(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614535
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】金属汚染物質除去装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/02 20060101AFI20191125BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20191125BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20191125BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
B01D53/02
C23C16/44 E
B01J20/26 A
B01J20/28 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-37244(P2018-37244)
(22)【出願日】2018年3月2日
(65)【公開番号】特開2019-150761(P2019-150761A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501138046
【氏名又は名称】株式会社コンタミネーション・コントロール・サービス
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 豊彦
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−089240(JP,U)
【文献】
特開2000−046703(JP,A)
【文献】
特開2010−248431(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/080211(WO,A1)
【文献】
特開2001−083052(JP,A)
【文献】
特開平03−284306(JP,A)
【文献】
特開昭51−094888(JP,A)
【文献】
特開2008−262965(JP,A)
【文献】
特開2004−160290(JP,A)
【文献】
実開昭63−090419(JP,U)
【文献】
特開昭58−223423(JP,A)
【文献】
特開2006−170659(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3008218(JP,U)
【文献】
特開2006−90732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02
B01D 8/00
B01J 20/26
B01J 20/28
C23C 16/44
G01N 1/00−1/44
H01L 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属汚染物質を含むプロセスガスが流れるライン上に配設され、前記ラインの上流側に接続される流入口及び前記ラインの下流側と接続される流出口を有するシリンダと、該シリンダの内部空間内に配設されるトラップエレメントとによって構成される金属汚染物質除去装置において、
前記トラップエレメントは、一端が前記流入口と連通すると共に他端が前記流出口と連通し、前記シリンダの内部空間に屈曲して配置されるフッ素樹脂製多孔質の中空チューブであること、および、
前記流入口と前記シリンダの内部空間とが連通孔を介して連通されることを特徴とする金属汚染物質除去装置。
【請求項2】
前記流入口と連通する上流側端子及び前記流出口と連通する下流側端子は、シリンダの内部空間内を軸方向に延出する支持ロッドによってシリンダの両端に押圧されて保持され、前記中空チューブが、前記上流側端子から前記支持ロッドの内部に画成されるロッド内部空間に延出し、さらに該ロッド内部空間から前記支持ロッドの外部に画成されるロッド外部空間に延出して支持ロッドの外周に巻回され、その後、前記支持ロッドのロッド内部空間に戻って前記下流側端子と接続されることを特徴とする請求項1記載の金属汚染物質除去装置。
【請求項3】
前記ロッド内部空間及び前記ロッド外部空間は、前記シリンダの流入口と導通することを特徴とする請求項2記載の金属汚染物質除去装置。
【請求項4】
