特許第6614722号(P6614722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホヤ レンズ タイランド リミテッドの特許一覧

特許6614722光学部材用重合性組成物、光学部材、及び眼鏡レンズ基材
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614722
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】光学部材用重合性組成物、光学部材、及び眼鏡レンズ基材
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20191125BHJP
   G02B 5/23 20060101ALI20191125BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20191125BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20191125BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   C08F290/06
   G02B5/23
   C08G18/67 010
   G02C7/10
   G02C7/02
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-510204(P2017-510204)
(86)(22)【出願日】2016年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2016060731
(87)【国際公開番号】WO2016159263
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2018年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-72031(P2015-72031)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509333807
【氏名又は名称】ホヤ レンズ タイランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】大西 智文
(72)【発明者】
【氏名】上坂 昌久
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−263988(JP,A)
【文献】 特開2001−048942(JP,A)
【文献】 特表平10−510872(JP,A)
【文献】 特表平07−501091(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/059117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C08F 299/06
C08G 18/67
G02B 5/23
G02C 7/02
G02C 7/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるウレタンアクリレートと、フォトクロミック化合物とを含み、前記ウレタンアクリレートの含有量が、組成物中60〜95質量%である、光学部材用重合性組成物。
【化1】

〔式中、Arは芳香族ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を示し、R1は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、R2は水素原子又はメチル基を示す。nは平均付加モル数を示し、2〜8である。〕
【請求項2】
前記Arが、一般式(a)で表される構造を有する、請求項1に記載の重合性組成物。
【化2】

〔式中、*は結合部位を示す。〕
【請求項3】
前記フォトクロミック化合物の分子量が800以下である、請求項1又は2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
前記フォトクロミック化合物の含有量が、組成物中0.01〜0.1質量%である、請求項1〜のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項5】
多官能(メタ)アクリレートを更に含む、請求項1〜のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項6】
前記多官能(メタ)アクリレートが、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートである、請求項に記載の重合性組成物。
【請求項7】
前記多官能(メタ)アクリレートが、(ポリ)アルキレングリコールジアクリレートである、請求項に記載の重合性組成物。
【請求項8】
前記多官能(メタ)アクリレートの含有量が、組成物中1〜30質量%である、請求項のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の重合性組成物を重合して得られる、光学部材。
【請求項10】
請求項に記載の光学部材よりなる、眼鏡レンズ基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材用重合性組成物、光学部材、及び眼鏡レンズ基材に関し、特にフォトクロミック化合物を含む光学部材用重合性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミック化合物を応用した眼鏡レンズが市販されている。これらは明るい屋外で発色して高濃度のカラーレンズとして防眩効果を有し、室内に移ると高い透過性を回復するものである。
特許文献1では、脂肪族イソシアネート化合物及び脂環族イソシアネート化合物から選択される1種以上のイソシアネート化合物と、二官能以上の活性水素化合物と、フォトクロミック化合物とを含む光学材料用組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2014/002844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウレタン系の重合性組成物においては、硬化後、当該フォトクロミック化合物の発色性能が失われ、優れた発色性能を有する光学部材を得ることは困難であった。
そこで本発明の一実施例は、優れた発色性能を有する光学部材用重合性組成物、光学部材、及び眼鏡レンズ基材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、特定のウレタンアクリレートを用いることで、硬化後であっても、フォトクロミック化合物の発色性能を高く維持できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔3〕に関する。
【0006】
〔1〕一般式(1)で表されるウレタンアクリレートと、フォトクロミック化合物とを含む光学部材用重合性組成物。
【化1】

