(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記電動機に供給される入力電力が所定以下である場合、前記蓄電装置から前記電動機に電力を供給する、請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の圧縮空気貯蔵発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、発電効率を向上し、設備コストを低減できる圧縮空気貯蔵発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、再生可能エネルギーを用いて発電した入力電力により駆動される電動機と、前記電動機と機械的に接続され、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機と流体的に接続され、前記圧縮機により圧縮された圧縮空気を蓄える蓄圧タンクと、前記蓄圧タンクの内圧を検出する圧力センサと、前記蓄圧タンクと流体的に接続され、前記圧縮空気によって駆動される膨張機と、前記膨張機と機械的に接続され、電力を発電する発電機と、前記圧縮機と流体的に接続され、前記圧縮機から供給される前記圧縮空気と熱媒とで熱交換する第1熱交換器と、前記第1熱交換器と流体的に接続され、前記第1熱交換器で熱交換された前記熱媒を蓄える蓄熱タンクと、前記蓄圧タンク及び前記蓄熱タンクと流体的に接続され、前記蓄圧タンクから供給された前記圧縮空気と前記蓄熱タンクから供給された前記熱媒とで熱交換する第2熱交換器と、前記発電機で発電した電力を使用して前記蓄熱タンク内の前記熱媒を加熱する加熱部と、前記発電機の発電電力を少なくとも電力系統と前記加熱部とに分配する第1電力分配部と、前記蓄圧タンクの内圧が所定の値に達し、前記電力系統における電力需要よりも前記発電機の発電電力が多い場合、前記第1電力分配部を制御して前記発電機の発電電力の一部又は全部を前記加熱部に供給する制御装置とを備える、圧縮空気貯蔵発電装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、余剰電力を蓄熱に利用することで電力の無駄を抑制して発電効率を向上し、蓄圧タンクのサイズを小容量化することで設備コストを低減できる。余剰電力とは、発電機による発電電力と電力需要との差分の電力のことをいう。通常、蓄圧タンクがそれ以上蓄圧できない場合の余剰電力は捨てることになる。しかし、加熱部により蓄熱タンク内の熱媒を加熱することで、加熱された熱媒は第2熱交換器において膨張前の圧縮空気を加熱するため、加熱された圧縮空気で膨張機を駆動でき、膨張効率を向上できる。また、装置全体の蓄圧タンクの容量(蓄圧タンクが複数ある場合はそれらの容量の合計)は、電力需要のピークに対応して設定する必要がある。しかし、本構成により余剰電力を蓄熱に利用できるため電力の無駄を抑制でき、蓄圧タンクが所定の容量を超過してそれ以上蓄圧できない場合でも熱という別の形態でエネルギーを貯蔵できる。このため、蓄圧タンクの容量を電力需要のピークに対応して設定する必要がなく、蓄圧タンクを小容量化できる。
【0011】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、前記入力電力を前記電動機と前記加熱部とに分配する第2電力分配部をさらに備え、前記圧縮機の運転効率が所定以下となる場合、前記制御装置は前記第2電力分配部を制御して前記入力電力を前記加熱部に供給することが好ましい。
【0012】
圧縮機の運転効率が所定以下となる場合でも、入力電力を蓄熱に利用できることで、入力電力を効率的に利用できる。運転効率が所定以下となる場合とは、入力電力が所定の値より小さな場合又は所定の値より大きな場合に起こる。運転効率が所定以下となるような圧縮機を駆動するのに小さすぎる入力電力や圧縮機を駆動するのに大きすぎる入力電力は、は通常利用できず捨てられることになる。しかし、本構成ではこのような小さな入力電力や大きな入力電力も加熱部に供給することで蓄熱に利用できる。
【0013】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、前記発電機に電気的に接続され、前記発電機の発電電力を蓄える蓄電装置と、前記蓄熱タンク内の熱媒の温度を検出する温度センサをさらに備え、前記第1電力分配部は、前記発電機の電力を、前記電力系統と前記加熱部と前記蓄電装置とに分配し、前記制御装置は、前記蓄圧タンクの内圧が所定の圧力に達し、前記電力系統における電力需要よりも前記発電機で発電する電力が多く、さらに前記温度センサで測定した前記蓄熱タンク内の熱媒の温度が所定の温度以上である場合、前記第1電力分配部を制御して前記発電機で発電した電力の一部又は全部を前記蓄電装置に供給することが好ましい。
【0014】
加熱部に加えて、蓄電装置を設けたことで余剰電力を蓄電できる。特に、蓄熱タンク内の熱媒温度が所定以上であり、加熱部によって熱媒温度を上昇させることができない場合でも電気エネルギーとして有効にエネルギーを蓄えることができる。特に、再生可能エネルギーによる発電量の変動(ピーク時と平常時の差)が大きい場合、余剰電力を有効利用する工夫がなされていないと膨大なサイズの蓄圧タンク又は多数の蓄圧タンクが必要となる。全体コストに占める蓄圧タンクのコストは大きいため、例え蓄電装置を新たに設置した場合でも蓄圧タンクの小容量化により全体として大きくコストダウンできる。
【0015】
