(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6615041
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】ボルトのかしめ方法及びかしめ装置
(51)【国際特許分類】
B23P 19/04 20060101AFI20191125BHJP
B23P 19/06 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
B23P19/04 A
B23P19/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-86664(P2016-86664)
(22)【出願日】2016年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-196668(P2017-196668A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390038069
【氏名又は名称】株式会社青山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森 俊也
(72)【発明者】
【氏名】藤本 孝典
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−144493(JP,A)
【文献】
実開昭56−126379(JP,U)
【文献】
特開平05−138569(JP,A)
【文献】
特開2015−071211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00−21/00
B25J 1/00−21/02
B21D 39/00−41/04
B25B 23/00−23/18
B30B 1/00− 7/04;12/00−13/00;
15/30−15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦孔が形成されたノーズピース内にボルトを供給し、その上方からパンチを下降させてボルトを金属板に打ち込むボルトのかしめ方法であって、ノーズピースの側方に接続されたパイプを通じてボルトを供給し、パイプの先端の傾斜孔に沿ってノーズピース内の縦孔にボルトをその頭部を上側として落とし込んだ後、パンチの中心孔から空気を噴出し続けることにより、まずボルトをノーズピースの縦孔の下部に押し付け、次にパンチを縦孔内で下降させてボルトの頭部に近接させ、パンチの中心孔から噴出される空気流によるベンチュリー効果によって発生する吸着力でボルトをパンチの先端に保持しながら、ボルトを金属板に打ち込むことを特徴とするボルトのかしめ方法。
【請求項2】
パンチの中心孔から噴出する空気流によって発生させた負圧により、ボルトをパイプ内で移動させることを特徴とする請求項1に記載のボルトのかしめ方法。
【請求項3】
縦孔の下部に設けられた開閉式のボルトガイドによってボルトを保持し、パンチの下降に伴いこのボルトガイドを押し拡げてボルトを金属板に打ち込むことを特徴とする請求項1に記載のボルトのかしめ方法。
【請求項4】
前記ボルトガイドを押し拡げる間も、パンチの中心孔から噴出する空気流により発生させた吸着力により、ボルトをパンチの先端に保持することを特徴とする請求項3に記載のボルトのかしめ方法。
【請求項5】
請求項1に記載のボルトのかしめ方法に用いるボルトのかしめ装置であって、
縦孔が形成されたノーズピースと、このノーズピースの側方に接続され、ボルトをノーズピースまで供給するパイプと、このパイプとノーズピースとの接続部に形成され、前記縦孔にボルトをその頭部を上側として落とし込む傾斜孔と、空気を噴出する中心孔を備え前記縦孔の内部を昇降するパンチと、前記縦孔の下部でボルトを保持する開閉式のボルトガイドと、これらの全体を下方に設置された金属板に対して昇降させる昇降機構とを備えたことを特徴とするボルトのかしめ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトを金属板にかしめるために用いられる、ボルトのかしめ方法及びかしめ装置に関するものである。なお、本発明が対象とするボルトはかしめボルトと呼ばれるボルトであるが、本明細書においては単にボルトと表記する。
【背景技術】
【0002】
かしめボルトと呼ばれるボルト1は、
図1に示されるように、ボルト頭部2の下面である座面に突起3を備え、また軸部4に形成されたおねじ部5の上端にねじなし部あるいは細径部6を備えたものである。このボルト1は
図2に示すように金属板7に打ち込まれると、突起3の外周及びねじなし部あるいは細径部6に金属が塑性的に流入し、金属板7にかしめ固定される。その後はスタッドボルトと同様に、他の部材を取り付けるために使用することができるものである。
【0003】
このようなボルトは金属板7に形成された下穴に人手によって、あるいはロボットハンドによってセットされたうえ、パンチを備えたかしめ装置によってかしめられる。しかしボルトの数が多くなってきた場合には、このような2段階の動作ではなく、順送の金型内にボルトを供給し、供給とかしめとを1動作で行うことができる技術が求められる。
【0004】