〔式中、Arは芳香族ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を示し、R1は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、R2は水素原子又はメチル基を示す。nは平均付加モル数を示し、2〜8である。〕
〔2〕〔1〕に記載の重合性組成物を重合して得られる、光学部材。
〔3〕〔2〕に記載の光学部材よりなる、眼鏡レンズ基材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた発色性能を有する光学部材用重合性組成物、光学部材、及び眼鏡レンズ基材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[光学部材用重合性組成物]
本発明の光学部材用重合性組成物は、一般式(1)で表されるウレタンアクリレートと、フォトクロミック化合物とを含む。一般式(1)で表されるウレタンアクリレートを含むことで、硬化後の組成物中であっても、樹脂マトリックス中で、フォトクロミック化合物の光による構造変化を阻害しにくく、優れた発色性能を有する光学部材が得られると考えられる。
【0009】
<ウレタンアクリレート>
本発明で用いられるウレタンアクリレートは、下記一般式(1)で表される。当該ウレタンアクリレートを使用することで、優れた発色性能、高い靱性及び高屈折率を有する光学部材が得られる。
【化2】

〔式中、Arは芳香族ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を示し、R1は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、R2は水素原子又はメチル基を示す。nは平均付加モル数を示し、2〜8である。〕
【0010】
Arは、優れた靱性を得るため、芳香族ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基である。
【0011】
Arは、優れた靱性を得るため、好ましくは下記一般式(a)で表される構造を有する。
【化3】

〔式中、*は結合部位を示す。〕
上記構造の中でも、上記結合部位*は、4,4' −位、2,4' −位が挙げられ、これらの中でも、好ましくは4,4' −位である。
【0012】
当該芳香族ジイソシアネートとしては、4,4' −ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4' −ジフェニルメタンジイソシアナート、パラフェニレンジイソシアナート、メタフェニレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、パラキシリレンジイソシアナート、メタキシリレンジイソシアナート、パラテトラメチルキシリレンジイソシアナート、メタパラテトラメチルキシリレンジイソシアナート、2,6−ナフタリンジイソシアナート、1,5−ナフタリンジイソシアナート等の硫黄非含有芳香族イソシアネート;ジフェニルジスルフィド−4,4' −ジイソシアナート、2,2' −ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5' −ジイソシアナート、3,3' −ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5' −ジイソシアナート、3,3' −ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6' −ジイソシアナート、4,4' −ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5' −ジイソシアナート、3,3' −ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4' −ジイソシアナート、4,4' −ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3' −ジイソシアナート、ジフェニルスルホン−4,4' −ジイソシアナート、ジフェニルスルホン−3,3' −ジイソシアナート、ベンジリデンスルホン−4,4' −ジイソシアナート、ジフェニルメタンスルホン−4,4' −ジイソシアナート、4−メチルジフェニルメタンスルホン−2,4' −ジイソシアナート、4,4' −ジメトキシジフェニルスルホン−3,3' −ジイソシアナート、3,3' −ジメトキシ−4,4'−ジイソシアナトジベンジルスルホン、4,4' −ジメチルジフェニルスルホン−3,3' −ジイソシアナート、4,4' −ジ−tert−ブチルジフェニルスルホン−3,3' −ジイソシアナート、4,4' −ジメトキシベンゼンエチレンジスルホン−3,3' −ジイソシアナート、4,4' −ジクロロジフェニルスルホン−3,3' −ジイソシアナート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4' −イソシアナトフェノールエステル、4−メトキシ−3−イソシアナトベンゼンスルホニル−4' −イソシアナトフェノールエステル、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニルアニリド−3' −メチル−4' −イソシアナート、ジベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−4,4' −ジイソシアナート、4,4' −ジメトキシベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−3,3' −ジイソシアナート、4−メチル−3−イソシアナトベンゼンスルホニルアニリド−4−メチル−3' −イソシアナート、チオフェン−2,5−ジイソシアナート、チオフェン−2,5−ジイソシアナトメチル等の硫黄含有イソシアナ−ト化合物が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは4,4' −ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4' −ジフェニルメタンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、パラキシリレンジイソシアナート、及びメタキシリレンジイソシアナートから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、4,4' −ジフェニルメタンジイソシアナートである。
【0013】
は、好ましくは炭素数2又は3のアルカンジイル基であり、より好ましくはエタンジイル基である。
2は、好ましくはメチル基である。
nは平均付加モル数を示し、組成物の硬化後、フォトクロミック化合物の優れた調光性を維持する観点から、それぞれ2〜8であり、好ましくは3〜6であり、より好ましくは4〜6である。
【0014】
ウレタンアクリレートとしては、好ましくは下記一般式(11)で表される化合物である。
【化4】