前記上流側端子の上流側には、複数のフッ素樹脂製網状体がプロセスガスの流入方向に垂直に配された多層構造からなる上流側トラップエレメントを具備することを特徴とする請求項2又は3のいずれか1つに記載の金属汚染物質除去装置。
【請求項5】
前記シリンダの円筒状側面は、蛇腹状に形成され、シリンダ自体が屈曲自在であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の金属汚染物質除去装置。
【請求項6】
前記シリンダ自体若しくはシリンダの上流側に、前記プロセスガスを加熱するための加熱手段を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の金属汚染物質除去装置。
【請求項7】
請求項1に記載の金属汚染物質除去装置と、金属汚染物質を含むプロセスガスが流れるライン上に配設され、前記ラインの上流側に接続される上流側端子及び前記ラインの下流側と接続される下流側端子を具備するシリンダと、シリンダ内部に配設されるトラップエレメントとによって構成され、前記トラップエレメントは、一端が前記上流側端子と接続されると共に他端が閉塞され、前記シリンダの内部空間に屈曲して配置されるフッ素樹脂製多孔質の中空チューブであり、前記中空チューブの外側に位置する空間が流出口と連通する金属汚染処理装置を連続してライン上に配置したことを特徴とする金属汚染物質除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度ガスなどから金属汚染物質を除去するための金属汚染物質除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1(特表2008−507397号公報)は、金属が、敏感な装置上に堆積せず、デバイスの故障を引き起こさないための、高表面積の無機酸化物を含む浄化材料を使用した、高純度ガスから金属化合物を除去するための方法および装置を開示する。このため、この方法は、超高純度ガス流れを、バルク酸素原子より小さい配置数を有する表面酸素元素を含有する高表面積向き酸化物を含む精製材料と接触させることにより、超高純度ガス流れから金属汚染物質を除去するものである。また、この引用文献1では、浄化材料は、ガスによる化学的及び物理的劣化に対して耐久性のある形態のキャニスタの中に配設されるもので、前記キャニスタには、フローラインに接続するためのガスポートが形成される。これにより、一方のガスポートからフローラインを流れる高純度ガス がキャニスター内に導入され、キャニスタ内の浄化材料の間を通過することによって超高純度ガスの中から金属化合物を除去することができ、その後他方のガスポートからフローラインに戻されるものである。
【0003】
引用文献2(特開2010−255103号公報)は、被処理体に対して処理を行うための処理容器を備えた処理装置において、少なくとも一部が金属により構成され、ハロゲンを含む腐食性ガスを前記処理容器に供給するためのガス供給流路と、前記ガス供給流路における金属部分を通流した前記腐食性のガスに光エネルギー、熱エネルギー及び衝突エネルギーの少なくとも1つに供給して、前記腐食性ガス中のハロゲンと前記金属とを含む化合物を安定化させるためのエネルギー供給部と、このエネルギー供給部によりエネルギーが供給されて安定化した化合物を捕捉する捕捉手段と、を備えるように処理装置を構成し、前記化合物が処理容器に供給されることを防ぐものである。この引用文献2において、エネルギー供給部にはボールが充填されており、流れ込んだガスがボールに衝突することによって還元され、さらにフィルタによってパーティクルが除去されることが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−507397号公報
【特許文献2】特開2010−255103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した引用文献1では、超高純度ガス流れは、耐腐食性ハウジング内部に収容された浄化材料(高表面積無機酸化物を含む精製材料)と接触させることにより、金属汚染物質が除去されるものであり、前記耐腐食性ハウジングがステンレス鋼であることが開示されている。この場合、超高純度ガスがハロゲンである場合には、引用文献2に開示されるように、ステンレス鋼と反応して金属汚染が起きてしまうという不具合が生じる。
【0006】
