特許第6614456号(P6614456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614456
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】高周波鉗子
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20191125BHJP
   A61B 17/295 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61B17/295
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-560149(P2016-560149)
(86)(22)【出願日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】JP2015081448
(87)【国際公開番号】WO2016080223
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年7月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-234368(P2014-234368)
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000137052
【氏名又は名称】株式会社ホギメディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】中楯 龍
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 誠
(72)【発明者】
【氏名】長井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 泰運
(72)【発明者】
【氏名】加藤 次郎
【審査官】 小宮 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−070280(JP,A)
【文献】 特開平11−155878(JP,A)
【文献】 特開2007−319679(JP,A)
【文献】 特開2007−229294(JP,A)
【文献】 特開2008−000582(JP,A)
【文献】 特開2002−065598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に高周波電流を通電する切開部を備える一対の鉗子片を枢軸を介して開閉自在に構成した高周波鉗子であって、
前記切開部は、前記一対の鉗子片のそれぞれ対向する面に、前記枢軸側から先端側へ延びるように形成されると共に、前記一対の鉗子片を閉じた状態で前記切開部が互いに離間して形成され
前記鉗子片は基端側に取り付けられると共に互いに交差した開閉ワイヤが取り付けられ、前記開閉ワイヤは、基端側に取り付けられたデバイス用ワイヤの押し引き動作に連動して移動する移動体に接続され、
前記移動体及び前記開閉ワイヤは鉗子基部に収納されていることを特徴とする高周波鉗子。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波鉗子において、
前記一対の鉗子片の先端部には、前記一対の鉗子片を閉じた状態で互いに当接する当接部を備えることを特徴とする高周波鉗子。
【請求項3】
請求項2に記載の高周波鉗子において、
前記当接部は、互いに略点接触することを特徴とする高周波鉗子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の高周波鉗子において、
前記切開部の前記一対の鉗子片の延設方向と直交する断面形状が、概略三角形状に形成されることを特徴とする高周波鉗子。
【請求項5】
請求項4に記載の高周波鉗子において、
前記切開部は、前記三角形状の頂点以外の箇所は絶縁処理が施されることを特徴とする高周波鉗子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟性内視鏡に挿入する内視鏡用処置具としての高周波鉗子に関し、具体的には、軟性内視鏡の処置具チャンネル又は軟性内視鏡に取り付けられた処置具挿通用チューブに挿入して軟性内視鏡と共に口や肛門から胃腸などの腹腔内臓器に到達させ、上皮癌等の癌切除を行う目的で使用される高周波メス及び鉗子の機能を有する高周波鉗子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、口や肛門などから処置具を挿入し開腹や鏡視下手術に依らずに胃や大腸などの広い範囲にわたって粘膜の上位層を一片取り除く内視鏡粘膜下層切開剥離術(ESD)といった術式が行われている。さらに、胃カメラや大腸カメラなどの軟性内視鏡を体の表面にもともと存在する口、肛門、膣、尿道などから挿入し、さらに胃や大腸の壁を貫いて腹腔まで軟性内視鏡を到達させ腹腔内臓器の診断や治療を行う術式(NOTES:Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery:経管腔的内視鏡手術)が知られている。
【0003】
このような内視鏡粘膜下層切開剥離術(ESD)に代表される経管腔的内視鏡手術は、体の表面にもともと存在する口などから軟性内視鏡と共に鉗子やメスなどの処置具を挿入し、疾患部位までこれを到達させて治療等を行うため、体の表面に傷が全くつかず、通常の手術のような腹壁の感染や癒着などの合併症のリスクを低減させることができ、人体への侵襲を少なくすることができる。
