特許第6614495号(P6614495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614495
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20191125BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20191125BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20191125BHJP
   F02B 37/18 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   F02B39/00 F
   F01D17/00 J
   F01D25/24 E
   F02B37/18 D
   F02B37/18 E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-22529(P2016-22529)
(22)【出願日】2016年2月9日
(65)【公開番号】特開2017-141704(P2017-141704A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2016年11月18日
【審判番号】不服2018-7994(P2018-7994/J1)
【審判請求日】2018年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】北村 剛
(72)【発明者】
【氏名】茨木 誠一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊隆
【合議体】
【審判長】 渋谷 善弘
【審判官】 金澤 俊郎
【審判官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5943864(US,A)
【文献】 特開2004−204842(JP,A)
【文献】 特開2010−190113(JP,A)
【文献】 特開2008−196332(JP,A)
【文献】 特開昭63−21329(JP,A)
【文献】 特開昭62−251422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/18
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びる回転軸と、
前記回転軸の第一端部側に設けられたタービンホイールと、
前記回転軸の第二端部側に設けられたコンプレッサホイールと、
記タービンホイールを回転駆動させるガスが流れる複数のスクロール流路と、
前記スクロール流路に前記ガスを導入するガス導入部と、
前記タービンホイールから排出されるガスを案内する排気部と、
複数の前記スクロール流路のうちの一つの前記スクロール流路と前記排気部とを連通し、前記スクロール流路から前記ガスを前記排気部内に吹き出させるバイパス通路を有した排気バイパス部と、
を備え、
前記複数のスクロール流路は、
それぞれ軸線方向に並んで配置されるとともに、それぞれ前記タービンホイールの外周部に沿って周方向に連続して前記タービンホイールの外周部に面して設けられ、
前記排気バイパス部は、
前記複数の前記スクロール流路のうち、軸線方向で前記排気部に近い側のスクロール流路のみと前記排気部とを連通させる、前記排気部の周方向に間隔を空けて複数個所に形成されたバイパス通路と
前記バイパス通路を開閉するバルブと、を備え、
前記バルブは、
前記排気部の前記バイパス通路が形成されている部分の内周側から対向する筒状をなし、複数の前記バイパス通路に連通可能な複数の開口を備え、軸線方向にスライド移動可能に設けられているターボチャージャ。
【請求項2】
前記バイパス通路は、
前記排気部の外周部から中心部に向かって前記ガスを吹き出すよう形成されている請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記バイパス通路は、
前記排気部の外周部から、前記タービンホイールの回転方向とは反対方向の旋回流を生じるよう、前記ガスを吹き出す開口を備える請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記ガス導入部は、
前記バイパス通路が連通する前記スクロール流路への前記ガスの導入量を調整するガス導入量調整バルブをさらに備える請求項1からの何れか一項に記載のターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャは、エンジンからタービンに供給される排気ガス流によってタービン内に設けられたタービンホイールを回転させる。タービンホイールの回転に伴って、コンプレッサ内に設けられたコンプレッサホイールが回転し、空気を圧縮する。コンプレッサで圧縮された空気は、エンジンに供給される。
【0003】
このようなターボチャージャのタービンの下流側には、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物等の物質を酸化、還元することで無害化する触媒装置が設けられている場合が多い。
