(JP,A)
【文献】 特開平06−079280(JP,A)
【文献】 特開2012−125715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/046、1/05、1/08−1/10
C02F 1/46−1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水を生成して吐水する吐水装置であって、
給水源から供給される水を吐水口に導く給水路と、
前記吐水口からの吐水を開始/停止させる吐水切替部と、
前記給水路の途中に設けられ、前記給水路内の水を、一対の電極を用いて電気分解することで前記電解水を生成する電解水生成部と、
使用者による操作を受け付ける操作部と、
前記操作部が受け付けた吐水操作に応じて、前記吐水口からの吐水及び前記電解水の生成を開始させる開始制御部と、
前記操作部が受け付けた止水操作に応じて、前記吐水口からの吐水及び前記電解水の生成を停止させる停止制御部と、を備え、
前記停止制御部は、前記吐水口からの吐水を停止させた後、前記電極の極性を反転させ、当該電極に対して、前記電解水を生成する際に前記電極に印加する第1の電圧よりもゼロに近い第2の電圧を印加し、
前記開始制御部は、前記吐水口からの吐水を開始させ、前記停止制御部により反転させられた前記電極の極性を維持したまま、当該電極に前記第1の電圧を印加する、
ことを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記停止制御部は、前記吐水口からの吐水を停止させた後、前記電極に前記第2の電圧を印加する前に、前記電解水生成部により生成された前記電解水を、前記給水源から供給される水に置換させる、ことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記開始制御部は、前記電極に前記第1の電圧を印加する前に、前記電解水生成部により生成された前記電解水を、前記給水源から供給される水に置換させる、ことを特徴とする請求項1又は2記載の吐水装置。
【請求項4】
前記開始制御部は、前記停止制御部により前記電極に前記第2の電圧が印加されているときに、前記吐水操作が受け付けられた場合に、前記第2の電圧の印加を解除させ、前記電解水生成部により生成された前記電解水を、前記給水源から供給される水に置換させてから、前記停止制御部により反転させられた前記電極の極性を維持したまま、当該電極に前記第1の電圧を印加する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項5】
前記開始制御部は、反転させられた前記電極の極性をゼロに対応する電位にて維持する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項6】
前記停止制御部は、前記第1の電圧の印加を停止する時点から前記電極に前記第2の電圧の印加を開始する時点までの時間の全体の一部である置換時間において、前記電解水生成部により生成された前記電解水を、前記置換時間に前記給水源から供給される水に置換させる、ことを特徴とする請求項2に記載の吐水装置。
【請求項7】
前記置換時間の開始時点は、前記第1の電圧の印加を停止する時点と同じ時点である、ことを特徴とする請求項6に記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水を生成して吐水する吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水等を電気分解することで電解水を生成して吐水する吐水装置が開発され、その普及が進められている。このような吐水装置では、電気分解に伴い、水道水等に含まれるカルシウム等から生成される炭酸カルシウム等が、いわゆるスケールとして陰極側の電極の表面に付着する。スケールは、電極の表面に付着すると電気的な抵抗となるため、想定した電流が流れなくなるという不具合や、スケールの小片が水道水中に混入してしまうという不具合の要因になる。このようなスケールを除去するために、電極の極性を入れ替えて、逆電圧を印加する逆電解洗浄が広く行われている。
【0003】
一方、逆電解洗浄では、pHが酸性とアルカリ性とに偏った状態で通常の電解時と同等の電圧を印加して極性を反転させるため、電極の消耗が進み、電極の寿命が低下するという問題がある。この問題に対処するために、下記特許文献1では、正電圧と逆電圧とを交互に切り替えながら印加して電解水を生成する吐水装置において、印加する正電圧と逆電圧とを切り替えるときに、まず、電極の極性を反転させ、電解水生成時の電圧よりも低い電圧を印加し、pHの偏りを緩和した直後に電解水生成時の電圧を印加することで、電極の腐食を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−108673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術を、使用者が任意のタイミングで使用する吐水装置に転用させることを検討したところ、電解水生成の直前に電解水生成時の電圧よりも低い電圧を印加する期間を設けるため、低電圧の印加により各電