(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建造物の複数のフロア間を昇降する乗りかごを有し、前記建造物にて火災の発生を知らせる火災発生信号が取得された際に、自律走行が可能で消火活動を行う消火装置を前記乗りかごに乗車させて、火災が発生したフロアである火災発生フロアに移動させるエレベータ装置であって、
前記乗りかご内の乗員の有無を検知する乗員検知部と、
前記火災発生信号が取得された際に、前記消火装置が待機するフロアである待機フロアに前記乗りかごを移動させる乗りかご制御部と、
前記火災発生信号が取得され、且つ、前記乗りかご内に乗員が乗車していないときに、前記消火装置を前記乗りかご内へ乗車させる指令である乗車指令信号を出力する指令信号送信部と、を備え、
前記乗りかご制御部は、前記消火装置が前記乗りかごに乗車した後に、前記乗りかごを前記火災発生フロアに移動させること
を特徴とするエレベータ装置。
建造物の複数のフロアに移動可能な乗りかごを有するエレベータ装置と、前記乗りかごに乗車して各フロアに移動可能であり、前記建造物にて火災の発生を知らせる火災発生信号が取得された際に火災が発生したフロアである火災発生フロアに移動して消火活動を行う自律走行が可能な消火装置と、を備えたエレベータシステムであって、
前記エレベータ装置は、
前記乗りかごの作動を制御する乗りかご制御部と、
前記乗りかご内の乗員の有無を検知する乗員検知部と、
前記火災発生信号が取得され、且つ、前記乗りかご内に乗員が乗車していないときに、前記乗りかご内へ前記消火装置の乗車を指示する乗車指令信号を出力する指令信号送信部と、を備え、
前記消火装置は、
前記エレベータ装置と通信する消火装置側通信部と、
前記消火装置の作動を制御する消火装置制御部と、を備え、
前記乗りかご制御部は、前記火災発生信号が取得された際に、前記消火装置が待機するフロアである待機フロアに前記乗りかごを移動させ、
前記消火装置制御部は、前記乗りかごが前記待機フロアに到着した後に、前記消火装置を前記乗りかごに乗車させ、
前記乗りかご制御部は、前記消火装置が前記乗りかごに乗車した後に、前記乗りかごを前記火災発生フロアに移動させ、
前記消火装置制御部は、前記乗りかごが前記火災発生フロアに移動した後に、前記消火装置を前記乗りかごから降車させること
を特徴とするエレベータシステム。
建造物の複数のフロア間を昇降する乗りかごを有し、前記建造物にて火災の発生を知らせる火災発生信号が取得された際に、自律走行が可能で消火活動を行う消火装置を前記乗りかごに乗車させて、火災が発生したフロアである火災発生フロアに移動させるエレベータ装置を制御する制御方法であって、
前記乗りかご内の乗員の有無を検知するステップと、
前記火災発生信号が取得された際に、前記消火装置が待機するフロアである待機フロアに前記乗りかごを移動させるステップと、
前記火災発生信号が取得され、且つ、前記乗りかご内に乗員が乗車していないときに、前記消火装置を前記乗りかご内へ乗車させる指令である乗車指令信号を出力するステップと、
前記消火装置が前記乗りかごに乗車した後に、前記乗りかごを前記火災発生フロアに移動させるステップと、
を備えたことを特徴とするエレベータ装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態の説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係るエレベータシステムの構成を示すブロック図である。
【0009】
図1に示すように、第1実施形態に係るエレベータシステムは、ビルやマンション、病院などの、2階以上のフロアを有する建造物に設けられ、乗員や荷物、或いはロボット等を各フロアに昇降移動させるエレベータ装置101と、建造物内において火災が発生したときに、火災が発生した現場である火災発生現場まで移動して消火活動を実施する自律走行が可能な消火ロボット20(消火装置)を備えている。なお、
図1では一つのエレベータ装置101、及び一つの消火ロボット20を示しているが、複数のエレベータ装置及び複数の消火ロボットを備える構成であっても良い。
なお、本実施形態では、エレベータ装置101の乗りかご10内に乗車している乗員、及び各フロアのエレベータ乗場で待機している利用者を含めて「乗員」と言う。また、乗員や消火ロボット(消火装置)が乗りかご10に乗ることを「乗車」と言い、降りることを「降車」と言うことにする。