〔式中、nは平均付加モル数を示し、2〜8であり、好ましくは3〜6であり、より好ましくは4〜6である。〕
【0015】
ウレタンアクリレートは、例えば、芳香族ジイソシアネートと、芳香族ジイソシアネートのイソシアネート基に対して当量のポリアルキレングリコールアクリレートとを反応させることで得られる。当該反応には、ジメチル錫ジクロライド等の有機錫化合物を重合触媒として用いてもよい。なお、当該反応は、窒素雰囲気下にて、25〜80℃の温度にて行うことが好ましい。
【0016】
ウレタンアクリレートの含有量は、組成物中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは72質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。該含有量は、組成物中、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは89質量%以下、更に好ましくは87質量%以下である。
【0017】
<他の多官能(メタ)アクリレート>
本発明の光学部材用重合性組成物は、退色速度を向上させる観点から、好ましくは他の多官能(メタ)アクリレートを含む。
他の多官能(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化5】

〔式中、R21は炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、R22は水素原子又はメチル基であり、R25は、(k+1)価以上のアルコールから1個のヒドロキシ基の水素原子、k個のヒドロキシ基を除いた残基を示す。jは0又は1であり、kは1〜3の整数であり、m,nは平均付加モル数を示し、0〜30である。ただし、jが0の場合、kは1であり、nは0である。〕
【0018】
21は、好ましくは炭素数2又は3のアルカンジイル基であり、より好ましくはエタンジイル基である。
22は、退色時間を短縮する観点から、好ましくは水素原子である。
25の(k+1)価以上のアルコール(以下、「多価アルコール」ともいう)、ビスフェノールA〔2,2−ビス(4,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン〕、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
kは好ましくは1である。
m,nは平均付加モル数を示し、組成物の硬化後、フォトクロミック化合物の優れた発色性能を得る観点から、好ましくは2〜25、より好ましくは3〜15、更に好ましくは4〜10、更に好ましくは4〜6である。
【0019】
多官能(メタ)アクリレートとしては、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートの含有量は、退色速度を向上させる観点から、組成物中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは11質量%以上、更に好ましくは13質量%以上である。当該含有量は、組成物中、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは28質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
これらの多官能(メタ)アクリレートの中でも、好ましくは(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0020】
〔(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート〕
本発明の光学部材用重合性組成物は、好ましくは(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む。
(ポリ)アルキレングリコールとは、ポリアルキレングリコール及びアルキレングリコールから選ばれる少なくとも1種を意味する。
(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を意味する。
(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、好ましくは下記一般式(2−1)で表される化合物である。
【化6】

