(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非サーボ系油路が、前記変速装置内の潤滑対象部位又は冷却対象部位に接続される油路、若しくは、前記変速装置に流体継手が備えられている場合における前記流体継手のトーラス部に接続される油路である請求項6に記載の油圧制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
油圧制御装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、車両用の変速装置100に備えられる油圧制御装置1を例として説明する。本実施形態の油圧制御装置1は、変速装置100(具体的には自動変速機構TM)に備えられる油圧駆動式の係合装置CLに供給される油圧を制御するために設けられている。
【0012】
図1に示すように、変速装置100は、入力部材Iと、流体継手TCと、自動変速機構TMと、出力部材Oとを備えている。これらは、ケース(駆動装置ケース)CS内に収容されている。
【0013】
入力部材Iは、内燃機関EGに駆動力を伝達可能に連結(以下、単に「駆動連結」と言う。)されている。流体継手TCは、入力部材Iと自動変速機構TMとに駆動連結されている。本実施形態の流体継手TCは、例えば入力部材Iに駆動連結されたポンプインペラと、自動変速機構TMに駆動連結されたタービンランナと、これらの間に配置されたステータとを備えるトルクコンバータである。ポンプインペラとタービンランナとで、トーラス部TRが構成されている。流体継手TCは、トーラス部TRの内部を循環する油(作動油、ATF;Automatic transmission fluid)を介して、駆動力を伝達可能となっている。
【0014】
なお、流体継手TCは、ポンプインペラとタービンランナとだけを備えるフルードカップリングであっても良い。また、変速装置100には、係合状態で入力部材Iとタービンランナとを一体回転させるロックアップクラッチがさらに備えられていても良い。
【0015】
変速装置100は、入力部材I及びポンプインペラに駆動連結される機械式のオイルポンプOPを備えている。オイルポンプOPは、入力部材Iに駆動連結された内燃機関EGのトルクによって駆動されて、ケースCSにおける鉛直下側に設けられたオイルパンから油(作動油、ATF)を吸引して、所定圧に高めて吐出する。
【0016】
自動変速機構TMは、本実施形態では有段自動変速機構として構成されている。本実施形態の自動変速機構TMは、複数の遊星歯車機構(図示せず)と、複数の係合装置CLとを備えている。本実施形態では、遊星歯車機構には、シングルピニオン型(又はダブルピニオン型)の第一遊星歯車装置と、ラビニヨ型の第二遊星歯車装置とが含まれる。係合装置CLは、2つの回転部材間でそれぞれの摩擦プレートどうしを圧接することによって駆動力を伝達する摩擦係合装置であり、係合装置CLにはクラッチ(例えば湿式多板クラッチ)やブレーキ(例えば湿式多板ブレーキ)が含まれる。本実施形態では、自動変速機構TMは、係合装置CLとして、3つのクラッチ(第一クラッチ、第二クラッチ、第三クラッチ)と2つのブレーキ(第一ブレーキ、第二ブレーキ)とを含む。なお、自動変速機構TMは、1つ又は複数のワンウェイクラッチを含んでいても良い。
【0017】
自動変速機構TMは、良く知られているように、複数の係合装置CLのうちの例えば2つの係合状態で、当該係合状態とされる係合装置CLの組み合わせに応じた変速段を形成する。自動変速機構TMは、流体継手TCから入力される回転を、形成された変速段の変速比(出力回転速度に対する入力回転速度の比)に応じて変速して出力部材Oに伝達する。
【0018】
出力部材Oは、図示が省略されたカウンタギヤ機構及び出力用差動歯車装置を介して、左右一対の車輪に駆動連結されている。
【0019】
自動変速機構TMに備えられる複数の係合装置CLの係合の状態を個別に制御して特定の変速段(目標変速段)を形成可能とするため、油圧制御装置1が用いられている。油圧制御装置1は、オイルポンプOPから吐出される油を所定油圧に調整して、その調圧後の油圧を目標変速段に応じた係合装置CLに供給する。また、油圧制御装置1は、オイルポンプOPから吐出される油を、ギヤどうしの噛合部や軸受等の潤滑対象部位に供給したり、係合装置CLに備えられる摩擦プレート等の冷却対象部位に供給したりする。本実施形態では、油圧制御装置1は、鉛直方向Vに沿う起立姿勢(
図2を参照)にて、入力部材I、流体継手TC、及び自動変速機構TMと軸方向Lに並んで配置されている。油圧制御装置1は、自動変速機構TMに対して、内燃機関EGとは反対側に配置されている。
