【実施例】
【0013】
<1>全体構成
図1に本発明に係る水質浄化体を示す。
本発明に係る水質浄化体Aは、1つ以上の多孔質担体10と、前記多孔質担体10を収容可能に構成するか、または前記多孔質担体10に差し込むように設ける、付着体20と、からなる。
以下、各部材の詳細について説明する。
【0014】
<2>多孔質担体
多孔質担体10は、水質浄化機能を発揮するための部材である。
多孔質担体10は、多孔性を呈する担体であり、担体全体に設けてある孔の空隙部分に微生物の棲息が可能な部材であればいかなる部材を用いる事ができる。
本実施例では、多孔質担体10に、ポーラスコンクリートを用いている。
この多孔質担体10は、担体内部を通水する過程で、担体に付着した微生物等の生物種が、表面では好気的な生物分解、内部では嫌気的な生物分解を行うものである。
【0015】
<2.1>多孔質担体の形状
多孔質担体10の形状は、球状、立方体状などあらゆる形状を採用することができる。
本実施例では、多孔質担体10を球状に形成している。
多孔質担体10を球状に形成しておけば、複数の多孔質担体10同士を組み合わせたときに、空隙が生まれやすく、日光があたりやすくなるほか、水の通りや生物の移動、生物種の住処になるなどの利点が生じやすい。
【0016】
<3>付着体
付着体20は、生物の付着量を増加させるための部材である。
付着体20は、立体状に組み立てた棒材21を前記多孔質担体10の周囲に設けるように構成することができる。
本実施例では、略中央に立方体状の空間ができるように、複数の棒材21を立法格子状に組み立てて付着体20を構成している。各棒材の端部は前記した立方体状の空間から延出した状態とする。
前記した立方体状の空間が、前記多孔質担体10の収容空間23となる。
本実施例に係る付着体20は、箱体20aと蓋体20bとの二つの部材に分けて製作されており、箱体20aの収容空間23へと多孔質担体10を収めてから、蓋体20bを取り付けて、図示していないクリップ金具等で固定することで、多孔質担体10と付着体20とを一体化している。
このとき、前記収容空間23が立方形状である場合、等長である一辺の長さよりも、前記多孔質担体10の直径を大きくするようにしておけば、多孔質担体10が付着体20から抜け落ちる事は無い。
【0017】
<3.1>付着体の素材
付着体20の素材は、多孔質担体10の保護や、岸壁との衝突などに耐えられる程度の素材であれば、あらゆる素材を用いることができる。
本実施例では、鋼製の棒材21を用いている。
棒材21を鋼製とした場合、棒材21から溶け出す鉄分が周囲の海藻などへの養分となる点で有益である。
【0018】
<3.2>異種素材の組合せ
付着体20は、材質の異なる棒材21(防錆塗装鉄筋やSUS等の金属素材、樹脂製など)を組み合わせて構成することもできる。
付着体20に付着する生物の種類は、棒材21の材質によって変わるため、異種素材を組合せて付着体20を構築すれば、付着する生物種の多様性を確保することができる。
【0019】
<3.3>緩衝材の追加
付着体20には、別途緩衝材22を設けても良い。この緩衝材22は、付着体20が岸壁などに衝突した際に、何れか或いは双方の破損を防止するための部材である。
緩衝材22の素材は、公知の弾性部材を用いることができる。
緩衝材22の取付態様は、棒材21の周囲に巻き付ける態様や、棒材21の自由端の先端に取付ける態様などがある。
本実施例では、棒材21の自由端先端にタップ加工を施し、当該部分にゴム製の球状の緩衝材22を螺合している。
【0020】
<4>水質浄化体の使用方法
次に、
図2を参照しながら、前記した水質浄化体の使用方法について説明する。
まず、前記した水質浄化体Aを、上下方向に適宜所定間隔を設けつつ連結ロープ30を介して複数連結した連結体を地上で製作する。前記連結対の下端には、錘40を取り付けておき、岸壁Xの近傍の水中に配置する際に、前記錘40が水底Yに達するように構成している。
【0021】
図3に、水質浄化体Aの設置後の経過を示す。
図3(a)は、2月の設置から約1ヶ月が経過した際に引き上げた水質浄化体Aの写真であり、
図3(b)は、設置から約3ヶ月が経過した際に引き上げた水質浄化体Aの写真である。
