特許第6614862号(P6614862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614862
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】クリンチャーセグメント
(51)【国際特許分類】
   B21D 51/30 20060101AFI20191125BHJP
   B21D 51/26 20060101ALI20191125BHJP
   B65D 8/20 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   B21D51/30 H
   B21D51/26 M
   B65D8/20 A
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-168168(P2015-168168)
(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公開番号】特開2017-42798(P2017-42798A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 憲嗣
(72)【発明者】
【氏名】中村 一也
(72)【発明者】
【氏名】右近 譲
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−024735(JP,A)
【文献】 米国特許第01766173(US,A)
【文献】 実開昭53−090554(JP,U)
【文献】 実開昭53−083360(JP,U)
【文献】 特開2003−126932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 51/30
B21D 51/26
B65D 8/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に缶蓋が被冠された缶体を、面に形成されている溝に圧接転動させて、前記缶蓋の外周端部に通気部を有するカール部を形成するクリンチャーセグメントであって、
前記溝は、複数のカール部形成溝と、両端が前記カール部形成溝に連設された通気部形成溝とを備え、
前記通気部形成溝は、第1溝部と、前記第1溝部と前記カール部形成溝との間に設けられた一対の第2溝部とを有し、
前記第1溝部及び前記第2溝部の深さは、前記カール部形成溝の深さと一致するように形成され、
前記第1溝部及び前記第2溝部の上側の面は、前記カール部形成溝の上側の面と一致するように形成され、
前記第1溝部の下側の面は、前記カール部形成溝の下側の面よりも下方に位置するように形成され、
前記第2溝部の下側の面は、該第2溝部に連設された前記カール部形成溝の下側の面から前記第1溝部の下側の面に向かって徐々に傾斜するように形成され
前記第1溝部の側面視における左右方向の長さは、前記第2溝部の側面視における左右方向の長さよりも長く形成されていることを特徴とするクリンチャーセグメント。
【請求項2】
請求項1に記載のクリンチャーセグメントであって、
前記通気部形成溝を複数備え、
前記通気部形成溝は、圧接転動された前記缶体に形成された隣接する前記通気部同士の間隔が等しくなるように、設けられていることを特徴とするクリンチャーセグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶詰の内容物の保存効果を高めるために缶内部の脱気が行われる脱気缶を製造するために用いられるクリンチャーセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶詰製品、特に魚肉や惣菜等を内容物とする食缶としては、缶内部を真空として内容物の保存効果を高めるために、缶体に缶蓋を仮止めした脱気缶を形成し、次いで巻締を行なう方法で製造されてきた。
【0003】
この種の脱気缶は、内容物が充填された缶体に缶蓋を被冠し、弧状のクリンチャーセグメント等を用いて、缶体に缶蓋を仮止めして形成される。その後、その脱気缶は、バキュームシーマーによって缶内部を脱気して缶蓋の巻締が行われる。
【0004】
図8に示すように、従来用いられているクリンチャーセグメント100では、その内周側の側面に形成されたカール部形成溝101に、缶蓋を被冠した缶体を圧接転動させた際に、缶蓋の外周端部に、缶体の上端縁に形成されているフランジ部から間隙を存してフランジ部の先端縁より内方に向かって断面略円弧形状に巻き込んだカール部を形成する。
