(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(C)ホスファイト化合物の含有量が、(A)ポリアリレート樹脂と(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂との合計量100質量部に対し0.01〜0.5質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
前記(D)ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの含有量が、(A)ポリアリレート樹脂と(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂との合計量100質量部に対し0.01〜1.0質量部である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
前記(D)ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルが、ジペンタエリスリトールヘキサラウレート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサべヘネート、ジペンタエリスリトールアジピックステアレート、ジペンタエリスリトールアジピックステアレートオリゴマからなる群から選択される1種以上の化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、自動車のデザインの自由度が広がり、車載用ランプ構造も複雑かつ多機能化している。それにともないランプ周辺部材での耐熱性の要求が高まっている。そこで、本発明の発明者等は、特許文献1〜2に記載のような界面重合ポリカーボネート樹脂を、ポリアリレート樹脂とともに含む樹脂組成物を、車載用ランプのリフレクターのような光反射体のための基体(すなわち、光反射体用基体)の製造(特に射出成形)に使用した場合、以下のような新たな問題が生じることを見い出した。
【0010】
(1)金型が汚れ、金型の成形面に曇りが生じた(金型成形面の耐曇り性)。詳しくは、ポリカーボネート樹脂は、単独で用いる場合、成形温度(溶融時の樹脂温度)300℃程度で、溶融および流動させることができる。つまり当該温度で成形加工ができる。このような300℃程度の領域で成形加工する場合、たとえ界面重合ポリカーボネート樹脂を単独で用いても、金型汚れは生じなかった。そこで、耐熱性付与のため、界面重合ポリカーボネート樹脂をポリアリレート樹脂と混合し樹脂組成物とすると、その混合比率にもよるが、成形温度は320〜360℃程度となる。このような成形温度において、ポリアリレート樹脂および界面重合ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物を用いると、金型汚れの問題が生じた。一方で、ポリアリレート樹脂および界面重合ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物において、耐熱性を損なわず流動性を確保するために、低粘度のポリカーボネート樹脂を用いる場合、特に界面重合ポリカーボネート樹脂を用いると、金型汚れが著しかった。
【0011】
(2)成形体のウェルドラインまたはその周辺に曇りが生じた(成形体の表面外観特性)。詳しくは、このような成形体の曇りに関する表面外観特性は、鏡面仕様の成形面を有する金型を用いて射出成形を行った場合に、初めて問題となった。
【0012】
(3)成形体に蒸着層を形成したとき、成形体のウェルドラインまたはその周辺における蒸着層の表面に曇りが生じた(成形体の蒸着適性の低下)。詳しくは、蒸着層表面の曇りに関する成形体の蒸着適性は、鏡面仕様の成形面を有する金型を用いて射出成形により得られた成形体に蒸着層を形成した場合に、初めて問題となった。
【0013】
(4)蒸着層が形成された成形体が、車載用ランプのリフレクターとして、繰り返しのランプ点灯等により高温雰囲気下にさらされると、初期では熱エージング適性は良好であるものの、比較的早期に低下した。詳しくは、比較的早期に、蒸着層の光沢度および/または密着性が低下した。より詳しくは、車載用ランプのリフレクターにおいて、光源近傍あるいは光源上部は、特に高温にさらされ、蒸着層表面の光沢度および/または密着性が比較的早期に低下した。このような熱エージング適性の比較的早期の低下は、自動車の耐用年数が延びている近年において深刻な問題であった。車載用ランプのリフレクターにおいて蒸着層の光沢度が低下すること、および/または蒸着層の密着性が低下することは許容されない。従って、ランプ部品としての実成形体においては、より現実的には、単なる軟化点等に基づく耐熱性の低下が起こらないだけでなく、アニール等の熱エージング試験を行い、蒸着層の光沢度および密着性の低下が起こらないことも要求される。
【0014】
また、本発明の発明者等は、耐熱性および離型性の観点から、ポリアリレート樹脂および溶融重合ポリカーボネート樹脂を含むポリマー混合物に対して、熱安定剤および離型剤を添加したところ、以下のような新たな問題が生じることを見い出した。
【0015】
(5)離型剤を添加しても、離型性が十分に向上しなかった。詳しくは、成形時において、得られた成形体を金型から突出ピンにより離型する際、成形体の離型性が十分ではないため、成形体に突出ピンの跡が残った。成形体に突出ピンの跡が残ると、成形体の製品としての価値が低下した。
【0016】
(6)添加剤を含有しないポリマー混合物を用いたときには問題とならなかった耐加水分解性の問題が、熱安定剤および/または離型剤を添加したときに生じた。詳しくは、ポリアリレート樹脂およびポリカーボネート樹脂を含むポリマー混合物に対して、熱安定剤および/または離型剤を添加すると、成形体の耐加水分解性が低下することがあった。成形体の耐加水分解性が低下すると、成形体を高温高湿環境下で使用または保管したとき、ポリアリレート樹脂および/またはポリカーボネート樹脂の分子量が経時的に低下するため、成形体の製品としての価値が低下した。
【0017】
本発明は、熱安定剤および離型剤を含有させても、耐加水分解性および離型性に十分に優れた成形体を製造することができ、しかも耐熱性と流動性とのバランスに優れている樹脂組成物を得ることを目的とする。
【0018】
本発明はまた、熱安定剤および離型剤を含有させても、金型汚れを十分に抑制しながら、耐加水分解性、離型性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性に十分に優れた成形体を製造することができ、しかも耐熱性と流動性とのバランスに優れている樹脂組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を行った結果、ポリアリレートおよびポリカーボネートを含む樹脂組成物において、特定のポリカーボネート樹脂、特定のホスファイト化合物および特定の脂肪酸エステルを組み合わせて用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0020】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
<1> (A)ポリアリレート樹脂、(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂、(C)下記一般式(I)および(II)で表されるホスファイト化合物からなる群から選択される1種以上の化合物、および(D)ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含有する樹脂組成物であって、
(A)ポリアリレート樹脂と(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂との質量比(A/B)が2/98〜98/2であり、
前記樹脂組成物のビカット軟化点が140℃以上である、樹脂組成物:
【化1】
(式(I)中、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、炭素原子数6〜40のアリール基または炭素原子数1〜40のアルキル基を表す);
【化2】
(式(II)中、R
41〜R
45は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基である)。
<2> 前記(C)ホスファイト化合物の含有量が、(A)ポリアリレート樹脂と(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂との合計量100質量部に対し0.01〜0.5質量部である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記(D)ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの含有量が、(A)ポリアリレート樹脂と(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂との合計量100質量部に対し0.01〜1.0質量部である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 前記(D)ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルが、ジペンタエリスリトールヘキサラウレート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサべヘネート、ジペンタエリスリトールアジピックステアレート、ジペンタエリスリトールアジピックステアレートオリゴマからなる群から選択される1種以上の化合物である、<1>〜<3>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<5> 前記(A)ポリアリレート樹脂と前記(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂との混合比率が質量比で30/70〜75/25であり、