また、上述した引用文献2には、成膜装置やエッチング装置に使用されるハロゲンを含むガスは、そのガスを供給するためのガス供給機器を構成するステンレス鋼(SUS)と反応し、ハロゲン、金属及び酸素からなる3元素化合物やハロゲン及び金属からなる2元素化合物が生成し、それらの化合物によるガスの金属汚染が起きてしまうという不具合が生じることが開示されている。この引用文献2のエネルギー供給部では、ボール間に例えばPt(白金)やNi(ニッケル)からなる網状部材が担持されており、この網状部位剤が内管を流通するガスに接することで、そのガス中の蒸気圧の高い化合物が蒸気圧の低い化合物に変換され、活性化が低下した化合物は、ヒータの熱エネルギーとボールへの衝突エネルギーとが供給されることで、安定な化合物へ変換されるので、より確実に処理容器及びウェハWの金属汚染を抑えることができることが開示される。
【0007】
しかしながら、引用文献1では、ステンレス鋼と反応して金属汚染が生じる懸念があり、さらに引用文献2では、気体とボールとの接触面積が大きくないことから、金属汚染の十分な除去ができないという問題がある。
【0008】
このため、本発明は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス、水素、酸素、二酸化炭素などの高純度ガス、又は、ハロゲンガス(フッ素、塩素、臭素、塩化水素、フッ化水素、ジクロルシランなど)あるいは、ハロゲンガスを含有する不活性ガス、高純度ガスから、金属、金属酸化物、ハロゲン化金属などの微細粒子(パーティクル)、又は蒸気状金属汚染物質を精度良く除去することのできる金属汚染物質除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、金属汚染物質を含むプロセスガスが流れるライン上に配設され、前記ラインの上流側に接続される流入口及び前記ラインの下流側と接続される流出口を有するシリンダと、シリンダ内部に配設されるトラップエレメントとによって構成される金属汚染物質除去装置において、前記トラップエレメントは、一端が前記流入口と連通すると共に他端が前記流出口と連通し、前記シリンダの内部空間に屈曲して配置されるフッ素樹脂製多孔質の中空チューブであることにある。
【0010】
尚、前記プロセスガスは、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス、水素、酸素、二酸化炭素などの高純度ガスまたはハロゲンガス(フッ素、塩素、臭素、塩化水素、フッ化水素、ジクロルシランなど)あるいはハロゲンガスを含有する不活性ガス、高純度ガスであり、特に、ハロゲンガスを含有する高純度ガスに対して、本発明は好適である。
【0011】
また、前記金属汚染物質は、金属、金属酸化物、ハロゲン化金属などの微細粒子(いわゆるパーティクル)または蒸気状金属汚染物質である。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、前記流入口と連通すると共に他端が前記流出口と連通するトラップエレメントが、前記シリンダの内部空間に屈曲して配置されるフッ素樹脂製多孔質の中空チューブであり、金属汚染物質を含むプロセスガスが、シリンダの内部空間内に屈曲して配される前記中空チューブ内を通過することによって、中空チューブの内周面と接触し、フッ素樹脂に金属汚染物質、特に蒸気状金属汚染物質が吸着し、プロセスガス内から除去されるものである。尚、中空チューブが内部空間内を屈曲して配されることによって、中空チューブとプロセスガスの接触表面積及び接触時間を確保することができるため、金属汚染物質を確実に除去できるものである。トラップエレメントの材質は、金属汚染物質、特に蒸気状金属汚染物質が吸着しやすいので、フッ素樹脂が好ましい。
【0013】
また、本発明において、前記流入口と連通する上流側端子及び前記流出口と連通する下流側端子は、シリンダの軸方向に延出する支持ロッドによってシリンダの両端に押圧されて保持され、前記中空チューブが、前記
上流側端子から前記支持ロッドの内部に画成されるロッド内部空間に延出し、さらに該ロッド内部空間から前記支持ロッドの外部に画成されるロッド外部空間に延出して支持ロッドの外周に巻回され、その後、前記支持ロッドのロッド内部空間に戻って前記
下流側端子と接続されることが望ましい。
【0014】
