特許第6615050号(P6615050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6615050
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】無線通信正否判定システム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20191125BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20191125BHJP
   H04W 12/12 20090101ALI20191125BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20191125BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20191125BHJP
【FI】
   H04Q9/00 301B
   B60R25/24
   H04Q9/00 331B
   H04W12/12
   E05B49/00 J
   H04W88/02 151
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-115563(P2016-115563)
(22)【出願日】2016年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-139722(P2017-139722A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年11月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-16332(P2016-16332)
(32)【優先日】2016年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】内木 一輝
(72)【発明者】
【氏名】森 惠
(72)【発明者】
【氏名】花木 秀信
(72)【発明者】
【氏名】岩下 明暁
(72)【発明者】
【氏名】大屋 佳之
【審査官】 望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−60482(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0071717(US,A1)
【文献】 特開2010−121297(JP,A)
【文献】 特開2012−36582(JP,A)
【文献】 特開2014−139752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q9/00
B60R25/24
E05B49/00
H04W4/00−H04W99/00
H04B7/24−H04B7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1送信実行手段を備える第1通信部と、第2送信実行手段を備える第2通信部とを備え、前記第1送信実行手段と前記第2送信実行手段とが互いに同一周波数の電波通信にて双方向通信を実行可能な無線通信正否判定システムであって、
前記第1通信部は、前記第2通信部からの電波の受信信号強度(以下、第1受信信号強度という)を算出する第1受信信号強度算出手段を備えていて、前記第1送信実行手段により、第1受信信号強度の情報を送信し、
前記第2通信部は、
前記第1通信部からの電波を受信した際、この電波の受信信号強度(以下、第2受信信号強度という)を算出する第2受信信号強度算出手段と、
前記第1受信信号強度と、該第1受信信号強度の情報を受信したときの第2受信信号強度とに基づく判定値を算出する算出手段と、
前記判定値と基準範囲との比較結果に基づいて、前記第1通信部との通信が正規通信か否かを判定する通信正否判定手段と、
複数回に亘る双方向通信にて取得した複数の前記第1受信信号強度に基づく判定用第1受信信号強度、及び該複数回に亘る双方向通信にて取得した複数の前記第2受信信号強度に基づく判定用第2受信信号強度を算出する補助算出手段と、を備え
前記補助算出手段は、
2回の双方向通信にて取得した前記第1受信信号強度に基づいて前記判定用第1受信信号強度RSSI1_estを次式、
RSSI1_est=(RSSI1_n1・T2+RSSI1_n2・T1)/(T1+T2)
を用いて算出し、
前記2回の双方向通信にて取得した前記第2受信信号強度に基づいて前記判定用第2受信信号強度RSSI2_estを次式、
RSSI2_est=(RSSI2_n1・T4+RSSI2_n2・T3)/(T3+T4)
を用いて算出し、
「RSSI1_n1」は前記2回の双方向通信にて取得した先の前記第1受信信号強度、
「RSSI1_n2」は前記2回の双方向通信にて取得した後の前記第1受信信号強度、
「T1」は前記先の第1受信信号強度RSSI1_n1を取得した時点P1から前記所定時点Pxまでの時間間隔、
「T2」は前記所定時点Pxから前記後の第1受信信号強度RSSI1_n2を取得した時点P2までの時間間隔、
「RSSI2_n1」は前記2回の双方向通信にて取得した先の前記第2受信信号強度、
「RSSI2_n2」は前記2回の双方向通信にて取得した後の前記第2受信信号強度、
「T3」は前記先の第2受信信号強度RSSI2_n1を取得した時点P3から前記所定時点Pxまでの時間間隔、
「T4」は前記所定時点Pxから前記後の第2信号強度RSSI2_n2を取得した時点P4までの時間間隔であり、
前記算出手段は、前記判定用第1受信信号強度と前記判定用第2受信信号強度との差分を前記判定値として算出する無線通信正否判定システム。
【請求項2】
前記算出手段は、前記第1受信信号強度と前記第2受信信号強度との差分を前記判定値として算出する請求項1に記載の無線通信正否判定システム。
【請求項3】
前記第1送信実行手段及び前記第2送信実行手段は、同一の時間間隔で交互に電波通信を行うものであり、
時間間隔T1と時間間隔T2との比を「3:1」とするとともに時間間隔T3と時間間隔T4の比を「1:3」、又は時間間隔T1と時間間隔T2との比を「1:3」とするとともに時間間隔T3と時間間隔T4の比を「3:1」とする請求項に記載の無線通信正否判定システム。
【請求項4】
前記通信正否判定手段は、前記判定値と前記基準範囲との比較結果が正規通信でないことを示す場合が複数回あった場合には、正規通信でないと判定する請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の無線通信正否判定システム。
【請求項5】
前記第1通信部は、前記第1受信信号強度と、受信信号強度飽和検出用の第1閾値とを比較する第1比較手段を備え、前記第1受信信号強度が前記第1閾値を越えている場合には、前記第1送信実行手段は、第1減衰要請を前記第2通信部に送信し、
前記第2送信実行手段は、前記第1減衰要請に基づいて、送信出力が前回出力よりも減衰するようにパワーコントロールを行って前記第1通信部に電波を送信し、
前記算出手段は、前記送信出力を減衰して電波を送信した後に前記第1通信部から送信されて、前記第1減衰要請がない電波の第2受信信号強度と、該第2受信信号強度が算出された電波で通知された新たな第1受信信号強度とに基づいて前記判定値を算出する請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の無線通信正否判定システム。
【請求項6】
前記第2通信部は、前記第2受信信号強度と、受信信号強度飽和検出用の第2閾値とを比較する第2比較手段を備え、前記第2受信信号強度が前記第2閾値を越えている場合には、前記第2送信実行手段は、第2減衰要請を前記第1通信部に送信し、
前記第1送信実行手段は、前記第2減衰要請に基づいて、送信出力が前回出力よりも減衰するようにパワーコントロールを行って前記第2通信部に電波を送信し、
前記算出手段は、前記第2送信実行手段が前記第2減衰要請のない電波通信を行った後に前記第1通信部から送信された電波の第2受信信号強度と、該第2受信信号強度が算出された電波で通知された新たな第1受信信号強度とに基づいて前記判定値を算出する請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の無線通信正否判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末と通信マスタとが無線により通信を行う無線通信正否判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの車両には、IDコードを無線により送信する電子キーによってID照合を実行する電子キーシステム(特許文献1等参照)が搭載されている。この種の電子キーシステムには、車両から送信されたリクエストを電子キーが受信すると、これに応答する形で電子キーがIDコードを車両に自動返信して、ID照合を実行させるキー操作フリーシステムがある。キー操作フリーシステムは、車外でID照合が成立するとドアロック施解錠が許可又は実行され、車内でID照合が実行するとエンジン始動操作が許可される。