【0010】
エレベータ装置101は、乗りかご10と、制御室などに設けられるエレベータ制御装置30(以下、「EL制御装置30」と略す)を備えている。
【0011】
乗りかご10は、乗員が乗車可能な筐体構造をなしており、建造物の複数のフロア間を昇降し、任意のフロアで停止可能とされ、停止時にはドアを戸開して、停止フロアで乗員が乗り降りできるようになっている。また、乗りかご10の上部には、かご上制御装置11、及びドア制御装置12が設けられ、乗りかご10の内部には、かご内カメラ13と、かご内通信機14と、スピーカ15(報知部)が設けられている。
【0012】
図2は、かご上制御装置11の詳細な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、かご上制御装置11は、EL制御装置30との間で電線などを介して電気的に接続されており、通信部111と、乗員検知部112と、昇降制御部113を備えている。
【0013】
通信部111は、EL制御装置30、及びかご内通信機14との間で通信を行う。
【0014】
乗員検知部112は、かご内カメラ13で撮像された画像に基づき、周知の画像解析の手法を用いて、乗りかご10内の乗員の有無を検知する。更に、必要に応じて乗りかご10内に乗車している乗員の人数を検知する。なお、本実施形態では、かご内カメラ13で撮像される画像を画像解析して乗員の有無を認識する例について説明するが、これ以外に例えば、乗りかご10内の物体の重量を計測し、計測した重量が一定の重量未満である場合に、乗員が乗車していないものと判断する方法を採用してもよい。
【0015】
昇降制御部113は、EL制御装置30より出力される制御指令に基づいて、乗りかご10の昇降を制御し、所望のフロアで乗りかご10を停止させる制御を行う。
【0016】
図1に戻って、ドア制御装置12は、EL制御装置30より出力される制御指令に基づいて、乗りかご10が所望のフロアで停止した際に、該乗りかご10に設けられたドアの戸開、戸閉を制御する。
【0017】
かご内カメラ13は、例えば光学式のカメラであり、乗りかご10の天井または側板に設置されている。かご内カメラ13は、乗りかご10の内部全体が撮像範囲として設定され、撮像した映像信号をかご上制御装置11に送信する。かご内カメラ13は、乗りかご10内に防犯用として設けられたカメラと兼用してもよい。
【0018】
スピーカ15は、建造物で火災が発生した際に、乗りかご10に乗車している乗員に対して、速やかに乗りかご10が停止したフロアで降車する旨の指示を音声で報知する。即ち、スピーカ15は、乗員の降車を促す旨の報知指令を出力する。スピーカ15は、乗りかご10内の乗員に情報を報知する報知部の一例である。なお、報知指令を出力する他の例として、乗りかご10内にディスプレイを設置し、該ディスプレイに降車を促す画像を表示してもよい。
【0019】
かご内通信機14は、消火ロボット20との間で無線通信を行う。具体的に、建造物内に設けられた火災報知器より火災発生信号P1が出力され、かご上制御装置11による制御により、乗りかご10が消火ロボット20の待機しているフロア(待機フロア)で停止した際には、乗りかご10内に乗員が乗車していないこと(乗員検知部112で乗員が検知されていないこと)を条件として、消火ロボット20のロボット側通信機22(消火装置側通信部;詳細は後述)に乗車指令信号を出力する。即ち、かご内通信機14は、火災発生信号が取得され、且つ、乗りかご10内に乗員が乗車していないときに、消火ロボット20に乗車指令信号を出力する指令信号送信部としての機能を備えている。
【0020】
また、かご内通信機14は、後述するロボット側通信機22より、火災の規模を示す火災規模情報が送信された際に、この火災規模情報を受信してEL制御装置30に送信する。更に、ロボット側通信機22より、消火活動停止情報が送信された際に、この消火活動停止情報を受信してEL制御装置30に送信する。即ち、かご内通信機14は、消火ロボット20より送信される信号を受信する受信部としての機能を備えている。
【0021】
一方、EL制御装置30は、かご上制御装置11との間で電線などを介して電気的に接続されており、信号入力部31と、作動制御部32を備えている。
【0022】
