(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6614918
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】車載用表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20191125BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20191125BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G09G5/38 Z
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-213853(P2015-213853)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-83739(P2017-83739A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】瀧沢 昭彦
【審査官】
鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−011217(JP,A)
【文献】
特開2009−150947(JP,A)
【文献】
特開2006−106254(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0154441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
G09G 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型スクリーンと、前記透過型スクリーンに中間像を生成する画像生成部と、湾曲したハーフミラーの凹面に前記中間像を投影する投影部とを有し、前記ハーフミラーの凸面側前方に結像される虚像を、視認者が前記ハーフミラーの凹面側から目視可能とされた車載用表示装置において、
前記虚像が、前記ハーフミラーから離れた遠方画像と、それよりも前記ハーフミラーに近い近方画像とに分離されており、
前記遠方画像は前記視認者が正面を見たときの視野範囲の中心に表示され、前記近方画像は前記視野範囲の中心から外れた位置に表示され、
前記近方画像の左右方向の中心部が、前記遠方画像の左右方向の端部よりも外側に位置することを特徴とする車載用表示装置。
【請求項2】
前記視野範囲の中心は 、車両に装備されたステアリングホイールの中心線上に位置している請求項1記載の車載用表示装置。
【請求項3】
前記遠方画像の左右方向の中心部が、前記視野範囲の中心に位置している請求項1または2記載の車載用表示装置。
【請求項4】
前記遠方画像と前記近方画像は、前記視認者から見て左右方向に重なることなく離れて位置している請求項1ないし3のいずれかに記載の車載用表示装置。
【請求項5】
前記近方画像は、前記遠方画像の左右方向の両側にそれぞれ配置され、それぞれの前記近方画像は、前記遠方画像と重なることなく離れて位置している請求項1ないし3のいずれかに記載の車載用表示装置。
【請求項6】
前記近方画像は、前記視認者から見て前記遠方画像よりも下側に重なることなく離れて位置している請求項1ないし5のいずれかに記載の車載用表示装置。
【請求項7】
前記視認者から見て、前記近方画像の表示領域の面積は、前記遠方画像の表示領域の面積よりも小さい請求項1ないし6のいずれかに記載の車載用表示装置。
【請求項8】
前記遠方画像として、車両走行速度が表示される請求項1ないし7のいずれかに記載の車載用表示装置。
【請求項9】
前記遠方画像として、車両の進行指示が表示される請求項1ないし8のいずれかに記載の車載用表示装置。
【請求項10】
前記近方画像として、カーナビゲーションが表示される請求項1ないし9のいずれかに記載の車載用表示装置。
【請求項11】
前記近方画像として、走行注意喚起が表示される請求項1ないし10のいずれかに記載の車載用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内の視認者が前方に形成された虚像を目視するように構成された車載用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ヘッドアップディスプレイ装置に関する発明が記載されている。
このヘッドアップディスプレイ装置は、プロジェクタの前方に第1投射レンズと第2投射レンズとが設けられ、さらに前方に第1スクリーンと第2スクリーンが設けられている。第1投射レンズを経て第1スクリーンに表示される映像は、反射ミラーで反射されて車両前方の第1虚像となり、第2投射レンズを経て第2スクリーンに表示される映像は、反射ミラーで反射されて車両前方の第2虚像となる。
【0003】