前記(C)ホスファイト化合物が下記一般式(i−1)および前記一般式(II)で表されるホスファイト化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である、<1>に記載の樹脂組成物:
【化3】
(式(i−1)中、R
21〜R
30は、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す)。
<6> 前記(A)ポリアリレート樹脂と前記(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂との混合比率が質量比で45/55〜75/25であり、
前記(C)ホスファイト化合物が前記一般式(i−1)で表されるホスファイト化合物からなる群から選択される1種以上の化合物であり、
前記(C)ホスファイト化合物の含有量が、(A)ポリアリレート樹脂と(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂との合計量100質量部に対し0.01〜0.08質量部である、<5>に記載の樹脂組成物。
<7> 前記(A)ポリアリレート樹脂と前記(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂との混合比率が質量比で65/35〜75/25である、<6>に記載の樹脂組成物。
<8> 前記樹脂組成物における単官能フェノール化合物の含有量が10,000ppm以下である、<1>〜<7>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<9> 前記(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂の対数粘度が0.30〜0.60dL/gである、<1>〜<8>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<10> 前記(A)ポリアリレート樹脂の対数粘度が0.40〜0.75dL/gである、<1>〜<9>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<11> 前記樹脂組成物の対数粘度が0.35〜0.65dL/gである、<1>〜<10>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<12> 前記樹脂組成物が光反射体用基体を製造するための樹脂組成物である、<1>〜<11>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<13> 前記樹脂組成物が車載用ランプの光反射体用基体を製造するための樹脂組成物である、<1>〜<12>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<14> 前記樹脂組成物が射出成形に使用されるための樹脂組成物である、<1>〜<13>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<15> <1>〜<14>のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、成形体。
<16> <15>に記載の成形体を用いた光反射体用基体。
<17> <16>に記載の光反射体用基体を用いた車載用ランプ。
【発明の効果】
【0021】
本発明の樹脂組成物は、熱安定剤および離型剤を含有させても、耐加水分解性および離型性に十分に優れた成形体を製造することができ、しかも耐熱性と流動性とのバランスに優れている。
本発明の樹脂組成物は、金型汚れを十分に抑制できる。
本発明の樹脂組成物を用いると、表面外観特性および蒸着適性に十分に優れた成形体を製造することができる。
本発明の樹脂組成物を用いて製造された成形体は、熱エージング適性に十分に優れるため、当該成形体に蒸着層を形成して、より苛酷な高温雰囲気下にさらしても、蒸着層の光沢度および密着性の低下が十分に抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリアリレート樹脂および(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂を含む。
【0023】
ポリアリレート樹脂は、特に限定されず、あらゆるポリアリレートを用いることができる。ポリアリレート樹脂は、芳香族ジカルボン酸残基および二価フェノール残基を含み、詳しくは芳香族ジカルボン酸またはその誘導体と、二価フェノールまたはその誘導体とよりなる非晶性の芳香族ポリエステル重合体である。ポリアリレート樹脂は、溶液重合法、溶融重合法、界面重合法などの方法により製造できる。
【0024】
ポリアリレート樹脂を構成する芳香族ジカルボン酸残基を導入するための原料の好ましい例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジフェン酸ならびにそれらの誘導体などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の誘導体として、例えば、上記芳香族ジカルボン酸の炭素数1〜3のアルキルのエステル化物および酸塩化物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよいし、あるいは2種類以上混合して使用してもよい。なかでも、テレフタル酸、イソフタル酸、ならびにそれらの誘導体が好ましく、耐熱性と流動性のバランスの点から、テレフタル酸またはその誘導体とイソフタル酸またはその誘導体の両者を混合して用いることが特に好ましい。その場合、混合モル比率(テレフタル酸/イソフタル酸)は100/0〜0/100の範囲の任意であるが、好ましくは90/10〜10/90、より好ましくは70/30〜30/70、特に好ましくは55/45〜45/55の範囲とすると、得られるポリアリレートは非晶質となり、耐熱性により優れたものとなる。
【0025】
ポリアリレート樹脂を構成する二価フェノール残基を導入するための原料の好ましい例としては、ビスフェノール類が挙げられる。ビスフェノール類の具体例として、例えばレゾルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。これらの化合物からなるポリアリレート樹脂は非晶性で耐熱性により優れたものとなりやすい。これらの化合物は単独で使用してもよいし、あるいは2種類以上混合して使用してもよい。これらの化合物の中で、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを使用することが好ましく、最適にはこれを単独で使用する。
【0026】
ポリアリレート樹脂は、本発明の樹脂組成物の流動性ならびに当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性および機械的特性のさらなる向上の観点から、1,1,2,2−テトラクロロエタン100mlに試料1.0gを溶解した溶液の、温度25℃における対数粘度が0.40〜0.75dL/gであることが好ましく、0.45〜0.65であることがより好ましい。
【0027】
ポリアリレート樹脂は公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。ポリアリレート樹脂の市販品として、例えば、U−パウダー Dタイプ(対数粘度0.72)、Lタイプ(対数粘度0.54)(いずれもユニチカ社製)等が挙げられる。
【0028】
溶融重合ポリカーボネート樹脂は、溶融重合反応、すなわち芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのエステル交換反応により得られるポリカーボネート樹脂を含む。従来の芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを水酸化ナトリウム水溶液および塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(ホスゲン法)により得られるポリカーボネート樹脂は、溶融重合ポリカーボネート樹脂から除外される。本発明においては、ポリカーボネートとして、界面重合ポリカーボネートではなく、溶融重合ポリカーボネートを用いることにより、樹脂組成物の耐熱性と流動性のバランスが高まり、金型汚れが抑制されるだけでなく、成形体の離型性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性が向上する。
【0029】
溶融重合ポリカーボネート樹脂を構成する芳香族ジヒドロキシ化合物は、一般式:HO−Ar−OHで示される化合物である。式中、Arは二価の芳香族残基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、ピリジレン基、−Ar
1−Y−Ar
2−で表される2価の芳香族基である。Ar
1およびAr
2は、各々独立にそれぞれ炭素数5〜70を有する2価の炭素環式又は複素環式芳香族基を表し、Yは炭素数1〜30特に1〜5を有する2価のアルカン基(すなわちアルキレン基)を表す。好ましいArはフェニレン基である。好ましいAr
1およびAr
2はフェニレン基である。好ましいYはイソプロピリデン基である。
【0030】
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例として、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−〔1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール、4,4’−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどのビス(4−ヒドロキシアリール)アルカン)等が挙げられる。中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]が特に好ましい。
【0031】
本発明で用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物は、単一種類でも2種類以上でもかまわない。芳香族ジヒドロキシ化合物の代表的な例としてはビスフェノールAが挙げられ、芳香族ジヒドロキシ化合物として85モル%以上の割合でビスフェノールAを使用することが好ましい。