【0020】
図2に示すように、油圧制御装置1は、バルブボディ20と、複数の係合装置CLへの供給油圧を個別に制御する複数のリニアソレノイドバルブSL1〜Sl5とを備えている。バルブボディ20の内部には、油圧回路を構成する複数の油路が形成されている。本実施形態では、バルブボディ20は、軸方向Lに互いに重ねて配置される第一ボディ21、第二ボディ22、及び第三ボディ23を含む。また、バルブボディ20は、第一ボディ21と第二ボディ22との対向部に配置される第一プレート24と、第二ボディ22と第三ボディ23との対向部に配置される第二プレート25とを含む。第一ボディ21、第二ボディ22、及び第三ボディ23の内部に形成された各油路は、第一プレート24及び第二プレート25に形成された開口部を介して互いに連通している。
【0021】
第二ボディ22及び第三ボディ23に対して軸方向Lにおける自動変速機構TMとは反対側に配置される第一ボディ21には、軸方向Lの外側(自動変速機構TMとは反対側)に向かって隆起する隆起部21Aが形成されている。この隆起部21Aに、複数(係合装置CLと同数;本例では5つ)のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5のバルブ部が挿入されている。
【0022】
第一リニアソレノイドバルブSL1は、ソレノイド部に印加される電流に応じて例えば元圧としてのライン圧を調圧して、第一クラッチへの供給油圧を生成する。なお、ライン圧は、例えばリリーフ形式の減圧弁で構成されるレギュレータバルブ(図示せず)によって生成される。第二リニアソレノイドバルブSL2は、元圧としてのライン圧を調圧して、第二クラッチへの供給油圧を生成する。第三リニアソレノイドバルブSL3は、元圧としてのライン圧を調圧して、第三クラッチへの供給油圧を生成する。第四リニアソレノイドバルブSL4は、元圧としてのライン圧を調圧して、第一ブレーキへの供給油圧を生成する。第五リニアソレノイドバルブSL5は、元圧としてのライン圧を調圧して、第二ブレーキへの供給油圧を生成する。これら複数のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、軸方向Lの位置を僅かずつ異ならせながら、鉛直方向Vに沿って並ぶように配置されている。本実施形態では、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5が、「調圧弁」に相当する。
【0023】
図3に示すように、バルブボディ20の内部に、オイルポンプOPとリニアソレノイドバルブSL1〜SL5とを接続するメイン油路30が形成されている。このメイン油路30に対して、複数のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5が互いに並列に接続されている。このようなメイン油路30は、オイルポンプOPから各リニアソレノイドバルブSL1〜SL5までの長さが最短又はそれに近い長さとなる(容積が最少又はそれに近い容積となる)ように形成されるのが一般的である。これに対して、本実施形態のメイン油路30は、オイルポンプOPから各リニアソレノイドバルブSL1〜SL5までの最短ルート又はそれに近いルート(
図10を参照)とは異なるルートを通るように形成されている。
【0024】
より具体的には、本実施形態のメイン油路30は、オイルポンプOPから油圧制御装置1の鉛直下方(鉛直方向Vにおける下方)側に供給される油を、一旦、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5よりも鉛直上方(鉛直方向Vにおける上方)を通過させるように形成されている。メイン油路30は、下方通過部分31と、第一側方通過部分32と、上方通過部分33と、第二側方通過部分38とを有する。
【0025】
下方通過部分31は、メイン油路30のうち、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5よりも鉛直下方となる位置を通る部分である。本実施形態では、下方通過部分31は、第三ボディ23と第二ボディ22とに亘って配設されている。下方通過部分31は、水平面に沿う状態に配設されている。
【0026】
第一側方通過部分32は、メイン油路30のうち、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の側方であって当該リニアソレノイドバルブSL1〜SL5と同じ鉛直方向Vの領域を通る第1の部分である。第一側方通過部分32は、第二ボディ22の内部に配設されている。第一側方通過部分32は、鉛直面に沿う状態に配設されている。