〔式中、R21は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、R22は水素原子又はメチル基を示す。mは平均付加モル数を示し、2〜30である。〕
【0021】
21の好ましい例は、一般式(2)と同様である。
22の好ましい例は、一般式(2)と同様である。
mは平均付加モル数を示し、組成物の硬化後、フォトクロミック化合物の優れた調光性を維持する観点から、好ましくは2〜25、より好ましくは3〜15、更に好ましくは4〜10、更に好ましくは4〜6である。
【0022】
(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、発色性能を向上させ、退色時間を短縮する観点から、好ましくは(ポリ)アルキレングリコールジアクリレートであり、より好ましくはポリエチレングリコールジアクリレートである。
ポリエチレングリコールジアクリレートの市販品としては、新中村化学工業(株)製、商品名A−200、A−400、A−600、A−1000等が挙げられる。
【0023】
(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの含有量は、組成物中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、退色時間をより短縮する観点から、更に好ましくは11質量%以上、更に好ましくは13質量%以上である。当該含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは28質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0024】
<その他のアクリレート>
本発明の光学部材用重合性組成物は、その他のアクリレートを含んでいてもよい。その他のアクリレートとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、アリルフタレート等が挙げられる。
【0025】
<フォトクロミック化合物>
フォトクロミック化合物としては、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、クロメン化合物などが挙げられる。
フォトクロミック化合物の分子量は、発色濃度及び退色速度の向上のため、好ましくは800以下、より好ましくは780以下、更に好ましくは750以下である。また当該分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは500以上である。
フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物及びクロメン化合物としては、公知の化合物が使用可能である。
【0026】
これらフォトクロミック化合物の中でも、クロメン系フォトクロミック化合物は、フォトクロミック特性の耐久性が他のフォトクロミック化合物に比べ高く、さらにフォトクロミック特性の発色濃度及び退色速度の向上が他のフォトクロミック化合物に比べて特に大きいため特に好適に使用することができる。
さらに、その発色濃度、退色速度、耐久性等の各種フォトクロミック特性が特に良好なクロメン系フォトクロミック化合物としては、下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
【化7】

〔式中、一般式(3a):
【化8】

で示される基は、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは非置換の不飽和複素環基であり、R43、R44及びR45は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アラルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、置換若しくは非置換のアリール基、ハロゲン原子、アラルキル基、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換のアルキニル基、窒素原子を有し該窒素原子とピラン環若しくは式(3a)で示される基の環とが結合する置換若しくは非置換の複素環基、該複素原基に芳香族炭化水素環もしくは芳香族複素環が縮合した縮合複素環基であり、cは0〜6の範囲の整数であり、
41及びR42は、それぞれ独立に、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換のアルキニル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のヘテロアリール基、又はアルキル基であるか、或いはR41とR42とが、置換若しくは非置換の脂肪族炭化水素環若しくは芳香族炭化水素環を構成していてもよい。〕
なお、R41及びR42にて説明した置換アリール基及び置換ヘテロアリール基における置換基としては、R43〜R44と同様の基が挙げられる。
【0027】
一般式(3)で示されるクロメン系フォトクロミック化合物のなかでも、発色濃度、退色速度等のフォトクロミック特性及び耐久性の点から、下記一般式(31)〜(36)で示されるものがより好適である。
【化9】

〔式中、R49及びR50は、それぞれ一般式(3)のR41及びR42と同様であり、R51及びR52は、それぞれ一般式(3)のR45と同様であり、q及びq’は、それぞれ1又は2である。〕
【化10】

〔式中のR53及びR54は、それぞれ一般式(3)のR41及びR42と同様であり、R55及びR56は、それぞれ一般式(3)のR45と同様であり、Lは下記式:
【化11】

(上記式中、Pは、酸素原子又は硫黄原子であり、R57は、炭素数1〜6のアルキレン基であり、s、s’及びs’’は、いずれも1〜4の整数である。)で示されるいずれかの基であり、r及びr’は、それぞれ独立に1又は2である。〕
【0028】
【化12】

〔式中、R58及びR59は、それぞれ一般式(3)のR41及びR42と同様であり、R60、R61及びR62は、それぞれ一般式(3)のR45と同様であり、vは1又は2である。〕
【化13】

〔式中、R63及びR64は、それぞれ一般式(3)のR41及びR42と同様であり、R65及びR66は、それぞれ一般式(3)のR45と同様であり、w及びw’は、それぞれ独立に1又は2である。〕
【化14】

〔式中、R67及びR68は、それぞれ一般式(3)のR41及びR42と同様であり、R69、R70、R71及びR72は、それぞれ一般式(3)のR45と同様であり、x及びx’は、それぞれ独立に1又は2である。〕
【化15】

〔式中、R73及びR74は、それぞれ一般式(3)のR41及びR42と同様であり、R75、R76及びR77は、それぞれ一般式(3)のR45と同様であり、
【化16】

