特許第6614493号(P6614493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614493
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 16/00 20060101AFI20191125BHJP
   H02K 33/00 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   H02K16/00
   H02K33/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-254598(P2015-254598)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-118781(P2017-118781A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】有賀 信雄
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 守
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰介
【審査官】 田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−93876(JP,A)
【文献】 特開2014−110695(JP,A)
【文献】 特開2009−100635(JP,A)
【文献】 特開昭59−222069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 16/00
H02K 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状の第1軌跡に沿って回動する第1回動子と、
前記第1軌跡に沿って設けられた第1固定子と、
前記第1回動子の回動中心軸に対して直交する軸であり、前記第1回動子と連動する軸である第1取出軸と、
前記第1取出軸を中心に回動可能な第1連結部と、
前記第1軌跡に対して立体交差する円弧状の第2軌跡に沿って回動する第2回動子と、
前記第2軌跡に沿って設けられた第2固定子と、
前記第2回動子の回動中心軸に対して直交し、かつ、前記第1取出軸と同一平面上に位置する軸であって、前記第2回動子と連動する第2取出軸と、
前記第2取出軸を中心に回動可能な第2連結部と、
前記第1連結部と前記第2連結部とを接続した状態で、前記第1回動子または前記第2回動子に発生する駆動力を出力する出力部と、
を備えるアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1回動子及び前記第2回動子は、外周または内周が環状とされた環状支持部を備え、前記環状支持部は軸受により前記回動可能に支持される、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1回動子の回動中心軸と前記第2回動子の回動中心軸とが直交する、請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1取出軸が、前記第1回動子の回動中心軸を挟んで180°の位置に2箇所存在し、
前記第2取出軸が、前記第2回動子の回動中心軸を挟んで180°の位置に2箇所存在する、請求項1〜3のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記第1回動子よりも前記第1固定子が径内に位置し、
前記第2回動子よりも前記第2固定子が径内に位置する、請求項1〜4のいずれかに記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球面座標上で駆動可能なアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、球面座標上で駆動可能なアクチュエータとして、本願の発明者らにより発明された、特許文献1に記載の発明が存在する。このアクチュエータは、例えば首振り動作を行う監視カメラや、ロボットの関節部、ロボットの眼球部等の駆動手段に適用できる。
【0003】
特許文献1に記載のアクチュエータはX軸周りに回動可能な第1可動子とY軸周りに回動可能な第2可動子とを備え、各可動子に対向するように固定子を備える。各可動子または固定子が有するコイルに通電することで各可動子は回動する。第1可動子の回動軌跡が形成する面と第2可動子の回動軌跡が形成する面とは直交している。
【0004】