【0027】
上方通過部分33は、メイン油路30のうち、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5よりも鉛直上方となる位置を通る部分である。上方通過部分33は、第二ボディ22と第一ボディ21とに亘って配設されている。
【0028】
第二側方通過部分38は、メイン油路30のうち、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の側方であって当該リニアソレノイドバルブSL1〜SL5と同じ鉛直方向Vの領域を通る第2の部分である。第二側方通過部分38は、第一ボディ21の内部に配設されている。第二側方通過部分38は、鉛直面に沿う状態に配設されている。第二側方通過部分38は、その少なくとも一部が第一側方通過部分32と同じ鉛直方向Vの領域を通るように配設されている。
【0029】
オイルポンプOPから供給されてライン圧に調圧された油は、バルブボディ20の内部を、鉛直下方側において下方通過部分31を通って第三ボディ23から第二ボディ22へと向かって流れ、第二ボディ22内で、第一側方通過部分32を通って鉛直上方へと向かって流れる。油は、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5よりも鉛直上方となる位置で、上方通過部分33を通って第二ボディ22から第一ボディ21へと向かって流れ、第一ボディ21内で、第二側方通過部分38を通って鉛直下方へと向かって流れる。その後、油は、複数のリニアソレノイドバルブSL1〜SL5のそれぞれの鉛直方向Vの位置で第二側方通過部分38から分岐して、対応するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に供給される。各リニアソレノイドバルブSL1〜SL5で所定油圧に調整された油は、油路を介して、対応する係合装置CLの油圧サーボに供給される。
【0030】
なお、本実施形態のメイン油路30は、オイルポンプOPから各リニアソレノイドバルブSL1〜SL5までの最短ルート又はそれに近いルート(
図10を参照)との比較において、第一側方通過部分32と上方通過部分33とを追加的に具備する構成と言える。
【0031】
さらに、本実施形態に特有の上方通過部分33は、
図4に示すように、上流側(オイルポンプOP側)から下流側(リニアソレノイドバルブSL1〜SL5側)に向かって上方へ向かう上昇油路34と、上流側から下流側に向かって下方へ向かう下降油路36とを有する。本例では、上昇油路34が鉛直上方へ向かうように配設されているとともに、下降油路36が鉛直下方へ向かうように配設されている。また、本実施形態では、上方通過部分33は、上昇油路34と下降油路36とを接続する接続油路35をさらに有する。本例では、接続油路35は、水平面に沿う状態に配設されている。
【0032】
ところで、オイルポンプOPが停止している間や、各リニアソレノイドバルブSL1〜SL5から対応する係合装置CLへの油圧供給が停止されている間は、オイルポンプOPやリニアソレノイドバルブSL1〜SL5における大気に連通する部位から、油圧回路中にエアが混入する場合がある。油圧回路中にエアが混入すると、次に係合装置CLを係合させるときに油圧回路内での油圧の立ち上がりが不安定となり、係合装置CLの係合制御の応答性が低下することが懸念される。
【0033】
そこで、本実施形態の油圧制御装置1は、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5よりも上流側でメイン油路30から分岐するサブ油路40を備えている。サブ油路40は、油圧回路中に残留する場合があるエアを、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5には向かわせずに変速装置100内の他の部位へと逃がしてやるための油路(エア抜き用のエア逃がし油路)である。サブ油路40を流れる油の流量は、メイン油路30におけるサブ油路40との分岐部Bよりも下流側を流れる油の流量よりも多くなっている。本実施形態では、サブ油路40は、非サーボ系油路に接続されている。“非サーボ系油路”は、変速装置100に設けられている油圧サーボに接続される油路以外の油路である。サブ油路40の接続先が非サーボ系油路であれば、仮に油圧回路中にエアが混入したとしても、その混入エアが油圧サーボに到達することがないので、当該油圧サーボによる制御性に影響が及ぶことがない。
【0034】