信号入力部31は、建造物内の各フロアに設置される火災報知器40より出力される火災発生信号P1を取得する。また、複数のフロアで火災が発生した場合には、各フロア毎の火災発生信号P1を取得する。取得した火災発生信号P1を、作動制御部32に出力する。
【0023】
作動制御部32は、乗員による操作入力に応じて、乗りかご10を制御する制御指令をかご上制御装置11に送信する。例えば、任意のフロア(一例として5階とする)で、下方向のエレベータの呼びボタンが押された場合には、乗りかご10を5階に移動させるための制御信号をかご上制御装置11に送信する。かご上制御装置11は、この制御信号を受信して、乗りかご10を5階に移動させる。また、ドア制御装置12は、乗りかご10が5階に停止した後に乗りかごのドアを戸開して乗員の乗車を可能とし、その後、ドアを戸閉する。かご上制御装置11は、乗りかご10を下方向の所望のフロアへ移動する制御を行う。
【0024】
作動制御部32は更に、建造物内において火災報知器40が作動して火災発生信号P1が出力された際には、この火災発生信号P1を取得し、火災が発生したフロアである火災発生フロアを特定する。火災発生フロアが特定されると、かご上制御装置11に、特定のフロア(例えば、最寄りのフロア)で乗りかご10を停止させるための制御指令を送信する。かご上制御装置11は、この制御指令を受けて乗りかご10を特定のフロアで停止させる。
【0025】
また、作動制御部32は、火災発生信号P1が取得された際に、乗りかご10からの降車を促す情報を出力する制御指令を出力する。かご上制御装置11は、この制御指令を受けて、スピーカ15より降車を促す報知指令を音声で出力する。
【0026】
更に、作動制御部32は、乗員検知部112にて乗りかご10に乗員が乗車していないことが検知され、且つ、乗りかご10が消火ロボット20が待機するフロアにて停止した際には、消火ロボット20に対して乗車指令信号を出力する。乗車指令信号は、かご内通信機14より、消火ロボット20のロボット側通信機22に送信される。
作動制御部32、及び上述したかご上制御装置11は、乗りかごの作動を制御する乗りかご制御部としての機能を備えている。
【0027】
なお、前述した作動制御部32、及びかご上制御装置は、例えば、中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
【0028】
また、
図1に示すように、消火ロボット20は、ロボット制御装置21と、ロボット用カメラ23と、ロボット側通信機22、を備えている。
【0029】
ロボット用カメラ23は、消火ロボット20の適所に設けられ、該消火ロボット20の周囲画像を撮像する。
【0030】
ロボット制御装置21(消火装置制御部)は、外部より送信される制御指示、及び予め設定されたプログラムに従って自律走行型の消火ロボット20(消火装置)を火災発生現場へ移動させ、放水、消火剤の散布などの消火活動を行う。また、ロボット用カメラ23で撮像された画像に基づいて、火災発生現場における火災規模を判断する。火災規模の判断は、例えば火炎の大きさ、温度などに基づいて推定することができる。そして、火災規模の大きさに応じて、火災規模が大きい順にレベル3、レベル2、レベル1、のようにレベルを設定する。
【0031】
また、ロボット制御装置21は、放水用の消火水や散布用の消火剤が一定レベルまで減少した場合や、消火水や消火剤が枯渇した場合には、消火活動の無効を示す無効信号の送信指令を出力する。
【0032】
ロボット側通信機22は、かご内通信機14との間で通信を行う機能を有している。かご内通信機14より乗車指令信号が送信された場合には、これを受信して、ロボット制御装置21に、消火ロボット20を乗りかご10に乗車させる旨の指示を出力する。
【0033】
また、ロボット側通信機22は、ロボット制御装置21で火災規模の大きさが判定された場合に、火災規模情報(上述したレベル1〜3)をかご内通信機14に送信する。更に、消火ロボット20の消火活動が無効となった場合には、消火活動の無効を示す無効信号をかご内通信機14に出力する。
【0034】
次に、
図1、
図2に示した第1実施形態に係るエレベータシステムの処理手順を、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0035】