第1可動子は棒状体からなる出力部を備える。第2可動子は、前記出力部に対する移動規制部として、前記出力部が貫通するスリット部を備える。各可動子を回動させることで、出力部を球面座標上の任意の位置に移動させることができる。
【0005】
ところで、前記スリット部の幅寸法は、出力部が円滑に移動できるように出力部の径寸法よりも大きく形成され、隙間が存在する。このため、第2可動子が回動することに伴い、第2回動子の回動方向に出力部を移動させる際に、前記隙間の分バックラッシが生じ、スリット部の内側面に出力部が当接するまで出力部が移動しなかった。よって、このバックラッシの分、出力部の駆動に遅れが生じるために正確な制御が阻害されるので問題であった。そして、棒状体からなる出力部とスリット部との組み合わせでは、両者の寸法差による隙間の発生、及び、出力部とスリット部内面とで摩擦の発生が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−110695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、出力部の駆動に遅れが生じることを抑制したアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、円弧状の第1軌跡に沿って回動する第1回動子と、前記第1軌跡に沿って設けられた第1固定子と、前記第1回動子の回動中心軸に対して直交する軸であり、前記第1回動子と連動する軸である第1取出軸と、前記第1取出軸を中心に回動可能な第1連結部と、前記第1軌跡に対して立体交差する円弧状の第2軌跡に沿って回動する第2回動子と、前記第2軌跡に沿って設けられた第2固定子と、前記第2回動子の回動中心軸に対して直交し、かつ、前記第1取出軸と同一平面上に位置する軸であって、前記第2回動子と連動する第2取出軸と、前記第2取出軸を中心に回動可能な第2連結部と、前記第1連結部と前記第2連結部とを接続した状態で、前記第1回動子または前記第2回動子に発生する駆動力を出力する出力部と、
を備えるアクチュエータである。
【0009】
この構成によれば、第1取出軸を中心に回動可能な第1連結部と第2取出軸を中心に回動可能な第2連結部とを備え、出力部は、それぞれ前記回動可能な第1連結部と前記第2連結部とを接続した状態で、第1回動子または第2回動子に発生する駆動力を出力する。このため、出力部の位置を、各回動子の回動可能な範囲内に対応する球面座標上の任意の位置に速やかに移動させることができる。
【0010】
そして、前記第1回動子及び前記第2回動子は、外周または内周が環状とされた環状支持部を備え、前記環状支持部は軸受により前記回動可能に支持されるものとできる。
【0011】
この構成によれば、環状支持部が軸受により回動可能に支持されることで、第1軌跡及び第2軌跡の円弧を真円形状とできる。
【0012】
そして、前記第1回動子の回動中心軸と前記第2回動子の回動中心軸とが直交するものとできる。
【0013】
この構成によれば、第1回動子の回動制御を、例えば球面座標における「緯度」に対応するように行うことができ、第2回動子の回動制御を、例えば球面座標における「経度」に対応するように行うことができる。このため、出力部を所望の位置に移動させやすく、球面座標上での制御が容易である。
【0014】
そして、前記第1取出軸が、前記第1回動子の回動中心軸を挟んで180°の位置に2箇所存在し、前記第2取出軸が、前記第2回動子の回動中心軸を挟んで180°の位置に2箇所存在するものとできる。
【0015】
この構成によれば、各連結部が両持ち支持されるため、片持ち支持に比べると、出力部の位置決め精度を向上できる。
【0016】
そして、前記第1回動子よりも前記第1固定子が径内に位置し、前記第2回動子よりも前記第2固定子が径内に位置するものとできる。
【0017】
この構成によれば、共に径内に位置する第1固定子と第2固定子とを1個のブロックにまとめることができる。このため、1個にまとめられた第1固定子及び第2固定子の集合体では、集合体ではない構成に比べて第1固定子の中心位置(第1回動子の回動中心に対応)と第2固定子の中心位置(第2回動子の回動中心に対応)とを精度良く一致させることができる。よって、球面座標上の出力部の位置決め精度を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、出力部の位置を、各回動子の回動可能な範囲内に対応する球面座標上の任意の位置に速やかに移動させることができる。そして、バックラッシがほとんど生じない構成とできる。このため、出力部の駆動に遅れが生じることを抑制したアクチュエータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るアクチュエータを示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るアクチュエータのうち、X軸側のユニットを抜き出して示した斜視図である。