極周辺のpHを戻している間は電解水が吐水できなくなり、例えばキッチンなどで吐止水をこまめに繰り返すような使用環境では、吐水指示をしてから低電圧の期間を経て電解水生成を行うことで使用感が大きく損なわれることがわかった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用感を損なうことなく電極の劣化を抑制することができる、使用者が任意のタイミングで使用する吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る吐水装置は、電解水を生成して吐水する吐水装置であって、給水源から供給される水を吐水口に導く給水路と、前記吐水口からの吐水を開始/停止させる吐水切替部と、前記給水路の途中に設けられ、前記給水路内の水を、一対の電極を用いて電気分解することで前記電解水を生成する電解水生成部と、使用者による操作を受け付ける操作部と、前記操作部が受け付けた吐水操作に応じて、前記吐水口からの吐水及び前記電解水の生成を開始させる開始制御部と、前記操作部が受け付けた止水操作に応じて、前記吐水口からの吐水及び前記電解水の生成を停止させる停止制御部と、を備え、前記停止制御部は、前記吐水口からの吐水を停止させた後、前記電極の極性を反転させ、当該電極に対して、前記電解水を生成する際に前記電極に印加する第1の電圧よりもゼロに近い第2の電圧を印加し、前記開始制御部は、前記吐水口からの吐水を開始させ、前記停止制御部により反転させられた前記電極の極性を維持したまま、当該電極に前記第1の電圧を印加する、ことを特徴とする。
【0008】
電極の腐食は、各電極に印加する電圧と、各電極周辺に生成されたpHと、の関係によって腐食する領域と腐食しない領域とが分布しており、各電極周辺に生成されたpHが偏った状態を、次に電極に印加する電圧をもっても電極が腐食しない程度に緩和していれば電極の腐食を防ぐことができることに着目し、電極の腐食を防ぎつつ使用感を損なわないようにする方法を検討した。そして、止水時における電極極性を反転して行う第2の電圧の印加によって、電極の表面にスケールが付着することを抑制することができ、吐水開始時における電極極性を維持したまま行う第1の電圧の印加によって、長時間止水した後に吐水操作が行われた場合であっても、電極表面における触媒剥れを抑制し、電極の腐食、すなわち劣化を防止することができることを見出した。
【0009】
また、第2の電圧をかけるタイミングを止水後の不使用期間中にすることで、使用者の使用感を損なわないようにすることができる。さらに、第1の電圧を印加して電気分解を行う動作と第2の電圧を印加する動作とを分けることによって、吐水操作後にすぐに第1の電圧を印加する動作に移行することができるため、使用者の使用感を損なわないようにすることができる。
【0010】
上記停止制御部は、前記吐水口からの吐水を停止させた後、前記電極に前記第2の電圧を印加する前に、前記電解水生成部により生成された前記電解水を、前記給水源から供給される水に置換させる、ことが可能となっている。
【0011】
第1の電圧印加時に生成された全ての電解水を、第2の電圧を印加することで中性に戻そうとすると時間を要してしまう。そこで、止水後かつ第2の電圧印加前に、第1の電圧印加時に各電極周辺に生成されたpHが偏った水を、給水源から供給されるpHが中性の水に置換することで、各電極周辺のpHの偏りを短時間で緩和することができる。
【0012】
上記開始制御部は、前記電極に前記第1の電圧を印加する前に、前記電解水生成部により生成された前記電解水を、前記給水源から供給される水に置換させる、ことが可能となっている。低電圧を印加すると、僅かながら次亜塩素酸が生成される。次亜塩素酸の生成にはプロトン(H+イオン)が必要となるため、水溶液全体で見ればアルカリ性に偏りが生ずる。直前まで陰極だった電極側はアルカリ性に偏った状態になっており、その状態で電極を陽極にして電解水生成用の電圧を印加すると、電極が劣化してしまう。そこで、次回の吐水時に電解室内の水を置換してから逆電圧を印加して電気分解することで、アルカリ性に偏った水溶液を源水で置換してPHを戻してから電解水生成用の電圧を印加することができるため、電極の劣化を抑制することが可能となる。
【0013】
上記開始制御部は、前記停止制御部により前記電極に前記第2の電圧が印加されているときに、前記吐水操作が受け付けられた場合に、前記第2の電圧の印加を解除させ、前記電解水生成部により生成された前記電解水を、前記給水源から供給される水に置換させてから、前記停止制御部により反転させられた前記電極の極性を維持したまま、当該電極に前記第1の電圧を印加する、ことが可能となっている。
【0014】
これにより、第2の電圧印加中に吐水操作を受け付けた場合には、第2の電圧の印加を解除させ、残留電解水等のpHが偏った水を給水源から供給されるpHが中性の水に置換してから、電極の極性を変えずに第1の電圧を印加することができるため、吐水操作後の使用者の使用感を損なうことなく、さらに、電極の劣化を抑制することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スケールの発生を抑制しつつ、電極の劣化を防止することのできる吐水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る吐水装置が、キッチンに設置されている状態を示す図である。