【0005】
クリンチャーセグメント100では、カール部形成溝101の途中に、カール部形成溝101よりも上方及び側方において深く削られ、下方を切り落とされたような形状の切欠き部102が形成されている。そのため、クリンチャーセグメント100を用いて形成された脱気缶には、巻き締めの行われていない通気部が形成される。
【0006】
カール部が形成されることによって、缶蓋は、缶体に固着されることなく、カール部によりフランジ部に緩く掛止され、仮止めされた状態とされる。このように缶蓋が仮止めされた缶体は、バキュームシーマーに備えられた真空室内に収容され、通気部から缶体内部の空気が吸引されて脱気された状態で最終的な巻き締めが行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
このように、従来の脱気缶では、脱気缶の形成時に缶蓋の外周端部の一部において巻き締めを行わないことによって通気部が形成されている。そのため、従来のクリンチャーセグメントでは、形成される脱気缶の通気部の形状をある程度安定させるために、通気部形成溝を小さくして、脱気缶に形成される通気部を缶体の周方向において小さくなるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−126932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年、巻き締め装置の巻き締め工程の作業速度が向上し、充填物も多様化してきている。そのため、脱気缶の通気部を小さく形成した場合には、脱気時に内容物による目詰まりが生じてしまうおそれがあった。そのような目詰まりの発生を防止するために、通気部を大きく形成したいという要望があった。
【0010】
しかし、特許文献1に記載のクリンチャーリングでは、切欠き部で巻き締めを行わないことによって通気部を形成している。すなわち、切欠き部では巻き締め量の制御が行われない。そのため、通気部を大きくするために切欠き部を大きくすると、通気部の形状が安定しなくなるおそれがあった。また従来形状の通気部を単に増やしても目詰まりの問題が残った。
【0011】
そして、通気部の形状が安定しないと、最終的な巻き締めを行った際に、通気部ごとに巻き締め量が異なってしまい、製品の外観が損なわれてしまうおそれがあった。特に、近年用いられているアルミニウム製の缶蓋は、従来用いられているスチール製の缶蓋よりも変形の痕跡が残り易いため、外観が損なわれやすくなっていた。
【0012】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、脱気缶に形状の安定した大きい通気部を形成することができるクリンチャーセグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のクリンチャーセグメントは、上方に缶蓋が被冠された缶体を、面に形成されている溝に圧接転動させて、缶蓋の外周端部に通気部を有するカール部を形成するクリンチャーセグメントであって、溝は、複数のカール部形成溝と、両端がカール部形成溝に連設された通気部形成溝とを備え、通気部形成溝は、第1溝部と、第1溝部とカール部形成溝との間に設けられた一対の第2溝部とを有し、第1溝部及び第2溝部の深さは、カール部形成溝の深さと一致するように形成され、第1溝部及び第2溝部の上側の面は、カール部形成溝の上側の面と一致するように形成され、第1溝部の下側の面は、カール部形成溝の下側の面よりも下方に位置するように形成され、第2溝部の下側の面は、その第2溝部に連設されたカール部形成溝の下側の面から第1溝部の下側の面に向かって徐々に傾斜するように形成され、第1溝部の側面視における左右方向の長さは、第2溝部の側面視における左右方向の長さよりも長く形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のクリンチャーセグメントの溝に対し、上方に缶蓋が被冠された缶体を圧接転動させると、缶蓋の外周端部に通気部を有するカール部が形成される。
【0015】
このとき、本発明のクリンチャーセグメントでは、脱気缶に通気部を形成する通気部形成溝の第1溝部及び第2溝部の深さ及び上側の面が、カール部形成溝の深さ及び上側の面と一致するように形成されている。
【0016】
