(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特徴量取得部は、前記カラー画像データの前記成分a及び前記成分bの少なくとも一方を含む成分を用いて得られる第1比率に基づいて前記ヘモグロビンの量を算出するように構成されたヘモグロビン量算出部と、前記カラー画像データの前記成分a及び前記成分bの少なくとも一方を含む成分を用いて得られる第2比率と前記ヘモグロビンの量とに基づいて前記ヘモグロビンの酸素飽和度を算出するように構成された酸素飽和度算出部と、を含み、
前記確からしさ算出部は、前記確からしさを、前記第1比率が所定範囲を外れると低下する補正をするように構成されている、請求項1または2に記載の内視鏡システム。
前記特徴量取得部は、前記カラー画像データの前記成分a及び前記成分bの少なくとも一方を含む成分を用いて得られる第1比率に基づいて前記ヘモグロビンの量を算出するように構成されたヘモグロビン量算出部と、前記カラー画像データの前記成分a及び前記成分bの少なくとも一方を含む成分を用いて得られる第2比率と前記ヘモグロビンの量とに基づいて前記ヘモグロビンの酸素飽和度を算出するように構成された酸素飽和度算出部と、を含み、
前記確からしさ算出部は、前記確からしさを、前記第2比率が予め定めた範囲を外れると低下する補正をするように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
前記画像表示制御部は、前記生体組織の像に前記特徴量の分布の画像を重ねて表示するように制御し、前記第2比率の値が、前記ヘモグロビンの量に応じて定まる前記第2比率の許容範囲をはずれる画素については、当該画素の透過率を調整するように構成されている、請求項3または4に記載の内視鏡システム。
前記第2の光の波長帯域は、前記第2のカラー画像データの成分が、前記生体組織のヘモグロビン量の変化に対して感度を有するが、前記酸素飽和度の変化に対して感度を有しないような波長帯域を含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
前記第3の光の波長帯域は、前記第3のカラー画像データの成分が、前記酸素飽和度の変化に対して感度を有するような波長帯域を含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
前記第2の光は、光学フィルタで、前記第1の光の波長帯域のうち、500nm〜600nmの範囲内の第1波長帯域を透過させた前記第1の光の濾過光であり、前記第3の光は、光学フィルタで、前記第1波長帯域の範囲内の前記第1波長帯域より狭い第2波長帯域を透過させた前記第1の光の濾過光である、請求項6〜11のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記内視鏡システムは、例えば、悪性腫瘍等の病変部の有無やその位置を、ディスプレイに表示された生体組織の特徴量、例えば酸素飽和度の分布を示す酸素飽和度分布画像を用いて操作者が判断し特定することを補助できる。酸素飽和度は、所定の処理によって生体組織の画像データから算出するので、酸素飽和度の値が異常値と見なされない部分であっても、処理の途中で画素値が極端に小さいあるいは極端に大きい等の画素値が存在する場合がある。このような部分の酸素飽和度の確からしさは本来低いといえる。
このため、上記操作者の病変部の有無の判断やその位置特定に際して、内視鏡システムでは、算出した酸素飽和度の確からしさの高い部分をディスプレイに表示することが好ましい。また、酸素飽和度の確からしさの情報を画像データから求める際、求める確からしさの情報が過剰にならないように画像データを効率よく用いて確からしさの情報を求めることが好ましい。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、生体組織を照明し撮像することにより得られた生体組織の画像データを用いることで求められる生体組織のヘモグロビンの酸素飽和度の分布を示す酸素飽和度分布画像をディスプレイに表示する際、酸素飽和度の確からしさの情報を効率よく求めて精度の高い酸素飽和度分布画像を表示することができる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の形態を含む。
(形態1)
波長帯域の異なる少なくとも2つの光を出射するように構成された光源装置と、
少なくとも2つの前記光でそれぞれ照明された生体組織を撮像することにより前記光に対応した複数のカラー画像データを生成するように構成された撮像素子を備えた撮像部を含む内視鏡と、
前記カラー画像データの成分のうちの成分a及び成分bを少なくとも用いて、前記生体組織におけるヘモグロビンの酸素飽和度を前記生体組織の特徴量として取得し、前記特徴量の分布を示す酸素飽和度分布画像を生成するように構成された特徴量取得部と、前記カラー画像データの成分を用いて前記特徴量の確からしさを算出するように構成された確からしさ算出部と、前記確からしさの算出結果に応じて、前記酸素飽和度分布画像の表示の形態を制御するように構成された画像表示制御部と、を含むプロセッサと、
前記酸素飽和度分布画像の表示を行うように構成された画像表示装置と、を備え、
前記確からしさ算出部は、前記カラー画像データのうちカラー画像データAの成分aの第1の値を、前記第1の値より前記カラー画像データAの成分aの値が低くなると前記確からしさが前記第1の値以上の値における確からしさよりも低下する確からしさ下限閾値として設定し、且つ、前記カラー画像データのうちカラー画像データBの成分bの、前記第1の値よりも大きい第2の値を、
前記第2の値より前記カラー画像データBの成分bの値が大きくなると前記確からしさが前記第2の値以下の値における確からしさよりも低下する確からしさ上限閾値として設定した状態で前記確からしさを算出するように構成され、前記カラー画像データAと前記カラー画像データBは、異なる2つの
照明光に対応したカラー画像データであ
って、前記カラー画像データAの生成時の照明光の波長帯域は、前記カラー画像データBの生成時の照明光の波長帯域に比べて狭い、ことを特徴とする内視鏡システム。
【0008】
(形態2)
前記確からしさ算出部は、前記成分a及び前記成分b毎に求めた確からしさ成分に基づいて画素毎に前記確からしさを算出するように構成され、
前記カラー画像データAから求める確からしさ成分は、前記カラー画像データAの成分の値が前記確からしさ下限閾値より大きい場合、前記確からしさ下限閾値における前記確からしさ成分と同じかそれより大きい値を有し、
前記カラー画像データBから求める確からしさ成分は、前記カラー画像データBの成分の値が前記確からしさ上限閾値より小さい場合、前記確からしさ上限閾値における前記確からしさ成分と同じかそれより大きい値を有する、形態1に記載の内視鏡システム。
【0009】
(形態3)
前記特徴量取得部は、前記カラー画像データの前記成分a及び前記成分bの少なくとも一方を含む成分を用いて得られる第1比率に基づいて前記ヘモグロビンの量を算出するように構成されたヘモグロビン量算出部と、前記カラー画像データの前記成分a及び前記成分bの少なくとも一方を含む成分を用いて得られる第2比率と前記ヘモグロビンの量とに基づいて前記ヘモグロビンの酸素飽和度を算出するように構成された酸素飽和度算出部と、を含み、
前記確からしさ算出部は、前記確からしさを、前記第1比率が所定範囲を外れると低下する補正をするように構成されている、形態1または2に記載の内視鏡システム。
【0010】
(形態4)
前記特徴量取得部は、前記カラー画像データの前記成分a及び前記成分bの少なくとも一方を含む成分を用いて得られる第1比率に基づいて前記ヘモグロビンの量を算出するように構成されたヘモグロビン量算出部と、前記カラー画像データの前記成分a及び前記成分bの少なくとも一方を含む成分を用いて得られる第2比率と前記ヘモグロビンの量とに基づいて前記ヘモグロビンの酸素飽和度を算出するように構成された酸素飽和度算出部と、を含み、
前記確からしさ算出部は、前記確からしさを、前記第2比率が予め定めた範囲を外れると低下する補正をするように構成されている、形態1〜3のいずれか1つに記載の内視鏡システム。
【0011】
(形態5)
前記画像表示制御部は、前記生体組織の像に前記特徴量の分布の画像を重ねて表示するように制御し、前記第2比率の値が、前記ヘモグロビンの量に応じて定まる前記第2比率の許容範囲をはずれる画素については、当該画素の透過率を調整するように構成されている、形態3または4に記載の内視鏡システム。
【0012】
(形態6)
波長帯域の異なる少なくとも2つの光を出射するように構成された光源装置と、
少なくとも2つの前記光でそれぞれ照明された生体組織を撮像することにより前記光に対応した複数のカラー画像データを生成するように構成された撮像素子を備えた撮像部を含む内視鏡と、
前記カラー画像データの成分のうちの成分a及び成分bを少なくとも用いて、前記生体組織におけるヘモグロビンの酸素飽和度を前記生体組織の特徴量として取得し、前記特徴量の分布を示す酸素飽和度分布画像を生成するように構成された特徴量取得部と、前記カラー画像データの成分を用いて前記特徴量の確からしさを算出するように構成された確からしさ算出部と、前記確からしさの算出結果に応じて、前記酸素飽和度分布画像の表示の形態を制御するように構成された画像表示制御部と、を含むプロセッサと、
前記酸素飽和度分布画像の表示を行うように構成された画像表示装置と、を備え、
前記確からしさ算出部は、前記カラー画像データのうちカラー画像データAの成分aの第1の値を、前記第1の値より前記カラー画像データAの成分aの値が低くなると前記確からしさが前記第1の値以上の値における確からしさよりも低下する確からしさ下限閾値として設定し、且つ、前記カラー画像データのうちカラー画像データBの成分bの、前記第1の値よりも大きい第2の値を、前記第2の値より前記カラー画像データBの成分bの値が大きくなると前記確からしさが前記第2の値以下の値における確からしさよりも低下する確からしさ上限閾値として設定した状態で前記確からしさを算出するように構成され、
