特許第6615049号(P6615049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6615049
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/48 20180101AFI20191125BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20191125BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20191125BHJP
   H04W 28/14 20090101ALI20191125BHJP
【FI】
   H04W4/48
   H04W84/12
   H04W48/16 110
   H04W28/14
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-114019(P2016-114019)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-220805(P2017-220805A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2018年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】小堀 雅之
【審査官】 石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−159382(JP,A)
【文献】 特開2007−043391(JP,A)
【文献】 特開2014−039145(JP,A)
【文献】 特開2006−262176(JP,A)
【文献】 特開2009−017101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 − 99/00
H04B 7/24 − 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波環境を調べることにより、使用する電波と干渉する所定の周波数帯域の電波を用いて通信するアクセスポイントを検出するアクセスポイント検出手段と、
前記所定の周波数帯域と相互干渉する周波数帯域の電波を用いて、端末装置と無線通信を行う通信手段と、
前記通信手段を介して、前記端末装置からデータを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段によって取得したデータを一時記憶するバッファと、
自装置の前方における、前記アクセスポイント検出手段によって検出される前記アクセスポイントの有無に応じて前記バッファの容量を変更するバッファ容量変更手段と、
を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記アクセスポイント検出手段は、自装置の移動に伴って複数箇所における電波環境を調べることにより、自装置の前方に存在する前記アクセスポイントを検出することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記アクセスポイント検出手段は、検出した前記アクセスポイントに関する詳細情報を、所定のネットワークを介して第1のサーバから取得することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記詳細情報には、対応する前記アクセスポイントの送信出力が含まれることを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記アクセスポイント検出手段は、所定のネットワークを介して、第2のサーバに格納されている最新のアクセスポイントの設置位置を含む情報を取得することにより、自装置の前方に存在する前記アクセスポイントを検出することを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、
前記バッファ容量変更手段は、前記アクセスポイント検出手段によって複数の前記アクセスポイントが検出されたときに、これら複数の前記アクセスポイントの両方を考慮して前記バッファ容量を増加させることを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記バッファ容量変更手段は、前記アクセスポイント検出手段によって検出された複数の前記アクセスポイントの間の距離に応じて、前記バッファ容量の増加量を調整することを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、