は、少なくとも1つの置換基を有してもよい脂肪族炭化水素環であり、y、y’及びy’’は、それぞれ独立に1又は2である。〕
【0029】
上記一般式(31)〜(36)で示されるクロメン系フォトクロミック化合物の中でも、下記構造のクロメン化合物(化合物3−1〜化合物3−6)が特に好ましい。
【化17】
【0030】
これらフォトクロミック化合物は適切な発色色調を発現させるため、複数の種類のものを適宜混合して使用することができる。
【0031】
フォトクロミック化合物の含有量は、退色時間をより短縮する観点から、組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上である。当該含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0032】
光学部材用重合性組成物は、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加してもよい。これら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用できる。
【0033】
[光学部材の製造方法]
光学部材の製造方法は、好ましくは、光学部材用重合性組成物を硬化する工程を含む。
なお、硬化する工程は、好ましくは、重合性組成物をガラスモールド又は金属モールドと樹脂製ガスケット又はテープとにより組立てられた鋳型の中に流し込み、加熱又は紫外線照射等により、単量体を重合して硬化させる。
【0034】
硬化する工程において、ラジカル開始剤を用いてもよい。ラジカル開始剤としては、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビスシクロヘキサンカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、1,1’−アゾビスシクロヘキサンナイトレート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
ラジカル開始剤の配合量は、光学部材用重合性組成物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量%以下である。
【0035】
[光学部材]
本発明の光学部材は、レンズ基材であってもよいし、機能層であってもよいが、好ましくはレンズ基材であり、より好ましくは眼鏡レンズ基材である。
機能層としては、例えば、ハードコート層、プライマー層、反射防止膜及び撥水膜から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0036】
ハードコート層は、耐擦傷性向上のために設けられ、好ましくは有機ケイ素化合物、酸化スズ、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の微粒子状無機物等を有するコーティング液を塗工して形成することができる。
プライマー層は、耐衝撃性を向上させるために設けられ、例えば、ポリウレタンを主成分とする。ここでポリウレタンの含有量は、プライマー層中、好ましくは50質量%以上である。
反射防止膜としては、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル等を積層した膜が挙げられる。
撥水膜としては、フッ素原子を有する有機ケイ素化合物を用いて形成することができる。
【0037】
本発明のプラスチック光学部材をレンズ基材に用いる場合、レンズ基材の屈折率は、好ましくは1.49以上、より好ましくは1.54以上である。そして、当該屈折率は、好ましくは1.78以下、より好ましくは1.75以下、更に好ましくは1.68以下、更に好ましくは1.61以下、更に好ましくは1.57以下である。
【0038】
本発明は、上述の各成分の例、含有量、各種物性については、発明の詳細な説明に例示又は好ましい範囲として記載された事項を任意に組み合わせてもよい。
また、実施例に記載した組成に対し、発明の詳細な説明に記載した組成に調整を行えば、クレームした組成範囲全域にわたって実施例と同様に発明を実施することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性測定及び評価は次の方法により行った。
【0040】
[調光性能試験]
<調光性能の評価方法>
(a)発色時光線透過率(T%max):キセノンランプ(300W)光源装置を用いて、温度23℃、積算光量計で測定した紫外線強度1.2mW/cm2の条件で、レンズを5分間発色させて、このときの分光を瞬間マルチ測光システムで測定した。測定した分光について、極大吸収波長(λmax)での光線透過率を、発色時光線透過率(T%max)と定義する。この光線透過率が低いほど、発色濃度が高いことになる。
(b)60%T退色時間(F1/2): 前述した5分間の発色後、光線の照射を止めてから、レンズの極大吸収波長(λmax)における吸光度が、60%Tまで低下するのに要する時間と定義する。この時間が短いほど、退色速度が速いことになる。
<使用した装置>
・光源装置:ウシオ電気(株)製キセノンランプ(300W)装置「UIT-501C」
・積算光量計:ウシオ電気(株)製積算光量計「UIT-102(受光器UVD365PD)」
・瞬間マルチ測光システム:大塚電子(株)製「MCPD-3000」
【0041】
[引張強度試験]
直径50mm、板厚1.8mmの平板を作成し、2.0mmの穴を端部から2mmの箇所に、互いが180°水平方向となる2か所に開けた後SUS棒を通し、テンシロン万能試験機RTC-1225を用いて5mm/min.の速度で引っ張り、破壊した荷重と破断点伸びを測定した。