【0032】
溶融重合ポリカーボネート樹脂を構成する炭酸ジエステルの代わりに、または炭酸ジエステルとともに、ホスゲンが使用されてもよい。
【0033】
炭酸ジエステルの代表的な例としては、一般式:R
1−Ar
3−O−CO−O−Ar
4−R
2で示される置換または非置換のジアリールカーボネート類を挙げる事ができる。Ar
3およびAr
4はそれぞれ独立して二価の芳香族残基であり、例えば、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。R
1およびR
2はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。好ましいAr
3およびAr
4はフェニレン基である。好ましいR
1およびR
2はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基である。より好ましいR
1およびR
2は相互に同じ基である。
【0034】
ジアリールカーボネート類の中でも、非置換のジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ジ−t−ブチルフェニルカーボネートのような低級アルキル置換ジフェニルカーボネートなどの対称型ジアリールカーボネートが好ましい。特に最も簡単な構造のジアリールカーボネートであるジフェニルカーボネートが好適である。対称型ジアリールカーボネートとは、水素原子および炭素原子を省略した化学構造式で表したとき、線対称性を有する化学構造式で表し得るジアリールカーボネートのことである。
【0035】
炭酸ジエステルは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0036】
溶融重合ポリカーボネート樹脂は溶融重合反応に基づくエステル交換法により、得ることができる。エステル交換法とは、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを、触媒の存在下または非存在下で、且つ減圧下および/または不活性ガスフロー下で、加熱しながら溶融状態でエステル交換反応にて重縮合する方法をいう。重合方法、装置等には制限はない。例えば、溶融エステル交換法の場合、攪拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型攪拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等を用い、これらを単独もしくは組み合わせることで、溶融重合ポリカーボネート樹脂を容易に製造できる。
【0037】
エステル交換の反応温度は、通常50〜350℃の範囲であり、好ましくは100〜300℃の温度範囲で選ばれる。反応圧力は、重合過程のポリカーボネートの分子量によっても異なり、数平均分子量が5000以下の範囲では、400Pa〜常圧の範囲が一般に用いられ、数平均分子量が5000以上の範囲では10〜400Paが用いられる。上記した反応器の中で特に、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、および/またはワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器を用いる方法が好ましく、その場合には270℃を越えない温度で重合するのが好ましい。
【0038】
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの使用割合(仕込比率)は、用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの種類や、目標とする分子量や水酸基末端比率、重合条件等によって異なるが、通常、炭酸ジエステルは芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、0.9〜2.5モル、好ましくは0.95〜1.5モル、より好ましくは1.00〜1.2モルの割合で用いられる。
【0039】
溶融重合ポリカーボネート樹脂の製造に際し、所望の分子量を備えたポリカーボネートを得るために分岐剤を併用してもよい。本発明で使用できる分岐剤としての3官能以上の化合物は、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有する化合物が挙げられ、例えば、トリメリット酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フロログリシン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルエーテル、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニル−2−プロパン、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニルメタン、2,2’4,4‘−テトラヒドロキシジフェニルメタン、1−[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α’,α’’−ビス (4’’−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、α、α’,α’’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−ペプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−ペプタン、1,3,5−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,2−ビス[4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル−プロパン、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェノール、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−5’−イソプロプルベンジル]−5−メチルフェニル]メタン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2’,4’,7−トリヒドロキシフラボン、2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラボン、1,3−ビス(2’,4’−ジヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン、トリス(4’−ヒドロキシアリール)−アミル−S−トリアジン、1−[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]−3−[α’、α’−ビス(4’’−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン等が挙げられる。
【0040】
溶融重合ポリカーボネート樹脂は、本発明の樹脂組成物の流動性ならびに当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性および機械的特性のさらなる向上の観点から、対数粘度が0.30〜0.60dL/gであることが好ましく、0.30〜0.50dL/gであることがより好ましい。
溶融重合ポリカーボネート樹脂の対数粘度は、溶融重合ポリカーボネート樹脂を用いること以外、ポリアリレート樹脂の対数粘度と同様の方法により測定された値を用いている。
【0041】
溶融重合ポリカーボネート樹脂の対数粘度は通常、ポリアリレート樹脂の対数粘度よりも低い。ポリアリレート樹脂の対数粘度から溶融重合ポリカーボネート樹脂の対数粘度を減じて得られる対数粘度差は、樹脂組成物の流動性と当該樹脂組成物から得られる成形体の耐熱性とのバランスの観点から、好ましくは0.05〜0.25dL/g、より好ましくは0.10〜0.20dL/gである。
【0042】
溶融重合ポリカーボネート樹脂は市販品として入手することもできる。溶融重合ポリカーボネート樹脂の市販品として、例えば、WONDERLITE PC−108U、PC−110、PC−115、PC−122、PC−175(奇美実業社製)、Infino SC−1060U、SC−1100R、SC−1100UR、SC−1220R、SC−1220UR、SC−1280UR(LOTTE Advanced Materials社製)、HOPELEX PC−1600(LOTTE Chemical社製)、LEXAN 172L(SABIC社製)等が挙げられる。
【0043】
本発明の樹脂組成物において、ポリアリレート樹脂(A)と溶融重合ポリカーボネート樹脂(B)との混合比率は、(A)/(B)で、2/98〜98/2(質量比)である必要があり、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、30/70〜75/25(質量比)であることが好ましく、45/55〜75/25(質量比)であることがより好ましく、65/35〜75/25(質量比)であることがさらに好ましい。特に耐熱性を重視する場合、樹脂組成物において、ポリアリレート樹脂を50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上で用いる。ポリアリレート樹脂および溶融重合ポリカーボネート樹脂の含有量を「質量%」で表すとき、これらの含有量はいずれも、ポリアリレート樹脂および溶融重合ポリカーボネート樹脂の合計量に対する割合である。ポリアリレート樹脂(A)と溶融重合ポリカーボネート(B)との混合比率が上記範囲外となると、耐熱性と流動性とのバランスが崩れ、耐熱性または流動性が低下する。
【0044】
