(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記誘導コイルは複数備えられて互いの回転軌跡が一致するように配設されるとともに該回転軌跡において等間隔に配列しており、上記磁石は複数備えられて上記回転軌跡に対向する位置において等間隔に配列している、請求項1に記載の工具ホルダ。
上記接続部は上記回転軸に形成された冷媒供給部から上記冷媒流路に冷媒を供給するための冷媒導入部を有しており、上記工具取付部は上記冷媒流路を流通する冷媒を上記工具に向けて排出する冷媒排出部を有している、請求項4に記載の工具ホルダ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記磁石は上記回転軸の軸線から偏心した位置に重心を有するとともに上記軸線を中心に自由回転可能に上記ケースの内部に支持された磁石保持部に保持されていることが好ましい。この場合には、水平に延びる回転軸に取り付けることで、自由回転可能に支持された磁石保持部はその重心が軸線よりも重力方向下方に位置した状態に維持される。そのため、簡易な構成で、磁石がケースに対して相対的に回転可能な構成を実現することができ、装置の小型化及び軽量化に寄与する。
【0011】
上記誘導コイルは複数備えられて互いの回転軌跡が一致するように配設されるとともに該回転軌跡において等間隔に配列しており、上記磁石は複数備えられて上記回転軌跡に対向する位置において等間隔に配列していることが好ましい。この場合は、軸回転時の安定性が向上するとともに、電力を効率的に発生させることができる。
【0012】
上記磁石の個数は、上記コイルの個数の整数倍であることが好ましい。この場合は、複数のコイルにおいて、同じタイミングで磁石が近接して離隔することになるため、発生される最大起電力をより大きくすることができ、電力を効率的に発生させることができる。
【0013】
上記ケースは、上記工具を冷却するための冷媒を流通させる冷媒流路を有していることとすることができる。この場合は、工具を効率的に冷却することができるとともに、工具の冷却のために別途冷却構造を要しないため、装置の構成を簡略化することができる。
【0014】
上記接続部は上記回転軸に形成された冷媒供給部から上記冷媒流路に冷媒を供給するための冷媒導入部を有しており、上記工具取付部は上記冷媒流路を流通する冷媒を上記工具に向けて排出する冷媒排出部を有していることとすることができる。この場合は、工作機械から供給された冷媒を、当該工具ホルダを介して工具に供給することができるため、装置の構成を一層簡略化することができる。
【0015】
(実施例1)
上記工具ホルダの実施例について、
図1〜
図19を用いて説明する。
本実施例の工具ホルダ1は、
図1に示すように、工作機械100の回転軸101に接続されるとともに工具10を保持する。そして、工具ホルダ1は、工具情報取得部20、無線送信部30、給電部40、ケース50を有する。
工具情報取得部20は工具10の情報を取得する。
無線送信部30は工具情報取得部20によって取得された情報を外部に無線で送信する。
給電部40は、無線送信部30に電力を供給する。
ケース50は、工具情報取得部20、無線送信部30及び給電部40を収納する。そして、一端に回転軸101に接続される接続部52を有し、他端に工具10が取り付けられる工具取付部53を有する。ケース50は、回転軸101の回転に伴って軸回転可能に構成されている。
給電部40は、ケース50に固定され該ケース50の軸回転に伴って回転するように設けられた誘導コイル41と、誘導コイル41の回転軌跡41aに対向する位置に配設されるとともにケース50に対して相対的に回転可能に設けられた磁石42と、を含む。
そして、ケース50が軸回転することにより誘導コイル41と磁石42とが相対的に近接と離隔とを繰り返して、誘導コイル41に電磁誘導作用による起電力が生じる。
【0016】
以下、本実施例の工具ホルダ1について、詳述する。
図1、
図2に示すように、工具ホルダ1のケース50は筒状のケース本体51を備える。ケース本体51の軸方向Xの基端側X1には、工作機械100の回転軸101に取り付けられる接続部52が設けられている。接続部52には、回転軸101の先端に嵌入されるように若干先細りした柱状の嵌入部521が形成されている。接続部52は、嵌入部521が回転軸101の先端に嵌入されるとともに図示しない締結部材で回転軸101に接続されている。なお、回転軸101は水平に延びており、軸線102を中心に軸回転するように構成されている。
