【文献】
DIEGEL, Olaf, et al.,Low-Cost 3D Printing of Controlled Porosity Ceramic Parts,International Journal of Automation Technology,2012年 9月 5日,Vol.6, No.5,p.618-626
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
窯業原料の最大粒度が付加製造方式の積層ピッチの2倍以下であることが好ましい。この範囲内であると成形体の密度を向上できる。
【0013】
窯業原料の安息角が70度以下であることが好ましい。この範囲であると、窯業原料の流動性が適切な範囲となり、付加製造方式による積層状態が良好となる。
【0014】
窯業原料に水溶性高分子が添加されていると、成形体の硬度が向上する。
【0015】
窯業原料のゆるみかさ密度が0.5g/cm
3以上であると、窯業原料の充填性が適切な範囲となり、付加製造方式による積層状態が良好となる。
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔1〕窯業原料
本発明の窯業原料は、付加製造方式により成形体を製造するための窯業原料である。そして、窯業原料は、全量(窯業原料全体)を100質量部とした場合に、可塑性原料を60質量部以下にしたことを特徴とする。
【0017】
窯業原料としては、窯業に用いる原料であれば特に限定されない。原料としては、例えば、陶石、長石、珪石、蝋石、シャモット、バン土頁岩
等の骨格形成原料、蛙目粘土、木節粘土、カオリン等の可塑性原料、珪灰石、石灰石、灰長石等のカルシウム原料、長石、ドロマイト等の焼結助剤原料等が挙げられる。好ましくは、仮焼粘土、長石、粘土、アルミナ粉末、石英粉末、タルク、骨材等の無機材が挙げられる。これらの原料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。通常、2種以上を混合して用いられる。
【0018】
本発明では、可塑性原料が60質量部以下であることを特徴とする。ここで、可塑性原料としては、粘土、蛙目粘土、カオリン等が挙げられる。可塑性原料は、好ましくは40質量部以下であり、より好ましくは30質量部以下である。この範囲にすると、成形体の積層状態が良好となる。
【0019】
本発明では、好ましい各原料の混合割合としては、全量を100質量部とした場合に、仮焼粘土が5〜70質量部、長石が40〜70質量部であり、さらに好ましくは仮焼粘土が10〜60質量部、長石が45〜55質量部である。この範囲内にすると、成形体の積層状態が良好となり、所望の成形体が得られる。
【0020】
窯業原料の最大粒度は、特に限定されない。窯業原料の最大粒度は、好ましくは付加製造方式の積層ピッチの2倍以下であり、より好ましくは1倍以下であり、さらに好ましくは0.9倍以下である。なお、通常、窯業原料の最大粒度は、付加製造方式の積層ピッチの1/1000倍以上である。窯業原料の最大粒度が、この範囲内であると成形体の密度を向上できる。
【0021】
窯業原料の最大粒径は、特に限定されないが、積層ピッチが100μmの場合、好ましくは、0.01〜200μmであり、より好ましくは0.1〜200μmであり、更に好ましくは0.1〜100μmである。窯業原料の最大粒径が小さすぎると、窯業原料が舞って付加製造方式での成形が難しい傾向にあり、一方、大きすぎると成形体の密度が小さくなる傾向にある。従って、上記の範囲が窯業原料の最大粒径として好ましい。
【0022】
窯業原料における粒度分布は、特に限定されない。好ましくは、粗粒が60〜80質量部、微粒が40〜20質量部とすることができ、より好ましくは、粗粒が65〜80質量部、微粒が35〜20質量部とすることができ、更に好ましくは、粗粒が70〜80質量部、微粒が30〜20質量部とすることができる。この範囲とすると、成形体の密度が向上するから好ましい。
【0023】
ここで、「粗粒」とは積層ピッチが100μmの場合、沈降法で求められる粒子径が50μm以上100μm以下の粒子を意味する。「微粒」とは沈降法で求められる粒子径が0.01μm以上5μm以下の粒子を意味する。
【0024】