【0003】
このような電子キーシステムでは、ユーザの意志によらないところでID照合成立を謀る不正行為として、中継器を使った(不正行為(中継器使用不正行為):特許文献2、特許文献3等参照)というものがある。中継器使用不正行為は、例えば電子キーが車両から遠い場所に位置する際に、この電子キーを複数の中継器によって車両と繋いで電波を中継し、これら2者間の通信を成立させる行為である。
【0004】
特許文献2では、車両から携帯機のLF信号のRSSI(電波強度)と、携帯機から車両のRF信号のRSSIの両方を検出し、両RSSIの相関から一方が極端に小さい場合等の中継器を使った不正行為の判断基準を満たした場合に、ドア開錠やエンジン始動を許可しないようにしている。
【0005】
特許文献3では、車両が電波を複数送信する際、送信強度を変えてそれぞれの電波を送信し、車両からの電波を電子キーが受信した際、この受信電波の受信信号強度を電子キーにおいて算出するようにしている。そして、算出した受信信号強度を基に、通信が正規通信か否かを判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−262915号公報
【特許文献2】特開2012−60482号公報
【特許文献3】特開2011−229061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来は、車両から電子キーへのLF信号での通信、及び電子キーから車両へのRF信号での通信をしている際に、どちらかがアンテナ指向でヌルとなる場合があると、中継器を使った不正行為があったと誤判定してしまうため、ドア開錠やエンジン始動を正常に行えない。そのため、LF信号とRF信号の相対差を考慮する必要があり、この結果、中継器を使った不正行為があったとする判定基準が緩くなり、中継器を使った不正行為を検出できないことがある。
【0008】
本発明の目的は、中継器を使用した無線通信の不正成立を生じ難くすることができる無線通信正否判定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題点を解決するために、本発明の無線通信正否判定システムは、第1送信実行手段を備える第1通信部と、第2送信実行手段を備える第2通信部とを備え、前記第1送信実行手段と前記第2送信実行手段とが互いに同一周波数の電波通信にて双方向通信を実行可能な無線通信正否判定システムであって、前記第1通信部は、前記第2通信部からの電波の受信信号強度(以下、第1受信信号強度という)を算出する第1受信信号強度算出手段を備えていて、前記第1送信実行手段により、第1受信信号強度の情報を送信し、前記第2通信部は、前記第1通信部からの電波を受信した際、この電波の受信信号強度(以下、第2受信信号強度という)を算出する第2受信信号強度算出手段と、前記第1受信信号強度と、該第1受信信号強度の情報を受信したときの第2受信信号強度とに基づく判定値を算出する算出手段と、前記判定値と基準範囲との比較結果に基づいて、前記第1通信部との通信が正規通信か否かを判定する通信正否判定手段と、を備えたものである。
【0010】
この構成によれば、第2通信部と第1通信部間の双方向通信が同一周波数で行われることから、アンテナ指向性や第2通信部と第1通信部間の距離によらず、第1受信信号強度(電波強度)と第2受信信号強度(電波強度)の差が基準範囲内となる。一方、リレー(中継器)を介して、第2通信部と第1通信部間で通信が行われた場合には、第1受信信号強度と第2受信信号強度の差は基準範囲内とならない。そのため、第1受信信号強度と第2受信信号強度とに基づく判定値と基準範囲との比較により正規通信か否かを判定することができる。
【0011】
また、前記算出手段は、前記第1受信信号強度と前記第2受信信号強度との差分を前記判定値として算出してもよい。
この構成によれば、判定値を第1受信信号強度と第2受信信号強度との差分とするため、簡単な演算で素早く正規通信か否かを判定することができる。
【0012】
また、前記第2通信部は、複数回に亘る双方向通信にて取得した複数の前記第1受信信号強度に基づく判定用第1受信信号強度、及び該複数回に亘る双方向通信にて取得した複数の前記第2受信信号強度に基づく判定用第2受信信号強度を算出する補助算出手段を備え、前記算出手段は、前記判定用第1受信信号強度と前記判定用第2受信信号強度との差分を前記判定値として算出してもよい。
【0013】
ここで、第1通信部が第2通信部からの電波を受信して第1受信信号強度を算出した時点から、第2通信部が第1通信部からの電波を受信して第2受信信号強度を算出するまでの間に、例えば電子キーを持った正規ユーザがヌルに移動する場合を想定する。この場合、同一周波数で双方向通信を行っていても、第1受信信号強度と第2受信信号強度の差分が変化し、正規ユーザであっても誤って正規通信でないと判定するおそれがある。
【0014】
この点、上記構成によれば、算出手段が複数の第1受信信号強度に基づく判定用第1受信信号強度と、複数の第2受信信号強度に基づく判定用第2受信信号強度との差分を判定値として算出する。そのため、例えば双方向通信を行う間に電子キーを持った正規ユーザがヌルに移動した場合に差分の変化を抑制でき、正規ユーザによる双方向通信を誤って正規通信でないと判定することを低減できる。
【0015】
また、前記補助算出手段は、複数の前記第1受信信号強度に基づいて、該複数の第1受信信号強度を得た期間内における所定時点での前記第1受信信号強度の推定値を前記判定用第1受信信号強度として算出し、複数の前記第2受信信号強度に基づいて、前記所定時点での前記第2受信信号強度の推定値を前記判定用第2受信信号強度として算出してもよい。
【0016】
この構成によれば、判定用第1受信信号強度及び判定用第2受信信号強度が、第1通信部と第2通信部との相対位置が同じ状況下で通信した場合の第1受信信号強度及び第2受信信号強度とそれぞれ近似した値になる。そのため、例えば双方向通信を行う間に電子キーを持った正規ユーザがヌルに移動した場合に差分の変化を好適に抑制でき、正規ユーザによる双方向通信を誤って正規通信でないと判定することを好適に低減できる。
【0017】
また、前記補助算出手段は、2回の双方向通信にて取得した前記第1受信信号強度に基づいて前記判定用第1受信信号強度RSSI1_estを次式、
RSSI1_est=(RSSI1_n1・T2+RSSI1_n2・T1)/(T1+T2)
を用いて算出し、前記2回の双方向通信にて取得した前記第2受信信号強度に基づいて前記判定用第2受信信号強度RSSI2_estを次式、
RSSI2_est=(RSSI2_n1・T4+RSSI2_n2・T3)/(T3+T4)
を用いて算出し、「RSSI1_n1」は前記2回の双方向通信にて取得した先の前記第1受信信号強度、「RSSI1_n2」は前記2回の双方向通信にて取得した後の前記第1受信信号強度、「T1」は前記先の第1受信信号強度RSSI1_n1を取得した時点P1から前記所定時点Pxまでの時間間隔、「T2」は前記所定時点Pxから前記後の第1受信信号強度RSSI1_n2を取得した時点P2までの時間間隔、「RSSI2_n1」は前記2回の双方向通信にて取得した先の前記第2受信信号強度、「RSSI2_n2」は前記2回の双方向通信にて取得した後の前記第2受信信号強度、「T3」は前記先の第2受信信号強度RSSI2_n1を取得した時点P3から前記所定時点Pxまでの時間間隔、「T4」は前記所定時点Pxから前記後の第2信号強度RSSI2_n2を取得した時点P4までの時間間隔としてもよい。
【0018】
この構成によれば、補助算出手段に大きな演算負荷が加わることを抑制しつつ、2回の双方向通信で速やかに正規通信か否かの判定を行うことができる。
また、前記第1送信実行手段及び前記第2送信実行手段は、同一の時間間隔で交互に電波通信を行うものであり、時間間隔T1と時間間隔T2との比を「3:1」とするとともに時間間隔T3と時間間隔T4の比を「1:3」、又は時間間隔T1と時間間隔T2との比を「1:3」とするとともに時間間隔T3と時間間隔T4の比を「3:1」としてもよい。
【0019】
