特許第6614440号(P6614440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614440
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】ブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/26 20060101AFI20191125BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20191125BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   B29C49/26
   B29C49/22
   B29C49/06
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-231999(P2015-231999)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-94677(P2017-94677A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】山内 由夫
(72)【発明者】
【氏名】泉原 圭輔
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−105478(JP,A)
【文献】 特開平09−124051(JP,A)
【文献】 特開平10−180853(JP,A)
【文献】 特開平11−268191(JP,A)
【文献】 特開2003−071910(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0266620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00−49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め射出成形されたプリフォームの内側に、予めブロー成形されたチューブ状成形体を装填し、プリフォームの内側にチューブ状成形体を重ねた状態で二軸延伸ブロー成形を行って積層剥離容器とすることを特徴とするブロー成形方法。
【請求項2】
前記チューブ状成形体の装填に際し、前記チューブ成形体の開口端部を外側に折り返して前記プリフォームの開口端部に係止させることを特徴とする請求項1記載のブロー成形方法。
【請求項3】
前記チューブ状成形体の成形に際して、前記開口端部における開口径を拡大するように前記開口端部を外側に湾曲させて成形することを特徴とする請求項2記載のブロー成形方法。
【請求項4】
前記チューブ状成形体は、複数のチューブ状成形体が連結された形態とし、両端のチューブ状成形体の連結されていない側の端部のみをピンチオフして、前記複数のチューブ状成形体を一括してブロー成形することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォームとチューブ状成形体を組み合わせて二軸延伸ブローを行うブロー成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の容器(ボトル)の成形方法としては、ブロー成形方法が広く行われており、射出成形されたプリフォームを金型内にセットし、エアーを吹き込んで金型キャビティの形状に成形する2軸延伸ブロー成形法等が知られている。
【0003】
近年、プラスチック容器の分野においては、多様な機能、性能が求められることが多く、使用する材料や成形方法に工夫が求められている。例えば、ガスバリア性や遮光性、保温性等が要求される場合、使用する材料をガスバリア性を有するものとしたり、プラスチック材料に着色剤や紫外線吸収剤を添加すること等が行われている。
【0004】
しかしながら、材料の工夫等にも限度があり、プラスチック容器を多層化することで様々な機能を付与することも行われている。各層の構成材料等を最適化すれば、ガスバリア性に優れた遮光容器等、複合的な機能を有するプラスチック容器を実現することができるものと期待される。
【0005】
多層のプラスチック容器を成形するには、多層プリフォームを射出成形し、これをブロー成形すればよいものと考えられ、多層プリフォームの成形方法も種々提案されている。しかしながら、多層プリフォームの成形には高度な技術が必要であり、成形装置に多くの設備投資が必要となる等、コスト等の点で課題がある。
【0006】