これによって、所定以上の長さの中空チューブをシリンダの内部空間に複数回屈曲させて配することができるので、中空チューブ内を流れるプロセスガスは、中空チューブ内を複数回屈曲して流出口に向かって流れることから、中空チューブの内側側面に複数回衝突させることができるので、金属汚染物質(金属、金属酸化物、ハロゲン化金属などの微細粒子(いわゆるパーティクル)及び蒸気状金属汚染物質)を効率的にフッ素樹脂に吸着させることができ、プロセスガスから金属汚染物質をさらに効果的に除去することができるものである。
【0015】
さらに、本発明において、前記ロッド内部空間及び前記ロッド外部空間は、前記シリンダの流入口と導通することが望ましい。これによって、中空チューブの外側の空間(チューブ外部空間)と、プロセスガスが流れる内側の空間(チューブ内部空間)との圧力差を低減できるため、プロセスガスのチューブ外部空間への漏れを防止できるものである。
【0016】
さらにまた、本発明の第2の態様は、金属汚染物質を含むプロセスガスが流れるライン上に配設され、前記ラインの上流側に接続される
上流側端子及び前記ラインの下流側と接続される
下流側端子を具備するシリンダと、シリンダ内部に配設されるトラップエレメントとによって構成される金属汚染物質除去装置において、前記トラップエレメントは、一端が前記
上流側端子と接続されると共に他端が閉塞され、前記シリンダの内部空間に屈曲して配置されるフッ素樹脂製多孔質の中空チューブであり、前記中空チューブの外側に位置する空間が
流出口と連通することにある。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、前記流入口と連通すると共に他端が前記流出口と連通するトラップエレメントが、前記シリンダの内部空間に屈曲して配置される他端が閉塞されたフッ素樹脂製多孔質の中空チューブであり、金属汚染物質を含むプロセスガスが、シリンダの内部空間内に屈曲して配された前記中空チューブ内を通過し、中空チューブの多孔を通過して、中空チューブの内部の空間(チューブ内部空間)からチューブの外側の空間(チューブ外側空間)へ漏出することによって、フッ素樹脂に金属汚染物質がフィルタリングされ、またフッ素樹脂に吸着してプロセスガス内から除去されるものである。
【0018】
さらに、前記
上流側端子の上流側には、複数のフッ素樹脂製網状体がプロセスガスの流入方向に垂直に配された多層構造からなる上流側トラップエレメントを具備することが望ましい。
【0019】
これによって、フッ素樹脂製網状体の多層構造を有する上流側トラップエレメントを設けることによって、金属汚染物質、特にパーティクルがプロセスガスから除去され、次に設けられたトラップエレメントによって、上述したように蒸気状金属汚染物質が除去されるものである。
【0020】
前記シリンダの円筒状側面は、蛇腹状に形成され、シリンダ自体が屈曲自在であることが望ましい。
【0021】
これによって、金属汚染物質除去装置をラインの屈曲部分に配置することも可能となるものである。
【0022】
さらにまた、前記シリンダ自体若しくはシリンダの上流側に、前記プロセスガスを加熱するための加熱手段を設けることが望ましい。
【0023】
これによって、プロセスガスが加熱されるため、フッ素樹脂による金属汚染物質の除去効率を増大させることができるものである。
【0024】
また、本発明に係る金属汚染除去装置は、前記第1の態様に係る金属汚染除去装置の後流側に、前記第2の態様に係る金属汚染除去装置を設けることが望ましい。
【0025】
このように、2つの金属汚染除去装置を連結して使用することによって、超高純度ガス中の金属汚染物質をさらに低減させることができるものである。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、シリンダの内部空間内に屈曲して所定の長さで配置されたフッ素樹脂製多孔質の中空チューブ内に、金属汚染物質を含むプロセスガスを流すことによって、中空チューブ内を屈曲して流れるプロセスガスが中空チューブの内周側面に衝突しながら移動するため、プロセスガスからフッ素樹脂に効率的に吸着することから、プロセスガスから金属汚染物質を確実に除去することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係る金属汚染物質除去装置の構成を示した断面構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例2に係る金属汚染物質除去装置の構成を示した断面構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例3に係る金属汚染物質除去装置の構成を示した断面構成図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例4に係る金属汚染物質除去装置の構成を示した断面構成図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例5に係る金属汚染物質除去装置の構成を示した断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る金属汚染物質除去装置は、例えばデバイスの生産等のために用いられるプロセスガスが流れるライン上に配置され、プロセスガスから金属汚染物質を除去するものである。