(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記他方の金型部側に設けられ、前記一対の金型部が型締めされたときに前記コアが収容されることによって前記胴部成形用キャビティを形成する胴部成形用ブロックを備え、
前記胴部成形用ブロックは、前記一対の金型部の型開き方向と直交する方向へ分割される複数のブロックによって構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のシリンダ成形用金型。
前記他方の金型部側に設けられ、型開き方向へ前記胴部成形用ブロックとは相対的に移動し、その相対的な移動距離に応じた距離だけ前記複数のブロックを分割方向に移動させるカム機構をさらに備えている請求項4に記載のシリンダ成形用金型。
【背景技術】
【0002】
先端の筒状突起に注射針が装着され、内部にプランジャを押し込んで薬液封入部を構成するシリンジの外筒(以下、シリンダという。)として、近年、合成樹脂により射出成形されたものが普及している。シリンダを成形するための射出成形金型に設けられるシリンダ成形用キャビティは、シリンダの外面を形成するための凹部である外面形成型部とシリンダの内面を形成するためのコアによって形成される。
【0003】
シリンダ成形用金型は互いに対向する面を有する一対の金型部からなり、それらの型のうちいずれか一方の金型部側に外面形成型部が設けられ、他方の金型部側にコアが設けられる。コアは一対の金型部の型開き方向に伸びるように設けられており、外面形成型部はそのコアを内部に収容するように設けられている。そして、これら一対の金型部が型締めされたときにコアが外面形成型部内に挿入され、外面形成型部の内周面とコアの外周面との間の隙間がシリンダを成形するためのキャビティをなす。
【0004】
こうしてシリンダ成形用キャビティの長手方向が型開き方向と平行になるように構成されたキャビティに溶融樹脂が充填された後、充填樹脂が冷却固化されて型開きが行われ、コア側に残った成形品は突き出されて金型から取り出される。
【0005】
ここで、合成樹脂製シリンダを成形するための射出成形金型において、キャビティのゲート口まで溶融樹脂を供給するためのランナとしてコールドランナを用いたり、あるいはコールドランナとホットランナを組合せたセミホットランナを用いたりする場合がある。ランナの一部にコールドランナを採用すると、コールドランナ部分の樹脂は成形サイクル毎に捨てざるを得ず、樹脂ロスが大きくなる。また、成形速度や一つの金型での成形品取り数にも限界が生じる。
【0006】
これらの不具合をなくすために、コールドランナ部分を持たないフルホットランナを採用するとともに、フルホットランナの一種であるサイドゲート型ダイレクトホットランナノズルを採用した金型が提案されている(特許文献1、特許文献2参照。)。
【0007】
サイドゲート型ダイレクトホットランナノズル構成の金型では、金型型開き方向と平行な方向にホットランナノズルの本体部が設けられ、その本体部の先端に、型開き方向と直交する方向に開口するノズル開口部が設けられている。ノズル開口部は、シリンダの鍔部を形成するための鍔部形成用キャビティの周縁部に通じている。シリンダの胴部を形成するための胴部成形用キャビティは、その長手方向が金型の型開き方向と平行になるように、金型の内側に設けられている。
【0008】
キャビティに溶融樹脂を注入するゲートの位置は、シリンダ形成用キャビティのいずれの部分であってもよい。しかし、溶融樹脂射出注入時において高圧の射出樹脂圧によるコアのブレや偏芯を少なくするために、コアの先端部よりもコアの基端部に近い方が好ましい。さらに、成形品に残されたゲート跡が目立たないことが好ましい。これらの理由から、特許文献1,2にも示されているように、鍔部形成用キャビティの周縁外側面に通ずる位置にゲートが設けられることが多い。
【0009】
ここで、シリンダ成形用金型においては、一対の金型部のうちホットランナノズルが設けられている一方の金型部側に外面形成型部、他方の金型部側にコアを設ける場合がある(例えば、特許文献2参照。)。その場合、外面形成型部内に形成されるキャビティと隣接する位置にホットランナノズルの本体部が並行して存在することになり、ホットランナノズルの本体部が妨げとなって、キャビティに樹脂を充填した後で樹脂を冷却するための冷却用水管をキャビティの周囲に効率よく配置することが困難である。
【0010】
そこで、金型を構成する一対の金型部のうちホットランナノズルが設けられている一方の金型部側にコアを設け、他方の金型部側に外面形成型部を設けることが提案され(特許文献1参照。)、実施もなされている。かかる構造にすることで、ホットランナノズルの本体部がキャビティと隣接する位置に存在せず、冷却用水管をキャビティの周囲に効率よく配置することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ホットランナノズルが設けられている一方の金型部側にコアを設ける場合、鍔部成形用キャビティの当該一方の金型部側の壁面をなす型ブロックは、コア及びホットランナノズルとは相対的にコアの軸方向へ移動可能に設けられる必要があるため、ホットランナノズルからの溶融樹脂を吐出するゲートを形成するゲートブロックとは別部材として設けられる。当該型ブロックは、キャビティ内の樹脂が冷却固化されて成形されたシリンダの鍔部をコアの先端側へ押し出すことによってコアから離型させる押出し部材としての役目をもなすものである。
