(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
<第1の実施形態>
[基本構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品の概略透視斜視図、
図2はその概略透視側面図、
図3はその概略透視上面図である。
なお、各図においてX軸、Y軸及びZ軸方向は相互に直交する3軸方向を示している。
【0022】
本実施形態の電子部品100は、表面実装用のコイル部品として構成される。電子部品100は、絶縁体部10と、内部導体部20と、外部電極30とを備える。
【0023】
絶縁体部10は、天面101、底面102、第1の端面103、第2の端面104、第1の側面105及び第2の側面106を有し、X軸方向に幅方向、Y軸方向に長さ方向、Z軸方向に高さ方向を有する直方体形状に形成される。絶縁体部10は、例えば、幅寸法が0.05〜0.3mm、長さ寸法が0.1〜0.6mm、高さ寸法が0.05〜0.5mmに設計される。本実施形態において、幅寸法は約0.125mm、長さ寸法は約0.25mm、高さ寸法は約0.2mmである。
【0024】
絶縁体部10は、本体部11と天面部12とを有する。本体部11は、内部導体部20を内蔵し、絶縁体部10の主要部を構成する。天面部12は、絶縁体部10の天面101を構成する。天面部12は、例えば電子部品100の型番等を表示する印刷層として構成されてもよい。
【0025】
本体部11及び天面部12は、樹脂を主体とする絶縁材料で構成される。本体部11を構成する絶縁材料としては、熱、光、化学反応等により硬化する樹脂が用いられ、例えば、ポリイミド、エポキシ樹脂、液晶ポリマ等が挙げられる。一方、天面部12は、上記材料のほか、樹脂フィルム等で構成されてもよい。
【0026】
絶縁体部10は、樹脂中にフィラーを含む複合材料が用いられてもよい。フィラーとしては、典型的には、シリカ、アルミナ、ジルコニア等のセラミック粒子が挙げられる。セラミックス粒子の形状は特に限定されず、典型的には球状であるが、これに限られず、針状、鱗片状等であってもよい。
【0027】
内部導体部20は、絶縁体部10の内部に設けられる。内部導体部20は、複数の柱状導体21と、複数の連結導体22とを有し、これら複数の柱状導体21及び連結導体22とによりコイル部20Lが構成される。
【0028】
複数の柱状導体21は、Z軸方向に平行な軸心を有する略円柱形状に形成される。複数の柱状導体21は、概略Y軸方向に相互に対向する2つの導体群で構成される。このうち一方の導体群を構成する第1の柱状導体211は、X軸方向に所定の間隔をおいて配列され、他方の導体群を構成する第2の柱状導体212も同様に、X軸方向に所定の間隔をおいて配列される。
なお、略円柱形状とは、軸直方向(軸心に垂直な方向)の断面形状が円形である柱体のほか、上記断面形状が楕円形または長円形である柱体をも含み、楕円形または長円形としては、例えば、長軸/短軸の比が3以下のものを意味する。
【0029】
第1及び第2の柱状導体211,212は、それぞれ同一径及び同一高さで構成される。図示の例において第1及び第2の柱状導体211,212は、それぞれ5本ずつ設けられている。後述するように、第1及び第2の柱状導体211,212は、複数のビア導体をZ軸方向に積層することで構成される。
なお、略同一径とは、抵抗の増加を抑制するためのもので、同一方向で見た寸法のバラツキが例えば10%以内に収まっていることをいい、略同一高さとは、各層の積み上げ精度を確保するためのもので、高さのバラツキが例えば1μmの範囲に収まっていることをいう。
【0030】
複数の連結導体22は、XY平面に平行に形成され、Z軸方向に相互に対向する2つの導体群で構成される。このうち一方の導体群を構成する第1の連結導体221は、Y軸方向に沿って延び、X軸方向に間隔をおいて配列され、第1及び第2の柱状導体211,212の間を個々に接続する。他方の導体群を構成する第2の連結導体222は、Y軸方向に対して所定角度傾斜して延び、X軸方向に間隔をおいて配列され、第1及び第2の柱状導体211,212の間を個々に接続する。図示の例において、第1の連結導体221は5つの連結導体で構成され、第2の連結導体222は4つの連結導体で構成される。