図2図1に示す吐水装置の構成を模式的に示す図である。
図3図2に示す電解槽を例示する斜視模式図である。
図4図2に示す電解槽における電気分解を説明するための断面模式図である。
図5図2に示す吐水装置の動作の具体例を示すタイミングチャート図である。
図6図2に示す電解槽の一対の電極部材のうち、一方の電極部材がpHと電位との関係で腐食することとなる領域を例示する図である。
図7図2に示す電解槽の一対の電極部材のうち、他方の電極部材がpHと電位との関係で腐食することとなる領域を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る吐水装置が、キッチンのシンクSKに取り付けられた状態を、シンクSKの真上から見た図である。吐水装置WDは、二つのスパウト(吐水口;メインスパウト100、除菌用スパウト200)を備えており、これらが、シンクSKの上面のうち使用者から見て奥側の部分にそれぞれ立設している。使用者から見て右側に立設しているメインスパウト100は、一般的なスパウトと同様に、水道水(水道管から供給される水)を吐出する。メインスパウト100の側面には操作レバー101が配置されている。使用者が操作レバー101を回転させると、その回転角度に応じた流量の水道水が、メインスパウト100の先端からシンクSKに向けて吐出される。
【0019】
使用者から見て左側に立設している除菌用スパウト200は、電解水を吐出する。電解水とは、比較的高濃度の次亜塩素酸を含むことによって除菌性能が付与された水のことである。除菌用スパウト200から吐出された電解水を包丁やまな板等の表面にかけると、当該表面が除菌され、菌の増殖が抑制される。除菌用スパウト200からの電解水の吐出は、操作部300に対する使用者の操作に基づいて行われる。
【0020】
操作部300は、シンクSKの上面のうち、メインスパウト100と除菌用スパウト200との間の除菌用スパウト200近傍に配置されている。使用者によって操作部300が押されると、除菌用スパウト200から電解水が吐出する。その後、使用者によって操作部300が再度押されると、除菌用スパウト200からの電解水の吐出が止まる。
【0021】
吐水装置WDは、シンクSKの上面側に配置されたメインスパウト100、除菌用スパウト200、及び操作部300のほかに、除菌用スパウト200から吐出する電解水を生成するための機構や制御部等を更に備えており、これらがシンクSKの内部に収納されている。
【0022】
図2は、シンクSKの内部に収納されている部分も含めて、吐水装置WD全体の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、吐水装置WDは、外部の給水源(水道管や給湯機)から供給される水を各スパウトに導く配管として、給水配管110と、給湯配管120と、電解水用配管130とを備えている。なお、図2においては、一部の配管や切り換え弁の図示を省略している。
【0023】
給水配管110は、不図示の水道管とメインスパウト100とを繋ぐ配管である。また、給湯配管120は、不図示の給湯機とメインスパウト100とを繋ぐ配管である。給水配管110を通る水(冷水)と、給湯配管120を通る水(温水)とは、混合水栓であるメインスパウト100にそれぞれ供給され、設定温度となるように混合された後にメインスパウト100から吐出される。既に述べたように、メインスパウト100からの水の吐出は、使用者による操作レバー101の操作に基づいて行われる。
【0024】
電解水用配管130は、給水配管110の途中に配置された流路切替弁(吐水切替部)400と、除菌用スパウト200とを繋ぐ配管である。流路切替弁400によって、水道管からの水が給水配管110を通ってメインスパウト100に供給される状態と、水道管からの水が電解水用配管130を通って除菌用スパウト200に供給される状態とが切り替えられる構成となっている。
【0025】
流路切替弁400は、開閉弁としての機能を併せ持ち、操作部300が受け付けた操作内容に応じて、弁を開閉する。具体的に、使用者が操作部300に対し吐水操作を行った場合、流路切替弁400は弁を開弁し、使用者が操作部300に対し止水操作を行った場合に、流路切替弁400は弁を閉弁する。
【0026】
電解水用配管130の途中には、電解槽(電解水生成部)500が配置されている。電解槽500は、中空の容器であって、電解水用配管130と共に、除菌用スパウト200に繋がる流路の一部を構成するように配置されている。
【0027】
図3は、電解槽500を例示する斜視模式図である。図3(a)は、電解槽500の外観を例示する斜視模式図であり、図3(b)は、電解槽500の内部構造を例示する分解模式図である。
【0028】