ステップS11において、通常時にはEL制御装置30の作動制御部32は、通常運転による制御を実施する。即ち、任意のフロアのエレベータ乗場に設けられた呼びボタンが押された際に、このフロアに乗りかご10を移動させ、ドアを戸開して乗員を乗車させ、その後ドアを戸閉して乗員を所望のフロアへ移動させる制御を実施する。
【0036】
ステップS12において、EL制御装置30は、建造物内に設けられている火災報知器40より火災発生信号P1が取得されたか否かを判定する。火災発生信号P1が取得された場合には、ステップS13に処理を進める。
【0037】
ステップS13において、作動制御部32は、乗りかご10を乗員が避難するフロアである避難フロアへ移動させる。避難フロアは、例えば最寄りのフロアである。
【0038】
ステップS14において、作動制御部32は、乗員検知部112における検知結果に基づき、避難フロアにて乗りかご10に乗車している乗員が全て降車したか否かを判断する。全ての乗員が降車した場合には、ステップS15において、乗りかご10の上昇、下降を停止し、更に、ドアを戸閉する。従って、乗りかご10に乗員が乗車することを禁止することができる。
【0039】
ステップS16において、作動制御部32は、かご内通信機14による通信を行い、かご内通信機14と、待機フロアで待機している消火ロボット20のロボット側通信機22との間の通信が確立しているか否かを判定する。通信が確立された場合には、ステップS17に処理を進める。
【0040】
ステップS17において、作動制御部32は、乗りかご10を消火ロボット20が待機するフロアである待機フロアに移動させ、ドアを戸開する。更に、かご内通信機14より、消火ロボット20の乗車指令信号を出力する。ロボット側通信機22は、乗車指令信号を受信し、受信した乗車指令信号をロボット制御装置21に出力する。ロボット制御装置21は、消火ロボット20を作動させて、乗りかご10に乗車させる制御を行う。
【0041】
ステップS18において、作動制御部32は、乗りかご10には消火ロボット20のみが乗車しているか否かを判定する。消火ロボット20のみが乗車している場合には、ステップS19に処理を進める。
【0042】
ステップS19において、作動制御部32は、消火ロボット20が乗車している乗りかご10を火災発生フロアに移動させる。また、かご内通信機14より、消火ロボット20の降車を指示する降車指令信号を出力する。ロボット側通信機22は、降車指令信号を受信し、受信した降車指令信号をロボット制御装置21に出力する。ロボット制御装置21は、消火ロボット20を作動させて、消火ロボット20を乗りかご10から降車させる制御を行う。
【0043】
ステップS20において、消火ロボット20は、自律走行により火災発生現場まで移動し、消火水の放水や消火剤の散布などの消火活動を実施する。
【0044】
ステップS21において、作動制御部32は、消火ロボット20による消火活動が終了したと判断した場合に、乗りかご10の運転を休止させる。具体的に、ロボット用カメラ23にて火災発生現場の画像を撮像し、撮像した画像を解析して消火活動が終了したか否かを判断する。消火活動が終了した場合には、火災活動の終了を示す信号をロボット側通信機22よりかご内通信機14に送信する。作動制御部32は、火災の終了が検出されると、乗りかご10の運転を休止させる。その後本処理を終了する。
【0045】
このようにして、第1実施形態に係るエレベータ装置101は、建造物内で火災が発生した場合には、火災が発生したフロアである火災発生フロアを特定する。また、乗りかご10に乗員が乗車している場合には、乗りかご10を避難フロアにて停止させることにより、速やかに乗員を降車させる。その後、乗りかご10に乗員が乗車していないことを条件として、乗りかご10に消火ロボット20を乗車させて、該消火ロボット20を火災発生フロアに移動させる。その後、消火ロボット20による消火活動が実施される。
【0046】
従って、乗りかご10に乗車中の乗員を速やかに避難させることができ、且つ、消火ロボット20を速やかに火災発生現場に向かわせることが可能となる。このため、火災発生時における乗員の安全を確保し、且つ、速やかな消火活動を行うことが可能となる。
【0047】
[第1実施形態の変形例の説明]
次に、上述した第1実施形態の変形例について説明する。装置構成は、