【0013】
この型ブロックは、前記一方の金型部において外面形成型部の開口部に対向するように設けられている。型ブロックにはコアを貫通させる貫通穴が設けられており、型締め後にはコアと型ブロックの間に溶融樹脂が入り込んで成形品にバリが生じないようにキャビティ側から見て隙間なく密着されなければならないので、型ブロックの貫通孔内周面とコア外周面との密着性の精度維持が要求される。
【0014】
このような金型では、鍔部の大きいシリンダを成形する分には問題がなかった。すなわち、鍔部が大きい場合には、コアとゲートとの間の間隔が広くなるため、型ブロックにおいてコア外周面と密着する部分(貫通穴の周囲)も大きくすることができ、ある程度の強度を確保できる。
【0015】
しかし、鍔部の小さいシリンダを成形しようとすると、コアとゲートの間の間隔が狭くなり、型ブロックのコア外周面と密着している、特にゲート側部分の肉厚が薄くなって強度が不足するおそれがある。また、型ブロックの厚みが薄いと、成形時に繰り返す高射出樹脂圧の印加や型開閉動作に耐えることができず、さらに強度劣化をきたすという問題がある。型ブロックの強度が不足すると、特にそのコアとゲート間の部分に歪等の劣化を生じ、型ブロックとコアとの密着精度を維持できなくなって溶融樹脂が入り込み成形品にバリを生じ易くなる。そのため、従来のサイドゲート型ホットランナノズルを用いる金型では、鍔部の小さなシリンダ、特に小型のシリンダを成形することに適しているとはいえなかった。
【0016】
そこで、本発明は、鍔部の小さなシリンダを高精度に成形することができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るシリンダ成形用金型は、互いの対向面が重ね合わされた状態で互いに型締めされる一対の金型部により構成される。前記一対の金型部のうちいずれか一方の金型部にはコアが設けられている。コアは、先端が他方の金型部に向かって伸びている。前記一対の金型部が型締めされたときに前記他方の金型部側に前記コアが収容されることによって胴部成形用キャビティが形成される。胴部成形用キャビティは、前記一方の金型部側を基端部とするシリンダの胴部を成形するためのものである。前記一対の金型部が型締めされたときに、前記一方の金型部と前記他方の金型部の互いの対向面の間であって前記胴部成形用キャビティの前記一方の金型部側端部の周縁に、鍔部成形用キャビティも形成される。鍔部成形用キャビティは、シリンダの基端に設けられる鍔部を成形するためのものである。
【0018】
さらに、本発明に係るシリンダ成形用金型は、ホットランナノズル、ゲートブロック及び押出し部材を備えている。ホットランナノズルは、前記コアの軸方向に対して垂直な方向に溶融樹脂を吐出する。ゲートブロックは前記一方の金型部側に設けられ、前記一対の金型部が型締めされたときに前記鍔部成形用キャビティの周縁端部にくる位置に、前記ホットランナノズルの吐出口に通じるゲートを有する。また、ゲートブロックは、前記鍔部成形用キャビティの前記一方の金型部側の面の一部をなしている。押出し部材は前記一方の金型部側に設けられ、前記一対の金型部が型締めされていない状態において前記コアとは相対的に前記コアの軸方向へ移動可能に設けられている。押出し部材は、前記鍔部成形用キャビティの前記一方の金型部側の面のうち前記ゲートブロック以外の部分をなし、前記コアとは相対的に前記コアの先端側へ移動させられることによって前記コアの外周に成形されたシリンダの鍔部を前記コアの先端側へ押圧し、そのシリンダを前記コアから離型させるものである。
【0019】
すなわち、本発明に係るシリンダ成形用金型は、鍔部成形用キャビティの前記一方の金型部側の面がゲートブロックと押出し部材によって形成されている。これにより、ゲートとコアとの間の間隔が狭い場合でも、鍔部成形用キャビティの前記一方の金型部側の面を構成する型部材とコアとの型締め時における密着精度を低下させることなく維持することができる。
【0020】
従来の金型構造では、成形品をコアから離型させる押出し部材を兼ねた型ブロックは、コアを貫通させる貫通穴の内周面でコアの外周面を保持してコアの位置決めを行なう役割も担っていた。型ブロックの貫通穴はコアの先端側へいくほど内径が小さくなるように内周面が傾斜したテーパ形状になっており、型締め時には、型ブロック内側のテーパ形状面にてコアの外周面と圧接触してコアの外周面をしっかりと保持することで、コアの軸心の位置決めを行ない、コアの位置ずれを防止する。このように、型ブロックは、コアの位置決めをも行なうものであるから、一定の強度が要求される。
【0021】