前記カラー画像データAと前記カラー画像データBは、異なる2つの光に対応したカラー画像データであり、
前記特徴量取得部は、前記カラー画像データの前記成分a及び前記成分bの少なくとも一方を含む成分を用いて得られる第1比率に基づいて前記ヘモグロビンの量を算出するように構成されたヘモグロビン量算出部と、前記カラー画像データの前記成分a及び前記成分bの少なくとも一方を含む成分を用いて得られる第2比率と前記ヘモグロビンの量とに基づいて前記ヘモグロビンの酸素飽和度を算出するように構成された酸素飽和度算出部と、を含み、
前記光源装置は、波長帯域の異なる第1の光、第2の光、及び第3の光を含む少なくとも3以上の光を出射するように構成され、
前記撮像部は、前記第1の光、前記第2の光、及び前記第3の光でそれぞれ照明された生体組織を撮像することにより、前記第1の光に対応した第1のカラー画像データ、前記第2の光に対応した第2のカラー画像データ、及び前記第3の光に対応した第3のカラー画像データを生成するように構成され、
前記第1比率は、前記第1のカラー画像データの一成分と前記第2のカラー画像データの一成分との比率であり、
前記第2比率は、前記第2のカラー画像データの一成分と前記第3のカラー画像データの一成分との比率である、
ことを特徴とする内視鏡システム。
【0013】
(形態7)
前記第1の光の波長帯域は、前記第2の光の波長帯域及び前記第3の光の波長帯域に比べて広く、前記第2の光の波長帯域は、前記第3の光の波長帯域に比べて広く、
前記確からしさ上限閾値は、前記第1のカラー画像データあるいは前記第2のカラー画像データの輝度成分の値であり、前記確からしさ下限閾値は、前記第3のカラー画像データの輝度成分の値である、形態6に記載の内視鏡システム。
【0014】
(形態8)
前記第1比率は、前記第2のカラー画像データの輝度成分と、前記第1のカラー画像データのR成分、あるいはR成分及びG成分の合計成分との比であり、
前記ヘモグロビン量算出部は、前記第1比率に基づいてヘモグロビンの量を算出する、形態6または7に記載の内視鏡システム。
【0015】
(形態9)
前記第2比率は、前記第3のカラー画像データの輝度成分と前記第2のカラー画像データの輝度成分との比であり、
前記酸素飽和度算出部は、前記第2比率と、前記ヘモグロビンの量とに基づいて前記ヘモグロビンの酸素飽和度を算出する、形態6〜8のいずれか1つに記載の内視鏡システム。
【0016】
(形態10)
前記第2の光の波長帯域は、前記第2のカラー画像データの成分が、前記生体組織のヘモグロビン量の変化に対して感度を有するが、前記酸素飽和度の変化に対して感度を有しないような波長帯域を含む、形態6〜9のいずれか1つに記載の内視鏡システム。
【0017】
(形態11)
前記第3の光の波長帯域は、前記第3のカラー画像データの成分が、前記酸素飽和度の変化に対して感度を有するような波長帯域を含む、形態6〜10のいずれか1つに記載の内視鏡システム。
【0018】
(形態12)
前記第2の光は、光学フィルタで、前記第1の光の波長帯域のうち、500nm〜600nmの範囲内の第1波長帯域を透過させた前記第1の光の濾過光であり、前記第3の光は、光学フィルタで、前記第1波長帯域の範囲内の前記第1波長帯域より狭い第2波長帯域を透過させた前記第1の光の濾過光である、形態6〜11のいずれか1つに記載の内視鏡システム。
【0019】
(形態13)
波長帯域の異なる少なくとも2つの光成分を含む第1の光を出射するように構成された光源装置と、
前記第1の光で照明された生体組織を撮像することにより第1のカラー画像データを生成するように構成された撮像素子を備えた撮像部を含む内視鏡と、
前記光成分の波長帯域それぞれに対応した前記第1のカラー画像データの対応成分のうちの成分a及び成分bを少なくとも用いて、前記生体組織におけるヘモグロビンの酸素飽和度を前記生体組織の特徴量として取得し、前記特徴量の分布を示す酸素飽和度分布画像を生成するように構成された特徴量取得部と、前記対応成分を用いて前記特徴量の確からしさを算出するように構成された確からしさ算出部と、前記確からしさの算出結果に応じて、前記酸素飽和度分布画像の表示の形態を制御するように構成された画像表示制御部と、を含むプロセッサと、
前記酸素飽和度分布画像の表示を行うように構成された画像表示装置と、を備え、
前記確からしさ算出部は、前記成分aの第1の値を、前記第1の値より前記成分aの値が低くなると前記確からしさが前記第1の値以上の値における確からしさよりも低下する確からしさ下限閾値として設定し、且つ、前記成分bの、前記第1の値よりも大きい第2の値を、
前記第2の値より前記成分bの値が大きくなると前記確からしさが前記第2の値以下の値における確からしさよりも低下する確からしさ上限閾値として設定した状態で前記確からしさを算出するように構成され、
前記成分aと前記成分bは、互いに異なる2つの対応成分であ
って、前記成分aに対応する光成分の波長帯域は、前記成分bに対応する光成分の波長帯域に比べて狭い、ことを特徴とする内視鏡システム。
【0020】
(形態14)
前記確からしさ算出部は、前記成分a及び前記成分b毎に求めた確からしさ成分に基づいて画素毎に前記確からしさを算出するように構成され、
前記成分aから求める確からしさ成分は、前記成分aの値が前記確からしさ下限閾値より大きい場合、前記確からしさ下限閾値における前記確からしさ成分と同じかそれより大きい値を有し、
前記成分bから求める確からしさ成分は、前記成分bの値が前記確からしさ上限閾値より小さい場合、前記確からしさ上限閾値における前記確からしさ成分と同じかそれより大きい値を有する、形態13に記載の内視鏡システム。
【0021】
(形態15)
前記光源装置は、前記第1の光の他に、前記第1の光と波長帯域の異なる第2の光を出射するように構成され、
前記撮像部は、前記第1の光及び前記第2の光でそれぞれ照明された生体組織を撮像することにより、前記第1のカラー画像データ及び前記第2の光に対応した第2のカラー画像データを生成するように構成され、
前記特徴量取得部は、前記成分aと前記成分bの第1比率に基づいて前記ヘモグロビンの量を算出するように構成されたヘモグロビン量算出部と、前記成分aと前記成分bの1つと前記第2のカラー画像データの成分との第2比率と前記ヘモグロビンの量とに基づいて前記ヘモグロビンの酸素飽和度を算出するように構成された酸素飽和度算出部と、を含む形態13または14に記載の内視鏡システム。
【0022】
(形態16)
前記第1の光は、3つの光成分を含み、
前記特徴量取得部は、前記対応成分を用いて得られる第1比率に基づいて前記ヘモグロビンの量を算出するように構成されたヘモグロビン量算出部と、前記対応成分を用いて得られる第2比率と前記ヘモグロビンの量とに基づいて前記ヘモグロビンの酸素飽和度を算出するように構成された酸素飽和度算出部と、を含む、形態13または14に記載の内視鏡システム。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上述の内視鏡システムによれば、酸素飽和度の確からしさの情報を効率よく求めて精度の高い酸素飽和度分布画像を表示することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に説明する本発明の一実施形態の内視鏡システムは、波長域の異なる光で生体組織を被写体として照明し撮像した複数のカラー画像データに基づいて生体組織のヘモグロビンの量と酸素飽和度を定量的に算出して、酸素飽和度分布画像を表示するシステムである。しかし、後述するように、複数の光で生体組織を照明し撮像した複数のカラー画像データを得る実施形態に限定されない。別の一実施形態によれば、所望の波長帯域の光成分を含む1つの光で生体組織を照明し撮像した1つのカラー画像データに基づいて生体組織のヘモグロビンの量と酸素飽和度を定量的に算出して、酸素飽和度分布画像を表示することもできる。
【0026】
本発明の一実施形態の内視鏡システムでは、光源装置から出射した波長帯域の異なる少なくとも2つの光でそれぞれ照明された生体組織を撮像素子で撮像することにより、撮像素子は各光に対応した生体組織の像のカラー画像データを生成する。プロセッサは、生成したカラー画像データの成分a,bを少なくとも用いて生体組織におけるヘモグロビンの酸素飽和度を算出する。プロセッサは、さらに、カラー画像データの成分a,bを用いて酸素飽和度の確からしさを算出する。プロセッサは、この確からしさの算出結果に応じて、酸素飽和度の分布を示す酸素飽和度分布画像の表示を制御する。画像表示装置は、この制御された酸素飽和度分布画像を表示する。
この確からしさについて、プロセッサは、カラー画像データのうちあるカラー画像データAの成分aの第1の値を、この第1の値よりカラー画像データAの成分aの値が低くなると確からしさが第1の値以上の値における確からしさよりも低下する確からしさ下限閾値として設定する。さらに、プロセッサは、カラー画像データのうちあるカラー画像データBの成分bの、第1の値よりも大きい第2の値を、この第2の値よりカラー画像データの成分bの値が大きくなると確からしさが第2の値以下の値における確からしさよりも低下する確からしさ上限閾値として設定する。プロセッサはこのような状態で確からしさを算出する。確からしさ下限閾値及び確からしさ上限閾値の設定に用いる上記カラー画像データAと上記カラー画像データBは、異なる2つの光に対応したカラー画像データである。ここで、確からしさは、本来の酸素飽和度の値であるかについての信頼のできる程度を意味する。
【0027】