図3】第1実施形態に係るアクチュエータのうち、Y軸側のユニットを抜き出して示した斜視図である。
図4】第1実施形態に係るアクチュエータのステータを抜き出して示した斜視図である。
図5】第1実施形態に係るアクチュエータの動作状態の一例を示す斜視図である。
図6図5のA矢視図である。
図7図5のB矢視図である。
図8】第1実施形態に係るアクチュエータの動作状態の他の一例を示す斜視図である。
図9図8のC矢視図である。
図10】第2実施形態に係るアクチュエータを示す斜視図である。
図11】第2実施形態に係るアクチュエータの第1ユニットを示す斜視図である。
図12】第2実施形態に係るアクチュエータの第2ユニットを示す斜視図である。
図13】第3実施形態に係るアクチュエータの概略的な構成を示す斜視図である。
図14】第3実施形態に係るアクチュエータの動作状態の一つの例を示す概略的な斜視図である。
図15】第3実施形態に係るアクチュエータの動作状態の他の例を示す概略的な斜視図である。
図16】第3実施形態に係るアクチュエータの動作状態の更に他の例を示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
−第1実施形態−
本発明につき一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。以下の説明で用いる各方向は、図1に示した方向を基準としている。
【0021】
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態のアクチュエータAは、出力部3を球面座標上の所定範囲内に移動させることができるよう構成されている。このアクチュエータAはアウターロータ型であって、径内側にステータが配置され、径外側にロータが配置されている。ステータは平面視(Z軸方向視)にて直交する十字状に配置された、第1固定子としてのX軸側ステータ111と第2固定子としてのY軸側ステータ211とが一体とされている。ステータに対応して、ロータも平面視で直交するように、第1回動子としてのX軸側ロータ112と第2回動子としてのY軸側ロータ212とが配置されている。第1変位発生部としてのX軸側変位発生部11は、前記X軸側ステータ111とX軸側ロータ112とを備え、第2変位発生部としてのY軸側変位発生部21は、前記Y軸側ステータ211とY軸側ロータ212とを備える。各変位発生部11,21は独立して制御可能である。なお、ステータ及びロータにおける「X軸側」とは、図1に示したX軸周りにロータが回動する側を指し、「Y軸側」とは、同Y軸周りにロータが回動する側を指す。X軸、Y軸、Z軸は相互に直交している。本実施形態の出力部3は、X軸、Y軸、Z軸の交点である原点を中心とした所定半径の球面座標上を移動する。
【0022】
図2または図3に示すように、各ステータ111,211は、中央に、例えば非磁性体からなるX軸側センターコア1111及びY軸側センターコア2111を有し、X軸側センターコア1111及びY軸側センターコア2111の各々の径外に磁性体からなるステータヨーク1112,2112及びステータティース1113,2113が位置している。X軸側ステータ111におけるX軸側センターコア1111は、X軸方向視で略半円状の平板状体である。Y軸側ステータ211におけるY軸側センターコア2111は、X軸側ステータ111におけるX軸側センターコア1111に嵌め込まれることで、図4に示すように、X軸側センターコア1111のX軸方向に直交する面から一定曲率をもって突出している。
【0023】
なお、本実施形態ではX軸側センターコア1111とY軸側センターコア2111とは嵌め込みにより組み立てられて構成されていたが、この構成に限定されるものではなく、例えば一つの材料からの削り出し等によりX軸側センターコア1111とY軸側センターコア2111とが一体に構成されていてもよい。両センターコア1111,2111を一体に構成する場合、各センターコア1111,2111を別々に製作した後に組み合わせる工程が無くなるので、各センターコア1111,2111の加工誤差が組み立てにより増加する(積み上がる)こと、及び、組み立て誤差の発生を抑制できる。このため、両センターコア1111,2111の集合体における中心位置が設計上の位置からずれてしまうことを抑制できる。
【0024】