【0042】
製造例1〔化合物1-1の製造方法〕
300mlナス型フラスコに、芳香環を有するポリイソシアナート化合物である4,4'-ジフェニルメタンジイソシアナート30.6gに、重合触媒としてジメチル錫ジクロライド0.01gを添加し、窒素雰囲気下にて50℃にて30分間撹拌子にて溶解させた。
次にポリオール化合物として、ポリオキシエチレンモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE-200 日油(株)製)69.4gを配合し、窒素雰囲気下にて50℃にて60分間撹拌し、化合物1-1を得た。
【0043】
[実施例1]
300mLナス型フラスコに、化合物1-1を84gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名:NKエステル A-200 新中村化学工業(株)製、エチレングリコールの平均付加モル数4)16gと、ラジカル開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名:V-65 和光純薬工業(株)製)0.1gと、フォトクロミック化合物として上述の化合物3-1を0.07gと、離型剤としてブトキシエチルアシッドホスフェートとジブトキシエチルアシッドホスフェートの5:5(質量比)の混合物を0.15gを加えて撹拌溶解したのち、0.5kPaで30分間減圧撹拌を行い、組成物を調製した。この組成物を1.0μmのポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」とする)・メンブランフィルターを用いて濾過した。これをガラスモールドとテープからなるモールド型に注入した。40℃から最終温度100℃の温度プログラムにて24時間注型重合を行い、2.0mm厚みの眼鏡レンズ基材を得た。この眼鏡レンズ基材をさらに100℃で2時間アニールした。
【0044】
[実施例2]
300mLナス型フラスコに、化合物1-1を84gと、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(商品名:BPE-500、新中村化学工業(株)製、エチレングリコールの平均付加モル数10(両端合計))16gと、ラジカル開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名:V-65 和光純薬工業(株)製)0.1gと、フォトクロミック化合物として上述の化合物3-1を0.07gと、離型剤としてブトキシエチルアシッドホスフェートとジブトキシエチルアシッドホスフェートの5:5(質量比)の混合物を0.15gを加えて撹拌溶解したのち、0.5kPaで30分間減圧撹拌を行い、組成物を調製した。この組成物を1.0μmのPTFE・メンブランフィルターを用いて濾過した。これをガラスモールドとテープからなるモールド型に注入した。40℃から最終温度100℃の温度プログラムにて24時間注型重合を行い、2.0mm厚みの眼鏡レンズ基材を得た。この眼鏡レンズ基材をさらに100℃で2時間アニールした。
【0045】
[実施例3]
300mLナス型フラスコに、化合物1-1を84gと、ポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:NKエステル 4G、新中村化学工業(株)製、エチレングリコール平均付加モル数4)を16gと、ラジカル開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名:V-65 和光純薬工業(株)製)0.1gと、フォトクロミック化合物として上述の化合物3-1を0.07gと、離型剤としてブトキシエチルアシッドホスフェートとジブトキシエチルアシッドホスフェートの5:5(質量比)の混合物を0.15gを加えて撹拌溶解したのち、0.5kPaで30分間減圧撹拌を行い、組成物を調製した。この組成物を1.0μmのPTFE・メンブランフィルターを用いて濾過した。これをガラスモールドとテープからなるモールド型に注入した。40℃から最終温度100℃の温度プログラムにて24時間注型重合を行い、2.0mm厚みの眼鏡レンズ基材を得た。この眼鏡レンズ基材をさらに100℃で2時間アニールした。
【0046】
[実施例4]
300mLナス型フラスコに、化合物1-1を84gと、トリメチロールプロパントリメタクリレート(商品名:NKエステル TMPT、新中村化学工業(株)製)を16gと、ラジカル開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名:V-65 和光純薬工業(株)製)0.1gと、フォトクロミック化合物として上述の化合物3-1を0.07gと、離型剤としてブトキシエチルアシッドホスフェートとジブトキシエチルアシッドホスフェートの5:5(質量比)の混合物を0.15gを加えて撹拌溶解したのち、0.5kPaで30分間減圧撹拌を行い、組成物を調製した。この組成物を1.0μmのPTFE・メンブランフィルターを用いて濾過した。これをガラスモールドとテープからなるモールド型に注入した。40℃から最終温度100℃の温度プログラムにて24時間注型重合を行い、2.0mm厚みの眼鏡レンズ基材を得た。この眼鏡レンズ基材をさらに100℃で2時間アニールした。
【0047】
[実施例5]