図1と同様であるので、説明を省略する。変形例では、乗りかご10に消火ロボット20が乗車した後に、該乗りかご10に乗員が乗車していると判定された際に、この乗員に降車を促すための報知指令を出力する点で、前述した第1実施形態と相違する。
【0048】
図4は、変形例に係るエレベータシステムの処理手順を示すフローチャートであり、
図3に示すS18とS19との間に、S181〜S183の処理が追加されている点で相違する。それ以外の処理手順は、前述した第1実施形態と同様であるので、以下では、
図4に示すステップS18〜S19までの処理について説明する。
【0049】
図4に示すステップS18において、作動制御部32は、乗りかご10には消火ロボット20のみが乗車しているか否かを判定する。消火ロボット20のみが乗車していると判定された場合には、ステップS19に処理を進め、そうでなければステップS181に処理を進める。
【0050】
ステップS181において、作動制御部32は、乗りかご10の停止状態を継続する。
【0051】
ステップS182において、作動制御部32は、乗りかご10に設けられたスピーカ15にて、降車を促すための報知指令を出力する。例えば、「火災が発生しました、直ちにエレベータから降りてください」などの音声を出力する。
【0052】
ステップS183において、作動制御部32は、乗りかご10から全ての乗員が降車し、消火ロボット20のみになったか否かを判定する。乗りかご10内が消火ロボット20のみであると判定された場合には、ステップS19に処理を進める。ステップS19の後の処理は、前述した第1実施形態と同様である。
【0053】
このように、変形例に係るエレベータシステムでは、消火ロボット20が火災発生フロアに向かう際に、何らかの理由で乗りかご10に乗員が乗車している場合でも、乗員の降車を促し、乗員が降車した後に消火ロボット20を火災発生現場に向かわせるので、乗員の安全性を確保することが可能となる。
【0054】
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係るエレベータシステムでは、建造物内における複数のフロアで同時に火災が発生した際に、各フロアでの火災規模を判定し、最も火災規模が大きいと判定されたフロアの火災発生現場に、優先的に消火ロボット20を移動させることにより、より火災規模の大きい火災発生現場での消火活動を行うものである。
【0055】
具体的に、
図1に示す作動制御部32は、複数のフロアにて同時に火災発生信号P1が取得された際に、乗りかご10を作動させて、消火ロボット20を複数の火災発生フロアに順次移動させる。そして、かご内通信機14にて、各火災発生フロアにおける火災規模情報を受信し、火災規模が最も大きいフロアの情報を取得する。作動制御部32は、火災規模が最も大きいと判定された火災発生フロアにて消火ロボット20の降車を指示する降車指令信号を出力し、より火災規模の大きい火災発生現場に消火ロボット20を向かわせる。装置の構成は、前述した
図1と同様であるので説明を省略する。
【0056】
以下、
図5に示すフローチャートを参照して、第2実施形態に係るエレベータシステムの処理手順について説明する。なお、第2実施形態では、3階、4階、5階の3つのフロアで同時に火災が発生した場合を例に挙げて説明する。
図1に示す火災報知器40より出力される火災発生信号P1により、火災発生フロアを特定することができる。
【0057】
図5に示すステップS31〜S38は、
図2に示したステップS11〜S18の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0058】
図5のステップS39において、作動制御部32は、乗りかご10の制御指令を出力して、複数存在する火災発生フロアのうち、一の火災発生フロア(例えば、3階)へ移動させる。
【0059】
ステップS40において、消火ロボット20は、3階における火災発生現場に移動して、ロボット用カメラ23で火災発生現場の画像を撮像し、撮像した画像に基づいて火災規模を判定する。例えば、火災規模が大きい順に、レベル3、レベル2、レベル1の、3段階の火災規模が設定されている場合には、各レベルのうちどのレベルであるかを判定する。
【0060】
ステップS41において、ロボット側通信機22は、火災規模を示す火災規模情報(上記したレベルの情報)を送信する。この火災規模情報は、かご内通信機14にて受信され、作動制御部32に出力される。