各ステータヨーク1112,2112は、X軸側センターコア1111及びY軸側センターコア2111の各々の径外側に配置された略C字状の部材である。図2に示すように、X軸側ステータ111におけるステータヨーク1112は下方に開口した形状であり、図3に示すように、Y軸側ステータ211におけるステータヨーク2112は上方に開口した形状である。各ステータヨーク1112,2112は、前記X軸側センターコア1111とY軸側センターコア2111との嵌め込みに伴い、互いの開口部分から径内側に入り込むようにして組み合わされている。X軸側センターコア1111及びY軸側センターコア2111及び各ステータヨーク1112,2112にはステータ保持部材4〜4(図1参照)が取り付けられている。
【0025】
各ステータティース1113〜1113,2113〜2113は、各ステータヨーク1112,2112の径外側に延びる、周方向に一定間隔で配置された複数の突起である。本実施形態では、30°間隔で9個のステータティース1113〜1113,2113〜2113が配置されている。個々のステータティース1113,2113にステータコイル1114,2114が巻き付けられている。本実施形態のアクチュエータAは三相交流電源により駆動され、周方向に隣り合う3個のステータコイル1114,2114の各々に、三相交流において位相が120°ずつずれた各相(U相,V相,W相)の電流が通されることで各ステータ111,211が励磁される。X軸側ステータ111においては上方領域の240°(個々のステータティース1113,2113の径方向中央を基準とする。Y軸側ステータ211も同様)の範囲に各ステータティース1113〜1113が配置されており、この角度範囲にX軸側ロータ112の回動可能範囲が対応する。Y軸側ステータ211においては下方領域の240°の範囲に各ステータティース2113〜2113が配置されており、この角度範囲にY軸側ロータ212の回動可能範囲が対応する。各ステータヨーク1112,2112も前記範囲に、X軸側センターコア1111及びY軸側センターコア2111の各々を外方から取り巻くように設けられている。
【0026】
本実施形態における個々のステータティース1113,2113は、図2または図3に示すように、基端部にアリ型が形成されている。このアリ型を、各ステータヨーク1112,2112の外周面に軸方向に沿って形成されたアリ溝に対して差し込むことで、各ステータヨーク1112,2112と個々のステータティース1113,2113とが一体とされる。
【0027】
以上のように構成された各ステータ111,211は、図1に示すように、複数のステータ保持部材4〜4により不動に支持される。各ステータ保持部材4は、基端部が床面等の不動部分(図示しない)に固定され、先端部が各ステータ111,211に固定される。本実施形態では、X軸側ステータ111とY軸側ステータ211との間の4箇所の空間に4個のステータ保持部材4〜4が位置している。平面視にてステータ保持部材4〜4が回転対称で均等に配置される。
【0028】
X軸側ロータ112及びY軸側ロータ212は、電磁鋼板等の磁性体からなり、略C字状のロータヨーク1121,2121と複数の永久磁石1122〜1122,2122〜2122とを有する。X軸側ロータ112におけるロータヨーク1121は下方に開口し、Y軸側ロータ212におけるロータヨーク1121は上方に開口している。ロータヨーク1121の内周面は、ステータティース1113,2113の外周面に対向するように一定曲率の湾曲面とされている。複数の永久磁石1122〜1122,2122〜2122は、ロータヨーク1121,2121の内周面に、周方向に逆極性のものが、ロータヨーク1121,2121の一部として形成されたティース1123,2123を挟むように交互に並ぶように位置している(なお、ロータヨーク1121,2121とティース1123,2123とは別体とすることもできる)。本実施形態では、複数の永久磁石1122〜1122,2122〜2122が180°の範囲に配置されている。なお、各ステータ111,211への通電により各ロータ112,212に回動力が発生する原理は、一般的な交流モータやリニアアクチュエータの動作原理と基本的に同じであるのでここでは説明しない。X軸側ロータ112はX軸側ステータ111が励磁されることで円弧状の第1軌跡T1上を回動し、Y軸側ロータ212はY軸側ステータ211が励磁されることで円弧状の第2軌跡T2に沿って回動する。第1軌跡T1の曲率中心軸はX軸に一致し、第2軌跡T2の曲率中心軸はY軸に一致する。
【0029】