車両に搭載されていることを特徴とする無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線接続された端末装置から送られてくるデータに基づいて処理を行う無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の周波数帯域の電波を用いて通信する路側機の設置位置を記憶しておいて、この路側機の設置位置から所定範囲以内になったときに、外部端末から外部データを取得する際に用いられるバッファの容量を増加させることにより、電波の相互干渉によるデータ速度の低下による映像の乱れや音切れを防止するようにした無線通信装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−159382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された無線通信装置では、予め路側機の設置位置を記憶しておく必要があるため、路側機が増設された場合に対処することができず、このような場合には外部データを効率よく取得することができないという問題があった。特に、最近では、モバイルルータ等の移動しながら使用可能な無線LANアクセスポイントが普及しているが、このような無線LANアクセスポイントについては事前にその設置位置を知ることができないため、バッファの容量を適切に増加させる対策を講じることができず、電波干渉が生じたときに外部データが途切れるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、無線LANアクセスポイントとの間で電波の干渉が生じる場合であっても、無線接続された端末装置から確実にデータを取得することができる無線通信装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、予め把握困難な無線LANアクセスポイントが存在した場合であっても、無線接続された端末装置から確実にデータを取得することができる無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の無線通信装置は、電波環境を調べることにより、使用する電波と干渉する所定の周波数帯域の電波を用いて通信するアクセスポイントを検出するアクセスポイント検出手段と、所定の周波数帯域と相互干渉する周波数帯域の電波を用いて、端末装置と無線通信を行う通信手段と、通信手段を介して、端末装置からデータを取得するデータ取得手段と、データ取得手段によって取得したデータを一時記憶するバッファと、自装置の前方における、アクセスポイント検出手段によって検出されるアクセスポイントの有無に応じてバッファの容量を変更するバッファ容量変更手段とを備えている。
【0007】
自装置に前方にあるアクセスポイントが検出されたときにバッファ容量が変更されるため、電波の干渉が発生したときに端末装置から送られてくるデータが途切れることがなく、確実にデータを取得することが可能となる。また、アクセスポイントを検出してバッファ容量を変更しているため、アクセスポイントの増設や設置位置が予め定まっていないモバイルルータをアクセスポイントとして用いる場合にも対処することができる。
【0008】
また、上述したアクセスポイント検出手段は、自装置の移動に伴って複数箇所における電波環境を調べることにより、自装置の前方に存在するアクセスポイントを検出することが望ましい。これにより、移動するにしたがって電波の干渉が強くなるのか否かを知ることができ、干渉の程度に応じたバッファ容量の変更が可能となる。
【0009】
また、上述したアクセスポイント検出手段は、検出したアクセスポイントに関する詳細情報を、所定のネットワークを介して第1のサーバから取得することが望ましい。特に、上述した詳細情報には、対応するアクセスポイントの送信出力が含まれることが望ましい。これにより、各アクセスポイントの送信出力等の詳細情報を取得し、それぞれのアクセスポイントに対応するバッファ容量の変更が可能となる。
【0010】
また、上述したアクセスポイント検出手段は、所定のネットワークを介して、第2のサーバに格納されている最新のアクセスポイントの設置位置を含む情報を取得することにより、自装置の前方に存在するアクセスポイントを検出することが望ましい。これにより、最新のアクセスポイントの設置位置を反映させたバッファ容量の変更が可能になる。
【0011】
また、上述したバッファ容量変更手段は、アクセスポイント検出手段によって複数のアクセスポイントが検出されたときに、これら複数のアクセスポイントの両方を考慮してバッファ容量を増加させることが望ましい。これにより、複数のアクセスポイントの位置が近い場合であって、両方のアクセスポイントによる電波の干渉が生じても、データが途切れないようにバッファ容量を増加することができ、確実にデータを取得することが可能となる。
【0012】