窯業原料の粉末粒度は、造粒により調整してもよい。造粒方法としては特に限定されず、公知の方法を適宜選択できる。例えば、湿式造粒、乾式造粒を採用することができる。造粒した場合に、粉体層を圧縮することで圧密にして充填性を上げて密度向上できる。
【0025】
窯業原料の安息角は、特に限定されないが、好ましくは、20〜70度であり、より好ましくは30〜70度であり、更に好ましくは30〜60度である。この範囲であると、窯業原料の流動性が適切な範囲となり、付加製造方式による積層状態が良好となる。
【0026】
安息角は、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)TYPE PT−Eにて測定できる。
【0027】
窯業原料のせん断応力は、特に限定されないが、好ましくは、40kPa以上である。なお、通常は、100kPa以下である。
ここで、せん断応力は以下のように測定された値である。すなわち、(株)ナノシーズ製 粉体せん断力測定装置NS−S500型にて測定した値である。なお、測定条件としては、試料を50gとし、荷重は50N、100N、150Nとする。
【0028】
窯業原料の内部摩擦は、特に限定されないが、好ましくは、30〜40である。
ここで、内部摩擦は以下のように測定された値である。すなわち、(株)ナノシーズ製 粉体せん断力測定装置NS−S500型にて測定した値である。なお、測定条件としては、試料を50gとし、荷重は50N、100N、150Nとする。
【0029】
窯業原料に水溶性高分子が添加されていてもよい。水溶性高分子としては特に限定されず、公知の水溶性高分子が用いられる。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、メチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、プルラン、ヒプロメロース、エチルセルロース等を挙げることができる。これらの水溶性高分子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
水溶性高分子の添加量については、特に限定されない。窯業原料(無機材)100質量部に対して、好ましくは、0〜30質量部であり、より好ましくは0〜20質量部であり、更に好ましくは0〜10質量部である。
【0031】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコール(無変性)、末端をカチオン変性したポリビニルアルコール、アニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0032】
ポリビニルアルコールの平均重合度は特に限定されない。平均重合度は、好ましくは1000以下であり、より好ましくは600以下であり、更に好ましくは400以下である。また、平均重合度は、通常100以上である。この範囲内であると、ポリビニルアルコールの溶解性が高くなり、成形体の保形性が高くなる傾向にある。
【0033】
ポリビニルアルコールのケン化度は、特に限定されない。ケン化度は、好ましくは60〜99モル%であり、より好ましくは75〜98モル%であり、更に好ましくは85〜95モル%である。この範囲内であると、ポリビニルアルコールの溶解性が高くなり、成形体の保形性が高くなる傾向にある。
【0034】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、特に限定されず、公知のカチオン変性ポリビニルアルコールを幅広く用いることができる。例えば、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られるカチオン変性ポリビニルアルコールを用いることができる。
【0035】
ここで、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、特に限定されない。
【0036】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、特に限定されず、公知のアニオン変性ポリビニルアルコールを幅広く用いることができる。例えば、マレイン酸変性ポリビニルアルコール、イタコン酸変性ポリビニルアルコール、アクリル酸変性ポリビニルアルコール、メタククリル酸変性ポリビニルアルコール、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0037】
ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、特に限定されず、公知のノニオン変性ポリビニルアルコールを幅広く用いることができる。例えば、ポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0038】
なお、ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することもできる。
【0039】
窯業原料のゆるみかさ密度は、特に限定されない。窯業原料のゆるみかさ密度は、好ましくは0.5g/cm
3以上であり、より好ましくは0.7g/cm
3以上であり、更に好ましくは1.0g/cm
3以上である。また、窯業原料のゆるみかさ密度は、通常2.0g/cm
3以下である。この範囲内であると、窯業原料の充填性が適切な範囲となり、付加製造方式による積層状態が良好となる。
【0040】
本発明におけるゆるみかさ密度とは、粉体を所定の容器内に自然落下させた状態の充填密度であり、粉体特性測定器を用いて以下の方法で測定した値である。具体的には、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)TYPE PT−Eにて測定した値を採用することができる。
【0041】
窯業原料に硬化促進剤が添加されていてもよい。硬化促進剤としては特に限定されず、公知の硬化促進剤が用いられる。例えば、粘土、半水石膏、セメントが用いられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。硬化促進剤は、成形体中の水を吸収し、成形体の硬度の向上に寄与する。但し、粘土等は、上述の可塑性原料とも考えることができるため、窯業原料(無機材)の全体の10質量部未満であることが好ましい。また、硬化の際に加熱を行ってもよい。
【0042】
本発明において、窯業原料の混合の仕方は特に限定されない。乾式混合及び湿式混合のいずれも採用することができる。製造の効率化の観点から乾式混合が好ましい。なお、乾式混合する前にあらかじめ粒度分布の既知の原料を選定しておくことが好ましい。
【0043】
〔2〕成形体の製造方法
本発明の成形体の製造方法は、(1)本発明の窯業原料を用いて所定厚みの粉体層を形成する粉体層形成工程、及び(2)粉体層の所定領域に液体を吹き付ける吹き付け工程を順に繰り返し、積層して成形体を形成することを特徴とする。
【0044】
図1〜6を参照しつつ、成形体の製造方法について説明する。
【0045】
(2−1)粉体層形成工程
粉体層形成工程では、窯業原料を用いて所定厚みの粉体層1を形成する(
図1参照)。この際に、通常は、リコーターを用いて窯業原料を敷き詰めて粉体層1を形成する。
この工程は、例えば具体的には、次のように行われる。まず、成形装置の基台3の鉛直上側(z軸方向上側)に、窯業原料(立体造形用混合粉体)が例えば厚さ0.01〜5mmの層状に充填される。次に窯業原料は篦等によって擦り切られて所望の厚みの粉体層1とされる。
積層ピッチは、大型の成形体を作製するためには、0.1〜5mmが好ましい。この範囲とすることで、製造スピードの効率化が図られる。
なお、窯業原料を敷き詰めた後に、粉体層1を圧縮してもよい。
【0046】
(2−1)吹き付け工程
吹き付け工程では、粉体層1の所定領域に液体7を吹き付ける(
図2参照)。粉体層1において固化されるべき部分、すなわち成形対象となる立体造形物の一部に相当する位置に対してヘッド5から液体(造形液)7が射出(滴下)され、その部分が層状の固化物として形成される。
図2においては、粉体層1のうち固化された部分を斜線で示している。
【0047】
この際、ヘッド駆動機構により基台3に対してヘッド5がxy平面内を移動させられつつ、液体7が射出されることで、成形対象となる立体造形物の一部に相当する層状の固化物が形成される。
【0048】
ここで液体7について説明する。水溶性高分子を含有している窯業原料を用いた場合には、液体7としては、溶媒のみ、又は水溶性高分子を溶媒に溶解させた溶液を用いることができる。
