(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材又は剥離材上に、微粒子を15質量%以上含有する微粒子含有層(Y1)を含む3層以上の多層構造体からなる樹脂層を有し、少なくとも前記基材又は剥離材が設けられた側とは反対側の前記樹脂層の表面(α)が粘着性を有する粘着シートであって、
前記樹脂層が、基材又は剥離材が設けられた側から、主に樹脂部分(X)を含み、粒子部分(Y)の含有量が15質量%未満である層(Xβ)、粒子部分(Y)を15質量%以上含む微粒子含有層(Y1)、及び主に樹脂部分(X)を含み、粒子部分(Y)の含有量が15質量%未満である層(Xα)をこの順で積層した多層構造を形成してなり、
前記微粒子含有層が、前記樹脂層の最外層以外に形成され、
表面(α)上に凹部が存在すると共に、前記凹部の形状が不定形であり、
前記微粒子の体積平均二次粒子径が50μm以下である、粘着シート。
前記凹部が、主成分として前記樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満である組成物(x)からなる塗膜(x’)と微粒子を15質量%以上含む組成物(y)からなる塗膜(y’)とを同時に乾燥して、前記樹脂層の自律的な形成過程において自然に無秩序な形状を作り出す自己形成化によって形成されたものである、請求項1に記載の粘着シート。
前記樹脂層の厚さ方向に対する断面において、前記微粒子含有層と他の層との境界が、前記基材又は剥離材の水平面に対して、平行ではない、請求項1又は2に記載の粘着シート。
前記微粒子含有層が、前記基材又は剥離材の水平面方向に対して、前記微粒子が密集した部分と、微粒子が存在しない部分とが断続的に存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、例えば、「主成分としてXX成分を含むYY」や「主にXX成分からなるYY」との記載は、「YYに含まれる成分のうち、最も含有量が多い成分はXX成分である」ということを意味している。当該記載における具体的なXX成分の含有量としては、YYの全量(100質量%)に対して、通常50質量%以上、好ましくは65〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%、更に好ましくは85〜100質量%である。
また、本発明において、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
さらに、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10〜90、より好ましくは30〜60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10〜60」とすることもできる。
【0014】
〔粘着シートの構成〕
まず、本発明の粘着シートの構成について説明する。
本発明の粘着シートは、基材又は剥離材上に、樹脂層を有し、当該樹脂層は、微粒子を含有する微粒子含有層を含む3層以上の多層構造体からなる。
【0015】
図1は、本発明の粘着シートの構成の一例を示す、当該粘着シートの断面模式図であり、当該粘着シートは、微粒子含有層を含む3層構造体からなる樹脂層を有する構成の一例である。
本発明の一態様である粘着シートの具体的な構成として、例えば、
図1(a)に示すような、基材11上に、樹脂層12を有する粘着シート1aや、
図1(b)に示すような、剥離材14上に、樹脂層12を有する粘着シート1bが挙げられる。
【0016】
また、本発明の粘着シートは、少なくとも基材11又は剥離材14が設けられた側とは反対側の樹脂層12の表面(α)12a(以下、単に「表面(α)」ともいう)は粘着性を有する。
そのため、本発明の一態様である粘着シートとしては、取扱性の観点から、
図1に示す粘着シート1a又は1bに対して、樹脂層12の表面(α)12a上にさらに剥離材14aを設けた、
図1(c)又は(d)に示すような、粘着シート2a、2bのような構成を有することが好ましい。
なお、本発明の一態様である粘着シートにおいて、基材11又は剥離材14が設けられた側の樹脂層12の表面(β)12b(以下、単に「表面(β)」ともいう)も粘着性を有していてもよい。表面(β)も粘着性を有することで、
図1(a)及び(c)に示す粘着シート1a、2aであれば、樹脂層12と基材11との密着性が良好となり、
図1(b)及び(d)に示す粘着シート1b、2bであれば、両面粘着シートとすることができる。
【0017】
樹脂層12は、3層以上の多層構造体からなることが好ましい。例えば、
図1の粘着シート1a、1b、2a、2bでは、基材又は剥離材側から、主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)、微粒子を含有する微粒子含有層(Y1)(以下、単に「層(Y1)」ともいう)、及び主に樹脂部分(X)を含む層(Xα)をこの順で積層した多層構造を形成してなる樹脂層12を有している。
なお、当該微粒子含有層(Y1)は、当該樹脂層12の最外層以外に形成される。つまり、表面(α)及び表面(β)は、微粒子含有層(Y1)以外の層に含まれる。当該微粒子含有層(Y1)が当該樹脂層12の最外層に形成されると、十分な粘着特性が得られないだけでなく、外観が劣ってしまう。
なお、上記層(Xα)、上記層(Y1)、及び上記層(Xβ)は、それぞれ、1種の組成物から形成された単層体であってもよく、2種以上の組成物から形成された複層体であってもよい。
【0018】
上記の多層構造体の構成は、樹脂層の厚さ方向に対する断面において、上記微粒子含有層(Y1)と他の層(層(Xα)や層(Xβ))との境界が、基材又は剥離材の水平面に対して、
図1の粘着シートのように平行であってもよく、また、曲線または多角線となり平行でなくてもよいが、凹部を形成させやすいという観点から、平行ではないことが好ましい。
また、
図1の粘着シート1a〜2bのように、上記微粒子含有層(Y1)は、基材又は剥離材の水平面方向に対して、微粒子が密集した部分と、微粒子が存在しない部分とが断続的に存在することが好ましい。
【0019】
層(Xβ)及び層(Xα)は、主に樹脂部分(X)を含む層であるが、粒子部分(Y)を含んでいてもよい。ただし、層(Xβ)及び層(Xα)中の粒子部分(Y)の含有量は、それぞれ独立に、層(Xβ)又は層(Xα)の全質量(100質量%)に対して、15質量%未満であり、且つ樹脂部分(X)を構成する樹脂の含有量よりも少ない。
なお、層(Xβ)及び層(Xα)は、樹脂部分(X)及び粒子部分(Y)以外に、更に後述の空隙部分(Z)を有してもよい。
【0020】
層(Xβ)及び層(Xα)中の樹脂の含有量としては、それぞれ独立に、層(Xβ)又は層(Xα)の全質量(100質量%)に対して、通常50〜100質量%、好ましくは65〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%、更に好ましくは85〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%である。
なお、本発明において、「層(Xβ)及び層(Xα)中の樹脂の含有量」は、当該層(Xβ)又は層(Xα)の形成材料である樹脂組成物の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))中の樹脂の含有量とみなすことができる。
【0021】
また、層(Xβ)及び層(Xα)中の粒子部分(Y)を構成する微粒子の含有量としては、それぞれ独立に、層(Xβ)又は層(Xα)の全質量(100質量%)に対して、15質量%未満であるが、好ましくは0〜13質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、より更に好ましくは0質量%である。
なお、本発明において、「層(Xβ)又は層(Xα)中の微粒子の含有量」は、当該層(Xβ)又は(Xα)の形成材料である樹脂組成物の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))中の微粒子の含有量とみなすこともできる。
また、上記層(Xβ)及び層(Xα)は、それぞれ、後述の主成分として樹脂を含む組成物(xβ)又は(xα)から形成された層であることが好ましく、主成分として樹脂を含み、微粒子の含有量が15質量%未満である組成物(xβ)又は(xα)から形成された層であることがより好ましい。
【0022】
粒子部分(Y)を15質量%以上含む微粒子含有層(Y1)は、粒子部分(Y)のみからなる層であってもよく、粒子部分(Y)と共に樹脂部分(X)を含む層であってもよく、更に後述の空隙部分(Z)を有してもよい。
層(Y1)中の粒子部分(Y)を構成する微粒子の含有量としては、層(Y1)の全質量(100質量%)に対して、15質量%以上であるが、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは25〜90質量%、更に好ましくは30〜85質量%、より更に好ましくは35〜80質量%である。
なお、本発明において、「層(Y1)中の微粒子の含有量」は、当該層(Y1)の形成材料である組成物の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))中の微粒子の含有量とみなすこともできる。
また、層(Y1)中の樹脂の含有量としては、層(Y1)の全質量(100質量%)に対して、通常1〜85質量%、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜75質量%、更に好ましくは20〜70質量%、より更に好ましくは25〜65質量%である。
なお、本発明において、「層(Y1)中の樹脂の含有量」は、当該層(Y1)の形成材料である組成物の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))中の樹脂の含有量とみなすこともできる。
また、上記層(Y1)は、後述の微粒子を含む組成物(y)から形成された層であることが好ましく、微粒子を15〜100質量%含む組成物(y)から形成された層であることがより好ましい。
【0023】
本発明の粘着シートが有する樹脂層12の表面(α)12a上には、凹部13が存在する。
樹脂層12中の樹脂部分(X)と粒子部分(Y)との分布の構成としては、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とがほぼ均等に分布した構成であってもよく、局所的に主に樹脂部分(X)からなる箇所と、主に粒子部分(Y)からなる箇所と、分けられるような構成であってもよい。
また、
図1(a)〜(d)に示すように、樹脂層12のうち、表面(α)上に凹部13が存在する箇所においては、粒子部分(Y)が占める割合が他に比べて少なくなるような分布であってもよいし、粒子部分(Y)が部分的に存在しなくてもよい。
【0024】
本発明の粘着シートが有する樹脂層は、表面(α)上に凹部が存在すると共に、当該凹部の形状が不定形である。
また、表面(α)上に存在する凹部13を平面視した際、当該凹部13の長さは、特に制限はない。つまり、凹部13は、比較的長い溝形状のものや、比較的短い窪み形状のものが含まれる。
なお、表面(α)上に存在する凹部13は、本発明の粘着シートを被着体に貼付する際に生じる「空気溜まり」を外部へ逃すための空気排出通路としての役割を担うものである。
【0025】
ここで、本発明において「凹部の形状が不定形」とは、平面視もしくは立体視した際に、円や直線のみで囲まれた形(三角形、四角形等)などの特定の形を有さず、形に規則性が無く、個々の凹部の形状に類似性が見られない凹部を意味する。
なお、表面(α)上の凹部の形状が不定形か否かの判断は、当該凹部の形状を3次元的に目視又はデジタル顕微鏡(倍率:30〜100倍)で観察して判断するのが原則である。なお、当該凹部を表面(α)側から平面視した際の平面形状が不定形と判断されれば、「当該凹部の形状は不定形である」とみなすこともできる。
ただし、表面(α)上の任意に選択された一辺4mmの正方形で囲まれた領域(R)を10領域選択し、各領域(R)内に存在する凹部の形状を目視又はデジタル顕微鏡(倍率:30〜100倍)で表面(α)側から平面視(必要に応じて立体視)して観察した際、選択した10領域のいずれにおいても、各領域に存在する凹部の形状が不定形と判断されれば、「樹脂層の表面(α)上の凹部の形状は不定形である」とみなすこともできる。
当該領域(R)がデジタル顕微鏡の撮影可能領域より大きい場合には、互いに隣り合わせの撮影可能領域を撮影した複数の画像をつなぎ合わせた画像を、領域(R)内を観察した画像として、上記の判断に用いてもよい。
【0026】
なお、本明細書の記載にて、各種形状の観察に使用するデジタル顕微鏡としては、例えば、キーエンス社製の製品名「デジタルマイクロスコープVHX−1000」や「デジタルマイクロスコープVHX−5000」等が挙げられる。