各ロータヨーク1121,2121は径外で各環状支持部113,213に支持されて一体となっている。各環状支持部113,213は周方向に切れ目のない環状に形成されている。各環状支持部113,213は各ロータヨーク1121,2121と共に回動する。ここで、特許文献1に記載の可動子は、複数部品が組み合わされたものであったり、環状でなく略C字状のものであったりしたため、可動子の回動軌跡を真円にすることが難しかった。一方、本実施形態では、前記可動子に相当するX軸側ロータ112及びY軸側ロータ212において外周部に各環状支持部113,213を位置させることができるため、X軸側ロータ112及びY軸側ロータ212の回動軌跡を容易に真円にできる。このため、本実施形態のアクチュエータAでは、X軸側ロータ112及びY軸側ロータ212を一定曲率で円滑に回動させることができるので、高い位置精度で出力可能である。
【0030】
図1に示すように、X軸側ロータ112を支持するX軸側環状支持部113は、Y軸側ロータ212を支持するY軸側環状支持部213よりも小径とされている。このため、X軸側ロータ112の回動に係る第1軌跡T1は、Y軸側ロータ212の回動に係る第2軌跡T2に対して立体交差する。
【0031】
以上のように構成された各ロータ112,212は、X軸側ロータ保持部材51及びY軸側ロータ保持部材52によりX軸、Y軸への回動が許容されるように支持される。各ロータ保持部材51,52は、基端部が支持台や床面等の不動部分(図示しない)に固定され、図2または図3に示すように、先端部のうち少なくとも径内部が環状とされており、各環状支持部113,213を回動可能に支持する。このように回動可能に支持するため、各ロータ保持部材51,52と各環状支持部113,213との間には、例えば玉軸受を構成する複数の支持素子としての複数の玉(図示しない)が円形状に配置されることで構成された軸受が位置している。この軸受により各環状支持部113,213が支持されることで、第1軌跡T1及び第2軌跡T2の円弧を真円形状とできる。このため、後述する出力部3の位置制御を正確に行うことができる。軸受としては、例えば円環状の深溝玉軸受やクロスローラを用いることができる。
【0032】
X軸側変位発生部11に対し、X軸側ロータ112の回動中心軸であるX軸に対して直交する軸であり、X軸側ロータ112と連動する軸である第1取出軸122を有する、第1変位取出部としてのX軸側変位取出部12が設けられている。つまり、第1取出軸122はY軸に一致している。そして、Y軸側ロータ212の回動中心軸であるY軸に対して直交し、かつ、X軸とは同一平面上に位置する軸であって、Y軸側ロータ212と連動する軸である、第2取出軸222を有する第2変位取出部としてのY軸側変位取出部22が設けられている。つまり、第2取出軸222はX軸に一致している。
【0033】
X軸側変位取出部12は、X軸側ロータ112における、X軸に対して直交する側面のうち少なくとも一つの面に固定された、径断面形状が略コ字状の固定部材121,121を一対備える。本実施形態では前記側面の両面に固定され、径断面視で略コ字状の部材であって、X軸を挟んで180°の位置に一対(2個)設けられている。この一対の固定部材121,121により、各ロータ保持部材51,52に干渉することなくX軸側ロータ112に連動し、各ロータ保持部材51,52よりも径外位置にX軸側ロータ112の回動力を取り出すことができる。第1取出軸122は、各固定部材121における各ロータ保持部材51,52よりも径外位置にあり、軸方向がX軸に直交する軸である。この第1取出軸122はX軸側アーム13の回動中心軸となる。
【0034】
X軸側変位取出部12と同様に、Y軸側変位取出部22は、Y軸側ロータ212における、Y軸に対して直交する側面のうち少なくとも一つの面に固定された、径断面形状が略コ字状の固定部材221,221を一対備える。第2取出軸222は、各固定部材221における各ロータ保持部材51,52よりも径外位置にあり、軸方向がY軸に直交する軸である。この第2取出軸222はY軸側アーム23の回動中心軸となる。
【0035】
X軸側変位発生部11の径外位置には、第1連結部としてのX軸側アーム13を備える。X軸側アーム13はX軸を曲率中心とする湾曲した帯状体からなり、両端部が第1取出軸122に接続されることで両持ち支持されている。このためX軸側アーム13は、第1取出軸122を中心に、周方向R1に回動可能である。この周方向R1は第2軌跡T2とY軸を曲率中心として共有する関係にある。なお、X軸側アーム13は本実施形態のような帯状体に限定されず、例えば半球状とすることもできるが、Y軸側アーム23と干渉しない形状である必要がある。
【0036】