サブ油路40が接続される非サーボ系油路は、例えば変速装置100内の潤滑対象部位に接続される油路であって良い。変速装置100内には、駆動力を伝達するためのギヤどうしの噛合部や、各種の回転部材を回転自在に支持するための軸受等が多く存在する。円滑な回転駆動を確保したり摩耗を防止したりするためには、元々、ギヤどうしの噛合部や軸受に油を供給して、これらを潤滑する必要がある。加えて、これらの周囲には、元々、変速装置100内の空気が多く残存している。よって、エアが混入してもその影響をほとんど受けることのない潤滑対象部位に、サブ油路40及び非サーボ系油路を介して油を供給して、潤滑対象部位の潤滑を適切に行うことができる。
【0035】
サブ油路40が接続される非サーボ系油路は、例えば変速装置100内の冷却対象部位に接続される油路であっても良い。係合装置CLは、互いに圧接される摩擦プレートを介して駆動力を伝達し、例えばそれぞれの摩擦プレートが摺接する(スリップする)状態で駆動力を伝達する場合がある。このような係合装置CLのスリップ係合状態では、動摩擦力によって摩擦プレートが発熱する。過熱による劣化を回避するためには、元々、係合装置CLの摩擦プレートに油を供給して、摩擦プレートを冷却する必要がある。加えて、摩擦プレートの周囲には、元々、変速装置100内の空気が多く残存している場合が多い。よって、エアが混入してもその影響をほとんど受けることのない冷却対象部位に、サブ油路40及び非サーボ系油路を介して油を供給して、冷却対象部位の冷却を適切に行うことができる。
【0036】
サブ油路40が接続される非サーボ系油路は、本実施形態のように変速装置100が流体継手TCを備えている場合には、流体継手TCのトーラス部TRに接続される油路であっても良い。流体継手TCのポンプインペラ及びタービンランナが停止している状態では、トーラス部TRの内部には油量が少なく空気が多く残存している場合がある。この状態からポンプインペラ及びタービンランナが回転すると、トーラス部TRの内部で空気が抜けつつ油量が増加して、油を介した動力伝達が行われるようになる。このように、流体継手TCのトーラス部TRでは、元々、その内部で空気が増減し得る。よって、エアが混入してもその影響をほとんど受けることのないトーラス部TRに、サブ油路40及び非サーボ系油路を介して油を供給して、流体継手TCでの油を介した動力伝達を適切に行うことができる。
【0037】
本実施形態では、サブ油路40は、
図4に示すように、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5よりも上流側の部分のうち、上方通過部分33において、メイン油路30から分岐している。言い換えれば、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが、上方通過部分33に設けられている。より具体的には、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが、上方通過部分33における接続油路35に設けられている。本実施形態ではさらに、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが、接続油路35の最上流側部位(接続油路35と上昇油路34との境界部)に設けられている。なお、
図4ではサブ油路40がトーラス部TRに接続される例を示しているが、上述したように、サブ油路40は変速装置100内の潤滑対象部位又は冷却対象部位に接続されても良い。
【0038】
このように、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5よりも上流側において、上方通過部分33の接続油路35からメイン油路30を分岐させることで、仮に油圧回路中にエアが混入した場合であっても、その混入エアを上方通過部分33で捕捉しつつそのままサブ油路40へと容易に導くことができる。よって、上方通過部分33よりも下流側且つ鉛直方向Vの下側に配置されるリニアソレノイドバルブSL1〜SL5にエアが到達するのを、有効に回避することができる。これにより、油圧回路内での油圧の立ち上がりを安定化することができ、係合装置CLの係合制御の応答性を高く維持することができる。その際、混入エアの大気ドレンを行わないので、オイルポンプOPの負荷を増大させることなく、係合装置CLの係合制御の応答性を高く維持することができる。
【0039】
検証実験によれば、例えば大気ドレンによってエア抜きを行う場合(
図10を参照)には、必要な油量を確保するためのオイルポンプOPの吐出量が約20%増加することが確認された。このようなオイルポンプOPの吐出量の増加は車両の燃料消費率の低下に繋がるため好ましくない。これに対して、本実施形態のように変速装置100の内部の所定部位に連通するサブ油路40を利用してエア抜きを行う場合には、オイルポンプOPの負荷の増大はほとんど確認されなかった。従って、本実施形態の油圧制御装置1を用いることで、車両の燃料消費率を維持したまま、係合装置CLの係合制御の応答性を高く維持することができる。