【0027】
特許文献1等に記載された粘着シートのように、エンボスパターンの転写等によって、予め設計した定形の溝が表面上に形成された粘着剤層を有する粘着シートが知られている。このような粘着シートは、溝の形状が定形であり、エア抜け性、外観、粘着特性、抜き加工性等から選ばれる1つの特性を向上させようと溝の形状を設計しても、他の特性が低下してしまう場合が多い。
本発明者らは、例えば、エア抜け性の向上の寄与する溝の形状と、粘着特性の向上に寄与する溝の形状とでは、それぞれの特性を向上させるために要求される溝の形状が異なるという点に着目し、粘着性を有する樹脂層の表面(α)上に、不定形の凹部を存在させることの技術的意義を見出した。
つまり、本発明の粘着シートは、樹脂層の表面(α)上に存在する凹部が不定形であり、エア抜け性、外観、粘着特性、及び抜き加工性等の各種特性の向上への寄与度が異なる凹部が形成されているため、これらの特性をバランス良く向上させた粘着シートとすることができる。
【0028】
また、エア抜け性を向上させた粘着シートとする観点から、当該凹部の不定形の形状が、表出した樹脂層の表面(α)側から目視により視認できることが好ましい。なお、
図1(c)又は(d)に示すような、樹脂層12の表面(α)12a上にさらに剥離材14aを設けた、粘着シート2a、2bでは、当該剥離材14aを剥がし、表出した表面(α)側から目視により視認できることが好ましい。
【0029】
また、当該凹部は、上記樹脂層の自己形成化によって形成されたものであることが好ましい。
本発明において、「自己形成化」とは、樹脂層の自律的な形成過程において、自然に無秩序な形状を作り出す現象を意味し、より詳しくは、樹脂層の形成材料である組成物から形成された塗膜を乾燥して、樹脂層の自律的な形成過程において、自然に無秩序な形状を作り出す現象を意味する。
なお、このように樹脂層の自己形成化によって形成された凹部の形状は、乾燥条件や樹脂層の形成材料である組成物中の成分の種類や含有量を調整することで、ある程度の調整は可能ではあるものの、エンボスパターンの転写により形成される溝とは異なり、「全く同じ形状のものを再現することは事実上できない」といえる。そのため、樹脂層の自己形成化によって形成された凹部は、不定形であるといえる。
【0030】
樹脂層の自己形成化によって形成された凹部の形成過程は、以下のように考えられる。
まず、粒子部分(Y)の形成材料となる微粒子を含む組成物からなる塗膜の形成時において、当該塗膜中には、無作為に微粒子が存在している。
ここで、塗膜を乾燥させる工程にて、塗膜内部に収縮応力が発生して、微粒子の存在に起因すると思われる樹脂の結合力が弱くなった部分で、塗膜内で割れが生じる。そして、この割れ部分の周辺の樹脂が、割れにより一時的に生じた空間に流入することで、樹脂層の表面(α)上に凹部が形成されると考えられる。
なお、塗膜の乾燥過程において、塗膜内で割れが生じた際に、当初存在していた微粒子が他の部分に押しのけられるために、凹部が形成された箇所の粒子部分(Y)が占める割合が他に比べて少なくなるのではないかと考えられる。
【0031】
当該凹部は、例えば、微粒子の含有量が多く、樹脂の含有量が少ない組成物からなる塗膜と、主成分として樹脂を含む組成物からなる塗膜とを別々に形成し、この2つの塗膜を同時に乾燥させることで、形成され易い。
樹脂の含有量が異なる2層の塗膜を形成した後、当該2層の塗膜を同時に乾燥させることで、乾燥する際に塗膜内部に収縮応力差が発生し、塗膜の割れを生じ易くなると考えられる。
【0032】
なお、凹部を形成し易くする観点から、以下の事項を適宜考慮の上、調整することが好ましい。これらの事項による要因が複合的に作用して、凹部が形成し易くなるものと考えられる。ちなみに、凹部を形成し易くするための各事項の好適な態様は、後述の該当項目での記載のとおりである。
・塗膜の形成材料である組成物中に含まれる樹脂の種類、構成モノマー、分子量、含有量。
・塗膜の形成材料である組成物中に含まれる架橋剤の種類、溶媒の種類。
・塗膜の形成材料である組成物の粘度、固形分濃度。
・微粒子の形状、種類、質量濃度。
・塗膜の形成材料である組成物及び塗膜中の微粒子の分散状態、微粒子の含有量。
・形成する塗膜の厚さ。
・形成した塗膜の乾燥温度、乾燥時間。
【0033】
なお、一般的な粘着シートの粘着剤層の形成においては、平坦な表面を有する粘着剤層を形成することを目的とし、上記の事項を適宜設定している場合が多い。
一方、本発明では、粘着シートのエア抜け性の向上に寄与し得る凹部が意図的に形成されるように上記の事項を設定しており、一般的な粘着シートの粘着剤層の設計方法とは、全く異なる。
【0034】
上記の事項は、形成される塗膜中に含まれる微粒子や樹脂の流動性を考慮して、適宜設定されることが好ましい。
例えば、微粒子を多く含む組成物からなる塗膜の粘度を適度な範囲に調整することで、塗膜中での微粒子の所定の流動性を維持しつつも、他の塗膜(樹脂を多く含む塗膜)との入り混じりを適度に抑制することができる。このように調整することで、樹脂を多く含む塗膜において、水平方向に割れが生じ、凹部が形成され易くなる傾向にある。
その結果、表面(α)上における、形成される凹部の占める割合を増やすことができると共に、互いに繋がっている凹部の割合も増やし、より優れたエア抜け性を有する粘着シートとすることができる。
【0035】
また、上記の事項の中でも、樹脂を多く含む塗膜に含まれる樹脂が適度な粘弾性を有するように、当該樹脂の種類、構成モノマー、分子量、樹脂の含有量を適宜調整することが好ましい。
つまり、塗膜の硬さ(樹脂の粘弾性、塗布液の粘度等の因子で決まる硬さ)を適度に硬くすることで、樹脂部分(X)の収縮応力が強くなり、凹部が形成し易くなる。当該塗膜の硬さが硬いほど収縮応力が強くなり、凹部が発生しやすくなるが、硬すぎると塗布適性が低下する。また、樹脂の弾性を上げ過ぎると、塗膜から形成される樹脂層の粘着力が低下する傾向にある。その点を考慮して、樹脂の粘弾性を適度に調整することが好ましい。
また、微粒子や樹脂等を適切に選択して、微粒子の分散状態を適切化することで、微粒子による樹脂層の厚さの膨れ上がりの程度や、凹部の自己形成力を調節し、結果的に表面(α)上に凹部を形成し易く調整できるものと考えられる。
【0036】
さらに、形成した塗膜(もしくは形成材料である組成物)の架橋速度を考慮して、上記の事項を適宜設定することが好ましい。
つまり、塗膜の架橋速度が速すぎる場合には、凹部が形成される前に、塗膜が硬化してしまう恐れがある。また、塗膜の割れの大きさにも影響を及ぼす。
塗膜の架橋速度は、形成材料である組成物中の架橋剤の種類及び溶媒の種類や、塗膜の乾燥時間及び乾燥温度を適宜設定することで調整可能である。
【0037】
なお、本発明の粘着シートが有する樹脂層の表面(α)上の凹部は、所定のパターンを有するものではないことが好ましい。ここで、「所定パターン」とは、一つの凹部の形状に着目した際に、当該凹部が有する一定の繰り返し単位となる形状のことを意味する。
【0038】
また、樹脂層の表面(α)上の凹部は、エア抜け性、外観、粘着特性、及び抜き加工性等の各種特性をバランス良く向上させた粘着シートとする観点から、例えば、樹脂層の表面にエンボスパターンが施された剥離材を押し付けて形成する等のエンボスパターンの転写により形成されたものではないことが好ましい。
【0039】
本発明の粘着シートは、
図1(a)〜(d)に示すように、基材11又は剥離材14が設けられた側とは反対側の樹脂層12の表面(α)上には、凹部13が複数存在することが好ましい。
また、本発明の粘着シートは、表面(α)上に有する凹部13が、下記要件(I)〜(IV)のいずれか1以上を満たすものであることが好ましく、要件(I)を満たす凹部が、要件(II)〜(IV)のいずれか1以上を満たすものであることがより好ましく、要件(I)を満たす凹部が、要件(II)、(III)及び(IV)をすべて満たすものであることが更に好ましい。
要件(I):前記凹部が、最大0.5μm以上の高低差を有する。
要件(II):樹脂層の表面(α)上に、複数の凹部が存在し、当該複数の凹部の95%以上がそれぞれ互いに異なる形状を有している。
要件(III):表面(α)上の任意に選択された一辺1mmの正方形で囲まれた領域(Q)内に、前記凹部が1個以上存在する。
要件(IV):樹脂層の表面(α)上に、複数の凹部が存在し、当該複数の凹部の存在する位置が周期性を有さない。
以下、上記要件(I)〜(IV)について詳述する。
【0040】
<要件(I)>
図2は、本発明の粘着シートが有する樹脂層の表面(α)側の形状の一例を示す、該樹脂層の断面模式図である。
図2(a)に示された凹部13のように、通常の凹部の形状としては、2つの山部分(M
1)、(M
2)と、谷部分(N)とを有する。本発明において凹部の「高低差」とは、樹脂層12の厚さ方向に対して、2つの山部分(M
1)、(M
2)のうち最も高い位置(m)(
図2(a)では山部分(M
1)の極大点)と、最も低い位置(n)(
図2(a)では谷部分(N)の極小点)との差(h)の長さを意味する。
また、
図2(b)のような場合は、2つの山部分(M
11)、(M
12)と、谷部分(N
1)とを有する凹部131と、2つの山部分(M
12)、(M
13)と、谷部分(N
2)とを有する凹部132との2つの凹部を有していると考えられる。この場合、山部分(M
11)の極大点と谷部分(N
1)の極小点との差(h
1)の長さが凹部131の高低差を表し、山部分(M
13)の極大点と谷部分(N
2)の極小点との差(h
2)の長さが凹部132の高低差を表す。
【0041】
上記要件(I)で規定する「凹部」とは、最大0.5μm以上の高低差を有する凹みを指す。当該要件(I)で規定する「凹部」としては、0.5μm以上の高低差を有する箇所が凹部のいずれかの部分で存在していればよく、当該凹部の全領域にわたって当該高低差を有している必要はない。
また、当該要件(I)を満たす凹部は、複数存在していることが好ましい。
なお、要件(I)を満たす凹部が複数存在しているか否かの判断は、粘着シートの樹脂層の表面(α)上の任意に選択された一辺5mmの正方形で囲まれた領域(P)内を電子顕微鏡で観察することで判断するが、より具体的には実施例に記載の方法により判断する。
【0042】
当該一個の凹部の高低差の最大値としては、粘着シートのエア抜け性の向上の観点、粘着シートの外観を良好に保つ観点、並びに、粘着シートの形状安定性の観点から、より好ましくは1.0μm以上樹脂層の厚み以下であり、更に好ましくは3.0μm以上樹脂層の厚み以下、より更に好ましくは5.0μm以上樹脂層の厚み以下である。
【0043】
なお、領域(P)内に存在する複数の凹部の高低差の値のうちの最大値と樹脂層の厚さとの比〔高低差の最大値/樹脂層の厚さ〕としては、好ましくは1/100〜100/100、より好ましくは5/100〜99/100、更に好ましくは10/100〜96/100、より更に好ましくは15/100〜90/100である。
【0044】
また、当該凹部の幅の平均値としては、粘着シートのエア抜け性の向上の観点、並びに粘着シートの粘着性を良好とする観点から、好ましくは1〜500μm、より好ましくは3〜400μm、更に好ましくは5〜300μmである。
なお、本発明において、当該凹部の幅とは、2つの山部分の極大点間の距離を意味し、
図2(a)に示された凹部13においては、山部分(M
1)と山部分(M
2)との距離Lを指す。また、
図2(b)に示された凹部131においては、山部分(M
11)と山部分(M
12)との距離L
1を指し、凹部132においては、山部分(M
13)と山部分(M
12)との距離L
2を指す。
また、本発明の粘着シートを平面視した際に(真上から見た際に)、凹部が長辺と短辺を有する場合は、短辺を幅という。
【0045】
当該一個の凹部の高低差の最大値と幅の平均値との比〔高低差の最大値/幅の平均値〕(
図2(a)に示された凹部13においては、「h/L」を指す)としては、粘着シートのエア抜け性の向上の観点、並びに粘着シートの粘着性を良好とする観点から、好ましくは1/500〜100/1、より好ましくは3/400〜70/3、更に好ましくは1/60〜10/1である。
【0046】
<要件(II)>
本発明の粘着シートは、上記要件(II)のとおり、表面(α)上に、複数の凹部が存在し、当該複数の凹部の95%以上がそれぞれ互いに異なる形状を有していることが好ましい。
樹脂層の表面(α)上に、当該要件(II)を満たす複数の凹部が存在することで、エア抜け性、外観、粘着特性、及び抜き加工性等の各種特性をバランス良く向上させた粘着シートとすることができる。
【0047】
なお、本発明の一態様である粘着シートにおいて、樹脂層の表面(α)上に存在する互いに異なる形状を有する複数の凹部の割合としては、表面(α)内に存在する凹部の総数(100%)に対して、より好ましくは98%以上、更に好ましくは100%である。
【0048】