【0017】
また、
図1、
図2に示すように、ケース本体51の軸方向Xの先端側X2には、工具10が取り付けられる工具取付部53が設けられている。工具10としては、例えば、研削用の砥石や切削用の刃物などとすることができる。本例では、工具10としての砥石10が工具取付部53に取り付けられている。砥石10は多孔質材からなり、中央に取付孔10aが形成された円盤状を成している。工具取付部53は、砥石10に形成された取付孔10aに差し込まれる工具差し込み部531を有している。そして、工具10が取付孔10aに差し込まれた状態で、工具差し込み部531の先端にプレート532がねじ止めされることにより、プレート532と工具取付部53とで砥石10が挟持されている。
【0018】
工具情報取得部20は砥石10の情報を取得する。砥石10の情報としては、例えば、温度、圧力、振動等とすることができる。本例では、工具情報取得部20は、砥石10の温度を検出する温度センサである熱電対20からなる。
図1に示すように、熱電対20は、棒状を成しており、砥石10に径方向に形成された孔10bに挿通されている。これにより、熱電対20の先端部で砥石10表面の温度を検出して取得することができる。
【0019】
図1に示すように、給電部40は、誘導コイル41と磁石42を含む。ケース本体51の内側には、誘導コイル41を固定するためのリブ511が形成されている。
図1、
図5に示すように、リブ511はケース本体51の内周面に沿って全周方向に連続している。リブ511には、コイル固定部451が取り付けられている。コイル固定部451は径方向に平行に延びる薄板状を成している。コイル固定部451には、コイル連結部材452及びコイル台453を介して誘導コイル41が取り付けられている。これによって誘導コイル41はケース本体51に固定されているため、ケース50の軸回転に伴って、軸線102を中心に軸回転することとなる。
【0020】
そして、誘導コイル41は複数備えられて互いの回転軌跡41aが一致するように配設されるとともに回転軌跡41aにおいて等間隔に配列していることが好ましい。本実施例では、2個の誘導コイル41が上述の配設態様で互いの回転軌跡41aが一致するように配設され、回転軌跡41aにおいて等間隔に配列している。
【0021】
図1に示すように、ケース50の接続部52には、磁石42を取り付けるための支持軸46、ベアリング47及び磁石保持部48が設けられている。支持軸46は軸線102上に軸線102に平行に延びる棒状を成している。支持軸46は接続部52に固定されたベアリング47を介して、軸線102を中心に自由に軸回転可能となっている。そして、
図4に示すように、支持軸46には、磁石保持部48がナット49を介して固定されている。そして、
図4に示すように、磁石保持部48には永久磁石である磁石42が設けられている。磁石42は、ケース50が軸回転したときの誘導コイル41の回転軌跡41aに対向する位置に設けられている。そして、
図1に示すように、誘導コイル41と磁石42との隙間の大きさwは適宜設定することができ、本例では、0.5〜1.0mmとしてる。
【0022】
本例では、
図4に示すように、4個の磁石42が十字方向の位置に設けられている。そして、磁石保持部48は板状部材からなり、軸線102を中心とする円盤形状において
図4の紙面右上部分A及び左上部分Bを切り欠いた形状を成している。そのため、磁石保持部48の重心Gの位置は、軸線102から
図4の紙面下方にずれた位置にある。そして、支持軸46及びベアリング47を介して、磁石保持部48は自由回転可能に構成されている。これにより、磁石保持部48はケース50に対して相対的に回転可能に構成されている。そのため、ケース50が軸回転したとき、磁石保持部48は重心Gが軸線102から重力方向下方に位置した静止状態に維持されて、ケース50と一体に軸回転しないように構成されている。そして、ケース50の軸回転に伴って誘導コイル41が軸回転することにより、誘導コイル41が磁石42に近接し離隔することを繰り返すように構成されている。
