特許第6615411号(P6615411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6615411六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料及びその製造方法並びに応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6615411
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料及びその製造方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20191125BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20191125BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20191125BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20191125BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   C09D163/00
   C09D7/61
   C09D7/65
   C09D5/02
   C09D5/08
【請求項の数】17
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-516501(P2019-516501)
(86)(22)【出願日】2016年12月6日
(86)【国際出願番号】CN2016108682
(87)【国際公開番号】WO2018090407
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2019年3月25日
(31)【優先権主張番号】201611017997.7
(32)【優先日】2016年11月17日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201611009592.9
(32)【優先日】2016年11月17日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510173476
【氏名又は名称】中国科学院▲寧▼波材料技▲術▼▲与▼工程研究所
【氏名又は名称原語表記】NINGBO INSTITUTE OF MATERIALS TECHNOLOGY & ENGINEERING,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】王 立平
(72)【発明者】
【氏名】趙 海超
(72)【発明者】
【氏名】崔 明君
(72)【発明者】
【氏名】邱 詩惠
(72)【発明者】
【氏名】陳 誠
(72)【発明者】
【氏名】覃 松緑
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第105802452(CN,A)
【文献】 特開2014−166930(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106010181(CN,A)
【文献】 特開2008−290440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポキシ樹脂、六方晶窒化ホウ素、ポリアニリンナノファイバー、塗料助剤、及び溶媒を含第1の成分と、
ポキシ樹脂硬化剤、及び溶媒を含む第2の成分と、
を含み
記六方晶窒化ホウ素の厚さが20nm以下であり、六方晶窒化ホウ素ナノシート、六方晶窒化ホウ素ミクロンシート、六方晶窒化ホウ素ナノリボン、層数が2以上5未満の少層の六方晶窒化ホウ素、層数が5〜9層の多層の六方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素量子ドット中のいずれか1つまたはいずれか1つの誘導体から選ばれ、
前記ポリアニリンナノファイバーの材質はポリアニリンまたは置換基含有のポリアニリンから選ばれ、前記置換基はアルキル基またはアミノ基を含み、前記ポリアニリンナノファイバーの直径が10〜300nmであり、長さが0.5〜5μmである、
ことを特徴とする六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項2】
六方晶窒化ホウ素の厚さが10nm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項3】
前記六方晶窒化ホウ素は六方晶窒化ホウ素ナノシートである、
ことを特徴とする請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項4】
前記アルキル基はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項5】
前記置換基含有のポリアニリンはポリO−メチルアニリン、ポリO−エチルアニリン、ポリO−プロピルアニリン、ポリブチルアニリン及びポリO−ベンゼンジアミン中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項6】
前記ポリアニリンナノファイバーの直径が10〜100nmであり、長さが0.5〜5μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、メチロールビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナイロン変性エポキシ樹脂、ノボラック型フェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂、O−クレゾールホルムアルデヒドエポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂硬化剤はポリアミド系硬化剤、カルダノール系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項9】
前記塗料助剤は沈殿防止剤、消泡剤及びレベリング剤のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項10】
前記沈殿防止剤は気相シリカ、ポリアミド系ワックス及び有機ベントナイト中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項11】
前記消泡剤はジメチルシリコーンオイル、エーテルエステル化合物、変性鉱油、ポリエトキシグリセリルエーテル、低分子金属有機物及び変性シリコーンポリマー中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項12】
前記レベリング剤はエチルグリコールブチルエーテル、セルロースアセテートブチレート、ポリアクリレート系、シリコーンオイル、メチロールセルロース、ポリジメチルシラン及び変性シリコーン化合物中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項13】