【0004】
この触媒装置は、温度依存性を有している。例えばエンジンの起動直後等、排気ガスの温度が低い状態では、触媒装置は、十分にその性能を発揮することができない。
【0005】
また、ターボチャージャにおいては、タービン入口側の排気ガスの温度に対し、タービンホイールを経たタービン出口側の排気ガスの温度が低い。そこで、ターボチャージャのタービン入口側から排気ガスの一部をバイパスさせてタービン出口側の排気部に導入する構成が提案されている。タービンホイールを経てタービン出口から排出される低温の排気ガスに対し、タービン入口側からバイパスさせた高温の排気ガスを混合させることで、排気部から触媒装置に送り込まれる排気ガスの温度を高める。
【0006】
例えば、特許文献1には、タービン入口側から分岐するバイパス流路と、バイパス流路を経た排気ガスを、タービンから排出される排気ガスの外周側に吐出する複数の吐出孔と、を備える構成が開示されている。このような構成によれば、タービン入口側からバイパス流路を経た高温の排気ガスは、複数の吐出孔から、タービンから排出される低温の排気ガスの外周側に吐出される。複数の吐出孔から吐出される高温の排気ガスは、タービンから排出される低温の排気ガスの流れ方向(軸流方向)と平行に流れ、排気部内で混合される。
【0007】
特許文献2には、ツインスクロールタイプのターボチャージャにおいて、タービン入口側の排気ガスの一部をタービン出口側にバイパスさせるバイパス流路を備えた構成が開示されている。このような構成においては、タービン入口側からバイパス流路を経た高温の排気ガスは、タービン出口側の排気部において、タービンから排出される低温の排気ガスの外周側に吐出される。この構成では、バイパス流路の出口は、排気部の外周部の周方向の一部のみに開口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0004020号明細書
【特許文献2】米国特許第5943864号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された構成は、バイパス流路を経てタービン出口側の外周側から流入する高温の排気ガスが、タービンから排出される低温の排気ガスの流れ方向と平行に流れる。そのため、排気部内において、高温の排気ガスと低温の排気ガスとが均一に混ざり難い。
【0010】
また、特許文献2に開示された構成においては、バイパス流路を経た高温の排気ガスは、排気部の外周部の周方向の一部のみに開口したバイパス流路の出口から排気部内に流入する。この特許文献2に開示された構成においても、排気部内において、高温の排気ガスと低温の排気ガスとが均一に混ざり難い。
【0011】
このように、タービンから排出された低温の排気ガスと、バイパス流路を経た高温の排気ガスとが均一に混ざらないと、排気部から触媒に送り込まれる排気ガスに温度分布が生じる。すると、排気ガスの温度が低い部分においては、温度依存性を有する触媒が活性化し難い。
【0012】
さらに、特許文献1,2に開示された構成においては、タービンハウジングに、タービン入口側とタービン出口側の排気部と連通するバイパス流路を形成する必要がある。このバイパス流路の形成にはコストがかかるという課題がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コストを抑えつつ、タービンから排出される排気ガスを均一に温度上昇させて触媒に送り込むことができるターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明の第一態様によれば、ターボチャージャは、軸線に沿って延びる回転軸と、前記回転軸の第一端部側に設けられたタービンホイールと、前記回転軸の第二端部側に設けられたコンプレッサホイールと、前記タービンホイールを回転駆動させるガスが流れる複数のスクロール流路と、前記スクロール流路に前記ガスを導入するガス導入部と、前記タービンホイールから排出されるガスを案内する排気部と、前記排気部の周方向に複数形成され、複数の前記スクロール流路のうちの一つの前記スクロール流路と前記排気部とを連通し、前記スクロール流路から前記ガスを前記排気部内に吹き出させるバイパス通路を有した排気バイパス部と、を備え、前記複数のスクロール流路は、それぞれ軸線方向に並んで配置されるとともに、それぞれ前記タービンホイールの外周部に沿って周方向に連続して前記タービンホイールの外周部に面して設けられ、前記排気バイパス部は、前記複数の前記スクロール流路のうち、軸線方向で前記排気部に近い側のスクロール流路のみと前記排気部とを連通させる、前記排気部の周方向に間隔を空けて複数個所に形成されたバイパス通路と前記バイパス通路を開閉するバルブと、を備え、前記バルブは、前記排気部の前記バイパス通路が形成されている部分の内周側から対向する筒状をなし、複数の前記バイパス通路に連通可能な複数の開口を備え、軸線方向にスライド移動可能に設けられている。
【0014】