【0040】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが、接続油路35の最上流側部位に設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図5に示すように、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが接続油路35の中央部に設けられても良い。この場合において、例えば
図6に示すように、接続油路35に鉛直上方に向かって窪む形状のエア溜まり部37が設けられ、そのエア溜まり部37に、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが設けられても良い。
【0041】
(2)上記の実施形態では、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが接続油路35に設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図7に示すように、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが上昇油路34と下降油路36との接続部35Aに設けられても良い。なお、この図に示すように、上昇油路34は、上流側から下流側に向かって斜め上方へ向かうように形成されても良い。同様に、下降油路36は、上流側から下流側に向かって斜め下方へ向かうように形成されても良い。
【0042】
(3)上記の実施形態では、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが上昇油路34と下降油路36との間に設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図8に示すように、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが上昇油路34に設けられても良い。或いは、図示は省略するが、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが下降油路36に設けられても良い。
【0043】
(4)上記の実施形態では、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが上方通過部分33に設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図9に示すように、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが第一側方通過部分32に設けられても良い。或いは、図示は省略するが、メイン油路30とサブ油路40との分岐部Bが下方通過部分31に設けられても良い。
【0044】
(5)上記の実施形態では、油圧制御装置1が、自動変速機構TMに備えられる変速用の係合装置CLに供給される油圧を制御する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば変速装置100がロックアップクラッチを備えている場合には、油圧制御装置1は、当該ロックアップクラッチに供給される油圧を制御するものであっても良い。この場合、油圧制御装置1には、ロックアップクラッチへの供給油圧を調整するロックアップリニアソレノイドバルブが、「調圧弁」として備えられると良い。エア抜き用のサブ油路40は、ロックアップリニアソレノイドバルブよりも上流側でメイン油路30から分岐するように設けられる。
【0045】
(6)上記の実施形態では、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5にライン圧が元圧として供給される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えばライン圧よりも低圧のモジュレータ圧が、リニアソレノイドバルブSL1〜SL5に元圧として供給されても良い。この場合、油圧制御装置1は、ライン圧を生成するレギュレータバルブよりも下流側に、例えばリリーフ形式の減圧弁で構成されるモジュレータバルブを備えると良い。
【0046】
(7)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0047】
〔実施形態の概要〕