電解槽500は、第1の蓋部材501と、第2の蓋部材502と、一対の電極としての電極板504及び505と、を有する。第1の蓋部材501は、給水源から供給された水を電解槽500の内部に流入させる流入部501aを有する。流入部501aは、図3(a)及び図3(b)に表すように、第1の蓋部材501の下部に設けられる。一方、第2の蓋部材502は、電解槽500の内部に流入した水を外部に流出させる流出部502aを有する。流出部502aは、図3(a)及び図3(b)に表すように、第2の蓋部材502の上部に設けられる。第1の蓋部材501及び第2の蓋部材502は、互いに液密に取り付けられ、流入部501aから流入した水が流出部502a以外から外部に流出することを防止できる。
【0029】
電極板504及び505は、第1の蓋部材501と、第2の蓋部材502と、の間に設けられ、図3(b)に表すように互いに対向して配置される。このとき、電極板504と、電極板505と、の間にはスペーサ507が設けられる。これにより、電極板504と、電極板505と、の間の距離は、略一定の距離に確保される。また、電極板504は、電極面から突出した接続端子504aを有する。この接続端子504aは、図3(a)に表すように、第1の蓋部材501を通して電解槽500の外部に導出される。図示していないが、これは、電極板505についても同様である。つまり、電極板505は、電極面から突出した図示しない接続端子を有し、その図示しない接続端子は、第2の蓋部材502を通して電解槽500の外部に導出される。
【0030】
給水源から流路切替弁400を介して電解槽500に供給される水は、図3(a)に表す矢印Aのように、第1の蓋部材501の流入部501aから電解槽500の内部に導かれる。続いて、流入部501aから電解槽500の内部に流入した水は、電極板504と、電極板505と、の間の空間(流路)を流れ、図3(a)に表す矢印Bのように、第2の蓋部材502の流出部502aから電解槽500の外部に排出される。この際、制御部600が電極板504及び505に電圧を印加している場合には、電極板504と、電極板505と、の間の空間を流れる水は電気分解される。この電気分解について、図面を参照しつつ、さらに詳細に説明する。
【0031】
図4は、電解槽500における電気分解を説明するための断面模式図である。電解槽500は、上述したように、その内部に電極板504及び505を有し、制御部600からの電圧印加制御によって、電極板504と、電極板505と、の間の空間を流れる水道水を電気分解する。この際、陰極側となる電極板では、式(1)に示す反応が起こる。
【0032】
++e- → 1/2H2↑ …(1)
【0033】
そのため、陰極側となる電極板においては酸(H+)が消費され、その電極板の近傍ではpHが上昇する。pHが上昇すると、炭酸イオン(CO32-)の溶解量が上昇する。pHの上昇に伴い、炭酸(H2CO3)が水素イオン(H+)を放出し炭酸イオン(CO32-)を生成し、式(2)に示す反応が起こる。そして、発生した炭酸イオン(CO32-)と水道水中に存在するカルシウムイオン(Ca2+)が結合し、式(3)に示す反応が起こる。つまり、pHの上昇が、炭酸カルシウム(CaCO3:スケール)生成(溶解度低下による析出)を引き起こす。
【0034】
2CO3 → 2H++CO32- …(2)
Ca2++CO32- → CaCO3 …(3)
【0035】
一方、陽極側となる電極板では、式(4)に示す反応が起こる。また、水道水は、塩素イオン(Cl-)を含んでいる。この塩素イオンは、水源(例えば、地下水や、ダムの水や、河川などの水)に食塩(NaCl)や塩化カルシウム(CaCl2)として含まれている。そのため、式(5)に示す反応が起こる。
【0036】
2OH- → 2e-+H2O+1/2O2↑ …(4)
Cl- → e-+1/2Cl2 …(5)
【0037】
式(5)において発生した塩素は、気泡としては存在しにくく、ほとんどの塩素は水に溶解する。そのため、式(5)において発生した塩素については、式(6)に示す反応が起こる。このようにして、塩素イオンを電気分解することにより次亜塩素酸(HClO)が生成される。その結果、電解槽500において電気分解された水は、殺菌力を有する次亜塩素酸を含む液、すなわち電解水に変化する。なお、陽極側となる電極板においてはアルカリ(OH-)が消費されるため、陽極側となる電極板の近傍ではpHが下降する。
【0038】
Cl2+H2O → HClO+H++Cl- …(6)
【0039】
ここで、電解槽500において生成される電解水は、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む液、あるいは電解塩素やオゾンなどを含む液であってもよいし、酸性水やアルカリ水であってもよい。これらの中でも、次亜塩素酸を含む液は、より強い殺菌力を有する。
【0040】
図2に示す制御部(開始制御部、停止制御部)600は、流路切替弁400及び電解槽500等、吐水装置WDを構成する各種機器の動作を制御する。制御部600は、操作部300が受け付けた使用者による操作(操作信号)に応じて、各種機器の動作を制御する。以下に、具体的に説明する。
【0041】
操作部300が吐水操作を受け付けた場合、制御部600は、流路切替弁400を電解水用配管130側に切り替えて開弁することで、除菌用スパウト200からの吐水を開始させ、電極板504及び505に電圧(以下、「第1の電圧」ともいう。)を印加することで、電解水の生成を開始させる。吐水操作は、除菌用スパウト200が止水している時に、使用者が操作部300を押すことで受け付けられる操作である。