本発明の実施形態は、具体的に、異なる光で照明された生体組織を撮像することにより得られた複数のカラー画像データそれぞれにおける成分a,bの値毎に、確からしさを構成する確からしさ成分(この確からしさ成分は、以降、カラー画像データに基づく確からしさ成分ともいう)を求める。このカラー画像データそれぞれに基づく確からしさ成分の値を画素毎に1つの値に纏めることで、酸素飽和度の確からしさを求める。より具体的には、実施形態では、カラー画像データのうちあるカラー画像データAの成分aの第1の値を、確からしさ成分の下限閾値として設定し、カラー画像データAと異なるカラー画像データBの成分bの第2の値を、確からしさ成分の上限閾値として設定する。確からしさ成分の下限閾値は、確からしさ下限閾値と同様に、この値よりカラー画像データAの成分aの値が低くなると確からしさ成分が下限閾値以上の値における確からしさ成分よりも低下する閾値である。確からしさ成分の上限閾値は、確からしさ上限閾値と同様に、この値よりカラー画像データBの成分bの値が高くなると確からしさ成分が上限閾値以下の値における確からしさ成分よりも低下する閾値である。したがって、上記確からしさ成分を設定することにより、カラー画像データAの成分の下限閾値よりカラー画像データAの成分の値が低くなると(他のカラー画像データの値は変化しない条件で)、酸素飽和度Satの確からしさは、下限閾値以上の値における酸素飽和度Satの確からしさよりも低下し、カラー画像データBの成分bの上限閾値よりカラー画像データBの成分の値が高くなると(他のカラー画像データの値は変化しない条件で)、酸素飽和度Satの確からしさは、上限閾値以下の値における酸素飽和度Satの確からしさよりも低下するように設定することができる。
このように、カラー画像データのうち、カラー画像データAの成分aの値から確からしさ成分の下限閾値、すなわち酸素飽和度の確からしさの下限閾値を設定し、カラー画像データAと異なるカラー画像データBの成分bの値から確からしさ成分の上限閾値、すなわち酸素飽和度の確からしさの上限閾値を設定する。このとき、カラー画像データAの成分の値から確からしさ成分の上限閾値を定めず、カラー画像データの成分bの値から確からしさ成分の下限閾値を定めない。
実施形態における確からしさの算出では、カラー画像データそれぞれの成分a,bから求めた確からしさ成分に基づいて酸素飽和度の確からしさを算出する。このとき、カラー画像データAに基づく確からしさ成分は、このカラー画像データAの成分aの値が下限閾値より大きい場合、下限閾値における確からしさ成分と同じかそれより大きい値を有し、カラー画像データBに基づく確からしさ成分bは、カラー画像データBの成分の値が上限閾値より小さい場合、上限閾値における確からしさ成分と同じかそれより大きい値を有することが好ましい。言い換えると、同じカラー画像データの成分の値から確からしさ成分の上限閾値及び下限閾値を同時に定めない。したがって、異なるカラー画像データに基づく確からしさ成分の上限閾値及び下限閾値のそれぞれが、酸素飽和度の確からしさ下限閾値及び上限閾値として設定される。
なお、複数の確からしさ成分の値から1つの確からしさの値に纏める方法は、特に制限されないが、一実施形態では、各カラー画像データの値によって定まる確からしさ成分の値を掛け算することにより、1つの確からしさの値を求める方法を用いる。
【0028】
カラー画像データには、光強度の異なる照明光で生体組織を照明し撮像して生成されたデータであるので、1つのカラー画像データの成分毎に、確からしさ成分の上限閾値及び下限閾値を設定した場合、光強度の弱い照明光に対応したカラー画像データの成分についても、確からしさ成分の下限閾値の他に、確からしさ成分の上限閾値を設定することになる。このため、カラー画像データとして信頼性のある適切なデータであっても確からしさ成分の上限閾値を越える値を持ったカラー画像データを用いて算出される酸素飽和度の確からしさは低いものとして扱われる可能性がある。さらに、光強度の強い照明光に対応したカラー画像データの成分を用いて確からしさ成分の上限閾値とともに、確からしさ成分の下限閾値を設定する場合、画像データとして信頼性のある適切なデータであっても確からしさ成分の下限閾値を下回る値を持ったカラー画像データを用いて算出される酸素飽和度の確からしさは低いものとして扱われる可能性がある。しかし、本発明の実施形態では、確からしさ成分の上限閾値及び下限閾値は、異なるカラー画像データの成分の値から設定されるので、酸素飽和度の確からしさを効率よく求めることができる。また、本発明の実施形態では、算出した酸素飽和度の確からしさの高い部分を画像表示装置に表示することができるので、精度の高い酸素飽和度分布画像を表示することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
(内視鏡システムの構成)
図1は、一実施形態に係る内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。内視鏡システム1は、電子内視鏡(内視鏡)100、プロセッサ200、ディスプレイ300、及び光源装置400を備える。電子内視鏡100及びディスプレイ300は、プロセッサ200に着脱可能に接続されている。プロセッサ200は、画像処理部500を備える。光源装置400は、プロセッサ200に着脱自在に接続されている。光源装置400は、プロセッサ200の筐体内に組み込まれてもよい。
【0030】
電子内視鏡100は、被検者の体内に挿入される挿入管110を有する。挿入管110の内部には、挿入管110の略全長に亘って延びるライトガイド131が設けられている。ライトガイド131の一端部である先端部131aは、挿入管110の先端部、すなわち挿入管先端部111近傍に位置し、ライトガイド131の他端部である基端部131bは、光源装置400との接続部に位置する。したがって、ライトガイド131は、光源装置400との接続部から挿入管先端部111近傍まで延びている。
光源装置400は、キセノンランプ等の光量の大きい光を生成する光源ランプ430を光源として備える。光源装置400から出射した光は照明光ILとして、ライトガイド131の基端部131bに入射する。ライトガイド131の基端部131bに入射した光は、ライトガイド131を通ってその先端部131aに導かれ、先端部131aから出射される。電子内視鏡100の挿入管先端部111には、ライトガイド131の先端部131aと対向して配置された配光レンズ132が設けられている。ライトガイド131の先端部131aから出射する照明光ILは、配光レンズ132を通過して、挿入管先端部111の近傍の生体組織Tを照明する。
【0031】
電子内視鏡100の挿入管先端部111には対物レンズ群121及び撮像素子141が設けられている。対物レンズ群121及び撮像素子141は撮像部を形成する。照明光ILのうち、生体組織Tの表面で反射又は散乱された光は、対物レンズ群121に入射し、集光されて、撮像素子141の受光面上で結像する。撮像素子141は、その受光面にカラーフィルタ141aを備えたカラー画像撮像用のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の公知撮像素子を使用することができる。
【0032】
カラーフィルタ141aは、赤色の光を通過させるRカラーフィルタと、緑色の光を通過させるGカラーフィルタと、青色の光を通過させるBカラーフィルタとが配列され、撮像素子141の各受光素子上に直接形成された、いわゆるオンチップフィルタである。
図2は、一実施形態で用いる撮像素子の赤(R)、緑(G)、青(B)の各フィルタの分光特性の一例を示す図である。Rカラーフィルタは、波長約570nmより長波長(例えば580nm〜700nm)の光を通過させるフィルタであり、Gカラーフィルタは、波長約470nm〜620nmの光を通過させるフィルタであり、Bカラーフィルタは、波長約530nmより短波長(例えば420nm〜520nm)の光を通過させるフィルタである。
【0033】
撮像素子141は、複数の光のそれぞれで照明された生体組織Tを撮像して、各光に対応したカラー画像データを生成する撮像手段であり、波長範囲が異なる複数の光で生体組織Tを照明することにより生体組織T上で反射したあるいは散乱した光に対応するカラー画像データを生成する画像データ生成手段である。撮像素子141は、後述する画像処理部500と同期して駆動するように制御され、受光面上で結像した生体組織Tの像に対応するカラー画像データを、周期的に(例えば、1/30秒間隔で)出力する。撮像素子141から出力されたカラー画像データは、ケーブル142を介してプロセッサ200の画像処理部500に送られる。
【0034】
画像処理部500は、A/D変換回路502、プレ画像処理部504、フレームメモリ部506、ポスト画像処理部508、特徴量取得部510、確からしさ算出部511、メモリ512、画像表示制御部514、及びコントローラ516を主に備える。
【0035】
A/D変換回路502は、電子内視鏡100の撮像素子141からケーブル142を介して入力されるカラー画像データをA/D変換してデジタルデータを出力する。A/D変換回路502から出力されるデジタルデータは、プレ画像処理部504に送られる。
【0036】
プレ画像処理部504は、デジタルデータを、Rカラーフィルタが装着された撮像素子141中の受光素子によって撮像されたRデジタル画像データ、Gカラーフィルタが装着された撮像素子141中の受光素子によって撮像されたGデジタル画像データ、及びBカラーフィルタが装着された撮像素子141中の受光素子によって撮像されたBデジタル画像データからデモザイク処理により、画像を構成するR,G,B成分あるいは所望の波長帯域の成分からなるカラー画像データを生成する。さらに、プレ画像処理部504は、生成したR,G,Bのカラー画像データに対して、色補正、マトリックス演算、及びホワイトバランス補正等の所定の信号処理を施す部分である。
【0037】
フレームメモリ部506は、撮像素子141で撮像され、信号処理の施された1画像毎のカラー画像データを一時記憶する。