そのため、形成された脱気缶のフランジ部の側方及び上方においては、通気部を含むカール部の全ての部分で、全周に亘って均一に巻き込みが行われる。
【0017】
その結果、本発明のクリンチャーセグメントを用いて形成された脱気缶の通気部は、フランジ部の上方及び側方においては、他の部分と同一の形状となるように、巻き込みが行われたものとなる。
【0018】
また、本発明のクリンチャーセグメントでは、通気部形成溝の第1溝部の下側の面が、カール部形成溝の下側の面よりも下方に位置するように形成され、通気部形成溝の第2溝部の下側の面が、カール部形成溝の下側の面から第1溝部の下側の面に向かって徐々に傾斜するように形成されている。
【0019】
そのため、フランジ部の下方においては、カール部のうち通気部となる部分で、第1溝部で形成される直線部と第2溝部で形成される傾斜部とが形成されるように巻き込みが行われる。一方、カール部のうち通気部以外の部分では、所定量の巻き込みが行われる。
【0020】
その結果、本発明のクリンチャーセグメントを用いて形成された脱気缶の通気部は、下方においては、通気部以外の部分よりも巻き込み量の少ない直線部と、直線部から通気部以外の部分に向かって徐々に巻き込み量が増加する傾斜部とが形成されるように、巻き込みが行われたものとなる。
【0021】
したがって、本発明のクリンチャーセグメントを用いて形成された脱気缶の通気部は、フランジの側方、上方及び下方のいずれにおいても、巻き込み量が制御されたものとなる。そのため、目詰まりの防止のために、通気部の周方向の大きさを従来の通気部よりも大きくしたとしても、従来の巻き込みを行わないことによって形成された通気部のように、形状が不安定になることがない。
【0022】
また、本発明のクリンチャーセグメントを用いて形成された脱気缶は、通気部を従来のものに比べて横長に形成することができるので、短時間でも十分な脱気を行うことができる。その結果、従来に比べ高速で最終的な巻き締めを行なっても、脱気不足等の問題が生じることがない。
【0023】
また、本発明のクリンチャーセグメントを用いて形成された脱気缶は、最終的な巻き締めを行う際に、視覚的に確認しやすいフランジ部の側方及び上方における巻き締め量が、通気部が形成されていた部分とそれ以外の部分とで同じになる。また、通気部が複数形成されている場合には、フランジ部の下方における巻き締め量も、各々の通気部で均一となる。そのため、その脱気缶を用いて形成された最終的な製品の外観は損なわれることもない。
【0024】
また、本発明のクリンチャーセグメントにおいては、通気部形成溝を複数備え、通気部形成溝は、圧接転動された缶体に形成された隣接する通気部同士の間隔が等しくなるように、設けられていることが好ましい。
【0025】
従来のクリンチャーセグメントでは、脱気缶に複数の通気部を形成する場合、その通気部によるいびつな巻締を目立たなくするために、通気部形成溝である複数の切欠きを一部分に集中して設けて、複数の通気部を一部分に集中して形成していた。
【0026】
しかし、そのような従来のクリンチャーセグメントを用いて形成された脱気缶は、脱気時に内容物が偏っていた場合には、通気部の全てに目詰まりが生じてしまうおそれがあり、脱気性能が著しく低下してしまうおそれがあった。
【0027】
これに対し、本発明のクリンチャーセグメントでは、脱気缶に形成される通気部が目立つことがない。そのため、形成された脱気缶の通気部は、従来よりも広い間隔を存して(好ましくは、等間隔に)設けることができる。
【0028】
その結果、本発明のクリンチャーリングを用いて形成された脱気缶は、脱気時に内容物が偏って一つの通気部に詰まりが生じてしまったとしても、他の通気部から脱気を行うことができるので、脱気性能が著しく低下してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態のクリンチャーセグメントを用いて形成された脱気缶の概略構成を示す斜視図。
図2図1の脱気缶のカール部及びフランジ部の形状を拡大して示す断面図であり、2Aは脱気前における通気部以外の部分を示し、2Bは脱気時における通気部以外の部分を示し、2Cは脱気前における通気部を示し、2Dは脱気時における通気部を示す。
図3図1の脱気缶の概略構成を示す模式的に示す底面図。
図4】本実施形態のクリンチャーセグメントの構成を示す斜視図。
図5図4のクリンチャーセグメントの平面図。