【0042】
操作部300が止水操作を受け付けた場合、制御部600は、流路切替弁400を閉弁することで、除菌用スパウト200からの吐水を停止させ、電極板504及び505に対する電圧の印加を解除することで、電解水の生成を停止させる。止水操作は、除菌用スパウト200が吐水している時に、使用者が操作部300を押すことで受け付けられる操作である。
【0043】
制御部600は、止水操作の受け付けに応じて、除菌用スパウト200からの吐水を停止させた後、電極板504及び505の極性を反転させ、反転後の電極板504及び505に対して、電解水を生成する際に印加する第1の電圧よりも低い電圧(以下、「第2の電圧」ともいう。)を印加する。これは、第1の電圧の逆電圧かつ低い電圧となる第2の電圧を、電極に印加することで、第1の電圧印加時に生成された電解水の偏ったpHを中性に戻すこととしたものである。
【0044】
制御部600は、止水操作の受け付けに応じて、除菌用スパウト200からの吐水を停止させた後、電極板504及び505に第2の電圧を印加する前に、電解槽500内にある電解水を、給水源から供給される水に置換させる。これは、第1の電圧印加時に生成された全ての電解水を、第2の電圧を印加することで中性に戻そうとすると時間を要してしまうため、止水後かつ第2の電圧印加前に、第1の電圧印加時に生成された電解槽500内のpHが偏った電解水を、供給源から供給されるpHが中性の水に置換することとしたものである。これにより、各電極周辺のpHの偏りを短時間で緩和することができる。
【0045】
制御部600は、電極板に対する第2の電圧の印加を解除する解除条件が満たされたかどうかを判定し、解除条件が満たされた場合に、第2の電圧の印加を解除する。この解除条件として、例えば、直近の所定期間において、第1の電圧を印加した累積時間に対する第2の電圧を印加した累積時間の割合が、各電極周辺のpHが中性になると想定される所定割合以上であることがあげられる。このように、第2の電圧を印加してpHを中性に戻してから、第2の電圧の印加を解除することで、その後、第1の電圧を印加して電気分解を行っても電極が劣化しないという効果を得ることと、第2の電圧を印加させ続けるとスケールを除去した電極と反対側の電極にスケールが蓄積してしまうという課題を解決することとを両立させることが可能となる。
【0046】
制御部600は、電極板に第2の電圧を印加している時に、操作部300が吐水操作を受け付けた場合、第2の電圧の印加を解除させ、電解槽500内にあるpHが偏った電解水を、給水源から供給されるpHが中性の水に置換させてから、その時点の陽極板504及び陰極板505の極性を維持したまま第1の電圧を印加する。
【0047】
図5を参照しながら、吐水装置WDの具体的な動作について説明する。図5は、吐水装置WDの動作の具体例を説明するためのタイミングチャートである。
【0048】
図5(1)は、電極板に対する電圧印加(電気分解)の積算時間を表すグラフである。図5(2)は、操作部300から発信される操作信号の波形である。操作信号は、通常はOFFであり、操作部300が押されたときにのみONになる。使用者によって操作部300が押されるたびに、除菌用スパウト200からの吐水の開始/停止が切り替わる。ただし、吐水を開始してから連続吐水の上限時間(例えば30秒)に到達した場合には、操作部300の押下がなくても、除菌用スパウト200からの吐水が強制的に停止させられる。この場合、次に操作部300が押されると、除菌用スパウト200からの吐水が開始されることになる。
【0049】
図5(3)は、除菌モードのON/OFF状態を表す除菌モード信号の波形である。除菌モードとは、除菌用スパウト200から電解水を吐出するモードをいう。図5(4)は、電極板に印加される電圧の状態を表す電圧信号の波形である。図5(5)は、流路切替弁400の開弁/閉弁を制御する弁制御信号の波形である。流路切替弁400は、弁制御信号がONのときに開弁し、弁制御信号がOFFのときに閉弁する。
【0050】
まず、電極板に対する電圧印加の積算時間(1)が、所定の上限時間(例えば90秒)に到達していないとき(時間t1〜t15)の動作について説明する。
【0051】
最初に、時間t1において操作部300が押されると(吐水操作)、操作信号(2)、除菌モード信号(3)及び弁制御信号(5)がそれぞれOFFからONに切り替わる。除菌モード信号(3)がONに切り替わることで、除菌用スパウト200からの吐水が開始される。弁制御信号(5)がONに切り替わることで、流路切替弁400が開弁し、給水源から供給される水が電解槽500に流入し、電解槽500内の残留電解水を含む水が、給水源から供給される水に置換される。この電解槽500内の置換は、第1の置換時間(例えば1秒)行う。
【0052】
続いて、時間t1から第1の置換時間が経過した後の時間t2に、電圧信号(4)が、0[V]から正の第1の電圧[V]に切り替わる。これにより、電極に正の第1の電圧が印加され、電解槽500において電気分解が起こる。
【0053】