この構成によれば、第1送信実行手段及び第2送信実行手段が同一の時間間隔で交互に電波通信を行うことで、補助算出手段に過大な演算負荷が加わることを好適に抑制しつつ、2回の双方向通信で速やかに正規通信か否かの判定を行うことができる。
【0020】
また、前記通信正否判定手段は、前記判定値と前記基準範囲との比較結果が正規通信でないことを示す場合が複数回あった場合には、正規通信でないと判定してもよい。
この構成によれば、中継器を使った不正行為があった場合、第1受信信号強度と第2受信信号強度とに基づく判定値と基準範囲との比較結果が不正行為であることを示す場合が、複数回となることが多いため、複数回異なった場合には、正規通信でないと判定することができる。
【0021】
また、前記第1通信部は、前記第1受信信号強度と、受信信号強度飽和検出用の第1閾値とを比較する第1比較手段を備え、前記第1受信信号強度が前記第1閾値を越えている場合には、前記第1送信実行手段は、第1減衰要請を前記第2通信部に送信し、前記第2送信実行手段は、前記第1減衰要請に基づいて、送信出力が前回出力よりも減衰するようにパワーコントロールを行って前記第1通信部に電波を送信し、前記算出手段は、前記送信出力を減衰して電波を送信した後に前記第1通信部から送信されて、前記第1減衰要請がない電波の第2受信信号強度と、該第2受信信号強度が算出された電波で通知された新たな第1受信信号強度とに基づいて前記判定値を算出してもよい。
【0022】
この構成によれば、第1通信部と第2通信部が直近していて、第1受信信号強度が受信信号強度飽和検出用の第1閾値を超える場合があると、第1受信信号強度が飽和しているとする。
【0023】
この場合は、第1通信部から第1減衰要請が、第2通信部に送られるため、第2通信部は、第1減衰要請に基づいて、送信出力が前回出力よりも減衰するようにパワーコントロールを行って第1通信部に電波を送信する。そして、第2通信部の算出手段は、送信出力を減衰して電波を送信した後に第1通信部から送信された電波の第2受信信号強度と、該第2受信信号強度が算出された電波で通信された新たな第1受信信号強度とに基づいて判定値を算出する。このことにより、通信正否判定手段は、新たな第1受信信号強度と第2受信信号強度とに基づく判定値を用いて正規通信か否かを判定することができる。
【0024】
また、前記第2通信部は、前記第2受信信号強度と、受信信号強度飽和検出用の第2閾値とを比較する第2比較手段を備え、前記第2受信信号強度が前記第2閾値を越えている場合には、前記第2送信実行手段は、第2減衰要請を前記第1通信部に送信し、前記第1送信実行手段は、前記第2減衰要請に基づいて、送信出力が前回出力よりも減衰するようにパワーコントロールを行って前記第2通信部に電波を送信し、前記算出手段は、前記第2送信実行手段が前記第2減衰要請のない電波通信を行った後に前記第1通信部から送信された電波の第2受信信号強度と、該第2受信信号強度が算出された電波で通知された新たな第1受信信号強度とに基づいて前記判定値を算出してもよい。
【0025】
この構成によれば、第1通信部と第2通信部が直近していて、第2受信信号強度が受信信号強度飽和検出用の第2閾値を超える場合があると、第2受信信号強度が飽和しているとする。
【0026】
この場合は、第2通信部から第2減衰要請が、第1通信部に送られるため、第1通信部は、第2減衰要請に基づいて、送信出力が前回出力よりも減衰するようにパワーコントロールを行って第2通信部に電波を送信する。そして、第2通信部の算出手段は、送信出力を減衰して電波を送信した以降の第2送信実行手段が第2減衰要請のない電波通信を行った後に第1通信部から送信された電波の新たな第2受信信号強度と、該新たな第2受信信号強度が算出された電波で通信された第1受信信号強度とに基づいて判定値を算出する。このことにより、通信正否判定手段は、第1受信信号強度と新たな第2受信信号強度とに基づく判定値を用いて正規通信か否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、中継器を使用した無線通信の不正成立を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態の通信不正成立防止システムの構成を示すブロック図。
図2】スマート通信の通信シーケンスを示すタイミングチャート。
図3】中継器を使用した不正通信の概要を示す説明図。
図4】スマート通信における無線通信正否判定システムの無線通信の正否判定のフローチャート。
図5】車両と電子キー間の無線通信における経路の説明図。
図6】片側リレーの場合の車両と電子キー間の無線通信における経路の説明図。
図7】第2実施形態における通信不正成立防止システムの構成を示すブロック図。
図8】第3実施形態における通信不正成立防止システムの構成を示すブロック図。
図9】第4実施形態の通信不正成立防止システムの構成を示すブロック図。
図10】第5実施形態の通信不正成立防止システムの構成を示すブロック図。
図11】第1受信信号強度及び第2受信信号強度の推移の一例を示す模式図。
図12】第1受信信号強度及び第2受信信号強度の推移の一例を示す模式図。
図13】第1受信信号強度及び第2受信信号強度の推移の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した通信不正成立防止システムの第1実施形態を図1図6に従って説明する。
【0030】
図1に示すように、車両1には、車両1から電子キー2に無線による問い合せ(リクエスト信号Srq)を送信して、この問い合せに対する電子キー2の応答(ID信号Sid)によりID照合を行うキー操作フリーシステム3が搭載されている。キー操作フリーシステム3には、車外でID照合が成立するとドアロック施解錠が許可又は実行されるエントリー機能と、車内でID照合が成立すると車内のエンジンスイッチ4による車両1の電源遷移操作及びエンジン始動操作が許可されるエンジン始動機能とがある。なお、電子キー2は通信端末の一例であって第1通信部に相当し、リクエスト信号Srqが問い合せに相当し、ID信号Sidが応答に相当する。
【0031】
この場合、車両1には、電子キー2との間でID照合を実行するキー照合装置5と、ドアロック動作を管理するドアロック装置6と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置7とが設けられ、これらが車内バス8によって接続されている。キー照合装置5には、キー照合装置5のコントロールユニットとして照合ECU(Electronic Control Unit)9が設けられている。照合ECU9のメモリ(図示略)には、車両1と組みをなす電子キー2のIDコードが登録されている。なお、照合ECU9は通信マスタの一例であって、第2通信部に相当する。
【0032】
照合ECU9には、車外にLF(Low Frequency)帯及びUHF(Ultra High Frequency)帯の電波の電波を発信する車外発信機10と、車内にLF帯及びUHF帯の電波を発信する車内発信機11と、UHF(Ultra HighFrequency)帯の電波を受信する車両チューナ12とが接続されている。
【0033】
車外発信機10及び車内発信機11は、電子キー2へのID返信要求としてリクエスト信号SrqをUHF帯の電波によって送信し、いわゆるスマート通信の成立可否を試みる。
一方、電子キー2には、電子キー2の動作を統括制御するキー制御部13が設けられている。キー制御部13のメモリ(図示略)には、キー固有のIDとして「IDコード」が登録されている。キー制御部13には、LF帯及びUHF帯の電波を受信可能な受信機14と、キー照合装置5から送信されるUHF帯の電波と同一周波数のUHF帯の電波を送信可能なUHF送信機15とが接続されている。
【0034】
図2に示すように、車両駐車時、車外発信機10からLF帯のウェイク信号16が断続的に送信され、このウェイク信号16を電子キー2が受信して車外のスマート通信(車外通信)が確立すると、電子キー2からUHF帯のアック信号17が返信される。
【0035】
照合ECU9は、ウェイク信号16の送信後にアック信号17を受信すると、続いてUHF帯の「ビークルID18」を送信する。「ビークルID18」は、車両1の固有IDである。電子キー2は、「ビークルID18」を受信するとビークルID照合を行い、ビークルID照合が成立することを確認すると、UHF帯のアック信号19を再度返信する。
【0036】
照合ECU9は、「ビークルID18」の送信後にアック信号19を受信すると、続いてチャレンジ20を送信する。チャレンジ20には、「チャレンジコード」と「キー番号」とが含まれる。チャレンジ20は、リクエスト信号Srqに相当する。