このように、排気部の周方向に複数形成された排気バイパス部のバイパス通路を通し、スクロール流路から排気部内にガスを吹き出すと、タービンホイールから排気部に排出されるガスと混合される。スクロール流路からバイパス通路を通し、タービンホイールを通らずに吹き出すガスは、タービンホイールから排出されるガスよりも高温である。したがって、排気部内で混合されたガスは温度上昇する。これにより、排気部の後流側に触媒装置が設けられている場合、触媒を活性化して機能させることができる。
さらに、ノズルは周方向の複数個所に設けられているため、排気部内で、タービンホイールから排出されるガスとの混合性が高まる。これによって排気部内におけるガスの温度分布を抑え、触媒を有効に活性化させることができる。
さらに、バイパス通路は、スクロール流路と排気部とを連通するのみでよく、別途バイパス孔を形成する必要がない。
【0015】
さらに、ターボチャージャを備えたエンジンが通常作動しているときには、バルブでバイパス通路を閉じておくことができる。また、例えば、ターボチャージャを備えたエンジンの起動時、排気部内における排気ガス温度が低いとき、触媒温度が低いとき等、必要時のみバイパス通路を開き、スクロール流路からバイパス通路を通して排気部内に排気ガスの供給を行うことができる。
【0016】
この発明の第態様によれば、ターボチャージャは、第一態様において、前記バイパス通路は、前記排気部の外周部から中心部に向かって前記ガスを吹き出すよう形成されていてもよい。
このように構成することで、タービンホイールから送り出されるガスに対し、その外周側から、スクロール流路からのガスを混合することができる。これによって、排気部におけるガスの混合性が高まる。
【0017】
この発明の第態様によれば、ターボチャージャは、第一態様において、前記バイパス通路は、前記排気部の外周部から、前記タービンホイールの回転方向とは反対方向の旋回流を生じるよう、前記ガスを吹き出す開口を備えるようにしてもよい。
このように構成することで、タービンホイールから排出され、排気部内でタービンホイールの回転方向と同じ方向に旋回するガスの流れと、バイパス通路を通して排気部内に吹き出され、反対方向の旋回流となるガスの流れとが互いに衝突する。このため、ガスの混合性が高まる。
【0018】
この発明の第態様によれば、ターボチャージャは、第一から第態様の何れか一つの態様において、前記ガス導入部は、前記バイパス通路が連通する前記スクロール流路への前記ガスの導入量を調整するガス導入量調整バルブをさらに備えるようにしてもよい。
このように構成することで、ガス導入部においても、スクロール流路からバイパス通路を通して排気部に供給されるガスの流量を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
上記ターボチャージャによれば、コストを抑えつつ、タービンから排出される排気ガスを均一に温度上昇させて触媒に送り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の第一実施形態におけるターボチャージャの構成を示す断面図である。
図2】上記ターボチャージャのタービンを示す拡大断面図である。
図3】上記タービンを中心軸に直交した方向から見た断面図である。
図4】上記ターボチャージャの第一実施形態の変形例であり、タービンを中心軸に直交した方向から見た断面図である。
図5】上記ターボチャージャの第二実施形態における構成を示す図であり、ターボチャージャを中心軸に直交した方向から見た側面図である。
図6】上記ターボチャージャに備えたガス導入量調整バルブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、この発明の実施形態におけるターボチャージャを図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、この発明の第一実施形態におけるターボチャージャの構成を示す断面図である。
図1に示すように、ターボチャージャ10は、ターボチャージャ本体11と、コンプレッサ20と、タービン30と、を備えている。このターボチャージャ10は、例えば、回転軸14が水平方向に延在するような姿勢で自動車等にエンジンの補機として搭載される。
【0022】
ターボチャージャ本体11は、タービンホイール12、コンプレッサホイール13、回転軸14、及びハウジング16を備えている。
【0023】
ターボチャージャ本体11は、図示しないエンジンからタービン30に供給される排気ガスの流れによって、タービン30内に設けられたタービンホイール12が中心軸Cを中心に回転する。回転軸14及びコンプレッサホイール13は、タービンホイール12と一体に中心軸Cを中心に回転する。コンプレッサ20内に設けられたコンプレッサホイール13は、この回転によって空気を圧縮する。コンプレッサ20で圧縮された空気は、図示しないエンジンに供給される。
【0024】
ハウジング16は、ブラケット(図示せず)、コンプレッサ20、タービン30等を介して車体等に支持されている。ハウジング16は、その一端側に開口部16aを有し、その他端側に開口部16bを有している。
ハウジング16は、その内部にジャーナルベアリング15A,15Bを有している。回転軸14は、ジャーナルベアリング15A,15Bによって、中心軸C回りに回転自在に支持されている。回転軸14の第一端部14a、第二端部14bは、それぞれ開口部16a,16bを通してハウジング16の外部に突出している。