本発明において、上記要件(II)を満たしているか否かの判断は、対象となる粘着シートの樹脂層の表面(α)上の任意に選択された一辺5mmの正方形で囲まれた領域(P)内に存在する複数の凹部の形状をそれぞれ電子顕微鏡(倍率:30〜100倍)で観察し、当該領域(P)内で観察された当該複数の凹部の総数に対して、互いに異なる形状を有する凹部の個数が好ましくは95%以上(より好ましくは98%以上、更に好ましくは100%)であれば、上記要件(II)を満たす粘着シートであると判断する。なお、上述の複数の凹部の形状の観察は、上記倍率にて直接電子顕微鏡で観察する方法でもよく、上記倍率にて電子顕微鏡を用いて画像を取得し、当該画像に示された複数の凹部の形状を目視で観察する方法でもよい。また、より具体的には、実施例に記載の方法に基づき判断する。
ここで、「互いに異なる形状を有する凹部の個数が100%」とは、「領域(P)内で観察された複数の凹部のすべてが互いに異なる形状を有している」ことを意味する。
【0049】
本明細書において、選択した領域(P)内にて途切れること無く連続して繋がっている凹部は「1個の凹部」として数える。ただし、例えば、選択した領域内に存在する2個の凹部が、当該領域と隣接する他の領域にて結合しており1個の凹部として形成していたとしても、選択した当該領域内では、その2個の凹部は、それぞれ独立したものとして数える。
【0050】
<要件(III)>
図3(a)及び(b)は、本発明の一態様である粘着シートが有する樹脂層の表面(α)の一例を示す、当該表面(α)の平面模式図である。
図3(a)に示すように、本発明の粘着シートの樹脂層12の表面(α)12a上には凹部13、130が複数存在していることが好ましい。
ここで、本発明の粘着シートは、上記要件(III)のとおり、表面(α)12a上の任意に選択された一辺1mmの正方形50で囲まれた領域(Q)内に、凹部13、130が1個以上存在することが好ましい。
図3(a)においては、当該領域(Q)内に、8個の凹部が存在している。
このように、表面(α)上の領域(Q)内に上述の凹部を1個以上有することで、粘着シートのエア抜け性を向上させることができる。
なお、本発明において、表面(α)上の領域(Q)内に存在する凹部の数は、好ましくは1個以上であるが、上記観点から、より好ましくは2個以上、更に好ましくは3個以上であり、一方、外観及び粘着特性を良好に保つ観点から、好ましくは1000個以下、より好ましくは500個以下である。
【0051】
また、粘着シートのエア抜け性を向上させる観点から、
図3(a)に示すように、本発明の一態様である粘着シートが有する樹脂層12の表面(α)12a上の領域(Q)内に存在する凹部13、130の一個以上が、領域(Q)の境界線である一辺1mmの正方形50のいずれかの辺まで延びていることが好ましい。
なお、
図3(a)に示す粘着シートの樹脂層12の表面(α)12a上において、凹部13、130が延びて、領域(Q)の境界線である一辺1mmの正方形50のいずれかの辺との交差箇所13aは全部で9箇所ある。
このような凹部と領域(Q)の境界線である一辺1mmの正方形のいずれかの辺との交差箇所の数は、好ましくは1箇所以上であるが、より好ましくは2箇所以上、更に好ましくは3箇所以上である。
【0052】
また、エア抜け性をより向上させた粘着シートとする観点から、本発明の一態様である粘着シートが有する樹脂層の表面(α)上の領域(Q)内に存在する凹部の1個以上が、当該領域(Q)と隣接する一辺1mmの正方形で囲まれた1以上の他の領域(Q’)内まで連続して延びた形状であることが好ましく、2以上の他の領域(Q’)内まで連続して延びた形状であることがより好ましく、3以上の他の領域(Q’)内まで連続して延びた形状であることが更に好ましい。
例えば、
図3(b)において、樹脂層12の表面(α)12a上の任意に選択された一辺1mmの正方形50で囲まれた領域(Q)内に着目した際、「当該領域(Q)と隣接する一辺1mmの正方形で囲まれた他の領域(Q’)」とは、一辺1mmの正方形501で囲まれた領域(Q’1)、一辺1mmの正方形502で囲まれた領域(Q’2)、一辺1mmの正方形503で囲まれた領域(Q’3)、及び、一辺1mmの正方形504で囲まれた領域(Q’4)を指す。
【0053】
さらに、
図3(b)に示された樹脂層12の表面(α)12a上に存在する「凹部130」に着目すると、「凹部130」は、一辺1mmの正方形50で囲まれた領域(Q)内に存在する凹部であるが、当該領域(Q)と隣接する一辺1mmの正方形501で囲まれた領域(Q’1)内、一辺1mmの正方形502で囲まれた領域(Q’2)内、及び一辺1mmの正方形504で囲まれた領域(Q’4)内まで延びた形状を有している。
図3(b)に示された「凹部130」のように、領域(Q)内だけでなく、当該領域(Q)と隣接する他の領域(Q’)まで延びた形状を有する凹部が表面(α)上に存在することで、エア抜け性をより向上させた粘着シートとなる。
【0054】
また、樹脂層の表面(α)上の領域(Q)内に存在する凹部は、当該領域(Q)と隣接する1以上の他の領域(Q’)だけでなく、さらに他の領域(Q’)と隣接する領域(Q)以外の領域(Q’’)へも、さらに連続して延びた形状であることが好ましい。
例えば、
図3(b)に示された「凹部130」は、領域(Q)と隣接する領域(Q’4)だけでなく、領域(Q’4)と隣接する領域(Q’5)へも、さらに連続した延びた形状を有している。
【0055】
<要件(IV)>
本発明の一態様である粘着シートは、エア抜け性、外観、粘着特性、及び抜き加工性等の特性をバランス良く向上させた粘着シートを得る観点から、当該粘着シートの樹脂層の表面(α)上に存在する複数の凹部の存在する位置が周期性を有さないことが好ましい。
本発明において、「複数の凹部の存在する位置が周期性を有さない」とは、複数の凹部が同じ繰り返しパターンを持たずにランダムに存在している状態を意味する。つまり、特許文献1に記載された溝、つまり、エンボスパターンを有する剥離材を樹脂層の表面に押し付ける等のエンボスパターンの転写により形成された溝のように、一定の規則性に基づいて「配置」された状態とは異なることを意味する。
【0056】
なお、「複数の凹部の存在する位置が周期性を有さない」か否かの判断は、対象となる粘着シートの樹脂層の表面(α)上に存在する複数の凹部の位置を目視又はデジタル顕微鏡(倍率:30〜100倍)で観察して判断するのが原則である。
ただし、表面(α)上の任意に選択された一辺4mmの正方形で囲まれた領域(R)を10領域選択し、各領域(R)内に存在する「複数の凹部の位置」を目視又はデジタル顕微鏡(倍率:30〜100倍)で観察して判断してもよい。つまり、選択した10領域のいずれにおいても、各領域に存在する「複数の凹部の位置」に一定の周期性がない場合には、対象となる粘着シートは要件(IV)を満たすものとみなすことができる。
また、上述の観察は、上記倍率にて直接デジタル顕微鏡で観察する方法でもよく、上記倍率にてデジタル顕微鏡を用いて画像を取得し、当該画像に示された複数の凹部の存在する位置を目視で観察する方法でもよい。
【0057】
また、エア抜け性、外観、粘着特性、及び抜き加工性等の特性をバランス良く向上させた粘着シートとする観点から、本発明の一態様である粘着シートの樹脂層の表面(α)上の貼付面の形状が、不定形であることが好ましい。
本発明において、「表面(α)上の貼付面」とは、樹脂層の表面(α)上において、複数の凹部が占める範囲を除いた表面であって、被着体と貼付時に当該被着体と貼合する面を意味する。
図3(a)は、本発明の一態様である粘着シートが有する樹脂層の表面(α)の一例を示す当該表面(α)の平面模式図が示されているが、「貼付面」とは、
図3に示す樹脂層の表面(α)12aのうち、複数の凹部13を除いた網掛け部分を指す。
また、「不定形」とは、
図3(a)に示す樹脂層の表面(α)12aの網掛け部分の形状のように、円や直線のみで囲まれた形(三角形、四角形等)などの特定の形を有さず、形に規則性が無い形状を意味し、エンボスパターンを有する剥離材を樹脂層の表面に押し付ける等のエンボスパターンの転写により形成される貼付面のようなものは除外される。
言い換えれば、要件(II)を満たす粘着シートにおいては、表面(α)上の貼付面の形状は、不定形であると考えられる。
【0058】
なお、「表面(α)上の貼付面の形状が不定形である」か否かの判断は、対象となる粘着シートの樹脂層の表面(α)上の貼付面の形状を目視又はデジタル顕微鏡(倍率:30〜100倍)で観察して判断するのが原則である。
ただし、表面(α)上の任意に選択された一辺4mmの正方形で囲まれた領域(R)を10領域選択し、各領域(R)内の「貼付面の形状」を目視又はデジタル顕微鏡(倍率:30〜100倍)で観察して判断してもよい。つまり、選択した10領域のいずれにおいても、各領域の「貼付面の形状」が不定形であると判断された場合には、対象となる粘着シートは、「表面(α)上の貼付面の形状が不定形である」とみなすことができる。
また、上述の貼付面の形状の観察は、上記倍率にて直接デジタル顕微鏡で観察する方法でもよく、上記倍率にてデジタル顕微鏡を用いて画像を取得し、当該画像に示された貼付面の形状を目視で観察する方法でもよい。
【0059】
以下、本発明の粘着シートの各構成について説明する。
〔基材〕
本発明の一態様で用いる基材としては、特に制限はなく、例えば、紙基材、樹脂フィルム又はシート、紙基材を樹脂でラミネートした基材等が挙げられ、本発明の一態様である粘着シートの用途に応じて適宜選択することができる。
紙基材を構成する紙としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
樹脂フィルム又はシートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
紙基材を樹脂でラミネートした基材としては、上記の紙基材を、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0060】
これらの基材の中でも、樹脂フィルム又はシートが好ましく、ポリエステル系樹脂からなるフィルム又はシートがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)から構成されるフィルム又はシートが更に好ましい。
また、本発明の粘着シートを耐熱性が要求される用途に使用する場合には、ポリエチレンナフタレート及びポリイミド系樹脂から選ばれる樹脂から構成されるフィルム又はシートが好ましく、耐候性が要求される用途に使用する場合には、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル樹脂、及びフッ素樹脂から選ばれる樹脂から構成されるフィルム又はシートが好ましい。
【0061】
基材の厚さは、本発明の粘着シートの用途に応じて適宜設定されるが、取扱性及び経済性の観点から、好ましくは5〜1000μm、より好ましくは10〜500μm、更に好ましくは12〜250μm、より更に好ましくは15〜150μmである。
なお、基材には、さらに紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0062】
また、本発明の一態様で用いる基材は、得られる粘着シートの耐ブリスター性向上の観点から、非通気性基材であることが好ましく、具体的には、上述の樹脂フィルム又はシートの表面上に金属層を有する基材が好ましい。
当該金属層の形成する金属としては、例えば、アルミニウム、スズ、クロム、チタン等の金属光沢を有する金属が挙げられる。
当該金属層の形成方法としては、例えば、上記金属を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD法により蒸着する方法、又は、上記金属からなる金属箔を一般的な粘着剤を用いて貼付する方法等が挙げられ、上記金属をPVD法により蒸着する方法が好ましい。
【0063】
さらに、基材として樹脂フィルム又はシートを用いる場合、これらの樹脂フィルム又はシート上に積層する樹脂層との密着性を向上させる観点から、樹脂フィルム又はシートの表面に対して、酸化法や凹凸化法等による表面処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、熱風処理、オゾン、及び紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0064】
〔剥離材〕
本発明の一態様で用いる剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。なお、当該剥離処理面は、凹凸形状が形成されておらず、平坦である剥離材(例えば、エンボスパターンが施されていない剥離材)が好ましい。
剥離材用の基材としては、例えば、本発明の一態様である粘着シートが有する基材として用いられる上述の紙基材、樹脂フィルム又はシート、紙基材を樹脂でラミネートした基材等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離材の厚さは、特に制限ないが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは25〜170μm、更に好ましくは35〜80μmである。