【0061】
ステップS42において、作動制御部32は、全ての火災発生フロアにおいて、火災規模情報が得られたか否かを判断し、火災規模情報が得られてないフロアが存在する場合には、ステップS39に処理を戻す。そして、火災発生フロアである3階、4階、5階の全てにおいて、火災規模情報が得られた場合には、ステップS43に処理を進める。
【0062】
ステップS43において、作動制御部32は、複数の火災発生フロアのうち、最も火災規模が高いと判定されたフロアに消火ロボット20を移動させる。例えば、3階における火災規模がレベル1、4階における火災規模がレベル2、5階における火災規模がレベル3である場合には、最も火災規模が大きい5階に消火ロボット20を移動させる。消火ロボット20は、乗りかご10が5階に到着した後、自律走行により乗りかご10から降車して火災発生現場に移動する。
【0063】
ステップS44において、消火ロボット20は、火災発生現場において、消火活動を実施する。
【0064】
ステップS45において、作動制御部32は、5階において消火が終了すると、全てのフロアにおいて火災発生信号が停止したか否かを判定する。例えば、上述したように3階、4階、5階で同時に火災が発生した場合には、3階、4階では未だ消火活動が行われていないので、ステップS45においてNO判定となり、ステップS35に処理を戻す。その後、ステップS43〜S45の処理を繰り返す。
【0065】
具体的には、上述したように4階にて発生した火災規模がレベル2であるので、消火ロボット20を4階に移動させて消火活動を行い、更に、4階における消火活動が終了した場合には、火災規模がレベル1である3階に消火ロボット20を移動させて消火活動を行う。
【0066】
その後、全ての火災発生フロアにおいて消火活動が終了した場合、即ち、全ての火災発生フロアの火災発生信号が停止した場合には、ステップS45でYES判定となり、本処理を終了する。
【0067】
このようにして、第2実施形態に係るエレベータシステムでは、建造物内における複数のフロアにおいて同時に火災発生信号P1が取得された場合には、消火ロボット20を各火災発生フロアに移動させて火災規模を判定する。そして、火災規模が相対的に大きい火災発生フロアに優先的に消火ロボット20を移動させて消火活動を行うように制御する。
従って、効率のよい消火活動を行うことができ、火災規模が大きいフロアからの延焼を極力防止することが可能となる。
【0068】
[第2実施形態の変形例の説明]
次に、第2実施形態に係るエレベータシステムの変形例について説明する。
図6は変形例に係るエレベータシステムの構成を示すブロック図である。
図6に示すように、このエレベータシステムは、複数(この例では3個)の乗りかご10a、10b、10c、及び複数の消火ロボット20a、20b、20cを備えている。このような複数の乗りかご、及び複数の消火ロボットを備えた建造物内の、複数のフロアで同時に火災が発生した場合には、前述した第2実施形態で示したように、一の消火ロボット(ここでは、消火ロボット20aとする)を各火災発生フロアに移動させて、火災規模を判定する。そして、火災規模が大きいほど、速く到着するように複数の消火ロボット20a〜20cを火災発生現場に向かうように制御する。
【0069】
例えば、建造物の3階における火災規模がレベル1、4階における火災規模がレベル2、5階における火災規模がレベル3である場合には、最も火災規模が大きい5階に最も早く到着できる消火ロボット、及び乗りかごを、3つの消火ロボット20a〜20c、及び3台の乗りかご10a〜10cから選択して、5階の火災発生現場に消火ロボットを向かわせる。
【0070】
次いで、2番目に火災規模が大きい4階に、より早く到着できる消火ロボット、及び乗りかごを、残り2つの消火ロボット及び2台の乗りかごから選択して、4階の火災発生現場に消火ロボットを向かわせる。
【0071】
更に、最も火災規模が小さい火災発生現場である3階に、残りの乗りかごを用いて、残りの消火ロボットを向かわせる。
【0072】
このようにして、第2実施形態の変形例では、火災規模が大きい順に、より早く到着可能な消火ロボット、及び乗りかごを選択して消火活動を行うことが可能となる。