本発明の樹脂組成物はさらに、特定のホスファイト化合物(C)および特定の脂肪酸エステル(D)を含む。本発明の樹脂組成物は、ポリアリレート樹脂(A)および溶融重合ポリカーボネート樹脂(B)の系において、特定のホスファイト化合物(C)および特定の脂肪酸エステル(D)を組み合わせて含有させることにより、耐加水分解性および離型性に十分に優れた成形体を製造することができ、かつ、耐熱性と流動性とのバランスに優れている樹脂組成物を得ることができる。しかも、本発明の樹脂組成物は、金型汚れを十分に抑制しながら、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性にも十分に優れた成形体を製造することもできる。特定のホスファイト化合物(C)または特定の脂肪酸エステル(D)の一方のみを用いる場合、特定のホスファイト化合物(C)と他の離型剤とを組み合わせて用いる場合、および他の熱安定剤と特定の脂肪酸エステル(D)とを組み合わせて用いる場合、得られる成形体の離型性が低下する。しかも、これらの場合、耐加水分解性、金型汚れに関する耐曇り性、ならびに成形体の表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性が低下することがある。
【0045】
特定のホスファイト化合物(C)は、下記一般式(I)および(II)で表されるホスファイト化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である。以下、一般式(I)で表されるホスファイト化合物および一般式(II)で表されるホスファイト化合物を、この順序で詳しく説明する。
【0047】
式(I)中、R
11およびR
12は、それぞれ独立して、炭素原子数6〜40のアリール基または炭素原子数1〜40のアルキル基を表す。R
11およびR
12は、好ましくは、相互に同じ基を表す。
【0048】
式(I)において、R
11および/またはR
12としてのアリール基の炭素原子数は、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましくは6〜22、より好ましくは6〜14、さらに好ましくは6または10である。当該アリール基の炭素原子数は、アリール基が有していてもよい後述の置換基の炭素原子数は含まない。アリール基の具体例として、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。このようなアリール基は、置換基として1価の炭化水素基を有していてもよい。アリール基が有していてもよい置換基としての1価の炭化水素基は、1価飽和炭化水素基(例えば、アルキル基)であってもよいし、または1価不飽和炭化水素基(例えば、アリールアルキル基)であってもよく、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましくは1価飽和炭化水素基(例えば、アルキル基)である。アリール基が複数の置換基を有する場合、当該複数の置換基はそれぞれ独立して選択されてよい。アリール基が有していてもよい置換基としての1価の炭化水素基の炭素原子数は、特に限定されず、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜12である。例えば、アリール基が有していてもよい置換基としての1価飽和炭化水素基(例えば、アルキル基)の炭素原子数は、同様の観点から、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜4である。また例えば、アリール基が有していてもよい置換基としての1価不飽和炭化水素基(例えば、アリールアルキル基)の炭素原子数は、同様の観点から、好ましくは7〜20、より好ましくは7〜12、さらに好ましくは7〜10である。アリール基が有していてもよい置換基としてのアルキル基の具体例として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。アリール基が有していてもよい置換基としてのアリールアルキル基の具体例として、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、クミル基等が挙げられる。
【0049】
式(I)において、R
11および/またはR
12としてのアルキル基の炭素原子数は、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましくは10〜30、より好ましくは10〜26、さらに好ましくは14〜22である。このようなアルキル基は直鎖状であってもよいし、または分枝鎖状であってもよく、好ましくは直鎖状である。R
11および/またはR
12としてのアルキル基の具体例として、例えば、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、セチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0050】
式(I)で表されるホスファイト化合物として、例えば、下記一般式(i−1)〜(i−2)で表されるホスファイト化合物が挙げられる。
【0052】
式(i−1)中、R
21〜R
30は、それぞれ独立して、水素原子または式(I)におけるアリール基の置換基としての1価の炭化水素基と同様の基(例えば、炭素原子数1〜10の1価飽和炭化水素基(特にアルキル基)および/または炭素原子7〜20の1価不飽和炭化水素基(例えば、アリールアルキル基))を表す。R
21〜R
30は、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、それぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜5、特に1〜3のアルキル基であることが好ましい。
【0053】
式(i−1)においては、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましいR
21〜R
30は以下の通りである:
R
21〜R
30のうち、R
21、R
23、R
28およびR
30は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜5、特に1〜4のアルキル基または炭素原子数7〜12、特に7〜10のアリールアルキル基であり、R
25およびR
26は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5、特に1〜4のアルキル基または炭素原子数7〜12、特に7〜10のアリールアルキル基であり、残りの基は水素原子である;
R
21〜R
30のうち、R
21、R
23、R
25、R
26、R
28およびR
30は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜5、特に1〜4のアルキル基または炭素原子数7〜12、特に7〜10のアリールアルキル基であり、残りの基は水素原子である;または
R
21〜R
30のうち、R
22、R
24、R
27およびR
29は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜5、特に1〜4のアルキル基であり、残りの基は水素原子である。
【0054】
式(i−1)で表されるホスファイト化合物の具体例として、例えば、以下の化合物が挙げられる:
ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;
ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;
ビス(2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;
ビス(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;
ビス(2−メチル−4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;
ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;
ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;
ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト。
【0055】
式(i−1)で表されるホスファイト化合物は市販品として入手可能である。例えば、具体的な商品名として、例えば、ADEKA社製「アデカスタブPEP−36」(ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)および「アデカスタブPEP−4C」(ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)、ならびにDoverchemical社製「Doverphos S−9228」(ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト)等が挙げられる。
【0057】
式(i−2)中、R
31およびR
32は、それぞれ独立して、式(I)におけるR
11および/またはR
12としてのアルキル基と同様の基(例えば、炭素原子数10〜30のアルキル基)を表す。R
31〜R
32は、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、相互に同じ基であることが好ましい。
【0058】
式(i−2)においては、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましいR
31およびR
32は以下の通りである:
R
31およびR
32は、それぞれ独立して、炭素原子数10〜26、特に14〜22の直鎖状アルキル基である。
【0059】
式(i−2)で表されるホスファイト化合物の具体例として、例えば、以下の化合物が挙げられる:
ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト。
【0060】
式(i−2)で表されるホスファイト化合物は市販品として入手可能である。例えば、具体的な商品名として、例えば、ADEKA社製「アデカスタブPEP−8」(ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト)等が挙げられる。
【0062】
式(II)中、R
41〜R
45は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基である。