【0004】
このような経管腔的内視鏡手術に用いられる処置具は、特許文献1に記載されているように、軟性内視鏡に挿入して軟性内視鏡の先端から突出した処置具を屈曲自在に操作する屈曲部を備えている。また、屈曲部に屈曲動作を伝達するシース・ワイヤ部と該シース・ワイヤを押し引きすることで屈曲部の屈曲動作を操作する操作部などを備えている。
【0005】
また、処置具の構成は、特許文献1に記載されているような鉗子や、特許文献2に記載されているような棒状のニードルナイフに高周波電流を通電させることで疾患部位の切除や剥離を行う構成などが知られている。
【0006】
このような構成によれば、鉗子で疾患部位を把持しながらニードルナイフで疾患部位の切除や剥離を行う際に、鉗子で把持する等して切開部を疾患部位に接触させて水平に動かすことで疾患部位を切り進めて当該部位の切除や剥離を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−511440号公報
【特許文献2】特開2010−42155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1及び2に記載の処置具を用いた疾患部位の切除方法は、第1に注射針を有する処置具によって、疾患部位の切除対象となる対象組織の下方に生理食塩水などを注入して対象組織を下方の粘膜下層などの他の組織から浮き上がらせ、その後、高周波ナイフを有する処置具を用いて対象組織の周囲を全周にわたって切開していく方法が知られている。そして全周切開の終了後、対象組織を鉗子などの別の処置具を用いて上方へ牽引してから、対象組織の下方を焼灼して剥離していく。
【0009】
このように、特許文献1及び2に記載の処置具は、対象部位の把持と切開及び剥離を鉗子と高周波ナイフとによって行っているため、例えば、全周切開の際には右から切開していた場面で左から切開をしたいとなると、鉗子と高周波ナイフを入れ替える作業や、内視鏡自体を反転させる必要が生じ、手術時間の延長と、術者の操作に煩雑性が増すという問題があった。さらに、高周波ナイフがカメラ視野外に位置している場合、高周波ナイフが不用意に対象組織以外に触れることで、当該対象組織以外の組織を切除してしまう危険性があった。
【0010】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、具体的には対象組織の把持や切除及び剥離という両方の操作を兼ね備え、左右のデバイスの入れ替えや内視鏡の視野の調整を行うことなく、術者への負担を軽減できる処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明に係る高周波鉗子は、生体組織に高周波電流を通電する切開部を備える一対の鉗子片を枢軸を介して開閉自在に構成した高周波鉗子であって、前記切開部は、前記一対の鉗子片のそれぞれ対向する面に、前記枢軸側から先端側へ延びるように形成されると共に、前記一対の鉗子片を閉じた状態で前記切開部が互いに離間して形成され、前記鉗子片は基端側に取り付けられると共に互いに交差した開閉ワイヤが取り付けられ、前記開閉ワイヤは、基端側に取り付けられたデバイス用ワイヤの押し引き動作に連動して移動する移動体に接続され、前記移動体及び前記開閉ワイヤは鉗子基部に収納されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る高周波鉗子において、前記一対の鉗子片の先端部には、前記一対の鉗子片を閉じた状態で互いに当接する当接部を備えると好適である。
【0013】
また、本発明に係る高周波鉗子において、前記当接部は、互いに略点接触すると好適である。
【0014】
また、本発明に係る高周波鉗子において、前記切開部の前記一対の鉗子片の延設方向と直交する断面形状が、概略三角形状に形成されると好適である。
【0015】
また、本発明に係る高周波鉗子において、前記切開部は、前記三角形状の頂点以外の箇所は絶縁処理が施されると好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、切開部の鉗子片がそれぞれ対向する面に枢軸側から先端側へ延びるように形成されるとともに、一対の鉗子片を閉じた状態で切開部が互いに離間して形成されているので、一対の鉗子片で対象組織を把持しつつ、切開部に高周波電流を流すことで、切開部の間に介在した対象組織を切除及び剥離を行うことができる。
【0017】
また、本発明によれば、一対の鉗子片を閉じた状態で互いに当接する当接部を備えているので、対象組織を確実に把持することができる。
【0018】
また、本発明によれば、当接部が互いに略点接触するように構成されているので、高周波電流によって切除された対象組織が鉗子片に焦げ付き、該対象組織が固着することを防止して鉗子の開閉動作の障害となることがない。
【0019】
また、本発明によれば、鉗子片の断面形状が概略三角形状に形成されているので、電極に高周波電流を集中的に流すことができるので、ナイフとしての切開能が向上すると共に、周辺組織への不要な損傷を軽減しつつ、対象組織の切開が可能となる。
【0020】