【0023】
なお、誘導コイル41及び磁石42の個数は、本例のものに限定されず、変更することができる。磁石42の数は誘導コイル41の整数倍とすることが好ましく、本例のように誘導コイル41を2個とし、磁石42を4個とすることに替えて、例えば、
図7、
図8、
図9に示す変形例1のように、誘導コイル41を1個とし、磁石42を2個としてもよいし、誘導コイル41を
図9に示す変形例1のように1個備えるとともに、磁石42を実施例1のように4個備える構成としてもよい。いずれの場合も磁石42を保持する磁石保持部48の重心Gは軸線102よりも重力方向下方に位置するように構成されている。
【0024】
本例では、給電部40は、コンデンサ43を含んでいる。コンデンサ43は基板31に搭載されており、誘導コイル41で生じた電力を平滑化する。平滑化された電力は、後述の無線送信部30に供給される。コンデンサ43の容量は特に限定されず、無線送信部30における要求電力や回路構成に応じて適宜変更できる。
【0025】
図1に示すように、無線送信部30はケース本体51の内側に収納されている。本例では、無線送信部30は基板31に搭載されている。そして、無線送信部30は基板31に形成された図示しない回路パターン及びハーネスを介してコンデンサ43と電気的に接続されている。また、無線送信部30は、基板31に形成された図示しない回路パターン及びハーネスを介して熱電対20が検出した温度情報が入力されるように構成されている。なお、本例では、
図1に示すように、基板31にはアナログ信号をデジタル化するA/D変換器32が備えられており、熱電対20が検出した温度情報はA/D変換器32によってデジタル信号に変換された後に無線送信部30に入力される。
【0026】
無線送信部30は入力された温度情報を外部に無線で送信する。無線送信部30における無線送信の方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。そして、
図3に示すように、無線送信部30から送信された情報は外部受信部70で受信することができる。本例では、
図2に示すように、アンテナ33がケース本体51に形成された孔512を挿通して設けられている。無線送信部30はアンテナ33に接続されて外部に安定的に無線送信できるようになっている。
【0027】
図6に示すように、ケース50には、冷媒(研削液)が流通可能な冷媒流路60が形成されている。なお、
図6では、ケース50の内部構造を省略している。冷媒流路60は、ケース本体51に形成された第1冷媒流路61、接続部52に形成された第2冷媒流路62、工具取付部53に形成された第3冷媒流路63とからなる。第1冷媒流路61が第2冷媒流路62及び第3冷媒流路63と連通している。
【0028】
ケース本体51において、
図6に示すように、第1冷媒流路61はケース本体51を形成する壁の内部を軸方向Xに貫通するように形成されている。そして、第1冷媒流路61の両端部611、612はケース本体51の軸方向Xの両端側に開口している。なお、本例では、
図4に示すように、第1冷媒流路61は周方向に等間隔に6つ形成されている。
【0029】
接続部52において、
図6に示すように、第2冷媒流路62は、軸線102上に位置して軸方向Xに沿って延びる軸方向部分621と、軸方向部分621の先端側X2の端部から径方向に延びる径方向部分622とからなる。軸方向部分621の基端側X1の端部は開口して冷媒導入部623を形成している。冷媒導入部623は回転軸101に形成された冷媒供給部103に接続されて、冷媒の導入が可能となっている。径方向部分622の端部は、第1冷媒流路61の端部611と対向するように開口しており、端部611と接続されて冷媒の流通が可能となっている。なお、本例では、図示しないが、第2冷媒流路62における径方向部分622は、6つの第1冷媒流路61と連通されるように、6つの径方向部分622が周方向に等間隔の位置に形成されている。
【0030】
工具取付部53において、