【0065】
〔樹脂層〕
本発明の粘着シートが有する樹脂層は、微粒子を含有する微粒子含有層を含む3層以上の多層構造体からなる。当該微粒子含有層は、当該樹脂層の最外層以外に形成される。
また、本発明の粘着シートが有する樹脂層は、少なくとも基材又は剥離材が設けられた側とは反対側の当該樹脂層の表面(α)が粘着性を有しているが、基材又は剥離材が設けられた側の当該樹脂層の表面(β)も粘着性を有していてもよい。
【0066】
本発明の一態様である粘着シートが有する樹脂層は、樹脂部分(X)及び粒子部分(Y)以外に、更に空隙部分(Z)を有することが好ましい。樹脂層中に空隙部分(Z)を有することで、粘着シートの耐ブリスター性を向上させることができる。
この空隙部分(Z)は、前記微粒子同士の間に存在する空隙や、前記微粒子が二次粒子である場合、当該二次粒子内に存在する空隙等も含まれる。
なお、当該樹脂層が多層構造を有する場合、樹脂層の形成過程や形成直後において、空隙部分(Z)が存在していたとしても、空隙部分(Z)に樹脂部分(X)が流入して、空隙が消失し、空隙部分(Z)が無い樹脂層となることもある。
しかしながら、このように樹脂層中に一時期存在していた空隙部分(Z)が消失した場合であっても、本発明の一態様である粘着シートが有する樹脂層は、表面(α)上に凹部を有するため、エア抜け性及び耐ブリスター性に優れたものとなり得る。
【0067】
また、本発明の一態様である粘着シートが有する樹脂層の100℃における剪断貯蔵弾性率は、粘着シートのエア抜け性及び耐ブリスター性の向上の観点から、好ましくは9.0×10
3Pa以上、より好ましくは1.0×10
4Pa以上、更に好ましくは2.0×10
4Pa以上である。
なお、本発明において、樹脂層の100℃における剪断貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製、装置名「DYNAMIC ANALYZER RDA II」)を用いて、周波数1Hzで測定することにより測定した値を意味する。
【0068】
樹脂層の厚さは、好ましくは1〜300μm、より好ましくは5〜150μm、更に好ましくは10〜75μmである。
【0069】
本発明の一態様である粘着シートの樹脂層の表面(α)における粘着力としては、好ましくは0.5N/25mm以上、より好ましくは2.0N/25mm以上、更に好ましくは3.0N/25mm以上、より更に好ましくは4.0N/25mm以上、より更に好ましくは7.0N/25mm以上である。
また、樹脂層の表面(β)も粘着性を有する場合、表面(β)における粘着力は、上記の範囲に属することが好ましい。
なお、粘着シートの当該粘着力の値は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0070】
<樹脂部分(X)>
樹脂層を構成する樹脂部分(X)は、主成分として樹脂を含む。
なお、本発明において、樹脂部分(X)は、樹脂層中に含まれる微粒子以外の成分を含む部分であって、その点で粒子部分(Y)とは区別される。
樹脂部分(X)は、樹脂を主成分とし、樹脂以外にも、架橋剤や汎用添加剤が含まれていてもよい。
【0071】
樹脂部分(X)中の樹脂の含有量は、樹脂部分(X)の全量(100質量%)に対して、通常40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下である。
なお、本発明において、樹脂部分(X)の形成材料となる樹脂組成物中の樹脂の含有量の値を、上記「樹脂部分(X)中の樹脂の含有量」とみなすこともできる。
【0072】
樹脂部分(X)に含まれる前記樹脂としては、形成される樹脂層の表面(α)に粘着性を発現させる観点から、粘着性樹脂を含むことが好ましい。
特に、
図1の粘着シート1a〜2bのように、樹脂層が、基材又は剥離材が設けられた側から、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層した多層構造を有する場合には、上記観点から、少なくとも層(Xα)は、粘着性樹脂を含むことが好ましい。
【0073】
当該粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
これらの粘着性樹脂の中でも、粘着特性及び耐候性が良好であり、形成される樹脂層の表面(α)に、不定形の凹部を形成しやすくする観点から、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
アクリル系樹脂の含有量は、樹脂部分(X)に含まれる前記樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは25〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
【0074】
また、形成される樹脂層の表面(α)に、不定形の凹部を形成しやすくする観点から、樹脂部分(X)が、官能基を有する樹脂を含むことが好ましく、官能基を有するアクリル系樹脂を含むことがより好ましい。
特に、
図1の粘着シート1a〜2bのように、樹脂層が、基材又は剥離材が設けられた側から、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層した多層構造を有する場合には、上記観点から、少なくとも層(Y1)は、官能基を有する樹脂を含むことが好ましい。
当該官能基は、架橋剤との架橋起点となる基であって、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、アミノ基、シアノ基、ケト基、アルコキシシリル基等が挙げられるが、カルボキシ基が好ましい。
【0075】
なお、樹脂部分(X)が、前記官能基を有する樹脂と共に、さらに架橋剤を含有することが好ましい。特に、樹脂層が上記多層構造を有する場合には、少なくとも層(Y1)は、前記官能基を有する樹脂と共に、架橋剤を含有することが好ましい。
当該架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
【0076】
イソシアネート系架橋剤は、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに、これらの化合物のビウレット体、イソシアヌレート体、及び、低分子活性水素含有化合物(エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等)との反応物であるアダクト体;等が挙げられる。
【0077】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0078】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
【0079】
金属キレート系架橋剤には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等であるキレート化合物が挙げられるが、アルミニウムキレート系架橋剤が好ましい。
アルミニウムキレート系架橋剤としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0080】
なお、これらの架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、形成される樹脂層の表面(α)に、不定形の凹部を形成しやすくする観点から、樹脂部分(X)が、金属キレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤及びアジリジン系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましく、アルミニウムキレート系架橋剤を含むことが更に好ましい。
【0081】
架橋剤の含有量は、官能基を有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜7.0質量部である。
【0082】
また、樹脂層の表面(α)上の複数の凹部の形状維持性を良好とする観点から、樹脂部分(X)が、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。
樹脂部分(X)が金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含む場合、上記観点から、金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との含有比[金属キレート系架橋剤/エポキシ系架橋剤]としては、質量比で、好ましくは10/90〜99.5/0.5、より好ましくは50/50〜99.0/1.0、更に好ましくは65/35〜98.5/1.5、より更に好ましくは75/25〜98.0/2.0である。
【0083】
また、樹脂部分(X)には、汎用添加剤を含有していてもよい。
汎用添加剤としては、例えば、粘着付与剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
なお、これらの汎用添加剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの汎用添加剤を含有する場合、それぞれの汎用添加剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001〜60質量部、より好ましくは0.001〜50質量部である。
【0084】
樹脂部分(X)に含まれる前記樹脂は、1種のみでもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の粘着シートが有する樹脂層の樹脂部分(X)の形成材料としては、官能基を有する粘着性樹脂を含む粘着剤であることが好ましく、官能基を有するアクリル系樹脂(A)(以下、単に「アクリル系樹脂(A)」ともいう)を含むアクリル系粘着剤であることがより好ましく、官能基を有するアクリル系樹脂(A)及び架橋剤(B)を含むアクリル系粘着剤であることが更に好ましい。
当該アクリル系粘着剤は、溶媒型、エマルション型のいずれであってもよい。
以下、樹脂部分(X)を形成材料として好適な、上記のアクリル系粘着剤について説明する。
【0085】
当該アクリル系粘着剤中に含まれるアクリル系樹脂(A)としては、例えば、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する重合体、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する重合体等が挙げられる。
アクリル系樹脂(A)の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは5万〜150万、より好ましくは15万〜130万、更に好ましくは25万〜110万、より更に好ましくは35万〜90万である。
【0086】
アクリル系樹脂(A)としては、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)、及び官能基含有モノマー(a2’)(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A1)を含むことが好ましく、アクリル系共重合体(A1)であることがより好ましい。
アクリル系共重合体(A1)の含有量は、アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%である。
なお、アクリル系共重合体(A1)の共重合の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0087】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、粘着特性の向上の観点から、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8、より更に好ましくは4〜6である。
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0088】
構成単位(a1)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50〜99.5質量%、より好ましくは60〜99質量%、更に好ましくは70〜95質量%、より更に好ましくは80〜93質量%である。
【0089】
モノマー(a2’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有物モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシ基含有モノマーがより好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0090】