前記プロセスガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス、水素、酸素、二酸化炭素などの高純度ガスまたはハロゲンガス(フッ素、塩素、臭素、塩化水素、臭化水素、フッ化水素、ジクロルシランなど)あるいはハロゲンガスを含有する不活性ガス、高純度ガスである。このプロセスガスに含まれる金属汚染物質としては、金属、金属酸化物、ハロゲン化金属などの微細粒子(いわゆるパーティクル)及び蒸気状金属汚染物質である。以下、本発明に係る金属汚染物質除去装置の実施例について、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0029】
本発明の実施例1に係る金属汚染物質除去装置1は、プロセスガスが流れるライン2上に配置される円筒状の金属製シリンダ3を具備する。この金属製シリンダ3は、その内側がシリカコートなどのセラミックコート、フッ素樹脂コートなどコーティング処理が施されている。
【0030】
前記金属製シリンダ3は、前記ライン2と接続され、プロセスガスの流入口4が形成された上流側接続端部31と、前記ライン2と接続され、プロセスガスの流出口5が形成された下流側接続端部32とを有し、さらにその内部に前記流入口4及び前記流出口5と連通する内部空間6が画成されるものである。尚、本実施例では、金属製シリンダ3は、前記上流側接続端部31及び前記内部空間6の上流側を画成する上流側円筒部33によって構成される上流側コンポーネント35と、前記下流側接続端部32及び前記内部空間6の下流側を画成する下流側円筒部34によって構成される下流側コンポーネント36とによって構成され、両者が例えば対向する端部において螺合されることによって一体化されるものである。尚、前記上流側円筒部33及び下流側円筒部34によって円筒側面部30が構成される。また、円筒側面部30の外側には加熱手段として加熱用ヒータ11が配置され、内部を通過するプロセスガスを加熱するものである。
【0031】
前記金属製シリンダ3の内部空間6の上流側には上流側端子7が配され、下流側には下流側端子8が配され、支持ロッド9によって、上流側端子7は前記シリンダ3の上流側側面部37に、下流側端子8は前記シリンダ3の下流側側面部38に押圧され保持される。尚、前記支持ロッド9は、前記上流側端子7に接触して押圧する上流側フランジ91と、前記下流側端子8に接触して押圧する下流側フランジ92と、前記上流側フランジ91及び下流側フランジ92とがその両端に一体に形成された円筒状支持部93とによって構成され、さらに前記円筒状支持部93は、前記シリンダ3の内部空間6をロッド内部空間61及びロッド外部空間62に画成する。また、前記円筒状支持部93には、下流側近傍に前記ロッド内部空間61とロッド外部空間62とを連通する少なくとも一対の貫通孔94が形成される。
【0032】
前記上流側端子7は、前記流入口4と連通する上流側開口部71を有し、さらに前記ロッド内部空間61に延出する円筒状の上流側装着端子72を有する。さらに前記上流側開口部71と前記ロッド外部空間62とを連通する連通孔73が形成される。
【0033】
前記下流側端子8は、前記流出口5と連通する下流側開口部81を有し、さらに前記ロッド内部空間61に延出する円筒状の下流側装着端子82を有する。
【0034】
前記シリンダ3の内部空間6に配されるトラップエレメント100は、フッ素樹脂製多孔質の中空チューブ10であり、一端が上流側装着端子72に装着固定されると共に、前記ロッド内部空間61の下流側に延出し、前記貫通孔
94の1つを介して前記ロッド外部空間62に延出し、さらに上流側に延出して前記円筒状支持部93の周りを巻回されて下流側に延出し、前記貫通孔
94の他の1つを介して前記ロッド内部空間61に延出し、前記下流側装着端子82に装着固定されるものである。