【0063】
式(II)において、R
41〜R
45としての炭化水素基の炭素原子数は、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4である。炭化水素基は1価の炭化水素基であり、1価飽和炭化水素基であってもよいし、または1価不飽和炭化水素基であってもよく、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましくは1価飽和炭化水素基(例えば、アルキル基)である。R
41〜R
45としての炭化水素基の具体例として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基は直鎖状であってもよいし、または分枝鎖状であってもよく、好ましくは直鎖状である。
【0064】
式(II)においては、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましいR
41〜R
45は以下の通りである:
R
41〜R
45のうち、R
41およびR
43は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜5、特に1〜4のアルキル基であり、R
45は水素原子または炭素原子数1〜5、特に1〜4のアルキル基であり、残りの基は水素原子である。
【0065】
式(II)で表されるホスファイト化合物の具体例として、例えば、以下の化合物が挙げられる:
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト;
トリス(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト;
トリス(4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト;
トリフェニルホスファイト;
トリノニルフェニルホスファイト。
【0066】
式(II)で表されるホスファイト化合物は市販品として入手可能である。例えば、具体的な商品名として、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、住友化学社製「スミライザーTNP」、城北化学工業社製「JP−351」、ADEKA社製「アデカスタブ2112」、BASF社製「イルガフォス168」、城北化学工業社製「JP−650」等が挙げられる。
【0067】
ホスファイト化合物(C)の中でも、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、上記一般式(i−1)、(i−2)および(II)で表されるホスファイト化合物からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、より好ましくは上記一般式(i−1)および(II)で表されるホスファイト化合物からなる群から選択される1種以上の化合物であり、最も好ましくは上記一般式(i−1)で表されるホスファイト化合物からなる群から選択される1種以上の化合物である。
【0068】
ホスファイト化合物(C)の含有量は、特に限定されず、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、ポリアリレート樹脂(A)と溶融重合ポリカーボネート樹脂(B)との合計量100質量部に対し、0.01〜0.5質量部であることが好ましく、0.01〜0.4質量部であることがより好ましく、0.01〜0.08質量部であることがさらに好ましく、0.02〜0.06質量部であることが最も好ましい。2種以上のホスファイト化合物(C)を含有する場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0069】
特定の脂肪酸エステル(D)はジペンタエリスリトール脂肪酸エステルである。ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、ジペンタエリスリトールの一部の水酸基が脂肪酸でエステル化されてなる部分エステル化物であってもよいし、ジペンタエリスリトールの全ての水酸基が脂肪酸でエステル化されてなる全エステル化物であってもよいし、またはこれらの混合物であってもよい。ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましくは全エステル化物である。脂肪酸エステル(D)の代わりに、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等の他の脂肪酸エステルを用いても、成形体の離型性および熱エージング適性が低下する。
【0070】
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸またはそれらの混合物であってもよく、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましくは飽和脂肪酸である。このような脂肪酸の炭素原子数は特に限定されず、上記と同様の観点から、好ましくは1〜30、より好ましくは2〜26、さらに好ましくは10〜20である。ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成し得る飽和脂肪酸として、例えば、酢酸、プロピオン酸、ペンタン酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリル酸、オクタン酸、ノナン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成し得る不飽和脂肪酸として、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル1分子を構成する脂肪酸として2分子以上の脂肪酸が含まれる場合、当該2分子以上の脂肪酸は1種の脂肪酸のみを含んでいてもよいし、相互に異なる2種以上の脂肪酸を含んでいてもよい。樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましいジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは1分子あたり6分子の脂肪酸を含み、当該6分子の脂肪酸は1種の脂肪酸のみを含む。
【0071】
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、一部に、脂肪族ジカルボン酸を含んでもよい。脂肪酸が脂肪族ジカルボン酸を含む場合、脂肪族ジカルボン酸は一方のカルボキシル基でジペンタエリスリトールの水酸基とエステル結合を形成し、他方のカルボキシル基は遊離している。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;およびマレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。このようなエステル化合物の例として、脂肪族ジカルボン酸としてアジピン酸を用いたジペンタエリスリトールアジピックステアレート等が挙げられる。
また、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルとして、ジペンタエリスリトールとジカルボン酸の縮合反応によりオリゴマー化したポリオールと脂肪族、脂環族、芳香族のカルボン酸によりエステル化されたエステル化合物も用いることができる。例えば、脂肪族ジカルボン酸としてアジピン酸を用いた場合、すなわちペンタエリスリトールをアジピン酸でオリゴマー化しステアリン酸によりエステル化されたエステル化合物等も用いることができる。このようなエステル化合物の例として、ジペンタエリスリトールアジピックステアレートオリゴマ等が挙げられる。
【0072】
脂肪酸エステル(D)の具体例として、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサラウレート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサベヘネート、ジペンタエリスリトールアジピックステアレート、ジペンタエリスリトールアジピックステアレートオリゴマ等が挙げられる。これらジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの中でも、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、好ましくはジペンタエリスリトールヘキサラウレート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサベヘネートからなる群から選択される1種以上の脂肪酸エステルであり、より好ましくはジペンタエリスリトールヘキサステアレートである。
【0073】
脂肪酸エステル(D)は市販品として入手することができる。そのような市販品の具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート(エメリーオレオケミカル社製VPG−2571)が挙げられる。
【0074】
脂肪酸エステル(D)の含有量は、特に限定されず、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、離型性、耐加水分解性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性、ならびに金型成形面の耐曇り性のさらなる向上の観点から、ポリアリレート樹脂(A)と溶融重合ポリカーボネート樹脂との合計量100質量部に対し、0.01〜1.0質量部であることが好ましく、0.01〜0.8質量部であることがより好ましく、0.01〜0.6質量部であることがさらに好ましく、0.01〜0.4質量部であることが最も好ましい。2種以上の脂肪酸エステル(D)を含有する場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0075】
本発明の樹脂組成物は、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外の脂肪酸エステル、着色剤、アルミニウム粉やパール顔料等の光輝材等の添加剤をさらに含んでもよい。