また、本発明は、再生可能エネルギーを用いて発電した入力電力により駆動される電動機と、前記電動機と機械的に接続され、空気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機と流体的に接続され、前記圧縮機により圧縮された圧縮空気を蓄える蓄圧タンクと、前記蓄圧タンクの内圧を検出する圧力センサと、前記蓄圧タンクと流体的に接続され、前記圧縮空気によって駆動される膨張機と、前記膨張機と機械的に接続され、電力を発電する発電機と、前記圧縮機と流体的に接続され、前記圧縮機から供給される前記圧縮空気と熱媒とで熱交換する第1熱交換器と、前記第1熱交換器と流体的に接続され、前記第1熱交換器で熱交換された前記熱媒を蓄える蓄熱タンクと、前記蓄圧タンク及び前記蓄熱タンクと流体的に接続され、前記蓄圧タンクから供給された前記圧縮空気と前記蓄熱タンクから供給された前記熱媒とで熱交換する第2熱交換器と、前記発電機に電気的に接続され、前記発電機の発電電力を蓄える蓄電装置と、前記発電機の発電電力を少なくとも電力系統と前記蓄電装置とに分配する第1電力分配部と、前記蓄圧タンクの内圧が所定の圧力に達し、前記電力系統における電力需要よりも前記発電機の発電電力が多い場合、前記第1電力分配部を制御して前記発電機の発電電力の一部又は全部を前記蓄電装置に供給する制御装置とを備える、圧縮空気貯蔵発電装置を提供する。
【0016】
この構成によれば、余剰電力を蓄電に利用することで電力の無駄を抑制して発電効率を向上し、蓄圧タンクのサイズを小容量化することで設備コストを低減できる。
【0017】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、前記入力電力を前記電動機と前記蓄電装置とに分配する第2電力分配部をさらに備え、前記圧縮機の運転効率が所定以下となる場合、前記制御装置は前記第2電力分配部を制御して前記入力電力を前記蓄電装置に供給することが好ましい。
【0018】
圧縮機の運転効率が所定以下となるような小さすぎる入力電力や大きすぎる入力電力も蓄電することで有効に利用できる。
【0019】
前記制御装置は、前記電動機に供給される入力電力が所定以下である場合、前記蓄電装置から前記電動機に電力を供給することが好ましい。
【0020】
電動機に供給される入力電力が所定以下である場合でも、蓄電装置から電動機に電力を補助供給することで所定以上の電力が電動機に供給されることになり、運転効率の低下を防止できる。
【0021】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、前記発電機で発電した電力を使用して前記蓄熱タンク内の前記熱媒を加熱する加熱部をさらに備え、前記第1電力分配部は、前記発電機の電力を、前記電力系統と前記蓄電装置と前記加熱部とに分配し、前記制御装置は、前記蓄圧タンクの内圧が所定の圧力に達し、前記電力系統における電力需要よりも前記発電機で発電する電力が多く、さらに前記蓄電装置が既に満充電の場合、前記第1電力分配部を制御して前記発電機で発電した電力の一部又は全部を前記加熱部に供給することが好ましい。
【0022】
蓄電装置に加えて加熱部を設けたことで、余剰電力を蓄熱に利用できる。特に、蓄電装置が満充電であり、それ以上蓄電できない場合でも熱エネルギーとして有効にエネルギーを蓄えることができる。
【0023】
前記熱媒は、分離された第1熱媒及び第2熱媒を含み、前記蓄熱タンクは、前記第1熱媒を蓄える第1蓄熱タンク及び前記第2熱媒を蓄える第2蓄熱タンクを備え、前記第1蓄熱タンクは、前記第1熱交換器及び前記第2熱交換器と流体的に接続され、前記第2蓄熱タンクは、蓄えている前記第2熱媒を前記加熱部により加熱され、前記蓄圧タンク及び前記第2蓄熱タンクと流体的に接続されて前記蓄圧タンクから供給される前記圧縮空気と前記第2蓄熱タンクから供給される前記第2熱媒とで熱交換する第3熱交換器をさらに備えることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、圧縮熱を回収する第1熱媒と加熱部により加熱される第2熱媒とを分離できるため、発電効率をより向上できる。圧縮熱又は加熱部による加熱では、加熱温度が異なる。従って、2つの熱媒を分離することで異なる温度での蓄熱が可能である。このため、発電効率をより向上できる。
【0025】
前記圧縮空気貯蔵発電装置は、前記第1蓄熱タンクの温度を検出する第1温度センサと、前記第2蓄熱タンクの温度を検出する第2温度センサと、前記蓄圧タンクから供給される前記圧縮空気に対して、前記第2熱交換器又は前記第3熱交換器のいずれが先に作用するかを切り替える熱交換順序切替部とをさらに備え、前記制御装置は、前記第1温度センサの検出温度よりも前記第2温度センサの検出温度が高い場合には前記第2熱交換器を先に作用し、前記第2温度センサの検出温度よりも前記第1温度センサの検出温度が高い場合には前記第1熱交換器を先に作用するように前記熱交換順序切替部を制御することが好ましい。
【0026】
この構成によれば、膨張前の圧縮空気の温度をより高温に加熱できるため、発電効率を向上できる。膨張前の圧縮空気に対し、熱交換の順番として第1熱媒と第2熱媒のうちの温度の高い方の熱媒を後に熱交換させる。従って、温度の高い方の熱媒が加熱した圧縮空気の温度を低下させることがない。このため、発電効率をより向上できる。
【0027】
前記蓄圧タンクは、前記電力需要のピークに必要な容量よりも小容量であることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、蓄圧タンクを小容量化することで設備コストを低減できる。即ち、蓄圧タンクのサイズや数を電力需要のピークに合わせて大容量・多数の蓄圧タンクを用意する必要がない。また、小容量のタンクを使用することで発電に適した圧力になるまで昇圧するのにかかる時間を短縮できる。従って、常に高めの圧力に維持しておくことが容易である。このため、電力需要の変動への応答性を向上できる。
【0029】