【0031】
図1において、第1の連結導体221は、所定の一組の柱状導体211,212の上端に接続され、第2の連結導体222は、所定の一組の柱状導体211,212の下端に接続される。より詳細には、第1及び第2の柱状導体211,212と第1及び第2の連結導体221,222は、X軸方向のまわりに矩形の螺旋を描くように相互に接続される。これにより、絶縁体部10の内部において、X軸方向に軸心(コイル軸)を有する開口形状が矩形のコイル部20Lが形成される。
【0032】
内部導体部20は、引出し部23と、櫛歯ブロック部24とをさらに有し、これらを介してコイル部20Lが外部電極30(31,32)へ接続される。
【0033】
引出し部23は、第1の引出し部231と、第2の引出し部232とを有する。第1の引出し部231は、コイル部20Lの一端を構成する第1の柱状導体211の下端に接続され、第2の引出し部232は、コイル部20Lの他端を構成する第2の柱状導体212の下端に接続される。第1及び第2の引出し部231,232は、第2の連結導体222と同一のXY平面上に配置されており、Y軸方向に平行に形成される。
【0034】
櫛歯ブロック部24は、Y軸方向に相互に対向するように配置された第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242を有する。第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242は、各々の櫛歯部の先端を
図1において上方へ向けて配置される。絶縁体部10の両端面103,104及び底面102には、櫛歯ブロック部241,242の一部が露出している。第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242各々の所定の櫛歯部の間には、第1及び第2の引出し部231,232がそれぞれ接続される(
図3参照)。第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242各々の底部には、外部電極30の下地層を構成する導体層301,302がそれぞれ設けられる(
図2参照)。
【0035】
外部電極30は、表面実装用の外部端子を構成し、Y軸方向に相互に対向する第1及び第2の外部電極31,32を有する。第1及び第2の外部電極31,32は、絶縁体部10の外面の所定領域に形成される。
【0036】
より具体的に、第1及び第2の外部電極31,32は、
図2に示すように、絶縁体層10の底面102のY軸方向両端部を被覆する第1の部分30Aと、絶縁体層10の両端面103,104を所定の高さにわたって被覆する第2の部分30Bとを有する。第1の部分30Aは、導体層301,302を介して第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242の底部に電気的に接続される。第2の部分30Bは、第1及び第2の櫛歯ブロック部241,242の櫛歯部を被覆するように絶縁体層10の端面103,104に形成される。
【0037】
柱状導体21、連結導体22、引出し部23、櫛歯ブロック部24及び導体層301,302は、例えば、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)等の金属材料で構成され、本実施形態ではいずれも銅又はその合金のめっき層で構成される。第1及び第2の外部電極31,32は、例えばNi/Snめっきで構成される。
【0038】
図4は、電子部品100の上下を反転して示す概略透視側面図である。電子部品100は、
図4に示すように、フィルム層L1と、複数の電極層L2〜L6の積層体で構成される。本実施形態では、天面101から底面102に向けてフィルム層L1及び電極層L1〜L6をZ軸方向に順次積層することで作製される。層の数は特に限定されず、ここでは6層として説明する。
【0039】
フィルム層L1及び電極層L2〜L6は、当該各層を構成する絶縁体部10及び内部導体部20の要素を含む。