図6図4のクリンチャーセグメントの一部を拡大して示す斜視図。
図7図4のクリンチャーセグメントによる図1の脱気缶の形成工程における缶蓋の外周端部の形状の変化を示す断面図であり、7Aは初期形状(図4のA−A線断面図)、7Bは通気部以外の形状(図4のB−B線断面図)、7Cは通気部の形状(図4のC−C線断面図)を示す。
図8】従来のクリンチャーセグメントの一部を拡大して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず、本実施形態のクリンチャーセグメントの詳細な説明に先立ち、図1図3を参照して、本実施形態のクリンチャーセグメントを用いて形成された脱気缶1の構成について説明する。
【0031】
図1に示すように、脱気缶1は、有底筒状の缶体10と、缶体10に被冠され、仮止めされた缶蓋11とを備えている。
【0032】
缶蓋11は、外周端部に、缶体10の上端部に設けられたフランジ部12から間隔を存して、フランジ部12の先端縁より内方に向かって巻き込んだ環状のカール部13を有している。
【0033】
図2A〜Dに示すように、カール部13の、フランジ部12の上方及び側方における巻き込み量は、全周に亘って均一となっている。一方で、カール部13の、フランジ部12の下方における巻き込み量は、通気部14が形成された部分(図2C,2D)では、通気部14が形成されていない部分(図2A,2B)に比べ、小さくなっている。
【0034】
具体的には、図2A図2C(又は、図2B図2D)から明らかなように、缶体10のフランジ部12の上方におけるカール部13の湾曲の程度(すなわち、上方における巻き込み量)は、通気部14が形成されていない部分(図2A,2B)と通気部14が形成された部分(図2C,2D)とにおいて、同一となっている。
【0035】
また、缶体10のフランジ部12の側方(図2においては図面左側)におけるカール部13の湾曲の程度(すなわち、側方における巻き込み量)は、通気部14が形成されていない部分(図2A,2B)と通気部14が形成された部分(図2C,2D)とにおいて、同一となっている。
【0036】
また、缶体10のフランジ部12の下方におけるカール部13の湾曲の程度(すなわち、下方における巻き込み量)は、通気部14が形成されていない部分(図2A,2B)に比べ、通気部14が形成された部分(図2C,2D)では、小さくなっている。
【0037】
カール部13の通気部14が形成されていない部分では、脱気缶1の脱気工程の際に、缶体10に対して缶蓋11が上方に移動して(図2Aの状態から図2Bの状態に変化して)、缶蓋11のカール部13の先端部13aが、缶体10のフランジ部12に当接する。
【0038】
一方、通気部14では、脱気缶1の脱気工程の際に、缶体10に対して缶蓋11が上方に移動して(図2Cの状態から図2Dの状態に変化して)、通気部14が形成された領域以外の領域で缶蓋11のカール部13の先端部13aが缶体10のフランジ部12に当接したときに、缶体10のフランジ部12と缶蓋11の外周端部(すなわち、カール部13の先端部13a)との間に間隙を形成して、缶体10の内部と外部とを通気自在にする。
【0039】
図3に示すように、脱気缶1では、通気部14は、3つ設けられており、隣接する通気部14同士の間隔が等しくなる(120°間隔となる)ように設けられている。
【0040】
そのため、本実施形態の脱気缶1は、脱気する際に脱気缶1が傾く等の理由から内容物が偏ってしまい一つの通気部14に詰まりが生じてしまったとしても、他の通気部14から脱気を行うことができるので、脱気性能を安定させることができるようになっている。
【0041】
なお、通気部14の数は、必ずしも3つに限定されるものではなく、2つ又は4つ以上であっても構わない。ただし、脱気性能を確保するためには3つ以上とすることが好ましい。また、通気部14同士の間隔も、必ずしも等間隔とする必要はなく、缶体の形状等に応じて適宜形成位置を変更してもよい。
【0042】
通気部14は、フランジ部12の下方における巻き込み量を、カール部13のうちの通気部14以外の部分における、下方における巻き込み量よりも小さくして形成された直線部14aと、直線部14aの両側に形成され、直線部14aに近づくほどその巻き込み量が小さくなる一対の傾斜部14bとを有している。カール部13の周方向における直線部14aの長さは、傾斜部14bの一方の長さよりも長い。
【0043】