X軸側アーム13と同様に、Y軸側変位発生部21の径外位置には、第2連結部としてのY軸側アーム23を備える。Y軸側アーム23はY軸を曲率中心とする湾曲した内面を有しており、両端部が第2取出軸222に接続されることで両持ち支持されている。このためY軸側アーム23は、第2取出軸222を中心に、周方向R2に回動可能である。この周方向R2は第1軌跡T1とX軸を曲率中心として共有する関係にある。本実施形態では、外面が平面とされ、外面形状がY軸方向視で略長方形とされている。X軸側アーム13と同様に、Y軸側アーム23の形状は本実施形態の形状に限定されないが、X軸側アーム13と干渉しない形状である必要がある。
【0037】
Y軸側アーム23はX軸側アーム13と立体交差している。図1に示した状態では、X軸側変位発生部11とY軸側変位発生部21との関係と同様、平面視(Z軸方向視)でX軸側アーム13とY軸側アーム23とは直交している。本実施形態のY軸側アーム23はX軸側アーム13よりも径外位置にあるが、逆に、X軸側アーム13よりも径内位置にあってもよい。ただ、X軸側変位発生部11の方がY軸側変位発生部21よりも外径が小さいので、本実施形態の位置関係の方がアクチュエータAをコンパクト化できるため、設計上有利である。
【0038】
X軸側アーム13とY軸側アーム23とは、前記立体交差する部分にて回動可能に接続されている。この接続は交差部軸受31を介してなされている。この接続部分が出力部3である。つまり出力部3は、X軸側アーム13とY軸側アーム23とを接続した状態で、X軸側ロータ112または/及びY軸側ロータ212に発生する駆動力を出力する。出力部3には、球面座標上を移動させる種々の部材を接続することができる。本実施形態では、Y軸側アーム23の上面に4箇所の固定穴32…32が設けられており、この固定穴32…32を用いてボルト止めすることにより、接続対象の部材を固定可能である。
【0039】
図1に示した状態では、平面視でX軸側アーム13とY軸側アーム23とは直交しているが、各ロータの回動に伴い、X軸側アーム13とY軸側アーム23とのなす角度は変化していく。このため、Y軸側アーム23の内面には凹部231が形成されている。これにより、前記角度変化によってX軸側アーム13とY軸側アーム23とが干渉しないようにされている。
【0040】
各アーム13,23が以上のように構成されたことにより、例えば、X軸側変位発生部11においてX軸側ロータ112が回動すると、これに連動してX軸側アーム13がX軸を中心に第1軌跡T1に沿って回動する。この際、Y軸側アーム23は第2取出軸222を中心に周方向R2に回動することでX軸側アーム13の回動に追随できる。一方、Y軸側変位発生部21においてY軸側ロータ212が回動すると、これに連動してY軸側アーム23がY軸を中心に回動する。この際、X軸側アーム13は第1取出軸122を中心に回動することでY軸側アーム23の回動に追随できる。そして、X軸側ロータ112とY軸側ロータ212の両方が回動した場合には、各アーム13,23が共に回動することになる。
【0041】
つまり、本実施形態のアクチュエータAでは、X軸側変位発生部11においてX軸側ロータ112が回動することによりX軸側変位取出部12が連動する。一方、Y軸側変位発生部21においてY軸側ロータ212が回動することによりY軸側変位取出部22が連動する。X軸側アーム13はX軸側変位取出部12に接続されており、Y軸側アーム23はY軸側変位取出部22に接続されているので、前記各連動に係る変位(軌跡T1,T2に沿う回動変位)は各アーム13,23に伝えられる。前記接続(アームと変位取出部との接続)は、X軸側アーム13の基端側がX軸側変位取出部12に対して周方向R1へ回動可能に、Y軸側アーム23の基端側がY軸側変位取出部22に対して周方向R2へ回動可能とされている。そして、X軸側アーム13とY軸側アーム23とは交差部軸受31を介して回動可能に接続されたことで、この接続された部分を中心として各アーム13,23が回動方向において位置変化可能に接続されている。つまり、X軸側アーム13とY軸側アーム23との交差角度を、小さくしたり大きくしたりするよう変動できる。このため出力部3の位置を、各ロータの回動可能な範囲内に対応する球面座標上の任意の位置に移動させることが容易にできる。X軸側ロータ112とY軸側ロータ212の両方を回動させ、各アーム13,23が共に回動した状態を図5図9に示す。図5及び図8は斜視図で、図6図5のA矢視図、図7図5のB矢視図、図9図8のC矢視図である。各図に示したように、本実施形態のアクチュエータAでは、出力部3を所定範囲内で自在に移動させることができる。なお、出力部3の位置制御は、図示しないX軸側のセンサとY軸側のセンサの検出結果を用いてなされる。
【0042】