図6に示すように、第3冷媒流路63は、軸線102位置に向けて径方向に延びる径方向部分631と軸線102上に位置して軸方向Xに沿って延びる軸方向部分632と、軸方向Xに沿って延びる冷媒排出部633とからなる。径方向部分631は、第1冷媒流路61の端部612に接続されているとともに、軸方向部分632の軸方向Xの基端側X1の端部に接続されている。また、冷媒排出部633は、軸方向部分632の軸方向Xの先端側X2の端部に接続されているとともに、工具差し込み部531の側周面に開口して砥石10の取付孔10aの内壁面に向けて冷媒を吐出可能となっている。これにより、第3冷媒流路63は、第1冷媒流路61と連通するとともに、砥石10に向けて冷媒を吐出なように構成されている。なお、第3冷媒流路63における径方向部分631も第2冷媒流路62における径方向部分622と同様に6つ形成されており周方向に等間隔に位置している。本例では、
図6に示すように第3冷媒流路63における冷媒排出部633は、軸方向Xに二列設けられている。
【0031】
(確認試験)
上記工具ホルダ1について、起電力についての確認試験を行った。
本試験では、コイルの個数及び種類、コンデンサの容量、回転数、コイルと磁石との隙間wの大きさ、回転数を変更して、起電力の大きさを確認した。
まず、表1に、試験例1〜6の構成を示す。各試験例の工具ホルダではコンデンサは12v用コンデンサ又は24用コンデンサを使用した。起電力の大きさを測定した結果を
図10に示し、最大起電力及び最小起電力を表1に記載した。なお、起電力の測定においては、電池を基板31に接続して電力を安定供給するようにした。
【0033】
表1に示すように、試験例1では、誘導コイル41は1個備えられており、磁石42が2個備えられている。すなわち、試験例1の工具ホルダは、
図7〜
図9に示す変形例1の工具ホルダ200に対応する。
また、表1に示すように、試験例2、5−1、5−2、5−3では、誘導コイル41は1個備えられており、磁石42が2個備えられている。すなわち、
図7及び
図9に示す変形例1における誘導コイル41の構成と、
図1及び
図4に示す実施例1における磁石42の構成とを組み合わせた工具ホルダである。
また、表1に示すように、試験例3、4、6では、誘導コイル41は2個備えられており、磁石42は4個備えられている。すなわち、試験例3、4、6における工具ホルダは、実施例1の工具ホルダ1に対応する。
【0034】
試験例1では、回転数が3700rpmであるため、1回転あたり約16msecとなっている。そして、
図10に示すように、試験例1の起電力のグラフは1回転内に2つのピークP1、P2を有する。これは1つの誘導コイル41が2個の磁石42にそれぞれ接近したときに起電力が生じることに起因している。そして、ピークP1、P1の中に小さなピークP1a、P2aが形成されている。これは、誘導コイル41が磁石42に近接する時と、離隔する時に生じる起電力を示すものである。試験例1における起電力は、
図10及び表1に示すように、最大で1.8Vであり、最小で0Vとなっていた。
【0035】
試験例2では、
図11に示すように、起電力のグラフは1回転内に4つのピークP21、P22、P23、P24を有する。これは、試験例1の場合に比べて、磁石42の数が2個から4個に増えたことに起因している。そして、試験例2では、
図11及び表1に示すように、起電力の最大は1.2Vであって試験例1の場合に比べて減少しているが、起電力の最小は0.7Vであって試験例1の場合に比べて増加している。最大起電力が減少した原因は、磁石42の数が増えたことにより磁石42間の距離が狭まって電磁誘導に負の影響を与えているからだと推察できる。また、
図11に示すように、4個の磁石42を備える試験例2では、起電力のグラフは、2個の磁石42を備える試験例1の場合に比べて、不規則な形状になっていた。
【0036】
試験例3では、試験例2の場合に比べて磁石42が4個に増えたが、1回転中に起電力が発生する回数は変化しない。これは、
図4に示すように4個の磁石42が等間隔に90度ごとに配置され、
図5に示すように2個の誘導コイル41が180度ごとに配置されているため、2個の誘導コイル41が磁石42に近接及び離隔するタイミングは同時となるからである。その結果、試験例3では、試験例2の場合に比べて、1回転中に起電力が発生するタイミングは同じであるがその起電力は2倍近い値となっている。すなわち、試験例1における起電力は、
図12及び表1に示すように、最大で2.4Vであり、最小で1.4Vとなっていた。
【0037】
