【実施例1】
【0014】
本発明の第1の実施例について
図1、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0015】
図1は、本実施例に係る建設機械の一例としてのハイブリッド式油圧ショベルの概略構成を示す図である。
【0016】
図1において、ハイブリッド油圧ショベル(以下単に「油圧ショベル」という。)1は、下部走行体100と、上部旋回体200と、ショベル機構300とを備えている。
【0017】
下部走行体100は、一対のクローラ101と、クローラフレーム102と、各クローラを独立に駆動する一対の走行油圧モータ103(全て左側のみ図示)とを備えている。
【0018】
上部旋回体200は、支持構造体としての旋回フレーム201を有し、旋回フレーム201上には、各油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプ2、油圧ポンプ2を駆動するエンジン3、エンジン3をアシストするアシスト発電モータ4、下部走行体100に対して上部旋回体200を旋回させる旋回装置5、旋回装置5を駆動する旋回油圧モータ6、旋回油圧モータ6をアシストする旋回電動モータ7、アシスト発電モータ4及び旋回電動モータ7に電力を供給する蓄電装置8等が搭載されている。また、旋回フレーム201の前方左側に設けられた運転室202には、モニタ9、通信端末10等が設置されている。
【0019】
ショベル機構300は、上部旋回体200に上下方向に回動可能に取り付けられたブーム301と、ブーム301の先端に回動可能に取り付けられたアーム302と、アーム302の先端に回動可能に取り付けられたバケット303とを有している。ブーム301はブームシリンダ304の伸縮により上下方向に回動し、アーム302はアームシリンダ305の伸縮により上下・前後方向に回動し、バケット303はバケットシリンダ306の伸縮により上下・前後方向に回動する。
【0020】
図2は、油圧ショベル1の動力系統を示すブロック図である。
【0021】
図2において、アシスト発電モータ4は、油圧ポンプ2及び発熱機器であるエンジン3と機械的に接続されており、エンジン3をアシストする電動機としての機能と、エンジン3の余剰動力を電力に変換する発電機としての機能とを有する。
【0022】
旋回電動モータ7は、旋回装置5及び旋回油圧モータ6と機械的に接続されており、旋回油圧モータ6をアシストする電動機としての機能と、旋回制動時の旋回エネルギーを電力に変換して回生する発電機としての機能とを有する。
【0023】
蓄電装置8は、電気的に接続されたアシスト発電モータ4及び旋回電動モータ7に電力を供給する放電機能と、アシスト発電モータ4及び旋回電動モータ7によって発電された電力を蓄電する充電機能とを有する。
【0024】
第1の冷却系20は、エンジン3の内部を通過するように配設された第1の環状配管21と、第1の環状配管21に設けられたラジエータ22と、第1の環状配管21内で冷媒を循環させる冷却ポンプ23とを有する。エンジン3は、第1の環状配管21内を循環する冷媒との熱交換によって冷却される。エンジン3との熱交換で昇温した冷媒は、ラジエータ22で放熱され、冷却される。
【0025】
暖機系30は、蓄電装置8に隣接して設けられた熱交換プレート31と、第1の冷却系のエンジン3の下流側かつラジエータ22の上流側から分岐し、熱交換プレート31内を通り、第1の冷却系20のラジエータ22の下流側かつ冷却ポンプ23の上流側に合流するように配設された分岐配管32と、分岐配管32の入口付近に設けられた電磁バルブ33とを有する。電磁バルブ33を開弁することにより、エンジン3を通過した高温(90℃程度)の冷媒の一部が熱交換プレート31に供給され、蓄電装置8が暖機される。
【0026】
制御装置11は、バッテリ温度センサ12で検出した蓄電装置8の温度に応じて、電磁バルブ33の開閉制御を行う。また、電磁バルブ33への制御信号とプレート温度センサ13で検出した熱交換プレート31の温度とに応じて、電磁バルブ33の異常検知を行う。
【0027】
まず、制御装置11による通常時の電磁バルブ33の開閉制御について説明する。
【0028】
バッテリ温度センサ12で検出した蓄電装置8の温度が後述する第2の規定値T
BL以下である場合は、蓄電装置8の暖機が必要であると判断し、制御装置11は電磁バルブ33に開弁を指示する制御信号(以下「開信号」という。)を出力する。電磁バルブ33が開弁すると、冷媒の一部が第1の冷却系20から暖機系30へ流れ込み、熱交換プレート31を暖め、熱交換プレート31と熱交換を行う蓄電装置8の暖機が行われる。
【0029】
一方、バッテリ温度センサ12で検出した蓄電装置8の温度が第2の規定値T
BLより高い場合は、蓄電装置8の暖機は不要と判断し、制御装置11は電磁バルブ33に閉弁を指示する制御信号(以下「閉信号」という。)を出力する。電磁バルブ33が閉じると、第1の冷却系20から暖機系30への冷媒の流入が止まり、蓄電装置8の暖機が停止する。
【0030】