構成単位(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%、より更に好ましくは7〜20質量%である。
【0091】
なお、アクリル系共重合体(A1)は、上記モノマー(a1’)及び(a2’)以外のその他のモノマー(a3’)に由来する構成単位(a3)を有していてもよい。
その他のモノマー(a3’)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。
【0092】
構成単位(a3)の含有量は、アクリル系共重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜10質量%、より更に好ましくは0〜5質量%である。
なお、上述のモノマー(a1’)〜(a3’)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0093】
アクリル系共重合体(A1)成分の合成方法については、特に限定されるものではなく、例えば、原料モノマーを溶媒中に溶解して、重合開始剤、連鎖移動剤等の存在下で溶液重合する方法や、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、分散剤等の存在下で、原料モノマーを用いて水系でエマルション重合する方法にて製造される。
【0094】
前記アクリル系粘着剤中に含まれる架橋剤(B)としては、上述のものが挙げられるが、粘着特性を良好とする観点、並びに、形成される樹脂層の表面(α)に、不定形の凹部を形成しやすくする観点から、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましく、アルミニウムキレート系架橋剤を含むことが更に好ましい。
また、樹脂層の表面(α)上の複数の凹部の形状維持性を良好とする観点から、架橋剤(B)としては、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。
【0095】
架橋剤(B)の含有量は、前記アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜7.0質量部である。
【0096】
金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を併用する場合、金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との含有比[金属キレート系架橋剤/エポキシ系架橋剤]としては、質量比で、好ましくは10/90〜99.5/0.5、より好ましくは50/50〜99.0/1.0、更に好ましくは65/35〜98.5/1.5、より更に好ましくは75/25〜98.0/2.0である。
【0097】
本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、汎用添加剤を含有してもよい。汎用添加剤としては、上述のものが挙げられ、また当該汎用添加剤の含有量も、上述のとおりである。
【0098】
本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、アクリル系樹脂(A)以外の粘着性樹脂(例えば、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂等)を含有していてもよい。
アクリル系粘着剤中のアクリル系樹脂(A)の含有量は、アクリル系粘着剤に含まれる粘着性樹脂の総量(100質量%)に対して、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
【0099】
<粒子部分(Y)>
樹脂層を構成する粒子部分(Y)は微粒子からなる。
微粒子の平均粒径としては、粘着シートのエア抜け性及び耐ブリスター性の向上の観点、並びに、形成される樹脂層の表面(α)に、不定形の凹部を形成しやすくする観点から、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.05〜25μm、更に好ましくは0.1〜10μmである。
【0100】
本発明の一態様で用いる微粒子としては、特に制限はなく、シリカ粒子、酸化金属粒子、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ、スメクタイト等の無機粒子や、アクリルビーズ等の有機粒子等が挙げられる。
これらの微粒子の中でも、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上が好ましく、シリカ粒子がより好ましい。
【0101】
本発明の一態様で用いるシリカ粒子は、乾式シリカ及び湿式シリカのいずれであってもよい。
また、本発明の一態様で用いるシリカ粒子は、反応性官能基を有する有機化合物等で表面修飾された有機修飾シリカ、アルミン酸ナトリウムや水酸化ナトリウム等の無機化合物で表面処理された無機修飾シリカ、並びに、これらの有機化合物及び無機化合物で表面処理された有機無機修飾シリカ、シランカップリング剤等の有機無機ハイブリッド材料で表面処理された有機無機修飾シリカ等であってもよい。
なお、これらのシリカ粒子は、2種以上からなる混合物であってもよい。
【0102】
シリカ粒子中におけるシリカの質量濃度は、シリカ粒子の全量(100質量%)に対して、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。
また、本発明の一態様で用いるシリカ粒子の体積平均二次粒子径は、粘着シートのエア抜け性及び耐ブリスター性の向上の観点、並びに、形成される樹脂層の表面(α)に、不定形の凹部を形成しやすくする観点から、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは0.5〜30μm、更に好ましくは0.5〜〜10μm、より更に好ましくは1〜8μm、より更に好ましくは1.5〜5μmである。
なお、本発明において、シリカ粒子の体積平均二次粒子径の値は、マルチサイザー・スリー機等を用いて、コールターカウンター法による粒度分布の測定を行うことにより求めた値である。
【0103】
酸化金属粒子としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、及びこれらの複合酸化物から選ばれる酸化金属からなる粒子等が挙げられ、これらの酸化金属からなるゾル粒子も含まれる。
【0104】
スメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ノントロナイト、ソーコナイト等が挙げられる。
【0105】
本発明の一態様である粘着シートが有する樹脂層を800℃で30分間加熱した後の質量保持率は、好ましくは3〜90質量%、より好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは7〜70質量%、より更に好ましくは9〜60質量%である。
当該質量保持率は、樹脂層中に含まれる微粒子の含有量(質量%)を示すとみなすことができる。
当該質量保持率が3質量%以上であれば、エア抜け性及び耐ブリスター性に優れた粘着シートとなり得る。また、本発明の粘着シートの製造時において、形成される樹脂層の表面(α)に、上述の要件(I)〜(III)を満たす複数の凹部が形成されやすくなる。一方、当該質量保持率が90質量%以下であれば、樹脂層の膜強度が高く、耐水性や耐薬品性が優れた粘着シートとなり得る。
【0106】
〔粘着シートの製造方法〕
次に、本発明の粘着シートの製造方法について説明する。
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限はないが、生産性の観点、並びに、形成される樹脂層の表面(α)に、樹脂層の自己形成化によって形成される不定形の凹部を形成しやすくする観点から、少なくとも下記工程(1)及び(2)を有する方法が好ましい。
工程(1):主成分として樹脂を含む組成物(x)からなる塗膜(x’)、及び前記微粒子を含む組成物(y)からなる塗膜(y’)を形成する工程
工程(2):工程(1)で形成した塗膜(x’)及び塗膜(y’)を同時に乾燥させる工程
【0107】
<工程(1)>
工程(1)は、主成分として樹脂を含む組成物(x)からなる塗膜(x’)、及び前記微粒子を含む組成物(y)からなる塗膜(y’)を形成する工程である。
組成物(x)は、樹脂部分(X)の形成材料であり、上述の樹脂と共に、架橋剤を含有することが好ましく、さらに上述の汎用添加剤を含有してもよい。
また、組成物(y)は、粒子部分(Y)の形成材料であるが、さらに樹脂や架橋剤、上述の汎用添加剤が含まれていてもよい。これらの樹脂等の成分が含まれている組成物(y)は、樹脂部分(X)の形成材料ともなる。
【0108】
(組成物(x))
組成物(x)中に含有する樹脂としては、上述の樹脂部分(X)を構成する樹脂が挙げられ、官能基を有する粘着性樹脂が好ましく、上述の官能基を有するアクリル系樹脂(A)がより好ましく、上述のアクリル系共重合体(A1)が好ましい。
組成物(x)中の樹脂の含有量は、組成物(x)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、通常40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0109】
また、組成物(x)中に含有する架橋剤としては、上述の樹脂部分(X)中に含有する架橋剤が挙げられるが、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましい。
また、形成される樹脂層の表面(α)上の複数の凹部の形状維持性を良好とする観点から、樹脂部分(X)が、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことが好ましい。
組成物(x)が金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含む場合、組成物(x)中の金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との含有比[金属キレート系架橋剤/エポキシ系架橋剤]としては、質量比で、好ましくは10/90〜99.5/0.5、より好ましくは50/50〜99.0/1.0、更に好ましくは65/35〜98.5/1.5、より更に好ましくは75/25〜98.0/2.0である。
【0110】
架橋剤の含有量は、組成物(x)中に含有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜7.0質量部である。
【0111】
組成物(x)としては、上述の官能基を有するアクリル系樹脂(A)及び架橋剤(B)を含むアクリル系粘着剤であることが好ましく、上述のアクリル系共重合体(A1)及び架橋剤(B)を含むアクリル系粘着剤であることがより好ましい。
なお、上記アクリル系粘着剤の詳細は、上述のとおりである。
【0112】
組成物(x)中には、上述の微粒子を含有していてもよいが、当該微粒子の含有量は15質量%未満であり、且つ組成物(x)中に含まれる樹脂の含有量よりも少ない。
具体的な微粒子の含有量としては、組成物(x)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、15質量%未満であるが、好ましくは0〜13質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、より更に好ましくは0質量%である。
【0113】
(組成物(y))
組成物(y)は、粒子部分(Y)の形成材料であり、少なくとも上述の微粒子を15質量%以上含むが、微粒子の分散性の観点から、微粒子と共に、樹脂を含有することが好ましく、さらに当該樹脂と共に架橋剤を含有することがより好ましい。また、組成物(y)は、汎用添加剤を含んでもよい。
なお、これらの樹脂、架橋剤、及び汎用添加剤は、樹脂部分(X)の形成材料となる。
【0114】
組成物(y)中に含まれる微粒子としては、上述のものが挙げられるが、樹脂層中に空隙部分(Z)を形成し、耐ブリスター性を向上させた粘着シートとする観点から、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上が好ましい。
組成物(y)中の微粒子の含有量は、樹脂層の表面(α)上に、樹脂層の自己形成化によって形成される不定形の凹部を形成しやすくする観点から、組成物(y)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、15質量%以上であるが、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは25〜90質量%、更に好ましくは30〜85質量%、より更に好ましくは35〜80質量%である。
【0115】