試験例4では、起電力を検出するための回路設計の都合上、検出可能な起電力の最大値は3.3Vであった。そのため、
図13に示すように、試験例4において検出された起電力の最大値は3.3Vであったが、実際には3.3V以上の起電力が発生していたと推察される。
【0038】
試験例4では、誘導コイル41として12V用のコイルを使用するとともに、誘導コイル41と磁石42との隙間の大きさを0.5mmとした。これにより、表1に示すように、24V用の誘導コイル41を備える試験例3の場合に比べて、最大起電力が2.4Vから3.3V以上に増加しているとともに、最小起電力も1.2Vから2.7Vに増加している。これには、12V用の誘導コイル41は24V用の誘導コイル41に比べ抵抗が小さいことに起因していると考えられる。なお、図示しないが、6.0V用のコイルを使った場合は最大起電力及び最小起電力はともに減少していた。また、試験例4と同じ条件で、誘導コイル41と磁石42との隙間の大きさを1.0mmとした場合に比べて、誘導コイル41と磁石42との隙間の大きさが0.5mmである試験例4では、起電力が全体として約0.3V増加することを確認した。
【0039】
試験例5−1、5−2、5−3では、12V用の誘導コイル41を1個、磁石42を4個備えるとともに、誘導コイル41と磁石42との隙間の大きさwを0.5mmとして、それぞれ回転数を変更した。
試験例5−1では、
図14(a)に示すように、回転数が遅く、1回転あたり約120msecかかるため一部の起電力が0Vになっており、起電力の波形は安定性の低いものとなっている。
また、試験例5−2では、
図14(b)に示すように、1回転あたり約16msecであって、最大起電力は2.4Vであって3.0Vには達しておらず、最小起電力は1.2Vとなっているが、起電力の波形は比較的安定した正常な状態である。
また、試験例5−3では、
図14(c)に示すように、1回転あたり約11msecであって、最大起電力は2.3Vであって試験例5−2の場合に比べて減少しているが、最小起電力は1.2Vとなっており、試験例5−2の場合に比べて増加している。ただし、起電力の波形が乱れており効率良く電圧が得られていないと推察される。
【0040】
試験例6では、コンデンサ43の容量を100μFとした。これにより、コンデンサ43が電圧低下部分を補うことで電圧が平滑化されて、
図15に示すように、起電力は全域で3.3V以上となった。なお、図示しないが、回転数を変動させて同試験を行った結果、2000rpm以上で最小起電力を3.0V以上確保することが可能であることを確認した。
【0041】
以上のように、各試験例において誘導コイル41及び磁石42により電力が得られることが確認できた。得られた電力は無線送信部30の駆動に利用することができる。そして、
図16に示すように、各試験例における最小起電力を比較すると、試験例4、6において高い値が得られており、試験例6において3.3V以上が得られることが確認できた。これらにより、特に試験例6において無線送信部30を安定して駆動するのに十分な電力が得られることが確認できた。
【0042】
(確認試験2)
次に、本実施例1の工具ホルダ1を用いて研削加工した時の検出温度の送信試験を行った。研削条件は表2に示す通りである。そして、試験方法は以下の通りである。まず、砥石10に熱電対20をセットした状態で、
図17に示すように、被削材500を研削して、砥石10の表面の温度を測定する。砥石10の直径Lは120mmとして、被切削量Mは3mmとした。熱電対20が完全に被削材500にあたるように加工幅dを16mmに設定した。検出した温度データのサンプリング周期は0.04msecとした。無線送信部30において送信するタイミングは、検出温度が200℃を超えた時点を契機として、200℃を超える前12個の温度データと超えた後の20個の温度データの合計32の点とした。なお、
図17に示すように、被削材500の研削によって砥石10に所定量fの砥石摩耗が生じることとなる。
【0044】
図18(a)に示すように、研削加工前の砥石10の表面では、熱電対20を覆うアルミ箔が砥石10の外周面に表出した状態であった。
図18(b)に示すように、研削加工後は、熱電対20を覆っていたアルミ箔が溶けて砥石10の表面に溶着していた。また、乾式で研削したため、砥石10の表面に研削焼けが生じていた。