水溶性高分子を含有していない窯業原料を用いた場合には、液体7としては、水溶性高分子を溶媒に溶解させた溶液を用いる。
【0049】
ここで用いられる液体7に含有される可能性のある水溶性高分子としては、上述の〔1〕窯業原料において記載された水溶性高分子を好適に使用することができる。窯業原料に、水溶性高分子を含有しているものを使用する場合には、窯業原料に含まれる水溶性高分子と、溶液に含まれる水溶性高分子とは同一種であっても異種であってもよい。また、溶液に含有される水溶性高分子は、単一種で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0050】
溶媒は、特に限定されない。例えば、水を用いることができる。また、水と他の溶媒の混合溶媒としてもよい。他の溶媒は、無機溶媒、有機溶媒のいずれでもよく、例えば、具体的には、アルコール、ケトン等の溶媒が挙げられる。このように、水と他の溶媒との混合溶媒とする場合には、水の含有量は特に限定されない。水の含有量は、混合溶媒全体を100質量部とした場合に、好ましくは1〜99質量部、更に好ましくは30〜99質量部、特に好ましくは50〜99質量部である。
【0051】
溶液の濃度は、特に限定されないが、溶媒100質量部に対して、好ましくは水溶性高分子が0〜20質量部、更に好ましくは水溶性高分子が0〜10質量部、特に好ましくは水溶性高分子が0〜5質量部である。溶液の濃度が好ましい範囲内にあるときは、ヘッド5のノズルからの射出状態が良好となる。
【0052】
本製造方法では、粉体層形成工程、及び吹き付け工程を順に繰り返し(
図3〜
図4参照)、
図5の状態となり、
図5の状態から
図6のような成形体9が取り出される。
【0053】
詳細には、基台3が鉛直下方(z軸方向下方)に、層状の固形物の各層に対応する厚さ分だけ下降させされる。以下、粉体層形成工程、及び吹き付け工程が繰り返されることにより、層状の固化物が順次積層されて立体的な造形物が成形されてゆき、固化されなかった窯業原料が取り除かれることで成形体9(立体造形物)が得られる。
【0054】
このように製造された成形体9は焼成することにより、陶磁器やセラミック製品とすることができる。
【0055】
〔3〕成形体
本発明の成形体は、上述の窯業原料を用いて所定厚みの粉体層を形成する粉体層形成工程、及び(2)粉体層の所定領域に液体を吹き付ける吹き付け工程を順に繰り返し、積層して得られる。
【0056】
成形体のゴム硬度計で測定した硬度は特に限定されないが、好ましくは10以上であり、より好ましくは50以上であり、更に好ましくは80以上である。なお、成形体の硬度は、通常100以下である。
硬度をこの範囲内とすることで、固化されなかった窯業原料が取り除いて成形体を取り出すときのハンドリング性が良好となる。
ここで、硬度は、JIS K6253A ISO 7619Aに準拠するTYPE Aゴム硬度計により測定できる。
【0057】
成形体の曲げ強度は特に限定されないが、好ましくは0.4MPa以上であり、より好ましくは1MPa以上であり、更に好ましくは2MPa以上である。
なお、成形体の曲げ強度は、通常20MPa以下である。
曲げ強度をこの範囲内とすることで、固化されなかった窯業原料を取り除いて、成形体を取り出すときのハンドリング性が良好となる。
【0058】
成形体のかさ密度は特に限定されないが、好ましくは0.5g/cm
3以上であり、より好ましくは0.8g/cm
3以上であり、更に好ましくは1.0g/cm
3以上である。
なお、成形体のかさ密度は、通常2.0g/cm
3以下である。
かさ密度をこの範囲内とすることで、固化されなかった窯業原料を取り除いて、成形体を取り出すときのハンドリング性が良好となる。
なお、かさ密度は、質量と体積を測定して、これらから算出した値である。
【0059】
成形体の空隙率は、特に限定されない。空隙率は、好ましくは80%以下であり、より好ましくは60%以下であり、更に好ましくは50%以下である。
空隙率をこの範囲内とすることで、幅広い用途に実用可能な成形体となる。
なお、空隙率は、かさ密度と真比重より算出できる。
【0060】
成形体は、さらに加圧して密度を向上させてもよい。加圧方法としては特に限定されず、公知の方法を広く適用することができる。例えば、平板プレス、ロールプレス、CIP(Cold Isostatic Press)等が挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0062】