また、上述したバッファ容量変更手段は、アクセスポイント検出手段によって検出された複数のアクセスポイントの間の距離に応じて、バッファ容量の増加量を調整することが望ましい。これにより、隣接する2つのアクセスポイントの間の領域で電波環境が一旦改善する(電波の干渉がなくなるか程度が小さくなる)場合に、その際に取得可能なデータ分だけバッファ容量の増加分を減らすことができる。
【0013】
また、無線通信装置は、車両に搭載されていることが望ましい。これにより、車両走行中に外部のアクセスポイントがあっても、確実にデータを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の車載装置の構成を示す図である。
図2】携帯端末装置の詳細構成を示す図である。
図3】バッファ容量の可変設定の概略を示す図である。
図4図3に示すバッファ容量の可変設定を行う車載装置の動作手順を示す流れ図である。
図5】バッファ容量の可変設定の変形例の概略を示す図である。
図6図5に示すバッファ容量の可変設定を行う車載装置の動作手順を示す流れ図である。
図7図3に示すバッファ容量の可変設定を行う車載装置の変形例の動作手順を示す流れ図である。
図8】バッファ容量の可変設定の他の変形例の概略を示す図である。
図9図8に示すバッファ容量の可変設定を行う車載装置の変形例の動作手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の無線通信装置を適用した一実施形態の車載装置について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、一実施形態の車載装置の構成を示す図である。図1に示すように、車載装置1は、ナビゲーション処理部10、TVチューナ処理部14、ラジオチューナ処理部16、AV処理部18、操作部20、入力制御部26、表示処理部30、表示装置32、デジタル−アナログ変換器(D/A)40、スピーカ42、制御部50、メモリ60、無線LANモジュール70を備えている。
【0017】
ナビゲーション処理部10は、メモリ60に記憶されている地図データを用いて車載装置1が搭載された車両の走行を案内するナビゲーション動作を行う。自車位置を検出するGPS装置12とともに用いられる。TVチューナ処理部14は、地上デジタル放送等の放送信号を受信し、映像および音声を再生する処理を行う。ラジオチューナ処理部16は、ラジオ放送の信号を受信し、音声を再生する処理を行う。AV処理部18は、圧縮されてメモリ60に記憶されている音楽データや映像データを読み出して再生する処理を行う。また、AV処理部18は、無線接続された携帯端末装置80に格納されている音楽データや映像データを受信して再生する処理を行う。
【0018】
操作部20は、車載装置1に対する利用者による操作を受け付けるためのものであり、表示装置32の周囲に配置された各種の操作キー、操作スイッチ、操作つまみ等を含んで構成されている。また、表示装置32に各種の操作画面や入力画面が表示された時点で、これらの操作画面や入力画面の一部を利用者が指などで直接指し示すことにより、操作画面や入力画面の表示項目を選択することができるようになっており、このような操作画面や入力画面を用いた操作を可能とするために、指し示された指などの位置を検出するタッチパネルが操作部20の一部として備わっている。なお、タッチパネルを用いる代わりに、リモートコントロールユニット等を用いて操作画面や入力画面の一部を利用者の指示に応じて選択するようにしてもよい。入力制御部26は、操作部20を監視しており、その操作内容を決定する。
【0019】
表示処理部30は、各種の操作画面や入力画面等を表示する映像信号を出力して表示装置32にこれらの画面を表示するとともに、TVチューナ処理部14によって受信した放送信号に対応する映像画面やAV処理部18によって再生した映像画面等を表示する映像信号を出力して表示装置32にこれらの画面を表示する。表示装置32は、運転席と助手席の中央前方に設置されており、例えば液晶表示装置(LCD)を用いて構成されている。
【0020】
デジタル−アナログ変換器40は、ナビゲーション処理部10、TVチューナ処理部14、ラジオチューナ処理部16、AV処理部18のそれぞれの処理によって生成される音楽データをアナログのオーディオ信号に変換してスピーカ42から出力する。なお、実際には、デジタル−アナログ変換器40とスピーカ42の間には信号を増幅する増幅器が接続されているが、図1ではこの増幅器は省略されている。また、デジタル−アナログ変換器40とスピーカ42との組合せは再生チャンネル数分備わっているが、図1では一組のみが図示されている。
【0021】
制御部50は、車載装置1の全体を制御するためのものであり、ROMやRAMなどに格納された所定のプログラムをCPUで実行することにより実現される。