また、本実施形態の構成によると、出力部3に生じるバックラッシが軸受自体の隙間や加工精度による誤差などに起因するものだけとなる。このため本実施形態の構成では、例えば特許文献1に記載された、棒状体からなる出力部とこの出力部に対する移動規制部としてのスリット部とが組み合わされた構成により生じるバックラッシよりもはるかに小さいバックラッシとできる。このことにより、本実施形態では出力部3の正確な制御が可能である。
【0043】
また、各アーム13,23が傾斜した状態になっても、X軸側アーム13とY軸側アーム23により出力部3にかかる荷重を負担できる。特許文献1に記載されたアクチュエータでは、スリット部を備える第2可動子との位置関係により、棒状体からなる出力部を備える第1可動子にだけに荷重がかかる場合があった。これに対して本実施形態のアクチュエータAでは、常にX軸側アーム13とY軸側アーム23とが共に荷重を負担できるので、負荷が分散されて、アクチュエータAの各部に歪み等が生じにくい。
【0044】
また、特に本実施形態では、X軸側ロータ112の回動中心軸(X軸)と、Y軸側ロータ212の回動中心軸(Y軸)とが直交している。このため、X軸側の回動制御を、例えば球面座標における「緯度」に対応するように行うことができ、Y軸側の回動制御を、例えば球面座標における「経度」(「緯度」と球面座標上で直交している)に対応するように行うことができる。一方、各ロータが直交しない構成では、「緯度」方向の制御に伴い「経度」方向の変化も伴ってしまうため、回動制御の際に入力と出力との関係で何らかの換算が必要になる場合がある。このため、本実施形態では入力と出力との関係が単純であるから、出力部3を所望の位置に移動させやすく、球面座標上での制御が容易である。
【0045】
また、本実施形態では、各アーム13,23が両基端部で支持されることで両持ち支持となるため、例えば片持ち支持の構造に比べ、各アーム13,23の撓みを抑制できるので、出力部3の位置決め精度を向上できる。
【0046】
なお、出力部3はX軸側アーム13とY軸側アーム23とが接続された部分における、各アーム13,23共通の回動中心軸(本実施形態では交差部軸受31の回動中心軸に一致)を含む部分に位置することが、荷重負担の関係から好ましいが、例えば、前記回動中心軸から離れた、X軸側アーム13上またはY軸側アーム23上に位置させることもできる。
【0047】
−第2実施形態−
次に、第2実施形態につき、主に第1実施形態と相違する部分に関して説明する。本実施形態は、二つのユニットが組み合わされて構成されている。なお、図10図12はアームを省略した状態の図である。第1実施形態と機能上共通する部分には、図に同一符号を付している。
【0048】
本実施形態では、図11に示す第1ユニットP1と図12に示す第2ユニットP2とが、図10に示すように組み合わされ、固定されることで構成されている。第1ユニットP1は、X軸側ステータ111、X軸側ロータ112、X軸側環状支持部113、Y軸側ステータ211、Y軸側ロータ212、X軸側ロータ保持部材51を備える。第2ユニットP2は、Y軸側環状支持部213、Y軸側ロータ保持部材52を備える。
【0049】
第1実施形態では、各ロータ保持部材51,52が、別々に支持台や床面等の不動部分に固定されていた。一方、本実施形態では、Y軸側ロータ保持部材52に対してX軸側ロータ保持部材51が固定される。このため、前記別々の固定により加工誤差及び組立誤差が増加する(積み上がる)ことを抑制できる。このため、両ユニットP1,P2の集合体における中心位置が設計上の位置からずれてしまうことを抑制できる。よって、第1実施形態に比べてX軸側ロータ保持部材51とY軸側ロータ保持部材52との間で、設計上の目標位置に対する位置の誤差を小さくできるため、前記誤差への対応として行われる、各ロータ112,212の芯出しを容易にすることができる。また、アクチュエータの組み立て工程を簡易化できるため、本実施形態では製造効率を向上できる。
【0050】
このように本実施形態のアクチュエータAは、組み立てが容易であり、各軸側の回動精度の調整が容易であるとのメリットがある。
【0051】
−第3実施形態−
次に、第3実施形態につき、主に第1実施形態と相違する部分に関して説明する。第3実施形態の構成を図13に概略的に示す。第1実施形態のX軸側アーム13とY軸側アーム23とは、交差部軸受31を介して回動可能に接続され、X軸側アーム13とY軸側アーム23とのなす角度が変化することを許容するように構成されていた。これに対し本実施形態は、第1実施形態におけるX軸側アーム13とY軸側アーム23に相当する構成として、内外二重の環状とした共通環状体6を備える。この共通環状体6は、第1取出軸122を支持する第1連結部としての内輪部61と、第2取出軸222を支持する第2連結部としての外輪部62とを備える。内輪部61と外輪部62とは、例えば玉軸受の玉を介在させることによって、周方向における相対的な位置の変化(回転)が可能に接続されている。なお、本実施形態における出力部3は、共通環状体6上の任意の位置に設定することができる。