【0025】
ハウジング16は、ハウジング16の外周面16fからハウジング16の径方向内方に向かって延びる給油管接続口17を有している。この給油管接続口17には、ハウジング16の外部から潤滑油を供給するための潤滑油供給管(図示無し)が接続されている。
潤滑油供給管から給油管接続口17に送り込まれた潤滑油は、潤滑油供給流路(図示無し)を経て、ハウジング16内のジャーナルベアリング15A,15B等に供給される。ハウジング16の下部には、ジャーナルベアリング15A,15B等に供給された潤滑油を排出する排油部18が形成されている。排油部18には、潤滑油を排出する配管(図示無し)が接続される。
【0026】
ハウジング16の一端側には、タービン30が設けられている。さらに、ハウジング16の他端側には、コンプレッサ20が設けられている。
タービンホイール12は、ハウジング16の外部で、回転軸14の第一端部14aに設けられている。コンプレッサホイール13は、ハウジング16の外部で、回転軸14の第二端部14bに設けられている。タービンホイール12及びコンプレッサホイール13は、回転軸14と一体に中心軸C回りに回転する。
【0027】
タービン30は、タービンホイール12を収容したタービンハウジング31を備えている。タービンハウジング31は、ターボチャージャ本体11の一端側に取付金具32を介して取り付けられている。タービンハウジング31は、ハウジング16の開口部16aに対向する位置に開口部31aを有している。この開口部31a内に、周方向に複数のタービン翼12wを備えたタービンホイール12が収容されている。
【0028】
タービンハウジング31は、その熱容量を低減するため、チタン(Ti)合金等により形成してもよい。さらに、タービンハウジング31は、その断熱性を高めるため、外周面を、保温材(図示無し)により被覆してもよい。保温材としては、例えば、ガラス繊維、発泡ウレタン等からなる断熱材を用いることができる。
これらの構成を採用した場合、タービンハウジング31内における排気ガスの温度低下を抑えることができる。
【0029】
タービンハウジング31は、ガス導入部33A,33Bと、スクロール流路34A,34Bと、排気部35と、排気バイパス部39と、を備えている。
【0030】
ガス導入部33A,33Bは、エンジン(図示無し)から排出される排気ガスをタービンハウジング31内に送り込む。この実施形態で、エンジン(図示無し)は、複数気筒(シリンダ)を備える。このエンジン(図示無し)は、その動作サイクルの位相差等に応じて、複数の気筒から排出される排気ガスを2系統に分けて排出する。ガス導入部33Aには、一方の系統の排気ガスが送り込まれ、ガス導入部33Bには、他方の系統の排気ガスが送り込まれる。
【0031】
スクロール流路34Aは、ガス導入部33Aに連続して、タービンホイール12の外周側を取り囲むように周方向に連続して形成されている。スクロール流路34Bは、ガス導入部33Bに連続して、タービンホイール12の外周側を取り囲むように周方向に連続して形成されている。ここで、スクロール流路34Aは、ターボチャージャ本体11から離間した側に形成され、スクロール流路34Bは、ターボチャージャ本体11に近い側に形成されている。
スクロール流路34A,34Bは、その周方向の少なくとも一部で、タービンホイール12の外周部に臨むよう設けられ、タービンホイール12を回転駆動させる排気ガスG1,G2が流れる流路を形成する。
【0032】
ガス導入部33A,33Bから流れ込んだ排気ガスG1,G2は、スクロール流路34A,34Bに沿ってタービンホイール12の外周側を周方向に沿って流れる。このように周方向に沿って流れる排気ガスG1,G2がタービンホイール12のタービン翼12wに当たることで、タービンホイール12が回転駆動される。また、排気ガスG1,G2は、タービンホイール12の外周側で各タービン翼12wに当たることで、その流れの向きが変わる。タービン翼12wによって流れの向きが軸方向に変換された排気ガスGeは、タービンハウジング31に形成された開口部31eの内側で、タービンホイール12の内周側から排気部35内に排出される。
【0033】
排気部35は、タービンハウジング31の開口部31eの外周側に固定されている。排気部35は、中心軸C方向に沿ってターボチャージャ本体11から離間する方向に連続する筒状に形成されている。排気部35は、タービンハウジング31側から離間するにしたがって、その内径が漸次増大するテーパ部35tを有している。
排気ガスGeは、タービンハウジング31の開口部31eから、中心軸Cに沿ってターボチャージャ本体11から離間する方向(軸流方向)に流れる。
この排気部35の後流側には、排気管(図示無し)を介して触媒装置(図示無し)が設けられている。
【0034】
排気バイパス部39は、複数のスクロール流路34A,34Bのうちスクロール流路34Aと排気部35とを連通させる。この排気バイパス部39によって、スクロール流路34Aを流れる排気ガスG2の一部が、排気部35へ直接的に導入可能となっている。この排気バイパス部39は、バイパス通路40と、スライドバルブ(バルブ)50と、を備えている。