本発明の第2の態様は、再生可能エネルギーを用いて発電した入力電力により空気を圧縮し、圧縮した空気を貯蔵し、貯蔵した圧縮空気を膨張させることにより発電し、前記圧縮の工程で発生する圧縮熱を回収し、回収した圧縮熱を蓄熱し、前記膨張の工程前に膨張させる圧縮空気を蓄熱した圧縮熱により加熱し、前記貯蔵した圧縮空気の圧力が所定の値に達し、電力需要よりも発電電力が多い場合、前記発電電力の一部又は全部により前記蓄熱の温度をさらに上昇させる、圧縮空気貯蔵発電方法を提供する。
【0030】
また、本発明は、再生可能エネルギーを用いて発電した入力電力により空気を圧縮し、圧縮した空気を貯蔵し、貯蔵した圧縮空気を膨張させることにより発電し、前記圧縮の工程で発生する圧縮熱を回収し、回収した圧縮熱を蓄熱し、前記膨張の工程前に膨張させる圧縮空気を蓄熱した圧縮熱により加熱し、前記貯蔵した圧縮空気の圧力が所定の値に達し、電力需要よりも発電電力が多い場合、前記発電電力の一部又は全部を蓄電する、圧縮空気貯蔵発電方法を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、圧縮空気貯蔵発電装置において、余剰電力を蓄熱に利用することで発電効率を向上し、設備コストを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧縮空気貯蔵(CAES:compressed air energy storage)発電装置2の概略構成図を示している。このCAES発電装置2は、再生可能エネルギーを利用して発電する場合の電力系統25への出力変動を平準化するとともに、電力系統25における電力需要の変動に合わせた電力を出力する。
【0035】
図1を参照して、CAES発電装置2の構成を説明する。
【0036】
CAES発電装置2は、再生可能エネルギーを利用する発電装置1の出力変動を平準化する。CAES発電装置2は、第2電力分配部3、モータ(電動機)4、圧縮機6、蓄圧タンク8、膨張機10、発電機12、圧力センサ14、第1熱交換器16、第2熱交換器18、蓄熱タンク20、ヒータ(加熱部)22、第1電力分配部24、及び制御装置26を備える。
【0037】
再生可能エネルギーを利用する発電装置1により発電された入力電力は、第2電力分配部3を介してモータ4に供給される。この電力によりモータ4が駆動される。モータ4は、圧縮機6に機械的に接続されている。
【0038】
発電装置1からの入力電力は、第2電力分配部3を介してヒータ22にも供給可能である。入力電力は、通常時モータ4に供給されるが、後述するように入力電力の大きさによって第2電力分配部3が切り替えられ、ヒータ22に供給される。従って、本実施形態の第2電力分配部3は、発電装置1と、モータ4と、ヒータ22とに電気的に接続されている(
図1の破線参照)。
【0039】
圧縮機6は、モータ4を駆動させることで作動する。圧縮機6の吐出口6bは、第1熱交換器16を介して蓄圧タンク8と流体的に接続されている。圧縮機6は、モータ4により駆動されると、吸気口6aより空気を吸気し、圧縮して吐出口6bより吐出し、蓄圧タンク8へ圧送する。圧縮機6のモータ4は、図示しないインバータにより回転数制御されており、インバータを介して回転数を確認することで運転状態の安定性を確認できる。
【0040】
蓄圧タンク8には内部に貯蔵した圧縮空気の圧力を検出する圧力センサ14が設けられている。蓄圧タンク8は、第2熱交換器18を介して膨張機10と流体的に接続されている。蓄圧タンク8は、圧送された圧縮空気を蓄える。蓄圧タンク8は必要な電力需要ピークに対して小容量のものを使用する。蓄圧タンク8を小容量化することで設備コストを低減できる。また、小容量の蓄圧タンク8を使用することで発電に適した圧力になるまで昇圧するのにかかる時間を短縮できる。従って、常に高めの圧力に維持しておくことが容易である。このため、電力需要の変動への応答性を向上できる。このように、蓄圧タンク8に圧縮空気としてエネルギーを蓄積できる。蓄圧タンク8で蓄えられた圧縮空気は、膨張機10へ供給される。
【0041】
圧縮機6、第1熱交換器16、蓄圧タンク8、第2熱交換器18、及び膨張機10の流体的な接続は空気供給路28を通じてなされている。蓄圧タンク8から膨張機10への空気供給路28にはバルブ29が設けられており、膨張機10への圧縮空気の供給を許容又は遮断できる。
【0042】
膨張機10は、発電機12と機械的に接続されている。給気口10aから圧縮空気を給気された膨張機10は、給気された圧縮空気により作動し、発電機12を駆動する。膨張された空気は、排気口10bより排気される。
【0043】
発電機12は、第1電力分配部24に電気的に接続されている。膨張機10により駆動された発電機12が発電した電力は、第1電力分配部24に供給される。
【0044】
第1電力分配部24は、発電機12と外部の電力系統25とヒータ22とに電気的に接続されている(
図1の破線参照)。第1電力分配部24は、外部の電力系統25及びヒータ22に対して発電機12から供給される電力を分配する。例えば、振り分けは、発電機12から供給される電力の半分を外部の電力系統25へ供給し、残りの半分をヒータ22へ供給してもよい。また、発電機12から供給される電力の全てをヒータ22又は電力系統25へ供給することもできる。
【0045】
発電装置1により発電される入力電力及び外部の電力系統25からの電力需要は、スマートグリッドのように電力網内の需給バランスとしてそれぞれ測定可能であり、これらの測定値は後述の制御装置26に出力されている。または、入力電力は過去の天候データに基づいて、電力需要は過去の需要データに基づいて、それぞれ推定されてもよい。また、特に入力電力は、現在の天候データに基づいて推定されてもよい。例えば、風力発電の場合は発電装置1の風上の少し離れた場所の風力等を測定し、太陽光発電の場合は発電装置1付近の雲の動きなどを観測することで、発電装置1が発電する入力電力を推定してもよい。第1電力分配部24による振り分けの比率は、これらの測定値及び推定値等に基づいて後述の制御装置26によって決定される。