【0052】
図14は、本実施形態にて、X軸側変位発生部11(環状支持部113等)が図13に示した状態から45°傾いた状態を示す。この場合、共通環状体6は第2取出軸222を中心に方向R2aに45°回転した状態となる。
【0053】
図15は、本実施形態にて、Y軸側変位発生部21(環状支持部213等)が図13に示した状態から45°傾いた状態を示す。この場合、共通環状体6が第1取出軸122を中心に方向R1aに45°回転した状態となる。
【0054】
図16は、本実施形態にて、X軸側変位発生部11(環状支持部113等)が図13に示した状態から45°傾き、かつ、Y軸側変位発生部21(環状支持部213等)が図13に示した状態から45°傾いた状態を示す。この場合、内輪部61と外輪部62とが周方向において相対的に位置が変化(回転)することで、第1取出軸122と第2取出軸222とが図示のように接近する。
【0055】
このように一つの共通環状体6上に出力部3を形成した本実施形態であっても、出力部3の位置を、各変位発生部11,21における回動子の回動可能な範囲内に対応する球面座標上の任意の位置に速やかに移動させることができる。
【0056】
−変形例−
以上、本発明につき第1〜第3実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、前記第1実施形態のアームは、180°離れた2箇所で両端を支持された両持ち構造であったが、これに限定されず、片持ち構造とすることもできる。
【0058】
また、第1変位発生部と第2変位発生部とは直交していなくてもよい。この場合、球面座標上の所定位置に出力部3を移動させるための第1回動子と第2回動子の移動量は、1:1の対応関係にならないので、交差角度に対応して調整しつつ制御する必要がある。機器配置の関係等の理由により、第1変位発生部と第2変位発生部とを直交させられない場合には、このように構成することもできる。
【0059】
また、前記各実施形態では、径内側にステータ、径外側にロータが配置されていたが、これとは逆に、径内側にロータ、径外側にステータが配置されることもできる。ただし、前記各実施形態のように径内側にステータが位置する方が、図4に示すように、X軸側ステータ111とY軸側ステータ211とを1個のブロックにまとめることができる点で有利である。前記各実施形態における、1個にまとめられたX軸側ステータ111及びY軸側ステータ211の集合体では、集合体ではない構成に比べてX軸側ステータ111の中心位置(X軸側ロータ112の回動中心に対応)とY軸側ステータ211の中心位置(Y軸側ロータ212の回動中心に対応)とを精度良く一致させることができる。よって、球面座標上の出力部3の位置決め精度を向上できる。
【0060】
また、前記第1、第2実施形態では、ステータティースにコイルが巻かれており、ロータに永久磁石が設けられていたが、これに限られない。例えば、ステータに永久磁石が設けられ、ロータにコイルが設けられることもできる。
【0061】
また、軸受としては、前記実施形態の玉軸受以外に、ころ軸受、滑り軸受、エアベアリング、磁気軸受等の種々の軸受を用いることができる。また、軸受に代えて軸受以外の支持手段を用いることもできる。
【0062】
また、第1取出軸122及び第2取出軸222は、前記実施形態では現実の軸であったが、他の支持により、第1取出軸122または第2取出軸222が回動中心となる仮想軸であってもよい。
【0063】
また、出力部3は一点であることに限定されず、X軸側アーム13またはY軸側アーム23(第3実施形態では共通環状体6)における任意の位置を出力部3とすることができる。
【符号の説明】
【0064】
11 第1変位発生部、X軸側変位発生部
111 第1固定子、X軸側ステータ
112 第1回動子、X軸側ロータ
113 (X軸側)環状支持部
12 第1変位取出部、X軸側変位取出部
122 第1取出軸
13 第1連結部、X軸側アーム
21 第2変位発生部、Y軸側変位発生部
211 第2固定子、Y軸側ステータ
212 第2回動子、Y軸側ロータ
213 (Y軸側)環状支持部
22 第2変位取出部、Y軸側変位取出部
222 第2取出軸
23 第2連結部、Y軸側アーム
3 出力部
61 第1連結部、内輪部
62 第2連結部、外輪部
A アクチュエータ
T1 第1軌跡
T2 第2軌跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16