しかし、鍔部の小さいシリンダを成形しようとすると、コアとゲートの間の間隔が狭くなり、型ブロックにおいてコアを保持している特にゲート側部分の肉厚が薄くなり、コアを位置決めしておくための強度が不足する。そうすると、型締めした際にコアの基部を強固に安定的に支えることができなくなり、溶融樹脂の射出時に射出圧によってコアのブレを発生させ、シリンダの肉厚ムラをきたして成形品不良を生じるという問題がある。
【0022】
そこで、本発明に係るシリンダ成形用金型においては、一対の金型部が型締めされた状態でゲートブロックの側面と押出し部材の側面によって形成され、コアの鍔部成形用キャビティよりも基端側部分の外周面に接してコアを支持するコア支持部を備えていることが好ましい。コア支持部がゲートブロックの側面と押出し部材の側面によって形成されているので、鍔部の小さいシリンダを形成する場合にも、成形時に繰り返される大きな射出樹脂圧の印加や金型開閉動作に対してコアを支持するコア支持部の強度を十分に確保することができ、コアの軸心ずれによる成形不良を防止することができる。これにより、金型を鍔部の小さいシリンダの成形に適したものとすることができる。
【0023】
本発明は鍔部の小さい注射器シリンダの成形を行なう上で特に効果を奏する発明であるが、鍔部の小さいシリンダには、シリンダ自体が小型のものと、シリンダ自体は比較的大型ではあるが鍔部が相対的に小さいシリンダとがある。小型のシリンダでも胴部の径に対して長さが比較的長いシリンダ等の場合、たとえコアの基部が安定に保持されているとしても、成形時においてシリンダ成形キャビティの鍔部周縁部の1箇所のゲートから溶融樹脂を射出注入すると、コアが長いため射出時の樹脂圧により成形品の特に鍔部寄り部よりも先端部に近いほどコアの軸心にブレを生じ易く、結果として成形品(特に先端寄り部分)の胴部壁の肉厚に不均一が生じやすくなる。
【0024】
他方、比較的大型の注射器シリンダの場合では、シリンダ成形キャビティの容積も大きくなる。そのため、成形時にシリンダ成形キャビティの鍔部周縁部の1箇所のゲートのみから溶融樹脂の射出注入を行なうと、小型シリンダに比べて射出に時間を要するのみならず、キャビティ内全体に十分な充填圧力が伝わりにくい。その結果、キャビティへの充填が不完全になったり、充填されても成形品に樹脂密度の偏りが発生して冷却時の樹脂の収縮率にバラツキが生じ、成形不良になったりするという問題がある。
【0025】
そこで、本発明に係るシリンダ成形用金型の好ましい実施態様では、1つのコアに対して複数のホットランナノズルを備えている。かかる態様により、1つのシリンダ成形用キャビティに対し2以上のゲートから溶融樹脂の射出注入を行なうことができ、上記問題の発生を抑制することができる。
【0026】
さらに好ましい実施態様では、1つのコアに対して、2つのホットランナノズルが互いの吐出口が対向するように設けられている。すなわち、コアの中心軸に対して対照な互いに反対側の鍔部成形キャビティの周縁端部の2箇所にゲートを設け、コアに対して互いに反対側の両方向から樹脂を射出注入する。従来の金型構成では、前述のとおり、フルホットランナを用いて鍔部の小さいシリンダ自体を成形することが困難であり、胴部の径に対して長さが比較的長い小型のシリンダや、比較的大型の注射器シリンダであって相対的に鍔部の小さなシリンダを、複数のフルホットランナを用いて成形することはなおさら困難であった。しかし、フルホットランナを収容するゲートブロックにて鍔部形成用キャビティの前記一方の金型部側の面の一部を形成し、あるいはさらにゲートブロックの側面にてコア支持部の一部を形成することにより、はじめて鍔部の小さいシリンダでも複数のホットランナを用いることが可能となった。そこでさらに、1つのコアに対して、2つのホットランナノズルが互いの吐出口が対向するように設けられているという構成をとれば、コアの基部を強固に安定に保持しつつ、鍔部の小さいシリンダを、フルホットランナを用いてコアの中心軸に対して対照な互いに反対側の鍔部成形キャビティの周縁端部の2箇所にゲートを設けるという構成を採用することが可能となり、コアに対して互いに反対側の鍔周縁部ゲートからの両方向から樹脂を射出注入して成形することが可能である。
【0027】
上記構成とすることにより得られる効果として、以下が挙げられる。
(1)コア基部に近い方からの樹脂射出注入であって、なおかつ鍔部周縁部の2箇所からコアに向かって互いに両方向から同時にキャビティに溶融樹脂が射出されるので、射出バランスが改善し、コアの安定性がさらに向上する。このため、コアの先端近傍であっても、射出樹脂圧によるコアのブレが少なくなり、肉厚に偏りのない均一性のよい成形品を成形することができる。
(2)コア基部に近い方からの樹脂射出注入であって、なおかつ鍔部周縁部の2箇所からコアに向かって互いに両方向から同時にキャビティに溶融樹脂が射出されるので、樹脂充填速度が速くなり、成形速度が向上する。
(3)コア基部に近い方からの樹脂射出注入であって、なおかつ鍔部周縁部の2箇所からコアに向かって互いに両方向から同時にキャビティに溶融樹脂が射出されるので、大型シリンダであってもキャビティ内全体に十分に充填圧力が伝わり易くなり、成形品に充填不良や樹脂密度の偏りが発生しにくくなって成形不良を無くすことができる。
【0028】