前記溶媒はトルエン、キシレン、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール、酢酸エチル及びジメチルスルホキシドのいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の製造方法であって、
六方晶窒化ホウ素及びポリアニリンナノファイバーを均一に溶媒中に分散させ、六方晶窒化ホウ素の分散液を得た後、六方晶窒化ホウ素の分散液とエポキシ樹脂、助剤及び溶媒を均一に混合させることによって第1の成分を形成するステップと、
ポキシ樹脂硬化剤を溶媒で希釈することによって第2の成分を形成するステップと
を含む、
ことを特徴とする六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の製造方法。
【請求項15】
六方晶窒化ホウ素の分散液中で、六方晶窒化ホウ素とポリアニリンナノファイバーの質量比が1:10〜10:1である、
ことを特徴とする請求項14に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料で形成されるコート層。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の第1の成分と第2の成分を均一に混合させた後成膜処理を行い、そして室温で硬化することによってコート層を形成するステップを含むコート層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ塗料に関し、具体的には、六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料及びその製造方法並びに応用に関し、塗料技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
腐食による金属材料の直接損失が巨大であり、主に2つの損失がある。まず、経済的な損失であり、全世界で一年間腐食による廃棄金属が約1億トンであり、年間産量の20%〜40%になり、且つ工業化の発展に従い腐食による問題が益々顕在化され、全世界で一年間における腐食による廃棄鉄鋼機器が年間産量の30%になり、経済的な損失が著しい。そして、腐食による弊害が、経済的な損失だけでなく、けが、環境汚染、資源の無駄、技術の発展障害、自然資源の損失なども引き起こす。金属腐食による経済や社会生活に対する弊害を緩和する要請が、益々高まっている。
【0003】
現在、腐食からの保護として表面コート層塗布技術(有機コート層及び無機コート層)がよく知られているが、特に有機コート層は製造プロセスが簡単で、安価であるので、量産に適合する等の利点で広く応用されている。有機コート層の金属に対する保護作用として主に物理バリア、不動態化、防錆充填剤の保護、陰極保護作用等を含む。しかしながら、有機コート層材料は完璧なバリア体系とは言えず、ポリマー自身の分子鎖隙間によるコート層の気孔が発生し、塗布過程中に溶媒の揮発による気孔が水分や塩水噴霧等の腐食媒体の滲入通路になる。腐食の発生を抑制するために、一般的に防食塗料には腐食抑制剤としてクロムまたは鉛等の重金属化合物を含むので、海洋環境や人間の健康に悪い影響を与える。環境保護や健康意識の要請に応じて、塗料として環境に優しい重金属なしの無毒防錆充填剤防食塗料を開発することが主流になる。
【0004】
一方、六方晶窒化ホウ素は優れた化学・熱安定性、疎水性、バリア性、熱伝導性、潤滑性及び力学的性能を有し、特に絶縁性を更に有するので、塗料に応用すれば、塗料の一層良い耐食性が期待されている。しかしながら、六方晶窒化ホウ素をそのまま高分子ポリマーや樹脂に配合する場合に、六方晶窒化ホウ素同士がπ―π結合作用やファンデルワールス力吸着作用に起因して凝集が発生しすく、均一に高分子ポリマーや樹脂に分散しにくいので、マイクロポアの存在で形成したコート層の保護効果が悪い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の欠点を解決するために、六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料及びその製造方法並びに応用を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記発明の目的を達成するために、本発明は以下のような手段を採用する。
本発明の実施例では、
六方晶窒化ホウ素、エポキシ樹脂、オリゴアニリンまたはポリアニリンナノファイバー、塗料助剤及び溶媒を含む第1の成分と、
硬化剤を含む第2の成分と、を含む六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を提供する。
【0007】
1つの実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料は、
六方晶窒化ホウ素、エポキシ樹脂、オリゴアニリン、塗料助剤及び溶媒を含み、少なくとも一部のオリゴアニリンと六方晶窒化ホウ素との物理的作用結合によって、六方晶窒化ホウ素を上記塗料中に均一に分散させる第1の成分と、
硬化剤を含む第2の成分と、を含んでも良い。
【0008】
さらに、上記実施形態において、上記塗料中の六方晶窒化ホウ素の含有量が0.5wt%〜2wt%であることが好ましい。
【0009】
さらに、上記実施形態のある好適実施例において、上記塗料は具体的に、
エポキシ樹脂80〜95質量部、六方晶窒化ホウ素0.5〜2質量部、オリゴアニリン0.25〜1質量部、塗料助剤5〜15質量部を含む第1の成分と、
硬化剤75〜100質量部、溶媒0〜25質量部を含む第2の成分と、を含み、
第1の成分と第2の成分の質量比は100:10〜100:80である。
【0010】
1つの実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料は、六方晶窒化ホウ素、ポリアニリンナノファイバー、エポキシ樹脂、分散媒、塗料助剤、エポキシ樹脂硬化剤及び溶媒等の成分を更に含んでも良い。
【0011】
さらに、上記実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料中の六方晶窒化ホウ素の含有量が、0.5〜2wt%であることが好ましい。
【0012】
さらに、上記実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料中のポリアニリンナノファイバーの含有量が、0.25%wt〜1wt%であることが好ましい。
【0013】
さらに、上記実施形態のある好適実施例において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料は、
エポキシ樹脂50〜79wt%、六方晶窒化ホウ素0.5〜2wt%、ポリアニリンナノファイバー0.25〜1wt%、塗料助剤0.5〜5wt%、溶媒20〜30wt%を含む第1の成分と、
エポキシ樹脂硬化剤75〜100wt%、溶媒0〜25wt%を含む第2の成分と、を含み、
第1の成分と第2の成分の質量比が100:10〜100:80である。
【0014】
本発明の実施例では、
六方晶窒化ホウ素、及びオリゴアニリンまたはポリアニリンナノファイバーを溶媒中に混合させ、六方晶窒化ホウ素の分散液を得た後、六方晶窒化ホウ素の分散液とエポキシ樹脂及び塗料助剤を均一に混合させることによって、第1の成分を用意するステップと、