以上をまとめると、本開示に係る油圧制御装置は、好適には、以下の各構成を備える。
【0048】
車両用の変速装置(100)に備えられる油圧駆動式の係合装置(CL)に供給される油圧を制御する油圧制御装置(1)であって、
オイルポンプ(OP)と前記係合装置(CL)に供給される油圧を調整する調圧弁(SL1〜SL5)とを接続するメイン油路(30)が、前記調圧弁(SL1〜SL5)よりも鉛直上方となる位置を通る上方通過部分(33)を有するとともに、
前記調圧弁(SL1〜SL5)よりも上流側で前記メイン油路(30)から分岐するサブ油路(40)を備えている。
【0049】
この構成によれば、調圧弁(SL1〜SL5)よりも上流側(オイルポンプ(OP)側)にサブ油路(40)を備えているので、仮に油圧回路中にエアが混入したとしても、その混入エアをサブ油路(40)へと導いて、それよりも下流側に配置される調圧弁(SL1〜SL5)にエアが到達するのを回避することができる。また、調圧弁(SL1〜SL5)よりも上流側に設けられるメイン油路(30)が上方通過部分(33)を有するので、仮に混入エアをサブ油路(40)へと十分に導けなかったとしても、残留した混入エアを上方通過部分(33)で捕捉することができる。これら二重のエアトラップにより、上方通過部分(33)よりも下流側且つ鉛直下側に配置される調圧弁(SL1〜SL5)にエアが到達するのを、有効に回避することができる。よって、油圧回路内での油圧の立ち上がりを安定化することができ、係合装置(CL)の係合制御の応答性を高く維持することができる。その際、大気ドレンを行わないので、オイルポンプ(OP)の負荷を増大させることなく、係合装置(CL)の係合制御の応答性を高く維持することができる。
【0050】
一態様として、
前記メイン油路(30)と前記サブ油路(40)との分岐部(B)が前記上方通過部分(33)に設けられていることが好ましい。
【0051】
この構成によれば、仮に油圧回路中にエアが混入した場合に、その混入エアを上方通過部分(33)で捕捉しつつ、その捕捉した混入エアをそのままサブ油路(40)へと容易に導くことができる。よって、油圧回路中に混入したエアが調圧弁(SL1〜SL5)に到達するのを効果的に回避することができ、係合装置(CL)の係合制御の応答性を高く維持することができる。
【0052】
一態様として、
前記上方通過部分(33)が、上流側から下流側に向かって、上方へ向かう上昇油路(34)と下方へ向かう下降油路(36)とを有し、
前記分岐部(B)が、前記上方通過部分(33)における前記上昇油路(34)と前記下降油路(36)とを接続する接続部(35A)又は接続油路(35)に設けられていることが好ましい。
【0053】
この構成によれば、油圧回路中に混入したエアが調圧弁(SL1〜SL5)に到達するのをより一層効果的に回避することができ、係合装置(CL)の係合制御の応答性を高く維持することができる。
【0054】
一態様として、
前記サブ油路(40)が、前記変速装置(100)に設けられている油圧サーボに接続される油路以外の油路である非サーボ系油路に接続されていることが好ましい。
【0055】
この構成によれば、メイン油路(30)から調圧弁(SL1〜SL5)には向かわずにサブ油路(40)へと導かれたエアが、非サーボ系油路を通って、変速装置(100)内の油圧サーボ以外の要素に供給される。油圧サーボ以外の要素であれば、サブ油路(40)からのエアが混入しても、当該エアが調圧弁(SL1〜SL5)やそれに対応する係合装置(CL)の油圧サーボに混入する場合とは異なり、制御の応答性に影響が出ることがほとんどない。よって、変速装置(100)に備えられる係合装置(CL)以外の他の要素に影響を与えることなく、係合装置(CL)の係合制御の応答性を高く維持することができる。
【0056】
一態様として、
前記非サーボ系油路が、前記変速装置(100)内の潤滑対象部位又は冷却対象部位に接続される油路、若しくは、前記変速装置(100)に流体継手(TC)が備えられている場合における前記流体継手(TC)のトーラス部(TR)に接続される油路であることが好ましい。
【0057】
この構成によれば、サブ油路(40)からのエアの混入の影響をほとんど受けることなく、変速装置(100)内の潤滑対象部位を適切に潤滑し又は変速装置(100)内の冷却対象部位を適切に冷却することができる。或いは、サブ油路(40)からのエアの混入の影響をほとんど受けることなく、流体継手(TC)での油を介した動力伝達を適切に行うことができる。
【0058】
本開示に係る油圧制御装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができれば良い。