通気部14の大きさは、直径90mm程度の缶体の場合には、一方の傾斜部14bの直線部14aとは離れた側の端部から、他方の傾斜部14bの直線部14aとは離れた側の端部までの長さが15mm程度となるように構成されている。すなわち、本実施形態の脱気缶1の通気部14は、従来の脱気缶の通気部の大きさ(3mm〜5mm程度)に比べ、非常に大きく形成されている。
【0044】
これは、本実施形態の脱気缶1では、フランジ部12の上方及び側方において、カール部13に対して、通気部14の形成されている部分も含めて全周に亘って均一に巻き込みを行っているためである。そのような巻き込みを行うことによって、脱気缶1は、通気部14の形状を一対の傾斜部14bの間に直線部14aを設けた周方向に長い形状としても、十分に缶蓋と缶体とを固定することができるようになっている。
【0045】
脱気缶1は、上端部にフランジ部12を有する有底筒状の缶体10に、缶蓋11を被冠した後、缶体10への被冠状態を維持した缶蓋11の外周端部を、後述するクリンチャーセグメント2に沿って圧接転動して仮止めを行うことによって形成される。
【0046】
そこで、以下においては、図4図7を参照して、脱気缶1を形成するクリンチャーセグメント2及びそれを用いた製造方法について説明する。
【0047】
まず、図4図6を参照して、本実施形態のクリンチャーセグメント2の形状について説明する。
【0048】
図4に示すように、脱気缶1を形成する際に用いられるクリンチャーセグメント2は、弧状をしている。なお、本発明におけるクリンチャーセグメントは、本実施形態のクリンチャーセグメント2のように、同心円の一部からなる円弧状が装置的に好適であるが、そのような円弧状に限られず、缶体を圧接転動し得る溝の形成可能な形状であれば他の形状であってもよい。
【0049】
クリンチャーセグメント2の内周側の側面には、カール部13を形成するための5つのカール部形成溝20(図4では最も手前側の1つが不図示。図5参照。)と、各カール部形成溝20の間に設けられた4つの通気部形成溝21(図4では最も手前側の1つが不図示。図5参照。)と、両端部に設けられた2つのテーパ状の案内溝22とを有している。
【0050】
また、クリンチャーセグメント2の周方向の長さは、図5に示すように、缶体10及び缶蓋11が約1.3〜1.5回転した際に、その缶蓋11の外周端部の全周に亘って圧接可能な長さに形成されている(図5参照)。
【0051】
そのため、クリンチャーセグメント2の1つ目〜3つ目の通気部形成溝21では、脱気缶1に設けられた3つの通気部14が形成される。クリンチャーセグメント2の4つ目の通気部形成溝21には、1つ目の通気部形成溝21によって形成された通気部14が再度当接する。
【0052】
カール部形成溝20は、脱気缶1のカール部13に対応する凹部として形成されている。そのため、缶蓋11の外周端部のうち、カール部形成溝20に圧接された部分には、断面略円弧形状のカール部13が形成される(図2A,B参照。)。
【0053】
通気部形成溝21は、図6に示すように、通気部14の直線部14aに対応する凹部である直線部形成溝21a(第1溝部)、及び、直線部形成溝21aとカール部形成溝20との間に設けられ、通気部14の傾斜部14bに対応する凹部である傾斜部形成溝21b(第2溝部)を有している。なお、「直線部」とは、脱気缶1が当接する側から見て直線となる部分という意味である。そのため、本実施形態における直線部14aは、平面視においては、カール部形成溝20と同じ曲率の弧状となっている。
【0054】
直線部形成溝21a及び傾斜部形成溝21bの周方向の深さ(図5において径方向の深さ。すなわち、フランジ部12の側方における長さ。)は、カール部形成溝20の深さと一致するように形成されている。
【0055】
また、直線部形成溝21a及び傾斜部形成溝21bの上側の面(図6において図面上方側の面。すなわち、フランジ部12の上方における面。)は、カール部形成溝20の上側の面と一致するように形成されている。
【0056】
そのため、缶蓋11の外周端部のうち、直線部形成溝21aと傾斜部形成溝21bとに圧接された部分では、フランジ部12の上方及び側方における巻き込み量は、カール部形成溝20によってカール部13の形成された部分と同一となる。
【0057】
一方、直線部形成溝21aの下側の面(図6において図面下方側の面。すなわち、フランジ部12の下方における面。)は、カール部形成溝20の下側の面よりも下方となるように形成されている。傾斜部形成溝21bの下側の面は、カール部形成溝20の下側の面から直線部形成溝21aの下側の面に向かって徐々に傾斜するように形成されている。