硬化剤または硬化剤と溶媒の混合物を含む第2の成分を用意するステップと、を含む六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の製造方法を提供する。
【0015】
1つの実施形態において、上記製造方法は、
六方晶窒化ホウ素及びオリゴアニリンを溶媒中に混合させ、六方晶窒化ホウ素の分散液を得た後、六方晶窒化ホウ素の分散液とエポキシ樹脂及び塗料助剤を均一に混合させることによって第1の成分を用意するステップと、
硬化剤または硬化剤と溶媒の混合物を含む第2の成分を用意するステップと、を含んでも良い。
【0016】
1つの実施形態において、上記製造方法は、
六方晶窒化ホウ素及びポリアニリンナノファイバーを均一に溶媒中に分散させ、六方晶窒化ホウ素の分散液を得た後、上記六方晶窒化ホウ素の分散液とエポキシ樹脂、助剤及び溶媒を均一に混合させることによって第1の成分を形成するステップと、
エポキシ樹脂硬化剤をそのまま、またはエポキシ樹脂硬化剤を溶媒で希釈化して第2の成分を形成するステップと、を含んでも良い。
【0017】
さらに、上記オリゴアニリンはアニリンオリゴマーとも言われ、そのアニリンがポリアニリンよりも共役チェーンセグメントが短く、電気的活性が略同一であるが、分子欠陥がないので、より良い溶解性を有する。本発明の好適なオリゴアニリンは、アニリン三量体、アニリン四量体、アニリン五量体およびアニリン六量体中のいずれか1種類または複数種類の組合せであるが、これに限定されない。これらのオリゴアニリンは市販品であってもよく、参照文献(例えば《CHEM.COMMUN.》、2003年,第2768―2769ページ;《Synthetic Metals》,2001年,第122巻第237―242ページ;CN101811997A;CN1369478A、CN1204655A等)を参照して製造されてもよい。
【0018】
さらに、上記ポリアニリンナノファイバーの材質として、ポリアニリンまたは側鎖に置換基を有するポリアニリンから選ばれれば良く、好ましくは、上記置換基がメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を含み、好ましくは、上記側鎖に置換基を有するポリアニリンがポリO−メチルアニリン、ポリO−エチルアニリン、ポリO−プロピルアニリン、ポリブチルアニリン等のいずれか1種類または複数種類の組合せを含むが、これに限定されない。
【0019】
さらに、上記六方晶窒化ホウ素は六方晶窒化ホウ素ナノシート、六方晶窒化ホウ素ミクロンシート、六方晶窒化ホウ素ナノリボン、少層の六方晶窒化ホウ素(2〜5層)、多層の六方晶窒化ホウ素(5〜9層)、六方晶窒化ホウ素量子ドット中のいずれか1つまたはその誘導体(例えば水酸基化窒化ホウ素、ドーパミン窒化ホウ素等)を含むが、これに限定されない。
【0020】
さらに、上記エポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、メチロールビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナイロン変性エポキシ樹脂、ノボラック型フェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂、O−クレゾールホルムアルデヒドエポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂中のいずれか1種類または複数種類の組合せを含むが、これに限定されない。
【0021】
さらに、上記硬化剤(エポキシ樹脂硬化剤とも言われ)はポリアミド系硬化剤、カルダノール系硬化剤、無水物系硬化剤またはイミダゾール系硬化剤等を含むが、これに限定されない。
【0022】
さらに、上記塗料助剤は沈殿防止剤、消泡剤和レベリング剤のいずれか1種類または複数種類の組合せを含むが、これに限定されない。
【0023】
さらに、上記溶媒はトルエン、キシレン、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール、酢酸エチル及びジメチルスルホキシドのいずれか1種類または複数種類の組合せを含むが、これに限定されない。
【0024】
本発明の実施例では、上記いずれか1つの方法で製造された六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を更に提供する。
【0025】
本発明の実施例では、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の用途を更に提供する。
【0026】
本発明の実施例では、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料から形成されたコート層、特に防食耐磨耗コート層を更に提供する。
【0027】
本発明の実施例では、上記コート層の製造方法をさらに提供する。
【発明の効果】
【0028】
従来技術に比べて、本発明が提供する六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料は、保存安定性が良く、沈みにくい等の利点を有し、簡単な製造プロセスや安価で、量産に適合し、且つ形成したコート層のバリア性が優れ、長期間の耐食性を有するので、化学工業、石油、電力、船舶、紡績、貯蔵、交通、宇宙等の分野で良好な応用展望が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1a】本発明の一実施例における六方晶窒化ホウ素を溶媒及びオリゴアニリンで分散させる前後の写真である。
図1b】本発明の一実施例におけるアニリン三量体と六方晶窒化ホウ素との結合を示す図である。
図2a】比較例1で得られた単一のエポキシコート層の断面の走査型電子顕微鏡による写真である。
図2b】実施例1で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の断面の走査型電子顕微鏡による写真である。
図2c】実施例2で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の断面の走査型電子顕微鏡による写真である。
図2d】実施例3で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の断面の走査型電子顕微鏡による写真である。
図2e】実施例1で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の透過型電子顕微鏡による写真である。
図3a】比較例1で得られた単一のエポキシコート層を濃度3.5wt%のNaCl溶液で60日浸漬した交流インピーダンススペクトルを示すボード線図である。
図3b】実施例1で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を濃度3.5wt%のNaCl溶液で60日浸漬した交流インピーダンススペクトルを示すボード線図である。
図3c】実施例2で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を濃度3.5wt%のNaCl溶液で60日浸漬した交流インピーダンススペクトルを示すボード線図である。
図3d】実施例3で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を濃度3.5wt%のNaCl溶液で60日浸漬した交流インピーダンススペクトルを示すボード線図である。