また、複数の消火ロボットに、消火能力の差がある場合には、より消火能力の高い消火ロボットを、より火災規模が大きい火災発生現場に向かわせるようにしてもよい。具体的に、消火水を放水する能力が高い消火ロボット、或いは、消火剤の散布能力が高い消火ロボットを、より火災規模の大きい火災発生現場に向かわせるようにしても良い。
【0073】
[第3実施形態の説明]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、消火活動を実施する消火ロボット20の機能が無効(例えば、消火水の枯渇)になった場合に、消火ロボット20を一旦待機フロアに戻して、機能を回復させ(例えば、消火水を補充し)、再度、消火ロボット20を火災発生現場に向かわせて消火活動を継続させる制御を行うものである。
【0074】
即ち、作動制御部32は、かご内通信機14にて消火ロボット20の機能の無効を示す無効信号が受信された際に、乗りかご10を消火ロボット20が存在する火災発生フロアに移動させ、消火ロボット20が乗りかご10に乗車した後、乗りかご10を待機フロアに移動させる。そして、消火ロボット20の機能が回復した場合には、この消火ロボット20を乗りかご10に乗車させ、乗りかご10を火災発生フロアに移動させる。装置の構成は、前述した
図1と同様であるので説明を省略する。
【0075】
以下、
図7に示すフローチャートを参照して、第3実施形態に係るエレベータシステムの処理手順について説明する。
図7に示すステップS51〜S58は、
図2に示したステップS11〜S18の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
図7のステップS59において、作動制御部32は、乗りかご10の制御指令を出力して、乗りかご10を火災発生フロアへ移動させる。
【0077】
ステップS60において、消火ロボット20は、火災発生フロアにおける火災発生現場に移動して、消火活動を実施する。例えば、火災発生現場に消火水を放水するなどの消火活動を行う。
【0078】
ステップS61において、消火ロボット20のロボット制御装置21は、ロボット用カメラ23にて火災発生現場の画像を撮像し、撮像した映像を画像解析して消火活動が終了したか否かを判断する。消火活動が終了したと判断された場合には、ステップS65に処理を進め、消火活動が終了しない判断された場合にはステップS62に処理を進める。
【0079】
ステップS62において、ロボット制御装置21は、消火ロボット20による消火活動の機能が有効であるか否かを判断する。例えば、消火ロボット20に積載されている消火水、或いは消火剤が不足、或いは枯渇した場合には、消火活動の機能が有効でないものと(無効と)判断する。そして、消火活動の機能が有効であると判断された場合にはステップS60に処理を戻して、消火活動を継続する。一方、消火活動が無効であると判断された場合にはステップS63に処理を進める。
【0080】
ステップS63において、ロボット制御装置21は、消火活動の機能が無効であることを示す指令信号をロボット側通信機22より出力する。かご内通信機14はこの指令信号を受信する。作動制御部32は、乗りかご10を消火ロボット20が消火活動を行っている火災発生フロアに移動させ、ドアを戸開し、消火ロボット20を乗車させる。
【0081】
ステップS64において、作動制御部32は、消火ロボット20を待機フロアへ移動させる。消火ロボット20は、待機フロアに設けられる補填設備(図示省略)まで自律走行し、消火活動の機能を回復する。例えば、消火水や消火剤を補填して、消火活動の機能が有効な状態に回復させる。その後、ステップS59に処理を戻す。即ち、消火活動の機能が有効とされた消火ロボット20を、再度火災発生フロアの火災発生現場に向かわせて消火活動を行う。なお、上記の補填設備が設置されているフロアと消火ロボット20の待機フロアが異なる場合には、消火ロボット20を補填設備が設置されているフロアに移動させて、消火活動の機能を回復させる。
【0082】
一方、火災発生現場における消火活動が終了した場合には、ステップS65において、作動制御部32は、乗りかご10に消火ロボット20を乗車させて消火ロボット20の待機フロアに移動させる。
【0083】
ステップS66において、作動制御部32は、乗りかご10のドアを戸開して消火ロボット20を降車させる。
【0084】