1.可塑性原料の割合の検討
<実験例1〜9>
粘土質原料に本山蛙目、仮焼粘土にモロカイト、長石に増井長石の3種の原料を粒度100μm以下に調整し下記表1の水準で混合した。市販3DプリンタProJet160(3D Systems社製)で5cm角、厚み1cmの成形体(積層造形物)を造形したときの粉末層の積層の可否を確認した。なお、結合材としてはポリビニルアルコール(ケン化度85モル%、平均重合度300)を粘土質原料100質量部に対して、10質量部を用いた。
実験例1〜9の条件と結果を表1に記載する。評価は以下の通りである。なお、実験例1〜7が実施例であり、実験例8〜9は比較例である。
○:造形は良好であり、積層面の状態も良好である。
△:造形は可能であるが積層面が荒れやすい。
×:造形、積層とも不可である。
【0063】
【表1】
【0064】
表1の結果から、実験例1〜7までの場合は、造形は可能であった。これらは、付加製造方式の成形体の作製に適していることが確認された。
これらの結果から、可塑性原料を60質量部以下にすると、付加製造方式の成形体の作製に適していることが分かった。特に、可塑性原料を30質量部以下にすると、付加製造方式の成形体の作製に最適であることが分かった。
【0065】
2.安息角の検討
パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)TYPE PT−Eにて測定した安息角が30〜80度の窯業原料にて市販3DプリンタProJet160(3D Systems社製)で5cm角、厚み1cmの成形体を造形したときの粉末層の積層の可否を確認した。なお、結合材としてはポリビニルアルコール(ケン化度85モル%、平均重合度300)を無機原料100質量部に対して、10質量部を用いた。
なお、安息角は、微粒子混合割合を変えて調整した。
実験例10〜15の条件と結果を表2に記載する。評価は以下の通りである。なお、実験例11〜15が実施例であり、実験例10は参考例である。
◎:粉体層の積層状態は非常に良好である。
○:粉体層の積層状態は良好である。
△:粉体層の積層状態はやや不良である。
【0066】
【表2】
【0067】
表2の結果から、実験例11〜15までの場合は、粉体層の積層状態は良好であり、付加製造方式の成形体の作製に適していることが確認された。なお、実験例10においても用途によっては付加製造方式の作製には適する場合があることが確認された。
これらの結果から、安息角を70度以下にすると、付加製造方式の成形体の作製により適していることが分かった。特に、安息角を40〜60度にすると、付加製造方式の成形体の作製に最適であることが分かった。
【0068】
3.粒度の検討
<実験例16〜19>
最大粒度が下記表3の窯業原料にて、簡易積層造形装置を使用して(5cm角、厚み1cm)の成形体を造形したときの成形体のかさ密度を測定した。
原料としては、粘土質原料に本山蛙目10質量部、仮焼粘土にモロカイト40質量部、長石に増井長石40質量部を用い、これらの最大粒度が表3の値になるように調整した。なお、結合材としてはポリビニルアルコール(ケン化度85モル%、平均重合度300)を無機原料100質量部に対して、10質量部を用いた。
なお、簡易積層造形装置は、金型からなる粉積層部と、粉を積層するためのローラーと、プリンターヘッドとを備えている。粉積層部にローラーによって粉を積層して結合材により固めた後に、おもりを載せて圧縮加圧操作できる装置である。
【0069】
実験例16〜19の条件と結果を表3に記載する。結果として、成形体のかさ密度を示す。なお、実験例16〜19が実施例である。
【0070】
【表3】
【0071】
表3の結果から、実験例16〜19までの場合は、最大粒度は、付加製造方式には実用的であることが確認された。すなわち、最大粒度を、積層ピッチの2倍以下にすると、かさ密度が付加製造方式に適した成形体を作製できることが分かった。
【0072】
4.水溶性高分子の検討
<実験例20〜23>