しかし、電磁バルブ33が故障した場合(例えば、電磁バルブ33が異物を噛み込んで開固着した場合)は、制御装置11が電磁バルブ33に閉信号を出力しても、電磁バルブ33が閉じないため、第1の冷却系20から熱交換プレート31に冷媒が供給され続けることとなる。熱交換プレート31に供給される冷媒は、エンジン3との熱交換により高温(例えば90℃)となっているため、暖機系30に供給され続けると、熱交換プレート31及び蓄電装置8が過度に昇温されてしまう。蓄電装置8は、高温(例えば50℃程度)になると劣化が促進し、寿命が低下してしまうため、蓄電装置8の寿命低下を抑制するには、蓄電装置8が過度に昇温される前に電磁バルブ33の故障を検知し、適切な処置(例えば、油圧ショベル1を安全な場所へ退避させた後、エンジン3を停止させて修理を待つ等)を速やかに行う必要がある。
【0031】
図3は、本実施例に係る制御装置11の制御フローを示す図である。制御装置11は、上述した通常時の電磁バルブ33の開閉制御に加えて、電磁バルブ33の異常検知を行う。以下、当該制御フローを構成する各ステップについて順に説明する。
【0032】
図3において、まず、電磁バルブ33に閉信号が出力されているか否かを判定する(ステップS1)。
【0033】
ステップS1で電磁バルブ33に閉信号が出力されている(YES)と判定した場合は、プレート温度センサ13で検出した熱交換プレート31の温度が第1の規定値T
PH以上であるか否かを判定する(ステップS2)。ここで、第1の規定値T
PHは、電磁バルブ33が閉弁した後(すなわち、蓄電装置8の暖機が終了した後)に到達し得ない温度に設定される。これにより、電磁バルブ33に閉信号を出力しているにも関わらず、暖機系30に高温の冷媒が供給され続けて熱交換プレート31の温度が過剰に高くなった状態(すなわち、電磁バルブ33を閉弁できない状態)を検知することが可能となる。
【0034】
ステップS2で熱交換プレート31の温度が第1の規定値T
PH以上である(YES)と判定した場合は、電磁バルブ33が故障していると判断し、モニタ9に異常を表示すると共に通信端末10で異常を発信する(ステップS3)。上述したステップS1〜S3は、電磁バルブ33の異常検知フローを構成している。
【0035】
ステップS3に続いて、蓄電装置8の充放電を制限してエンジン動力のみで稼働するモードに移行し(ステップS4)、ステップS1に戻る。これにより、蓄電装置3の発熱を防止することができ、蓄電装置8の昇温を抑制することが可能となる。
【0036】
一方、ステップS1で電磁バルブ33に開信号が出力されている(NO)と判定した場合、又は、ステップS2で熱交換プレート31の温度が第1の規定値T
PH未満である(NO)と判定した場合は、バッテリ温度センサ12で検出した蓄電装置8の温度が第2の規定値T
BL以下であるか否かを判定する(ステップS5)。ここで、第2の規定値T
BLは、蓄電装置8の使用下限温度(例えば10℃)に所定のマージンを加えた値(例えば20℃)に設定される。これにより、蓄電装置8の暖機が必要か否かを判定することができる。
【0037】
ステップS5で蓄電装置8の温度が第2の規定値T
BL以下である(YES)と判定した場合は、電磁バルブ33に開信号を出力し(ステップS6)、ステップS1に戻る。
【0038】
ステップS5で蓄電装置8の温度が第2の規定値T
BL未満である(NO)と判定した場合は、電磁バルブ33に閉信号を出力し(ステップS7)、ステップS1に戻る。上述したステップS5〜S7は、通常時の電磁バルブ33の開閉制御フローを構成している。
【0039】
本実施例によれば、蓄電装置8を循環する冷媒の流量を調整する電磁バルブ33が故障した場合に、運転室202のモニタ9に異常が表示される。これにより、油圧ショベル1を運転しているオペレータは、蓄電装置8を保護するための適切な処置を速やかに行うことができ、蓄電装置8の寿命低下を抑制することが可能となる。
【0040】
また、運転室202の通信端末10から異常が発信され、修理を行うサービスマンに電磁バルブ33の故障が通知されるため、サービスマンが現場に到着するまでの時間を短縮することができる。さらに、故障個所が電磁バルブ33であることが予め特定されるため、故障原因の特定及び修理に要する時間も短縮することができる。
【0041】
また、電磁バルブ33が故障した場合に、蓄電装置8の充放電を制限する処理(ステップS4)を実行することにより、蓄電装置8が充放電による発熱により更に昇温されることを防止することができる。なお、蓄電装置8の充放電を制限する処理(ステップS4)と共に又はこれに代えて、エンジン3の回転数を低下させる(発熱機器の動作を制限する)処理を実行しても良い。これにより、第1の冷却系20を循環する冷媒の流量が減少するため、熱交換プレート31に供給される冷媒の流量を減少させることができ、過度な暖機による蓄電装置8の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0042】