注射器シリンダの先端部には、注射針を装着するための筒状突起があるが、さらにシリンダによっては注射針が不用意に外れないように、注射針をシリンダに固定するためのネジ溝を具えたルアーロック円筒のような小円筒部や、注射針カバーを装着するため等の小円筒部が、筒状突起を取囲んで設けられているタイプのものもある。胴部の外径が小さい小型シリンダで先端に小円筒部が設けられているタイプでは、シリンダ先端部の小円筒部がシリンダ胴部の外径よりも大きくなることが多い。このような場合、シリンダ先端部の小円筒部がシリンダ胴部よりも外径が大きいために、金型を型開きする際に胴部成形用キャビティの外周部分を形成する胴部成形用ブロックが小円筒部と干渉して当該小円筒部がアンダーカットとなり、上記胴部成形用ブロックから成形品をコアとともに引き抜くことができない。
【0029】
そこで、好ましい実施態様として、前記他方の金型部側に設けられ、前記一対の金型部が型締めされたときに前記コアが収容されることによって前記胴部成形用キャビティを形成する胴部成形用ブロックを備え、前記胴部成形用ブロックは、前記一対の金型部の型開き方向と直交する方向へ分割される複数のブロックによって構成されている態様が挙げられる。かかる態様にすることで、成形品をコアとともに他方の金型部から引き抜こうとする際に、胴部成形用ブロックが型開き方向と直交する方向へ分割することができるので、シリンダ先端にシリンダ胴部よりも外径の大きい小円筒部等がある場合でも、その小円筒部等が他方の金型部からの引抜き時に干渉せず、成形品を安全に他方の金型部から引き抜くことが可能となる。
【0030】
上記の場合、前記他方の金型部側に設けられ、型開き方向へ前記胴部成形用ブロックとは相対的に移動し、その相対的な移動距離に応じた距離だけ前記複数のブロックを分割方向に移動させるカム機構をさらに備えていることが好ましい。そうすれば、カム機能を型開き方向へ胴部成形用ブロックとは相対的に移動させるだけで胴部成形用ブロックを分割させることができ、他方の金型部からの成形品の引抜きが容易になる。
【0031】
本発明に係る第1のシリンダ成形方法は、上記した本発明のシリンダ成形用金型を用いてシリンダの成形を行なうものである。具体的には、本発明の一対の金型部を型締めする型締め工程と、前記型締め工程の後、前記ホットランナノズルから前記ゲートを介して前記外筒成形用キャビティ及び前記鍔部成形用キャビティに溶融樹脂を注入する注入工程と、前記注入工程の後、前記外筒成形用キャビティ及び前記鍔部成形用キャビティを冷却して溶融樹脂を固化し、シリンダを成形する成形工程と、前記成形工程の後、前記一対の金型部を型開きする型開き工程と、前記型開き工程の後、前記押出し部材を前記コアの先端側へ移動させることにより、成形された前記シリンダを前記コアから離型させる離型工程と、を備えている。
【0032】
本発明に係る第2のシリンダ成形方法は、上記した本発明のシリンダ成形用金型のうち胴部成形用ブロックが分割可能な2つのブロックによって構成されているものを用いた成形方法である。このシリンダ成形方法は、シリンダ成形用金型の前記一対の金型部を型締めする型締め工程と、前記型締め工程の後、前記ホットランナノズルから前記ゲートを介して前記胴部成形用キャビティ及び前記鍔部成形用キャビティに溶融樹脂を注入する注入工程と、前記注入工程の後、前記胴部成形用キャビティ及び前記鍔部成形用キャビティを冷却して溶融樹脂を固化し、シリンダを成形する成形工程と、前記成形工程の後、前記胴部成形用ブロックを前記一対の金型部の型開き方向と直交する方向へ分割させる型分割工程と、前記型分割工程の後、前記一対の金型部を型開きする前記型開き工程と、前記型開き工程の後、前記押出し部材を前記コアの先端側へ移動させることにより、成形された前記シリンダを前記コアから離型させる離型工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るシリンダ成形用金型では、鍔部成形用キャビティの前記一方の金型部側の面がその全面を押出し部材によらず、特に当該面のうち鍔部の小型化によって距離が小さくなり薄肉化されて強度不足となるホットランナノズルとコアとの間の部分の面をゲートブロックによって形成することにより、十分な強度が確保される。したがって、成形時に繰り返される大きな射出樹脂圧の印加や金型開閉動作によっても歪等劣化を生じることがなくコアとの間の密着精度も維持でき、樹脂の侵入による成形品のバリが生じることを防止することができる。
【0034】
本発明に係る第1のシリンダ成形方法では、本発明に係るシリンダ成形用金型を用いるため、鍔部の小さいシリンダを精度よく成形することができる。
【0035】
本発明に係る第2のシリンダ成形方法では、上記成形方法に加え、成形工程の後、前記胴部成形用ブロックを前記一対の金型部の型開き方向と直交する方向へ分割させる型分割工程を備えているので、シリンダ胴部よりも外径の大きい小円筒部等を先端に備えた成形品の他方の金型部からの引抜きが可能となるので、先端にシリンダ胴部よりも外径の大きい小円筒部等を備えたシリンダを成形することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら本発明に係るシリンダ成形用金型及びその金型を用いた成形方法の一実施例について説明する。