このような状況から、プリフォームの外側に別途成形したプリフォームカバーを装着し、これをブロー成形することで複合容器を成形することが提案されている(特許文献1や特許文献2等を参照)。プリフォームカバーを利用することで、多層プリフォームを成形する必要がなくなり、コストの削減等に繋がるものと考えられる。
【0007】
特許文献1には、プリフォームの外側に外側収縮部材を設け、プリフォームと、プリフォームの外側に密着された外側収縮部材とを有する複合プリフォームを作製し、ブロー成形金型内で複合プリフォームに対してブロー成形を施すことにより、複合プリフォームのプリフォームおよび外側収縮部材を一体として膨張させるブロー成形方法が開示されている。外側収縮部材を、例えばガスバリア性や光線バリア性を有する材料で形成することで、これらの機能が付与された複合容器を成形することが可能である。
【0008】
特許文献2には、プリフォームの外側に内側ラベル部材を設け、特許文献1と同様、プリフォームと内側ラベル部材を一体として膨張させるブロー成形方法が開示されている。これにより、ラベラーによってラベルを付与する工程を不要とすることが可能なブロー成形方法を実現することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−9493号公報
【特許文献2】特開2015−9487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、プリフォームの外側にプリフォームカバーを装着し、これをブロー成形することで複合容器を成形する方法では、容器全体に機能性を付与することができず、プラスチック容器の多様化の要求に必ずしも対応しきれていないのが実情である。
【0011】
プリフォームを二軸延伸ブロー成形することによりプラスチック容器を成形する場合、プラスチック容器に装着されるキャップに対応して、プリフォームの口部の外周面には、キャップを螺合するための螺子部や各種フランジ部等を形成しておくことが多い。このような形態のプリフォームの外側にプリフォームカバーを装着する方法では、プリフォームの口部までプリフォームカバーで被覆することは難しく、容器全体に機能性を付与することは難しい。
【0012】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、容器全体に機能性を付与することが可能で、例えば積層剥離容器も簡単に作製することが可能なブロー成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の目的を達成するために、本発明のブロー成形方法は、予め射出成形されたプリフォームの内側に、予めブロー成形されたチューブ状成形体を装填し、プリフォームの内側にチューブ状成形体を重ねた状態で二軸延伸ブロー成形を行って積層剥離容器とすることを特徴とするものである。
【0014】
プリフォームの内面には、螺子部や各種フランジ部に対応する凹凸が形成されることはなく、平滑面とされている。したがって、チューブ状成形体は、プリフォームの口部においてもプリフォームと密着して装填することが可能である。プリフォームの開口端部にまで達するチューブ状成形体を装填して二軸延伸ブロー成形を行えば、容器内面全体がチューブ状成形体で覆われた状態で成形され、容器全体に機能性が付与される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のブロー成形方法によれば、容器全体を二重構造とすることができ、容器全体に様々な機能性を付与することが可能である。また、二重構造の容器として、いわゆる積層剥離容器を簡単に作製することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】複合容器の製造工程の一例を示すものであり、プリフォームへのチューブ状成形体の装着工程を示す概略斜視図である。
図1B】プリフォームにチューブ状成形体を装填した状態を示す概略断面図である。
図1C】成形された複合容器を一部破断して示す概略側面図である。
図2】プリフォームの開口端部にチューブ状成形体の開口端部を係止する方法の一例を示す図であり、(a)は治具による折り曲げ工程を示し、(b)はチューブ状成形体の係止状態を示すものである。
図3】開口部分を外側に湾曲させたチューブ状成形体の一例を示す図である。
図4】連結された状態で成形されるチューブ状成形体の概略側面図である。
図5A】チューブ状成形体のブロー成形方法の一例を示すものであり、パリソン押し出し工程を示す概略断面図である。