組成物(y)中に含まれる樹脂としては、上述の組成物(x)に含まれる樹脂と同じものが挙げられ、組成物(x)と同じ樹脂を含むことが好ましい。なお、これらの樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、組成物(y)中に含まれるより具体的な樹脂としては、官能基を有する樹脂が好ましく、上述の官能基を有するアクリル系樹脂(A)がより好ましく、上述のアクリル系共重合体(A1)が更に好ましい。
【0116】
組成物(y)中の樹脂の含有量は、組成物(y)の全量(100質量%(ただし、希釈溶媒を除く))に対して、通常1〜85質量%、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜75質量%、更に好ましくは20〜70質量%、より更に好ましくは25〜65質量%である。
【0117】
また、組成物(y)中に含有する架橋剤としては、上述の樹脂部分(X)中に含有する架橋剤が挙げられるが、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、金属キレート系架橋剤を含むことがより好ましい。また、金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含むことも好ましい。
なお、組成物(y)が金属キレート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を共に含む場合、金属キレート系架橋剤とエポキシ系架橋剤との好適な含有比(質量比)の範囲は、上述の組成物(x)と同じである。
架橋剤の含有量は、組成物(y)中に含有する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜7.0質量部である。
【0118】
(塗膜(x’)、(y’)の形成方法)
なお、塗膜を形成する際に、塗膜を形成しやすくするため、組成物(x)及び(y)に、溶媒を配合し、組成物の溶液の形態とすることが好ましい。
このような溶媒としては、水や有機溶媒等が挙げられる。
当該有機溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、s−ブタノール、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。なお、これらの溶媒は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0119】
本工程で形成される塗膜(x’)及び(y’)の積層する順序は特に限定されないが、塗膜(y’)上に塗膜(x’)が積層するように形成されることが好ましい。
塗膜(x’)及び(y’)の形成方法としては、塗膜(y’)を形成した後、塗膜(y’)上に、塗膜(x’)を逐次形成する方法でもよく、また、生産性の観点から、塗膜(y’)及び塗膜(x’)を多層コーターで同時塗布し形成する方法でもよい。
逐次形成する際に用いるコーターとしては、例えば、スピンコーター、スプレーコーター、バーコーター、ナイフコーター、ロールコーター、ナイフロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ダイコーター等が挙げられる。
多層コーターで同時塗布する際に用いるコーターとしては、例えば、カーテンコーター、ダイコーター等が挙げられるが、これらの中でも、操作性の観点から、ダイコーターが好ましい。
【0120】
なお、本工程(1)において、塗膜(x’)及び塗膜(y’)の少なくとも一方の形成後に、工程(2)に移る前に、当該塗膜の硬化反応が進行しない程度のプレ乾燥処理を施してもよい。
本工程(1)における、当該プレ乾燥処理を行う際の乾燥温度としては、通常は、形成した塗膜の硬化が進行しない程度の温度範囲に適宜設定されるが、好ましくは工程(2)での乾燥温度未満である。「工程(2)での乾燥温度未満」との規定が示す具体的な乾燥温度としては、好ましくは10〜45℃、より好ましくは10〜34℃、更に好ましくは15〜30℃である。
【0121】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で形成した塗膜(x’)及び塗膜(y’)を同時に乾燥させる工程である。
本工程にて、形成した塗膜(x’)及び塗膜(y’)を同時に乾燥させることで、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む樹脂層が形成されると共に、当該樹脂層の表面(α)には、複数の凹部が形成される。
【0122】
本工程における乾燥温度としては、樹脂層の表面(α)に、樹脂層の自己形成化によって形成される不定形の凹部を形成しやすくする観点から、好ましくは35〜200℃、より好ましくは60〜180℃、更に好ましくは70〜160℃、より更に好ましくは80〜140℃である。
当該乾燥温度が35℃以上であれば、エア抜け性が良好な粘着シートを得ることができる。一方、当該乾燥温度が200℃以下であれば、粘着シートが有する基材や剥離材が収縮するといった不具合を抑えることができる。
なお、当該乾燥温度が低いほど、形成される凹部の高低差が大きくなるが、形成される凹部の数が減少する傾向がある。
【0123】
なお、本工程により形成される樹脂層の粒子部分(Y)の周辺において、空隙部分(Z)を形成することができる。
空隙部分(Z)は、上述の組成物(y)中に含有する微粒子として、シリカ粒子、酸化金属粒子、及びスメクタイトから選ばれる1種以上を用いることで、容易に形成することができる。
【0124】
また、
図1の粘着シート1a〜2bのように、主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)、粒子部分(Y)を15質量%以上含む微粒子含有層(Y1)、及び主に樹脂部分(X)を含む層(Xα)をこの順で積層した多層構造を形成してなる樹脂層を有する粘着シートを製造する場合には、以下に示す第1及び第2の態様の製造方法が好ましい。
なお、以下の第1及び第2の態様の製造方法の記載において、「主成分として樹脂を含む組成物(xβ)又は(xα)」は、上述の組成物(x)と同じであり、組成物(xβ)又は(xα)中に含まれる各成分の詳細(成分の種類、好適な成分、成分の含有量等)も同じである。また、「微粒子を15質量%以上含む組成物(y)」も、上述のとおりである。
【0125】
〔第1の態様の製造方法〕
第1の態様の製造方法としては、少なくとも下記工程(1A)及び(2A)を有する。
工程(1A):基材又は剥離材上に、主成分として樹脂を含む組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)、前記微粒子を15質量%以上含む組成物(y)からなる塗膜(y’)、及び主成分として樹脂を含む組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2A):工程(1A)で形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程
【0126】
工程(1A)においても、組成物(xβ)、組成物(y)、及び組成物(xα)には、上述の溶媒を配合し、組成物の溶液の形態とした後、塗布することが好ましい。
塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)の形成方法としては、基材又は剥離材上に、塗膜(xβ’)を形成した後、塗膜(xβ’)上に塗膜(y’)を形成し、さらに塗膜(y’)上に塗膜(xα’)を形成するというように、上述のコーターを用いて逐次形成する方法でもよく、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を、上述の多層コーターを用いて同時塗布し形成する方法でもよい。
【0127】
なお、本工程(1A)において、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)の1層以上の塗膜を形成後に、工程(2A)に移る前に、当該塗膜の硬化反応が進行しない程度のプレ乾燥処理を施してもよい。
例えば、塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)のそれぞれの塗膜の形成後に、その都度上記のプレ乾燥処理を行ってもよく、塗膜(xβ’)及び塗膜(y’)の形成後に、まとめて上記のプレ乾燥処理を行った後、塗膜(xα’)を形成してもよい。
本工程(1A)における、当該プレ乾燥処理を行う際の乾燥温度としては、通常は、形成した塗膜の硬化が進行しない程度の温度範囲で適宜設定されるが、好ましくは工程(2A)での乾燥温度未満である。「工程(2A)での乾燥温度未満」との規定が示す具体的な乾燥温度としては、好ましくは10〜45℃、より好ましくは10〜34℃、更に好ましくは15〜30℃である。
【0128】
工程(2A)は、工程(1A)で形成した塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程であるが、本工程における乾燥温度の好適範囲は、上述の工程(2)と同じである。本工程により、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む樹脂層が形成される。
【0129】
〔第2の態様の製造方法〕
第2の態様の製造方法としては、少なくとも下記工程(1B)及び(2B)を有する。
工程(1B):基材又は剥離材上に設けられた、主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)上に、前記微粒子を15質量%以上含む組成物(y)からなる塗膜(y’)、及び主成分として樹脂を含む組成物(xα)からなる塗膜(xα’)をこの順で積層して形成する工程
工程(2B):工程(1B)で形成した塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程
【0130】
工程(1B)において、「主に樹脂部分(X)を含む層(Xβ)」は、上述の主成分として樹脂を含む組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)を乾燥させて形成することができる。
層(Xβ)が組成物(xβ)から形成されるため、層(Xβ)には、樹脂以外にも、架橋剤や汎用添加剤等が含有していてもよい。層(Xβ)中の樹脂部分(X)の含有量としては、上述のとおりである。
【0131】
層(Xβ)の形成方法としては、基材又は剥離材上に、主成分として樹脂を含む組成物(xβ)からなる塗膜(xβ’)を形成し、該塗膜(xβ’)を乾燥させて形成することができる。
このときの乾燥温度としては、特に制限はなく、好ましくは35〜200℃、より好ましくは60〜180℃、更に好ましくは70〜160℃、より更に好ましくは80〜140℃である。
【0132】
なお、本態様においては、塗膜(xβ’)上ではなく、乾燥後に得られた層(Xβ)上に、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)をこの順で形成する点で、上述の第1の態様とは異なる。
工程(1B)においても、組成物(y)及び組成物(xα)には、上述の溶媒を配合し、組成物の溶液の形態とした後、塗布することが好ましい。
塗膜(y’)及び塗膜(xα’)の形成方法としては、層(Xβ)上に、塗膜(y’)を形成した後、塗膜(y’)上に塗膜(xα’)を形成するというように、上述のコーターを用いて逐次形成する方法でもよく、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を、上述の多層コーターを用いて同時塗布し形成する方法でもよい。
【0133】
なお、本工程(1B)において、塗膜(y’)の形成後、もしくは塗膜(y’)及び塗膜(xα’)の形成後に、工程(2B)に移る前に、当該塗膜の硬化反応が進行しない程度のプレ乾燥処理を施してもよい。
本工程(1B)における、当該プレ乾燥処理を行う際の乾燥温度としては、通常は、形成した塗膜の硬化が進行しない程度の温度範囲に適宜設定されるが、好ましくは工程(2B)での乾燥温度未満である。「工程(2B)での乾燥温度未満」との規定が示す具体的な乾燥温度としては、好ましくは10〜45℃、より好ましくは10〜34℃、更に好ましくは15〜30℃である。
【0134】
工程(2B)は、工程(1B)で形成した塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を同時に乾燥させる工程であるが、本工程における乾燥温度の好適範囲は、上述の工程(2)と同じである。本工程により、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む樹脂層が形成される。
【0135】
〔粘弾性層〕