第1投射レンズと第1スクリーンの位置は固定されているため、第1虚像の表示位置は固定される。一方、第2スクリーンはモータによって光軸方向へ移動させられ、これに追従して第2投射レンズも光軸方向へ移動させられて、車両の前方において、第2虚像の表示位置が、第2スクリーンの移動に連動して前後に移動する。
【0004】
特許文献1に記載されているヘッドアップディスプレイ装置は、車両走行時に、固定位置の第1虚像によって車両の現在車速などを表示し、第2虚像によって割り込み車両に対する警告表示が行われる。この警告表示では、割り込み車両を囲む枠が表示され、自分の車両と割り込み車両との距離に応じて第2スクリーンが前後し、警告表示である枠(第2虚像)の表示位置が、自車両と割り込み車両との距離に応じて前後に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−11217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたヘッドアップディスプレイ装置は、第1虚像が車両の前方の固定位置に表示されるが、段落「0064」に記載されているように、この第1虚像として、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、スマートフォンの画面、テレビ番組などが表示される。
【0007】
すなわち、割り込み車両を囲む枠が移動する警告表示以外の表示であって前後に移動しない画像として表示すべき全ての画像が、車両の前方の比較的接近した位置に有る第1虚像として表示される。
【0008】
このように前後に移動しない画像として表示すべき全ての情報が同じ表示位置の第1虚像として表示されていると、運転者は常に視線を第1虚像に向けなくてはならなくなり、運転の注意が削がれるおそれがある。特に、前記のように列記した現在車速、案内標識、地図画像などの各表示情報には、情報量が多いものが多数含まれているため、これらを表示するために広い範囲の表示領域が必要となる。そのため、この表示を見ることで、運転中の前方への注意を削がれるおそれが大きくなる。
【0009】
上記のように情報量の多い表示を行うために、特許文献1の
図15と
図17に記載されているように、従来のヘッドアップディスプレイ装置は、第1虚像をステアリングホイールからかなり左側に離れた位置に表示しなくてはならなくなる。そのため、運転者は視線を常に左側に向けていなくてはならないため、さらに運転に悪影響を与えやすくなっている。
【0010】
また、ヘッドアップディスプレイ装置において、表示すべき情報量を多くするためには、運転者の視野の前方において左右の広い範囲を第1虚像の形成領域とし、その領域の大半を数字や記号または文字の情報表示領域としなくてはならなくなる。この場合には、運転者が非常に広い範囲を視認する必要が生じ、さらに運転者の視野を妨げやすくなる。
【0011】
さらに、特許文献1に記載されているヘッドアップディスプレイ装置は、第2虚像が表示される範囲も、第1虚像の範囲と同程度の範囲を表示領域として設定されているため、フロントウィンドウの上方に位置する第2虚像を視認中に、フロントウィンドウ下方に位置する第1虚像の全体像が視界に入ってしまうことがあり、運転者にとっては、視認性の低下や運転中に取り込まれる情報量の増加に繋がることになり、安全性において好ましくない。
【0012】
また、
第1虚像と第2虚像の表示範囲の大きさが同程度の場合には、運転者が運転姿勢を変更するなどして頭の位置が上下方向にずれると、運転者から、第1虚像と第2虚像とが重なって見えてしまう現象も生じやすくなる。
【0013】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、車両の運転情報を、視認者が正面を見たときの視野範囲の中心と、中心部から外れた領域の双方に表示できるようにすることで、運転者に情報を与えやすくなり、また運転者の視線をなるべく前方に向けることができる車載用表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、透過型スクリーンと、前記透過型スクリーンに中間像を生成する画像生成部と、湾曲したハーフミラーの凹面に前記中間像を投影する投影部とを有し、前記ハーフミラーの凸面側前方に結像される虚像を、視認者が前記ハーフミラーの凹面側から目視可能とされた車載用表示装置において、
前記虚像が、前記ハーフミラーから離れた遠方画像と、それよりも前記ハーフミラーに近い近方画像とに分離されており、
前記遠方画像は前記視認者が正面を見たときの視野範囲の中心に表示され、前記近方画像は前記
視野範囲の中心から外れた位置に表示され
、
前記近方画像の左右方向の中心部が、前記遠方画像の左右方向の端部よりも外側に位置することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の車載用表示装置では、例えば、前記視野範囲の中心は、車両に装備されたステアリングホイールの中心線上に位置している。
【0016】
本発明の車載用表示装置は、前記遠方画像の左右方向の中心部が、前記視野範囲の中心に位置していることが好ましい。