図5B】パリソン挟み込み工程を示す概略断面図である。
図5C】エアブロー後の状態を示す概略断面図である。
図6A】1個取りのブロー成形におけるパリソンの形態を模式的に示す縦断面図である。
図6B図5AのX−X線ににおける横断面図である。
図7A】2個取りのブロー成形におけるパリソンの形態を模式的に示す縦断面図である。
図7B図5AのY−Y線における横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用したブロー成形方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態のブロー成形方法では、プリフォームの内側にチューブ状成形体を重ねた状態で二軸延伸ブローを行うことで、複合容器が作製される。本実施形態のブロー成形方法により複合容器を作製するには、先ず、プラスチック材料製のプリフォーム1を準備する。プリフォーム1の成形方法としては、例えば射出成形機を用いた射出成形や、押し出し成形等を挙げることができる。
【0019】
プリフォーム1の構成材料としては、任意の熱可塑性樹脂が挙げられ、複合容器の用途や性能等に応じて適宜選択すればよい。熱可塑性樹脂の具体例としては、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等を挙げることができる。
【0020】
また、プリフォーム1を多層構成とすることも可能である。例えば、2層のプリフォームや、商品名ナイロンMXD6、商品名ナイロンMXD6+脂肪酸塩、PGA(ポリグリコール酸)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)等のガスバリア性や遮光性を有する樹脂を中間層とする3層以上からなるプリフォームとすることも可能である。
【0021】
次に、図1Aに示すように、プリフォーム1の内側にチューブ状成形体2を装着する。チューブ状成形体2は、全体として有底円筒形状を有しており、円筒状の胴部と、ピンチオフにより閉塞された底部とを有している。
【0022】
チューブ状成形体2の装填に際しては、プリフォーム1の首部や口部を含め、プリフォーム1の内面全体にチューブ状成形体2が重なるように装着される。プリフォーム1の容器口部に対応する位置には、成形された容器にキャップを螺合するための螺子部やフランジ部等の凸部1aが形成されることがあるが、内面にはこれら螺子部やフランジ部等が突出形成されることはない。したがって、チューブ状成形体2をプリフォーム1の首部や口部にまで装填する上で、何ら支障となることはない。
【0023】
前記チューブ状成形体2は、ブロー成形により予め成形しておくが、装填時の摩擦軽減のため、その外面は、若干粗度が高い方がよい。例えば、チューブ状成形体2を成形する際に用いる金型のキャビティ面に対してブラスト処理等を施しておけば、チューブ状成形体2の外面を粗面とすることができる。
【0024】
また、チューブ状成形体2は、付与する機能性に応じて、適宜、材質や添加剤等を選定することができる。付与する機能性としては、例えば低吸着性、酸素バリア性、遮光性等が挙げられ、チューブ状成形体2の成形材料として環状ポリオレフィン樹脂等を用いることで、低吸着性を実現することができる。あるいは、チューブ状成形体2の成形材料としてEVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)を用いることで、酸素バリア性を付与することができる。遮光性を付与するためには、チューブ状成形体2の成形材料に、着色材や紫外線吸収剤等を添加すればよい。
【0025】
次いで、チューブ状成形体2が装着されたプリフォーム1を予備加熱し、成形金型にセットする。予備加熱の温度はプリフォーム1の構成材料等に応じて適正な温度に設定すればよく、例えば90℃〜130℃程度である。
【0026】
予備加熱後、チューブ状成形体2が装着されたプリフォーム1を金型にセットする。金型は、成形する複合容器の形状に応じたキャビティを有するものであり、加熱により軟化したプリフォーム1(チューブ状成形体2)内にエアブローすることにより、プリフォーム1及びチューブ状成形体2が延伸され、金型のキャビティ形状に賦形される。
【0027】
これにより、プリフォーム1が延伸されることにより形成される容器本体11の内側が、チューブ状成形体2が延伸されることにより形成される被覆層12で覆われた複合容器10が成形される。作製される複合容器10においては、チューブ状成形体2がブロー成形により形成されるものであるので、チューブ状成形体2を射出成形する場合等に比べて、製造コストを削減することができる。また、被覆層12は、複合容器10の首部や口部までも覆って形成されており、被覆層12が有する機能性を複合容器10全体に付与することができる。