なお、本実施例では、電磁バルブ33に閉信号を出力している状態で、熱交換プレート31の温度を第1の規定値T
PHと比較し、その比較結果に基づいて電磁バルブ33の異常を判定する構成としたが、電磁バルブ33に開信号を出力している状態で、熱交換プレート31の温度を第3の規定値と比較し、熱交換プレート31の温度が第3の規定値以上となった場合に、モニタ9に異常を表示すると共に通信端末10で異常を発信する処理(ステップS3)、及び蓄電装置8の充放電を制限する処理(ステップS4)を実行する構成を追加してもよい。ここで、電磁バルブ33が開弁状態にあるときの熱交換プレート31の温度は、閉弁状態にあるときの温度よりも高くなると予想されるため、第3の規定値は、ステップS2における第1の規定値T
PHよりも大きい値に設定される。これにより、電磁バルブ33の開弁状態で、熱交換プレート31の過度な昇温を検知することができ、蓄電装置8の過度な温度上昇を抑制することが可能となる。
【0043】
なお、電磁バルブ33としては、電力供給又は制御装置11からの制御信号が途絶えた状態で閉弁状態となるように構成されたノーマルクローズ弁を用いるとよい。これにより、電磁バルブ33の駆動用電力供給部、制御装置11、他の上位のコントローラ等が故障した場合に、電磁バルブ33が自動的に閉弁し、蓄電装置8の暖機が停止するため、蓄電装置8の過度な暖機を防止することができ、蓄電装置8の寿命低下を抑制することが可能となる。
【0044】
なお、本実施例では、運転席202のモニタ9に異常を表示することにより、オペレータに電磁バルブの故障を通知することとしたが、本発明はこれに限られず、警告音等で通知しても良い。
【0045】
なお、本実施例では、熱交換プレート31の温度に基づいて電磁バルブ33の故障を判定することとしたが、本発明はこれに限られず、第1の冷却系20のその他の部位の温度(例えば、熱交換プレート31と熱交換を行う蓄電装置8の温度、熱交換プレート31の内部を通過する冷媒の温度等)に基づいて判定しても良い。
【実施例2】
【0046】
本発明の第2の実施例について、
図4及び
図5を用いて説明する。
【0047】
図4は、本実施例に係る油圧ショベル1の動力系統を示すブロック図である。以下、第1の実施例に係る動力系統(
図2参照)との相違点を中心に説明する。
【0048】
図4において、本実施例に係る動力系統は、蓄電装置8を積極的に冷却するための第2の冷却系40を更に備えている。
【0049】
第2の冷却系40は、熱交換プレート31の内部を通過するように設けられた第2の環状配管41と、第2の環状配管41に設けられたバッテリ用ラジエータ42と、第2の環状配管41内で冷媒を循環させるバッテリ用冷却ポンプ43とを有する。制御装置11は、バッテリ温度センサ12で検出した蓄電装置8の温度に応じて、バッテリ用冷却ポンプ43を制御する。熱交換プレート31は、第1の環状配管21内を循環する冷媒との熱交換によって冷却される。熱交換プレート31との熱交換で昇温した冷媒は、バッテリ用ラジエータ42で放熱され、冷却される。
【0050】
図5は、本実施例に係る制御装置11の制御フローを示す図である。以下、第1の実施例に係る制御フロー(
図3参照)との相違点を中心に説明する。
【0051】
図5において、ステップS1で電磁バルブ33に開信号が出力されている(NO)と判定した場合、又は、ステップS2で熱交換プレート31の温度が第1の規定値T
PH未満である(NO)と判定した場合は、バッテリ温度センサ12で検出した蓄電装置8の温度が第4の規定値T
BH以上であるか否かを判定する(ステップS8)。ここで、第4の規定値T
BHは、蓄電装置8の使用上限温度(例えば50℃)から所定のマージンを差し引いた値(例えば40℃)に設定される。
【0052】
ステップ8で熱交換プレート31の温度が第4の規定値T
BH以上である(YES)と判定した場合は、バッテリ用冷却ポンプ43を作動させ(ステップS9)、ステップS1に戻る。
【0053】
一方、ステップ8で熱交換プレート31の温度が第4の規定値T
BH未満である(NO)と判定された場合は、バッテリ用冷却ポンプ43の作動を停止し(ステップS10)、ステップS5以降の処理を実行する。これにより、蓄電装置8を使用上限温度(例えば50℃)よりも低い温度に保つことができる。
【0054】
ステップ4に続いて、バッテリ用冷却ポンプ43を作動させ(ステップS11)、ステップS1に戻る。すなわち、電磁バルブ33の故障を検知した場合は、バッテリ温度センサ12で検出した蓄電装置8の温度に関わらず、第2の冷却系40で冷媒を循環させ、蓄電装置8を積極的に冷却する。
【0055】
本実施例によれば、第1の実施例と同様の効果に加えて、以下の効果を達成することができる。
【0056】
電磁バルブ33の故障を検知した場合に、第2の冷却系40で冷媒を循環させ、蓄電装置8を積極的に冷却することにより、蓄電装置8を保護するための適切な処置を速やかに行うことができない場合でも、過度な暖機による蓄電装置8の温度上昇を抑制することができる。