【0022】
メモリ60は、ナビゲーション処理部10の処理に必要な地図データやAV処理部18による再生対象となる音楽データや映像データなどを記憶する半導体メモリ(例えば、フラッシュメモリ)である。また、メモリ60の一部は、無線接続された携帯端末装置80から取得した音楽データ等を一時記憶するバッファ領域として使用される。このバッファ領域の容量は、使用する無線LANの電波の相互干渉の程度(電波環境)に応じて可変設定される。
【0023】
無線LANモジュール70は、2.4GHz帯の電波を用いて無線LANによるデータ送受信を行う。2.4GHz帯の電波では、14個あるいは13個(使用する規格によって異なる)のチャネルが含まれており、使用するチャネルと一致あるいは隣接するチャネルを使用する他のアクセスポイントがあると通信帯域が制限される電波の干渉が発生する。また、本実施形態では、2.4GHz帯の電波を用いるが、5GHz帯の電波を用いたり、両方の電波を併用するようにしてもよい。
【0024】
また、上述した制御部50は、AP(アクセスポイント)検出処理部51、無線接続処理部52、データ取得処理部53、バッファ容量変更処理部54、オーディオ再生処理部55、通信処理部56を有する。
【0025】
AP検出処理部51は、電波環境を調べることにより、無線LANモジュール70が使用する電波と干渉する所定の周波数帯域の電波(例えば、同一チャネルあるいは隣接チャネルの電波)を用いて通信する周囲のアクセスポイントを検出する。なお、本実施形態では、1つの無線LANモジュール70を用いてアクセスポイントの検出と、車載装置1と携帯端末装置80との間の無線接続とを行うようにしたが、それぞれの動作に適する設定は同じではないため、各動作用に2つの無線LANモジュール70を受けるようにしてもよい。
【0026】
無線接続処理部52は、無線LANモジュール70を介して携帯端末装置80と無線接続を行うことにより、携帯端末装置80との間で無線通信を行う。
【0027】
データ取得処理部53は、無線LANモジュール70を介して、携帯端末装置80から音楽データ等を取得する。取得した音楽データ等は、メモリ60内のバッファ領域に一時記憶される。また、この一時記憶された音楽データ等は、先入れ先出し方式で読み出される。
【0028】
バッファ容量変更処理部54は、AP検出処理部51によって検出されるアクセスポイントの有無に応じて、メモリ60内のバッファ領域の容量を変更する。
【0029】
オーディオ再生処理部55は、メモリ60のバッファ領域に読み込んだ音楽データ等を用いたAV処理部18による再生動作を制御する。このオーディオ再生処理部55は、AV処理部18内に設けるようにしてもよい。あるいは、オーディオ再生処理部55にAV処理部18が持っている再生動作の機能を持たせ、オーディオ再生処理部55による再生動作によって得られた再生後の音楽データをデジタル−アナログ変換器40に入力するようにしてもよい。
【0030】
通信処理部56は、無線LANモジュール70を介して無線接続された携帯端末装置80を介してインターネットに接続する処理を行う。この通信処理部56による接続処理によって、AP(アクセスポイント)検索サーバ100に接続してアクセスポイントに関する各種の情報を取得することが可能となる。AP検索サーバ100については後述する。
【0031】
上述したAP検出処理部51がアクセスポイント検出手段に、無線接続処理部52が通信手段に、データ取得処理部53がデータ取得手段に、バッファ容量変更処理部54がバッファ容量変更手段にそれぞれ対応する。
【0032】
図2は、携帯端末装置80の詳細構成を示す図である。携帯端末装置80は、一般にスマートフォンと称されるものであり、携帯電話機と携帯情報端末の機能を有する。図2に示すように、この携帯端末装置80は、制御部82、メモリ84、操作部86、表示部88、デジタル/アナログ変換器(D/A)90、スピーカ92、電話処理部94、無線LANモジュール96を備えている。
【0033】
制御部82は、携帯端末装置80の全体を制御するためのものであり、CPU、RAM、ROMなどを含んで構成され、RAMやROMに格納されたプログラムやメモリ84に格納された各種のアプリケーションプログラムを実行することにより各種の動作を行う。
【0034】
メモリ84は、制御部82が実行する各種のアプリケーションプログラムや、音楽データや映像データなどを記憶する半導体メモリ(例えば、フラッシュメモリ)である。
【0035】
操作部86は、テンキーやその他のキーおよび各種のスイッチを含んでおり、利用者の操作指示や各種の入力を受け付ける。タッチパネルで構成した操作部86を用いて、画面に表示したテンキー等を利用者が指等で指し示すようにしてもよい。表示部88は、LCD(液晶表示装置)等で構成されており、操作部86を用いた操作内容や制御部82による制御内容および処理内容などが表示される。