【0028】
なお、前述のブロー成形において、プリフォーム1とチューブ状成形体2を重ねた状態で二軸延伸ブローを行う際に、チューブ状成形体2の延伸に伴ってチューブ状成形体2の開口端部がプリフォーム1内に後退してしまう可能性がある。チューブ状成形体2の開口端部が後退してしまうと、プリフォーム1の内面全体をチューブ状成形体2で覆うことができなくなる。
【0029】
このような不都合を解消するためには、二軸延伸ブローに際して、例えばプリフォーム1の開口端部でチューブ状成形体2の開口端部を支持するように重ねればよい。図2は、プリフォーム1の開口端部でチューブ状成形体2の開口端部を支持させるための工程例を示すものである。この例では、チューブ状成形体2の開口端部2aをプリフォーム1の開口端部よりも延長して成形し、図2(a)に示すように、プリフォーム1の開口端部の形状に合わせた凹部を有する治具20でチューブ状成形体2の開口端部2aを折り返し、くせ付けを行う。これにより、図2(b)に示すように、プリフォーム1の開口端部の天面で、折り返されたチューブ状成形体2の開口端部2aを支持する形になり、チューブ状成形体2の開口端部2aがプリフォーム1内に引き込まれるのを防止することができる。
【0030】
前述のようにチューブ状成形体2の開口端部2aの折り返しを行う場合、チューブ状成形体2の成形に際して、開口端部2aを外方へ湾曲するように成形することが好ましい。例えば、図3に示すように、チューブ状成形体2の開口端側において、開口径を拡大するように成形し、開口端部2aを外側に湾曲させて成形する。その後、一点鎖線位置で切断すれば、チューブ状成形体2の開口端部2aが外側に広がる形状となり、前記折り返しが容易なものとなる。
【0031】
また、成形されるチューブ状成形体2の底部には、エア抜き孔2bを形成しておくことも好ましい形態である。チューブ状成形体2の底部にエア抜き孔2bを形成しておけば、チューブ状成形体2とプリフォーム1の間に空気が残存することがなくなり、チューブ状成形体2とプリフォーム1とが密着した状態で成形される。
【0032】
さらに、チューブ状成形体2をブロー成形するに際しては、成形体の形態を複数のチューブ状成形体が連結された形態とし、両端のチューブ状成形体の連結されていない側の端部のみをピンチオフして、複数のチューブ状成形体を一括してブロー成形することが好ましい。これにより、周方向での厚さの均一性に優れたチューブ状成形体を成形することができ、チューブ状成形体を用いて成形される複合容器の信頼性を高めることが可能である。
【0033】
すなわち、チューブ状成形体のブロー成形方法では、いわゆる複数個取りの状態で、複数のチューブ状成形体が直列に連結されるように結合してブロー成形を行う。一括して成形するチューブ状成形体の数は、2個でも3個でもよく、4個以上も可能であるが、一括して成形するチューブ状成形体の数が多くなればなるほど金型の大型化等が必要となる。また、3個以上を一括して成形する場合には、各チューブ状成形体の形状としては、両端が開放されるものに限られる。したがって、何個の成形体を一括して成形するかは、必要なチューブ状成形体の形状や、設備の規模等に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
以下においては、2個のチューブ状成形体を一括して形成する場合を例に説明する。2個取りの場合、2つのチューブ状成形体を一端側で連結した形態とし、各チューブ状成形体の連結されていない側の端部のみをピンチオフして、2つのチューブ状成形体を一括してブロー成形する。すなわち、各チューブ状成形体の連結されていない側の端部のみでパリソンが金型に挟み込まれるが、それ以外の部分においては、パリソンは金型に挟み込まれていない。
【0035】
図4は、成形される成形体31の形態を示すものである。本例において成形される成形体31は、2つのチューブ状成形体32,33が直列に連結された形態を有する。各チューブ状成形体32,33は、それぞれ一端側がピンチオフ部32a,33aとされて閉塞されるとともに、他端側は開放された状態で連結部34を介して互いに一体に連結されて成形されている。なお、各チューブ状成形体32,33の形態としては、例えば図3に示すように、開口端部が外方へ湾曲された形状であってもよい。