続いて、時間t3において操作部300が再度押されると(停止操作)、操作信号(2)がOFFからONに一時的に切り替わり、除菌モード信号(3)がONからOFFに切り替わり、電圧信号(4)が、正の第1の電圧[V]から0[V]に切り替わる。除菌モード信号(3)がOFFに切り替わることで、除菌用スパウト200からの吐水が停止され、電圧信号(4)が0[V]に切り替わることで、電解槽500における電気分解が止まる。
【0054】
この時間t3では、流路切替弁400が開弁状態のまま維持されるため、給水源から供給される水が、電気分解を停止した電解槽500に流入し、電解槽500内の残留電解水を含む水が、給水源から供給される水に置換される。この電解槽500内の置換は、第2の置換時間(例えば0.5秒)行う。第2の置換時間は、第1の置換時間よりも短時間に設定することが好ましい。第2の置換時間中は、給水源から除菌用スパウト200に向けて水が供給されるため、第2の置換時間を長くし過ぎると、操作部300を押した使用者が、除菌用スパウト200から吐出される水がすぐに止まらないという違和感を持つためである。
【0055】
続いて、時間t3から第2の置換時間が経過した後の時間t4において、弁制御信号(5)がONからOFFに切り替わる。これにより、流路切替弁400が閉弁し、給水源から供給される水の電解水用配管130への流入が遮断される。
【0056】
時間t5〜t8、時間t9〜t12、及び時間t13〜t16のそれぞれの期間は、上述した時間t1〜t4における動作と同様の動作を繰り返し行うことになる。ただし、時間t7が開始する条件は、連続吐水の上限時間(例えば30秒)が超過したこととなるため、この点については、操作部300が押されたことを開始条件とする時間t3の動作とは異なる。
【0057】
次に、電極板に対する電圧印加の積算時間(1)が、所定の上限時間(例えば90秒)に到達したとき(時間t15〜t20)の動作について説明する。この動作説明では、図5に加え、図6及び図7も参照しながら説明する。図6及び図7は、電解槽の一対の電極部材がpHと電位との関係で腐食することとなる領域をそれぞれ例示する図である。一対の電極部材には、正電圧と負電圧とが交互に切り替えられながら印加される。ここでは、電極部材としてチタンを用いた場合について例示する。図6及び図7に示すAは、溶液への溶解による腐食域(CMの重量モル濃度を、10-6 mol/kg H2O以上とする。)を表し、Bは、水和酸化物被膜による不動態域を表し、Cは、不感域を表す。なお、例示的に、図6の電極部材は、時間t15の直前の時点では陽極側の電極として機能しており、図7の電極部材は、時間t15の直前の時点では陰極側の電極として機能していることとする。
【0058】
最初に、時間t15において操作部300が押されると(停止操作)、操作信号(2)がOFFからONに一時的に切り替わり、除菌モード信号(3)がONからOFFに切り替わり、電圧信号(3)が、正の第1の電圧[V]から0[V]に切り替わる(S1)。この場合、図6の電極部材では、S1に示すように、酸性に偏ったpHが維持されたまま、電極に印加される電圧に対応する電位が、正の第1の電圧[V]に対応する電位から0[V]に対応する電位に低下することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。図7の電極部材では、S1に示すように、アルカリ性に偏ったpHが維持されたまま、電極に印加される電圧に対応する電位が、正の第1の電圧[V]に対応する電位から0[V]に対応する電位に上昇することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。
【0059】
続いて、時間t15から第2の置換時間が経過した後の時間t16において、弁制御信号(5)がONからOFFに切り替わる(S2)。この場合、図6の電極部材では、S2に示すように、電極に印加される電圧に対応する電位が0[V]に対応する電位を維持したまま、溶液のpHが給水源からの置換水によって中性方向に移行することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。図7の電極部材では、S2に示すように、電極に印加される電圧に対応する電位が0[V]に対応する電位を維持したまま、溶液のpHが給水源からの置換水によって中性方向に移行することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。この段階では、電極部材に付着しつつあるスケールや電極部材に残る電荷の影響で電極近傍の溶液のpHの偏りが残っている。
【0060】
続いて、時間t16において弁制御信号(5)がONからOFFに切り替わった後の時間t17において、電圧信号(4)が、0[V]から負の第2の電圧[V]に切り替わる(S3)。これにより、電極の極性を反転させた状態で、第1の電圧よりも低い第2の電圧を電極に印加することができる。この場合、図6の電極部材では、S3に示すように、中性に近づいたpHが維持されたまま、電極に印加される電圧に対応する電位が、0[V]に対応する電位から負の第2の電圧[V]に対応する電位に低下することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。図7の電極部材では、S3に示すように、中性に近づいたpHが維持されたまま、電極に印加される電圧に対応する電位が、0[V]に対応する電位から負の第2の電圧[V]に対応する電位に上昇することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。