図4】比較例1で得られた単一のエポキシコート層及び実施例1、2、3で得られた含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を60日浸漬した後の分極曲線図である。
図5】比較例1で得られた単一のエポキシコート層及び実施例1、2、3で得られた含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の熱重量曲線図である。
図6a】比較例1で得られた単一のエポキシコート層及び実施例1、2、3で得られた含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の摩擦係数の経時変化曲線図である。
図6b】比較例1で得られた単一のエポキシコート層及び実施例1、2、3で得られた含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の磨耗率を示す図である。
図7】本発明の実施例7で使用されるポリブチルアニリンナノファイバーの透過型電子顕微鏡による写真である。
図8a】本発明の実施例7におけるポリブチルアニリンナノファイバーによる分散処理をしていない六方晶窒化ホウ素を、溶媒中に分散させる写真である。
図8b】本発明の実施例7におけるポリブチルアニリンナノファイバーで分散処理した六方晶窒化ホウ素を、溶媒中に分散させる写真である。
図9a】比較例4の単一のエポキシコート層のTEM図である。
図9b】実施例7で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層のTEM図である。
図9c】実施例8で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層のTEM図である。
図9d】実施例9で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層のTEM図である。
図10】比較例4の単一のエポキシコート層及び実施例7〜実施例9で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を質量部3.5wt%NaCl溶液で120日浸漬した後の交流インピーダンススペクトルの電位分極曲線(ボード線)図である。
図11】比較例4の単一のエポキシコート層及び実施例7〜実施例9で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の開放電位の浸漬時間に従う変化曲線図である。
図12】比較例4の単一のエポキシコート層及び実施例7〜実施例9で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の吸水率曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施例の一側面で、
六方晶窒化ホウ素、エポキシ樹脂、オリゴアニリンまたはポリアニリンナノファイバー、塗料助剤及び溶媒を含む第1の成分と、
硬化剤を含む第2の成分と、を含む六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を提供する。
【0031】
1つの実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料は、
六方晶窒化ホウ素、エポキシ樹脂、オリゴアニリン、塗料助剤及び溶媒を含み、少なくとも一部のオリゴアニリンと六方晶窒化ホウ素の物理的作用による結合によって、六方晶窒化ホウ素を上記塗料中に均一に分散させる第1の成分と、
硬化剤を含む第2の成分と、を含んでも良い。
【0032】
さらに、上記実施形態において、上記塗料における六方晶窒化ホウ素の含有量が0.5wt%〜2wt%であることが好ましい。
【0033】
さらに、上記実施形態において、上記塗料における六方晶窒化ホウ素とオリゴアニリンの質量比が1:10〜10:1であることが好ましい。
【0034】
さらに、上記実施形態において、上記塗料におけるオリゴアニリンの含有量が0.25wt%〜1wt%であることが好ましい。
【0035】
ある好適な具体的な実施形態において、上記塗料は具体的に、
エポキシ樹脂80〜95質量部、六方晶窒化ホウ素0.5〜2質量部、オリゴアニリン0.25〜1質量部、塗料助剤5〜15質量部を含む第1の成分と、
硬化剤75〜100質量部、溶媒0〜25質量部を含む第2の成分と、を含み、
第1の成分と第2の成分の質量比が100:10〜100:80である。
【0036】
さらに、上記実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料におけるオリゴアニリンと六方晶窒化ホウ素とが、複合体の形態で均一に分散している。
【0037】
他の実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料は六方晶窒化ホウ素、ポリアニリンナノファイバー、エポキシ樹脂、分散媒、塗料助剤、エポキシ樹脂硬化剤及び溶媒等の成分を含んでも良い。
【0038】
さらに、上記実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料における六方晶窒化ホウ素の含有量が0.5〜2wt%であることが好ましい。
【0039】
さらに、上記実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料におけるポリアニリンナノファイバーの含有量が0.25%wt〜1wt%であることが好ましい。
【0040】
ある好適な具体的な実施形態において、上記塗料は具体的に、
50〜79wt%のエポキシ樹脂、0.5〜2wt%の方晶窒化ホウ素、0.25〜1wt%のポリアニリンナノファイバー、0.5〜5wt%の塗料助剤、20〜30wt%の溶媒を含む第1の成分と、
75〜100wt%のエポキシ樹脂硬化剤、0〜25wt%の溶媒を含む第2の成分と、を含み、
第1の成分と第2の成分の質量比が100:10〜100:80である。
【0041】
上記実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を使用する前に、第1の成分と第2の成分を予め均一に混合させた後、成膜処理等の動作を実行しても良い。
【0042】
さらに、上記実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料におけるポリアニリンナノファイバーと六方晶窒化ホウ素とが、複合体の形態で均一に分散している。
【0043】
本発明の実施例のもう1つ側面では、
六方晶窒化ホウ素、及びオリゴアニリンまたはポリアニリンナノファイバーを溶媒中に混合させ、六方晶窒化ホウ素の分散液を得た後、六方晶窒化ホウ素の分散液とエポキシ樹脂及び塗料助剤を均一に混合させることによって第1の成分を用意するステップと、
硬化剤または硬化剤と溶媒の混合物を含む第2の成分を用意するステップと、を含む、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の製造方法を提供する。
【0044】
1つの実施形態において、上記製造方法は、