【0038】
まず、
図1から
図4を用いてこの実施例のシリンダ成形用金型の構造について説明する。
【0039】
シリンダ成形用金型は一対の金型部によって構成されている。一対の金型部のうち一方の金型部はその位置が固定されている固定側金型部であり、他方の金型部は固定側金型部とは相対的に移動させる可動側金型部である。これらの金型部は互いに対向した面をもち、互いの対向面が重ね合わされて型締めがなされる。可動側金型部は図において上下方向へ移動可能に設けられている(
図2及び
図3参照)。
図1から
図3において、可動側金型部が移動する上下方向を型開き方向と称する。
【0040】
図1は固定側金型部と可動側金型部が型締めされた状態を示している。この状態において、シリンダ成形用金型の内部にシリンダの胴部を成形するための胴部成形用キャビティ28aとシリンダ基端の鍔部を成形するための鍔部成形用キャビティ28bが形成される。胴部成形用キャビティ28aは、固定側金型部に設けられたコア16の本体部16a及び先端部16d(
図4参照)が、可動側金型部に設けられた凹部26a,36a(
図2)に挿入されることにより形成される。
【0041】
これらのキャビティ28a,28bは、サイドゲート型のホットランナノズル本体部2を挟んで対称な2ヶ所の位置に設けられている。キャビティ28a,28bに溶融樹脂を注入するためのゲートは、鍔部成形用キャビティ28bの端部に設けられている。ゲートの位置に溶融樹脂を吐出するノズル14の吐出口が配置されている。
【0042】
固定側金型部と可動側金型部についてさらに具体的に説明する。
【0043】
ホットランナノズル本体部2は固定側金型部側に設けられている。固定側金型部には、当該固定側金型部を成形機に取り付けるための固定側取付板6が設けられ、その固定側取付板6にスペーサブロック4が固定されている。スペーサブロック4にはホットランナノズル本体部2の基部が取り付けられている。ホットランナノズル本体部2は、その軸方向が型開き方向と平行で、先端部が可動側金型部側(図において下側)を向くように設けられている。図では、ホットランナノズル本体部2をスペーサブロック4に固定するためのボルト等の図示を省略している。スペーサブロック4のさらに可動側金型部側に、固定側受け板8が設けられている。固定側受け板8はスペーサブロック4とボルト10によって固定されている。
【0044】
ホットランナノズル本体部2は、固定側受け板8を貫通し、先端部が可動側金型部側へ突出している。ホットランナノズル本体部2の先端部の対称な2ヶ所の位置に、溶融樹脂を吐出するホットランナノズル14(単にノズル14とも称する。)が設けられている。ノズル14はその吐出口が型開き方向に対して垂直な方向(図において左右方向)を向くように設けられている。
【0045】
ホットランナノズル本体部2のうち固定側受け板8よりも可動側金型部側にある先端部分にゲートブロック12が取り付けられている。ゲートブロック12は、内部にホットランナノズル本体部2の先端部を収容し、ノズル14の吐出口に対応する位置に、ノズル14から吐出された溶融樹脂をキャビティ28a,28bへ導くゲートを有する。
【0046】
コア16は、円筒形状の本体部16a、その本体部16aよりも外形の大きい円筒形状の基部16b、本体部16aと16bの間に設けられた被保持部16c、及び本体部16aの先端に設けられ本体部16aよりもさらに外径の小さい先端部16d(
図4参照)を備えている。被保持部16cの外周面は、基部16b側から本体部16a側へいくにしたがってその外径が小さくなるように傾斜したテーパ形状を有する。コア16はゲートブロック12を貫通し、コア16の本体部16a及び先端部16dは可動側金型部側へ伸びている。ゲートブロック12は、コア16の被保持部16cの外周面の一部に接する傾斜側面12aを有する。
【0047】
固定側受け板8の可動側金型部側に、押出し部材等を収容保持する固定側型板18が設けられている。固定側型板18には押出し部材22がボルト22によって固定されている。固定側型板18は、型締めされた状態(
図1の状態)においてゲートブロック12を収容するように設けられている。
【0048】
押出し部材22は、型締めされた状態において、コア16の被保持部16cの外周面のうち、ゲートブロック12の傾斜側面12aが接していない部分に接する傾斜側面22aを有する。ゲートブロック12の傾斜側面12aと押出し部材22の傾斜側面22aは、型締めされた状態において互いに連続し、コア16の被保持部16cの外周面の形状に対応したテーパ形状の内周面を有する貫通穴を形成する。型締め時に、この貫通穴にコア16の被保持部16cが嵌まり込むことで、傾斜側面12a及び22aがコア16の被保持部16cの外周面と接し、ゲートブロック12と押出し部材22とでコア16を支持し、コア16の軸心の位置決めが行われると同時にキャビティ内に充填された溶融樹脂が接触面に進入して成形品にバリが生じないようにしている。
【0049】