300mLナス型フラスコに、化合物1-1を90gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名:NKエステル A-200 新中村化学工業(株)製)を10gと、ラジカル開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名:V-65 和光純薬工業(株)製)0.1gと、フォトクロミック化合物として上述の化合物3-1を0.07gと、離型剤としてブトキシエチルアシッドホスフェートとジブトキシエチルアシッドホスフェートの5:5(質量比)の混合物を0.15gを加えて撹拌溶解したのち、0.5kPaで30分間減圧撹拌を行い、組成物を調製した。この組成物を1.0μmのPTFE・メンブランフィルターを用いて濾過した。これをガラスモールドとテープからなるモールド型に注入した。40℃から最終温度100℃の温度プログラムにて24時間注型重合を行い、2.0mm厚みの眼鏡レンズ基材を得た。この眼鏡レンズ基材をさらに100℃で2時間アニールした。
【0048】
[実施例6]
300mLナス型フラスコに、化合物1-1を94gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名:NKエステル A-200 新中村化学工業(株)製)を6gと、ラジカル開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名:V-65 和光純薬工業(株)製)0.1gと、フォトクロミック化合物として上述の化合物3-1を0.07gと、離型剤としてブトキシエチルアシッドホスフェートとジブトキシエチルアシッドホスフェートの5:5(質量比)の混合物を0.15gを加えて撹拌溶解したのち、0.5kPaで30分間減圧撹拌を行い、組成物を調製した。この組成物を1.0μmのPTFE・メンブランフィルターを用いて濾過した。これをガラスモールドとテープからなるモールド型に注入した。40℃から最終温度100℃の温度プログラムにて24時間注型重合を行い、2.0mm厚みの眼鏡レンズ基材を得た。この眼鏡レンズ基材をさらに100℃で2時間アニールした。
【0049】
[実施例7]
300mLナス型フラスコに、化合物1-1を97gと、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名:NKエステル A-200 新中村化学(株)製)を3gと、ラジカル開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名:V-65 和光純薬工業(株)製)0.1gと、フォトクロミック化合物として上述の化合物3-1を0.07gと、離型剤としてブトキシエチルアシッドホスフェートとジブトキシエチルアシッドホスフェートの5:5(質量比)の混合物を0.15gを加えて撹拌溶解したのち、0.5kPaで30分間減圧撹拌を行い、組成物を調製した。この組成物を1.0μmのPTFE・メンブランフィルターを用いて濾過した。これをガラスモールドとテープからなるモールド型に注入した。40℃から最終温度100℃の温度プログラムにて24時間注型重合を行い、2.0mm厚みの眼鏡レンズ基材を得た。この眼鏡レンズ基材をさらに100℃で2時間アニールした。
【0050】
[参考例1:アクリル系眼鏡レンズ基材]
300mLナス型フラスコに、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(商品名:BPE-100、新中村化学工業(株)製)80gと、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(商品名:BPE-500、新中村化学工業(株)製)20gと、ラジカル開始剤として2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名:V-65 和光純薬工業(株)製)0.1gと、フォトクロミック化合物として上述の化合物3-1を0.07gと、離型剤として変性シリコーンオイル(商品名:KF-353A 信越化学工業(株)製)を0.001gを加えて撹拌溶解したのち、0.5kPaで30分間減圧撹拌を行い、組成物を調製した。この組成物を1.0μmのPTFE・メンブランフィルターを用いて濾過した。これをガラスモールドとテープからなるモールド型に注入した。40℃から最終温度100℃の温度プログラムにて24時間注型重合を行い、2.0mm厚みの眼鏡レンズ基材を得た。この眼鏡レンズ基材をさらに100℃で2時間アニールした。
【0051】
[比較例1:ウレタン系眼鏡レンズ基材]
300mLナス型フラスコに、2,5(2,6)-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(商品名:MR-8A液、三井化学(株)製)50gと、ラジカル開始剤としてジメチル錫ジクロライド0.01g、フォトクロミック化合物として上述の化合物3-1を0.07gを添加し、離型剤としてブトキシエチルアシッドホスフェートとジブトキシエチルアシッドホスフェートの5:5(質量比)の混合物を0.15gを加えて、15℃にて10分間撹拌子溶解させた。次にポリチオール化合物として、MR-8B1(商品名:MR-8B1液、三井化学(株)製)25gと、MR-8B2(商品名:MR-8B2液、三井化学(株)製)25gを加え撹拌したのち、0.5kPaで30分間減圧撹拌を行い、組成物を調製した。この組成物を1.0μmのPTFE・メンブランフィルターを用いて濾過した。これをガラスモールドとテープからなるモールド型に注入した。20℃から最終温度120℃の温度プログラムにて24時間注型重合を行い、2.0mm厚みの眼鏡レンズ基材を得た。この眼鏡レンズ基材をさらに120℃で2時間アニールした。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
表中示した各種成分の詳細は以下の通りである。
化合物1−1:下記化合物1−1
【化18】