【0046】
なお、本実施形態の圧縮機6及び膨張機10は、スクリュ式であるが、その種類は限定されず、スクロール式、ターボ式、及びレシプロ式などであってもよい。本実施形態では、圧縮機6及び膨張機10の数は共に1台であるが、台数は特に限定されず、2台以上の複数台であってもよい。
【0047】
また、蓄熱タンク20は断熱されている。蓄熱タンク20は、熱媒供給路30a,30bを通じて、それぞれ第1熱交換器16及び第2熱交換器18に流体的に接続されている(
図1の一点鎖線参照)。熱媒供給路30a,30b内には熱媒が流動している。熱媒の種類は限定されておらず、例えば水、油などであってもよい。熱媒供給路30a,30bには、それぞれポンプ32a,32bが設けられている。ポンプ32aは、熱媒供給路30aを介して蓄熱タンク20と第1熱交換器16との間で熱媒を循環させる。ポンプ32bは、熱媒供給路30bを介して蓄熱タンク20と第1熱交換器16との間で熱媒を循環させる。さらに、蓄熱タンク20には、内部の熱媒を加熱するためのヒータ22が設けられている。ヒータ22は、電気ヒータであり、発電機12から第1電力分配部24を介して電力を供給されて熱媒を加熱する。
【0048】
第1熱交換器16では、圧縮機6と蓄圧タンク8との間の空気供給路28の圧縮空気と、熱媒供給路30aの熱媒との間で熱交換し、圧縮機6による圧縮で発生した圧縮熱を熱媒に回収している。即ち、第1熱交換器16では、圧縮空気の温度は低下し、熱媒の温度は上昇する。ここで温度上昇した熱媒は、蓄熱タンク20に供給され蓄えられる。
【0049】
第2熱交換器18では、蓄圧タンク8と膨張機10との間の空気供給路28の圧縮空気と、熱媒供給路30bの熱媒との間で熱交換し、膨張機10による膨張の前に圧縮空気の温度を上昇させている。即ち、第2熱交換器18では、圧縮空気の温度は上昇し、熱媒の温度は低下する。ここで温度低下した熱媒は、蓄熱タンク20に供給され蓄えられる。
【0050】
第1熱交換器16及び第2熱交換器18を使用すると、発電効率の低下を防止できる。これらを使用しない場合、圧縮熱によって温度上昇した圧縮空気が蓄圧タンク8に供給される。温度上昇した圧縮空気は、蓄圧タンク8に蓄えられている間に外部へ放熱し、熱エネルギーを損失する。これに対し、第1熱交換器16を使用すると、蓄圧タンク8に供給される圧縮空気の温度を低下させ、外気との温度差を低減できる。従って、蓄圧タンク8における放熱による熱エネルギーの損失を防止できる。さらに、回収した熱を蓄熱タンク20に蓄熱し、第2熱交換器18を使用して膨張機10へ供給される圧縮空気に対してこの回収及び蓄熱した熱を戻すことで発電効率を低下させることなく発電が可能である。
【0051】
この構成によれば、余剰電力を蓄熱に利用することで電力の無駄を抑制して発電効率を向上し、蓄圧タンク8のサイズを小容量化することで設備コストを低減できる。余剰電力とは、発電機12による発電電力と電力需要との差分の電力のことをいう。通常、蓄圧タンク8がそれ以上蓄圧できない場合の余剰電力は捨てることになる。しかし、ヒータ22により蓄熱タンク8内の熱媒を加熱することで、加熱された熱媒は第2熱交換器18において膨張前の圧縮空気を加熱するため、加熱された圧縮空気で膨張機10を駆動でき、膨張効率を向上できる。また、装置2全体の蓄圧タンク8の容量は、電力需要のピークに対応して設定する必要がある。しかし、本構成により余剰電力を蓄熱に利用できるため電力の無駄を抑制でき、蓄圧タンク8が所定の容量を超過してそれ以上蓄圧できない場合でも熱という別の形態でエネルギーを貯蔵できる。このため、蓄圧タンク8の容量を電力需要のピークに対応して設定する必要がなく、蓄圧タンク8を小容量化できる。
【0052】
また、CAES発電装置2は制御装置26を備える。制御装置26は、シーケンサ等を含むハードウェアと、それに実装されたソフトウェアにより構築されている。本実施形態の制御装置26は、発電装置1からの入力電力、圧力センサ14の検出圧力値、外部の電力系統25の電力需要、及び発電機12の発電電力の各値を受ける。そして、制御装置26は、これらの値に基づいて第1電力分配部24及び第2電力分配部3を制御して発電電力の供給先及び入力電力の供給先を以下の制御方法に示すように切り替える(
図1の二点鎖線参照)。
【0053】
次に、本実施形態のCAES発電装置2の制御方法について説明する。
【0054】
図2は第1実施形態のCAES発電装置2の制御方法を示すフローチャートである。制御が開始され(ステップS2−1)、入力電力Eがモータ4に供給されると(ステップS2−2)、入力電力Eが所定の値E
max以下であるか否かを判定する(ステップS2−3)。所定の値E
maxは、圧縮機6が所定の圧縮効率以上で駆動できる最大値である。従って、E
maxを超える電力が供給されると圧縮効率を最大化する設定点から離れた点での圧縮となり圧縮効率が落ちる。またはさらに大きな電力はモータ4を駆動するのに余剰な電力供給となる。
【0055】
入力電力Eが所定の値E
maxを超える場合(ステップS2−3)、入力電力EのうちE
maxを超える部分の電力は第2ヒータ22に供給され、蓄熱タンク20内の熱媒を加熱するために利用される(ステップS2−4)。そして
図3に示す処理Aが実行される(ステップS2−5)。
【0056】
図3を参照して、処理Aが開始されると(ステップS3−1)、入力電力によりモータ4を駆動して圧縮機6で圧縮空気を製造し(ステップS3−2)、この圧縮時の圧縮熱を第1熱交換器16で熱媒に回収し(ステップS3−3)、回収された熱媒は、蓄熱タンク20に貯蔵される。熱回収され温度が低下した圧縮空気は蓄圧タンク8に貯蔵される(ステップS3−4)。蓄圧タンク8から膨張機10に供給される圧縮空気は、第2熱交換器18で熱媒により加熱される(ステップS3−5)。膨張機10で圧縮空気を膨張させることで発電機12により発電する(ステップS3−6)。そして処理Aを終了する(ステップS3−7)。