可動側金型部は、当該可動側金型部を成形機に取り付けるための可動側取付板34に、可動側取付板34側から可動側受け板30と可動側型板24とがボルト32によって固定されて構成されている。可動側型板24の内側に、第1型ブロック26が嵌め込まれて固定されている。可動側受け板30には円環形状の第2型ブロック36が嵌め込まれて固定されている。
【0050】
第1型ブロック26は、コア16に対応する位置に、コア16の本体部16aを収容する貫通穴26aを有するとともに、貫通穴26aの固定側金型部側の開口部の縁に、鍔部成形用キャビティ28bを形成する窪み26bを有する。第2型ブロック36は、第1型ブロック26の貫通穴26a直下の位置に、貫通穴26aと連続して外筒部成形用キャビティ28aを形成するための凹部を有する。
【0051】
図示は省略されているが、第1型ブロック26及び第2型ブロック36内には、キャビティ28a−28c内の樹脂を冷却して固化させるための冷却用水管が埋設されている。
【0052】
可動側金型部は、2本のスライドレールである引張りリンク38に沿って型開き方向に移動する。スライドレールである引張りリンク38には型開き方向に伸びた長穴が設けられており、その長穴の内側を、固定側金型部の固定側型板18の側面に固定された軸38aと、可動側型板24に設けられた軸38bがスライドするようになっている。そして型開き状態(
図2参照)の後、可動側金型部が型開き方向にさらに開かれようとすると、引張りリンク38は固定側金型部のうち固定側型板18のみを型開き方向に引張り下げることにより、
図3に示されているように、固定側型板18に固定された押し出し部22が成形品44を突き出してコア16aから成形品44を離型させるように機能する。なおこのとき固定側型板18は、先端が固定側受け板8に固定されたストッパー40にて、下方に引っ張り下げられるときの移動量が規制される。
【0053】
また、固定側金型部の押出し部材を保持する固定側型板18は、型開き方向へ伸びたガイドポスト(図示は省略)に沿って、型開き方向へ移動する。これに伴って、押出し部材を保持する固定側型板18に固定された押出し部材22が型開き方向へ移動する。
【0054】
第1型ブロック26の中央部に、型締め時にゲートブロック12の先端部12bを嵌め込むための窪み26cが設けられている。ゲートブロック12の先端部12bは可動側金型部側へいくほどその外径が小さくなるように外周面が傾斜したテーパ形状となっており、第1型ブロック26の窪み26cはゲートブロック12の先端部12bに対応した形状となっている。これにより、型締め時に先端部12bが窪み26cに嵌め込まれることによって固定側金型部と可動側金型部との位置決めがなされる。
【0055】
シリンダを成形するためのキャビティについて、
図4を用いてさらに説明する。
【0056】
型締めがなされてコア16の本体部16a及び先端部16dが型ブロック26及び36の内部に設けられた凹部内に挿入されることで、コア16の本体部16a及び先端部16dの外周面と型ブロック26及び36の内部の凹部内周面との間に、シリンダの胴部を成形するためのキャビティ28a及び28cが形成される。キャビティ28cは、シリンダの先端に注射針を装着するための細い円筒部分を成形するためのものである。
【0057】
また、キャビティ28aの固定側金型側の端部に、シリンダ基端部に設けられる鍔部を成形するための鍔部成形用キャビティ28bが形成される。この鍔部成形用キャビティ28bは、可動側金型側(図において下側)の面が型ブロック26によって形成され、固定側金型側(図において上側)の面がゲートブロック12及び押出し部材22によって形成される。
【0058】
鍔部成形用キャビティ28b上におけるゲートブロック12と押出し部材22との位置関係について
図5を用いて説明する。
【0059】
図5において、粗いハッチングがなされている領域が押出し部材22のある部分であり、クロスハッチングがなされている領域がゲートブロック12のある部分である。細かいハッチングがなされている部分はコア16が貫通する部分である。鍔部成形用キャビティ28の固定側金型側の面のうち、ホットランナノズル14側の一部がゲートブロック12の一部の面であり、残りの部分が押出し部材22の一部の面である。
【0060】
ここで、鍔部成形用キャビティ28の固定側金型側の面の全体を押出し部材22の面にすると、ホットランナノズル14とコア16との間の距離が小さくなったときに、押出し部材22のうちホットランナノズル14側(図において右側)部分の肉厚が薄くなり、強度不足となる。その結果、成形動作の際に何度も繰り返す高射出樹脂圧の印加や金型開閉動作によって当該部分に歪を生じるなどして精度劣化をきたし樹脂漏れが生じて成形品にバリを生じたりする。さらには、コア16を十分な強度で安定的に支持することができないおそれがある。
【0061】
この実施例では、ゲートブロック12の一部を鍔部成形用キャビティ28上まで張り出させることによって鍔部成形用キャビティ28の固定側金型側の面のうちゲート側部分をゲートブロック12の一部にて構成している。これにより距離が小さくなったホットランナノズル14とコア16との間の強度を確保でき、成形動作を繰り返しても型締め時におけるコアとの密着精度を低下させることなく維持でき、樹脂の進入を防止してバリの発生を抑制することができる。