【0037】
電子キー2は、チャレンジ20を受信すると、まずはキー番号照合を行い、この照合が成立することを確認すると、「チャレンジコード」を自身の暗号鍵に通して「レスポンスコード」を演算する。そして、電子キー2は、この「レスポンスコード」と「IDコード」を主データとするレスポンス21を送信する。ここでレスポンス21は、前記ID信号Sidに相当する。
【0038】
照合ECU9は、チャレンジ20を電子キー2に送信する際、自身も自らの暗号鍵にチャレンジコードを通して「レスポンスコード」を演算する。照合ECU9は、電子キー2からレスポンス21を受信すると、「レスポンスコード」の正否を確認するレスポンス照合と、電子キー2の「IDコード」の正否を確認するIDコード照合とを行う。照合ECU9は、両照合が成立したことを確認すると、原則的にスマート照合(車外照合)を成立として処理し、ドアロック装置6によるドアロック施解錠を許可又は実行する。
【0039】
また、運転者が乗車したことが例えばカーテシスイッチ等により検出されると、車外発信機10に代えて今度は車内発信機11からLF帯のウェイク信号16の送信が開始されて、車内のスマート通信(車内通信)が実行される。そして、車外照合と同様の手順で車内のスマート照合(車内照合)の成立可否が確認され、車内照合の成立が確認されると、エンジン始動装置7による電源遷移操作及びエンジン始動操作が許可される。
【0040】
本実施形態の場合、図1に示すように、キー操作フリーシステム3には、図3に示す中継器22を使用したスマート通信の不正成立を防止する通信不正成立防止システム23が設けられている。中継器22を使用した不正通信成立とは、電子キー2を所持したユーザが車両1から遠く離れている際に、盗難行為を試みる第三者が、中継器22によって電波を中継して、スマート通信を不正に成立させる行為(中継器を使った不正行為)である。本実施形態の通信不正成立防止システム23は、この中継器22を使用した不正通信成立を防止するためのものである。
【0041】
ところで、この種の中継器22では、データ内容を中継できるものの、電波強度まで中継(コピー)することはできない現状がある。よって、電子キー2において電波の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を確認すれば、スマート通信が電子キー2を経由した正規通信なのか、或いは中継器22を使用した不正通信なのかが分かる。このため、本実施形態の通信不正成立防止システム23は、電子キー2における電波の受信信号強度を確認することにより、スマート通信の通信正否判定を実行する。
【0042】
この場合、図1に示すように、電子キー2のキー制御部13は、照合ECU9からUHF帯の電波を受信した際、この受信電波の受信信号強度を算出する受信信号強度算出部26が設けられている。受信信号強度算出部26は、受信機14で電波を受信した際、受信電波の振幅を検出することによって第1受信信号強度RSSI1を算出する。受信信号強度算出部26は、第1受信信号強度算出手段に相当する。
【0043】
また、電子キー2のキー制御部13には、受信信号強度算出部26が算出した第1受信信号強度RSSI1を車両1に通知する受信信号強度通知部27が設けられている。
受信信号強度通知部27は、電子キー2が車両1の問い合せに応答して各種電波(以降、まとめてUHF電波28と記す)を送信する際に、UHF電波28の主データ29の他に、受信電波の第1受信信号強度RSSI1を表すデータとして受信信号強度情報30をUHF電波28に乗せる。主データ29は、本実施形態では、前記「IDコード」と前記「レスポンスコード」である。受信信号強度通知部27は、第1送信実行手段に相当する。
【0044】
一方、図1に示すように、照合ECU9には、スマート通信時において車両1が電子キー2にUHF帯の各種電波(以降、まとめてUHF電波24と記す)を送信する際に、このUHF電波24を、同一周波数で送信させる送信処理部25が設けられている。送信処理部25は、第2送信実行手段に相当する。
【0045】
また、照合ECU9は、電子キー2からのUHF帯の電波を受信した際、この受信電波の受信信号強度である第2受信信号強度RSSI2を算出する受信信号強度算出部9aが設けられている。受信信号強度算出部9aは、第2受信信号強度算出手段に相当する。
【0046】
また、照合ECU9は、電子キー2からのUHF帯の電波で通知された受信信号強度情報30(第1受信信号強度RSSI1)と、受信信号強度情報30を受信したときの受信信号の第2受信信号強度RSSI2との差分を算出する算出部9bが設けられている。算出部9bは、算出手段に相当する。
【0047】
また、照合ECU9は、通信正否判定部31が設けられている。通信正否判定部31は、前記差分と予め登録されている基準値Rとを比較し、その比較結果に基づいて、電子キー2とのスマート通信が正規通信か否かを判定する。通信正否判定部31は、通信正否判定手段に相当し、前記差分は、判定値に相当する。
【0048】
(基準値Rについて)
基準値Rは、下記のようにして照合ECU9の図示しないメモリに登録されている。
照合ECU9に電子キー2の前記「IDコード」や前記「暗号鍵」を登録する時の通信において、電子キー2が車両1からのUHF帯の電波(受信信号)を受信したときの第1受信信号強度RSSI1は、受信信号強度算出部26にて算出され、受信信号強度通知部27にて算出した第1受信信号強度RSSI1を車両1に通知する。このときの、受信信号強度情報は、前記「IDコード」や前記「暗号鍵」を通知する際の電波等を使用して、通知する。
【0049】
受信信号強度情報30が乗ったUHF帯の電波の第2受信信号強度RSSI2は、受信信号強度算出部9aにて算出され、算出部9bにて、電子キー2から送信された第1受信信号強度RSSI1と、受信信号強度算出部9aが算出した第2受信信号強度RSSI2との差分を算出する。この差分を基準値Rとして、照合ECU9は図示しないメモリに登録する。
【0050】
なお、この基準値Rの登録時のUHF帯の電波の周波数は、前記スマート通信の周波数と同一周波数である。ここで、電子キー2の前記「IDコード」や前記「暗号鍵」を登録する場合、電子キー2は車両1に対して近接した位置、または車室内に位置した状態であって、中継器を使用しないで登録される。
【0051】
(第1実施形態の作用)
次に、本実施形態の通信不正成立防止システム23の動作を図4図6に従って説明する。
【0052】
まず、図4に示すように、車両1が電子キー2とスマート通信を実行する場合を想定する。図4は、スマート通信における無線通信正否判定システムの無線通信の正否判定のフローチャートである。なお、説明の便宜上、車両1のビークルID、暗号鍵及びキー番号は、正規の組合せのものであることを前提として説明する。また、電子キー2におけるキー制御部13の受信信号強度算出部26は、車両1からのUHF電波24の受信がある毎に、そのUHF電波24の受信信号強度を算出しているものとする。
【0053】
車両1(照合ECU9)は、スマート通信時において、最初にLF帯の電波のウェイク信号16を送信する。電子キー2は、ウェイク信号16を受信すると、UHF帯の電波のアック信号17を車両1に送信する。次に、車両1(照合ECU9)は、UHF電波24でビークルID18を送信する。ビークルID18を受信した電子キー2は、UHF帯の電波のビークルID18のビークルID照合の成立を確認した後、UHF帯の電波のアック信号19を車両1に送信する。車両1(照合ECU9)は、アック信号19を受信すると、「チャレンジコード」と「キー番号」を乗せたリクエスト信号(UHF電波24)としてチャレンジ20を送信する。チャレンジ20を受信した電子キー2は、主データ29(「IDコード」と「レスポンスコード」)と、チャレンジ20を受信した際の受信信号強度である第1受信信号強度RSSI1を乗せて、UHF電波28であるレスポンス21を車両1に送信する。車両1の照合ECU9は、電子キー2からレスポンス21を受信すると、「レスポンスコード」の正否を確認するレスポンス照合と、電子キー2の「IDコード」の正否を確認するIDコード照合とを行う。照合ECU9は、両照合が成立したことを確認すると、次に、S10で、「通信条件」の成立の有無を判定する。
【0054】
(通信条件)
通信条件は、
P1crx(車両の受信電力)= P1krx(電子キーの受信電力) + □
……(1)
式(1)が成立しているか、である。
【0055】
前記通信条件の導出について図5を参照して説明する。なお、図5において、rは、車両1と電子キー2の両アンテナの距離である。