【0057】
入力電力Eが所定の値E
max以下の場合(ステップS2−3)、さらに入力電力Eが所定の値E
min以上であるか否かを判定する(ステップS2−6)。所定の値E
minは、圧縮機6が所定の圧縮効率以上で駆動できる最小値である。従って、E
min未満の電力が供給されても圧縮効率を最大化する設定点から離れた点での圧縮となり圧縮効率が落ちる。またはさらに小さな電力はモータ4を駆動することすらできず電力供給しても無駄となる。
【0058】
図4は、圧縮機6が一定以上の吸込効率で運転できる範囲を示すグラフである。横軸が圧縮機6の回転数(回転速度)Rであり、縦軸が圧縮機の吸込効率である。圧縮機6を一定以上の吸込効率で運転するには、所定範囲(R
min≦R≦R
max)の回転数Rが必要である。これは、圧縮機6が一定以上の運転効率で運転するためには、入力電力Eが所定範囲(E
min≦E≦E
max)である必要があることに対応している。
【0059】
図2を参照して、ステップS2−3及びステップS2−6で所定範囲(E
min≦E≦E
max)であるかを確認し、一定以上の効率で運転可能か否かを判断している。入力電力Eが所定の値E
min未満である場合(ステップS2−6)、入力電力Eをヒータ22に供給して蓄熱タンク20内の熱媒を加熱する(ステップS2−7)。入力電力Eが所定の値E
min以上である場合(ステップS2−6)、
図3に示す処理Aが実行される(ステップS2−5)。運転効率は、入力電力Eの大きさ以外にも上述のように圧縮機6に接続された図示しないインバータを介して回転数を確認することにより判断してもよい。
【0060】
処理A終了後(ステップS2−5)、電力需要Wdが発電電力Wg以上であるか否かを判定する(ステップS2−8)。電力需要Wdが発電電力Wg以上である場合、余剰電力が存在しないため、発電電力Wg(最大Wd)を需要先である外部の電力系統25に全て供給する(ステップS2−9)。電力需要Wdが発電電力Wg以上でない場合、蓄圧タンク8の容量が所定以上であるかを判断する(ステップS2−10)。具体的には、圧力センサ14で検出した蓄圧タンク8の内圧が所定の圧力以上となっているか否かを判定する。この所定の圧力は、例えば本実施形態では、圧縮機6から蓄圧タンク8にそれ以上圧縮空気を圧送できない圧力値に設定されている。
【0061】
蓄圧タンク8の容量が所定の圧力以上でない場合、発電電力Wgの一部(最大Wd)は外部の電力系統25に供給され、余剰電力(Wg−Wd)は圧縮機6のモータ4に供給されて圧縮空気が製造され貯蔵される(ステップS2−11)。蓄圧タンク8の容量が所定以上である場合、発電電力Wgの一部(最大Wd)は外部の電力系統25に供給され、余剰電力(Wg−Wd)はそれ以上蓄圧できないためヒータ22に供給され蓄熱タンク20内の熱媒を加熱する(ステップS2−12)。そして第2熱交換器18において加熱された熱媒で膨張前の圧縮空気を加熱し(ステップS2−13)、膨張機10において圧縮空気を膨張させて発電機12により発電し(ステップS2−14)、発電電力Wgを需要先である外部の電力系統25に供給する(ステップS2−9)。これらの処理を完了後、制御を終了する(ステップS2−15)。
【0062】
なお、ここで制御を終了としているが、制御は運転中、常に行われており、入力電力Eがモータ4に再び供給されるとステップS2−1から再び処理が開始される。これは以降の実施形態における制御フローでも同様である。
【0063】
このように、蓄圧タンク8がそれ以上蓄圧できない場合、余剰電力をヒータ22に供給し、蓄熱に利用することで発電電力Wgが無駄になることを防止できるため、発電機12の発電効率を向上できる。
【0064】
また、圧縮機6の効率が一定以下となるような小さすぎる又は大きすぎる入力電力Eは通常利用できず捨てられることになるが、本構成ではこのような小さすぎる又は大きすぎる入力電力Eも蓄熱に利用できる。
【0065】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態のCAES発電装置2を示している。本実施形態のCAES発電装置2は、第2電力分配部3(
図1参照)、第1蓄熱タンク34、第2蓄熱タンク36、及び第3熱交換器38に関連する部分以外の構成は
図1の第1実施形態と実質的に同様である。従って、
図1に示した構成と同様の部分については同様の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図5を参照して、本実施形態では、第2電力分配部3(
図1参照)が省略され、第1蓄熱タンク34及び第2蓄熱タンク36が設けられている。第1蓄熱タンク34及び第2蓄熱タンク36は共に断熱されている。第1蓄熱タンク34及び第2蓄熱タンク36には、それぞれ内部の第1熱媒及び第2熱媒の温度を検出する第1温度センサ40a及び第2温度センサ40bが設けられている。第1熱媒及び第2熱媒の種類は同じであってもよいし、別であってもよい。例えば水、油などを使用してもよい。第2蓄熱タンク36にはヒータ22が配置されている。ヒータ22は発電機12と電気的に接続されている。
【0067】
第1熱交換器16は、空気供給路28を通じて圧縮機6及び蓄圧タンク8と流体的に接続されている。また、熱媒供給路30cを通じて第1蓄熱タンク34に流体的に接続されている。熱媒供給路30cには、内部の第1熱媒を流動及び循環させるポンプ32cが配置されている。第1熱交換器16での熱交換により、圧縮空気の温度は低下し、第1熱媒の温度は上昇する。
【0068】