【0062】
また、この鍔部成形用キャビティ28上まで張り出させたゲートブロック12の一部をコア16の外周面に接触させ、コア16をゲートブロック12と押出し部材22によって支持するようになっているので、コア16を支持するコア支持部17(
図1参照)の強度を十分に確保することができる。これにより、成形動作の際に繰り返す高射出樹脂圧の印加や金型開閉動作に対して耐久性を有し、溶融樹脂がゲートから高圧射出注入されてもコア16の軸心ブレを防ぐことができる。
【0063】
この実施例のシリンダ成形用金型は、かかる構成をとるため、
図5(A)及び(B)に示されているように、成形されたシリンダ44の鍔部44aの端面に特徴的なパーティングライン46が残ることとなる。また、鍔部44aの側面にはゲート跡48が残る。
【0064】
図1から
図3を用いて、このシリンジ成形用金型を用いた成形方法について説明する。
【0065】
まず、
図1に示されているように、固定側金型部と可動側金型部とを型締めし、キャビティ28a−28cを形成する。ホットランナノズル14からゲートを通じてキャビティ28a−28c内に溶融樹脂を充填する。キャビティ28a−28cに充填された溶融樹脂を冷却し、固化させる。
【0066】
キャビティ28a−28c内の溶融樹脂を固化させた後、
図2に示されているように、可動側金型部を固定側金型部から遠ざかる方向(図において下方向)へ移動させる。可動側金型部を移動させてコア16を可動側金型部から引き抜くと、コアの本体部16aの周囲にシリンダ44が成形されている。
【0067】
次に、
図3に示されているように、押出し部材22をコア16の先端側へ移動させる。押出し部材22は成形されたシリンダ44の鍔部44a(
図6参照)の端面の大部分に接しており、押出し部材22をコア16の先端側へ移動させることで、成形されたシリンダ44がコア16から離型する。これにより、シリンダ44を成形するための一連の工程が終了する。
【0068】
この実施例の押出し部材22は、従来の金型のように、成形品の鍔部の端面全体を押圧しないので成形品の突出し力は従来に比べてやや弱くなる。しかし、鍔部の小さい小型のシリンダを成形する場合は離型抵抗が大型のシリンダの場合に比べて小さくなるのでなんら問題にはならない。
【0069】
サイドゲート型のフルホットランナノズルとしては、特許文献1及び2に見られるようなノズル開閉にバルブを使用しないタイプのものであってもよいし、バルブを使用してノズル開閉を行うものであってもよい。
【0070】
なお、上記実施例では、1つのシリンダ成形用キャビティ28a−28cに1つのホットランナノズル14を用いて溶融樹脂を充填するように構成されているが、複数のホットランナノズルを用いて溶融樹脂を充填するように構成してもよい。
図7及び
図8は、1つのシリンダ成形用キャビティ28a−28cに2つのホットランナノズル14と52を用いて溶融樹脂を充填するように構成された金型の一実施例を示している。
【0071】
この実施例の金型は、
図1の実施例と金型の構成概念は同じである。相違点は、
図1の実施例では鍔部成形用キャビティ28bの片側のみにホットランナノズル14とそれを収容するゲートブロック12、そしてノズル14の吐出口であるゲートが設けられているのに対し、
図7の実施例では、ホットランナノズル本体2に加えてホットランナノズル本体50が設けられ、さらに、鍔部成形用キャビティ28bにおいて、コア16の中心軸に関して対照な互いに180度反対側の位置に、それぞれホットランナノズル14とその吐出口であるゲート、ホットランナノズル52とその吐出口であるゲートが設けられている。ホットランナノズル52はホットランナノズル14を収容するゲートブロック12とは別のゲートブロック53に収容されている。これら2つのゲートブロック12と53は各々が鍔部形成用キャビティの固定側金型部側の面の一部であるゲート近傍の面をなしている。
【0072】
図7及び
図8の断面図ではゲートブロック12及び53に隠れて見えないが、1点ゲート構成の
図5に相当する
図9に示されているように、鍔部形成キャビティ28bの固定側金型部側の面のうち2つのゲートブロック12、53以外の部分を成す押し出し部材22がある。
【0073】
このような2つのゲートブロック12、53による2点ゲート構成の結果、
図10に示されているように、成形品の鍔部44aには、押し出し部材22と2つのゲートブロック12、53の合わせ部に対応する箇所に特徴的な4本のパーティングライン46が現れることになり、かつ鍔部の外周上互いに反対側にそれぞれゲート跡48が残ることになる。
【0074】
なお、この実施例では2つのホットランナノズルによって溶融樹脂の充填を行なう構成になっているが、ホットランナノズルを3つ以上用いるように構成されていてもよい。
【0075】
シリンダ成形用金型のさらなる他の実施例について、
図11及び
図12を用いて説明する。
【0076】
この実施例のシリンダ成形用金型は、