また、本発明によれば、三角形状の頂点以外の箇所は絶縁処理が施されているので、高周波電流をより集中的に電極へ流すことで切開能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る高周波鉗子の斜視図。
図2】本実施形態に係る高周波鉗子の先端の拡大図。
図3図2におけるA−A断面図。
図4】本実施形態に係る高周波鉗子の使用状態を説明するための図。
図5】本実施形態に係る高周波鉗子の使用状態を説明するための図。
図6】対象組織を把持した状態を示す斜視図。
図7】対象組織を把持した状態を示す上面図。
図8】本実施形態に係る高周波鉗子の変形例を示す斜視図。
図9】本実施形態に係る高周波鉗子の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る高周波鉗子について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
図1は、本実施形態に係る高周波鉗子の斜視図であり、図2は、本実施形態に係る高周波鉗子の先端の拡大図であり、図3は、図2におけるA−A断面図であり、図4は、本実施形態に係る高周波鉗子の使用状態を説明するための図であり、図5は、本実施形態に係る高周波鉗子の使用状態を説明するための図であり、図6は、対象組織を把持した状態を示す斜視図であり、図7は、対象組織を把持した状態を示す上面図であり、図8及び図9は、本実施形態に係る高周波鉗子の変形例を示す斜視図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る高周波鉗子10は、一対の鉗子片31,31からなる鉗子30がピン33を枢軸として互いに回動することで開閉動作する。鉗子片31,31は基端側に取り付けられると共に互いに交差した開閉ワイヤ34,34が取り付けられており、開閉ワイヤ34,34は、基端側に取り付けられた図示しない操作部に接続されたデバイス用ワイヤ20の押し引き動作に連動して移動する移動体32に接続されている。なお、移動体32及び開閉ワイヤ34,34は鉗子基部35に収納されている。
【0025】
デバイス用ワイヤ20は、鉗子基部35の一端に取り付けられた図示しないシース部に挿入されて上述した操作部に接続されている。なお、シース部は内視鏡の屈曲に倣って自在に屈曲するように構成されているので、内視鏡の屈曲動作を阻害することがないように構成されている。
【0026】
また、図2に示すように、鉗子片31は、導電性金属で形成されると共に、先端側にそれぞれ対向する他方の鉗子片31に向かって曲げられた先端部37が形成されている。さらに、先端部37は、他方の鉗子片31の先端部37と当接する面に当接部38が形成されている。さらに、先端部37は、内側に曲げられた返し部が形成されており、この返し部によって一対の鉗子片31,31の間に把持した組織が抜け落ちることを防止している。なお、図2における一対の鉗子片31,31の幅方向の大きさは、内視鏡チャンネルを挿通できるように2.8mm以下に形成することが好ましく、屈曲した内視鏡チャンネル内を大きな抵抗を受けることなく円滑に挿通することができるように2.3mm以下に形成するとより好適である。
【0027】
当接部38は、高周波電流が導通することで対象組織が焼き付くことを防止するために、接触面積を少なくするために形成されるものであり、理想的には点接触となるように接触面積を極小化することが好ましい。
【0028】
さらに、先端部37が他方の鉗子片31に向かって曲げられて構成されているので、一対の鉗子片31,31が閉じた状態では、当接部38,38同士が当接すると共に、鉗子片31,31の間には隙間が形成されている。
【0029】
このように一対の鉗子片31,31の間に隙間が形成されることで、本実施形態に係る高周波鉗子10を長時間連続で使用した場合であっても、使用している間に鉗子片31に対象組織や周辺組織が焼き付いて固着物として付着することで、鉗子30が開かない状態になってしまうことを防止することができる。
【0030】
なお、鉗子片31の母材は切開部36に高周波電流を導通することができればどのような素材を用いても構わないが、例えば、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、タングステン、銀、ガラスなどを用いると好適である。また、セラミック、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、非晶性熱可塑性ポリエーテルイミド(PEI)などを母材として用いた場合、高周波電流を導通せしめる電極を組み付けることで切開部36を構成しても構わない。なお、一対の鉗子片31,31の間の隙間は、大きく形成すると切除した組織等の焦げ付きを防ぐことが可能となるが、当該隙間が大きくなると強度が落ちてしまうため、この隙間の寸法は0.7〜1.0mmに形成すると好ましい。
【0031】
さらに、鉗子片31のそれぞれ対向する面には、ピン33から先端側へ延びるように形成される切開部36が形成されている。また、切開部36をできるだけ細く形成するために、本実施形態に係る高周波鉗子10は、図3に示すように、鉗子片31の鉗子片31の延設方向と直交する断面形状が切開部36を頂点とする略三角形状に形成されている。また、先端の角度は鋭角であるほど切開部36を細く加工することが容易になるものの、鋭角であるほど強度が落ちてしまうため、先端の角度は、80〜100°程度に形成すると好適である。
【0032】