【0018】
本発明の車載用表示装置では、前記遠方画像と前記近方画像が、前記視認者から見て左右方向に重なることなく離れて位置している。
【0019】
または、本発明の車載用表示装置は、前記近方画像が、前記遠方画像の左右方向の両側にそれぞれ配置され、それぞれの前記近方画像は、前記遠方画像と重なることなく離れて位置している。
【0020】
本発明の車載用表示装置は、前記近方画像が、前記視認者から見て前記遠方画像より
も下
側に重なることなく離れて位置しているものであってもよい。
【0021】
本発明の車載用表示装置は、前記視認者から見て、前記近方画像の表示領域の面積が、前記遠方画像の表示領域の面積よりも小さいことが好ましい。
【0022】
本発明の車載用表示装置は、例えば、前記遠方画像として、車両走行速度や車両の進行指示が表示される。
【0023】
一方で、前記近方画像としては、カーナビゲーションや走行注意喚起が表示される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の車載用表示装置は、湾曲したハーフミラーの前方に虚像として遠方画像と近方画像が表示される。ここでのハーフミラーは車両のウインドシールドガラスである。またはウインドシールドガラスよりも車室内側に配置されたハーフミラーであってもよい。
【0025】
視認者が正面を見たときの視野範囲の中心で、例えば車両に装備されたステアリングホイールの中心部の前方に、遠方画像が表示されるが、この遠方画像として、車両走行速度や車両の進行指示などの常時表示される情報や目視頻度の高い情報が表示される。また前記中心部から外れた位置に近方画像が表示され、この近方画像としては、カーナビゲーションや走行注意喚起などの比較的目視頻度の低い情報が表示される。
【0026】
運転者である視認者は常に視線を前方の遠く離れた位置に向ける必要があるが、走行中に視野に入りやすい位置の遠方画像には必要最小限の情報だけが表示される。一方で、その他の目視頻度の低い情報を表示する近方画像は遠方画像よりも近くで且つ中心部から外れた位置に表示される。そのため、走行中には主に遠方画像が視野に入り、その表示情報の量が少ないため、不要な情報を目視するのを抑制でき、運転の注意を削ぐのを防止できるようになる。また、目視頻度が低い情報や注意喚起などが必要な情報は、近方画像として遠方画像と重複することなく表示されるため、遠方画像の表示の妨げにならない。しかも、運転者が視線をずらすだけで近方画像を目視できるので、種々の情報を確認することも容易である。
【0027】
また、遠方画像と近方画像を離れて配置させることにより、視認者が頭を動かしても、遠方と近方の画像が重複して目に入ることもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施の形態の車載用表示装置が車両に搭載されている状態を示す説明図、
【
図2】本発明の実施の形態の車載用表示装置の部品構成を示す説明図、
【
図3】本発明の実施の形態の車載用表示装置の第1の表示例を示す説明図、
【
図4】本発明の実施の形態の車載用表示装置の第2の表示例を示す説明図、
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、本発明の実施の形態の車載用表示装置10が、車両の一例である自動車1に搭載された状態を示している。
【0030】
自動車1は、ボンネット部2と天井部3との間にウインドシールドガラス4が装着されており、ウインドシールドガラス4で、車室空間5と、車両の前方の外部空間6とが仕切られている。ウインドシールドガラス4は湾曲しており、車室空間5にウインドシールドガラス4の凹面4aが向けられ、前方の外部空間6にウインドシールドガラス4の凸面4bが向けられている。ウインドシールドガラス4が凹曲面を有するハーフミラーとして機能する。
【0031】
ただし、本発明では、ウインドシールドガラス4がハーフミラーとして機能するのではなく、ウインドシールドガラス4よりも車室内側に、湾曲したハーフミラーが別途に配置されていてもよい。
【0032】
車室空間5には運転席7が設けられ、その前方にステアリングホイール8が設けられている。車室空間5の前方にダッシボード9が設けられており、このダッシュボード9の内部に、本発明の実施の形態の車載用表示装置10が埋め込まれて設けられている。車載用表示装置10は、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置である。
【0033】
図2に概略を示すように、車載用表示装置10には透過型スクリーン11と、透過型スクリーン11に中間画像を生成する画像生成部18を有している。画像生成部18はDLP(Digital Light Processing)プロジェクタである。このプロジェクタは、デジタルミラーデバイスを備えており、さらにカラーフィルターを備えるなどして多色表示が可能となっている。
【0034】