図13に示されているように、先端部にシリンダ胴部144aよりも大きい外径をもつ小円筒部144cを有するシリンダ144を成形するためのものである。かかるシリンダ144は、溶融樹脂を硬化して型開きをする際に、先端の小円筒部144cの外径が胴部144aの外径よりも大きいために成形品をキャビティからそのまま引き抜くことができない。そのため、この実施例では、
図11及び
図12に示されているように、第1型ブロック126(胴部成形用ブロック)が、型開き方向(同図(A)及び(B)において上下方向)と直交する方向(同図(A)においては紙面に直交する方向、同図(B)においては左右方向)に分割されて開閉するスライド式の割り型としている。
図11は型締めした状態であり、
図12は型開き前に実行される第1型ブロック126の分割工程時の状態である。
【0077】
この実施例では、コア116が
図1の実施例におけるコア16に相当し、第1型ブロック126が
図1の実施例における第1型ブロック26に相当し、可動側受け板130が
図1の実施例における可動側受け板30に相当し、可動側取付板134が
図1の実施例における可動側取付板34に相当し、第2型ブロック136が
図1の実施例における第2型ブロック36に相当する。
【0078】
第1型ブロック126の胴部成形用キャビティ128aを構成するための孔は下端部において僅かに内径が大きくなっており、その内側に下方から小円筒部成形用ブロック125の上端部が挿入され、さらにその下方から第2型ブロック136の上端の円筒形状部分が挿し込まれるようになっている。これら各ブロックの間には隙間が設けられており、シリンダ144の先端に設けられる小円筒部144cを形成するための小円筒部成形用キャビティを構成する。小円筒部成形用ブロック125は可動側受け板130に取り付けられている。
【0079】
図11(B)及び
図12(B)に示されているように、第1型ブロック126は2つのブロック126aと126bによって構成されている。これらのブロック126a及び126bは、キャビティ128a‐128dを構成する孔の側方に、互いに対向する内側面が傾斜する部分をもち、互いの傾斜した内側面の間にカム154の上部が介在している。カム154の上部側面は、ブロック126a、126bの内側面に対応して傾斜したカム面となっている。また、ブロック126a、126bのうちカム154の上部が挟み込まれている部分の外側面も内側面と同様に傾斜しており、それぞれの外側面を2つの割り型押さえ部材160が支持している。
【0080】
カム154及び割り型押さえ部材160はそれぞれボルト156、162によって可動側取付板134に固定されており、カム154及び割り型押さえ部材160は、型開き方向(図において上下方向)に第1型ブロック126及び可動側受け板130とは相対的にスライドすることができる。カム154及び割り型押さえ部材160が型開き方向にスライドすると、第1型ブロック126を構成する各ブロック126aと126bの傾斜側面が、カム154及び割り型押さえ部材160の傾斜側面に追従することによって型開き方向と直交する方向へ移動する。
【0081】
上記構成により、
図12に示されているように、可動側取付板134と可動側受け板130の間が固定側型部と可動側型部との型開きに先立って開くと、カム154上部のカム面が第1型ブロック126の各ブロック126a、126bの内側傾斜面に沿って下方に移動し、第1型ブロック126を押し開く。カム154及び割り型押さえ部材160は、型開き方向へ移動することによって、その移動距離に応じた距離だけ各ブロック126a、126bを分割方向へ移動させるカム機構をなしている。
【0082】
なお、小円筒部144cの内周面にネジ溝が設けられている場合は、可動側取付板134と可動側受け板130が開く際に、
図12では示されていない回転駆動機構によって第2型ブロック136が回転し、この第2型ブロック136は小円筒部144cから引き抜かれる。
【0083】
その後、固定側型部と可動側型部の型開きが行われると、成形品であるシリンダ144の先端部に形成された小円筒部144cが第1型ブロック126の内面と干渉することなく、可動側型部から引き抜かれる。その後は、
図1等と同じ工程にて押し出し部材によって成形品144がコア116から突き出されて取り出される。
【0084】
図13に示されているように、この実施例の金型を用いて成形されたシリンダ144の外面には、
図6に示した成形品のパーティングライン46と同様のパーティングライン146だけでなく、2つのブロック126a、126bによって構成された第1ブロック126によるパーティングライン147がシリンダ胴部144aの左右に現れる。なお、
図13において、144bは鍔部、148はゲート跡である。
【0085】
このように、キャビティの外周を形成する孔が設けられたブロック126を複数のブロック126a、126bに分割される割り型とすることで、例えば小型シリンダであって、シリンダ胴部の外径よりも大きい外径のルアーロック外筒等の小円筒部を先端に備えた注射器シリンダを、フルホットランナノズルを用いて効果的に成形することができる。