A-200:ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名:A-200、新中村化学工業(株)製、エチレングリコールの平均付加モル数4)
BPE-500:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(商品名:BPE-500、新中村化学工業(株)製、エチレングリコールの平均付加モル数10(両端合計))
4G:ポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:NKエステル 4G、新中村化学工業(株)製、エチレングリコール平均付加モル数4)
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート(商品名:NKエステル TMPT、新中村化学工業(株)製)
フォトクロミック化合物3-1:化合物3-1のクロメン化合物(分子量:741.87)
BPE-100:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(商品名:NKエステル BPE-100、新中村化学工業(株)製)
MR-8A:2,5(2,6)-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(商品名:MR-8A液、三井化学(株)製)
MR-8B1:ポリチオール(商品名:MR-8B1液、三井化学(株)製)
MR-8B2:ポリチオール(商品名:MR-8B2液、三井化学(株)製)
【0056】
表1に示した結果及び、表3に示した比較例1の結果によれば、本発明に係るウレタンアクリレートを用いることで、優れた発色性能を示すことが理解できる。 また、表2に示した結果及び表3に示した参考例1の結果によれば、本発明に係るウレタンアクリレートを用いることで、従来のアクリル系の眼鏡レンズ基材よりも、優れた靱性を示すことが理解できる。
【0057】
最後に、本発明の実施の形態を総括する。
本発明の一実施形態は、
一般式(1)で表されるウレタンアクリレートと、フォトクロミック化合物とを含む光学部材用重合性組成物である。
【化19】

〔式中、Arは芳香族ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基を示し、R1は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、R2は水素原子又はメチル基を示す。nは平均付加モル数を示し、2〜8である。〕
一般式(1)で表されるウレタンアクリレートを含むことで、硬化後の組成物中であっても、樹脂マトリックス中で、フォトクロミック化合物の光による構造変化を阻害しにくく、優れた発色性能を有する光学部材が得られると考えられる。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。