【0061】
電圧信号(4)を0から第2の電圧に切り替えるタイミングを、弁制御信号(5)がONからOFFに切り替わった後の時間t17にすることで、通水を止めた状態で第2の電圧を印加することができるため、比較的電圧が低い第2の電圧であっても電極周辺のpHを調整し易くなる。
【0062】
S3で印加された第2の電圧は、連続印加の上限時間(例えば30秒)に到達する(時間t17から時間t18)まで維持される(S4)。この場合、図6の電極部材では、S4に示すように、電極に印加される電圧に対応する電位が、負の第2の電圧に対応する電位を維持したまま、電極近傍の溶液のpHが、電気分解により弱アルカリ性方向に移行することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。図7の電極部材では、S4に示すように、電極に印加される電圧に対応する電位が、負の第2の電圧に対応する電位を維持したまま、電極近傍の溶液のpHが、電気分解により弱酸性方向に移行することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。このとき、第2の電圧に対応する電位を維持することで電極近傍の溶液のpHの偏りを直接解消することができるため、電極の劣化の抑制に効果的である。
【0063】
時間t18において連続印加の上限時間(例えば30秒)に到達すると、電圧信号(4)が、負の第2の電圧[V]から0[V]に切り替わる(S5)。この場合、図6の電極部材では、S5に示すように、弱アルカリ性を示すpHが維持されたまま、電極に印加される電圧に対応する電位が、負の第2の電圧[V]に対応する電位から0[V]に対応する電位に上昇することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。図7の電極部材では、S5に示すように、弱酸性を示すpHが維持されたまま、電極に印加される電圧に対応する電位が、負の第2の電圧[V]に対応する電位から0[V]に相当する対応に低下することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。
【0064】
続いて、時間t18で連続印加の上限時間に到達してから、時間t19で操作部300が押されるまでの間(S6)は、図6の電極部材では、S6に示すように、電極に印加される電圧に対応する電位が、0[V]に対応する電位を維持したまま、溶液のpHが、僅かに中性方向に移行し、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。図7の電極部材では、S6に示すように、電極に印加される電圧に対応する電位が、0[V]に対応する電位を維持したまま、溶液のpHが、弱アルカリ性方向に移行し、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。これは、0[V]に対応する電位で放置されることによって、どちらの電極近傍も、溶液全体の平均的なpHに近づくためである。
【0065】
続いて、時間t19で操作部300が押された場合には、操作信号(2)、除菌モード信号(3)及び弁制御信号(5)がそれぞれOFFからONに切り替わることで、流路切替弁400が開弁し、給水源から供給される水が、電気分解を停止した電解槽500に流入し、電解槽500内の残留電解水を含む水が、給水源から供給される水に置換される。この電解槽500内の置換は、上記第1の置換時間行う。この場合、図6の電極部材では、S7に示すように、電極に印加される電圧に対応する電位が、0[V]に対応する電位を維持したまま、溶液のpHが、流入した置換水によって中性方向に移行することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。図7の電極部材では、S7に示すように、電極に印加される電圧に対応する電位が、0[V]に対応する電位を維持したまま、溶液のpHが、流入した置換水によって中性方向に移行することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。
【0066】
続いて、時間t19から第1の置換時間が経過した後の時間t20において、電圧信号(4)が、0[V]から負の第1の電圧[V]に切り替わる(S8)。これにより、S3で反転させた電極の極性を維持したまま、負の第1の電圧を電極に印加することができる。この場合、図6の電極部材では、S8に示すように、中性に近づいたpHが維持されたまま、電極に印加される電圧に対応する電位が、0[V]に対応する電位から負の第1の電圧[V]に対応する電位に低下することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。図7の電極部材では、S8に示すように、中性に近づいたpHが維持されたまま、電極に印加される電圧に対応する電位が、0[V]に対応する電位から負の第1の電圧[V]に対応する電位に上昇することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。