図5A〜Fはそれぞれ、
図4におけるフィルム層L1及び電極層L2〜L6の概略上面図である。
【0040】
フィルム層L1は、絶縁体部10の天面101を形成する天面部12で構成される(
図5A)。電極層L2は、絶縁体部10(本体部11)の一部を構成する絶縁層110(112)と、第1の連結導体221とを含む(
図5B)。電極層L3は、絶縁層110(113)と、柱状導体211,212の一部を構成するビア導体V1とを含む(
図5C)。電極層L4は、絶縁層110(114)、ビア導体V1のほか、櫛歯ブロック部241,242の一部を構成するビア導体V2を含む(
図5D)。電極層L5は、絶縁層110(115)、ビア導体V1,V2のほか、引出し部231,232や第2の連結導体222を含む(
図5E)。そして、電極層L6は、絶縁層110(116)と、ビア導体V2とを含む(
図5F)。
【0041】
電極層L2〜L6は、接合面S1〜S4(
図4)を介して高さ方向に積層される。したがって各絶縁層110やビア導体V1,V2は、同じく高さ方向に境界部を有する。そして電子部品100は、各電極層L2〜L6を、電極層L2から順に作製しながら積層するビルドアップ工法により製造される。
【0042】
[基本製造プロセス]
続いて、電子部品100の基本製造プロセスについて説明する。電子部品100は、ウェハレベルで複数個同時に作製され、作製後に素子毎に個片化(チップ化)される。
【0043】
図6〜
図8は、電子部品100の製造工程の一部を説明する素子単位領域の概略断面図である。具体的な製造方法としては、支持基板S上に天面部12を構成する樹脂フィルム12A(フィルム層L1)が貼着され、その上に電極層L2〜L6が順次作製される。支持基板Sには、例えば、シリコン、ガラス、あるいはサファイア基板が用いられる。典型的には、内部導体部20を構成する導体パターンを電気めっき法により作製し、その導体パターンを絶縁性樹脂材料で被覆して絶縁層110を作製する工程が繰り返し実施される。
【0044】
図6及び
図7は、電極層L3の製造工程を示している。
【0045】
この工程では、まず、電極層L2の表面に電気めっきのためのシード層(給電層)SL1が例えばスパッタ法等により形成される(
図6A)。シード層SL1は導電性材料であれば特に限定されず、例えば、Ti(チタン)又はCr(クロム)で構成される。電極層L2は、絶縁層112と、連結導体221とを含む。連結導体221は、樹脂フィルム12Aと接するように絶縁層112の下面に設けられる。
【0046】
続いて、シード層SL1の上にレジスト膜R1が形成される(
図6B)。レジスト膜R1に対する露光、現像等の処理が順に行われることで、シード層SL1を介して、柱状導体21(211,212)の一部を構成するビア導体V13に対向する開口部P1を有するレジストパターンが形成される(
図6C)。その後、開口部P1内のレジスト残渣を除去するデスカム処理が行われる(
図6D)。
【0047】
続いて、支持基板SがCuめっき浴に浸漬され、シード層SL1への電圧印加によって開口部P1内にCuめっき層からなる複数のビア導体V13が形成される(
図6E)。そして、レジスト膜R1及びシード層SL1が除去された後(
図7A)、ビア導体V13を被覆する絶縁層113が形成される(
図7B)。絶縁層113は、樹脂材料を電極層L2の上に印刷、塗布、あるいは樹脂フィルムを貼着した後、硬化させる。硬化後、CMP(化学的機械的研磨装置)やグラインダ等の研磨装置を用いて、ビア導体V13の先端が露出するまで絶縁層113の表面が研磨される(
図7C)。
図7Cは、一例として、支持基板Sがその上下を反転して自転可能な研磨ヘッドHにセットされ、公転する研磨パッドPで絶縁層113が研磨処理(CMP)が行われている様子を示している。
以上のようにして、電極層L2の上に電極層L3が作製される(
図7D)。
【0048】
なお、絶縁層112の形成方法について記載を省略したが、典型的には、絶縁層112もまた、絶縁層113と同様に印刷、塗布、あるいは貼着した後、硬化させ、CMP(化学的機械的研磨装置)やグラインダ等により研磨を行う方法で作製される。