車両1から電子キー2へ、同一周波数の電波で通信する場合、
車両の送信電力 :P1ctx(dBm)
車両の送信受信アンテナ・ゲイン :Gc(dBm)
自由区間での伝搬ロス :Lr(dBm)
電子キーの送信受信アンテナ・ゲイン:Gk(dBm)
電子キーの受信電力 :P1krx(dBm)
とすると、
P1ctx+Gc−Lr+Gk=P1krx ……(2)
であり、電子キーの受信電力P1krxは、電子キーでの第1受信信号強度RSSI1に近似する値となる。
【0056】
一方、電子キー2から車両1へ通信する場合、
電子キーの送信電力 :P1ktx(dBm)
電子キーの送信受信アンテナ・ゲイン :Gk(dBm)
自由区間での伝搬ロス :Lr(dBm)
車両の送信受信アンテナ・ゲイン :Gc(dBm)
車両の受信電力 :P1crx(dBm)
とすると、
P1ktx+Gk−Lr+Gc=P1crx ……(3)
であり、車両の受信電力P1crxは、車両での第2受信信号強度RSSI2に近似する値となる。ここで、車両の送信受信アンテナ・ゲインGcと電子キーの送信受信アンテナ・ゲインGkとは、下記のようになっており、
Gc=Gk+□(dBm) ……(4)
で、送信受信アンテナでの合計電力P0は、車両及び電子キーとも同じP0、
P0=P1ctx+Gc=P1ktx+Gk ……(5)
とすると、
P1ctx(車両の送信電力) = P1ktx(電子キーの送信電力) − □
……(6)
となる。□は差分を表わす。
【0057】
また、
Gc=Gk+□(dBm) ……(7)
で、
P1crx(車両の受信電力)+Gc=P1krx(電子キーの受信電力)+Gk
……(8)
とすると、前記式(1)となる。
【0058】
上記のことから、P1ctx(車両の送信電力)とP1ktx(電子キーの送信電力)とは、周波数が一定の場合、車両と電子キーでの受信信号強度の差分□が一定となる。
従って、差分□が常に一定であれば、式(1)が成立することになる。
【0059】
本実施形態では、式(1)が成立するか否かの判定のために、照合ECU9では受信信号強度算出部9aでレスポンス21の第2受信信号強度RSSI2を算出し、このレスポンス21の第2受信信号強度RSSI2とレスポンス21で通知された受信信号強度情報30(第1受信信号強度RSSI1)との差分を、算出部9bで算出する。そして、通信正否判定部31は、基準値Rと前記差分とを比較することにより、通信正否の判定を行う。本実施形態では、差分が基準値Rに一致することは、差分が基準範囲にあることに相当する。
【0060】
なお、基準値Rと差分□との比較においては、基準値Rと差分□とが同一値の場合に、中継器を使った不正行為がない適正な通信であると判定してもよく、或いは、差分□がR−Δ≦□≦R+Δの範囲(すなわち、基準範囲)内である場合に、差分が一定であると看做して中継器を使った不正行為がない適正な通信と判定してもよい。なお、Δは、中継器を使った不正行為がないと判定してもよいとする値である。
【0061】
図4のS10において、式(1)を満たす場合(すなわち、成立する場合)には、照合ECU9はスマート通信を正規通信として判定処理するとともに、スマート照合(車外照合)を成立として処理し、S20において、ドアロック装置6によるドアロック施解錠を許可又は実行する。
【0062】
一方、図6に示すように中継器22により片側リレーで電波が中継される場合、動作範囲は、車両1から電子キー2で決まるため、中継器22を介して通信が行われると、前記式(1)を満たさない。このため、中継器を使った不正行為が検出できることになる。
【0063】
なお、図6において、Grは、中継器22のアンテナのゲイン、P1rtxは、中継器22の送信電力、P1rrxは、中継器22の受信電力である。また、Lxは、中継器22と車両1の距離xによる伝搬ロス、Lyは、中継器22と電子キー2の距離yによる伝搬ロスである。
【0064】
また、中継器22により双方向リレーで電波が中継される場合、車両1から電子キー2への通信に関与するアンテナ・ゲインGc、Gr、Gkと、電子キー2から車両1への通信するアンテナ・ゲインGc、Gr、Gkとが等しくないと、受信信号強度の差分□が、一定とならず、式(1)を満足しない。すなわち、このような双方向リレーで電波を中継する際に、往路に関与するゲインと復路で関与するゲインを相互に等しくなるようにする中継器の作成は難しい。従って、中継器を使った不正行為の検出を容易に行うことができる。
【0065】
上記のようにして、S10において、式(1)を満たさない場合(すなわち、不成立の場合)には、照合ECU9はスマート通信を不正通信として判定処理し、S30において、スマート照合(車外照合)を不成立として処理する。
【0066】
以上により、本実施形態においては、スマート通信の際に車両1と電子キー2との間で同一周波数のUHF電波24、UHF電波28で通信を行う。そして、電子キー2は車両1からの電波を受信したときの第1受信信号強度RSSI1を算出する。そして、電子キー2では、算出した第1受信信号強度RSSI1を受信信号強度情報30として車両1に送信する。車両1では、受信信号強度情報30が乗った電波の第2受信信号強度RSSI2を算出し、受信信号強度情報30(第1受信信号強度RSSI1)と算出した第2受信信号強度RSSI2との差分を算出し、この差分が基準値と同一であれば、スマート通信を正規通信として処理し、一方で、同一でない場合には、中継器22を使用した不正通信として処理する。よって、中継器22を使用した不正通信を見分けることが可能となるので、不正通信を成立として処理させてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0067】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)車両1と電子キー2との間を同一周波数のUHF電波で通信し、電子キー2では車両1からの電波の第1受信信号強度RSSI1を算出して、その受信信号強度を受信信号強度情報30として車両1に送信する。そして、車両1では、通知された受信信号強度情報30(第1受信信号強度RSSI1)と受信信号強度情報30が乗った電波の第2受信信号強度RSSI2の差分を算出して、この差分が基準値と同一か否かを確認することにより、スマート通信の通信正否を判定する。このため、スマート通信が中継器22を使用した通信か否かを見分けることが可能となるので、中継器22を使用した不正通信を成立させ難くすることができる。よって、車両1の不正使用や盗難に対するセキュリティ性を確保することができる。
【0068】
(2)スマート通信の正否認証を車両1側で行うため、この種の認証機能を新たに電子キー2に設ける必要がない。よって、今まで使用していた電子キー2をそのまま継続使用することができ、かつ電子キー2を簡素な構造で済ますことができる。
【0069】
(3)第1受信信号強度RSSI1と第2受信信号強度RSSI2との差分とするため、簡単な演算で素早く正規通信か否かを判定することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のキー操作フリーシステム3に採用した通信不正成立防止システム23を図7に従って説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる構成を中心に説明し、第1実施形態と同一構成または相当する構成については同一符号を付して詳しい説明を省略する。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、車両1と電子キー2との間の通信に使用されるUHF電波は、同一周波数である。また、本実施形態を含めた各実施形態のUHF電波の種類は限定するものではない。
【0070】
本実施形態では、電子キー2のキー制御部13には、比較部13aが設けられているところが、第1実施形態と異なっている。
比較部13aは、受信信号強度算出部26が算出した、車両1から送信されたUHF電波の第1受信信号強度RSSI1を受信信号強度飽和検出用の第1閾値と比較する。なお、第1閾値は、例えば受信機14内部の回路が処理できるUHF電波の受信信号強度の飽和値(最大値)よりも若干低い値である。第1受信信号強度RSSI1が受信信号強度飽和検出用の第1閾値を超えている場合には、比較部13aは、受信電波の第1受信信号強度RSSI1が飽和していると判定する。受信信号強度通知部27は、この判定があった場合には、車両1に、飽和しているとした第1受信信号強度RSSI1及び減衰要請を、UHF電波で通知する。この通知するUHF電波は、車両1からのUHF電波が飽和していると判定された場合、電子キー2がその応答として送信するものである。