【0076】
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外の脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネート、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート等が挙げられる。これら脂肪酸エステルは上記特性を損ねない範囲で、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルと組み合わせて用いることができる。
【0077】
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外の脂肪酸エステルの含有量は、特に限定されず、ポリアリレート樹脂(A)と溶融重合ポリカーボネート樹脂(B)との合計量100質量部に対し、好ましくは2質量部以下(特に0.01〜2質量部)であり、より好ましくは1質量部以下(特に0.02〜1質量部)である。ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外の脂肪酸エステルを2種以上で含有する場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0078】
本発明の樹脂組成物が着色剤を含有することにより、様々な色調の成形体を得ることができる。着色剤としては、例えば、各種および各色の顔料および染料が挙げられる。金型成形面の耐曇り性ならびに成形体の表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性のさらなる向上の観点から、着色剤は顔料が好ましい。
【0079】
成形体の用途に応じて着色剤の選択が可能である。例えば、成形体を自動車部品のランプリフレクターまたはエクステンションリフレクター等の光反射体のための基体として用いる場合は、成形体は黒色または灰色を有することが好ましい。
【0080】
成形体が黒色を有する場合、本発明の樹脂組成物は黒色顔料を好適に含む。
成形体が灰色を有する場合、本発明の樹脂組成物は黒色顔料と白色顔料とを組み合わせて好適に含む。
【0081】
黒色顔料は黒色を有する無機系顔料であり、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラック等が挙げられる。黒色顔料は単独また2種以上を組み合わせて用いることができる。
白色顔料は白色を有する無機系顔料であり、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミナ等が挙げられる。白色顔料は単独また2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
成形体(特に光反射体用基体)を黒色または灰色に着色する場合、黒色顔料の代わりに、または黒色顔料と組み合わせて、黒色染料を用いることもできる。黒色染料としては、例えばキノリン系化合物、アントラキノン系化合物、ペリノン系化合物等の染料を挙げることができる。これらは何れも耐熱性が高く、単独また2種以上を組み合わせて用いることができる。黒色染料の市販品としては、例えば、ソルベントブラック3、5、7、22、27、29若しくは34、モーダントブラック1、11若しくは17、アシッドブラック2若しくは52、又は、ダイレクトブラック19若しくは154などが挙げられる(数値は何れもカラーインデックス(C.I.)ナンバーである)。上記以外に、黒色のアジン系縮合混合物として、“NUBIAN”(登録商標)BLACK PC−8550、同PC−0850、黒色の中性染料混合物として、同PC−5856、同PC−5857、同PC−5877(以上、何れもオリエント化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0083】
顔料(特に黒色顔料)と染料(特に黒色染料)とは組み合わせて用いることもできるが、各々の効果を高めるため、それぞれ単独で用いることが好ましい。顔料または染料で着色された成形体は、いずれもアルミ蒸着を行うことができるが、顔料(特に黒色顔料)を含有させた成形体は、アルミ蒸着を行うための光反射体用基体に適する。一方、染料(特に黒色染料)を含有させた成形体は、アルミ蒸着レスで用いることが好ましい。
【0084】
着色剤の含有量は、ポリアリレート樹脂(A)と溶融重合ポリカーボネート樹脂(B)との合計量100質量部に対し、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.02〜1質量部、さらに好ましくは0.03〜0.5質量部である。着色剤が2種以上含有される場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。着色剤(特に黒色顔料および黒色染料)を前記範囲の含有量で用いることで、成形体が可視光線を吸収し、黒色が映える(ピアノブラック)。特に前記のような黒色の中性染料混合物を用いた場合成形体は赤外線を透過させることができるため、成形体または成形体を組み込んだ製品の熱による変形等の問題を抑制できる。
【0085】
本発明の樹脂組成物は、ポリアリレート樹脂(A)、溶融重合ポリカーボネート樹脂(B)、ホスファイト化合物(C)および脂肪酸エステル(D)ならびに所望の添加剤を溶融混錬して得ることができ、通常はペレットの形態を有している。
【0086】
本発明の樹脂組成物のビカット軟化点は通常、140℃以上であり、145℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、耐熱性のさらなる向上の観点から、155℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましく、175℃以上であることが最も好ましい。本発明の樹脂組成物を例えば、光反射用基体(特にリフレクター)等の用途で用いた場合、実用的な耐熱性の指標として、ビカット軟化点が140℃以上であることは特に重要である。リフレクターは、車載用のランプ部品として、長期にわたってランプ点灯時の熱に対する耐久性を有さなくてはならず、成形体が熱によって歪んだり、かつ/または劣化したりすることは許容されない。例えば成形体が歪むことは、光軸がずれたりする懸念が高まり、車載用ランプの機能を十分果たすことができないため、好ましくない。
【0087】
本発明の樹脂組成物は、当該樹脂組成物の流動性および当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性および機械的特性のさらなる向上の観点から、対数粘度が0.35〜0.65dL/gであることが好ましく、0.40〜0.55dL/gであることがより好ましい。樹脂組成物の対数粘度は、樹脂組成物を用いること以外、ポリアリレート樹脂の対数粘度と同様の方法により測定された値を用いている。
【0088】
本発明における樹脂組成物において、単官能フェノール化合物の含有量は、樹脂組成物の流動性、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体の耐熱性、金型成形面の耐曇り性ならびに成形体の表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性のさらなる向上の観点から、好ましくは10000ppm以下(通常は100〜10000ppm)であり、特に好ましくは500〜7000ppm、より好ましくは1000〜7000ppm、さらに好ましくは1500〜7000ppm、特に好ましくは2500〜6500ppm、最も好ましくは4000〜6500ppmである。
【0089】
単官能フェノール化合物の具体例としては、例えばフェノール、イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クレゾール、p−クミルフェノール、2−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、およびイソオクチルフェノールなどが挙げられる。
【0090】
単官能フェノール化合物の含有量は、熱分解/ガスクロマトグラフィー質量分析法によって測定された値を用いている。本発明において、単官能フェノール化合物の含有量は、特にフェノール、p−tert−ブチルフェノールおよびp−クミルフェノールの総含有量を用いている。
【0091】
単官能フェノール化合物の含有量を制御する方法として、樹脂組成物の構成成分として溶融重合ポリカーボネート樹脂を用いることが必要である。溶融重合法は分子量制御が容易なために、溶融重合ポリカーボネート樹脂は末端封鎖剤としての単官能フェノール化合物の含有量が低減されているためである。他方、界面重合法は分子量制御が困難なため、界面重合ポリカーボネート樹脂は通常、末端封鎖剤として単官能フェノール化合物を比較的多量で含む。本発明の樹脂組成物において、溶融重合ポリカーボネート樹脂の代わりに、界面重合ポリカーボネート樹脂を用いた場合、当該樹脂組成物の単官能フェノール化合物の含有量は通常、10000ppm超である。
【0092】
本発明の樹脂組成物は、金型成形面の耐曇り性ならびに成形体の表面外観特性、離型性、耐加水分解性、蒸着適性および熱エージング適性のさらなる向上の観点から、不要な添加剤は極力用いるべきでない。不必要な添加剤は、それ自身の分解によるガス発生を引き起こす要因となるため、添加を極力抑制すべきである。しかしながら、本発明の樹脂組成物は、耐熱性を有するため、加工温度300℃以上の高温で溶融混錬および/または射出成形して樹脂組成物や成形体とする。従って、そのような高温下で加工が行われる状況下、樹脂組成物の劣化や分解を抑制する必要がある。さらには、樹脂組成物の劣化や分解は、耐加水分解性の低下もまねく。樹脂組成物の劣化や分解、耐加水分解性の低下は、機械特性を低下させ成形体のシャルピー衝撃強度等が低下する懸念が高まる。よって、本発明の樹脂組成物は、金型成形面の耐曇り性ならびに成形体の表面外観特性、離型性、耐加水分解性、蒸着適性および熱エージング適性向上の観点から、ホスファイト化合物(C)と脂肪酸エステル(D)を含有する必要がある。
【0093】
[用途]