【0036】
チューブ状成形体32,33間を連結する連結部34は、各チューブ状成形体32,33の胴部の径よりも若干小さな径で形成されている。ここで、連結部34の径をチューブ状成形体32,33の胴部の径よりも小さく設定するのは、この位置に吹き込み針を設置し、ブロー成形の際に、パリソンへの吹き込み針の差し込みを円滑に行うためである。
【0037】
次に、図5の成形体のブロー成形方法について説明する。成形体31をブロー成形するには、図5Aに示すように、円筒状のパリソン41を押出機42のダイより押し出し、図5Bに示すように、一対の分割金型43,44で挟み込む。
【0038】
パリソン41は、前記の通り、溶融混練した原料樹脂を押出機42のダイより押し出すことにより形成されるが、原料樹脂としては、任意の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、商品名ナイロン等のポリアミド樹脂、ガスバリア性に優れるエチレン−ビニルアルコール樹脂等であるが、勿論これらに限定されるわけではなく、プリフォームカバー2,3の用途や要求される性能、機能等に応じて各種樹脂の中から適宜選択すればよい。また、原料樹脂には、着色剤や遮光剤、紫外線吸収剤、潤滑剤等の各種添加剤や、充填材等を添加することもでき、やはり、チューブ状成形体32,33に要求される性能、機能等に応じて添加する材料を適宜選択すればよい。
【0039】
分割金型43,44は、それぞれチューブ状成形体32,33の形状に応じたキャビティ43a,44aを2つずつ有しており、チューブ状成形体32,33の形状に応じたキャビティ43a,44aの間には、やや小径の連結部34を形成するための突出部43b,44bが形成されている。また、各キャビティ43a,44aの連結部34により連結される側とは反対側の端部には、ピンチオフ部43c,44cが設けられている。分割金型43,44を突き合わせた際には、前記ピンチオフ部43c,44cが突き当たり、パリソン41の両端が押し潰されて閉塞状態とされる。
【0040】
図5Bに示すように、型閉じを行い、一対の分割金型43,44でパリソン41を挟み込んだ後、連結部34に対応する突出部43bにおいて、吹き込み針45をパリソン41内に差し込み、エアブローを行う。連結部34に対応する突出部43bにおいては、パリソン41と分割金型43の距離が、チューブ状成形体32,33の形状に応じたキャビティ43a,44aにおけるパリソン41と分割金型43の距離よりも小さく、吹き込み針45のパリソン41内への差し込みを容易に行うことができる。
【0041】
エアーの吹き込みの際には、真空吸引によりパリソン41を金型に密着させた状態で吹き込み針45を差し込む必要がある。パリソン41が金型に引き付けられて密着していない状態では、すなわちパリソン41が金型から離間した状態では、パリソン41に吹き込み針45を差し込むことは難しい。したがって、パリソン41を速やかに金型に引き付けるためには、パリソン41と金型の距離が小さい方が有利である。連結部34をチューブ状成形体32,33の胴部の径よりも小さな径とすることで、連結部34に対応する金型部分が胴部に対応する金型部分よりも突出されることになり、その結果、連結部34に対応する金型部分とパリソン41とが接近することになる。
【0042】
連結部34に対応する金型部分の内径は、押し出したパリソンの外径と略等しくなることが好ましく、具体的には、当該金型部分の内径が、パリソン外径よりも0〜2mmになることが好ましい。尚、パリソンが当該金型部分において挟み込まれることを確実に防ぐため、当該部分の内径は、パリソンの外径よりも0.5mm以上大きくすることが好ましい。
【0043】
本例においては、この連結部34に対応し突出した金型部分である突出部43bに吹き込み針45を設置し、吹き込み針45のパリソン41への差し込み、及びエアブローを行う。例えば、前記突出部43bに吹き込み針45を設置するとともに、吹き込み針45の周囲に真空吸引孔を設けておく。吹き込み針45をパリソン41に差し込む際には、これら真空吸引孔により真空吸引を行う。この真空吸引により、パリソン41を金型(突出部43b)に引き付ける。突出部43bとパリソン41の距離が近いことから、パリソン41は速やかに突出部43bに引き付けられて密着する。したがって、吹き込み針45のパリソン41への差し込みを円滑に行うことができる。
【0044】