【0071】
ここで、比較部13aは、第1比較手段に相当し、前記減衰要請は第1減衰要請に相当する。
車両1の照合ECU9では、第1受信信号強度RSSI1及び減衰要請を受信すると、送信処理部25が、それらに基づいて、送信出力を前回出力よりも減衰するようにパワーコントロールを行って電子キー2にUHF電波を送信する。この場合、送信出力の減衰量αは、予め設定された量である。
【0072】
なお、車両1の照合ECU9では、第1受信信号強度RSSI1及び減衰要請を受信する毎に、前述の同様の処理を行う。
そして、算出部9bは、上記処理があった後に、電子キー2から減衰要請がなくて第1受信信号強度RSSI1の通知を受けた場合には、前記減衰要請がない電波自体の第2受信信号強度RSSI2と、該電波により通知された新たな第1受信信号強度RSSI1との差分を算出する。
【0073】
この場合、通信正否判定部31は、送信出力を減衰量αで減衰した回数nに応じて、「R」から「R+n・α」に変更した基準値と、算出部9bが算出した差分とを比較することにより、通信正否の判定を行う。
【0074】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)車両1と電子キー2とが接近している場合において、電子キー2が受信した電波が飽和する場合がある。この場合、本実施形態では、電子キー2から車両1の照合ECU9に対して電波の送信出力を減衰要請することにより、電子キー2が受信する電波の受信信号強度の飽和がないようにできる。この飽和がなくなった状態で、スマート通信の通信正否を判定することができる。その結果、第1実施形態と同様の効果を得る。
【0075】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のキー操作フリーシステム3に採用した通信不正成立防止システム23を図8に従って説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる構成を中心に説明し、第1実施形態と同一構成または相当する構成については同一符号を付して詳しい説明を省略する。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、車両1と電子キー2との間の通信に使用されるUHF電波は、同一周波数である。
【0076】
本実施形態では、車両1の照合ECU9には、比較部9cが設けられているところが、第1実施形態と異なっている。
比較部9cは、受信信号強度算出部9aが算出した電子キー2からのUHF電波の第2受信信号強度RSSI2と、受信信号強度飽和検出用の第2閾値とを比較し、第2受信信号強度RSSI2が受信信号強度飽和検出用の第2閾値を超えている場合には、受信電波の受信信号強度が飽和していると判定する。なお、第2閾値は、例えば車両チューナ12内部の回路が処理できるUHF電波の受信信号強度の飽和値(最大値)よりも若干低い値である。
【0077】
送信処理部25は、減衰要請と、第2閾値を越えた第2受信信号強度RSSI2を電子キー2に送信する。ここで、前記比較部9cは第2比較手段に相当し、前記減衰要請は第2減衰要請に相当する。
【0078】
電子キー2の受信信号強度通知部27は、前記減衰要請と第2閾値を越えた第2受信信号強度RSSI2に基づいて、送信出力が前回出力よりも減衰するようにパワーコントロールを行って、車両1に電波を送信する。この場合、送信出力の減衰量βは、予め設定された量である。なお、減衰量βは第2実施形態の減衰量αと同じでも異なっていてもよい。
【0079】
電子キー2では、前記減衰要請と第2閾値を越えた第2受信信号強度RSSI2を受信する毎に、前述の同様の処理を行う。
車両1の照合ECU9の算出部9bは、第2閾値を越えた第2受信信号強度RSSI2を送信した直後又はそれ以降に送信処理部25が前記減衰要請を含まないチャレンジ20を行った後に電子キー2から送信された電波自体の第2受信信号強度RSSI2と、該第2受信信号強度RSSI2が算出された電波で通知された新たな第1受信信号強度RSSI1との差分を算出する。そして、通信正否判定部31は、送信出力を減衰量βで減衰した回数m(すなわち、減衰要請回数)に応じて、「R」から「R+m・β」に変更した基準値と、算出部9bが算出した差分とを比較することにより、通信正否の判定を行う。
【0080】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)車両1と電子キー2とが接近している場合において、照合ECU9が受信した電波が飽和する場合がある。この場合、本実施形態では、照合ECU9から電子キー2に対して電波の送信出力を減衰要請することにより、照合ECU9が受信する電波の受信信号強度の飽和がないようにできる。この飽和がなくなった状態で、スマート通信の通信正否を判定することができる。その結果、第1実施形態と同様の効果を得る。
【0081】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態のキー操作フリーシステム3に採用した通信不正成立防止システム23を図9を参照して説明する。第4実施形態は、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせたものである。すなわち、本実施形態では、図9に示すように比較部13aを有する電子キー2と、比較部9cを有する照合ECU9とにより、キー操作フリーシステム3及び通信不正成立防止システム23が構成されている。この通信不正成立防止システム23は、第2実施形態と第3実施形態でそれぞれ説明した作用効果を有するものとなる。
【0082】
なお、第4実施形態において、n・減衰量α≠m・減衰量βの場合、通信正否判定部31は、送信出力を、車両1側と電子キー2側でそれぞれ減衰した量に応じて、「R」から「R+n・α−mβ」に変更した基準値と、算出部9bが算出した差分とを比較することにより、通信正否の判定を行う。
【0083】
また、n・減衰量α=m・減衰量βの場合、通信正否判定部31は、基準値を「R」にして、該基準値Rと、算出部9bが算出した差分とを比較することにより、通信正否の判定を行う。
【0084】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態のキー操作フリーシステム3に採用した通信不正成立防止システム23を図10及び図11に従って説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる構成を中心に説明し、第1実施形態と同一構成または相当する構成については同一符号を付して詳しい説明を省略する。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、車両1と電子キー2との間の通信に使用されるUHF電波は、同一周波数である。
【0085】
図11は、車両1の送信受信アンテナ・ゲインGcと電子キー2の送信受信アンテナ・ゲインGkが略等しい場合において、電子キー2を持った正規ユーザがヌルを通って移動した場合における第1受信信号強度RSSI1(図11中の白抜き丸印)及び第2受信信号強度RSSI2(図11中の白抜き三角印)の推移を示す。アンテナ・ゲインGc・Gkが略等しいため、車両1と電子キー2との相対位置が同じであれば、第1受信信号強度RSSI1及び第2受信信号強度RSSI2の各値は略一定となるが、電子キー2がヌルに入った場合には、同図に示すように、前記各値が低下する。
【0086】
ここで、電子キー2が照合ECU9からの電波を受信して第1受信信号強度RSSI1を算出した時点から、照合ECU9が電子キー2からの電波を受信して第2受信信号強度RSSI2を算出するまでの間に、例えば電子キー2を持った正規ユーザがヌルに移動する場合を想定する。この場合、同一周波数で双方向通信を行っていても、同図に示すように、順次取得する第1受信信号強度RSSI1と第2受信信号強度RSSI2との差分が変化する。すなわち、ヌルに移動しなければ第1受信信号強度RSSI1及び第2受信信号強度RSSI2の各値は略一定となることから差分は略ゼロとなるはずであるが、第1受信信号強度RSSI1と第2受信信号強度RSSI2との差分は、例えば同図中の差分□xで示すように大きくなる。その結果、正規ユーザによる通信を誤って正規通信でないと判定するおそれがある。なお、差分と比較する基準範囲を大きく設定することも考えられるが、この場合には、中継器22を介した不正通信を誤って正規通信としてしまうおそれが生じる。
【0087】
この点を踏まえ、本実施形態では、電子キー2と照合ECU9とは、複数回に亘る双方向通信を行ってスマート通信の通信正否を判定する。