【0038】
ポスト画像処理部508は、フレームメモリ部506に記憶されたカラー画像データを読み出して、あるいは後述する画像表示制御部514で生成された画像データを信号処理(γ補正等)してディスプレイ表示用の画面データを生成する。画像表示制御部514で生成された画像データは、後述するように、生体組織Tのヘモグロビンの酸素飽和度の分布を示した酸素飽和度分布画像のデータを含む。生成された画面データ(ビデオフォーマット信号)は、ディスプレイ300に出力される。これにより、生体組織Tの画像や生体組織Tの酸素飽和度分布画像等がディスプレイ300の画面に表示される。
【0039】
特徴量取得部510は、コントローラ516の指示に応じて、後述するように、撮像された生体組織Tのヘモグロビンの量とヘモグロビンの酸素飽和度を特徴量として算出し、これらの特徴量の、撮像した生体組織Tの像上の分布画像、すなわち、ヘモグロビンの量の分布を示した分布画像やヘモグロビンの酸素飽和度の分布を示した酸素飽和度分布画像を生成する。
特徴量取得部510は、生体組織Tのカラー画像データを用いて演算することにより特徴量を算出するので、フレームメモリ部506あるいはメモリ512から、特徴量取得部510で用いるカラー画像データ及び各種情報を呼び出す。
【0040】
画像表示制御部514は、撮像した生体組織Tの像に、特徴量取得部510で生成したヘモグロビンの酸素飽和度分布画像を重ねて表示するように制御する。その際、画像表示制御部514は、酸素飽和度分布画像の表示形態を、後述する確からしさの程度の算出結果に応じて制御する。
コントローラ516は、画像処理部500の各部分の動作指示及び動作制御を行う他、光源装置400、撮像素子141を含む電子内視鏡100の各部分の動作指示及び動作制御を行う部分である。
なお、特徴量取得部510及び画像表示制御部514は、コンピュータ上でプログラムを起動して実行することで上述した各機能を担うソフトウェアモジュールで構成されてもよいし、ハードウェアで構成されてもよい。
【0041】
このように、プロセッサ200は、電子内視鏡100の撮像素子141から出力されるカラー画像データを処理する機能と、電子内視鏡100、光源装置400、及びディスプレイ300の動作を指示し制御する機能とを兼ね備える。
【0042】
光源装置400は、一実施形態によれば、波長帯域の異なる少なくとも2つの光を出射する。具体的には、光源装置400は、第1の光、第2の光、及び第3の光を出射する光出射手段であり、第1の光、第2の光、及び第3の光をライトガイド131に入射させる。光源装置400は、波長帯域の異なる第1の光、第2の光、及び第3の光を出射するが、1つまたは2つの光を出射させてもよく、4つ以上の光を出射させてもよい。4つ以上の光を出射させる場合、第4の光は、第1の光と同じ波長帯域の光としてもよい。光源装置400は、光源ランプ430の他に、集光レンズ440、回転フィルタ410、フィルタ制御部420及び集光レンズ450を備えている。光源ランプ430から射出される略平行光である光は、例えば白色光であり、集光レンズ440によって集光され、回転フィルタ410を通過した後、集光レンズ450によって再度集光されて、ライトガイド131の基端131bに入射する。なお、回転フィルタ410は、リニアガイドウェイ等の図示されない移動機構によって、光源ランプ430から放射される光の光路上の位置と光路外の退避位置との間で移動可能になっている。回転フィルタ410は、透過特性の異なる複数のフィルタを含むので、光源ランプ430から放射される光の光路を横切る回転フィルタ410の種類によって、光源装置400から出射する光の波長帯域は異なる。
【0043】
なお、光源装置400の構成は、
図1に示されるものに限定されない。例えば、光源ランプ430に平行光でなく収束光を発生するランプを採用してもよい。この場合、例えば、光源ランプ430からの放射される光を集光レンズ440の手前で集光させ、拡散光として集光レンズ440に入射させる構成を採用してもよい。また、集光レンズ440を使用せず、光源ランプ430が発生する略平行光を直接回転フィルタ410に入射させる構成を採用してもよい。また、収束光を発生するランプを使用する場合、集光レンズ440の替わりにコリメータレンズを使用して、略平行光の状態で光を回転フィルタ410に入射させる構成を採用してもよい。例えば、回転フィルタ410に誘電体多層膜フィルタ等の干渉型の光学フィルタを使用する場合、略平行光の光を回転フィルタ410に入射させることで、光学フィルタへの光の入射角を均一にすることにより、より良好なフィルタ特性を得ることができる。また、光源ランプ430に発散光を発生するランプを採用してもよい。この場合にも、集光レンズ440の替わりにコリメータレンズを使用して、略平行光の光を回転フィルタ410に入射させる構成を採用することができる。
【0044】
また、光源装置400は、1つの光源ランプ430から放射された光を光学フィルタに透過させることで、異なる波長帯域の複数の光を出射する構成であるが、光源ランプ43の代わりに、異なる波長帯域の異なる複数の光、例えば発光ダイオードやレーザ光を出力するレーザ素子等の半導体光源を光源装置400の光源として用いることもできる。この場合、回転フィルタ410を用いなくてもよい。また、光源装置400は、例えば、所定の波長帯域の励起光とその励起光によって励起発光する蛍光とを含む合成白色光と、所定の狭い波長帯域の光を別々に出射するように光源装置400を構成することもできる。
光源装置400は、波長帯域の異なる複数の光を出射するものであれば構成は特に制限されない。
光源装置400は、電子内視鏡100に外付けされた外部装置であるが、光源装置400がレーザ素子のような小型の光源で構成される場合、光源装置400は、電子内視鏡100の挿入管先端部111に設けられてもよい。この場合、ライトガイド131は不要となる。
【0045】
回転フィルタ410は、複数の光学フィルタを備えた円盤型の光学ユニットであり、その回転角度に応じて光の通過波長域が切り替わるように構成されている。回転フィルタ410は、通過波長帯域が異なる3つの光学フィルタを備えるが、4つ、5つ、または6以上の光学フィルタを備えてもよい。回転フィルタ410の回転角度は、コントローラ516に接続されたフィルタ制御部420によって制御される。コントローラ516がフィルタ制御部420を介して回転フィルタ410の回転角度を制御することにより、回転フィルタ410を通過してライトガイド131に供給される照明光ILの波長帯域が切り替えられる。
【0046】
図3は、回転フィルタ410の外観図(正面図)である。回転フィルタ410は、略円盤状のフレーム411と、3つの扇形の光学フィルタ415、416及び418を備えている。フレーム411の中心軸の周りには3つの扇状の窓414a、414b及び414cが等間隔で形成されており、各窓414a、414b及び414cには、それぞれ光学フィルタ415、416及び418が嵌め込まれている。なお、光学フィルタは、いずれも誘電体多層膜フィルタであるが、他の方式の光学フィルタ(例えば、吸収型の光学フィルタや誘電体多層膜を反射膜として用いたエタロンフィルタ等)を用いてもよい。
【0047】
また、フレーム411の中心軸上にはボス穴412が形成されている。ボス穴412には、フィルタ制御部420が備える図示されないサーボモータの出力軸が差し込まれて固定され、回転フィルタ410はサーボモータの出力軸と共に回転する。
【0048】
回転フィルタ410が
図3中の矢印で示される方向に回転すると、この光が入射する光学フィルタが、光学フィルタ415、416、418の順に切り替わり、これにより回転フィルタ410を通過する照明光ILの波長帯域が順次切り替えられる。
【0049】
光学フィルタ415及び416は、550nm帯の光を選択的に通過させる光バンドパスフィルタである。
図4に示されるように、光学フィルタ415は、等吸収点E1からE4までの波長帯域R0(W帯)の光を低損失で通過させ、それ以外の波長領域の光を遮断するように構成されている。また、光学フィルタ416は、等吸収点E2からE3までの波長帯域R2(N帯)の光を低損失で通過させ、それ以外の波長領域の光を遮断するように構成されている。
また、光学フィルタ418は、紫外線カットフィルタであり、可視光波長領域では、光源ランプ430から放射された光は光学フィルタ418を透過する。光学フィルタ418を透過した光は、白色光WLとして通常観察像の撮像に使用される。なお、光学フィルタ418を使用せず、フレーム411の窓414cを開放した構成としてもよい。
したがって、光源ランプ430から放射される光のうち光学フィルタ415を透過した光を、以降Wide光といい、光源ランプ430から放射される光のうち光学フィルタ416を透過した光を、以降Narrow光といい、光源ランプ430から放射される光のうち光学フィルタ418を透過した光を、以降白色光WLという。
【0050】
図4に示されるように、波長帯域R1は酸素化ヘモグロビンに由来する吸収ピークP1のピーク波長が含まれる帯域であり、波長帯域R2は還元ヘモグロビンに由来する吸収ピークP2のピーク波長が含まれる帯域であり、波長帯域R3は酸素化ヘモグロビンに由来する吸収ピークP3のピーク波長が含まれる帯域である。また、波長域R0には、3つの吸収ピークP1、P2、P3の各ピーク波長が含まれている。なお、
図4は、550nm付近のヘモグロビンの吸収スペクトルの一例を示す図である。
【0051】
また、光学フィルタ415の波長帯域R0及び光学フィルタ416の波長帯域R2は、カラーフィルタ141aのGカラーフィルタの通過波長域(
図2)に含まれている。従って、光学フィルタ415又は416を通過した光によって形成される生体組織Tの像は、撮像素子141で撮像されたカラー画像データのG成分の像として得られる。
【0052】