透過型スクリーン11の前方にフィールドレンズ12が設けられている。透過型スクリーン11に形成された中間画像は、フィールドレンズ12で集光させられて、その前方の全反射ミラー13で上向きに反射される。
【0035】
全反射ミラー13の上方には遠方投影ミラー14と近方投影ミラー15が設けられている。遠方投影ミラー14と近方投影ミラー15は全反射ミラーである。フィールドレンズ12と全反射ミラー13および遠方投影ミラー14と近方投影ミラー15とで、投影部が構成されている。
【0036】
車載用表示装置10による表示動作は以下の通りである。
画像生成部18であるDLPプロジェクタの光源はLED光源やレーザ光源である。光源から出射した描画ビームはデジタルミラーデバイスで向きが制御されて、透過型スクリーン11を走査し、透過型スクリーン11に中間画像が形成される。カラーフィルターなどを用いることで中間画像を多色表示することも可能である。中間画像を生成して透過型スクリーン11を透過した表示光は、全反射ミラー13で反射され、さらに遠方投影ミラー14と近方投影ミラー15とでそれぞれ全反射されて、ウインドシールドガラス4に向けられる。
【0037】
ウインドシールドガラス4は湾曲したハーフミラーとして機能する。遠方投影ミラー14と近方投影ミラー15で反射された光が凹面4aに照射されると、光の一部が運転席7に着席している視認者(運転者)20の眼21に向けられる。その結果、眼21でウインドシールドガラス4の前方の外部空間6に形成される虚像25を目視することが可能になる。虚像25の結像位置はフィールドレンズ12の焦点距離とウインドシールドガラス4の曲率とで決められる。
【0038】
全反射ミラー13から遠方投影ミラー14を経てウインドシールドガラス4に至る投影経路L1は、全反射ミラー13から近方投影ミラー15を経てウインドシールドガラス4に至る投影経路L2よりも長くなっている。そのため、遠方投影ミラー14からウインドシールドガラス4に向けられた投影経路L1によって形成される虚像25は、ウインドシールドガラス4から外部空間6の前方に離れた位置にある遠方画像25aとなる。また、近方投影ミラー15からウインドシールドガラス4に向けられた投影経路L2によって形成される虚像25は、ウインドシールドガラス4の前方の外部空間6において、遠方画像25aよりもウインドシールドガラス4に接近した位置にある近方画像25bとなる。
【0039】
なお、遠方画像25aと近方画像25bを形成するための車載用表示装置10に用いられる画像生成部18としては、DLPプロジェクタの代わりに、光源とコリメートレンズとLCOSなどの空間光学変調素子を使用したものであって、透過型スクリーン11にホログラム画像を生成するものであってもよい。また、透過型スクリーン11として透過型液晶表示素子を用い、透過型スクリーン11に形成される液晶表示の中間画像を、光源からの光でフィールドレンズ12に向けて投影してもよい。また、虚像25を遠方画像25aと近方画像25bとに分離する投影部の光学系として、フィールドレンズ12を焦点距離の相違する2個のレンズで構成し、遠方投影ミラー14と近方投影ミラー15を1枚の全反射ミラーとして、2個のレンズの焦点距離の違いにより、遠方画像25aと近方画像25bを分離して結像させるように構成することもできる。
【0040】
次に、
図3と
図4に基づいて遠方画像25aと近方画像25bの画像の表示例を説明する。
【0041】
図3と
図4には、視認者20の眼21で見ることができる虚像25である遠方画像25aと近方画像25bが示されている。両図において、X方向は視認者20から見た左右方向であり、Y方向は視認者20から見た上下方向である。
【0042】
図3には、視認者20が目視可能な虚像25を表示することができる表示可能領域31が一点鎖線で囲まれた領域として示されている。同様に
図4には、表示可能領域32が一点鎖線で囲まれた領域として示されている。表示可能領域31,32は、
図2に示す透過型スクリーン11において中間画像を生成できる領域の形状と面積によって決められる。
図4に示す表示例では、透過型スクリーン11の面積が
図3に示す表示例よりも面積が大きくなっており、その結果、
図4に示す表示可能領域32の左右方向(X方向)の幅寸法が、
図4に示す表示可能領域31の左右方向(X方向)の幅寸法よりも大きくなっている。
【0043】
図3と
図4に示すように、表示可能領域31,32内では、虚像25の一部が、遠方投影ミラー14によって遠方画像25aとして結像され、虚像25の他の一部が、近方投影ミラー15によって近方画像25bとして結像される。
【0044】
遠方画像25aの表示可能範囲は、実線で囲まれた四角形の領域であり、この領域は
図2に示す遠方投影ミラー14による反射可能な範囲に対応している。近方画像25bの表示可能範囲は、実線で囲まれた四角形の領域であり、この領域は
図2に示す近方投影ミラー15による反射可能な範囲に対応している。遠方画像25aと近方画像25bは、
図3と
図4において実線で囲まれた範囲内に表示可能である。
【0045】