【0049】
以後同様にして、電極層L3の上に電極層L4が作製される。
【0050】
まず、電極層L3の絶縁層113(第2の絶縁層)上に、複数のビア導体V13(第1のビア導体)と接続される複数のビア導体(第2のビア導体)が形成される。すなわち、上記第2の絶縁層の表面に上記第1のビア導体の表面を被覆するシード層が形成され、上記シード層の上に、上記第1のビア導体の表面に対応する領域が開口するレジストパターンが形成され、上記レジストパターンをマスクとする電気メッキ法により上記第2のビア導体が形成される。続いて、上記第2の絶縁層上に、上記第2のビア導体を被覆する第3の絶縁層が形成される。その後、上記第2のビア導体の先端が露出するまで上記第3の絶縁層の表面が研磨される。
【0051】
なお、上記第2のビア導体の形成工程においては、櫛歯ブロック部24(241,242)の一部を構成するビア導体V2もまた同時に形成される(
図4、
図5D参照)。この場合、上記レジストパターンとして、上記第2のビア導体の形成領域のほか、ビア導体V2の形成領域が開口するレジストパターンが形成される。
【0052】
図8A〜Dは、電極層L5の製造工程の一部を示している。
【0053】
ここでもまず、電極層L4の表面に、電気めっき用のシード層SL3と、開口部P2,P3を有するレジストパターン(レジスト膜R3)とが順に形成される(
図8A)。その後、開口部P2,P3内のレジスト残渣を除去するデスカム処理が行われる(
図8B)。
【0054】
電極層L4は、絶縁層114と、ビア導体V14,V24とを有する。ビア導体V14は、柱状導体21(211,212)の一部を構成するビア(V1)に相当し、ビア導体V24は櫛歯ブロック部24(241,242)の一部を構成するビア(V2)に相当する(
図5C,D参照)。開口部P2は、シード層SL3を介して電極層L4内のビア導体V14と対向し、開口部P3は、シード層SL3を介して電極層L4内のビア導体V24と対向する。開口部P2は、各連結導体222に対応する形状に形成される。
【0055】
続いて、支持基板SがCuめっき浴に浸漬され、シード層SL3への電圧印加によって開口部P2,P3内にCuめっき層からなるビア導体V25と連結導体222とがそれぞれ形成される(
図8C)。ビア導体V25は、櫛歯ブロック部24(241,242)の一部を構成するビア(V2)に相当する。
【0056】
続いて、レジスト膜R3及びシード層SL3が除去され(
図8D)、ビア導体V25と連結導体222とを被覆する絶縁層115が形成される。その後図示せずとも、ビア導体V25の先端が露出するまで絶縁層115の表面が研磨され、さらにシード層の形成、レジストパターンの形成、電気めっき処理等の工程を繰り返すことで、
図4及び
図5Eに示す電極層L5が作製される。
【0057】
その後、絶縁層115の表面(底面102)に露出する櫛歯ブロック部24(241,242)に導体層301,302が形成された後、第1及び第2の外部電極31,32がそれぞれ形成される。
【0058】
[本実施形態の構造]
近年における部品の小型化に伴い、導体部の微細化あるいは導体部の断面積の微小化が進む一方で、導体間の絶縁性確保だけでなく、導体の電気的特性の劣化を阻止することが益々重要な問題となっている。特に絶縁体が樹脂で構成される電子部品においては、絶縁体がセラミックスなどで構成される電子部品と比較して、環境による影響を受けやすく、特に導体の微細化に伴い、導体の酸化等も無視できなくなっている。
【0059】
図9に、相互に積層された2つの電極層における接合部の断面構造を模式的に示す。下層側の絶縁層LS1は、接合面SAを介して上層側の絶縁層LS2に接合されており、下層側のビア導体VS1は、コンタクト部CAを介して上層側のビア導体VS2に接合される。コンタクト部CAは、2つのビア導体VS1,VS2の間に介在するシード層SLに相当し、シード層SLの両面がビア導体VS1,VS2とのコンタクト面を構成する。
【0060】