【0036】
デジタル−アナログ変換器90は、制御部82の処理によって生成される音楽データをアナログのオーディオ信号に変換してスピーカ92から出力する。
【0037】
電話処理部94は、携帯電話機としての処理を行う。例えば、電話処理部94は、基地局との間で発着信処理を行って通話処理やインターネット接続処理等を行う。
【0038】
無線LANモジュール96は、2.4GHz帯の電波を用いて、車載装置1との間で無線LANによるデータ送受信を行う。
【0039】
また、制御部82は、メモリ84に格納された音楽データ等を用いたオーディオ再生処理を行うためにオーディオ再生処理部82Aを有する。携帯端末装置80単独でオーディオ再生を行う場合には、オーディオ再生処理部82Aは、再生後の音楽データをデジタル−アナログ変換器90に入力し、変換後のオーディオ信号をスピーカ92から出力する。また、相互に無線接続された車載装置1と連携してオーディオ再生を行う場合には、オーディオ再生処理部82Aは、再生前の音楽データを車載装置1に向けて送信する。この送信された音楽データは、一旦メモリ60内のバッファ領域に格納される。
【0040】
本実施形態の車載装置1はこのような構成を有しており、次に、無線LANを介して携帯端末装置80から車載装置1に向けて音楽データ等を送信する際に用いられるメモリ62内のバッファ領域の容量(バッファ容量)を設定する方法について説明する。
【0041】
図3は、バッファ容量の可変設定の概略を示す図である。図3に示す例では、地点Aが現在の自車位置であり、地点CにアクセスポイントAPがあるものとする。このアクセスポイントAPで使用する電波の周波数帯と、車載装置1と携帯端末装置80との間の無線接続に用いられる電波の周波数帯は同じであり、使用するチャネルが同一あるいは隣接しているため、電波の干渉が生じるものとする。図3に示す地点Bでは電波の干渉が発生し、通信帯域が制限される。
【0042】
このような場合に、本実施形態では、車載装置1のAP検出処理部51によって電波干渉の原因となるアクセスポイントAPが検出されたときに、バッファ容量がa0(デフォルト値)からそれより大きいa1に変更される。
【0043】
なお、検出対象となるアクセスポイントAPは、車両の前方にあるものに限定することが望ましい。例えば、AP検出処理部51によるアクセスポイントの検出動作を、車両(車載装置1)の移動に伴って複数箇所において行うことにより、次第に電波強度が大きくなるアクセスポイントAPを、車両の前方にあるアクセスポイントとして検出することができる。
【0044】
図4は、図3に示すバッファ容量の可変設定を行う車載装置1の動作手順を示す流れ図である。図4に示す動作手順は、所定の時間間隔で繰り返される。
【0045】
まず、AP検出処理部51は、アクセスポイントを検出したか否かを判定する(ステップ100)。検出しない場合には否定判断が行われ、バッファ容量変更処理部54は、バッファ容量を所定値(デフォルト値)a0に設定する(ステップ102)。
【0046】
また、アクセスポイントが検出された場合にはステップ100の判定において肯定判断が行われる。次に、バッファ容量変更処理部54は、バッファ容量をa0よりも大きいa1に変更する(ステップ104)。
【0047】
図5は、バッファ容量の可変設定の変形例の概略を示す図である。図5に示す例では、地点CにアクセスポイントAP1が、地点DにアクセスポイントAP2がある。地点Bでは、電波の干渉が発生し、通信帯域が制限される。
【0048】
このような場合に、本実施形態では、車載装置1のAP検出処理部51によって電波干渉の原因となるアクセスポイントAP1、AP2が検出されると、バッファ容量がa0(デフォルト値)から、図3に示した1つのアクセスポイントAPに対応する値a1よりもさらに大きいa2に変更される。
【0049】
図6は、図5に示すバッファ容量の可変設定を行う車載装置1の動作手順を示す流れ図である。図6に示す動作手順は、所定の時間間隔で繰り返される。図6に示す動作手順は、図4に示した動作手順に対して、ステップ104をステップ106に置き換えた点が異なっている。
【0050】
アクセスポイントが検出されてステップ100の判定において肯定判断が行われると、バッファ容量変更処理部54は、検出されたアクセスポイントの個数(図5に示す例では2個)に応じてバッファ容量をa0、a1よりも大きいa2に変更する(ステップ106)。
【0051】
図7は、図3に示すバッファ容量の可変設定を行う車載装置1の変形例の動作手順を示す流れ図である。図7に示す動作手順は、所定の時間間隔で繰り返される。図3および図4に示した例では、アクセスポイントAPを検出したときにバッファ容量を所定の増加分(a1−a0)だけ増加させたが、図7に示す変形例では、検出されたアクセスポイントの送信出力に応じた増加分を増加させている。図7に示す動作手順は、図4に示した動作手順に対して、ステップ106をステップ108、110に置き換えた点が異なっている。