図3に示す表示例では、遠方画像25aが、ステアリングホイール8の中心を通って車両の前後方向に延びる中心線Oの前方延長線上に表示されている。これは視認者20が正面を見たときの視野範囲の中心に一致している。遠方画像25aはその一部が前記中心線Oに掛る位置に形成されていれば良いが、好ましくは、遠方画像25aの左右方向(X方向)の中心部が前記中心線Oに一致している。
【0046】
近方画像25bは、前記中心線Oから外れた位置、すなわち視認者20が正面を見たときの視野範囲の中心から外れた位置にある。そして、近方画像25aの左右方向の中心部が、遠方画像25aの左右方向の両端部からX方向に離れた位置に形成されている。
【0047】
図3に示す表示例は最も好ましい例であり、近方画像25bが、遠方画像25aよりも右側へ距離αを空けた位置で、遠方画像25aよりも下側へ距離βを空けた位置に表示される。
【0048】
図4に示す表示例においても、遠方画像25aが、ステアリングホイール8の中心を通って車両の前後方向に延びる中心線Oの前方である中心部に表示されている。近方画像25b,25bは、遠方画像25aを挟んで左右両側に配置されている。それぞれの近方画像25b,25bは、遠方画像25aから左右に間隔を空けて離れて位置し、且つ遠方画像25aから下側に間隔を空けて離れて位置している。
【0049】
図3と
図4の表示例のいずれにおいても、視認者20が視認する個々の近方画像25bの表示領域の面積は、遠方画像25aの表示領域の面積よりも小さくなっている。
【0050】
図3と
図4の各表示例では、遠方画像25aに、常時表示する必要のある情報または目視頻度の高い情報が表示される。近方画像25bには、遠方画像25aに表示されている情報よりも目視頻度の低い情報が表示される。
【0051】
遠方画像25aとして表示される常時表示する必要のある情報の一例は、車両走行速度の表示41であり、目視頻度の高い情報の一例は、車両の進行指示を示す矢印表示42である。
【0052】
近方画像25bとして表示される目視頻度の低い情報は、カーナビゲーション表示43、ガソリン残量や電力残量を示すエネルギー表示45(
図4参照)などである。さらに目視頻度の低い情報としては、累計走行距離表示、エンジンの回転数表示(タコメータ表示)、時計表示、車内と車外の温度表示、シートベルト着用警告表示などがある。さらに、目視頻度の低い情報としては走行注意喚起を示す表示46(
図4参照)が挙げられる。この表示46は、車両の直近に障害物が存在していることを示すものであり、危険を通知すべき状態になると、点滅したり色相が変化したり画面内で画像が動くなどの表示となる。
【0053】
このように、危険を通知すべき状態になったときに表示が点滅などの表示状態となると、視認者20は視界の端で表示の変化をとらえやすくなり、適切なタイミングで表示を視認することができ、また、それ以外のタイミングでは意識して視認する必要は無くなる。
【0054】
遠方画像25aは、自動車1の運転者である視認者20が正面を見たときの視野範囲の前方の中心部に位置し、遠方画像25aとして常時表示すべき情報または目視頻度の高い情報のみが表示されている。運転中の視認者20は、視線をウインドシールドガラス4から前方に遠く離れた位置に向けているため、遠方画像25aが視野に入りやすい。また、遠方画像25aは、常時表示する必要のある情報や目視頻度の高い情報など情報量が限られているため、表示画像が運転中の視認者の注意を削ぐことも起こりにくい。そのためには、走行中に遠方画像25aとして同時に表示される情報の数を3情報以下とすることが好ましく、さらには2情報以下に限ることが好ましい。
【0055】
一方で、近方画像25bは視認者20の視野範囲の中心から外れた位置で且つ遠方画像25aよりも小さい表示面積となっているため、前方に視線を向けている運転中の視認者20にとっては、遠方画像25aが視野に入りやすいが、近方画像25bは視野に入りにくくなっている。そのため、目視頻度の低い近方画像25bによって運転の注意が妨げられにくくなっている。
【0056】
また、近方画像25bに表示されている目視頻度の低い情報は、視線を近方画像25bの方向へ一時的に向けるだけで確認することができる。また、走行注意喚起の表示46が現れるときは、表示を点滅させたり、色相を変化させたり、画面内で表示を動かすことで、視認者20に気づきやすくなる。
【0057】
図3と
図4に示すように、近方画像25bは、遠方画像25aに対して左右方向に離れ且つ下方向に離れて位置しており、遠方画像25aと近方画像25bは離れているため、視認者20が頭を動かしたときに遠方画像25aと近方画像25bが重なって表示されて目視されることもない。
【符号の説明】
【0058】
O 中心線
X 左右方向
Y 上下方向
1 自動車
4 ウインドシールドガラス
4a 凹面
4b 凸面
5 車室空間
6 外部空間
10 車載用表示装置
11 透過型スクリーン
14 遠方投影ミラー
15 近方投影ミラー
20 視認者
25 虚像
25a 遠方画像
25b 近方画像
31,32 表示可能領域