ここで、ビア導体VS1、VS2は金属銅で構成され、それらの周面は、絶縁層LS1,LS2にそれぞれ直接的に接している。絶縁層LS1,LS2は樹脂を主体とする材料で構成される。したがって、部品完成後に実施される特性評価試験(高温多湿試験)あるいは実使用環境中の温湿度の影響等を受けて、ビア導体VS1,VS2の酸化が進行し、その導電特性が経時的に劣化するおそれがある。
【0061】
このような問題を解消するため、本実施形態の電子部品100においては、
図10に示すように、柱状導体21を構成する複数のビア導体VS1,VS2がそれぞれ、導体部本体Vmと、その周面に設けられた外層被膜Vcとを有し、外層被膜Vcが導体部本体Vmの酸化を抑制する不動態被膜として機能するように構成されている。
【0062】
以下、本実施形態の電子部品100の構造の詳細について説明する。
【0063】
本実施形態の電子部品100は、上述のように、絶縁体部10と、内部導体部20とを有する。絶縁体部10は、樹脂を含む材料で構成される。内部導体部20は、複数の柱状導体21(211,212)を有し、絶縁体部10の内部に設けられる。複数の柱状導体21はそれぞれ、導体部本体Vmと、導体部本体Vmの周面に設けられ、導体部本体Vmよりも高抵抗の外層被膜Vcとを有する。
【0064】
本実施形態において外層被膜Vcは、導体部本体Vmの酸化等を防止する不動態被膜として機能し、隣接する複数の柱状導体21間の絶縁性を確保しつつ、環境変化による柱状導体21の導電特性の劣化を抑える。すなわち外層被膜Vcの存在により、環境変化の影響による導体部本体Vmの更なる酸化を防止することができる。
【0065】
ここで、導体部本体Vmは、金属材料で構成され、本実施形態では銅(Cuめっき層)で構成される。一方、外層被膜Vcは、導体部本体Vmを構成する金属材料の酸化物で構成され、本実施形態では酸化銅で構成される。
【0066】
外層被膜Vcの厚みは特に限定されず、導体部本体Vmの直径、外径、あるいは太さ等に応じて適宜設定可能であり、典型的には、5nm以上5μm以下である。外層被膜Vcの厚みを上記範囲とすることで、欠陥の少ない外層被膜Vcを安定に形成することができ、隣接する柱状導体21間におけるショート不良の発生を防止することができる。
【0067】
外層被膜Vcは、導体部本体Vmの酸化物に限られず、窒化物や炭化物、硫化物、酸窒化物等の他の化合物であってもよい。また外層被膜Vcは、導電体本体Vmを構成する金属以外の金属材料の酸化物等で構成されてもよい。
【0068】
図10に示すように、下層側のビア導体VS1は、上層側のビア導体VS2に対してコンタクト部CAを介して接続されている。コンタクト部CAは、上述のようにZ軸方向に隣接する2つのビア導体VS1,VS2の間に介在するシード層SLに相当し、シード層SLの両面がビア導体VS1,VS2とのコンタクト面を構成する。コンタクト部CAの厚みは特に限定されず、例えば5nm以上20nm以下であり、本実施形態では10nmである。ビア導体VS1,VS2は、チタン又はクロムで構成されるが、絶縁層LS1,LS2に接する周面部にもこれらチタン又はクロムの酸化物被膜が形成されてもよい。
【0069】
さらに外層被膜Vcは、通常、導体部本体Vmよりも硬度が上昇するため、柱状導体21が外層被膜Vcを有することで、外層被膜Vcがない場合と比較して、柱状導体21の機械的な強度を高めることが可能となる。
【0070】
なお
図11Aに示すように、ビア導体VS1,VS2間のコンタクト部CAが、絶縁層LS1,LS2間の接合面SAに対してZ軸方向にオフセットした位置(接合面SAよりも絶縁層LS1の内部の位置)に設けられてもよい。これにより
図11Bに模式的に示すように、絶縁層LS2の硬化処理に伴う収縮応力(σ1)や、絶縁層LS2とビア導体VS2との間の熱膨張率差に起因する熱応力(σ2)が、コンタクト部CAに集中することを回避でき、内部導体部20の信頼性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0071】