消火ロボット20が降車して、待機フロアの所定位置に戻されると、ステップS67において、消火活動を終了し、乗りかご10の運転を停止する。
【0085】
このようにして、第3実施形態に係るエレベータ装置では、消火活動を実施する消火ロボット20の消火活動の機能が無効となった場合には、消火ロボット20を一旦待機フロアに戻して消火活動の機能を回復させる。例えば、消火水や消火剤の補填を行う。その後、消火ロボット20を再度火災発生現場まで移動させて消火活動を継続する。
【0086】
従って、消火ロボット20の消火活動の機能が無効となった場合でも、消火活動を継続させることができ、火災発生時には確実に火災を消火することが可能となる。
【0087】
[第4実施形態の説明]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図8は、第4実施形態に係るエレベータシステムの構成を示すブロック図である。第4実施形態では、通常時に乗員や荷物を昇降する通常の乗りかご10に加えて、火災発生時などの非常時に作動して緊急の作業者(例えば、消防士)を昇降するための非常用の乗りかご10Aを備える場合の例である。
【0088】
図8に示すように、第4実施形態に係るエレベータシステムは、前述した
図1に示したエレベータ装置101と同様に、EL制御装置30と、乗りかご10、及び消火ロボット20を備えている。
【0089】
これに加えて、第4実施形態では、緊急時に作業者を昇降させるための、非常用の乗りかご10A(他の乗りかご)、及び非常用の乗りかご10Aを制御する非常用のEL制御装置30A(他の乗りかご制御部)を備えている。
【0090】
図9は、EL制御装置30、及びEL制御装置30Aの詳細な構成を示すブロック図である。EL制御装置30は、前述した信号入力部31、作動制御部32に加えて、EL制御装置30Aとの間で通信を行う第1通信部33を備えている。
また、EL制御装置30Aは、非常用の乗りかご10Aの作動を制御する作動制御部32Aと、第1通信部33との間で通信を行う第2通信部33Aと、を備えている。
【0091】
そして、建造物内で火災が発生し、EL制御装置30にて火災発生信号P1が取得された場合には、該EL制御装置30は第1通信部33より火災発生フロア、及び火災規模情報を送信する。また、EL制御装置30は、消火ロボット20より、建造物内の各フロアのうち、最も火災規模の大きいフロアの情報(作業者が向かうべきフロアの情報である推奨フロア情報)を取得して、第1通信部33より送信する。
【0092】
非常用のEL制御装置30Aの第2通信部33Aは、第1通信部33より送信された各情報を受信する。作動制御部32Aは、緊急の作業者が非常用の乗りかご10Aに乗車した場合には、例えば、非常用の乗りかご10A内に設置された操作盤(図示省略)などに、火災発生フロアの情報を表示する。或いは、複数のフロアで火災が発生している場合には、火災規模の大きいフロアの情報(推奨フロア情報)を表示する。従って、緊急の作業者を火災発生フロアに誘導することができる。
【0093】
このように、第4実施形態に係るエレベータシステムでは、火災発生時には、非常用の乗りかご10Aにおいて、火災発生フロア、或いは火災規模情報が非常用の乗りかご10Aに乗車した緊急時の作業者に報知される。従って、作業者を迅速に火災発生フロアに誘導することが可能となる。
【0094】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【課題】複数のフロアからなる建造物の任意のフロアで火災が発生した際に、適切に消火ロボットを火災発生フロアに移動させて、消火活動を行うことが可能なエレベータ装置、エレベータシステム、及びエレベータ装置の制御方法を提供する。
【解決手段】乗りかご10の作動を制御する作動制御部32、及びかご上制御装置11と、乗りかご10内に設けられ、乗りかご10内の乗員の有無を検知する乗員検知部112と、火災発生信号P1が取得され、且つ、乗りかご10内に乗員が乗車していないときに、消火ロボット20の乗車を指示する乗車指令信号を出力するかご内通信機14を備える。作動制御部32は、火災発生信号P1が取得された際に、消火ロボット20が待機する待機フロアに乗りかご10を移動させ、消火ロボット20が乗りかご10に乗車した後に、乗りかご10を火災発生フロアに移動させる。