図3(b)の通り、設置から約3ヶ月程度で、付着体20に収容した多孔質担体10が外から視認できないほどの付着生物の存在が確認できる。
また
図3(b)では、棒材21を鋼製とし、緩衝材22をゴム製としているところ、棒材21には主にムラサキイガイが付着し、緩衝材22には主にフジツボが付着した。
このように、水質浄化体Aを構成する部材を異なる素材を組み合わせることで、付着する生物の多様性の確保も確認できる結果となった。
【0022】
多孔質担体10は、内部を通水する過程で、担体に付着した微生物等の生物種が、表面では好気的な生物分解、内部では嫌気的な生物分解をし、水質を浄化する効果がある。
一方、春から秋にかけては、生物種の成長も著しく、多孔質担体10の表面を生物被膜で覆ってしまうため、多孔質担体内部への通水効果が薄れる場合も考えられる。
しかし、付着した生物種の生物活動によっても炭素固定や水質浄化効果が期待できるため、生物種の付着量が増えることは、一定の水質浄化効果が見込まれる。
そこで、本発明に係る水質浄化体Aは、冬場に生物の活性が落ちる時期には多孔質担体10での水質浄化機能を生かし、春から秋にかけて生物が活性化する時期は、付着体20でもって、積極的に生物の付着量を多くする構造とすることで、1年を通じて水質浄化機能を発揮することが期待できる。
例えば、今回多く付着が確認されたムラサキイガイは、殻の隙間から足糸を出して付着する生物種である。冬場になるにつれ、死滅し、付着力が弱まった際には、一部剥落も考えられるが、残った殻の密集体は新たな多孔質担体として付着媒体となるため、翌年の生物種の付着に寄与し得る。
【0023】
<5>その他の形状例1
図4に、水質浄化体Aのその他の形状例1を示す。
本発明に係る付着体20は、多孔質担体10に棒材21を差し込んで連結した態様で構成することもできる。
本実施例では、球状の多孔質担体10の上下にそれぞれ棒材21の一端を差し込んでモルタルで接合しており、串刺し状を呈している。
棒材21の他端には、リング状の接続具24を設け、連結ロープ30などを取付可能に構成している。
本実施例に係る構造では、付着体20による多孔質担体10の保護機能は薄れるものの、付着体20による生物付着量の増加機能を発揮することができる。
【0024】
<6>その他の形状例2
図5に、水質浄化体Aのその他の形状例2を示す。
多孔質担体10は、太陽光の当たる深度、水の流れのある場所において効率よく効果を発揮するため、太陽光の当たらない水深の深い場所や、各ユニットが重なることで水の流れが無い場所では、水質浄化効果が薄くなる。
そこで、
図5に示すように、内部に多孔質担体10を収容した付着体20と、内部に多孔質担体10を収容せずに、非収容空間26としたままの付着体20と、を組み合わせた水質浄化体Aとすることにより、多孔質担体10への水の流れを制御して、水質浄化機能の低下を抑制することができる。
【0025】
<7>その他の形状例3
図6に、水質浄化体Aのその他の形状例3を示す。
本発明に係る付着体20の形状および、該付着体20への多孔質担体10の収容態様は、その他にも種々の態様を採用することができる。
図6(a)は、籠状の付着体20に、複数の多孔質担体10を並べて配置した構造を呈している。
図6(b)は、複数の多孔質担体10を並べて配置した籠状の付着体20を、複数段積みしたような構造を呈している。
図6(c)は、串刺し状に配置した多孔質担体10および付着体20を並べて配置した構造を呈している。
これらの形状例は、設置箇所の条件に応じて、適宜選択すればよい。
【0026】
<8>その他の設置例
図7に、水質浄化体Aのその他の設置例を示す。
図7では、水質浄化体Aを含む構造体を水底に設置するにあたり、水深の浅い箇所には、水質浄化体Aが位置するようにし、水深の深い場所は、前記水質浄化体Aを支持するための支持フレームBを設けた構成としている。
支持フレームBは、前記した付着体20で構成してもよいし、前記水質浄化体Aを連結可能な公知の支持具で構成してもよい。
支持フレームBの固定は、公知の方法を採用することができる。
本実施例によれば、太陽光が当たりやすい水深の浅い箇所のみに、水質浄化体Aを配置することで、水質浄化機能の最適化を図ることができる。