外層被膜Vcは、柱状導体21(211,212)の周面だけでなく、連結導体22(221,222)の周面の一部に設けられてもよい。周面の一部としては、連結導体22のコンタクト面(シード層と接触する面)を除くすべての表面に相当する。これにより環境変化に起因する連結導体22の酸化を阻止して、導電特性の経時劣化を効果的に防止することができる。
【0072】
図12A,Bはそれぞれ、電子部品100の内部構造(コイル部20L)を模式的に示すX軸及びY軸方向から見た側断面図である。
図12A,Bにおいてハッチングで示す領域は、電極層L2〜L5に設けられた柱状導体21(211,212)及び連結導体22(221,222)にそれぞれ相当する。
【0073】
図12A,Bにおいて太実線で示す領域(面)が外層被膜Vcの形成領域に相当し、一点鎖線で示す領域(面)がコンタクト面を構成するシード層の形成領域に相当する。このように、絶縁体部10と接触する柱状導体21及び連結導体22のすべての面に外層被膜Vcが設けられることで、絶縁体部10内の酸素による導体部の過剰な酸化が抑制され、内部導体20の安定した電気特性が確保される。なお図示せずとも、コイル部20L以外の他の導体部(例えば櫛歯ブロック部24)の表面にも同様な外層被膜Vcが形成されてもよい。
【0074】
外層被膜Vcの形成方法としては、例えば、電子部品100を加熱炉に装填して加熱する処理が実施されてもよい。加熱温度は特に限定されず、例えば100〜250℃であり、加熱時間も特に限定されず、例えば1〜12時間である。ただし、当該加熱処理は、加熱温度が高い場合は加熱時間を短く、加熱温度が低い場合は加熱時間を長くすることで行われる。加熱処理雰囲気は、大気中であってもよいし、耐久試験用の高温多湿環境であってもよい。絶縁体層10中の酸素によって、内部導体部20の表面に当該導体部を構成する金属材料の酸化物からなる外層被膜を形成しつつ、絶縁体部10の樹脂の劣化を抑えることができる。
【0075】
なお加熱温度としては実使用環境の温度より高い温度に設定される。例えば加熱温度を実使用環境の温度より10〜30℃高くする。この温度で加熱すると、実使用環境下での内部導体20の変化が抑えられることになる。また、この方法で形成した外層被膜Vcは、当該導体部を構成する金属材料の酸化物であるため当該導体部が露出することはなく、厚みを薄くしても欠陥の無いものとなる。
【0076】
上記以外の方法として、例えば、電気めっきによるビア導体の形成後、絶縁層の形成前に、外層被膜Vcの形成処理が実施されてもよい。この場合、ビア導体に対する熱酸化処理や各種絶縁材料のコーティング処理等が採用可能である。
【0077】
以上のように本実施形態の電子部品100によれば、柱状導体21や連結導体22の導体部本体Vmの周面あるいは表面に、当該導体部本体よりも高抵抗の外層被膜Vcが設けられているため、絶縁体部10内における導体部間の絶縁特性を確保できるとともに、環境変化による内部導体部の導電特性の劣化を抑えることができる。
【0078】
本発明者らは、外層被膜Vcを有する電子部品のサンプルと、外層被膜を有しない電子部品のサンプルについて、高温試験(150℃、1000時間)を行ったときの試験前後における内部導体部の抵抗値の変化を測定した。その結果、外層被膜を有しない電子部品の抵抗値の変化は5%であったのに対して、外層被膜を有する電子部品の抵抗値の変化は1%以下であった。
【0079】
また本実施形態によれば、絶縁層の表面を研削してビア導体を外部へ露出させる工程において発生し得るビア導体の端部の伸び(バリ)などによって、導体間距離が非常に近い部分が生じたとしても、この部分は外層被膜Vcの形成工程において酸化されるため、上記バリによる導体間のショート不良が防止される。
【0080】
さらに、内部導体部を構成する導体間のいずれかの面に外層被膜Vcのような酸化膜が存在することで、マイグレーションの抑制にもつながる。特に、コイル部品では、導体部の構成材料として銅を用いることで、マイグレーションを効果的に抑制し、安定したコイル特性を確保することができるとともに、内部導体部の微細化を図ることが可能となる。例えば、銅と同様に比抵抗の小さい金属材料として銀を導体材料として用いる場合、その導体間距離として15μm必要とされていたのを、銅を用いことによって導体間距離を5μmにまで小さくすることができる。