【0045】
そして、本試験では、
図19(a)に示すように、外部受信部70は温度データを温度1−1〜温度1−7の順に7回受信した。さらにその後、
図19(b)に示すように、外部受信部70は温度データを温度2−1〜温度2−9の順に9回受信した。本試験では、回転数2000rpm以上で温度データの送受信可能であることが確認でき、外部受信部70が温度データを受信可能な距離は7〜8m以内であった。
【0046】
そして、
図19(a)、
図19(b)に示すように、
図19(a)に示す温度データに比べて、その後の
図19(b)に示す温度データにおいてそれぞれの最大温度は低くなっていた。一方、
図19(b)に示すように、砥石10の素材を削った回数が増加するほど全体的な温度は上がり、最大温度からの温度の降下が遅くなっていた。これは、砥石10の目詰まりや目つぶれが原因である可能性が高い。
【0047】
次に、本例の工具ホルダ1における作用効果について、詳述する。
本例の工具ホルダ1によれば、ケース50に固定された誘導コイル41がケース50の軸回転に伴って回転するように設けられており、誘導コイル41の回転軌跡41aに対向する位置に配設された磁石42がケース50に対して相対的に回転可能に設けられている。そして、ケース50が軸回転することにより誘導コイル41と磁石42とが相対的に近接と離隔とを繰り返して、誘導コイル41に電磁誘導作用による起電力が生じる。これにより、給電部40がかかる起電力を無線送信部30に給電して無線送信部30を駆動し、工具情報取得部20が取得した工具10の情報を無線で外部に送信することができる。さらに、無線送信部30の駆動電力をケース50内の給電部40における誘導コイル41と磁石42とで生成することができるために大型のバッテリを搭載する必要がない。これにより、装置の小型化が図られるため取り回し性もよい。また、バッテリの充電作業が不要になるため、作業の中断などを要しないことから使い勝手も良く、作業効率の向上に寄与できる。
【0048】
また、本例では、磁石42は回転軸101の軸線102から偏心した位置に重心Gを有するとともに軸線102を中心に自由回転可能にケース50の内部に支持された磁石保持部48に保持されている。これにより、水平に延びる回転軸101に取り付けることで、自由回転可能に支持された磁石保持部48はその重心Gが軸線102よりも重力方向下方に位置した状態に維持される。そのため、簡易な構成で、磁石42がケース50に対いして相対的に回転可能な構成を実現することができ、装置の小型化及び軽量化に寄与する。
【0049】
また、本例では、誘導コイル41は複数備えられて互いの回転軌跡41aが一致するように配設されるとともに回転軌跡41aにおいて等間隔に配列しており、磁石42は複数備えられて回転軌跡41aに対向する位置において等間隔に配列している。これにより、軸回転時の安定性が向上するとともに、電力を効率的に発生させることができる。
【0050】
また、本例では、磁石42の個数は、誘導コイル41の個数2個の整数倍である4個としている。これにより、2個の誘導コイル41において、同じタイミングで磁石42が近接して離隔することになるため、発生される最大起電力をより大きくすることができ、電力を効率的に発生させることができる。
【0051】
また、本例では、ケース50は、砥石10を冷却するための冷媒を流通させる冷媒流路60を有している。これにより、砥石10を効率的に冷却することができるとともに、砥石10の冷却のために別途冷却構造を要しないため、装置の構成を簡略化することができる。
【0052】
また、本例では、接続部52は回転軸101に形成された冷媒供給部103から冷媒流路60に冷媒を供給するための冷媒導入部623を有しており、工具取付部53は冷媒流路60を流通する冷媒を砥石10に向けて排出する冷媒排出部633を有している。これにより、工作機械100から供給された冷媒を、工具ホルダ1を介して砥石10に供給することができるため、装置の構成を一層簡略化することができる。
【0053】
以上のごとく、本例によれば、使い勝手及び取り回し性が向上された工具ホルダ1を提供することができる。
【0054】
本発明は上記実施例、変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。