このように供給とかしめを1動作で行う装置は、かしめナットについては既に実用化されている。その内容は本出願人の特許文献1に示される通りであり、かしめ装置に対して横方向から空気圧によってかしめナットを水平姿勢(軸を鉛直とした姿勢)で供給し、その上方から下降するパンチによって下方の金属板に打ち込む。
【0005】
しかし扁平なナットとは異なりボルトは縦長であるから、特許文献1と同じように軸を鉛直とした姿勢で供給することはできない。また縦長のボルトを金属板に対して垂直に維持した状態で打ち込む必要があるため、ナットに比べてボルトの姿勢保持が容易ではない。これらの理由もあって、これまでボルトの供給とかしめとを1動作で行うことができるかしめ技術は実用化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−90360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、順送の金型内にボルトを供給し、ボルトの供給とかしめとを1動作で行うことができるボルトのかしめ方法及びかしめ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明の
請求項1に記載のボルトのかしめ方法は、縦孔が形成されたノーズピース内にボルトを供給し、その上方からパンチを下降させてボルトを金属板に打ち込むボルトのかしめ方法であって、ノーズピースの側方に接続されたパイプを通じてボルトを供給し、パイプの先端の傾斜孔に沿ってノーズピース内の縦孔にボルトを
その頭部を上側として落とし込んだ後、
パンチの中心孔から空気を噴出し続けることにより、まずボルトをノーズピースの縦孔の下部に押し付け、次にパンチを縦孔内で下降させてボルトの頭部に近接させ、パンチの中心孔から噴出される空気流によるベンチュリー効果によって発生する吸着力でボルトをパンチの先端に保持しながら、ボルトを金属板に打ち込むことを特徴とするものである。
【0009】
なお、パンチの中心孔から噴出する空気流によって発生させた負圧により、ボルトをパイプ内で移動させることができる。また、ノーズピースの下部に設けられた開閉式のボルトガイドによってボルトを保持し、パンチの下降に伴いこのボルトガイドを押し拡げてボルトを金属板に打ち込むことができる。この場合、ボルトガイドを押し拡げる間も、パンチの中心孔から噴出する空気流により発生させた吸着力により、ボルトをパンチの先端に保持することが好ましい。
【0010】
また上記の課題を解決するためになされた本発明のボルトのかしめ装置は、
請求項1に記載のボルトのかしめ方法に用いるボルトのかしめ装置であって、縦孔が形成されたノーズピースと、このノーズピースの側方に接続され、ボルトをノーズピースまで供給するパイプと、このパイプとノーズピースとの接続部に形成され、前記縦孔にボルトをその頭部を上側として落とし込む傾斜孔と、空気を噴出する中心孔を備え前記縦孔の内部を昇降するパンチと、前記縦孔の下部でボルトを保持する開閉式のボルトガイドと、これらの全体を下方に設置された金属板に対して昇降させる昇降機構とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノーズピースの側方に接続されたパイプを通じてボルトを水平姿勢(軸線を水平とした姿勢)で移動させ、パイプの先端の傾斜孔に沿ってノーズピース内の縦孔にボルトをその頭部を上側として落とし込んだ後、パンチを縦孔内で下降させ、噴出する空気流によりボルトを縦孔の下部に保持しながら、ボルトを金属板に打ち込む。このためボルトの姿勢を正しく維持した状態で、1動作でボルトを金属板にかしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】かしめボルトの形状を示す正面図と下面図である。
【
図3】実施形態のかしめ装置の外観を示す斜視図である。
【
図6】ボルトの打ち込み工程を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(全体構造)
図3は本発明の実施形態のかしめ装置を示す外観斜視図であり、10はノーズピース、11はボルト1をノーズピース10まで供給するパイプである。このパイプ11の先端は連結ブロック12を介してノーズピース10の側壁に連結されている。
【0014】
13はノーズピース10の上方に位置するパンチリテーナ、14はバックアッププレートである。パンチリテーナ13は下側に突出する丸棒状のパンチ15を備えている。
図4に示すようにノーズピース10は縦孔16を備えており、パンチ15はその縦孔16内に挿入され、昇降することができる。
【0015】
ノーズピース10及び連結ブロック12とパンチリテーナ13との間には、ガイドポスト17が設けられている。ガイドポスト17の上部はパンチリテーナ13の貫通孔18を貫通しており、ノーズピース10とパンチリテーナ13とは相対的に移動可能となっている。またノーズピース10及び連結ブロック12とパンチリテーナ13との間には、スプリングガイド19にガイドされた圧縮スプリング20が設けられている。
【0016】
図4に示すように、パンチリテーナ13のさらに上方にはプレスマシンなどの昇降機構21があり、圧縮スプリング20の上端はこの昇降機構21に接している。またパンチリテーナ13は、昇降機構21の下側に、ポスト25によって固定されている。このため、パンチリテーナ13は昇降機構21と一体となって昇降するが、ノーズピース10及び連結ブロック12はパンチリテーナ13に対してスライド可能であり、圧縮スプリング20によって常に下側に向けて押し出された状態にある。