六方晶窒化ホウ素及びオリゴアニリンを溶媒中に混合させ、六方晶窒化ホウ素の分散液を得た後、六方晶窒化ホウ素の分散液とエポキシ樹脂及び塗料助剤を均一に混合させることによって第1の成分を用意するステップと、
硬化剤または硬化剤と溶媒の混合物を含む第2の成分を用意するステップと、を含む。
【0045】
ある好適な具体的な実施形態において、上記製造方法は、六方晶窒化ホウ素とオリゴアニリンを溶媒中に分散させ、攪拌や超音波処理を行って六方晶窒化ホウ素の分散液を得た後、上記六方晶窒化ホウ素の分散液とエポキシ樹脂及塗料助剤を混合・攪拌させることによって、第1の成分を得ることを含んでも良い。
【0046】
さらに、上記実施形態において、上記攪拌、分散等の動作が汎用の高速攪拌・混合分散機器、例えば超音波洗浄機、超音波細胞粉砕機、高速攪拌機、機械攪拌機等によって実施されてもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態において、上記塗料における六方晶窒化ホウ素の含有量が0.5wt%〜2wt%であることが好ましい。
【0048】
さらに、上記実施形態において、上記塗料における六方晶窒化ホウ素とオリゴアニリンの質量比が1:10〜10:1であることが好ましい。
【0049】
さらに、上記実施形態のある好適実施例において、上記塗料は、
エポキシ樹脂80〜95質量部、六方晶窒化ホウ素0.5〜2質量部、オリゴアニリン0.25〜1質量部、塗料助剤5〜15質量部を含む第1の成分と、
硬化剤75〜100質量部、溶媒0〜25質量部を含む第2の成分と、を含み、
第1の成分と第2の成分の質量比が100:10〜100:80であっても良い。
【0050】
あるより具体的な好適実施例において、上記塗料は、
wt%でエポキシ樹脂80〜95、六方晶窒化ホウ素0.5〜2、オリゴアニリン0.25〜1、塗料助剤5〜15を含む第1の成分と、
wt%で硬化剤75〜100、溶媒0〜25を含む第2の成分と、を含む。
【0051】
1つの具体的な実施例において、上記製造方法は具体的に、
(1)2.956gベンゼンジアミン硫酸塩、1.853gアニリン、150mLHCl溶液(1mol/L)を、磁子が入っている丸底フラスコ中に入れてから、―5℃の氷塩浴に置いて冷却させる。また4.541g過硫酸アンモニウムを秤量して50mLHCl溶液(1mol/L)中に溶解させ、滴下漏斗によって約1滴/秒の速度で緩やかに上記反応溶液中へ滴下し、滴下完了後、1h攪拌する。反応が完了すると、生成物をブフナー漏斗に注いで吸引濾過し、予め0℃まで冷却された1mol/LHCl溶液で洗浄し、多量の純水で洗浄することによって、黒緑色固体生成物を得る。まず10wt%のアンモニア水で該生成物を洗浄し、そして多量の純水で洗浄し、最後に真空オーブン中に置いて70℃で乾燥することによって、アニリン三量体としてマゼンダの固体生成物を得る。
(2)質量比4:1の六方晶窒化ホウ素とオリゴアニリンを秤量し溶媒(EtOH、DMF、THF等)に分散させてオリゴアニリン/六方晶窒化ホウ素の分散液(図1a中の右図を参照。オリゴアニリンを配合しない場合、その効果について図1a中の左図を参照)を形成する。
(3)上記オリゴアニリン/六方晶窒化ホウ素の分散液にエポキシ樹脂及び助剤を配合し、10〜60min攪拌し均一に混合することによって第1の成分を調製する。
(4)溶媒で硬化剤を希釈することによって六方晶窒化ホウ素複合エポキシ塗料の第2の成分を得る。
【0052】
さらに、上記実施例において、第2の成分を第1の成分中に配合し均一に混合し、常温で約7日硬化することによって六方晶窒化ホウ素防食耐磨耗コート層を形成することができる。
【0053】
1つの実施形態において、上記製造方法は、
六方晶窒化ホウ素及びポリアニリンナノファイバーを均一に溶媒中に分散させ、六方晶窒化ホウ素の分散液を得た後、上記六方晶窒化ホウ素の分散液とエポキシ樹脂、助剤及び溶媒を均一に混合させることによって第1の成分を成形するステップと、
エポキシ樹脂硬化剤をそのまま又は溶媒でエポキシ樹脂硬化剤を希釈したものを第2の成分とするステップとを含んでも良い。
【0054】
ある好適な具体的な実施形態において、上記製造方法は、
一定量の六方晶窒化ホウ素とポリアニリンナノファイバーを秤量し溶媒中に分散させ、攪拌や超音波によって六方晶窒化ホウ素の分散液を得るステップと、
上記六方晶窒化ホウ素の分散液にエポキシ樹脂、助剤及び溶媒を配合し、10〜60min攪拌し均一に混合させることによって第1の成分を調製するステップと、
エポキシ樹脂硬化剤に一定量の溶媒を配合し希釈することによって第2の成分を得るステップと、を含んでも良い。
【0055】
さらに、上記実施形態のある好適実施例において、上記六方晶窒化ホウ素の分散液における六方晶窒化ホウ素とポリアニリンナノファイバーの質量比が1:10〜10:1であることが好ましい。
【0056】
同様に、上記実施形態において、上記攪拌、分散等の動作が汎用の高速攪拌・混合分散機器、例えば超音波洗浄機、超音波細胞粉砕機、高速攪拌機、機械攪拌機等によって実施される。
【0057】
1つの具体的な実施例において、上記製造方法は具体的に、
(1)アニリンモノマーを1Mの塩酸中に溶解し、相当モル量の過硫酸アンモニウムを上記溶液中に入れ室温で24時間静置し、濾過・洗浄した後ポリアニリンナノファイバーを得、そしてヒドラジン水和物を入れ脱ドープし、蒸留水で3回洗浄し乾燥することによって固有状態のポリアニリンナノファイバーを得るステップと、
(2)一定量の六方晶窒化ホウ素とステップ(1)で得られたポリアニリンナノファイバーを秤量し溶媒中に分散させ、ポリアニリンナノファイバー/六方晶窒化ホウ素の分散液を形成し、ポリアニリンナノファイバーと六方晶窒化ホウ素質量比が1:10〜10:1であるステップと、
(3)上記ポリアニリンナノファイバー/六方晶窒化ホウ素の分散液にエポキシ樹脂、助剤及び溶媒を配合し、10〜60分攪拌し均一に混合することによって第1の成分を得るステップと、
(4)溶媒でエポキシ樹脂硬化剤を希釈することによって第2の成分を得るステップと、を含んでも良い。
【0058】
さらに、上記実施例において、上記第2の成分と第1の成分を一定の比例で均一に混合して基材上に塗布することによってコート層を形成し、常温で7日間硬化させて六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を形成しても良い。
【0059】
さらに、本明細書では、上記オリゴアニリンはアニリン三量体、アニリン四量体、アニリン五量体及びアニリン六量体中のいずれか1種類または複数種類の組合せを含むが、これに限定されない。
【0060】
さらに、本明細書では、上記ポリアニリンナノファイバーの材質は、ポリアニリンまたは側鎖に置換基を有するポリアニリンから選ばれたものである。上記置換基はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を含むことが好ましい。上記側鎖に置換基を有するポリアニリンはポリO−メチルアニリン、ポリO−エチルアニリン、ポリO−プロピルアニリン、ポリブチルアニリンのいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0061】
さらに、本明細書では、上記ポリアニリンナノファイバーの直径が10〜300nmであり、特に10〜100nmであることが好ましい。
【0062】