詳しくは、受信信号強度通知部27及び送信処理部25は、単位時間Tに基づいて同一の時間間隔で交互に電波通信を行う。本例では、受信信号強度通知部27は、電子キー2が照合ECU9からUHF電波24を受け取ってから所定の時間間隔(例えば単位時間Tの2倍の時間「2T」)後にUHF電波28を送信する。また、送信処理部25は、照合ECU9が電子キー2からUHF電波28を受け取ってから前記所定の時間間隔後にUHF電波24を送信する。なお、所定の時間間隔は、照合ECU9及びキー制御部13がUHF電波24,28の送信に必要な演算処理にかかる時間よりも長く設定されている。
【0088】
図10に示すように、本実施形態の車両1の照合ECU9には、補助算出部41が設けられている。補助算出部41は、複数回に亘る双方向通信にて取得した複数の第1受信信号強度RSSI1に基づく判定用第1受信信号強度RSSI1_est、及びこの複数回に亘る双方向通信にて取得した複数の第2受信信号強度RSSI2に基づく判定用第2受信信号強度RSSI2_estを算出する。つまり、本実施形態では、補助算出部41が補助算出手段に相当する。
【0089】
より詳しくは、補助算出部41は、2回に亘る双方向通信にて取得した2つの第1受信信号強度RSSI1に基づいて、該2つの第1受信信号強度RSSI1及び該2つの第2受信信号強度RSSI2を得た期間内における所定時点Pxでの照合ECU9からの電波の受信信号強度を推定し、この推定値を判定用第1受信信号強度RSSI1_estとして算出する。具体的には、補助算出部41は、下記式(9)を用いて算出する。
【0090】
RSSI1_est=(RSSI1_n1・T2+RSSI1_n2・T1)/(T1+T2)……(9)
なお、図11の拡大図に一例を示すように、「RSSI1_n1」は2回の双方向通信にて取得した先の第1受信信号強度(図11中の時点P1における第1受信信号強度RSSI1)を示し、「RSSI1_n2」は2回の双方向通信にて取得した後の第1受信信号強度(図11中の時点P2における第1受信信号強度RSSI1)を示す。また、「T1」は先の第1受信信号強度RSSI1_n1を取得した時点P1から所定時点Pxまでの時間間隔を示し、「T2」は所定時点Pxから後の第1受信信号強度RSSI1_n2を取得した時点P2までの時間間隔を示す。本例では、所定時点Pxは、2つの第1受信信号強度RSSI1を得た期間内において、先の第1受信信号強度RSSI1_n1から単位時間Tの3倍(3T)の時間が経過した時点に設定されている。したがって、時間間隔T1が単位時間Tの3倍になるとともに、時間間隔T2が単位時間Tと等しくなり、時間間隔T1と時間間隔T2との比が「3:1」となっている。
【0091】
したがって、図11において黒い丸印で示されるように、判定用第1受信信号強度RSSI1_estは、第1受信信号強度RSSI1_n1,RSSI1_n2を時間間隔T1,T2によって重み付けした平均となり、所定時点Pxにおいて照合ECU9がUHF電波24を送信した場合の受信信号強度の推定値として算出される。
【0092】
また、補助算出部41は、当該2回に亘る双方向通信にて取得した2つの第2受信信号強度RSSI2に基づいて所定時点Pxでの電子キー2からの電波の受信信号強度を推定し、この推定値を判定用第2受信信号強度RSSI2_estとして算出する。具体的には、補助算出部41は、下記式(10)を用いて算出する。
【0093】
RSSI2_est=(RSSI2_n1・T4+RSSI2_n2・T3)/(T3+T4)……(10)
なお、「RSSI2_n1」は2回の双方向通信にて取得した先の第2受信信号強度(図11中の時点P3における第2受信信号強度RSSI2)を示し、「RSSI2_n2」は2回の双方向通信にて取得した後の第2受信信号強度(図11中の時点P4における第2受信信号強度RSSI2)を示す。また、「T3」は先の第2受信信号強度RSSI2_n1を取得した時点P3から所定時点Pxまでの時間間隔を示し、「T4」は所定時点Pxから後の第2受信信号強度RSSI2_n2を取得した時点P4までの時間間隔を示す。本例では、上記のように所定時点Pxが先の第1受信信号強度RSSI1_n1から単位時間Tの3倍(3T)に設定されていることから、時間間隔T3が単位時間Tと等しくなり、時間間隔T4が単位時間Tの3倍となる。つまり、時間間隔T3と時間間隔T4との比が「1:3」となっている。
【0094】
したがって、図11において黒い三角印で示されるように、判定用第2受信信号強度RSSI2_estは、第2受信信号強度RSSI2_n1,RSSI2_n2を時間間隔T3,T4によって重み付けした平均となり、所定時点Pxにおいて電子キー2がUHF電波28を送信した場合の受信信号強度の推定値として算出される。つまり、判定用第1受信信号強度RSSI1_estと判定用第2受信信号強度RSSI2_estとは、電子キー2と照合ECU9との相対位置が同じ状況下で通信した場合の第1受信信号強度RSSI1及び第2受信信号強度RSSI2とそれぞれ近似した値になる。
【0095】
そして、算出部9bは、判定用第1受信信号強度RSSI1_estと判定用第2受信信号強度RSSI2_estとの差分を算出する。本実施形態では、当該差分が判定値に相当する。その後、通信正否判定部31は、上記第1実施形態と同様にスマート通信の通信正否を判定する。
【0096】
本実施形態の構成によれば、上記第1実施形態の(2)の効果に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)同一周波数のUHF電波で複数回に亘り通信し、車両1では、電子キー2から通知された第1受信信号強度RSSI1と該第1受信信号強度RSSI1が乗った電波の第2受信信号強度RSSI2に基づき、判定用第1受信信号強度RSSI1_est及び判定用第2受信信号強度RSSI2_estを算出し、これらの差分を算出する。そして、この差分が基準値と同一か否かを確認することにより、スマート通信の通信正否を判定する。このため、スマート通信が中継器22を使用した通信か否かを見分けることが可能となるので、中継器22を使用した不正通信を成立させ難くすることができる。よって、車両1の不正使用や盗難に対するセキュリティ性を確保することができる。
【0097】
(2)補助算出部41は、第1受信信号強度RSSI1_n1及び第1受信信号強度RSSI1_n2に基づいて所定時点Pxでの第1受信信号強度RSSI1の推定値を判定用第1受信信号強度RSSI1_estとして算出した。また、第2受信信号強度RSSI2_n1及び第2受信信号強度RSSI2_n2に基づいて所定時点Pxでの第2受信信号強度RSSI2の推定値を判定用第2受信信号強度RSSI2_estとして算出した。このように、判定用第1受信信号強度RSSI1_est及び判定用第2受信信号強度RSSI2_estが、電子キー2と照合ECU9との相対位置が同じ状況下で通信した場合の第1受信信号強度RSSI1及び第2受信信号強度RSSI2とそれぞれ近似した値になる。したがって、第1受信信号強度RSSI1及び第2受信信号強度RSSI2がそれぞれ変化しても、判定用第1受信信号強度RSSI1_estと判定用第2受信信号強度RSSI2_estとの差分は、例えば図11中の差分□yで示すようにごく小さな値となり、その変化が好適に抑制される。そのため、正規ユーザによる通信を誤って正規通信でないと判定することを好適に低減できる。
【0098】
(3)補助算出部41は、上記式(9)及び式(10)を用い、各2つの第1受信信号強度RSSI1及び第2受信信号強度RSSI2に基づいて判定用第1受信信号強度RSSI1_est及び判定用第2受信信号強度RSSI2_estを算出した。そのため、補助算出部41に大きな演算負荷が加わることを抑制しつつ、2回の双方向通信で速やかに正規通信か否かの判定を行うことができる。
【0099】
(4)受信信号強度通知部27及び送信処理部25が同一の時間間隔で交互に電波通信を行い、補助算出部41が時間間隔T1と時間間隔T2との比を「3:1」とするとともに時間間隔T3と時間間隔T4との比を「1:3」として、上記式(9)及び式(10)を用いるようにした。そのため、補助算出部41に過大な演算負荷が加わることを好適に抑制しつつ、2回の双方向通信で速やかに正規通信か否かの判定を行うことができる。