第2熱交換器18は、空気供給路28を通じて蓄圧タンク8及び第3熱交換器38と流体的に接続されている。また、熱媒供給路30dを通じて第1蓄熱タンク34及び第2蓄熱タンク36に流体的に接続されている。熱媒供給路30dには、内部の第1熱媒又は第2熱媒を流動及び循環させるポンプ32dが配置されている。第2熱交換器18での熱交換により、圧縮空気の温度は上昇し、第1熱媒又は第2熱媒の温度は低下する。
【0069】
第3熱交換器38は、空気供給路28を通じて第2熱交換器18及び膨張機10と流体的に接続されている。また、熱媒供給路30eを通じて第1蓄熱タンク34及び第2蓄熱タンク36に流体的に接続されている。熱媒供給路30eには、内部の第1熱媒又は第2熱媒を流動及び循環させるポンプ32eが配置されている。第3熱交換器38での熱交換により、圧縮空気の温度は上昇し、第1熱媒又は第2熱媒の温度は低下する。
【0070】
第1蓄熱タンク34及び第2蓄熱タンク36と第1熱交換器16及び第2熱交換器18との接続は、切替弁(熱交換順序切替部)42a〜42d,44a〜44d,46を介してなされている。従って、第1蓄熱タンク34の熱媒は、第1熱交換器16及び第2熱交換器18のいずれにも供給でき、第2蓄熱タンク36の熱媒とは分離されている。同様に、第2蓄熱タンク36の熱媒は、第2熱交換器18及び第3熱交換器38のいずれにも供給でき、第1蓄熱タンク34の熱媒とは分離されている。第1熱媒と第2熱媒は、熱媒供給路30d,30eを共有しているが、同時に同じ熱媒供給路30d又は30eを流動することはない。
【0071】
この構成によれば、圧縮熱を回収する第1熱媒とヒータ22により加熱される第2熱媒とを分離できるため、発電効率をより向上できる。圧縮熱又はヒータ22による熱媒の加熱では、通常、熱媒の温度が異なる。従って、2つの熱媒を分離することで異なる温度での蓄熱が可能である。このため、発電効率をより向上できる。
【0072】
本実施形態の制御装置26は、発電装置1からの入力電力、圧力センサ14の検出圧力値、温度センサ40a,40bの検出温度値、外部の電力系統25の電力需要、及び発電機12の発電電力の出力を受け、これらの値に基づいて以下の制御方法に示すように、第1電力分配部24を制御して発電電力の供給先を切り替える(
図5の二点鎖線参照)と共に、切替弁42a〜42d,44a〜44d,46を制御して熱媒流路を切り替える。
【0073】
図6は第2実施形態のCAES発電装置2の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態のステップS6−1からステップS6−8までは、
図2に示す第1実施形態のステップS2−1からステップS2−12までと実質的に同一である。従って、同一ステップの説明は省略する。ただし、第2実施形態では、第1実施形態と異なり、入力電力Eの大きさを判断する処理(ステップS2−3,S2−4,S2−6,S2−7)が省略され、ステップS6−3では処理Aに代えて処理Bを実行している。
【0074】
図3の処理A及び図
7の処理Bを参照して、両者の違いは、ステップS3−3及びステップS3−5における熱媒が、S7−3及びS7−5では第1熱媒に置き換えられていることである。これは第1実施形態では1つであった熱媒に対して、本実施形態では第1及び第2熱媒という2つの熱媒が使用されていることによる。ただし、第1及び第2熱媒は、異なる種類に限定されず、同一の熱媒を使用してもよい。
【0075】
図5及び
図6を参照して、ステップS6−8において第2熱媒を加熱後、温度センサ40aで検出した第1熱媒温度が温度センサ40bで検出した第2熱媒温度より高いか否かを判断する(ステップS6−9)。第1熱媒温度が第2熱媒温度よりも高い場合、切替弁42a〜42d,46を開き、切替弁44a〜44dを閉じる。これにより、第2熱媒が第2熱交換器18で圧縮空気と熱交換した(ステップS6−10)後、第1熱媒が第3熱交換器38で圧縮空気と熱交換する(ステップS6−11)。また、第1熱媒温度が第2熱媒温度よりも低い場合、切替弁42a〜42dを閉じ、切替弁44a〜44d,46を開く。これにより、第1熱媒が第2熱交換器18で圧縮空気と熱交換した(ステップS6−12)後、第2熱媒が第3熱交換器38で圧縮空気と熱交換する(ステップS6−13)。即ち、第1熱媒と第2熱媒のうち、温度の低い熱媒が圧縮空気に対して先に熱交換する。そして、加熱された圧縮空気により膨張機10を駆動して発電機12により発電する(ステップS6−14)。発電電力Wgは外部の電力系統25に供給される(ステップS6−5)。これらの処理を完了後、制御を終了する(ステップS6−15)。
【0076】
このようにすることで、第1熱媒と第2熱媒のうち、温度の高い方の熱媒が加熱した圧縮空気の温度を低下させることがない。このため、熱交換効率を向上でき、膨張前の圧縮空気の温度をより高温に加熱できるため、発電効率を向上できる。
【0077】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態のCAES発電装置2を示している。本実施形態のCAES発電装置2は、第2電力分配部3(
図1参照)、第1熱媒供給タンク48、第2熱媒供給タンク50、第1熱媒戻りタンク52、第2熱媒戻りタンク54、第4熱交換器56、及び第5熱交換器58に関連する部分、並びに圧縮機6と膨張機10が多段型であること以外の構成は
図1の第1実施形態と同様である。従って、
図1に示した構成と同様の部分については同様の符号を付して説明を省略する。
【0078】
図8を参照して、本実施形態では、第2電力分配部3が省略され、断熱された蓄熱タンク48,50,52,54が温度別に設けられている。具体的には第1熱媒供給タンク48、第2熱媒供給タンク50、第1熱媒戻りタンク52、及び第2熱媒戻りタンク54が設けられている。また、これらに対応する第1熱交換器16、第2熱交換器18、第4熱交換器56、及び第5熱交換器58がそれぞれ設けられている。