【0017】
ノーズピース10の下端には、ボルトガイド22と、チップベース23とが設けられている。後述するとおり、ボルトガイド22はノーズピース10の縦孔16の下端でボルト1を保持するものである。またチップベース23は、ボルト1が打ち込まれる金属板7に当接する部材である。昇降機構21により全体が下降したとき、まずチップベース23が金属板7に当接してその反りをなくす。さらに昇降機構21が圧縮スプリング20を圧縮しながら下降すると、パンチ15がノーズピース10の縦孔16内を下降し、ボルト1を金属板7に打ち込む。
【0018】
(ボルトの供給)
図4に示されるように、ボルト1はパイプ11内を通ってノーズピース10まで供給される。ボルト1は軸線を水平とした姿勢で、かつ頭部2を後ろ側としてパイプ11内を移動する。
図4〜
図6に示すように、パンチ15には中心孔30が形成されており、その上部に形成された空気供給孔(図示せず)から中心孔30内に供給された圧縮空気を、下向きに噴射している。このためノーズピース10内は負圧となり、ボルト1はこの負圧によりノーズピース10まで吸引される。しかし従来のように、空気圧によりパイプ11内でボルト1を圧送することもできる。
【0019】
このパイプ11とノーズピース10との接続部には傾斜孔24が形成されており、ボルト1は
図4の(B)(C)に示すようにこの傾斜孔24により方向を変えられ、
図4の(D)に示すようにノーズピース10の縦孔16内に頭部2を上側として落とし込まれる。上記したパンチ15の中心孔30から噴出される圧縮空気により、ボルト11はノーズピース10の縦孔16の下部に押し付けられる。
【0020】
図6に示されるように、ノーズピース10の下部にはボルトガイド22が設けられている。なお
図6の切断面は、
図4、
図5の切断面に対して直交する面である。このボルトガイド22はピン26を中心として開閉可能な一対のアームからなり、このボルトガイド22はピン26よりも上部に設けたスプリング28によって、常時は
図6の(A)に示される閉じた状態にある。このため、縦孔16内に落とし込まれたボルト1はその頭部2がボルトガイド22の一対のアームで保持された状態となる。なお、ノーズピース10にはセンサ29が設けられており、ボルト1が
図4の(D)の位置に確実に送り込まれたか否かを検出している。
【0021】
(ボルトの打ち込み)
上記のようにボルト1がボルトガイド22によって保持されたのち、
図5の(A)に示されるように、昇降機構21が全体を下降させる。なお金属板7は貫通孔32を備えたダイス33の上面にセットされている。
【0022】
さらに昇降機構21が下降し、ノーズピース10の下端のチップベース23が金属板7に当接すると、ノーズピース10はそれ以上下降することはできない。しかしパンチリテーナ13は
図5(B)に示すように圧縮スプリング20を圧縮しつつ更に降下するので、パンチリテーナ13に固定されたパンチ15はノーズピース10の縦孔16内を下降し、ボルト1の頭部2を押圧する。
【0023】
このとき、
図6の(B)に示すようにボルト1の頭部2によって一対のボルトガイド22は押し拡げられ、
図5の(C)及び
図6の(C)に示すように、ボルト1は金属板7に打ち込まれる。なおこのときパンチ15の下面はボルト1の頭部2に近接した状態にあり、パンチ15の中心孔30の下端から噴出される圧縮空気は、ボルト1の頭部2との間の狭い流路を通って周囲に排出される。このためボルト1の頭部2の部分では空気の流速が非常に大きくなり、ベンチュリー効果によって吸着力が発生する。この結果、ボルト1の頭部2によって一対のボルトガイド22が押し拡げられる間も、ボルト1はパンチ1の先端に吸着保持された状態で
図6の(C)のように金属板7に向かって移動する。したがってボルト1は正しい姿勢を維持したまま、金属板7に打ち込まれる。その後、昇降機構21は上昇し、以下同様のサイクルが繰り返される。
【0024】
上記したように、本発明ではパンチ15の中心孔30から噴出される圧縮空気を利用してボルト1の姿勢を制御しているのであって、空気の吸引を行っていない。このため異物が吸い込まれることがない利点がある。
【0025】
(まとめ)
以上に説明したように、本発明によれば、ノーズピース10が上昇位置にあるときボルト1をノーズピース10の縦孔16内に供給し、ノーズピース10を下降させてボルト1を金属板7に打ち込むことができる。このように1動作でボルトを金属板にかしめることができるので、本数が増加した場合にも効率よくボルト1のかしめ作業を行うことができる利点がある。
【符号の説明】
【0026】
1 ボルト
2 ボルト頭部
3 突起
4 軸部
5 おねじ部
6 ねじなし部あるいは細径部
7 金属板
10 ノーズピース
11 パイプ
12 連結ブロック
13 パンチリテーナ
14 バックアッププレート
15 パンチ
16 縦孔
17 ガイドポスト
18 貫通孔
19 スプリングガイド
20 圧縮スプリング
21 昇降機構
22 ボルトガイド
23 チップベース
24 傾斜孔
25 ボルトガイド
26 ピン
28 スプリング
29 センサ
30 中心孔
31 ポスト
32 貫通孔
33 ダイス