【0100】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・上記各実施形態では、レスポンス21に受信信号強度情報30を乗せたが、電子キー2から送信するUHF電波28において、受信信号強度情報30を乗せる電波は、前述したアック信号17、19、レスポンス21のいずれでもよく、また、他の種類のUHF電波であってもよい。そして、受信信号強度情報30を乗せた電波の受信信号強度算出部9aで算出し、算出部9bで差分を算出した後、通信正否判定部31において、基準値Rと差分□とを比較するようにしてもよい。
【0101】
・上記各実施形態では、レスポンス21の第2受信信号強度RSSI2とチャレンジ20の第1受信信号強度RSSI1(受信信号強度情報30)との差分が基準値Rと異なった場合が1回あった場合、正規通信ではないとした。
【0102】
これに代えて、車両1と電子キー2との各種電波の通信において、複数回通信し、車両1で第1受信信号強度RSSI1(受信信号強度情報30)が通知された電波の第1受信信号強度RSSI1と該第1受信信号強度RSSI1との差分が基準値と同一でない場合が通信正否判定部31の判定で複数回あった後に、差分が一定となった場合、不正通信として処理してもよい。
【0103】
・第2実施形態では、車両1から送信されたUHF電波が飽和しているとき、電子キー2は、減衰要請(第1減衰要請)と、そのときの第1受信信号強度RSSI1を車両1に送信することとしたが、減衰要請(第1減衰要請)のみを車両1に送信してもよい。この場合、車両1の照合ECU9における送信処理部25では、この減衰要請に基づいて、UHF電波の送信出力を減衰する。
【0104】
・第3実施形態では、電子キー2から送信されたUHF電波が飽和しているとき、車両1は、減衰要請(第2減衰要請)と、そのときの第2受信信号強度RSSI2を電子キー2に送信することとしたが、減衰要請(第2減衰要請)のみを電子キー2に送信してもよい。この場合、電子キー2の受信信号強度通知部27では、この減衰要請に基づいて、UHF電波の送信出力を減衰する。
【0105】
・上記第5実施形態において、上記第2〜第4実施形態のようにUHF電波の飽和に基づき減衰要請を行う構成を適用してもよい。
・上記第5実施形態において、図12に示すように、補助算出部41が時間間隔T1と時間間隔T2との比を「1:3」とするとともに時間間隔T3と時間間隔T4との比を「3:1」として、所定時点Pyにおける判定用第1受信信号強度RSSI1_est及び判定用第2受信信号強度RSSI2_estを算出するようにしてもよい。このように構成しても、上記第5実施形態と同様の効果を奏する。なお、図12において、黒い四角印が判定用第1受信信号強度RSSI1_estを示し、黒い星印が判定用第2受信信号強度RSSI2_estを示す。
【0106】
・上記第5実施形態では、補助算出部41が上記式(9)及び式(10)を用いて判定用第1受信信号強度RSSI1_est及び判定用第2受信信号強度RSSI2_estを算出した。しかし、これに限らず、2つ以上の第1受信信号強度RSSI1及び第2受信信号強度RSSI2に基づき例えば二次近似等の近似式を用いて判定用第1受信信号強度RSSI1_est及び判定用第2受信信号強度RSSI2_estを算出してもよく、その算出方法は適宜変更可能である。
【0107】
・上記第5実施形態では、受信信号強度通知部27及び送信処理部25が同一の時間間隔で交互に電波通信を行うようにしたが、これに限らず、異なる時間間隔で交互に電波通信を行うようにしてもよい。
【0108】
・上記第5実施形態では、判定用第1受信信号強度RSSI1_est及び判定用第2受信信号強度RSSI2_estとして、同じ所定時点Pxでの第1受信信号強度RSSI1及び第2受信信号強度RSSI2を推定して算出した。しかし、これに限らず、判定用第1受信信号強度RSSI1_estと判定用第2受信信号強度RSSI2_estとで異なる時点での第1受信信号強度RSSI1及び第2受信信号強度RSSI2を推定して算出してもよい。この場合、判定用第1受信信号強度RSSI1_est及び判定用第2受信信号強度RSSI2_estの算出方法としては、上記式(9)及び式(10)や近似式等を適宜用いることができる。
【0109】
・上記第5実施形態では、算出部9bが判定用第1受信信号強度RSSI1_estと判定用第2受信信号強度RSSI2_estとの差分を判定値として用いた。しかし、これに限らず、例えば判定用第1受信信号強度RSSI1_estと第2受信信号強度RSSI2との差分又は第1受信信号強度RSSI1と判定用第2受信信号強度RSSI2_estとの差分を判定値としてよい。
【0110】
例えば図13に示すように、時点P1で取得した第1受信信号強度RSSI1_n1と時点P2で取得した第1受信信号強度RSSI1_n2との平均値を判定用第1受信信号強度RSSI1_estとし、この判定用第1受信信号強度RSSI1_estと時点P3で取得した第2受信信号強度RSSI2との差分を判定値としてもよい。この構成によれば、双方向通信を行う間に電子キーを持った正規ユーザが例えばヌルに移動し、第1受信信号強度RSSI1及び第2受信信号強度RSSI2がそれぞれ変化しても、判定用第1受信信号強度RSSI1_estと第2受信信号強度RSSI2との差分は、例えば図13中の差分□yで示すように小さな値となる。このように差分の変化を抑制でき、正規ユーザによる通信を誤って正規通信でないと判定することを低減できる。なお、この場合において、例えば判定用第1受信信号強度RSSI1_estと判定用第2受信信号強度RSSI2_estとの差分を判定値としてもよいことは言うまでもない。
【0111】
・上記各実施形態において、電子キーシステムは、キー操作フリーシステム3に限定されず、例えばイモビライザーシステムとしてもよい。
・上記各実施形態において、双方向通信に使用する周波数は、UHFに限定されず、例えば、LF(Low Frequency)、HF(High Frequency)等の他の周波数を使用してもよい。
【0112】
・上記各実施形態において、通信マスタは、照合ECU9に限らず、通信を管理する他のECUとしてもよい。
・上記各実施形態において、通信端末は、電子キー2に限らず、無線通信が可能な端末であればよい。
【0113】
・上記各実施形態において、問い合せは、リクエスト信号Srqに限らず、他の信号が採用可能である。また、応答は、ID信号Sidに限定されず、電子キー2が車両1に返信する信号であればよい。
【0114】
・上記各実施形態において、通信不正成立防止システム23は、車両1に使用されることに限らず、他の機器や装置に応用可能である。
・上記各実施形態では、第1通信部を通信端末(電子キー2)とし、第2通信部を通信マスタ(照合ECU9)としたが、逆に第1通信部を通信マスタ(照合ECU9)とし、第2通信部を通信端末(電子キー2)としてもよい。すなわち、電子キー2側で、通信正否判定を行う前記実施形態の照合ECU9の構成を、電子キー側に設けてもよい。
【0115】
・上記各実施形態では、第1通信部または第2通信部のうちのいずれか一方で、通信正否判定を行うようにしたが、通信正否判定を行う前記実施形態の照合ECU9の構成を、第1通信部、第2通信部の両方に設けてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…車両、2…電子キー(通信端末、第1通信部)、3…キー操作フリーシステム、
4…エンジンスイッチ、5…キー照合装置、6…ドアロック装置、
7…エンジン始動装置、8…車内バス、9…照合ECU(通信マスタ、第2通信部)、
9a…受信信号強度算出部(第2受信信号強度算出手段)、
9b…算出部(算出手段)、
9c…比較部(第2比較手段、第3比較手段)、
10…車外発信機、11…車内発信機、12…車両チューナ、
13…キー制御部、13a…比較部(第1比較手段)、
14…受信機、15…UHF送信機、16…ウェイク信号、
17、19…アック信号、18…ビークルID、20…チャレンジ、
21…レスポンス、22…中継器(リレー)、
23…通信不正成立防止システム、
24…UHF電波、25…送信処理部(第2送信実行手段)、
26…受信信号強度算出部(第1受信信号強度算出手段)、
27…受信信号強度通知部(第1送信実行手段)、
28…UHF電波、29…主データ、30…受信信号強度情報、
31…通信正否判定部(通信正否判定手段)、
41…補助判定部(補助判定手段)、
Srq…問い合せとしてのリクエスト信号、Sid…応答としてのID信号、
RSSI1,RSSI1_n1,RSSI1_n2…第1受信信号強度、RSSI2,RSSI2_n1,RSSI2_n2…第2受信信号強度、RSSI1_est…判定用第1受信信号強度、RSSI2_est…判定用第2受信信号強度。
図1
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