【0035】
図2は、上記ターボチャージャのタービンを示す拡大断面図である。図3は、上記タービンを中心軸に直交した方向から見た断面図である。
図2図3に示すように、バイパス通路40は、ターボチャージャ本体11から離間した側に形成されたスクロール流路34Aと、排気部35の内側とを連通するように形成されている。各バイパス通路40は、中心軸Cに直交する面に対し、スクロール流路34A側から排気部35側に向かって、ターボチャージャ本体11から離間する方向に傾斜して形成されている。これらバイパス通路40は、中心軸C方向から見たときに、排気部35の径方向に延びるよう形成されている。
バイパス通路40は、排気部35に対して、タービンホイール12よりも外周側で開口している。このようなバイパス通路40は、排気部35の全周にわたって、周方向に間隔を空けた複数個所に形成されている。
【0036】
スライドバルブ50は、バイパス通路40を開閉する。このスライドバルブ50は、バイパス通路40が形成されている部分に内周側から対向する筒状をなしている。スライドバルブ50は、複数のバイパス通路40に連通可能な複数の開口50hを備えている。
【0037】
スライドバルブ50は、アクチュエータ(図示無し)により、中心軸C方向に沿ってスライド移動可能、または中心軸C回りの周方向に沿ってスライド移動可能に設けられている。スライドバルブ50は、複数の開口50hが複数のバイパス通路40の開口とそれぞれ一致するように対向したときに開状態となる。この開状態において、バイパス通路40を通る排気ガスG1が排気部35内に吹き出される。
【0038】
さらに、スライドバルブ50は、開口50hが上述したバイパス通路40と対向した位置からスライドし、開口50hの形成されていない非開口部50cがバイパス通路40と対向したときに閉状態となる。これにより、バイパス通路40を通る排気ガスG1一部の排気部35内への吹き出しが遮断される。さらに、スライドバルブ50は、開口50hがバイパス通路40と重なる量、すなわち開度を調整することで、バイパス通路40を通る排気ガスG1の排気部35内への吹出量を自在に調整することができる。
【0039】
このような構成によれば、スライドバルブ50の開口50hをバイパス通路40と対向させて閉状態から開状態とすると、スクロール流路34Aを流れる排気ガスG1の一部がバイパス通路40を通り、排気部35の中央部に向かって吹き出す。バイパス通路40は、排気部35の全周にわたって複数個所に形成されているので、排気部35内には、周方向全周の外周側から中央部に向かって、タービンホイール12を経ずにバイパスされた高温の排気ガスG1が吹き出す。
排気部35の中央部には、タービンホイール12から送り出される排気ガスGeが中心軸C方向に流れている。これにより、タービンホイール12から送り出される排気ガスGeに、外周側から流れ込む排気ガスG1が混合され、排気部35の出口における排気ガス温度が上昇する。この温度上昇した排気ガスは、後流の排気管(図示無し)、触媒装置(図示無し)へと流れていく。
【0040】
なお、上記したような排気バイパス部39により行われる排気ガスG1の排気部35への供給は、排気部35内の排気ガス温度が、触媒装置(図示無し)が十分に機能しない所定温度以下である場合にのみ行うようにしても良い。この場合、ターボチャージャ10を備える車両の制御ユニットにおいて、エンジン(図示無し)の起動時、排気部35内の排気ガス温度が低いとき、触媒装置の触媒温度が低いとき等、予め設定した所定の条件を満足したときに、スライドバルブ50をスライドさせて閉状態から開状態とすればよい。
【0041】
したがって、上述した第一実施形態のターボチャージャ10によれば、排気部35の周方向に複数形成されたバイパス通路40を通し、スクロール流路34A,34Bから排気部35内に排気ガスG1を吹き出すと、タービンホイール12から排気部35に排出される排気ガスGeと混合される。これにより、排気部35の出口側で、排気ガス温度は上昇する。そのため、排気部35の後流側に触媒装置が設けられている場合、触媒を活性させて十分に機能させることができる。
さらに、バイパス通路40は周方向の複数個所に設けられているため、タービンホイール12から排出される排気ガスGeとの混合性が高まる。これによって排気部35内における排気ガスの温度分布を均一化し、触媒を活性化して機能させることができる。
さらに、バイパス通路40は、スクロール流路34A,34Bと排気部35とを連通するよう形成すればよく、別途バイパス孔を形成する必要がない。
このようにして、コストを抑えつつ、タービンホイール12から排出される排気ガスGeを均一に温度上昇させて触媒装置に送り込むことができる。
【0042】
ターボチャージャ10は、バイパス通路40を開閉するスライドバルブ50をさらに備える。このように構成することで、ターボチャージャ10を備えたエンジンが通常作動しているときには、スライドバルブ50でバイパス通路40を閉じておき、例えば、ターボチャージャ10を備えたエンジンの起動時、排気部35内における排気ガス温度が低いとき、触媒温度が低いとき等、必要時のみ、スクロール流路34A,34Bからバイパス通路40を通して排気部35内に排気ガスG1の排出を行うことができる。