【0079】
第1熱媒供給タンク48及び第1熱媒戻りタンク52は、第1熱交換器16及び第2熱交換器18に熱媒供給路30fを通じて流体的に接続されている。熱媒供給路30fには内部の熱媒を流動及び循環させるポンプ32fが配置されている。第1熱媒供給タンク48は、第1熱交換器16において圧縮空気と熱交換して温度が上昇した熱媒を貯蔵する。第1熱媒戻りタンク52は、第2熱交換器18において圧縮空気と熱交換して温度が低下した熱媒を貯蔵する。
【0080】
第2熱媒供給タンク50及び第2熱媒戻りタンク54は、第4熱交換器56及び第5熱交換器58に熱媒供給路30gを通じて流体的に接続されている。熱媒供給路30gには内部の熱媒を流動及び循環させるポンプ32gが配置されている。第2熱媒供給タンク50は、第4熱交換器56において圧縮空気と熱交換して温度が上昇した熱媒を貯蔵する。第2熱媒戻りタンク54は、第5熱交換器58において圧縮空気と熱交換して温度が低下した熱媒を貯蔵する。
【0081】
本実施形態の圧縮機6及び膨張機10は2段型である。1段目の圧縮熱を第4熱交換器56で回収し、2段目の圧縮熱を第1熱交換器16で回収している。また、膨張前の圧縮空気を第2熱交換器18で加熱し、1段目の膨張後に第5熱交換器58で圧縮空気を加熱している。
【0082】
このように、蓄熱タンク20を熱媒供給タンク48,50及び熱媒戻りタンク52,54に分けることで、温度別に熱媒の管理が可能である。従って、熱交換効率を向上させ、発電効率を向上できる。
【0083】
なお、本実施形態では2段型の圧縮機6及び膨張機10を配置しているが、これに限定されず、単段型や3段以上の多段型であってもよい。
【0084】
本実施形態の制御装置26は、発電装置1からの入力電力、圧力センサ14の検出圧力値、外部の電力系統25の電力需要、及び発電機12の発電電力の出力を受け、これらの値に基づいて第1電力分配部24を制御して発電電力の供給先を切り替える(
図11の二点鎖線参照)。
【0085】
本実施形態の制御方法については、第2電力分配部3(
図1参照)に関する部分を除き、
図2に示す第1実施形態の制御方法と実質的に同様であるため説明を省略する。
【0086】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態のCAES発電装置2を示している。本実施形態のCAES発電装置2は、ヒータ22(
図1参照)及び蓄電装置21に関連する部分以外の構成は
図1の第1実施形態と同様である。従って、
図1に示した構成と同様の部分については同様の符号を付して説明を省略する。
【0087】
図9に示すように、本実施形態のCAES発電装置2は、ヒータ22(
図1)が省略され、蓄電装置21が設けられている。蓄電装置21は、蓄電池やコンデンサ等の電気エネルギーを蓄電できるものであればよく、その種類は特に限定されない。蓄電装置21は、第1電力分配部24を介して発電機12と電気的に接続され、発電機12で発電した余剰電力を蓄電する。蓄電装置21に蓄電されている残電力は図示しない電力計などにより把握できる。さらに蓄電装置21は第2電力分配部3を介して発電装置1と電気的に接続され、発電装置1で発電した入力電力を蓄電する。また、蓄電装置21は、モータ4に電気的に接続され、蓄電した電力を供給できる。また、発電装置1にも第2電力分配部3を介して電気的に接続されており、入力電力を蓄電できる。さらに、蓄電装置21は、電力系統25に電気的に接続され、蓄電した電力を供給できる。
【0088】
従って、本実施形態の第1電力分配部24は、発電機12からの電力を電力系統25と蓄電装置21とに分配する。また、第2電力分配部3は、発電装置1からの電力をモータ4と蓄電装置21とに分配する。
【0089】
本実施形態の制御装置26は、発電装置1からの入力電力、圧力センサ14の検出圧力値、外部の電力系統25の電力需要、発電機12の発電電力、及び蓄電装置21の残電力の各値を受ける。そして、制御装置26は、これらの値に基づいて第1電力分配部24及び第2電力分配部3を制御して発電電力の供給先及び入力電力の供給先を以下の制御方法に示すように切り替える(
図9の二点鎖線参照)。
【0090】
図10は第4実施形態のCAES発電装置2の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の制御方法は、
図2に示す第1実施形態の制御方法と概略同一であるため、異なる点のみを示す。
【0091】
本実施形態では、圧縮機6の運転効率が所定以下となるような大きすぎる入力電力Eに対して、圧縮機6を駆動するのに必要以上の電力は、蓄電装置21に供給される(ステップS10−4)。また、圧縮機6の運転効率が所定以下となるような小さすぎる入力電力Eに対しては、蓄電装置21に電力がある場合(ステップS10−7)、入力電力Eが所定の値E
min以上となるように蓄電装置21からモータ4に電力を補助供給した上で(ステップS10−8)、処理Aを実行する(ステップS10−9)。蓄電装置21に電力がない場合(ステップS10−7)、入力電力Eを蓄電装置21に供給して蓄電する(ステップS10−10)。
【0092】
このように圧縮機6の運転効率が所定以下となるような小さすぎる入力電力Eや大きすぎる入力電力Eも蓄電することで有効に利用できる。また、モータ4に供給される入力電力Eが所定の値E
min以下である場合でも、蓄電装置21からモータ4に電力を補助供給することで所定の値E
min以上の電力がモータ4に供給されることになり、運転効率の低下を防止できる。
【0093】