フレーム411の周縁部には、貫通孔413が形成されている。貫通孔413は、フレーム411の回転方向において、窓414aと窓414cとの境界部と同じ位置(位相)に形成されている。フレーム411の周囲には、貫通孔413を検出するためのフォトインタラプタ422が、フレーム411の周縁部の一部を囲むように配置されている。フォトインタラプタ422は、フィルタ制御部420に接続されている。
【0053】
このように、光源装置400は、複数の光学フィルタ415,416,418を光源ランプ430の放射した光の光路中で順次切り替えることにより波長帯域の異なる光、すなわちWide光、Narrow光、及び白色光WLを照明光ILとして出射する構成を備えることが好ましい。
【0054】
(生体組織の特徴量の算出)
生体組織Tの特徴量は、プロセッサ500の特徴量取得部510で算出される。撮像した生体組織Tの画像から生体組織Tのヘモグロビンの量、及びヘモグロビンの酸素飽和度Satを特徴量として算出する処理を以下説明する。
【0055】
図4に示すように、ヘモグロビンは、550nm付近にポルフィリンに由来するQ帯と呼ばれる強い吸収帯を有する。ヘモグロビンの吸収スペクトルは、全ヘモグロビンのうち酸素化ヘモグロビンHbOが占める割合を表す酸素飽和度Satに応じて変化する。
図4における実線の波形は、酸素飽和度Satが100%、すなわち、酸素化ヘモグロビンHbOの吸収スペクトルであり、長破線の波形は、酸素飽和度Satが0%、すなわち、還元ヘモグロビンHbの吸収スペクトルである。また、短破線は、その中間の酸素飽和度Sat=10、20、30、・・・90%におけるヘモグロビン、すなわち酸素化ヘモグロビンHbOと還元ヘモグロビンHbの混合物の吸収スペクトルである。
【0056】
図4に示すように、Q帯において、酸素化ヘモグロビンHbOと還元ヘモグロビンHbは互いに異なるピーク波長を有する。具体的には、酸素化ヘモグロビンHbOは、波長542nm付近の吸収ピークP1と、波長576nm付近の吸収ピークP3を有している。一方、還元ヘモグロビンHbは、556nm付近に吸収ピークP2を有している。
図4は、酸素化ヘモグロビンHbO、還元ヘモグロビンHbの濃度の和が一定となる場合の吸収スペクトルであるため、酸素化ヘモグロビンHbO及び還元ヘモグロビンHbの比率、すなわち、酸素飽和度によらず吸光度が一定となる等吸収点E1、E2、E3、E4が現れる。以下の説明では、等吸収点E1とE2とで挟まれた波長帯域は、先に光学フィルタ410で説明した波長帯域R1であり、等吸収点E2とE3とで挟まれた波長領域は波長帯域R2であり、等吸収点E3とE4とで挟まれた波長帯域は波長帯域R3であり、等吸収点E1とE4とで挟まれた波長帯域、すなわち波長帯域R1、R2及びR3を合わせた帯域は、波長帯域R0である。したがって、光源ランプ430から放射された光のうち光学フィルタ415を透過した透過光であるWide光の波長帯域は、波長帯域R0であり、光源ランプ430から放射された光のうち光学フィルタ416を透過した透過光であるNarrow光の波長帯域は、波長帯域R2である。
【0057】
図4に示されるように、波長帯域R1,R2,R3では、ヘモグロビンの吸収は酸素飽和度に対して線形的に増加又は減少する。具体的には、波長帯域R1,R3におけるヘモグロビンの吸収AR1,AR3は、酸素化ヘモグロビンの濃度、すなわち酸素飽和度に対して線形的に増加する。また、波長帯域R2におけるヘモグロビンの吸収AR2は、還元ヘモグロビンの濃度に対して線形的に増加する。
【0058】
ここで、酸素飽和度は次の式(1)により定義される。
【0059】
式(1):
【数1】
但し、
Sat:酸素飽和度
[Hb]:還元ヘモグロビンの濃度
[HbO]:酸素化ヘモグロビンの濃度
[Hb]+[HbO]:ヘモグロビンの量(tHb)
【0060】
また、式(1)より、酸素化ヘモグロビンHbO及び還元ヘモグロビンHbの濃度を表す式(2)、式(3)が得られる。
【0063】
したがって、ヘモグロビンの吸収AR1、AR2及びAR3は、酸素飽和度とヘモグロビンの量の両方に依存する特徴量となる。
【0064】
ここで、波長帯域R0における吸光度の合計値は、酸素飽和度Satには依存せず、ヘモグロビンの量によって決まる値となることが判明している。したがって、波長帯域R0における吸光度の合計値に基づいてヘモグロビンの量を定量することができる。また、波長帯域R1、波長帯域R2、あるいは波長帯域R3における吸光度の合計値と、波長帯域R0の合計値に基づいて定量したヘモグロビンの量とに基づいて、酸素飽和度Satを定量することができる。
【0065】
特徴量取得部510は、生体組織Tのヘモグロビンの量の変化に対して感度を有する後述する第1比率に基づいて生体組織Tのヘモグロビンの量を算出し取得するヘモグロビン量算出部510aと、算出したヘモグロビンの量とヘモグロビンの酸素飽和度の変化に対して感度を有する後述する第2比率に基づいて生体組織Tのヘモグロビンの酸素飽和度を算出し取得する酸素飽和度算出部510bと、を含む。第1比率あるいは第2比率がヘモグロビンの量の変化あるいは酸素飽和度の変化に対して感度を有するとは、第1比率あるいは第2比率が、ヘモグロビンの量の変化あるいは酸素飽和度の変化に対して変化することをいう。
【0066】
Wide光(光学フィルタ415を透過した波長帯域R0の光)で照明した生体組織Tのカラー画像データの輝度成分の値が、上述の波長帯域R0における吸光度の合計値に対応することから、特徴量取得部510のヘモグロビン量算出部510aは、波長帯域R0のカラー画像データの輝度成分に基づいてヘモグロビンの量を算出する。ここで、輝度成分は、カラー画像データのR成分に所定の係数を掛け算し、カラー画像データのG成分に所定の係数を掛け算し、カラー画像データのB成分の値に所定の係数を掛け算し、これらの掛け算した結果を合算することで算出することができる。
特徴量取得部510のヘモグロビン量算出部510aは、具体的には、Wide光(第2の光)を照明光ILとして用いた生体組織Tのカラー画像データ(第2のカラー画像データ)の輝度成分Wide(Yh)を、白色光WL(第1の光)を照明光ILとして用いた生体組織Tのカラー画像データ(第1のカラー画像データ)のR成分WL(R)、あるいはR成分WL(R)及びG成分WL(G)の合計成分WL(R)+WL(G)で割った比率Wide(Yh)/WL(R)またはWide(Yh)/{WL(R)+WL(G)}(第1比率)に基づいてヘモグロビンの量を算出する。ヘモグロビンの量の算出において、輝度成分Wide(Yh)を、WL(R)あるいは{WL(R)+WL(G)}で割った比率Wide(Yh)/WL(R)またはWide(Yh)/{WL(R)+WL(G)}を用いるのは、照明光ILが生体組織Tの表面で散乱する程度によって生体組織Tの分光特性が変化することを除去するためである。特に、消化管内壁等の生体組織Tの反射スペクトルは、生体組織Tを構成する成分による吸収の波長特性(具体的には、酸素化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの吸収スペクトル特性)に加えて、生体組織Tによる照明光の散乱の波長特性の影響を受け易い。白色光WL(第1の光)を照明光ILとして用いた生体組織Tのカラー画像データ(第1のカラー画像データ)のR成分WL(R)、あるいはR成分及びG成分の合計成分WL(R)+WL(G)は、ヘモグロビンの量や酸素飽和度Satの影響を受けず、照明光ILの生体組織Tにおける散乱の程度を表す。したがって、生体組織Tの反射スペクトルから、照明光ILの生体組織Tにおける散乱の影響を除去するために、白色光WL(基準光)の波長帯域は、カラー画像データの成分の1つが、生体組織Tのヘモグロビンの量の変化に対して感度を有しないような波長帯域を含むように設定されていることが好ましい。これに加えて、白色光WL(基準光)の波長帯域は、カラー画像データの成分の1つが、酸素飽和度の変化に対して感度を有しないような波長帯域を含むように設定されていることが好ましい。
一実施形態によれば、ヘモグロビンの量が既知の生体組織における上述の第1比率の情報とヘモグロビンの量の対応関係を表した参照テーブルをメモリ512に予め記憶しておき、特徴量取得部510のヘモグロビン量算出部510aは、この参照テーブルを用いて、生体組織Tの撮像したカラー画像データにおける上記第1比率の値に基づいてヘモグロビンの量を算出する。
【0067】
一実施形態のヘモグロビンの量の算出では、第1比率として、Wide光(第2の光)を照明光ILとして用いた生体組織Tのカラー画像データ(第2のカラー画像データ)の輝度成分Wide(Yh)と、白色光WL(第1の光)を照明光ILとして用いた生体組織Tのカラー画像データ(第1のカラー画像データ)のR成分WL(R)、あるいはR成分及びG成分の合計成分WL(R)+WL(G)の比率Wide(Yh)/WL(R)またはWide(Yh)/{WL(R)+WL(G)}を用いることが好ましいが、Wide光(第2の光)を照明光ILとして用いた生体組織Tのカラー画像データ(第2のカラー画像データ)の輝度成分Wide(Yh)の代わりにG成分Wide(G)を用いることも好ましい。
【0068】