【0035】
以上の構成により、プロセスガスは、ライン2から流入口4及び上流側開口部71を介して前記上流側装着端子72から前記トラップエレメントとしての中空チューブ10内へ流入し、前記内部空間6内に屈曲して配置された中空チューブ10内を流れ、前記下流側装着端子82を介して前記下流側開口部81及び流出口5からライン2に戻るものである。また、プロセスガスは、上流側開口部71から連通孔73を介してロッド外部空間62へ至り、さらにロッド外部空間62から貫通孔94を介して前記ロッド内部空間61に至り、前記ロッド外部空間62及びロッド内部空間61の圧力を流入口3の圧力と同一にすることによって、プロセスガスが前記中空チューブ10から外部へ漏れることを防止するものである。
【0036】
これによって、多孔質のフッ素樹脂によって形成される中空チューブ10を流れるプロセスガスに含まれる金属汚染物質を中空チューブ10の内側面で捕捉することができるため、プロセスガスに含有される金属汚染物質を効率的に除去できるものである。さらに、中空チューブ10を前記内部空間6に屈曲させて長く配置できることから、金属製シリンダ3の軸方向の長さよりもかなり長い距離を確保できるために、金属汚染物質を除去するための中空チューブ10の内側の側面積、いわゆる金属汚染物質の捕捉表面積を拡大することができるという効果を有するものである。
【0037】
さらに、前記加熱用ヒータ11を作動させることによって、前記金属製シリンダ3の内部を通過するプロセスガスを加熱することによって、蒸気になっていない金属汚染物質を蒸気状にして、フッ素樹脂製多孔質の中空チューブ10による金属汚染物質の除去能力がさらに増加するものである。
【実施例2】
【0038】
実施例2に係る金属汚染物質除去装置1Aは、
図2に示すように、金属製シリンダ3内に、連続して配された第1及び第2のトラップエレメント100A,100Bを具備することを特徴とするものである。以下、実施例の説明において、実施例1と同一の箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0039】
前記第1のトラップエレメント100Aは、前記シリンダ3の上流側に装着されるハウジング8内に配置されるもので、このハウジング8内にプロセスガスの流入方向に沿って複数段配置されたフッ素樹脂製網状体10Aによって構成される。また、ハウジング8の内部空間81は、前記流入口4と連通する上流側開口部82と第2のトラップエレメント100B側に開口する下流側開口部83とを有し、前記フッ素樹脂製網状体10Aは、前記内部空間81に配置される。さらに、前記フッ素樹脂製網状体10Aは、所定の径の孔が複数形成された多孔性のものでも良く、また所定のメッシュ、線径、目開き、開孔率を有する網目状のものであっても良い。
【0040】
前記ハウジング8の下流側には、前記第2のトラップエレメント100Bが装着される装着端子7aが装着され、支持ロッド85によって第1のトラップエレメント100Aの下流側端部84に前記ハウジング8内で保持される。また、前記支持ロッド85は前記流出口5と連通する内部空間6を画成する。前記トラップエレメント100Bは、前記装着端子7aの装着部72aに装着され、前記内部空間6内に屈曲して延出されるフッ素樹脂製多孔質の中空チューブ10Bであり、この中空チューブ10Bの下流側端部は閉塞されている。
【0041】
以上の構成により、ライン2から流入口4を介して流入したプロセスガスは、最初に複数段に配置されたフッ素樹脂製網状体10Aを通過して、所定の大きさ以上のパーティクルが除去され、さらに中空チューブ10Bの内部から、前記内部空間6へ漏出する際に、金属汚染物質、特に蒸気状金属汚染物質が除去されるものである。これによって、プロセスガスから金属汚染物質を二重に除去することができるものである。
【0042】
さらに、加熱ヒータ11を作動させることによって、プロセスガスを加熱し、さらに金属汚染物質の除去能力を向上させるものである。
【実施例3】
【0043】
本発明の実施例3に係る金属汚染物質除去装置1Bは、
図3で示すように、前記ライン2と接続される流入側ブロック40と、前記ラインと接続される流出側ブロック50と、前記流入側ブロック40及び流出側ブロック50を接続するシリンダ3Bとによって構成され、さらにこのシリンダ3Bが蛇腹状に屈曲自在に形成されるものである。
【0044】