なお、連結部34に対応し突出した金型部分である突出部43bに吹き込み針45を突出させるための針孔を設ける場合に限らず、当該突出部43bに、局所的に凹部を設け、その凹部に針孔を設け、当該凹部における針孔の周囲に、パリソンを吸引するための吸引孔を、当該針孔を囲むように複数並べて配置してもよい。例えば、突出部13bに、直径4〜6mm程度の円形で、深さ2〜4mm程度の凹部を設け、凹部の中心に直径2〜3mmの針孔を設け、当該針孔を中心に45°の間隔で、当該針孔の周囲に吸引孔を8個配置してもよい。この場合、凹部の周囲が、パリソンに近接することで、凹部内の吸引孔にてパリソンを吸引すると、パリソンが部分的に凹部に入り込み、入り込んだ部分においてしっかりとパリソンを保持できる。これにより、吹き込み針45をより確実にパリソン41に差し込むことができる。
【0045】
吹き込み針45によるエアブローにより、図5Cに示すように、パリソン41が分割金型43,44のキャビティ43a,44aの内壁に押し付けられ、キャビティ43a,44aの形状に成形される。次いで、型開きを行い、成形体を取り出す。成形される成形体は、図4に示す通りである。取り出した成形体31は、図4の破線位置で切断し、個々のチューブ状成形体32,33に分離する。
【0046】
以下、チューブ状成形体のブロー成形に図5に示すブロー成形方法を採用した場合に、チューブ状成形体32,33の厚さが均一化される理由について説明する。
【0047】
図6A及び図6Bは、チューブ状成形体を、いわゆる1個取りとするブロー成形におけるパリソン41の形態を示すものである。1個取りのブロー成形では、分割金型51,52には、1つのチューブ状成形体に対応してキャビティ51a,52aが1つ形成されており、その両端にはピンチオフ部51b,52bが設けられている。
【0048】
1個取りとした場合、図6Aに示すように、チューブ状成形体(すなわちキャビティ51a,52a)の両側にピンチオフ部51b,52bが設けられることになり、ピンチオフ部51b,52b間の距離L1が小さい。ピンチオフ部51b,52bでは、食い切りの際にパリソン41に大きな力が加わり、パリソン41の変形の原因となるが、前記距離L1が小さいと、その影響がチューブ状成形体全体に及ぶ。
【0049】
図6Bは、分割金型51,52に挟み込まれた際のパリソン41の断面を示すものであり、キャビティ51a,52aの両側に設けられたピンチオフ部51b,52bの影響により、パリソン41が偏平に潰れるという現象が見られる。パリソン41が偏平に潰れてしまうと、エアブローした時に均一に延伸されず、特に周方向における厚さのばらつきが大きくなる。
【0050】
これに対して、本例のブロー成形方法のように、いわゆる2個取りでブロー成形する場合、図7Aに示すように、2つ設けられたキャビティ43a,44aにおいて、互いに連結されていない側の端部、すなわち連結部34を形成するための突出部43b,44bが形成される側とは反対側の端部にのみピンチオフ部43c,44cが設けられることになる。したがって、遠く離れた2つのチューブ状成形体の両側の端部のみピンチオフ(バリ噛み)され、連結部34はピンチオフされない。
【0051】
ここで、両端のピンチオフ部43c,44c間の距離L2は、先の1個取りの場合に比べて概ね2倍となり、ピンチオフ部43c,44cでの食い切りによる影響が大きく低減される。その結果、図7Bに示すように、分割金型43,44間に挟みこまれたパリソン41の断面形態が円形に近いものとなる。パリソン41が円形であれば、エアブローの際に全ての方向に均等に延伸され、均一な厚さで成形される。
【0052】
このような金型設計の本例のブロー成形方法で成形されるチューブ状成形体32,33は、周方向での厚さの均一性に優れるものであり、これを利用して高品質な複合容器を製造することが可能である。
【0053】
本発明のブロー成形方法は、前述の通りプリフォームの内側にチューブ状成形体を重ねた状態で二軸延伸ブローを行うものであり、これにより容器内面全体に機能性を付与することが可能である。また、いわゆる積層剥離容器を簡単に作製することが可能である。
【0054】
以上、本発明を適用した実施形態についてを説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 プリフォーム
2 チューブ状成形体
2a 開口端部
31 成形体
32,33 チューブ状成形体
34 連結部
41 パリソン
43,44 分割金型
43a,44a キャビティ
43b,44b 突出部
43c,44c ピンチオフ部
45 吹き込み針
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B