【0067】
S8で印加された負の第1の電圧は、操作部300が再度押される(停止操作)か、連続吐水の上限時間に到達するまで維持される(S9)。この場合、図6の電極部材では、S9に示すように、電極に印加される電圧に対応する電位が、負の第1の電圧に対応する電位を維持したまま、溶液のpHが、電気分解によりアルカリ性方向に移行することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。図7の電極部材では、S9に示すように、電極に印加される電圧に対応する電位が、負の第1の電圧に対応する電位を維持したまま、溶液のpHが、電気分解により酸性方向に移行することになるため、電極部材は、水和酸化物被膜による不動態域B内を維持できる。
【0068】
ここで、時間t17から時間t18までの間に操作部300が押された場合の動作について説明する。時間t17から時間t18までの間に操作部300が押されると(吐水操作)、操作信号(2)、除菌モード信号(3)及び弁制御信号(5)がそれぞれOFFからONに切り替わり、電圧信号(4)が、負の第2の電圧[V]から0[V]に切り替わる。これにより、流路切替弁400が開弁し、給水源から供給される水が、電気分解を停止した電解槽500に流入し、電解槽500内の残留電解水を含む水が、給水源から供給される水に置換される。その後、上記第1の置換時間が経過したときに、電圧信号(4)が、0[V]から負の第1の電圧[V]に切り替わり、電解水の生成が開始される。これにより、吐水操作後の使用者の使用感を損なうことなく、電極の劣化を抑制することが可能となる。
【0069】
上述したように、実施形態における吐水装置WDによれば、除菌用スパウト200からの吐水を停止させた後に、電極の極性を反転させ、電解水生成時における第1の電圧よりも低い第2の電圧を印加し、除菌用スパウト200からの吐水を再開するときに、反転させた電極の極性を維持したまま、第1の電圧を印加することができるため、止水直後に電極周辺のpHを中性寄りに戻しておき、その後、吐水を開始した時に、電極の極性を変えずに第1の電圧を印加して電解水を生成することが可能となる。
【0070】
すなわち、止水時における電極極性を反転して行う第2の電圧の印加によって、電極の表面にスケールが付着することを抑制することができ、吐水開始時における電極極性を維持したまま行う第1の電圧の印加によって、長時間止水した後に吐水操作が行われた場合であっても、電極表面における触媒剥れを抑制し、電極の腐食、すなわち劣化を防止することができる。また、第2の電圧をかけるタイミングを止水後の不使用期間中にすることで、使用者の使用感を損なわないようにすることができる。さらに、第1の電圧を印加して電気分解を行う動作と第2の電圧を印加する動作とを分けることによって、吐水操作後にすぐに第1の電圧を印加する動作に移行することができるため、使用者の使用感を損なわないようにすることができる。
【0071】
また、吐水装置WDによれば、吐水口からの吐水を停止させた後、電極に第2の電圧を印加する前に、電解槽500で生成された電解水を、供給源から供給される水に置換させることができるため、各電極周辺に生成されたpHが偏った水を、pHが中性の水に置換することができ、各電極周辺のpHの偏りを短時間で緩和することができる。
【0072】
また、吐水装置WDによれば、電極に第1の電圧を印加する前に、電解槽500に残留している電解水を、供給源から供給される水に置換させることができるため、吐水再開時に、電極表面から拡散した水素イオン等を含むpHが偏った水を、供給源から供給されるpHが中性の水に置換して、電解水生成開始時のpHをある程度揃えてから、第1の電圧を印加することができる。これにより、電解槽500内の溶液の濃度のばらつきを抑えることができ、安定した制御が可能となる。
【0073】
また、吐水装置WDによれば、第2の電圧印加中に吐水操作を受けた場合には、第2の電圧の印加を解除させ、残留電解水等のpHが偏った水を供給源から供給されるpHが中性の水に置換してから、電極の極性を変えずに第1の電圧を印加することができるため、吐水操作後の使用者の使用感を損なうことなく、さらに、電極の劣化を抑制することもできる。
【0074】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0075】
100…メインスパウト
101…操作レバー
110…給水配管
120…給湯配管
130…電解水用配管
200…除菌用スパウト
300…操作部
400…流路切替弁
500…電解槽
501…蓋部材
501a…流入部
502…蓋部材
502a…流出部
504…電極板
504a…接続端子
505…電極板
507…スペーサ
600…制御部
SK…シンク
WD…吐水装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7