前記流入側ブロック40には、上流側装着端子72bを有する上流側端子7bが装着され、前記流出側ブロック50には、下流側装着端子82bを有する下流側端子8bが装着される。トラップエレメント100は、フッ素樹脂製多孔質の中空チューブ10であり、シリンダ3Bによって画成される内部空間6内を屈曲して延出し、前記上流側装着端子72bと前記下流側装着端子82bの間を接続する。また、前記内部空間6は、前記上流側端子7bに形成された連通孔73bによって流入口4と連通する。
【0045】
さらに、シリンダ3Bを加熱する加熱用ヒータ11Bが設けられるが、この実施例では、屈曲自在なシリンダ3Bに対応して、屈曲自在である。
【0046】
以上の構成の実施例3に係る金属汚染物質除去装置1Bにおいて、ライン2から流入したプロセスガスは、上流側端子7bの上流側装着端子72bを介して前記中空チューブ10内を中空チューブ10の屈曲した形状に合わせて流れ、下流側端子8bの下流側装着端子82bを介して流出口5からライン2に流出する。プロセスガスは、フッ素樹脂製多孔質の中空チューブ10内を流れる間に、中空チューブ10の内側面に衝突し接触するので、プロセスガス内に含まれる金属汚染物質がフッ素樹脂製多孔質の中空チューブ10の多孔質に捕捉されるために、プロセスガスから金属汚染物質が効率的に除去されるものである。
【0047】
特に実施例4では、シリンダ3Bが屈曲自在であることから、ライン2の屈曲部分に用いることができるため、金属汚染物質除去装置1Bの配置箇所に汎用性を持たせることができるものである。
【実施例4】
【0048】
実施例4に係る金属汚染物質除去装置1Cは、実施例2に係る金属汚染物質除去装置1Aの第2のトラップエレメント100Bに代えて、実施例1に係る金属汚染物質除去装置1Aのトラップエレメント100を採用したことを特徴とするものである。
【0049】
この実施例4に係る金属汚染物質除去装置1Cにおいても、実施例2に係る金属汚染物質除去装置1Aの場合と同様の効果を得ることができるものである。
【実施例5】
【0050】
実施例5は、
図5で示すように、実施例1の係る金属汚染物質除去装置1と、実施例2の係る金属汚染物質除去装置1Aとを連続してライン2上に配置したことを特徴とするものである。しかしながら、実施例5は、上述した実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4に係る金属汚染物質除去装置1,1A,1B,1Cのいずれか、同種若しくは異種を連続して設けても良いものである。これによって、さらに金属汚染物質の除去効率を向上させることができるものである。
【0051】
評価:
評価方法:HBrガスを1cc/min(1013hPa、25℃)の流量で30分間サンプル内を通過させ、ウェハに吹き付けてウェハメタル汚染量をICPMS(誘導結合プラズマ質量分析法)によって測定した。
【0052】
サンプル1:SUS16Lフレキ配管(比較例1)
サンプル2:SUS16L3/8インチ配管(比較例2)
サンプル3:ガスフィルタ(エレメント:テフロン(登録商標)メンブレン:本発明実施例2のフッ素樹脂製網状体1枚に相当する。)(比較例3)
サンプル4:ガスフィルタ(エレメント:ステンレス焼結体)(比較例4)
サンプル5:実施例1に係る金属汚染物質除去装置(本発明1)
サンプル6:実施例2に係る金属汚染物質除去装置(本発明2)
サンプル7:実施例3に係る金属汚染物質除去装置(本発明3)
サンプル8:実施例1に係る金属汚染物質除去装置+80℃加熱(本発明4)
サンプル9:実施例2に係る金属汚染物質除去装置+80℃加熱(本発明5)
サンプル10:実施例3に係る金属汚染物質除去装置+80℃加熱(本発明6)
【0053】
【表1】
【0054】
以上のように、本発明に係る金属汚染物質除去装置は、十分な金属汚染物質除去能力を有するものである。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B,1C 金属汚染物質除去装置
2 ライン
3、3B シリンダ
4 流入口
5 流出口
6 内部空間
7 上流側端子
8 下流側端子
9 支持ロッド
10、10B 中空チューブ
10A 網状体
11、11B 加熱用ヒータ
31 上流側接続端部
32 下流側接続端部
33 上流側円筒部
34 下流側円筒部
35 上流側コンポーネント
36 下流側コンポーネント
61 ロッド内部空間
62 ロッド外部空間
72 上流側装着端子
82 下流側装着端子
100,100A,100B トラップエレメント