本発明の樹脂組成物を用いて、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、発泡成形法等のあらゆる成形法により、成形体を製造することができる。本発明の樹脂組成物を用いて射出成形法により製造された成形体は、射出成形法に特有のウェルドラインおよびその周辺において曇りに関する表面外観特性に優れるため、射出成形法により製造されることが好ましい。
【0094】
本発明の樹脂組成物は光反射体用基体の製造に有用である。本発明の樹脂組成物を用いて製造された成形体(特に光反射体用基体)に金属層を形成して得られる光反射体は、ウェルドラインおよびその周辺における金属層表面の曇りに関する蒸着適性ならびに熱エージング適性に優れるためである。
【0095】
光反射体用基体は、金属層を支持するための支持体であって、金属層の形成によって光反射体を構成する。光反射体は、車載用ランプ、家電照明等のあらゆる光源のための反射体であってよい。本発明の樹脂組成物を用いて製造された成形体は、車載用ランプの光反射体用基体として特に有用である。本発明の樹脂組成物は、金型汚れを十分に抑制しながらも、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性に優れた成形体を製造することができ、かつ耐熱性と流動性のバランスに優れるところ、車載用ランプの光反射体用基体は、当該特性(特に耐熱性、表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性等)の要求性能が、他の用途の基体よりも高いためである。本発明の樹脂組成物を用いて製造された成形体(特に光反射体用基体)は、離型性および耐加水分解性に優れていることも、本発明の樹脂組成物が車載用ランプの光反射体用基体の製造に特に有用であることの理由の1つである。詳しくは、車載用ランプの光反射体用基体は大量生産されるため、光反射体用基体は離型性に優れていることが要求されている。また車載用ランプの光反射体用基体は、比較的高温環境下に置かれることが多く、しかも降雨時には高温高湿環境下に置かれることになるため、光反射体用基体は耐加水分解性に優れていることも要求されている。車載用ランプの光反射体としては、例えば、ランプリフレクター、およびエクステンションリフレクター等が挙げられる。
【0096】
特に耐加水分解性については、本発明の樹脂組成物を含む成形体は、高温高湿環境試験後の対数粘度保持率が通常、56%であり、好ましくは60%以上であり、より好ましくは64%以上である。高温高湿環境試験とは、成形体を、温度130℃、相対湿度75%RH、圧力0.2MPaの条件で、75時間保持する試験のことである。高温高湿環境試験後の対数粘度保持率は、高温高湿環境試験前の対数粘度に対する割合である。
【0097】
光反射体用基体への金属層の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着等の手段を用いてアルミニウム等の金属層を形成することができる。金属層を形成する場合、光反射体用基体に対して直接的に金属層を形成する方法(ダイレクト蒸着法)、一旦、光反射体用基体表面にプライマー塗布を行い、その上に蒸着層を形成する方法等、任意で選択することができる。本発明の樹脂組成物を用いて得られた成形体は、平滑性、表面外観が向上したものであるため、ダイレクト蒸着法を好ましく採用することができる。本発明の樹脂組成物を用いて得られた成形体に形成された蒸着層は、光反射体としての高い反射効率を有するばかりでなく、ランプ点灯時の熱に変形することなく、長期にわたって当該反射効率を維持することができ、しかも成形体からの脱落の懸念が低減される。
【実施例】
【0098】
以下、実施例、比較例および参考例により本発明をさらに詳しく説明するが、下記実施例に限定されるものではない。
【0099】
1.評価方法
(1)単官能フェノール化合物の総量
樹脂組成物ペレットを用い、下記の装置および条件にて、熱分解/ガスクロマトグラフ質量分析(Py/GC−MS)を行い、フェノール、p−tert−ブチルフェノールおよびp−クミルフェノールの3種のフェノール化合物の総量をデカン換算数値としてppm単位で表した。
【0100】
(分析条件)
1−1.Py装置:フロンティアラボ製PY2020D
ヘリウムガス雰囲気下で開始温度40℃から20℃/分で昇温、370℃到達で5分間ホールドし、上記条件にて採取された発生ガスを下記GC装置およびMS装置にて同定、定量した。
【0101】
1−2.GC装置:ヒューレッドパッカード製HP−6890型
昇温条件:40℃で3分ホールド後、10℃/分で150℃まで昇温し、150℃から320℃までは20/分で昇温し、320℃で3分ホールドした。
カラム UltraALLOY−5(30m×0.25mm×0.25μm)
スプリット 50:1
【0102】
1−3.MS装置:ヒューレッドパッカード製HP−5973型
マスレンジ:スキャン測定(massレンジ:29.0〜550.0)
トランスファーライン:320℃
【0103】
(2)対数粘度
1,1,2,2−テトラクロロエタンを溶媒として、温度25℃において測定し、dL/g単位で表した。
【0104】
(3)流動性
樹脂組成物ペレットを、120℃にて12時間以上熱風乾燥した後、射出成型機(東芝機械社製EC100N型)にて、樹脂温度320℃あるいは350℃、金型温度100℃、射出圧力150MPa、射出時間4秒、設定射出速度150mm/秒で成形した際の試験片の流動長を測定した。試験片の数は5点で、5点の平均値を各評価条件での流動長とした。
金型は厚み2mmおよび幅20mmのバーフロー試験金型を用いた。樹脂温度が同一条件下、流動長が長いほど流動性がよいことを示す。同一条件で測定した流動長を対比した場合5mm以上の差異があった場合、有意な差があると判断した。
樹脂温度350℃での流動長を以下のように評価した。
◎:420mm以上(最良)。
○:390mm以上、420mm未満(良)。
△:290mm以上、390mm未満(実用上問題なし)。
×:290mm未満(実用上問題あり)。
【0105】
(4)ビカット軟化点(耐熱性)
JIS K 7206に規定のB50法に準拠して測定した。ビカット軟化点は、HDT試験装置(ヒートディストーションテスター)(東洋精機製作所社製)で測定した。試験片として、厚さ4mmの成形体を用いて測定した。
ビカット軟化点を以下のように評価した。
◎◎:170℃以上(極上:extra quality)。
◎:160℃以上、170℃未満(最良)。
○:150℃以上、160℃未満(良)。
△:140℃以上、150℃未満(実用上問題なし)。
×:140℃未満(実用上問題あり)。
【0106】
(5)金型成形面の耐曇り性
樹脂組成物ペレットを、120℃で8時間以上熱風乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製EC100N型)に試験片金型を取り付けて、樹脂温度は各樹脂組成物ごとに最適な温度(表参照)に設定しつつ、金型温度は90℃に設定し、射出成形を行い、成形体(70mm×40mm)を得た。成形体は、厚みが1mm、2mmおよび3mmの三段階で変化した成形体であった。なお、金型の成形面は#8000のみがきをかけた鏡面仕様とし、溶融した樹脂組成物が金型内フル充填とならない、ショートショットの状態で連続50ショットの成形を行い、樹脂の流動先端近傍となる金型表面(可動型および固定型の成形面)を目視確認し、曇りの発生の有無を観察した。曇りの程度に応じて5段階(薄1<<3<<5濃)で評価をした。曇の程度の評価値が小さいほど、曇は少なく、良好である。
◎:評価値=1(最良)。
○:評価値=2(良)。
△:評価値=3(実用上問題なし)。
×:評価値=4(実用上問題あり)。
××:評価値=5(実用上問題あり)。
【0107】
(6)成形体の表面外観特性
樹脂組成物ペレットを、120℃で8時間以上熱風乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製EC100N型)に試験片金型を取り付けて、樹脂温度は各樹脂組成物ごとに最適な温度(表参照)に設定しつつ、金型温度は90℃に設定し、射出成形を行い、成形体(70×40mm、厚み2mmt)を得た。なお、金型の成形面は#8000のみがきをかけた鏡面仕様とした。また、金型は、短辺方向中央部に第一のゲートと、第一のゲートを有する短辺に対向する他方短辺に近接する長辺終端部に第二のゲートの2つのゲートを有するものであり、溶融樹脂は、2つのゲートより同時にキャビティ内に流入する。キャビティに流入した溶融樹脂は、キャビティ中央部で合流し樹脂冷却とともに合流部にウェルドを生成する。ウェルド部の成形体表面の外観を下記基準で評価した。
◎:ウェルドラインおよびその周辺に曇りは全く無い(最良)。
○:ウェルドラインおよび/またはその周辺に曇りが1カ所のみで部分的に生じた(良)。
△:ウェルドラインおよび/またはその周辺に曇りが2カ所以上で部分的に生じたが、実用上問題のない範囲であった。
×:ウェルドラインおよび/またはその周辺に沿って帯状の曇りが生じ、実用上問題があった。
【0108】
(7)離型性
(6)成形体の表面外観特性で使用した金型を用い、成形体(70×40mm、厚み2mmtを得た。なお、第一のゲートのみから溶融樹脂が金型内に流入するよう流路変更を行った以外は、(6)と同様の条件で行った。成形体の離型性を下記基準により判断した。◎のものは離型性が良好であり、×のものは離型性が不良である。
◎:得られた成形体を金型から離型する際、ビビリ音は発せず、抵抗なく取り出しができたため、成形体に突出ピンの跡が全く残らなかった。
×:得られた成形体を金型から離型する際、ビビリ音を発し、成形体に突出ピンの跡が残った。
【0109】
(8)耐加水分解性
樹脂組成物ペレットを、120℃で8時間以上熱風乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製EC100N型)に試験片金型を取り付けて、樹脂温度は各樹脂組成物ごとに最適な温度(表参照)に設定しつつ、金型温度は90℃に設定し、射出成形を行い、成形体(70×10mm、厚み4mmt)を得た。得られた成形体につき、前記(2)対数粘度での条件に従い対数粘度を測定した。