さらに、上述したように、酸素飽和度Satの上昇とともに波長帯域R2における吸光度の合計値が低下すること、及び、波長帯域R0における吸光度の合計値はヘモグロビンの量に応じて変化するが、酸素飽和度Satの変化に係わらず一定であることから、特徴量取得部510の酸素飽和度算出部510bは、以下に定める第2比率に基づいて酸素飽和度を算出する。すなわち、特徴量取得部510の酸素飽和度算出部510bは、光学フィルタ416を通過した波長帯域R2の光であるNarrow光で照明した生体組織Tのカラー画像データ(第3のカラー画像データ)の輝度成分Narrow(Yh)と、Wide光(光学フィルタ416を透過した波長帯域R0の光)で照明した生体組織Tのカラー画像データ(第2のカラー画像データ)の輝度成分Wide(Yh)との比率Narrow(Yh)/Wide(Yh)を、第2比率として算出する。一方、ヘモグロビンの量と、酸素飽和度Sat=0%における第2比率の下限値及び酸素飽和度Sat=100%における第2比率Narrow(Yh)/Wide(Yh)の上限値との関係を表した対応関係を、既知の試料から求めてメモリ512に予め記憶しておく。特徴量取得部510の酸素飽和度算出部510bは、生体組織Tの撮像によって生成したカラー画像データから得られるヘモグロビンの量の算出結果と上記対応関係を用いて、第2比率の下限値及び上限値を求める。さらに、酸素飽和度算出部510bは、求めた下限値と上限値の間で酸素飽和度Satは第2比率に応じて線形的に変化することを利用して、撮像した生体組織Tの第2比率Narrow(Yh)/Wide(Yh)の値が、上限値と下限値の間の範囲のどの位置にあるかを算出する。このようにして、特徴量取得部510の酸素飽和度算出部510bは、酸素飽和度Satの算出を行う。
また、一実施形態によれば、ヘモグロビンの量及び第2比率の値とヘモグロビンの酸素飽和度Satとの対応関係を表した参照テーブルを既知の試料から求めて予めメモリ512に記憶しておき、この参照テーブルを参照して、算出した第2比率からヘモグロビンの酸素飽和度Satを算出することもできる。
【0069】
一実施形態では、第2比率を、Narrow光で照明した生体組織Tのカラー画像データ(第3のカラー画像データ)の輝度成分Narrow(Yh)と、Wide光で照明した生体組織Tのカラー画像データ(第2のカラー画像データ)の輝度成分Wide(Yh)との比率として用いるが、Narrow光で照明した生体組織Tのカラー画像データ(第3のカラー画像データ)のG成分Narrow(G)と、Wide光で照明した生体組織Tのカラー画像データ(第2のカラー画像データ)のG成分Wide(G)との比率を用いることもできる。
【0070】
また、上記実施形態では、第2比率の算出のために、生体組織Tの照明のために波長帯域R2のNarrow光を用いるが、Narrow光には限られない。例えば、酸素飽和度Satの変化に対して吸光度の合計値が変化する波長帯域R1あるいは波長帯域R2を利用することを意図して、波長帯域R1あるいは波長帯域R2を波長帯域とする光を用いることもできる。この場合、光学フィルタ416のフィルタ特性を波長帯域R1あるいは波長帯域R2に設定するとよい。
【0071】
このように、一実施形態によれば、酸素飽和度Satを正確に算出するには、Narrow光(第3の光)の波長帯域は、Wide光(第2の光)の波長帯域に含まれることが好ましい。また、Wide光(第2の光)の波長帯域は、第2のカラー画像データの成分の1つ、例えば輝度成分やG成分が、ヘモグロビンの量の変化に対して感度を有するが、酸素飽和度の変化に対して感度を有しないような波長帯域R0を含むように設定されていることが、正確に酸素飽和度Satを算出することができる点から好ましい。Narrow光(第3の光)の波長帯域は、第3のカラー画像データの成分の1つ、例えば輝度成分やG成分が、生体組織Tの酸素飽和度Satの変化に対して感度を有するような波長帯域R2を含むように設定されていることが、正確に酸素飽和度Satを算出することができる点から好ましい。
また、白色光WL(第1の光)の波長帯域は、第1のカラー画像データの成分の1つが、生体組織Tのヘモグロビンの量の変化に対して感度を有しない波長帯域を含むように設定されていることが、生体組織Tにおける散乱光の分光特性の影響を除去することができる点から好ましい。
【0072】
また、上述のWide光(第2の光)は、光学フィルタの1つで、白色光WL(第1の光)の波長帯域のうち、例えば500nm〜600nmの範囲内の第1波長帯域、例えば等吸収点E1と等吸収点E4間の波長帯域を透過させた白色光WL(第1の光)の濾過光であり、Narrow光(第3の光)は、光学フィルタの1つで、第1波長帯域の範囲内の第1波長帯域より狭い第2波長帯域、例えば等吸収点E2と等吸収点E3間の波長帯域を透過させた白色光WL(第1の光)の濾過光であることが好ましい。上記第1波長帯域は、例えば、510nm〜590nmの範囲内の帯域であることが好ましい。また、上記第2波長帯域は、例えば、510nm〜590nmの範囲内の帯域であることが好ましく、530nm〜580nmの範囲内の帯域であることがより好ましい。
【0073】
また、上述の実施形態では、ヘモグロビンの吸光度を利用してヘモグロビン量及び酸素飽和度を算出するときに、550nm付近の波長帯域の光を照明光として利用するが、これは一例である。ヘモグロビンの吸光度において、550nm付近の波長帯域以外にも、大きな吸収ピークが420〜450nmに存在し、かつ等吸収点を備える。この等吸収点の周りで、酸素化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸収スペクトルの波形が交互に入れ替わる。このため、一実施形態では、400〜460nmの波長帯域内の、異なる波長あるいは波長帯域の光を照明光として利用して、ヘモグロビン量及び酸素飽和度を算出することも好ましい。
【0074】
図5は、第1比率とヘモグロビンの量との関係の一例を示す図である。特徴量取得部510のヘモグロビン量算出部510aは、上述したように第1比率を求めると、
図5に示すような関係を表した参照テーブルを参照して、求めた第1比率に基づいてヘモグロビンの量を求める。
図5は、第1比率の値に基づいてヘモグロビンの量H1を求めたことを表している。
図5の横軸及び縦軸の数値は、便宜的に0〜1024の値で表されている。
【0075】
図6は、第2比率の上限値及び下限値とヘモグロビンの量の関係の一例を示す図である。6の横軸及び縦軸の数値は、便宜的に0〜1024の値で表されている。
特徴量取得部510の酸素飽和度量算出部510bは、上述したように第2比率を求めると、ヘモグロビン量算出部510aで求めたヘモグロビンの量と第2比率とに基づいて、
図6に示す対応関係を用いて、求めたヘモグロビンの量における第2比率の上限値及び下限値を求める。この上限値が酸素飽和度Sat=100%を示し、下限値が酸素飽和度Sat=0%を示す。この上限値と下限値の間のどの位置に求めた第2比率はあるかを求めることで、酸素飽和度量算出部510bは、酸素飽和度Satの値を求める。
図6では、第2比率の値がYである。
図6では、ヘモグロビンの量がH1であるときの上限値Max(100%)と下限値Min(0%)を求めている。この上限値Max(100%)と下限値Min(0%)と第2比率の値Yから、酸素飽和度Satの値が求められる。
【0076】
こうして求められた酸素飽和度Satは、生体組織Tの画像の画素毎に行われるので、生体組織Tの像上の酸素飽和度Satの分布は、酸素飽和度分布画像として表すことができる。酸素飽和分布画像は、各画素における酸素飽和度Satの値によって画素の色を変化させた(例えば赤色から青色に変化させた)グラデーションで表される。酸素飽和分布画像は、例えば、生体組織Tの画像の一部分の領域に、予め定めた酸素飽和度の範囲にある画素のみをグラデーションで表した分布画像を含む。
【0077】
(酸素飽和度の確からしさの算出)
上述したように、内視鏡システム1では、光で生体組織Tを照明し撮像することにより生成される各光に対応するカラー画像データの成分から求められる第1比率及び第2比率を用いてヘモグロビンの酸素飽和度Satを算出するので、酸素飽和度Satの値が異常値でなくても、第1比率や第2比率の算出に用いるカラー画像データの成分の値が極端に大きい場合や小さい場合がある。例えば、カラー画像データの成分の値が極端に大きい場合、撮像素子141の受光量に対する出力特性が非線形に近い領域の出力である可能性がある。また、カラー画像データの成分の値が極端に小さい場合、SN比(信号雑音比)が小さくなるので、算出される酸素飽和度Satの値は異常値でなくても、本来の酸素飽和度からずれている可能性がある。実施形態では、このような本来の酸素飽和度からのずれの可能性の高低を確からしさとして表す。すなわち、確からしさが高いほど、本来の酸素飽和度からのずれの可能性が低く、酸素飽和度の値は信頼のできる程度が高いことを示す。
画像処理部500は、上記確からしさを算出するための確からしさ算出部511を備える。確からしさ算出部511は、特徴量取得部510と接続され、酸素飽和度Satを算出する際、第1比率及び第2比率の算出に用いる各カラー画像データを用いて酸素飽和度Satの確からしさを構成する確からしさ成分を画素毎に算出し、さらに確からしさ成分から酸素飽和度Satの確からしさを算出する。確からしさは、一実施形態では、確からしさ成分同士を掛け算した積である。確からしさ算出部511は、算出した確からしさを画像表示制御部514に送る。確からしさ及び確からしさ成分は、一実施形態では、0〜1の範囲の値で表され、値が大きいほど確からしさが高い。
確からしさ算出部511は、特徴量取得部510及び画像表示制御部514とともに、コンピュータ上でプログラムを起動して実行することで以下説明をする機能を担うソフトウェアモジュールで構成されてもよいし、ハードウェアで構成されてもよい。
【0078】
図7及び
図8は、一実施形態の確からしさ算出部511が定める確からしさを構成する確からしさ成分の一例を説明する図である。具体的には、確からしさ算出部511は、カラー画像データAの成分aの第1の値を、第1の値よりカラー画像データの成分aの値が低くなると確からしさ成分が第1の値以上の値における確からしさ成分よりも低下する(
図7では一定値から低下する)下限閾値として設定した状態で、確からしさ成分を求める。
さらに、確からしさ算出部511は、第1の値よりも大きいカラー画像データBの成分bの第2の値を、第2の値よりカラー画像データの成分bの値が大きくなると確からしさ成分が第2の値以下の値における確からしさ成分よりも低下する(