【0043】
バイパス通路40は、排気部35の外周部から中心部に向かって排気ガスG1を吹き出すよう形成されている。このように構成することで、タービンホイール12から送り出される排気ガスGeに対し、その外周側から、スクロール流路34A,34Bからの排気ガスG1を混合することができる。これによって、排気部35における排気ガスの混合性が高まる。
【0044】
(第一実施形態の変形例)
上述した第一実施形態では、バイパス通路40を、排気部35の径方向に延びるよう形成したが、これに限るものではない。
図4は、この発明の第一実施形態の変形例におけるターボチャージャのタービンを中心軸に直交した方向から見た断面図である。
【0045】
図4に示すように、ターボチャージャ10Bの排気部35に形成されたバイパス通路40Bと、スライドバルブ(バルブ)50に形成された開口50dは、中心軸C方向から見たときに、排気部35の径方向(言い換えれば、中心軸Cを中心とした放射方向)に対して傾斜して形成してもよい。これにより、排気部35の周方向複数個所に設けられたバイパス通路40Bから排気部35内に吹き出された排気ガスG1(図2参照)は、排気部35の中心部に向かいつつ、排気部35の中心軸回りに旋回する旋回流を形成する。
【0046】
ここで、旋回流の旋回方向は、タービンホイール12(図2参照)の回転方向と反対向きとするのが好ましい。このように構成することで、タービンホイール12から排出され、排気部35内でタービンホイール12の回転方向と同じ方向に旋回する排気ガスGe(図2参照)の流れと、バイパス通路40を通して排気部35の内方に吹き出されて反対方向に旋回する排気ガスG1の流れとが、互いに衝突するため、排気ガスGeと排気ガスG1との混合性を高めることができる。
【0047】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態を図面に基づき説明する。この第二実施形態においては、ガス導入量調整バルブ60を備える点でのみ第一実施形態と異なるので、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0048】
図5は、この発明の第二実施形態におけるターボチャージャの構成を示す図であり、ターボチャージャを中心軸に直交した方向から見た側面図である。図6は、上記ターボチャージャに備えたガス導入量調整バルブを示す図である。
図5図6に示すように、この実施形態におけるターボチャージャ10Cは、スクロール流路34Aに排気ガスG1を送り込むガス導入部33Aに、ガス導入量調整バルブ60を備える。
ガス導入量調整バルブ60は、図示しないアクチュエータによって駆動され、ガス導入部33Aの開口面積を増減する。
【0049】
このような構成によれば、排気部35内に排気ガスG1を送り込むときには、スライドバルブ50(図2図3参照)と、ガス導入量調整バルブ60とを作動させることで、排気ガスG1の流量調整を行うことができる。
【0050】
したがって、上述した第二実施形態のターボチャージャ10Cによれば、バイパス通路40が連通するスクロール流路34Aへの排気ガスG1の導入量を調整するガス導入量調整バルブ60をさらに備えているので、ガス導入部33Aにおいても、スクロール流路34Aからバイパス通路40を通して排気部35に供給される排気ガスG1の流量を調整することが可能となる。
これにより、排気部35に対する排気ガスG1の流量調整を、より細かく行うことも可能となる。
【0051】
(その他の変形例)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、ターボチャージャ本体11の構成は、いかなるものであってもよい。
また、スクロール流路34A,34Bのレイアウトや構成等についても上記に例示した構成に限らない。さらに、上述した各実施形態においては、ターボチャージャ10,10B,10Cが、複数のスクロール流路として2つのスクロール流路を備える場合を例示したが、3つ以上のスクロール流路を備えてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10,10B,10C ターボチャージャ
11 ターボチャージャ本体
12 タービンホイール
12w タービン翼
13 コンプレッサホイール
14 回転軸
14a 第一端部
14b 第二端部
15A,15B ジャーナルベアリング
16 ハウジング
16a 開口部
16b 開口部
16f 外周面
17 給油管接続口
18 排油部
20 コンプレッサ
30 タービン
31 タービンハウジング
31a 開口部
31e 開口部
32 取付金具
33A,33B ガス導入部
34A,34B スクロール流路
35 排気部
35t テーパ部
39 排気バイパス部
40,40B バイパス通路
50,50B スライドバルブ(バルブ)
50c 非開口部
50d,50h 開口
60 ガス導入量調整バルブ
C 中心軸
G1,G2 排気ガス
Ge 排気ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6