本発明は、微粒子を含有する微粒子含有層を含む3層以上の多層構造体からなる粘弾性層であって、当該微粒子含有層が、当該粘弾性層の最外層以外に形成され、当該粘弾性層の少なくとも一方の表面上に凹部が存在すると共に、当該凹部の形状が不定形である、粘弾性層も提供する。
本発明の一態様である粘弾性層は、主成分として樹脂を含む樹脂部分(X)と、微粒子からなる粒子部分(Y)とを含むことが好ましい。
【0136】
粘弾性層を構成する樹脂の種類や含有量、微粒子の種類や含有量、他の成分の種類や含有量、及び粘弾性層に関する構成要件(多層構造体の層構成、凹部に関する要件、厚さ、形成材料、製造方法等)は、上述の樹脂層の項目で記載の構成要件と同じである。
ただし、粘弾性層の表面は、必ずしもが粘着性を有さなくてもよい。そのため、粘弾性層を構成する樹脂としては、非粘着性樹脂のみを使用してもよい。
【実施例】
【0137】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の製造例及び実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0138】
<樹脂の質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC−8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL−L」「TSK gel G2500HXL」「TSK gel G2000HXL」「TSK gel G1000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの。
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0139】
<シリカ粒子の体積平均二次粒子径の測定>
シリカ粒子の体積平均二次粒子径は、マルチサイザー・スリー機(ベックマン・コールター社製)を用いて、コールターカウンター法による粒度分布の測定を行うことにより求めた。
【0140】
<樹脂層の厚みの測定>
樹脂層の厚みは、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、製品名「S−4700」)を用いて、対象となる粘着シートの樹脂層の断面を観察し、測定した。
【0141】
製造例x−1〜6
(樹脂組成物の溶液(x−1)〜(x−6)の調製)
表1に記載の種類及び固形分量のアクリル系樹脂の溶液100質量部に対して、表1に記載の種類及び配合量の架橋剤及び希釈溶媒を添加し、表1に記載の固形分濃度の樹脂組成物の溶液(x−1)〜(x−6)をそれぞれ調製した。
【0142】
なお、樹脂組成物の溶液(x−1)〜(x−6)の調製に使用した表1に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
<アクリル系樹脂の溶液>
・溶液(i):アクリル系樹脂(x−i)(ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)に由来する構成単位を有するアクリル系共重合体、BA/AA=90/10(質量%)、Mw:47万)を含有する固形分濃度33.6質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液。
・溶液(ii):アクリル系樹脂(x−ii)(ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、酢酸ビニル(VAc)、及びアクリル酸(AA)に由来する構成単位を有するアクリル系共重合体、BA/2EHA/VAc/AA=46/37/10/7(質量%)、Mw:37万)を含有する固形分濃度43.0質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液。
<架橋剤>
・アルミニウムキレート系架橋剤:製品名「M−5A」、総研化学株式会社製、固形分濃度=4.95質量%。
・エポキシ系架橋剤:「TETRAD−C」(製品名、三菱ガス化学株式会社製)をトルエンで希釈し、固形分濃度5質量%としたエポキシ系架橋剤の溶液。
・イソシアネート系架橋剤:製品名「コロネートL」、東ソー株式会社製、固形分濃度=75質量%。
・アジリジン系架橋剤:製品名「BXX5134」、トーヨーケム株式会社製、固形分濃度=5質量%。
<希釈溶媒>
・IPA:イソプロピルアルコール(IPA)。
・AcOEt:酢酸エチル。
【0143】
【表1】
【0144】
製造例y−0
(微粒子分散液(y−0)の調製)
アクリル系樹脂(x−i)を含む溶液(i)(ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)に由来する構成単位を有するアクリル系共重合体(BA/AA=90/10(質量%)、Mw:47万)を含有する固形分濃度33.6質量%のトルエンと酢酸エチルとの混合溶液)100質量部(固形分:33.6質量部)に対して、微粒子として、シリカ粒子(製品名「ニップシール E−200A」、東ソー・シリカ株式会社製、体積平均二次粒子径:3μm)を50.4質量部(固形分:50.4質量部)及びトルエンを添加して、微粒子を分散させて、アクリル系樹脂及びシリカ粒子を含む固形分濃度30質量%の微粒子分散液(y−0)を調製した。
【0145】
製造例y−1〜8
(塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)〜(y−8)の調製)
表2に記載の配合量の製造例y−0で調製した微粒子分散液(y−0)に対して、表2に記載の種類及び配合量のアクリル系樹脂の溶液、架橋剤、及び希釈溶媒を添加して、表2に記載の固形分濃度の塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)〜(y−8)をそれぞれを調製した。
【0146】
なお、塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)〜(y−8)の調製に使用した表2に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
<アクリル系樹脂の溶液>
・溶液(i):アクリル系樹脂(x−i)(詳細は上記のとおりである)。
<架橋剤>
・アルミニウムキレート系架橋剤:製品名「M−5A」、総研化学株式会社製、固形分濃度=4.95質量%。
・エポキシ系架橋剤:「TETRAD−C」(製品名、三菱ガス化学株式会社製)をトルエンで希釈し、固形分濃度5質量%としたエポキシ系架橋剤の溶液。
<希釈溶媒>
・IPA:イソプロピルアルコール(IPA)。
・IPA/CHN:イソプロピルアルコール(IPA)及びシクロヘキサノン(CHN)からなる混合溶媒(IPA/CHN=60/40(質量比))。
【0147】
【表2】
【0148】
実施例1〜8
(1)塗膜の形成
片面にアルミ蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック株式会社製、製品名「FNSケシN50」、厚み50μm)を基材として用いた。
当該PETフィルムのアルミ蒸着層上に、アプリケーターを用いて、製造例x−1で調製した樹脂組成物の溶液(x−1)を、塗布後の塗膜の厚み(非乾燥状態の塗膜の厚み)が表3に示す厚さとなるように塗布して、塗膜(xβ’)を形成した。
次に、形成した塗膜(xβ’)上に、アプリケーターを用いて、表3に示す種類の塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)〜(y−4)のいずれかを、重ね塗りした後の塗膜(xβ’)と塗膜(y’)との2層合計の厚み(非乾燥状態の2層合計の厚み)が表3に示す厚さとなるように塗布して、塗膜(y’)を形成した。
そして、形成した塗膜(y’)上に、アプリケーターを用いて、製造例x−1で調製した樹脂組成物の溶液(x−1)を、重ね塗りした後の塗膜(xβ’)と塗膜(y’)と塗膜(xα’)との3層合計の厚み(非乾燥状態の3層合計の厚み)が表3に示す厚さとなるように塗布して、塗膜(xα’)を形成した。
(2)乾燥処理
その後、3層の塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を、乾燥温度100℃にて2分間、同時に乾燥させて、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む、表3に示す厚さの樹脂層を有する粘着シートを作製した。
【0149】
実施例9
片面にアルミ蒸着層を設けたPETフィルム(リンテック株式会社製、製品名「FNSケシN50」、厚み50μm)を基材として用いた。
当該PETフィルムのアルミ蒸着層上に、ナイフコーターを用いて、製造例x−2で調製した樹脂組成物の溶液(x−2)を、塗布後の塗膜の厚み(非乾燥状態の塗膜の厚み)が25μmとなるように塗布して、塗膜(xβ’)を形成した。そして、乾燥温度100℃にて2分間、乾燥させて、樹脂部分(X)を含む層(Xβ)を形成した。さらに、形成した層(Xβ)の表面と、剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、片面にシリコーン系剥離剤層を設けたPETフィルム、厚み38μm)の剥離剤層の表面とを貼合するようにラミネートし、層(Xβ)を有する積層体を一旦作製した。
次いで、上記の積層体の剥離フィルムを剥離して表出した層(Xβ)の表面上に、製造例y−1で調製した塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)、及び製造例x−1で調製した樹脂組成物の溶液(x−1)を多層ダイコーター(幅:500mm)で同時に塗布し、層(Xβ)上に、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)をこの順で同時に形成した。なお、多層ダイコーターの設定にて、塗膜(y’)の厚みを55μm、塗膜(xα’)の厚みを65μmと設定し、各塗膜を形成した。
そして、2層の塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を、乾燥温度100℃にて2分間、同時に乾燥させて、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む、表3に示す厚さの樹脂層を有する粘着シートを作製した。
【0150】
比較例1
実施例1において、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を形成せず、基材として用いるPETフィルムのアルミ蒸着層上に、ナイフコーターを用いて、製造例x−1で調製した樹脂組成物の溶液(x−1)を乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布して、塗膜(xβ’)を形成した以外は、実施例1と同様にして、樹脂部分(X)のみからなる厚さ25μmの樹脂層を有する粘着シートを作製した。
【0151】
比較例2
片面にアルミ蒸着層を設けたPETフィルム(リンテック株式会社製、製品名「FNSケシN50」、厚み50μm)を基材として用いた。
当該PETフィルムのアルミ蒸着層上に、アプリケーターを用いて、製造例x−1で調製した樹脂組成物の溶液(x−1)を塗布して塗膜(xβ’)を形成した後、100℃で2分間乾燥し、樹脂部分(X)を含む、厚さ5μmの層(Xβ)を形成した。
上記とは別に、剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、片面にシリコーン系剥離剤層を設けたPETフィルム、厚み38μm)の剥離剤層上に、アプリケーターを用いて、製造例y−1で調製した塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)を塗布して塗膜(y’)を形成した後、100℃で2分間乾燥し、樹脂部分(X)及び粒子部分(Y)を含む、厚さ15μmの層(Y1)を形成した。
さらに上記とは別に、上記と同じ種類の剥離フィルムの剥離剤層上に、アプリケーターを用いて、製造例x−1で調製した樹脂組成物の溶液(x−1)を塗布して塗膜(xα’)を形成した後、100℃で2分間乾燥し、樹脂部分(X)を含む、厚さ5μmの層(Xα)を形成した。
そして、基材であるPETフィルム上に形成した層(Xβ)の表面と、上記のとおり形成した層(Y1)の表出している表面とを貼合するようにラミネートした。さらに、層(Y1)上の剥離フィルムを除去して表出した層(Y1)の表面と、上記のとおり形成した層(Xα)の表出している表面とを貼合するようにラミネートした。
このようにして、基材上に、層(Xβ)、層(Y1)、及び層(Xα)をこの順で積層してなり、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む、厚さ25μmの樹脂層を有する粘着シートを作製した。
【0152】
実施例10〜16
片面にアルミ蒸着層を設けたPETフィルム(リンテック株式会社製、製品名「FNSケシN50」、厚み50μm)を基材として用いた。