【0052】
アクセスポイントAPが検出されてステップ100の判定において肯定判断が行われると、バッファ容量変更処理部54は、携帯端末装置80を介してAP検索サーバ100に対して検出したアクセスポイントAPの詳細情報を問い合わせ、送信出力を取得する(ステップ108)。次に、バッファ容量変更処理部54は、取得した送信出力に応じてバッファ容量を変更する(ステップ110)。なお、検出されたアクセスポイントの数が複数の場合には、それぞれのアクセスポイントの詳細情報(送信出力)が取得され、これらを考慮したバッファ容量の設定が行われる。
【0053】
図8は、バッファ容量の可変設定の他の変形例の概略を示す図である。図8に示す例では、地点CにアクセスポイントAP1が、地点DにアクセスポイントAP2がある。この配置自体は、図5に示した例と同じであるが、図8に示した例では、これら2つの地点C、D間の距離が多少離れており、それらの間に電波環境が改善される中間領域eが存在する。この中間領域eでは、電波干渉が解消(あるいは低減)されるが、この中間領域eの長さは短く、バッファ容量の所定値a0に戻してしまうと、次のアクセスポイントAP2の近傍を車両が通過する際に音切れ等が発生するおそれがある。
【0054】
このような場合には、車載装置1のAP検出処理部51によって電波干渉の原因となるアクセスポイントAP1、AP2が検出されたときに、バッファ容量がa0から、図5に示した2つのアクセスポイントAP1、AP2に対応する値a2よりも小さいa3に調整される。なお、この調整分(a2−a3)は中間領域eの長さに比例する値が用いられる。
【0055】
図9は、図8に示すバッファ容量の可変設定を行う車載装置1の変形例の動作手順を示す流れ図である。図9に示す動作手順は、所定の時間間隔で繰り返される。図9に示す動作手順は、図7に示した動作手順に対して、ステップ108と110の間にステップ109を追加するとともに、このステップ109において否定判断された場合の動作としてステップ112、114、116を追加した点が異なっている。
【0056】
検出したアクセスポイントの詳細情報(送信出力)を取得(ステップ108)した後、バッファ容量変更処理部54は、検出されたアクセスポイントは1つであるか否かを判定する(ステップ109)。1つである場合には肯定判断が行われ、バッファ容量変更処理部54は、取得した送信出力に応じてバッファ容量を変更する(ステップ110)。
【0057】
また、検出したアクセスポイントが1つでない場合(複数の場合)にはステップ109の判定において否定判断が行われる、次に、バッファ容量変更処理部54は、取得した複数のアクセスポイントのそれぞれの送信出力に応じてバッファ容量を変更する(ステップ112)。例えば、図8に示す例では、2つのアクセスポイントAP1、AP2のそれぞれの送信出力に応じたバッファ容量が設定される。
【0058】
また、バッファ容量変更処理部54は、検出された複数のアクセスポイント間の距離が離れているか(図8に示す中間領域eが存在するか)否かを判定する(ステップ114)。中間領域eが存在する場合には肯定判断が行われる。なお、検出した各アクセスポイントの送信出力がわかれば、各アクセスポイントを検出した場所から各アクセスポイントまでの概略的な距離を知ることができるため、これら各アクセスポイント間の大まかな距離を推定することが可能となる。ステップ114の判定は、この推定した距離を用いて行われる。
【0059】
次に、バッファ容量変更処理部54は、アクセスポイント間の距離(中間領域eの長さ)に応じて、ステップ112において設定したバッファ容量の増加分を調整する(ステップ116)。なお、中間領域eが存在しない場合にはステップ114の判定において否定判断が行われ、バッファ容量の増加分調整は行われない。
【0060】
このように、本実施形態の車載装置1では、アクセスポイントが検出されたときにバッファ容量が変更されるため、電波の干渉が発生したときに携帯端末装置80から送られてくる音楽データ等が途切れることがなく、確実に音楽データ等を取得することが可能となる。また、アクセスポイントを検出してバッファ容量を変更しているため、アクセスポイントの増設や設置位置が予め定まっていないモバイルルータをアクセスポイントとして用いる場合にも対処することができる。
【0061】
特に、車両(車載装置1)の移動に伴って複数箇所における電波環境を調べることにより、車両の前方に存在するアクセスポイントを検出しており、移動するにしたがって電波の干渉が強くなるのか否かを知ることにより、電波干渉の程度に応じたバッファ容量の変更が可能となる。