モロカイト50質量部、増井長石50質量部の原料調合系に、各種PVA(日本合成社製)を10質量部添加して粉末原料を調製した。市販3DプリンタProJet160(3D Systems社製)で5cm角、厚み1cmの成形体を造形し、造形1時間後の成形体硬さをJIS K6253A ISO 7619Aに準拠するTYPE Aゴム硬度計で測定した。
【0073】
実験例20〜23の条件と結果を表4に記載する。なお、実験例20〜23が実施例である。ここでは、成形体の保形性によって評価している。
【0074】
【表4】
【0075】
表4の結果から、実験例20〜23までの成形体の硬さは、付加製造方式の成形体としては実用的であることが確認された。
さらに、ケン化度80モル%以上のものを用いた実験例20、22、23は保形性が高かった。特に、ケン化度85モル%以上で重合度が400以下のものを用いた実験例22、23は保形性が非常に高かった。
【0076】
5.硬化促進剤の検討
<実験例24〜26>
モロカイト50質量部、増井長石50質量部の原料調合系に各種硬化促進剤を5質量部添加し、市販3DプリンタProJet160(3D Systems社製)で5cm角、厚み1cmの成形体を造形し、造形後に1時間経過した成形体の硬さをJIS K6253A ISO 7619Aに準拠するTYPE Aゴム硬度計で測定した。
【0077】
実験例24〜26の条件と結果を表5に記載する。なお、実験例24〜26が実施例である。ここでは、成形体の保形性によって評価している。
【0078】
【表5】
【0079】
表5の結果から、実験例24〜26までの成形体の硬さは、付加製造方式の成形体としては実用的であることが確認された。特に、促進硬化剤を添加した実験例25〜26は、成形体の硬さが向上した。
【0080】
6.成形体の硬さの検討
<実験例27〜31>
粘土質原料に本山蛙目、仮焼粘土にモロカイト、長石に増井長石の3種の原料を使用し、結合材としてはポリビニルアルコール(ケン化度85モル%、平均重合度300)を使用した。市販3DプリンタProJet160(3D Systems社製)で5cm角、厚み1cmの成形体を造形し、造形後0~1時間経過した後の成形体の硬さをJIS K6253A ISO 7619Aに準拠するTYPE Aゴム硬度計で測定して、成形体の硬さの異なる試料を用意した。
【0081】
実験例27〜31の条件と結果を表6に記載する。なお、実験例27〜31が実施例である。ここでは、成形体のハンドリング性によって評価している。
評価としては以下の通りである。
◎:固化されなかった窯業原料が取り除いて成形体を取り出すときのハンドリング性が非常に良好である。
○:固化されなかった窯業原料が取り除いて成形体を取り出すときのハンドリング性が良好である。
△:固化されなかった窯業原料が取り除いて成形体を取り出すときのハンドリング性がやや不良である。
【0082】
【表6】
【0083】
表6の結果から、実験例28〜31までの場合は、成形体の硬さは、付加製造方式の成形体としては実用的であることが確認された。なお、実験例27においても用途によっては付加製造方式の成形体としては実用的であることが確認された。
【0084】
7.成形体への加圧の検討
<実験例32>
実験例31と同様にして成形体を成形した。
【0085】
<実験例33>
実験例32の成形体をラッピングしてCIP成形機にて再加圧した。この際の圧力は300kgf/cm
2とした。
【0086】
<実験例34>
実験例32の成形体をラッピングしてCIP成形機にて再加圧した。この際の圧力は500kgf/cm
2とした。
【0087】
実験例32〜34の条件と結果を表7に記載する。なお、実験例33〜34が実施例である。実験例32は参考例である。ここでは、成形体の密度を評価している。
【0088】
【表7】
【0089】
表7の結果から、実験例33〜34の成形体の密度は、加圧なしの実験例32の場合より向上していることが確認された。
【0090】
8.実施例の効果
本実施例の窯業原料を用いると、付加製造方式において、積層面が荒れることなく、精度のよい成形体を得ることができる。
また、本実施例の製造方法によれば、付加製造方式における実用的な成形体を得ることができる。
また、本実施例の成形体は、焼成することによって陶磁器製品等の実用可能な製品となる。
なお、本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではない。