【実施例】
【0015】
実施例に係る移動式物品棚の障害物検知装置につき、
図1から
図6を参照して説明する。
【0016】
主に書庫や倉庫等に、
図1及び
図2に示される移動式物品棚4が配置されている。この移動式物品棚4は、床面上に平行に延びる2本のレール5,5と、レール5,5の長手方向両端部に固定的に載置された固定棚2A,2Bと、固定棚2A,2Bの間でレール5,5に沿って移動可能に載置された電動式の移動棚3A,3Bと、によって主に構成されている。この移動式物品棚4は、レール5,5の長手寸法が、固定棚2A,2B及び移動棚3A,3Bの移動方向の寸法の合計寸法よりも所定の長さ長くなっており、固定棚2A,2B及び移動棚3A,3Bの間をそれぞれ選択的に離間させて作業空間を形成できるようになっている。尚、本実施例では、固定棚2Aと移動棚3Aとの間を作業空間S1とし、移動棚3A,3Bの間を作業空間S2として説明する。
【0017】
移動棚3A,3Bは、その底面には図示しない車輪が設けられており、車輪を介してレール5,5上に自走可能に載置されている。また、移動棚3A,3Bには、前記車輪と連動する電動式の可逆モータ16,16が各々内蔵されている。当該可逆モータ16,16は、移動式物品棚4の駆動制御を行う駆動制御装置13,13に接続されており、可逆モータ16,16を正転または逆転させることによって、各移動棚3A,3Bがレール5,5に沿って移動できるようになっている。さらに移動棚3A,3Bは、可逆モータ16,16の回転を随時計測して当該移動棚3A,3Bの移動距離の値を出力できるロータリーエンコーダ17,17がそれぞれ設けられている。各棚2A,2B,3A,3B間のそれぞれの距離の値を出力できるロータリーエンコーダ17,17(棚間距離取得手段)がそれぞれ設けられている。尚、レール5,5自体の長さ寸法や、各棚の幅等を調整することにより、配置可能な固定棚及び移動棚の数量や作業空間の数量及び幅などを適宜変更可能である。
【0018】
これら固定棚2A,2B及び移動棚3A,3Bは、書籍等の物品を陳列できる上下複数段の棚段を有する棚部6,6,…を有しており、棚部6,6,…の側面には、着脱可能に取付けられる化粧パネル7,7,…が設けられ、各化粧パネル7,7,…内には、後述する各種装置が組み込まれている。
【0019】
固定棚2Aの化粧パネル7の外面には、移動式物品棚4全体の電源スイッチ8と、タッチパネル方式で操作可能なモニター9と、が設けられ、固定棚2Bの化粧パネル7の外面には、手動操作ボタン14が設けられている。移動棚3A,3Bの化粧パネル7,7の外面には、短手方向両端側に手動操作ボタン14,15がそれぞれ設けられている。
【0020】
移動式物品棚4は、棚間に形成された作業空間内の障害物を検知する障害物検知装置1を備えている。
図2に示されるように、障害物検知装置1は、固定棚2Aの化粧パネル7内に配置された判断手段である中央処理装置11と、センサユニット21,22,31,32と、を備えている。
【0021】
固定棚2Aのセンサユニット21は、対向する移動棚3A側に指向する距離センサ2a〜2cと、センサ装置である棚間距離センサ20aと、センサ制御装置21aとから成り、同様に固定棚2Bのセンサユニット22は、移動棚3B側に指向する距離センサ2d〜2fと、センサ制御装置22aとから成る。
【0022】
移動棚3Aのセンサユニット31は、固定棚2A側を指向する距離センサ3a〜3cと、移動棚3B側を指向する距離センサ3d〜3fと、棚間距離センサ20bと、センサ制御装置31aとから成り、また同様に移動棚3Bのセンサユニット32は、移動棚3A側を指向する距離センサ3g〜3iと、固定棚2B側を指向する距離センサ3j〜3mと、棚間距離センサ20cと、センサ制御装置32aとから成る。
【0023】
センサ制御装置21a,31a,32aには、所定時間毎に各距離センサ2a〜2c,3a〜3c,3d〜3f,3g〜3i,3j〜3mと、棚間距離センサ20a〜20cと、をそれぞれ動作させる動作プログラムが組み込まれており、各距離センサ及び各棚間距離センサ20a〜20cは、この動作プログラムに従って所定時間毎に動作するようになっている。センサ制御装置22aは、動作プログラムにより距離センサ2d〜2fをそれぞれ所定時間毎に動作させるようになっている。
【0024】
各距離センサ2a〜2c,2d〜2f,3a〜3c,3d〜3f,3g〜3i,3j〜3m及び棚間距離センサ20a〜20cは、図示しない音波送信部と音波入力部を有した超音波式の距離センサであり、音波送信部から照射された音波が、対向する棚に反射し音波入力部に戻ってくる時間を出力として中央処理装置11に送るようになっている。
【0025】
特に距離センサ2a〜2c,2d〜2f,3a〜3c,3d〜3f,3g〜3i,3j〜3mは、各棚の長手方向に検知範囲の広い超音波の距離センサであるため、少ない数の距離センサで各棚間の作業空間S1,S2内に超音波を広く照射させることができる。また、対向し合う各距離センサは、各棚の長手方向にずれて配置されており、対向し合う各距離センサの音波の干渉が抑えられている。
【0026】
センサユニット21の距離センサ2a〜2cとセンサユニット31の距離センサ3a〜3cと棚間距離センサ20aとは、中央処理装置11内において、対向し合う固定棚2Aと移動棚3Aとの間の出力値を計測するセンサグループαとしてグループ化されて管理されている。また、センサユニット31の距離センサ3d〜3fとセンサユニット32の距離センサ3g〜3iと棚間距離センサ20bは、移動棚3Aと移動棚3Bとの間の出力値を計測するセンサグループβとしてグループ化され、センサユニット32の距離センサ3j〜3mとセンサユニット22の距離センサ2d〜2fと棚間距離センサ20cとは、移動棚3Bと固定棚2Bとの間の出力値を計測するセンサグループγとしてグループ化されている(
図5参照)。
【0027】
また、中央処理装置11は、駆動制御装置13,13、電源スイッチ8及びモニター9、センサユニット21,22,31,32とそれぞれ接続されているとともに、ここでは図示しないが、ロータリーエンコーダ17,17と手動操作ボタン14,15と有線又は無線により接続されている。更に、中央処理装置11は、駆動制御装置13に駆動信号及び停止信号を送る送信部12を有している。尚、中央処理装置11と駆動制御装置13,13、電源スイッチ8及びモニター9、センサユニット21,22,31,32とは無線により接続されていてもよい。
【0028】
棚間距離センサ20a〜20c及び中央処理装置11は、各棚間距離を測定できる棚間距離取得手段を構成するものである。棚間距離センサ20a〜20cは、
図1に示されるように、棚の上端側に配置されていることから、作業空間内に入った人間を検知しないようになっており、常に対向する移動棚、固定棚に反射して音波入力部に戻ってくる時間を距離情報として中央処理装置11に送るようになっている。中央処理装置11は、この棚間距離センサ20a〜20cから受け取った距離情報を基に固定棚2A,2Bと隣接する各棚間距離を算出する。
【0029】
次に、移動式物品棚4の各種動作処理について説明する。尚、ここでは、移動棚3Aの動作処理態様のみを説明し、移動棚3Bの動作処理態様の説明を省略する。
【0030】
作業空間S2の閉鎖が行われる場合を例に取ると、
図2に示されるように、移動棚3Aの停止状態において手動操作ボタン14(
図1参照)が押下されると、その押下信号が中央処理装置11に送られる。
【0031】
中央処理装置11の動作処理設定において、手動操作ボタン14と15とに、移動棚3Aの移動方向がそれぞれ設定されており、移動式物品棚4は、選択された手動操作ボタンが設置されている側と、隣接する棚との間の作業空間を拡張するように動作する。例えば、移動棚3Aでは、手動操作ボタン14が押下された場合には移動棚3Aは移動棚3B方向に、手動操作ボタン15が押下された場合には移動棚3Aは固定棚2A方向に、それぞれ移動される。そのため、手動操作ボタン14が押下されたことにより、移動棚3Aと固定棚2Aとの間の作業空間S1を拡張すると同時に、移動棚3Aと移動棚3Bとの間の作業空間S2を閉鎖するように動作することになる。尚、固定棚2Bの手動操作ボタン14が押下されると、隣接する移動棚3Bとの間の作業空間S3を拡張するように、移動棚3Bが移動棚3A方向に移動するように動作するようになっている。
【0032】
中央処理装置11は、移動棚3Aの手動操作ボタン14の押下信号に基づき、後述する距離センサ3d〜3iと、棚間距離センサ20bとを動作させる。距離センサ3d〜3iと棚間距離センサ20bとから得られた出力は中央処理装置11に送られ、中央処理装置11はその出力に基づき、作業空間S2内の障害物18を検知する検知処理を行う。
【0033】
この検知処理により作業空間S2内に障害物18が無いことが確認されると、中央処理装置11の送信部12から駆動制御装置13に駆動信号が送られ、駆動制御装置13が前記可逆モータ16を駆動(ここでは正転とする)させ、移動棚3Aを移動棚3B方向に移動させる処理を行う。一方、移動棚3Aの停止状態において前記検知処理により作業空間S2内の障害物18を検知した場合には、中央処理装置11は駆動制御装置13への駆動信号を送信しない処理又は停止信号を送信する処理を行うとともに、アラートメッセージをモニター9に表示させる処理を行うようになっている。
【0034】
中央処理装置11は、中央処理装置11とともに棚間距離取得手段を構成するセンサ装置である各ロータリーエンコーダ17,17(
図2参照)から受け取った出力(移動距離)と、中央処理装置11に記憶されている移動棚が移動する前の、移動棚3A,3Bの絶対座標とから移動棚3A,3Bの座標を算出し、この移動棚3A,3Bの座標と中央処理装置11に記憶されている固定棚2A,2Bの絶対座標と、から、中央処理装置11は棚間の距離を求めることができる。
【0035】
そのため、移動棚3Aが正常に移動した際には、中央処理装置11は移動棚3Aの移動距離から移動棚3Aの適正な棚間距離を割り出し、この棚間距離に基づいて駆動制御装置13への駆動信号を送信し、移動棚3Aを適正な位置で停止させる通常停止処理を行うようになっている。尚、移動棚3Aの移動距離は、棚間距離センサ20bから受け取った距離情報を基に算出されてもよい。
【0036】
続いて検知処理について
図3を例に取り、
図4及び
図5を用いて詳しく説明する。
図3は、作業空間S1の閉鎖に伴い移動棚3Aを固定棚2A方向に移動させる場合において、停止状態で手動操作ボタン15(
図1参照)が押下された時点では、検知処理によって障害物が検知されず、移動棚3Aが移動を開始した後に、棚部6から作業空間S1に障害物18が落下した場合を例示した図である。
【0037】
検知処理は、移動棚が停止状態にある状態で手動操作ボタンが押下された後、作業空間の閉鎖に伴う移動棚の移動が完了するまで継続して行われる。前述したように手動操作ボタン15が押下された時点で、作業空間S1の閉鎖動作が開始されており、中央処理装置11はセンサグループαを所定間隔で動作させ、センサグループα内の全ての距離センサ2a〜2cと、距離センサ3a〜3cと、棚間距離センサ20aとからの出力を取得する。
【0038】
中央処理装置11は、この距離センサ2a〜2cと、距離センサ3a〜3cと、棚間距離センサ20aとから受け取った各距離情報を検知処理におけるステップSa1において距離値にそれぞれ変換する。
【0039】
次いで、ステップSa2において、センサグループα内全ての距離センサ2a〜2cと距離センサ3a〜3cから出力された距離情報と棚間距離センサ20aにより計測された距離値とを比較する。
【0040】
続いて、ステップSa3において、棚間距離センサ20aにより計測された固定棚2Aと移動棚3Aとの棚間の距離値に対する差分が許容誤差(20mm)以上となる距離値に相当する距離情報を出力した距離センサが1つ以上存在するか否かを判断する。棚間距離センサ20aにより計測された距離値に対する差分が許容誤差以上となる距離センサが1つ以上存在すると判定した場合(
図5では、距離センサ3bの距離情報に基づく距離値165.0mmと棚間距離センサ20aの距離情報に基づく距離値583.75mmとの差分が418.75mmとなっている。)、ステップSa4において、その判定情報に基づいて作業空間S1内の障害物18があることと判定し、障害物18の存在の検知処理を完了する。
【0041】
中央処理装置11は、この障害物18の検知に基づき送信部12から駆動制御装置13に停止処理を出力する非常停止処理を行う。
【0042】
このように、棚間距離センサ20aにより計測された情報を基に計測された隣接する棚間の距離値と、距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜3cの距離情報に基づく距離とを比較することで、距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜3cが他方の棚以外の物体即ち障害物18との距離を計測したと判定できるため、例えば棚の移動中等、隣接する棚間の距離が変動する場合であっても、確実に障害物18の検知を行うことができるとともに、距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜3cの測定誤差による誤検知を防止することができる。
【0043】
前述のように、センサ制御装置21a,31aは、前記出力プログラムにより所定時間毎に距離センサ2a〜2cと、距離センサ3a〜3cと、棚間距離センサ20aとを動作させているため、作業空間S1内に障害物18が無いと判断された場合には、ステップSa1に移行して当該検知処理を繰り返す。このように所定時間毎に検知処理が繰り返されるため、移動棚3Aが移動走行中であっても確実に障害物18を検知できる。そして、ロータリーエンコーダ17,17から受け取った出力により作業空間S1の閉鎖に伴う移動棚3Aの移動が完了したことが判断できた時点で、中央処理装置11は、センサグループαを用いた検知処理を終了する。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0045】
例えば、前記実施例では、検知処置において距離センサから出力された距離情報と比較される隣接する棚間の距離情報は、超音波センサである棚間距離センサにより取得された距離情報を用いたが、これに限らず、例えばロータリーエンコーダ17,17から受け取った出力により算出された棚間の距離情報を用いてもよい。
【0046】
また、距離センサと棚間距離センサとして超音波センサを利用していたが、これに限られず、対向する棚までの距離を測定できるものであれば、例えばレーザー距離計等の技術を代用してもよい。更に、例えば
図6に示される変形例のように、移動式物品棚40の上に、隣接する棚間に関節51a〜51cを有して杆状体52,52が載架されたパンタグラフ50a〜50cをそれぞれ設け、これらパンタグラフ50a〜50cの関節51a〜51cに設けられたエンコーダ(図示せず:棚間距離取得手段)により、杆状体52,52同士により成される角度をそれぞれ計測し、この角度に応じて棚間の距離を計測できるようにしてもよい。このように、棚間の距離を計測する手段として、複数の方式を取り入れることにより、万一、いずれの距離測定手段に不具合があった場合であっても棚間の距離を計測することができ、移動棚を正確に移動させることができる。
【0047】
また、距離センサの動作は、手動操作ボタン14,15の押下及び移動棚の移動走行中のみに限らず、常時動作させておく態様としてもよい。
【0048】
また本実施例では、送信部12が中央処理装置11に内蔵された態様となっているが、中央処理装置11と別体の送信部とを化粧パネル7内に設け、中央処理装置11と該送信部とを接続するようにしてもよい。
【0049】
尚、中央処理装置11は、障害物を検知した情報により移動棚の通常停止処理または非常停止処理を行う態様に限らず、例えば、中央処理装置11により障害物18を検知した際にその検知情報をモニター9に表示させて注意を促してもよいし、点灯ランプや警告音による注意喚起であってもよい。
【0050】
また、上記実施例では、距離センサ及び棚間距離センサの距離情報をそれぞれ距離値に変換していたが、これに限らず、各距離センサ及び棚間距離センサの距離情報を対向する棚同士の距離として認識し、無変換で利用しても構わない。また、上記実施例では、検知処理における許容誤差を20mm以上と設定した様態について説明したが、棚に収納する物品のサイズや形状、棚のサイズや形状や材質などに応じて許容誤差を適宜変更することができる。
【0051】
また、センサグループα、β、γは、対向する棚の距離センサ及び棚間距離センサを同じグループとする構成で説明したが、これに限らずセンサグループは、棚毎の距離センサ及び棚間距離センサをグループ化するものであってもよい。
【0052】
また、移動棚3A,3Bは、可逆モータ16,16により移動する電動式移動棚である態様について説明したが、例えば、手動式で移動できるようなものであってもよく、この場合、中央処理装置11は、棚間距離センサから取得した距離情報の変化により、閉鎖に伴う棚の移動が開始されたことを検知し、この移動の開始に基づき対象のセンサグループを動作させて検知処理を開始することになる。