図8では一定値から低下する)上限閾値として設定した状態で、確からしさ成分を求める。このとき、確からしさ成分の下限閾値と確からしさ成分の上限閾値は、異なる2つの光に対応したカラー画像データにおける成分の値である。なお、カラー画像データの各成分は、いずれも同じ数値範囲内で離散化された値を有し、例えば、0〜255、0〜1023、0〜4095のような範囲内で整数の値が各成分に設定されている。
図7に示す例では、カラー画像データAの成分aの値が下限閾値より大きい場合、確からしさ成分は下限閾値における確からしさ成分と同じ値になり、
図8に示す例では、カラー画像データBの成分bの値が上限閾値より小さい場合、確からしさ成分は上限閾値における確からしさ成分と同じ値になるように設定されているが、カラー画像データAの成分の値が下限閾値より大きい場合、確からしさ成分は、下限閾値における確からしさ成分よりも大きな値を有し、カラー画像データBの成分の値が上限閾値より小さい場合、確からしさ成分は、上限閾値における確からしさ成分よりも大きな値を有するように設定した状態にすることもできる。すなわち、カラー画像データAから確からしさ成分の上限閾値は設定されず、カラー画像データBから確からしさ成分の下限閾値は設定されない。
【0079】
このように、実施形態では、確からしさ成分を定めることにより、カラー画像データAの成分の下限閾値よりカラー画像データAの成分aの値が低くなると(他のカラー画像データの値は変化しない条件で)、酸素飽和度Satの確からしさは、下限閾値以上の値における酸素飽和度Satの確からしさよりも低下し、カラー画像データBの成分bの上限閾値よりカラー画像データBの成分bの値が高くなると(他のカラー画像データの値は変化しない条件で)、酸素飽和度Satの確からしさは、上限閾値以下の値における酸素飽和度Satの確からしさよりも低下するように設定することができる。
【0080】
酸素飽和度Satの算出のために用いるカラー画像データは、上述したように、白色光WLで照明した生体組織Tの第1のカラー画像データ、Wide光で照明した生体組織Tの第2のカラー画像データ、及びNarrow光で照明した生体組織Tの第3のカラー画像データを含む。
【0081】
確からしさ算出部511は、確からしさ成分の下限閾値として、第3のカラー画像データの成分の値、例えば、輝度成分の値を用いることが好ましい。確からしさ算出部511は、確からしさ成分の上限閾値として、第1のカラー画像データの成分の値あるいは第2のカラー画像データの成分の値、例えば、輝度成分の値を用いることが好ましい。すなわち、第3のカラー画像データをカラー画像データAとして用い、第1のカラー画像データあるいは第2のカラー画像データをカラー画像データBとして用いることが好ましい。
第3のカラー画像データは、Narrow光で生体組織Tを照明することで得られるデータであり、Narrow光は、光源ランプ430から放射された光を光学フィルタ416に透過させることで生成される濾過光であり、Narrow光の波長帯域は、白色光WLやWide光に比べて狭いので、Narrow光の光強度は、白色光WLやWide光の光強度に比べて低くなり易い。このため、第3のカラー画像データの成分の値は、第1のカラー画像データの成分の値や第2のカラー画像データの成分の値に比べて小さい。このため、確からしさ算出部511は、値が小さい傾向にある第3のカラー画像データについては、SN比等を考慮して、許容範囲をはずれた小さな値を用いて算出される確からしさを低く設定する。一方、第1のカラー画像データあるいは第2のカラー画像データの成分の値は、光学フィルタにおける光の透過波長帯域は広く、第3のカラー画像データの成分の値に比べて大きくなり易い。このため、確からしさ算出部511は、値が大きい傾向にある第1のカラー画像データあるいは第2のカラー画像データについては、撮像素子141の出力特性等を考慮して許容範囲をはずれた大きな値を用いて算出される酸素飽和度Satの確からしさを低く設定する。したがって、一実施形態によれば、
図7に示すように、下限閾値を設定するカラー画像データAは、照明光として用いる複数の光の中で光強度が最も弱い光を用いて得られるカラー画像データであることが好ましい。また、一実施形態によれば、
図8に示すようにカラー画像データの成分の値に上限閾値を設定するカラー画像データBは、照明光として用いる複数の光の中で光強度が最も強い光を用いて得られるカラー画像データが含まれることが好ましい。
したがって、第3のカラー画像データを用いて確からしさ成分の下限閾値は設定されるが、上限閾値は設定されず、第1のカラー画像データ及び第2のカラー画像データを用いて確からしさ成分の上限閾値は設定されるが、下限閾値は設定されない。
【0082】
確からしさ算出部511は、第1のカラー画像データと第2のカラー画像データのそれぞれに対して、確からしさ成分の上限閾値を設定してもよく、第1のカラー画像データ及び第2のカラー画像データのいずれか一方に対して、確からしさ成分の上限閾値を設定してもよい。第1のカラー画像データと第2のカラー画像データのそれぞれに対して確からしさ成分の上限閾値を設定する場合、上限閾値は同じでもよいが、異なることが好ましい。
【0083】
このようなカラー画像データに基づく確からしさ成分は、少なくとも2つのカラー画像データの成分毎に、画素毎に求められるので、確からしさ算出部511は、1つの酸素飽和度Satの確からしさとして纏めるために、少なくとも2つのカラー画像データにおける対応した画素同士の確からしさ成分の値を掛け算する。確からしさ算出部5110は、掛け算して得られた画素毎の値を、酸素飽和度Satの確からしさの値とする。
確からしさ算出部511は、算出した画素毎の確からしさの値を、画素表示制御部514に送る。
【0084】
図9は、1つのカラー画像データに対して、確からしさ成分の下限閾値及び上限閾値を設定する一例を説明する図である。
図9に示すように、カラー画像データに対して、確からしさ成分の下限閾値及び上限閾値を設定すると、本来上限閾値を設定する必要のないカラー画像データの大きな値や本来下限閾値を設定する必要のないカラー画像データの小さな値を用いて算出した酸素飽和度Satの確からしさを低く定めることになり、酸素飽和度分布画像から、生体組織Tの状態を正しく判断できない可能性がある。
【0085】
このように、実施形態では、酸素飽和度Satの算出に用いるカラー画像データの成分の値に対して上限閾値と下限閾値を設定する場合、上限閾値と下限閾値は、異なるカラー画像データの成分に対して設定するので、確からしさ成分の上限閾値を設定する必要のないカラー画像データの大きな値や確からしさ成分の下限閾値を設定する必要のないカラー画像データの小さな値を用いて酸素飽和度Satの確からしさを効率よく算出することができる。
【0086】
図7及び
図8に示す例では、確からしさを構成する確からしさ成分の下限閾値よりカラー画像データAの成分aの値が小さくなると、カラー画像データAに基づく確からしさ成分を一定値である1から0にステップ状に急激に変更し、上限閾値よりカラー画像データBの成分bの値が大きくなると、カラー画像データBに基づく確からしさ成分を一定値である1から0にステップ状に急激に変更するように設定しているが、カラー画像データA,Bの成分a,bの値が確からしさ成分の下限閾値、上限閾値から遠くに外れるにつれて、確からしさ成分を徐々に小さくするように設定することで、酸素飽和度Satの確からしさも、閾値から遠くに外れるにつれて、確からしさを徐々に小さくすることも好ましい。
【0087】
画像表示制御部514は、確からしさ算出部511から送られる画素毎の確からしさに応じて、酸素飽和度分布画像の表示形態を制御する。画像表示制御部514は、確からしさの値が予め定めた値より低い画素について、確からしさの値に応じて画素の明度や彩度や色相を変化させること、あるいは、画素の透過率を変化させることが好ましい。この場合、明度、彩度、色相、あるいは透過率によって、確からしさの程度を知ることができるので、操作者は、確からしさの低い部分を、高い部分に対して視覚的に区別して、精度の高い酸素飽和度分布画像を観察することができる。
また、画像表示制御部514は、予め設定した酸素飽和度の範囲にある領域の酸素飽和度Satの分布の画像を生体組織Tの像に重ねて表示するように制御し、確からしさの値が予め定めた値より低い画素について、確からしさの値に応じて画素の透過率を調整することも好ましい。例えば、確からしさの値が小さくなるほど、画素の透過率を高め、生体組織Tの像が透けて見えるようにすることが好ましい。
【0088】
また、画像表示制御部514は、ヘモグロビンの量を求めるために用いる第1比率が所定範囲外、例えば、実際には有り得ない範囲になると、酸素飽和度Satの確からしさが低下するように、確からしさを補正することが好ましい。第1比率は、上述の実施形態では、Wide(Yh)/WL(R)またはWide(Yh)/{WL(R)+WL(G)}を用いるので、第1比率が所定範囲を外れると第1の比率自体が正常な値でない可能性がある。この場合、画像表示制御部514は、第1比率に基づく確からしさ成分を生成し、第1比率が所定範囲を超えると確からしさ成分を0にする、あるいは、所定範囲を外れる程度が大きくなるにつれて確からしさ成分が徐々に低下するように定めることが好ましい。これにより、正常な値でない可能性がある第1比率の値に基づいて算出された酸素飽和度Satの確からしさを低くすることができる。このような第1の比率に基づく確からしさ成分は、カラー画像データそれぞれに基づいて定まる確からしさ成分の積に更に掛け算されて、補正された1つの確からしさの値に纏めることが好ましい。したがって、第1比率が所定範囲を外れると酸素飽和度Satの確からしさが低下するように、酸素飽和度Satの確からしさを構成することができる。
【0089】