【0081】
<第2の実施形態>
図13は、本発明の第2の実施形態に係る電子部品を示す概略断面斜視図である。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0082】
本実施形態の電子部品200は、絶縁体部2010と、内部導体部2020とを有し、内部導体部2020がZ軸方向のまわりに巻回されたコイル部200Lを含むコイル部品で構成されている。本実施形態においてコイル部200Lは、Z軸方向に絶縁層を挟んで積層される複数(本例では3層)の周回部2021〜2023を有する積層型コイルで構成される。
【0083】
絶縁体部2010は、第1の実施形態と同様に、樹脂を主体とする材料で構成され、Z軸方向に積層された複数の絶縁層LS20を含む。電子部品200は、下層側(又は上層側)から順次、絶縁層LS20及び周回部2021〜2023が交互にビルドアップされることで作製される。
【0084】
各々の周回部2021〜2023は、銅、ニッケル又は銀で構成され、下地となる絶縁層LS20上に電気めっき法により形成される。Z軸方向に相互に対向する周回部2021〜2023の間は、図示しないビアを介して電気的に接続される。このように構成されるコイル部200Lの一端は、一方の外部電極E1に、他端は他方の外部電極E2に、それぞれ電気的に接続される。
【0085】
各周回部2021〜2023は、第1の実施形態と同様に、導体部本体Vmと、外層被膜Vcと、コンタクト部CAとを有する。コンタクト部CAは、図において一点鎖線で示される領域(周回部2021〜2023の下面)に設けられ、電気めっきのシード層で構成される。外層被膜Vcは、コンタクト部CA以外の絶縁層LS20と接する導体部本体Vmの周面(上面及び側面)に形成され、導体部本体Vmを構成する金属材料の酸化物で構成される。
【0086】
以上のように構成される本実施形態の電子部品200においても上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に本実施形態によれば、積層方向(Z軸方向)に対向する周回部2021〜2023の一方の面に、導体部本体Vmよりも高抵抗の外層被膜Vcが介在しているため、周回部2021〜2023間に位置する絶縁層LS20の厚みを小さくしても所望の絶縁特性を確保することができる。これにより、電子部品200の薄型化を図ることができる。
【0087】
<第3の実施形態>
図14は、本発明の第3の実施形態に係る電子部品を示す概略断面斜視図である。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0088】
本実施形態の電子部品300は、絶縁体部3010と、内部導体部3020とを有し、内部導体部3020がZ軸方向のまわりに巻回されたコイル部300Lを含むコイル部品で構成されている。本実施形態においてコイル部300Lは、Z軸方向に同心的に形成された複数(本例では3つ)の周回部3021〜3023を有する平面型コイル(渦巻型コイル)で構成される。
【0089】
絶縁体部3010は、第1の実施形態と同様に、樹脂を主体とする材料で構成され、Z軸方向に積層された複数の絶縁層LS30を含む。電子部品300は、下層側(又は上層側)から順次、絶縁層LS30及び周回部3021〜3023が交互にビルドアップされることで作製される。
【0090】
各々の周回部3021〜3023は、銅、ニッケル又は銀で構成され、下地となる絶縁層LS20上に電気めっき法により形成される。各周回部3021〜3023は、Z軸まわりに連続するように相互に接続される。このように構成されるコイル部300Lの一端は、一方の外部電極E1に、他端は他方の外部電極E2に、それぞれ電気的に接続される。
【0091】
各周回部3021〜3023は、第1の実施形態と同様に、導体部本体Vmと、外層被膜Vcと、コンタクト部CAとを有する。コンタクト部CAは、図において一点鎖線で示される領域(周回部3021〜3023の下面)に設けられ、電気めっきのシード層で構成される。外層被膜Vcは、コンタクト部CA以外の絶縁層LS30と接する導体部本体Vmの周面(上面及び側面)に形成され、導体部本体Vmを構成する金属材料の酸化物で構成される。