さらに、本明細書では、上記ポリアニリンナノファイバーの長さが0.5〜5μmであり、特に0.5〜2μmであることが好ましい。
【0063】
さらに、本明細書では、上記ポリアニリンまたは側鎖に置換基を有するポリアニリンはいずれも固有状態のポリアニリンである。
【0064】
さらに、本明細書では、上記ポリアニリンナノファイバーが業界の汎用手段で製造されたものであれば良い。
【0065】
さらに、本明細書では、上記六方晶窒化ホウ素は六方晶窒化ホウ素ナノシート、六方晶窒化ホウ素ミクロンシート、六方晶窒化ホウ素ナノリボン、少層の六方晶窒化ホウ素(2〜5層)、多層の六方晶窒化ホウ素(5〜9層)、六方晶窒化ホウ素量子ドット中のいずれか1つまたはいずれか1つの誘導体(例えば化学修飾された六方晶窒化ホウ素)を含むが、ここに限定されない。
【0066】
さらに、本明細書では、上記六方晶窒化ホウ素の厚さが20nm以下であり、特に0.33nm〜10nmであることが好ましい。
【0067】
さらに、本明細書では、上記エポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、メチロールビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナイロン変性エポキシ樹脂、ノボラック型フェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂、O−クレゾールホルムアルデヒドエポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等中のいずれか1種類または複数種類の組合せを含むが、これに限定されない。
【0068】
さらに、本明細書では、上記硬化剤(エポキシ樹脂硬化剤としてもよい)はポリアミド系硬化剤、カルダノール系硬化剤、無水物系硬化剤またはイミダゾール系硬化剤等中のいずれか1種類または複数種類の組合せを含むが、これに限定されない。
【0069】
さらに、本明細書では、上記塗料助剤は沈殿防止剤、消泡剤和レベリング剤のいずれか1種類または複数種類の組合を含むが、これに限定されない。これらの塗料助剤はいずれも知られているものであり、業界の既知手段で取得でき、例えば市販品であってもよい。
【0070】
例えば、上記沈殿防止剤が気相シリカ、ポリアミド系ワックスと有機ベントナイト中から選ばれたいずれか1種類または複数種類の組合せを含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0071】
例えば、上記消泡剤がジメチルシリコーンオイル、エーテルエステル化合物、変性鉱油、ポリエトキシグリセリルエーテル、低分子金属有機物及び変性シリコーンポリマー中のいずれか1種類または複数種類の組合せを含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0072】
例えば、上記レベリング剤がエチルグリコールブチルエーテル、セルロースアセテートブチレート、ポリアクリレート系、シリコーンオイル、メチロールセルロース、ポリジメチルシラン、ポリメチルフェニルシロキサン及び変性シリコーン化合物中のいずれか1種類または複数種類の組合せを含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0073】
さらに、本明細書には、上記溶媒がトルエン、キシレン、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール、酢酸エチル及びジメチルスルホキシドのいずれか1種類または複数種類の組合せを含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0074】
本発明の実施例のもう1つの側面では上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の用途をさらに提供している。
【0075】
それに対して、本発明の実施例では上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料で形成されたコート層、特に防食耐磨耗コート層を提供している。
【0076】
1つの実施形態において、上記コート層におけるオリゴアニリンの好適な質量%が0.25〜1%であり、六方晶窒化ホウ素の好適な質量%が0.5〜2%である。
【0077】
これに対して、本発明の実施例では、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料における第1の成分と第2の成分を均一に混合させて成膜処理を行い、室温で硬化することによって上記コート層を形成することを含むコート層、特に防食耐磨耗コート層の製造方法を提供している。
【0078】
ある具体的な実施形態において、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料における第1の成分と第2の成分を均一に混合させて基材に塗布した後、室温で硬化することによって、上記防食耐磨耗コート層を形成してもよい。
【0079】
ある具体的な実施形態において、第2の成分と第1の成分を混合して成膜処理を行い、常温で7日以上硬化することによって、六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を得る。
【0080】
上記成膜処理が塗布、スピンコート、スプレイコート、印刷等によって行われるが、これに限定されない。
【0081】
上記基材の材質として様々あり、例えば金属基材である。特に、上記六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を金属等の基材の表面に応用する場合に、大幅にこのような基材の使用寿命を延長することができる。
【0082】
本発明の上記1つの実施形態によれば、オリゴアニリンと六方晶窒化ホウ素の物理的複合によって、極大に六方晶窒化ホウ素の分散安定性を向上させ、六方晶窒化ホウ素を均一かつ安定にエポキシ樹脂に分散させて、保存安定性が良く、沈みにくい等の利点を有する六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食耐磨耗塗料を形成することができるだけでなく、六方晶窒化ホウ素のエポキシ複合コート層での平行交差分布によるラビリンス効果が生ずることによって、大幅にコート層のバリア性を向上させ、コート層のクラックを低減し、腐食媒体の拡散通路を延伸し、さらに金属の腐食を抑制することができ、同時に六方晶窒化ホウ素とオリゴアニリンの複合によって、より効果的に金属を不動態化させ、さらに金属の腐食を抑制し、且つコート層の耐磨耗性を顕著に向上させ、このようにして形成するコート層のバリア性が良好で、防食耐磨耗性能の耐久性が高い。
【0083】
本発明の上記もう1つの実施形態によれば、六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料に少量の均一分散のポリアニリンナノファイバーと六方晶窒化ホウ素(特に六方晶窒化ホウ素2次元ナノシート)を配合することによって、顕著に形成したコート層のバリア性及び耐食性を向上させることができる。その理由は以下のとおりと考えられる。
その1、ポリアニリンナノファイバーによって金属の表面を不動態化させて、保護酸化層を形成しながら、ポリアニリンナノファイバーの導電性によって腐食電位が移動し、金属のエッチングレートを低減させることができる。