図10を参照して、蓄圧タンク8の内圧が所定の圧力以上である場合(ステップS10−13)、蓄電装置21が満充電あるか否かを判定する(ステップS10−15)。蓄電装置21が満充電でない場合、発電電力Wgの一部(最大Wd)は外部の電力系統25に供給され、余剰電力(Wg−Wd)は蓄電装置21に供給され蓄電される(ステップS10−16)。蓄電装置21が満充電である場合、発電電力Wgの一部(最大Wd)は外部の電力系統25に供給され、それ以上充電できないため余剰電力(Wg−Wd)は放電(廃棄)される(ステップS10−17)。
【0094】
このように、余剰電力を蓄電に利用することで電力の無駄を抑制して発電効率を向上し、蓄圧タンク8のサイズを小容量化することで設備コストを低減できる。
【0095】
(第5実施形態)
図11は、第5実施形態のCAES発電装置2を示している。本実施形態のCAES発電装置2は、蓄電装置21及びヒータ22の両方を備える。蓄電装置21及びヒータ22に関連する部分以外の構成は
図1の第1実施形態及び
図9の第4実施形態と同様である。従って、
図1及び
図9に示した構成と同様の部分については同様の符号を付して説明を省略する。
【0096】
本実施形態のCAES発電装置2は、蓄電装置21及びヒータ22の両方を備える。従って、本実施形態の第1電力分配部24は、発電機12からの電力を電力系統25と蓄電装置21とヒータ22とに分配する。また、第2電力分配部3は、発電装置1からの入力電力をモータ4と蓄電装置21とヒータ22とに分配する。
【0097】
蓄熱タンク20には、内部の熱媒の温度を測定するための蓄熱温度センサ60が設けられている。温度センサ60は、制御装置26に測定値を出力する。
【0098】
本実施形態の制御装置26は、発電装置1からの入力電力、圧力センサ14の検出圧力値、温度センサ60の検出温度値、外部の電力系統25の電力需要、発電機12の発電電力、蓄電装置21の残電力の各値を受ける。そして、これらの値に基づいて第1電力分配部24及び第2電力分配部3を制御し、発電電力の供給先を切り替える(
図11の二点鎖線参照)。発電電力の供給先切替の制御方法には、以下に示す第1の制御方法と第2の制御方法がある。
【0099】
(第1の制御方法)
図12は第5実施形態のCAES発電装置2の第1の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の第1の制御方法は、
図2に示す第1実施形態の制御方法と概略同一であるため、異なる点のみを示す。
【0100】
入力電力Eが所定の値E
minよりも小さく(ステップS12−6)、蓄電装置21に電力がある場合(ステップS12−7)、入力電力Eが所定の値E
min以上となるように蓄電装置21からモータ4に電力を補助供給した上で(ステップS12−8)、処理Aを実行する(ステップS12−9)。蓄電装置21に電力がない場合(ステップS12−7)、第1電力分配部3を切り替えて入力電力Eをヒータ22に供給して蓄熱タンク20内の熱媒を加熱する(ステップS12−10)。
【0101】
蓄熱タンク20の熱媒が所定の温度以上である場合(ステップS12−15)、発電電力Wgの一部(最大Wd)は外部の電力系統25に供給され、余剰電力(Wg−Wd)は蓄電装置21に供給され蓄電される(ステップS12−16)。蓄熱タンク20の熱媒が所定の温度未満である場合(ステップS12−15)、発電電力Wgの一部(最大Wd)は外部の電力系統25に供給され、余剰電力(Wg−Wd)はヒータ22に供給され蓄熱タンク20内の熱媒を加熱する(ステップS12−16)。
【0102】
このように、ヒータ22に加えて、蓄電装置21を設けたことで余剰電力を蓄電できる。特に、蓄熱タンク20内の熱媒温度が所定以上であり、ヒータ22によって熱媒温度を上昇させることができない場合でも電気エネルギーとして有効にエネルギーを蓄えることができる。再生可能エネルギーによる発電量の変動(ピーク時と平常時の差)が大きい場合、余剰電力を有効利用する工夫がなされていないと膨大なサイズの蓄圧タンク8又は多数の蓄圧タンク8が必要となる。全体コストに占める蓄圧タンク8のコストは大きいため、例え蓄電装置21を新たに設置した場合でも蓄圧タンク8の小容量化により全体として大きくコストダウンできる。
【0103】
(第2の制御方法)
図13は第5実施形態のCAES発電装置2の第2の制御方法を示すフローチャートである。本実施形態の第2の制御方法は、
図12に示す第1の制御方法と概略同一であるため、異なる点のみを示す。
【0104】
第1の制御方法と異なり、必要以上の電力は蓄電装置21に供給される(ステップS13−4)。また、ステップS13−10において入力電力Eは蓄電装置21に供給される。蓄電装置21は電気エネルギーとしてエネルギーを蓄えるため、第1の制御方法のようにヒータ22を使用して熱エネルギーとしてエネルギーを蓄える場合に比べて用途が広い。また、蓄電装置21が満充電であるか否かを判断し(ステップS13−15)、満充電でなければヒータ22よりも優先的に蓄電装置21に余剰電力を供給して蓄電する(ステップS13−
16)。満充電の場合はそれ以上蓄電できないため、ヒータ22に余剰電力を供給して蓄熱タンク20内の熱媒を加熱する(ステップS13−17)。
【0105】
蓄電装置21に加えてヒータ22を設けたことで、余剰電力を蓄熱に利用できる。特に、蓄電装置21が満充電であり、それ以上蓄電できない場合でも熱エネルギーとして有効にエネルギーを蓄えることができる。
【0106】
第1の制御方法及び第2の制御方法のように、入力電力や余剰電力は必要に応じて蓄電装置21やヒータ22に供給され、電気エネルギーや熱エネルギーとして蓄えられる。ただし、上記第1から第5実施形態に記載した以外に、入力電力や余剰電力をその他の態様で蓄えてもよい。
【0107】
ここで記載した各実施形態において、再生可能エネルギーによる発電の対象は、例えば、風力、太陽光、太陽熱、波力又は潮力、流水又は潮汐、及び地熱等、自然の力で定常的(もしくは反復的)に補充されるエネルギーを利用したもの全てを対象とすることが可能である。