【0092】
以上のように構成される本実施形態の電子部品300においても上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に本実施形態によれば、積層方向(Z軸方向)に直交する方向に対向する周回部3021〜3023の一方の面に、導体部本体Vmよりも高抵抗の外層被膜Vcが介在しているため、周回部3021〜3023間に位置する絶縁層LS30の幅を小さくしても所望の絶縁特性を確保することができる。これにより、電子部品200の小型化、周回部の多重化(巻き数の増加)を図ることができる。
【0093】
<第4の実施形態>
図15は、本発明の第4の実施形態に係る電子部品を示す概略側断面図である。なお理解を容易にするため、内部導体部に相当する領域を斜線で示している。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0094】
本実施形態の電子部品400は、絶縁体部10と、内部導体部20と、外部電極30とを有し、第1の実施形態と同様にコイル部品を構成する点で第1の実施形態と共通するが、内部導体部20が2つのコイル部21L,22Lを有する点で、第1の実施形態と異なる。
【0095】
すなわち本実施形態の電子部品400は、絶縁体部10に2つのコイル部21L,22Lが内蔵されているとともに、絶縁体部10の底面102に3つの外部電極331,332,3333が設けられている。そして、一方のコイル部21Lは、外部電極331,333間に接続され、他方のコイル部22Lは、外部電極332,333間に接続されている。
【0096】
コイル部の数は図示する2つに限られず、3つ以上であってもよい。外部電極30の数も図示する3つに限られず、コイル部の数に応じて適宜設定可能である。本実施形態によれば、複数のコイル部品を1つの部品に集約することができる。
【0097】
<第5の実施形態>
図16は、本発明の第5の実施形態に係る電子部品を示す概略側断面図である。なお理解を容易にするため、内部導体部に相当する領域を斜線で示している。
以下、第4の実施形態と異なる構成について主に説明し、第2の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0098】
本実施形態の電子部品500は、絶縁体部10と、内部導体部20と、外部電極30とを有し、内部導体部20が2つのコイル部21L,22Lを含む点で第4の実施形態と共通するが、内部導体部20が2つの容量素子部21C,22Cをさらに有する点で、第4の実施形態と異なる。
【0099】
容量素子部21Cは、コイル部21Lと絶縁体部10の底面102との間に設けられ、外部電極331,333に対してコイル部21Lと並列的に接続される。一方、容量素子部22Cは、コイル部22Lと絶縁体部10の底面102との間に設けられ、外部電極332,333に対してコイル部22Lと並列的に接続される。
【0100】
各容量素子部21C,22Cは、コイル部21L,22Lの一端に接続された第1の内部電極層と、コイル部21L,22Lの他端に接続された第2の内部電極層とを有する。第2の内部電極層は、第1の内部電極層とZ軸方向に対向して容量を形成する。容量素子21C,22Cは、コイル部21L,22Lと外部電極331〜333との間に配置されることにより、LC一体型の電子部品500が構成される。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0102】
例えば以上の実施形態では、電子部品が天面側から底面側に向かって絶縁層及びビア導体を順次積層する方法について説明したが、これに限られず、底面側から天面側に向かって絶縁層及びビア導体が順次積層されてもよい。
【0103】
さらに以上の実施形態では、電子部品として、コイル部品、LC部品を例に挙げて説明したが、これ以外にも、コンデンサ部品、抵抗部品、多層配線基板等、内部導体部を有し高さ方向に層単位でビルドアップしていく他の電子部品にも、本発明は適用可能である。