その2、六方晶窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素2次元ナノシートが好ましい)の均一分散によって複合コート層での平行交差分布により、ラビリンス効果が生ずることによって、大幅にコート層のバリア性を向上させ、コート層のクラック低減し、腐食媒体の拡散通路を延長して、さらに金属の腐食を抑制することができる。
その3、ポリアニリンナノファイバーと六方晶窒化ホウ素(六方晶窒化ホウ素2次元ナノシートがこのましい)の複合・連携によって、ポリアニリンナノファイバーと六方晶窒化ホウ素の上記優れた性能に悪影響が与えられず、大幅に六方晶窒化ホウ素の分散性を改善し、より均一にエポキシ樹脂中に分散させることができ、さらに形成したコート層がより緻密になり、顕著に保護効果を向上させることができる。
【0084】
要するに、本発明の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料は保存安定性が良く、沈みにくい等の利点を有し、同時に形成したコート層のバリア性能が良好で、防食耐磨耗性能の耐久性が高い等の特徴を有するので、建築、化学工業、石油、電力、冶金、船舶、紡績、貯蔵、交通、宇宙等の分野で広い応用展望が期待されている。
【0085】
以下、本発明の目的、技術手段や利点をより明らかにするために、幾つかの実施例及び図面を参照して本発明の実施例における技術手段を詳しく説明する。説明する実施例がただ本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではないことは言うまでもない。当業者は本発明の実施例に基づいて創造的な労働をせずに得られた他の実施例の全ては本発明の保護範囲に属する。
【0086】
(比較例1)
20gのエポキシ樹脂(品番E44、江蘇呉江合力樹脂工場から購入)、1gのレベリング剤(ポリジメチルシロキサン)、1gの沈殿防止剤(ポリアミド系ワックス)、2gの消泡剤(変性シリコーン複合体)及び6gのキシレンを秤量し、30分機械攪拌することによって、第1の成分(即ち第1の成分)を得る。5gのポリアミド650と4gのキシレン溶液を均一に混合させることによって第2の成分(即ち第2の成分)を得る。第1の成分と第2の成分を4:1の比例で混合し、高速攪拌機で30分攪拌することによって、単一のエポキシ塗料を得る。得られた単一のエポキシ塗料を炭素鋼基材上にスプレイコーティングし、溶媒が揮発した後、厚さが約20μmの単一のエポキシコート層を得る。
【0087】
(実施例1)
0.031gのアニリン二量体と0.13gの六方晶窒化ホウ素ナノシート(市販品、厚さ約0.33nm〜2nm)を秤量し、25mLのテトラヒドロフラン中に分散させ、1時間の超音波処理を行ってから、六方晶窒化ホウ素の分散液を得る。上記六方晶窒化ホウ素の分散液を20gのエポキシ樹脂、1gのレベリング剤(ポリジメチルシロキサン)、1gの沈殿防止剤(ポリアミド系ワックス)、2gの消泡剤(変性シリコーン複合体)及び6gのキシレン中に配合し、30分機械攪拌により各種の物質を均一に混合させることによって、第1の成分を得る。5gのポリアミド650及び4gのキシレン溶液を均一に混合させ第2の成分を得る。第1の成分と第2の成分を4:1の比例で混合させ、高速攪拌機で30分攪拌することによって、0.5wt%の六方晶窒化ホウ素を含有する六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料(即ち六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料)を得る。得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を炭素鋼基材上にスプレイコーティングし、溶媒が揮発した後、厚さ約20μmの六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層(即ち六方晶窒化ホウ素防食耐磨耗コート層)を得る。
【0088】
(実施例2)
0.063gのアニリン三量体および0.25gの六方晶窒化ホウ素ナノシート(市販品、厚さ約6nm〜10nm)を秤量し、50mLのテトラヒドロフラン中に分散させ、1時間の超音波処理行ってから、六方晶窒化ホウ素の分散液を得る。上記六方晶窒化ホウ素の分散液を20gのエポキシ樹脂、2gのレベリング剤(ポリジメチルシロキサン)、2gの沈殿防止剤(ポリアミド系ワックス)、2gの消泡剤(変性シリコーン複合体)及び6gのトルエン(品番E44、江蘇呉江合力樹脂工場から購入)中に配合し、30分機械攪拌により各種の物質を均一に混合させることによって、第1の成分を得る。5gのポリアミド650及び4gのトルエン溶液を均一に混合させ第2の成分を得る。第1の成分と第2の成分を4:1の比例で混合させ、高速攪拌機で30分攪拌することによって、1.0wt%の六方晶窒化ホウ素を含有する六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を得る。得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を炭素鋼基材上にスプレイコーティングし、溶媒が揮発した後、厚さ約20μmの六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を得る。
【0089】
(実施例3)
0.13gのアニリン四量体および0.5gの六方晶窒化ホウ素ナノシート(市販品、厚さ約3nm〜5nm)を秤量し、100mLのテトラヒドロフラン中に分散させ、1時間の超音波処理を行って、六方晶窒化ホウ素の分散液を得る。上記六方晶窒化ホウ素の分散液を20gのエポキシ樹脂、1gのレベリング剤(ポリジメチルシロキサン)、1gの沈殿防止剤(ポリアミド系ワックス)、2gの消泡剤(変性シリコーン複合体)及び6gのキシレン中に配合し、30分機械攪拌により各種の物質を均一に混合させることによって、第1の成分を得る。5gのポリアミド650及び4gのキシレン溶液を均一に混合させ第2の成分を得る。第1の成分と第2の成分を4:1の比例で混合させ、高速攪拌機で30分攪拌することによって、2.0wt%の六方晶窒化ホウ素を含有する六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を得る。得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を炭素鋼基材上にスプレイコーティングし、溶媒が揮発した後、厚さ約20μmの六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を得る。
【0090】
実施例1におけるオリゴアニリン処理されていない六方晶窒化ホウ素の分散液(左)とオリゴアニリン処理された六方晶窒化ホウ素の分散液(右)とを比較して、効果が図1aに示される。結果によれば、処理されていない六方晶窒化ホウ素の分散液の顕著な沈殿が認められるが、上記六方晶窒化ホウ素の分散液の顕著な沈殿が認められない。これはオリゴアニリンによって六方晶窒化ホウ素を均一に溶媒に分散させることができることを意味する。
【0091】