当該PETフィルムのアルミ蒸着層上に、表4に示す流量及び塗布速度で、製造例x−1〜6で調製した樹脂組成物の溶液(x−1)〜(x−6)のいずれか、並びに、製造例y−1〜8で調製した塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)〜(y−8)のいずれかを用いて、多層ダイコーター(幅:250mm)によって同時に塗布し、基材側から塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)の順で同時に形成した。
なお、各塗膜の形成材料として使用した、樹脂組成物の溶液、及び塗膜(y’)形成用塗布液の種類は、表4に記載のとおりである。
そして、3層の塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)を、乾燥温度100℃にて2分間、同時に乾燥させて、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む、表4に示す厚さの樹脂層を有する粘着シートを作製した。
【0153】
実施例17
第1の剥離材である剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、厚み38μm、PETフィルムの片面にシリコーン系剥離剤層を設けたもの)の剥離剤層上に、製造例3で調製した樹脂組成物の溶液(x−3)と、製造例y−5で調製した塗膜(y’)形成用塗布液(y−5)と、製造例x−3で調製した樹脂組成物の溶液(x−3)とを、表4に示す流量及び塗布速度で、この順に多層ダイコーター(幅:250mm)を用いて同時に塗布し、剥離フィルム側から順に塗膜(xβ’)、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)の順で同時に形成した。
そして、3層の塗膜(xβ’)、塗膜(y’)、塗膜(xα’)を、乾燥温度100℃にて2分間、同時に乾燥させて、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む、表4に示す厚さの樹脂層を形成した。そして、形成した樹脂層の表面(α)の上に、第2の剥離材である剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET386040」)の剥離材層の表面とを貼合するようにラミネートし、基材無し粘着シートを作製した。
次いで、この基材無し粘着シートを23℃環境下で1週間静置した後、第1の剥離材を除去し、表出した樹脂層の表面(β)と、基材であるアルミ蒸着層を設けたPETフィルム(リンテック株式会社製、製品名「FNSケシN50」、厚み50μm)のアルミ蒸着層の表面とを、貼合するようにラミネートし、基材付き粘着シートを作製した。
【0154】
実施例18
片面にアルミ蒸着層を設けたPETフィルム(リンテック株式会社製、製品名「FNSケシN50」、厚み50μm)を基材として用いた。
当該PETフィルムのアルミ蒸着層上に、ナイフコーターを用いて、製造例x−1で調製した樹脂組成物の溶液(x−1)を塗布して、塗膜(xβ’)を形成した。そして、乾燥温度100℃にて2分間、乾燥させて、樹脂部分(X)を含む、厚さ8μmの層(Xβ)を形成した。さらに、形成した層(Xβ)の表面と、剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、片面にシリコーン系剥離剤層を設けたPETフィルム、厚み38μm)の剥離剤層の表面とを貼合するようにラミネートし、層(Xβ)を有する積層体を一旦作製した。
次いで、上記の積層体の剥離フィルムを剥離して表出した層(Xβ)の表面上に、製造例y−1で調製した塗膜(y’)形成用塗布液(y−1)と、製造例x−1で調製した樹脂組成物の溶液(x−1)とを、表4に示す流量及び塗布速度で、この順に多層ダイコーター(幅:500mm)で同時に塗布し、層(Xβ)側から、塗膜(y’)及び塗膜(xα’)の順で同時に積層した。
そして、2層の塗膜(y’)及び(xα’)を、乾燥温度100℃にて2分間、同時に乾燥させて、樹脂部分(X)と粒子部分(Y)とを含む、表4に示す厚さの樹脂層を有する粘着シートを作製した。
【0155】
実施例及び比較例で作製した各粘着シートの樹脂層について、表面(α)上の凹部の存在の有無・不定形か否かの判断、表面(α)上の凹部の形状・存在位置、貼付面の形状、及び樹脂層の質量保持率を、以下の方法で観察又は測定した。これらの結果を表3及び表4に示す。
【0156】
<表面(α)上の不定形の凹部の存在の有無>
実施例及び比較例で作製した粘着シートの樹脂層の表面(α)上において一辺4mmの正方形で囲まれた領域(R)を任意に10領域選択し、各領域(R)内に存在する凹部の形状を目視及びデジタル顕微鏡(キーエンス株式会社製、製品名「デジタルマイクロスコープVHX−5000」、倍率:50倍)で表面(α)側から平面視(必要に応じて立体視)して観察し、不定形の凹部の存在の有無を確認した。
なお、選択した10領域において上記の観察にて複数の凹部が確認された場合には、選択した10領域における、凹部の数、凹部の存在する位置の周期性の有無(要件(IV))及び貼付面の形状についても、併せて確認した。
【0157】
<表面(α)上の凹部の形状>
また、当該粘着シートの樹脂層の表面(α)上の各要件で規定の特定の領域において、下記要件(I)〜(III)を満たす凹部が形成されているかを、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、製品名「S−4700」、要件(II)については倍率30倍で観察)を用いて観察した。
表3及び表4中には、各要件を満たした凹部が形成されていると判断する場合は「A」、各要件を満たした凹部の存在が認められないと判断する場合は「F」と記載している。
要件(I):表面(α)上の任意に選択された一辺5mmの正方形で囲まれた領域(P)内に、最大0.5μm以上の高低差を有する凹部が複数存在する。
要件(II):表面(α)上の任意に選択された一辺5mmの正方形で囲まれた領域(P)内に、最大0.5μm以上の高低差を有する複数の凹部が存在し、当該複数の凹部の総数(100%)に対して、互いに異なる形状を有する凹部の個数が95%以上(100%である場合、つまり、領域(P)内のすべての凹部が互いに異なる形状を有しているという場合には、表中に「A+」と記載する)である。
要件(III):表面(α)上の任意に選択された一辺1mmの正方形で囲まれた領域(Q)内に、最大0.5μm以上の高低差を有する凹部が1個以上存在する。
なお、要件(I)の評価の際に測定した複数の凹部の高低差の値のうち、最も大きい値を「高低差の最大値」として表3及び表4に記載した。
【0158】
<粘着シートの樹脂層の質量保持率>
実施例17以外の実施例及び比較例においては、上述の基材の代わりに、剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、片面にシリコーン系剥離剤層を設けたPETフィルム、厚み38μm)の剥離剤層の表面上に、それぞれの実施例及び比較例の方法に従って樹脂層を形成した後、当該剥離フィルムを除去し、樹脂層の単体を得た。
また、実施例17については、途中で作製した基材無し粘着シートの2枚の剥離フィルムを除去し、樹脂層の単体を得た。
そして、加熱前の樹脂層の質量を測定した後、当該樹脂層をマッフル炉(デンケン株式会社製、製品名「KDF−P90」)内に投入し、800℃にて30分間加熱した。そして、加熱後の樹脂層の質量を測定し、下記式により、樹脂層の質量保持率を算出した。
樹脂層の質量保持率(%)=([加熱後の樹脂層の質量]/[加熱前の樹脂層の質量])×100
【0159】
実施例及び比較例で作製した各粘着シートについて、以下の方法に基づき、「エア抜け性」、「耐ブリスター性」、及び「粘着力」を測定又は評価した。これらの結果を表3及び表4に示す。
【0160】
<エア抜け性>
縦50mm×横50mmの大きさとした粘着シートを、空気溜まりが生じるように、被着体であるメラミン塗装板に貼付した。そして、スキージを用いて圧着した後の空気溜まりの有無を観察し、以下の基準により、各粘着シートのエア抜け性を評価した。
A:空気溜まりが消失しており、エア抜け性に優れる。
F:空気溜まりが残っており、エア抜け性が劣る。
【0161】
<耐ブリスター性>
縦50mm×横50mmの大きさとした粘着シートを、縦70mm×横150mm×厚さ2mmのポリメチルメタクリレート板(三菱レイヨン株式会社製、製品名「アクリライトL001」)に貼付し、スキージを用いて圧着し、試験サンプルを作製した。
この試験サンプルを、23℃で12時間静置した後、80℃の熱風乾燥機内に1.5時間静置し、さらに90℃の熱風乾燥機内に1.5時間静置して、加熱促進後のブリスターの発生状態を目視により観察し、以下の基準により、各粘着シートの耐ブリスター性を評価した。
A:ブリスターが全く確認されなかった。
B:部分的にブリスターが確認された。
C:全面にブリスターが確認された。
【0162】
<粘着力>
実施例及び比較例で作製した粘着シートを縦25mm×横300mmの大きさに切断した後、当該粘着シートの樹脂層の表面(α)上に、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、ステンレス板(SUS304、360番研磨)に貼付し、同じ環境下で24時間静置した。静置後、JIS Z0237:2000に基づき、180°引き剥がし法により、引っ張り速度300mm/分にて、各粘着シートの粘着力を測定した。
【0163】
【表3】
【0164】
【表4】
【0165】
表3及び4により、実施例1〜18で作製した粘着シートは、表面(α)上に前記要件(I)〜(III)を満たし、樹脂層の自己形成化によって形成された凹部が存在することが確認され、エア抜け性、耐ブリスター性、及び粘着力のいずれもが良好であった。
なお、実施例1〜18で作製した粘着シートのいずれにおいても、表面(α)上の領域(P)内を上記走査型電子顕微鏡(倍率:30倍)を用いて観察した際、複数の凹部の形状が不定形であり、また、所定のパターンを有するものではなく、エンボスパターンの転写により形成されたものではないことが確認された。また、樹脂層の厚さ方向に対する断面において、微粒子含有層と他の層との境界が、基材又は剥離材の水平面に対して、平行ではなく、微粒子含有層が、基材又は剥離材の水平面方向に対して、微粒子が密集した部分と、微粒子が存在しない部分とが断続的に存在することを確認した。更に、表面(α)上に存在する凹部の不定形の形状が、表出した表面(α)側から目視でも確認された。
また、上記の観察にて、表面(α)上の領域(P)内に存在する貼付面の形状も不定形であった。
【0166】
加えて、実施例1〜18で作製した粘着シートのいずれにおいても、樹脂層の表面(α)上の領域(Q)内に存在する凹部の1個以上が、当該領域(Q)の境界線である一辺1mmの正方形のいずれかの辺まで延びており、さらに当該領域(Q)と隣接する一辺1mmの正方形で囲まれた他の領域(Q’)内まで連続して延びた形状を有していることが確認された。これは、例えば、
図4(b)及び
図5(b)の樹脂層の表面(α)の斜視画像からも確認できる。
【0167】
図4及び
図5は、それぞれ実施例1及び10で作製した粘着シートを走査型電子顕微鏡で観察した際の画像であって、(a)は当該粘着シートの断面画像、(b)は当該粘着シートの樹脂層の表面(α)の斜視画像である。なお、
図4(a)の画像では、当該画像中の右下に記載の10目盛り分で20.0μmの長さを示し、
図4(b)の画像では、当該画像中の右下に記載の10目盛り分で1.00mmの長さを示す。また、
図5(a)の画像では、当該画像中の右下に記載の10目盛り分で200μmの長さを示し、
図5(b)の画像では、当該画像中の右下に記載の10目盛り分で1.00mmの長さを示す。
図4及び
図5の画像には、実施例1及び10で作製した粘着シートの樹脂層の表面(α)上に存在する凹部の形状が示されているが、他の実施例の粘着シートの凹部の断面形状や樹脂層の表面(α)側から観察した際の凹部の形状の様子についても、
図4及び
図5に示す画像と同様であった。
【0168】
一方、比較例1及び2で作製した粘着シートが有する樹脂層の表面には、特定の凹部の形成は認められず、エア抜け性が劣る結果となった。また、比較例1の粘着シートは、更に耐ブリスター性も劣る結果となった。
図6は、比較例1で作製した粘着シートを走査型電子顕微鏡で観察した際の画像であって、(a)は当該粘着シートの断面画像、(b)は当該粘着シートの樹脂層の表面(α)の斜視画像である。 なお、
図6(a)の画像中に記載の10目盛り分で20.0μmの長さを示し、
図6(b)の画像中に記載の10目盛り分で1.00mmの長さを示す。
図6に示された画像のとおり、比較例1で作製した粘着シートの樹脂層の表面(α)には、凹部の形成が見られなかった。