【0062】
また、検出したアクセスポイントに関する送信出力を含む詳細情報を、ネットワークを介してAP検索サーバ(第1のサーバ)から取得している。これにより、各アクセスポイントの送信出力等の詳細情報を取得し、それぞれのアクセスポイントに対応するバッファ容量の変更が可能となる。
【0063】
また、複数のアクセスポイントが検出されたときに、これら複数のアクセスポイントの両方を考慮してバッファ容量を増加させることにより、複数のアクセスポイントの位置が近い場合であって、両方のアクセスポイントによる電波の干渉が生じても、音楽データ等が途切れないようにバッファ容量を増加することができ、確実に音楽データ等を取得することが可能となる。
【0064】
また、検出された複数のアクセスポイントの間の距離に応じて、バッファ容量の増加量を調整することにより、隣接する2つのアクセスポイントの間の領域で電波環境が一旦改善する(電波の干渉がなくなるか程度が小さくなる)場合に、その際に取得可能な音声データ等の分だけバッファ容量の増加分を減らすことができる。これにより、バッファ容量の増加分を極力少なくして、バッファを用いることにより発生する遅延を少なくすることができる。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した本実施形態では、AP検出処理部51によって電波環境を調べて、車両周辺に実際に存在し、かつ稼働中のアクセスポイントを検出するようにしたが、AP検索サーバ100(第2のサーバ)に、自車位置(GPS受信機12やナビゲーション処理部10によって特定した自車位置)を送信し、AP検索サーバ100から自車位置周辺(特に前方)に設置されたアクセスポイントの位置や送信出力を取得し、この取得した結果を用いて上述した実施形態の各動作を行うようにしてもよい。これにより、最新のアクセスポイントの設置位置を反映させたバッファ容量の変更が可能になる。
【0066】
但し、この場合には、AP検索サーバ100(本実施形態で各アクセスポイントの詳細情報を問い合わせたAP検索サーバ100とは別のサーバを用いるようにしてもよい)に各アクセスポイントの設置位置や送信出力などの情報を予め登録しておく必要がある。また、このようにして情報を取得することができるアクセスポイントには、持ち運び可能なモバイルルータは含まれない。
【0067】
また、上述した実施形態では、車載装置1と携帯端末装置80を無線接続する場合について説明したが、携帯端末装置80以外の端末装置、例えば、無線LANを用いた無線接続が可能な音楽プレーヤ等を用いる場合にも本発明を適用することができる。また、車載装置1のメモリ内に設定されたバッファ領域に、携帯端末装置1から送られてくる音楽データを一時記憶する場合について説明したが、バッファ領域に一時記憶するデータは音楽データ以外であってもよい。また、車載装置1の内部構成についても図1に示した構成に限定されるものではなく、無線接続された端末装置から送られてくるデータを用いて何らかの処理を行うものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、ハンズフリー電話としての車載装置や、携帯端末装置80のナビゲーション機能によって描画された地図画像等をそのまま表示するヘッドユニット(ディスプレイオーディオ装置)としての車載装置であってもよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、携帯端末装置80から送られるデータを車載装置1内のバッファに一時記憶する場合について説明したが、車載装置1以外の電子機器(オーディオ装置やパーソナルコンピュータ等)内に設けられたバッファの容量を可変設定する場合についても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
上述したように、自装置の前方にあるアクセスポイントが検出されたときにバッファ容量が変更されるため、電波の干渉が発生したときに端末装置から送られてくるデータが途切れることがなく、確実にデータを取得することが可能となる。また、アクセスポイントを検出してバッファ容量を変更しているため、アクセスポイントの増設や設置位置が予め定まっていないモバイルルータをアクセスポイントとして用いる場合にも対処することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 車載装置
50 制御部
51 AP検出処理部
52 無線接続処理部
53 データ取得処理部
54 バッファ容量変更処理部
55 オーディオ再生処理部
56 通信処理部
60 メモリ
70 無線LANモジュール
80 携帯端末装置
図1
図2
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図9