画像表示制御部514は、第2比率が予め定めた範囲外となると確からしさが低下するように確からしさを補正することが好ましい。第2比率は、上述の実施形態では、Narrow(Yh)/Wide(Yh)を用いるので、第2比率が予め定めた範囲を超えると第2の比率自体が正常な値でない可能性がある。この場合、画像表示制御部514は、第2比率に基づく確からしさ成分を生成し、第2比率が、予め定めた範囲を外れると確からしさ成分を0にする、あるいは、予め定めた範囲を外れる程度が大きくなるにつれて確からしさ成分が徐々に低下する、ように定めることが好ましい。これにより、正常な値でない可能性がある第2比率の値に基づいて算出された酸素飽和度Satの確からしさを低くすることができる。このような第2の比率に基づく確からしさ成分は、カラー画像データそれぞれに基づいて定まる確からしさ成分の積に更に掛け算されて、補正された1つの確からしさの値に纏めることが好ましい。したがって、第2比率が所定範囲を外れると酸素飽和度Satの確からしさが低下するように、酸素飽和度Satの確からしさを構成することができる。
【0090】
また、画像表示制御部514は、酸素飽和度Satの分布の画像、例えば、酸素飽和度の設定された範囲にある酸素飽和度Satの分布の画像を、生体組織Tの像に重ねて表示するように制御し、上記第2比率の値が、ヘモグロビンの量に応じて定まる第2比率の許容範囲をはずれる正常でない画素については、
図10に示すように、第2比率の値が許容範囲から外れる場合、当該画素の透過率を調整するように制御することも好ましい。これにより、正常な値でない可能性がある第2比率の値に基づいて算出された酸素飽和度Satの表示を抑えることができる。この場合、上述した第2比率に基づく確からしさ成分に応じて、明度、彩度あるいは透過率を変更する表示形態の制御と併用することも好ましい。
【0091】
図10は、一実施形態における酸素飽和度分画像の表示方法の一例を説明する図である。
図10は、第2比率の値が図示する曲線で挟まれた許容範囲を超える領域に位置する画素について、透明率を100%(完全に下層の画像が透けて見える)の透明画素とする例を示している。GDは、2つの曲線間の許容範囲内の領域であり、酸素飽和度Satの値に応じて色相を変化させたグラデーション画素領域を示す。TP1,TP2は、許容範囲外の領域であり、画素を透過率100%の透明画素とする透明画素領域を示す。
【0092】
上述した確からしさ成分の上限閾値及び下限閾値に用いるカラー画像データの種類は特に限定されないが、確からしさ成分の上限閾値は、第1のカラー画像データあるいは第2のカラー画像データの輝度成分の値であり、確からしさ成分の下限閾値は、第3のカラー画像データの輝度成分の値であることが、適切な酸素飽和度Satの確からしさを求めることができる点で好ましい。
【0093】
以上、ヘモグロビンの量及び酸素飽和度Satを求める際に、酸素飽和度Satの確からしさを算出することを説明したが、このときの上述の実施形態では、ヘモグロビンの量及び酸素飽和度Satを求めるために、波長帯域の異なる3つの光が照明光として用いられる。しかし、照明光として用いる3つの光に代えて1つの光を用いて1つのカラー画像データを得て、このカラー画像データの成分を用いて、ヘモグロビン量及び酸素飽和度Satを求めることもできる。この場合、1つの光を照明光として用いるので、光源装置400の構成が簡素化する他、複数のカラー画像データを生成する必要が無いので、プロセッサ200における各部分の構成が簡素化する。
【0094】
この場合、1つの光に、例えば、450〜500nmの波長帯域の光成分(青光成分)、525〜582nmの波長帯域の光成分(緑光成分)、620〜670nmの波長帯域の光成分(赤光成分)を含ませるとよい。このような光で得られたカラー画像データを、
図1に示すプレ画像処理部504にてマトリックス演算を行って上記光成分に対応したカラー画像データの3つの対応成分を求めることができる。この場合、一実施形態によれば、ヘモグロビンの量を求めるための指標となる第1比率は、緑光成分に対応した対応成分の、3つの対応成分から得られる合成した対応成分(例えば、3つの対応成分の値を加重平均した値を有する対応成分)に対する比とすることができ、さらに、酸素飽和度Satを求めるための指標となる第2比率は、青光成分に対応した対応成分の、緑光成分に対応した対応成分に対する比とすることができる。この実施形態においても、第1比率及び第2比率を構成する分子及び分母の値に基づいて確からしさ成分を求めることができ、酸素飽和度Satの確からしさを算出することができる。すなわち、光源装置400は、波長帯域の異なる少なくとも2つの光成分を含む第1の光を出射するように構成される。これにより電子内視鏡100で生成された第1のカラー画像データから、プロセッサ200のプレ画像処理部504(対応成分抽出部)は、光成分の波長帯域それぞれに対応した第1のカラー画像データの対応成分を抽出する。抽出した対応成分のうちの成分a及び成分bを少なくとも用いて、特徴量取得部510はヘモグロビンの酸素飽和度Satを生体組織の特徴量として取得する。例えば、ヘモグロビン量及び酸素飽和度Satを求めるために照明光として用いる第1の光は、3つの光成分を含み、特徴量取得部510のヘモグロビン量算出部510aは、3つの光成分の波長帯域に対応したカラー画像データの対応成分を用いて得られる第1比率に基づいてヘモグロビンの量を算出し、酸素飽和度算出部510bは、対応成分を用いて得られる第2比率とヘモグロビンの量とに基づいてヘモグロビンの酸素飽和度Satを算出する。
このとき、確からしさ算出部511は、対応成分のうちの成分aの第1の値を確からしさ下限閾値として設定し、かつ、成分bの第2の値を確からしさ上限閾値として設定した状態で確からしさを算出する。このとき、成分aと成分bは、互いに異なる2つの対応成分である。この場合、確からしさ下限閾値を設定する成分aには、第1比率の分子となる対応成分とすることが好ましく、確からしさ上限閾値を設定する成分bには、第1比率の分母となる対応成分とすることが好ましい。
【0095】
この場合においても、確からしさ算出部511は、成分a及び成分b毎に求めた確からしさ成分に基づいて画素毎に確からしさを算出するように構成される。このとき、成分aから求める確からしさ成分は、成分aの値が確からしさ下限閾値より大きい場合、確からしさ下限閾値における前記確からしさ成分と同じかそれより大きい値を有し、成分bから求める確からしさ成分は、成分bの値が確からしさ上限閾値より小さい場合、確からしさ上限閾値における確からしさ成分と同じかそれより大きい値を有する、ことが好ましい。このように、確からしさ上限閾値と確からしさ下限閾値は、カラー画像データの異なる対応成分に対して設定するので、確からしさ成分の上限閾値を設定する必要のないカラー画像データの大きな値や確からしさ成分の下限閾値を設定する必要のないカラー画像データの小さな値を用いて酸素飽和度Satの確からしさを効率よく算出することができる。
【0096】
一実施形態によれば、ヘモグロビンの量及び酸素飽和度Satを求めるために、波長帯域の異なる3つの光成分を有する第1の光を照明光として用いる場合、光源装置400は、第1の光の他に、第1の光と波長帯域の異なる第2の光も照明光として出射することも好ましい。この場合、ヘモグロビン量算出部510aは、第1の光を照明光としたときに生成される第1のカラー画像データから抽出される光成分の波長帯域に対応した成分a,bの第1比率に基づいてヘモグロビンの量を算出し、酸素飽和度算出部510bは、上記成分aと成分bの1つと、第2の光を照明光としたときに生成される第2のカラー画像データの成分の1つから第2比率を生成し、この第2比率と、ヘモグロビン量算出部510aで算出されたヘモグロビンの量とに基づいてヘモグロビンの酸素飽和度Satを算出することも好ましい。
【0097】
例えば、第1の光に、450〜500nmの波長帯域の光成分(青光成分)、525〜582nmの波長帯域の光成分(緑光成分)、620〜670nmの波長帯域の光成分(赤光成分)を含ませる。第2の光の波長帯域は、545〜570nmとする。
この場合、一実施形態によれば、ヘモグロビンの量を求めるための指標となる第1比率は、対応成分のうちの緑光成分に対応した対応成分の、緑光成分に対応した対応成分と赤光成分に対応した対応成分の和、すなわち合成した対応成分に対する比とし、酸素飽和度Satを求めるための指標となる第2比率は、第2のカラー画像データの545〜570nmの波長帯域に対応した成分の、上記第2のカラー画像データの緑光成分に対応した対応成分に対する比とすることができる。
【0098】
上述の実施形態では、内視鏡システム1を用いて精度の高い診断を行うために、酸素飽和度Satの分布を示す酸素飽和度分布画像は高画質であることが求められる。このため、酸素飽和度分布画像は、好ましくは100万画素以上、より好ましくは200万画素以上、さらに好ましくは800万画素以上である。一方、取り扱う画像の画素数が多くなる程、プロセッサ200の演算回路は大きくなり、処理負荷も大きくなる傾向にある。特に、100万画素以上の高画素(高画質)では上記傾向は顕著である。一実施形態では、上述したように、ヘモグロビンの量や酸素飽和度Satとカラー画像データを関連付けた参照テーブルや対応関係の情報を予め設けておき、この参照テーブル及び対応関係を用いてヘモグロビンの量及び酸素飽和度Satを算出するので、上述の実施形態は、カラー画像データの取得の度にヘモグロビンの量及び酸素飽和度Satを、参照テーブル及び対応関係を用いずに算出する場合に比べて効率よくヘモグロビンの量及び酸素飽和度Satを算出することができる。このため、プロセッサ200の演算回路を小さくすることができ、これにより、高画質な画像を生成するとしても、低コストで、低発熱量で、低省電力のプロセッサ200を提供することができる。
【0099】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。