さらに鉗子片31は、切開部36以外の部位は絶縁処理が施されている。なお、絶縁処理は、高周波電流が導通しなければ如何なる処理を施しても構わないが、例えばフッ素樹脂、セラミック、ポリオレフィン、天然ゴム、ニトリルゴムなどを用いると好適である。このような絶縁処理を施すことで、切開部36や、鉗子片31の摺動部及びピン33近傍に切除した組織が炭化して汚れとして付着して、高周波鉗子10の動作を阻害することを防止することができる。なお、当該絶縁処理は、コーティングを施しても良いが、鉗子片31自体を絶縁体で構成し、鉗子片31の先端に導電性金属で構成した電極を切開部36として嵌め込むなどして配置しても構わない。
【0033】
図4(b)に示すような従来の鈍角に形成された高周波ナイフ31´では、電極面積が大きくなるため、求められる切開能を得るために高いエネルギー出力が必要となるほか、高周波電流の拡散が生じるため、切り口42が大きくなることで周辺組織へ不要な損傷を与えてしまうというリスクがあった。これに対し本実施形態に係る高周波鉗子10は、切開部36以外の部位に絶縁処理を施すことで、図4(a)に示すように、鉗子片31に導通された高周波電流を集中的に対象組織40に向けることで少ない電流で切り口41を形成することができ、高周波電流が拡散することを防止しているので周辺組織への不要な損傷を抑制することで、切開能が向上する。
【0034】
次に、図5から7を参照して本実施形態に係る高周波鉗子10の使用方法について説明を行う。以下の説明は胃粘膜の切除を内視鏡下手術にて行う場合について説明を行う。
【0035】
まず、内視鏡の挿入部を患者の体腔内に挿入し、挿入部の先端を処置対象である疾患部位50の付近まで移動させる。
【0036】
本実施形態に係る高周波鉗子10は、鉗子30を閉じた状態で内視鏡チャンネルに挿入され、内視鏡の挿入部先端から鉗子30が突出した状態に保持されている。この状態で内視鏡からの映像を確認しながら鉗子30を開いて疾患部位50に鉗子30を近づけていき、図6に示すように、疾患部位50を鉗子片31,31で把持するように鉗子30を閉じる。
【0037】
このとき、図7に示すように、一対の鉗子片31,31の間の隙間に疾患部位50が把持されているので、鉗子片31に高周波電流を導通させると、切開部36から体表面に設置された対局板に向かって高周波電流が導通することで疾患部位50を切除することができる。
【0038】
この際、切開部36を細く形成することで、疾患部位50に高周波電流が拡散するのを防ぎ、疾患部位50が必要以上に損傷することを防止することができる。
【0039】
なお、疾患部位50を切除した後は、例えば当接部38,38で切除した疾患部位50を摘まむように体外へ摘出することができるので、別途鉗子を備えた処置具を入れ替えたりする作業を行うことなく円滑に手術を行うことが可能となる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0041】
本実施形態に係る高周波鉗子は、内視鏡の内視鏡チャンネルに挿入され、内視鏡の屈曲に倣って屈曲する軟性鉗子である場合について説明を行ったが、たとえば、本実施形態に係る高周波鉗子のシース部に複数の屈曲ヒンジを介することで、内視鏡チャンネルから突出した鉗子の向きを自在に変更可能に形成しても構わない。また、高周波電流を流す方式は、切開部から体表面に設置された対局板に向かって高周波電流を導通させる所謂モノポーラ方式を適用した場合について説明を行ったが、一対の鉗子片の切開部から、他方の鉗子片の切開部に向かって高周波電流を導通させる所謂バイポーラ方式を採用しても構わない。
【0042】
また、本実施形態に係る高周波鉗子は、鉗子片の基端側に取り付けられると共に互いに交差した開閉ワイヤが取り付けられており、該開閉ワイヤは、基端側に取り付けられた図示しない操作部に接続されたデバイス用ワイヤの押し引き動作に連動して移動する移動体に接続されることで鉗子片を開閉させる開閉機構を備える点について説明を行ったが、開閉機構はこのような形式には限られない。
【0043】
例えば、図8及び図9に示すように、一対の鉗子片31a,31aの基端側に互いに交差するように屈曲した溝34a,34a形成し、該溝34a,34aが互いに交差するように長手方向に対して線対称に配置されるとともに、該溝34a,34aに移動体32aに形成した係合ピン32b,32bを係合させるように構成しても構わない。係合ピン32bは、鉗子片31aが閉じた状態では、図9に示すように、溝34aの基端側に係合しており、移動体32aを押し出すようにデバイス用ワイヤ20を操作することで、係合ピン32b,32bが溝34a,34a内を移動して先端側に位置することで鉗子片31a,31aを図8に示すように開いた状態にすることができる。このように開閉機構を構成することで、鉗子基部35aの全長を短く設定することができ、高周波鉗子の小型化を図ることができる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0044】
10 高周波鉗子,
20 デバイス用ワイヤ,
30 鉗子,
31,31a 鉗子片,
32,32a 移動体,
33 ピン,
34 開閉ワイヤ,
34a 溝,
34b 係合ピン,
35,35a 鉗子基部,
36 切開部,
37 先端部,
38 当接部,
40 対象組織,
41,42 切り口,
50 疾患部位。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9