一方、得られた試験片をプレッシャークッカー(平山製作所製、型式PC−242HSR2)に投入し、温度130℃、相対湿度75%RH、圧力0.2MPaの条件で、75時間処理をし、同様に成形体の対数粘度を測定し、処理前に対する処理後の対数粘度保持率を下記式により算出した。
成形体の対数粘度保持率56%以上であれば、耐加水分解性が「実用上問題なし」と判断した。
成形体の対数粘度保持率(%)=(処理後の成形体対数粘度/処理前の成形体対数粘度)×100
◎:保持率64%以上(最良)。
○:保持率60%以上64%未満(良)。
△:保持率56%以上60%未満(実用上問題なし)。
×:保持率56%未満(実用上問題あり)。
【0110】
(9)成形体の蒸着適性
(6)で得た成形体の鏡面側に対し、アンダーコートすることなくベルジャー型真空蒸着装置(ULVAC社製)を用いアルミニウムを蒸着した。蒸着層の厚みはおよそ0.1μmであった。表面にアルミニウムの蒸着層が形成された成形体の初期外観について目視により下記の基準で判定した。
◎:蒸着層の全表面が鏡面であり、曇りが全く無く、成形体の外観が最良であった。
○:ウェルドラインおよびその周辺の蒸着層表面に曇りが1カ所のみで部分的に生じたが、成形体の外観が良好であった。
△:ウェルドラインおよびその周辺の蒸着層表面に曇りが2カ所以上で部分的に生じたが実用上問題なかった。
×:ウェルドラインおよびその周辺の蒸着層表面に曇りが全体的に生じ、成形体の外観は不良であった(実用上問題あり)。
【0111】
(10)成形体の熱エージング適性(実使用に即した評価)
(7)で得た蒸着層を有する成形体を各々高温炉中、135℃条件下、24時間熱エージング試験を行った。熱エージング試験とは、成形体を所定の温度で所定の時間だけ静置する処理のことである。熱エージング試験後の成形体について、(i)蒸着層表面の光沢度、(ii)蒸着層の密着性の評価をそれぞれ行った。
【0112】
(i)蒸着層表面の光沢度
JIS Z8741に準拠し、光沢度計(日本電色工業社製、VG−2000型)を用い、各成形体における蒸着層表面の入射角20°における表面光沢度を測定し、下記の基準により4段階で評価した。なお(9)にて、蒸着層表面に曇りを生じたものは、特に曇り近傍の光沢度を測定した。N=5で測定を行い、その平均値を該成形体における光沢度とした。
◎:光沢度1500以上(最良)。
○:光沢度1000以上1500未満(良)。
△:光沢度750以上1000未満(実用上問題なし)。
×:光沢度750未満(実用上問題あり)。
【0113】
(ii)蒸着層の密着性
JIS K5400で規定されているXカットテープ法に準拠し、各成形体の蒸着層に対し、カッターナイフにてクロスカット(Xカット)を入れ、セロハンテープを貼付後、剥離し、下記基準で測定した。N=5で測定を行い、その平均値を該成形体における蒸着層の密着性評価とした。
◎:蒸着層の剥がれが全くない(最良)。
○:Xカット部にわずかの剥がれがある(良)。
△:Xカット部の交点いずれかの方向に、3.0mm以内の剥がれがある(実用上問題なし)。
×:Xカット部より大きく剥がれる(実用上問題あり)。
【0114】
(11)総合評価
流動性、耐熱性、金型成形面の耐曇り性、ならびに成形体の表面外観特性、蒸着適性および熱エージング適性の評価結果に基づいて、総合的に評価した。
◎◎:全ての評価結果うち、最も低い評価結果が◎であり、かつ耐熱性が◎◎であった。
◎:全ての評価結果が◎であった。
○:全ての評価結果うち、最も低い評価結果が○であった。
△:全ての評価結果うち、最も低い評価結果が△であった。
×:全ての評価結果うち、最も低い評価結果が×または××であった。
【0115】
2.原料
(1)ポリアリレート:U−パウダー Lタイプ(ユニチカ社製)(対数粘度0.54)
【0116】
(2)ポリカーボネート
・ポリカーボネートb1:溶融重合ポリカーボネート:ジフェニルカーボネートおよびビスフェノールAから重合されたポリカーボネート
WONDERLITE PC−175(奇美実業社製)(対数粘度0.39)
・ポリカーボネートb2:界面重合ポリカーボネート:ホスゲンおよびビスフェノールAから重合されたポリカーボネート
SDポリカ200−80(住化ポリカーボネート社製)(対数粘度0.39)
【0117】
(3)ホスファイト化合物
・ホスファイト化合物c1:ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADEKA社製アデカスタブPEP−36)
・ホスファイト化合物c2:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(ADEKA社製アデカスタブ2112)
・ホスファイト化合物c3:ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(ADEKA社アデカスタブPEP−8)
・非ホスファイト化合物c4(ホスホナイト系化合物):テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4'−ジイルビスホスホナイト(BASF製IRGAFOS P−EPQ)
【0118】
(4)ホスファイト以外の化合物
・ヒンダードフェノール系化合物:イルガノックス1010(ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、(BASF社製Irganox 1010)
【0119】
(5)脂肪酸エステル
・脂肪酸エステルd1:ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル:ジペンタエリスリトールヘキサステアレート(エメリーオレオケミカルズ社製VPG−2571、末端水酸基0〜10.0mgKOH)
・脂肪酸エステルd2:ペンタエリスリトール脂肪酸エステル:ペンタエリスリトールテトラステアレート(エメリーオレオケミカル社製VPG−861、末端水酸基20〜37mgKOH)
・非脂肪酸エステルd3:脂肪酸エステル以外の化合物:パラフィンワックス(日本精蝋社製ルバックス1266)
【0120】
(6)着色剤
・カーボンブラック(UP−D 701;大日精化工業社製)
【0121】
実施例1〜15、比較例1〜13および参考例1〜2
所定のポリアリレートとポリカーボネートを、熱風循環式乾燥機を用いて120℃で8時間以上乾燥を行い、ホスファイト化合物(または非ホスファイト化合物)および脂肪酸エステル(または非脂肪酸エステル)とともに、表1〜表3に示した配合割合で均一混練をした。詳しくは、ポリアリレートとポリカーボネートとの合計量100質量部に対し、ホスファイト化合物(または非ホスファイト化合物)および脂肪酸エステル(または非脂肪酸エステル)をそれぞれ所定量、ならびに着色剤0.05質量部を、クボタ社製連続定量供給装置を用いて、同方向2軸押出機(東芝機械社製TEM−37BS)の主供給口に供給した。そして、所定の樹脂温度および吐出量10kg/時で溶融混練を行い、ノズルからストランド状に引き取った樹脂組成物を水浴にくぐらせて冷却固化し、ペレタイザーでカッティングした後、120℃で8時間熱風乾燥することによって樹脂組成物のペレットを得た。所定の樹脂温度とは表1〜表3に記載の成形温度のことである。さらに得られた樹脂組成物ペレットを、上記した評価方法に記載の方法に従って、射出成形し、成形体を得た。
得られた樹脂組成物ペレットもしくは成形体を用い、各種評価を行った。その結果を表1〜表3に示す。
なお、参考例1〜2においては、ポリカーボネート樹脂単独での前記評価(流動性、耐加水分解性および熱エージング適性の評価は未実施)を行った。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
実施例1〜15では、樹脂組成物は、耐熱性(ビカット軟化点)と流動性(バーフロー流動長)のバランスに優れており、金型成形面の耐曇り性にも十分に優れていた。また成形体は、表面の外観特性、離型性および耐加水分解性に十分に優れていた。さらに成形体は、蒸着層に関し、蒸着適性および熱エージング適性に十分に優れていた。
【0126】
比較例1〜5では、所定のポリカーボネート樹脂を用いなかったため、金型成形面の耐曇り性が劣り、また成形体のウェルドラインに沿って帯状に曇りが生じた。また成形体は、離型性に劣った。さらに、成形体の蒸着適性および熱エージング適性も劣った。
【0127】
比較例6では、所定のホスファイト化合物および脂肪酸エステルを含有しなかったため、成形体の表面外観特性、離型性、蒸着適性、熱エージング適性が劣った。
【0128】
比較例7では、所定の脂肪酸エステルを含有しなかったため、成形体の離型性、耐加水分解性、熱エージング適性が劣った。
【0129】
比較例8では、所定のホスファイト化合物および脂肪酸エステルを含有しなかったため、成形体の表面外観、離型性、蒸着適性、熱エージング適性が劣った。
【0130】
比較例9では、所定のホスファイト化合物ではないリン系化合物を用い、しかも所定の脂肪酸エステルではない脂肪酸エステルを用いたため、成形体の離型性、耐加水分解性、熱エージングが劣った。
【0131】
比較例10、11では、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルではない脂肪酸エステルを用いたため、成形体の離型性、熱エージングが劣った。
【0132】
比較例12、13では、所定のホスファイト化合物および脂肪酸エステルの一方を用いないため、成形体の離型性および耐加水分解性が劣った。
【課題】熱安定剤および離型剤を含有させても、耐加水分解性および離型性に十分に優れた成形体を製造することができ、しかも耐熱性と流動性とのバランスに優れている樹脂組成物を得ること。
【解決手段】(A)ポリアリレート樹脂、(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂、(C)特定のホスファイト化合物、および(D)ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを含有する樹脂組成物であって、(A)ポリアリレート樹脂と(B)溶融重合ポリカーボネート樹脂との質量比(A/B)が2/98〜98/2であり、前記樹脂組成物のビカット軟化点が140℃以上である、樹脂組成物。