【0058】
そのため、缶蓋11の外周端部のうち、直線部形成溝21aと傾斜部形成溝21bとに圧接された部分では、フランジ部12の下方における巻き込み量は、カール部形成溝20によってカール部13の形成された部分よりも小さくなる。その結果、その部分に、直線部14aと傾斜部14bとを備えた断面略円弧状の通気部14が形成される(図2C,D参照。)。
【0059】
次に、図5及び図7を参照して、脱気缶1の形成工程(すなわち、缶体10に対する缶蓋11の仮止め工程)について説明する。なお、図7においては、理解を容易にするために、溝(空間)であるカール部形成溝20、通気部形成溝21の直線部形成溝21a及び傾斜部形成溝21bについては、それらの溝を形成する壁面のうち、下側の面から引き出し線を描いている。
【0060】
脱気缶1を製造する場合には、まず、缶体10に缶蓋11を被冠させる(被冠工程)。次に、缶体10のフランジ部12及び缶蓋11の外周端部をクリンチャーセグメント2の案内溝22に沿って案内させる(図7A参照)。その後、缶体10及び缶蓋11をクリンチャーセグメント2の内周面に沿って圧接転動させると(図5参照)、脱気缶1が形成される(仮止め工程)。
【0061】
この工程を経ることにより、缶蓋11の外周端部のうち、カール部形成溝20に圧接された部分では、図7Bに示すように、フランジ部12の上方、側方及び下方において、所定の量の巻き込みが行われる。その結果、その部分に、カール部13が形成される。
【0062】
また、缶蓋11の外周端部のうち、通気部形成溝21に圧接された部分では、図7Cに示すように、フランジ部12の上方及び側方において、他の部分と同様に所定の量の巻き込みが行われ、フランジ部12の下方において、他の部分よりも少ない量の巻き込みが行われる。その結果、カール部13の下方に、通気部14が形成される。
【0063】
上記説明した脱気缶1の通気部14は、フランジ部12の側方、上方及び下方のいずれにおいても、巻き込み量が制御されたものとなる。そのため、目詰まりの防止のために、通気部14の周方向の大きさを従来の通気部よりも大きくしたとしても、従来の巻き込みを行わないことによって形成された通気部のように、形状が不安定になることがない。
【0064】
また、クリンチャーセグメント2を用いて形成された脱気缶1は、最終的な巻き締めを行った際に、視覚的に確認しやすいフランジ部12の側方及び上方における巻き締め量が、通気部14が形成されていた部分とそれ以外の部分とで同じになる。また、フランジ部12の下方における巻き締め量も、各々の通気部14で均一となる。そのため、その脱気缶1を用いて形成された最終的な製品の外観は損なわれることもない。
【0065】
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
【0066】
例えば、上記実施形態においては、通気部14を、直線部14aと一対の傾斜部14bとで構成している。また、カール部13の周方向における直線部14aの長さは、傾斜部14bの一方の長さよりも長くなるように構成されている。しかし、本発明の通気部としては、直線部と傾斜部とを一体的に緩やかなカーブを描く形状としてもよいし、傾斜部を直線部よりも長く形成してもよい。
【0067】
また、上記実施形態においては、カール部13を、フランジ部12の上方及び側方における巻き込み量を全周に亘って均一としているが、必ずしも巻き込み量を均一にしなくてもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、通気部14の直線部14aをわずかに巻き込んだ形状としているが、直線部における巻き込み量を0としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…脱気缶、2,100…クリンチャーセグメント、10…缶体、11…缶蓋、12…フランジ部、13…カール部、13a…先端部、14…通気部、14a…直線部、14b…傾斜部、20,101…カール部形成溝、21…通気部形成溝、21a…直線部形成溝(第1溝部)、21b…傾斜部形成溝(第2溝部)、22…案内溝、102…切欠き部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8