走査型電子顕微鏡によって比較例1で得られた単一のエポキシコート層及び実施例1、2、3で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の断面特性評価を行った結果、単一のエポキシコート層の断面に多くの細長いクラックがあり(図2a)、実施例1で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の断面のクラックが少なくなり(図2b)、窒化ホウ素の含有量の増加に従い、断面が粗化され、かつ大量の六方晶窒化ホウ素の凝集欠陥がある(図2cと図2d)。図2eは実施例1で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の透過型電子顕微鏡の写真であり、図から分かるようにコート層に六方晶窒化ホウ素ナノシートがランダムに分布され、これは六方晶窒化ホウ素の含有量が0.5wt%である場合に、オリゴアニリンの存在によって六方晶窒化ホウ素のエポキシ樹脂での凝集を低減でき、六方晶窒化ホウ素のエポキシ樹脂での分散を寄与するが、多すぎると六方晶窒化ホウ素の一部の凝集現象が現れることを意味する。
【0092】
比較例1で得られた単一のエポキシコート層及び実施例1、2、3で得られた含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を同様に電気化学の特徴評価を行う。具体的には、上記含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を濃度3.5wt%のNaCl溶液で60日浸漬し、浸漬過程中に上海辰華CHI660E電気化学ステーションによって交流インピーダンススペクトルを監視して、60日浸漬した後、ゼータ電位分極曲線を得る。
【0093】
そして、比較例1で得られた単一のエポキシ樹脂コート層に対する耐食性能テストを行う。図3aから分かるように、単一のエポキシ樹脂が60日の浸漬過程中、インピーダンスモジュールが5.09×10Ωcmから3.997×10Ωcmまで低下していく。図3bに示すように、実施例で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層が浸漬過程中にインピーダンスモジュールの変化がそれほど大きくなかったが、80日浸漬した後7.54×10Ωcmから2.81×10Ωcmまでに低下し、優れた耐食性能を有することを示すが、六方晶窒化ホウ素のドープ含有量の増加に従い、コート層のインピーダンスが60日の浸漬過程中に著しく低下し、特に実施例2で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層が60日浸漬した後に無くなった(図3c)。
【0094】
同時に、60日間浸漬した後の試料に対するゼータ電位分極テストを行った結果(図4)、実施例2で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層が高い腐食電流密度を有するが、全てのコート層において実施例1で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の腐食電流密度が最も低い。従って、実施例1で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の耐食性能が最も高いと言える。これは六方晶窒化ホウ素の含有量が0.5wt%である場合に、エポキシ樹脂での分散が比較的に均一になり、六方晶窒化ホウ素ナノシートを層ごとにエポキシ樹脂中に分布させ、さらにコート層のバリア性及び耐食性能を顕著に向上させることができる。
【0095】
エポキシ複合コート層の耐食性能を検討したが、その他に比較例1で得られた単一のエポキシコート層及び実施例1、2、3で得られた含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の熱性能に対する特徴評価を行い、コート層について類似の熱分解挙動が現れたが、窒化ホウ素をドープした後、減量10%と減量50%に対応する温度がともに向上し、コート層の熱安定性が向上したといえる。
【0096】
尚、本発明ではUMT―3ラビング機によって、負荷2N、周波数1Hzの条件、20分往復摺動摩擦の条件下で、比較例1で得られた単一のエポキシコート層及び実施例1、2、3で得られた含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の磨耗性能に対する特徴評価を行う。図6aから分かるように、実施例1―3で得られたコート層の摩擦係数があまり低下しなかったが、単一のエポキシコート層よりもコート層の耐磨耗性が顕著に向上した。その内0.5wt%の六方晶窒化ホウ素をドープした複合コート層の摩擦係数及び磨耗率が最も低く、同時にコート層の熱安定性が顕著に向上し、このように摩擦で発熱した場合でもコート層が良い機械性能を持ち、さらにコート層の耐磨耗性を一層向上させる。
【0097】
(比較例2)
0.13gの六方晶窒化ホウ素ナノシート、25mLのテトラヒドロフラン、20gのエポキシ樹脂、1gのレベリング剤、1gの沈殿防止剤、2gの消泡剤及び6gのキシレンを秤量し混合させ、30分機械攪拌により各種の物質を均一に混合させることによって、第1の成分を得る。5gのポリアミド650と4gのキシレン溶液を均一に混合させ第2の成分を得る。第1の成分と第2の成分を混合させ、高速攪拌機で30分攪拌することによって、0.5wt%の六方晶窒化ホウ素を含有するエポキシ複合塗料を得る。得られたエポキシ複合塗料を炭素鋼基材上にスプレイコーティングし、溶媒が揮発した後、厚さ約20μmのエポキシ複合コート層を得る。
【0098】
(比較例3)
0.031gのアニリン三量体、0.13gの六方晶窒化ホウ素ナノシート、25mLのテトラヒドロフラン、20gのエポキシ樹脂、1gのレベリング剤、1gの沈殿防止剤、2gの消泡剤及び6gのキシレンを秤量し混合させ、30分機械攪拌により各種の物質を均一に混合させることによって、第1の成分を得る。5gのポリアミド650と4gのキシレン溶液を均一に混合させ第2の成分を得る。第1の成分と第2の成分を混合させ、高速攪拌機で30分攪拌することによって、0.5wt%の六方晶窒化ホウ素を含有するエポキシ複合塗料を得る。得られたエポキシ複合塗料を炭素鋼基材上にスプレイコーティングし、溶媒が揮発した後、厚さ約20μmのエポキシ複合コート層を得る。
【0099】
同様に、本願発明者はまた走査型電子顕微鏡によって比較例2、3で得られたエポキシ複合コート層の断面に対する特徴評価を行った結果、比較例2で得られたエポキシ複合コート層の断面にクラックが多く、且つ六方晶窒化ホウ素ナノシートの凝集程度が高い。比較例2で得られたエポキシ複合コート層の断面のクラックが単一のエポキシコート層よりも低下し(実施例1―3のコート層よりも顕著に多い)、一部の六方晶窒化ホウ素ナノシートが凝集する。そして、耐食性能、耐磨耗性能、熱安定性能等のテスト結果から分かるように、比較例2、3で得られたエポキシ複合コート層の対応性能が単一のエポキシコート層よりも一定の程度で向上したが、実施例1―3で得られたコート層よりも大きく劣化した。
【0100】
(実施例4)
本実施例は実施例1とほぼ同じであるが、アニリン四量体、六方晶窒化ホウ素ミクロンシート(市販品、厚さ約15nm〜20nm)、キシレン(テトラヒドロフランのかわり)及び脂肪族グリシジルエーテルエポキシ樹脂を使用することが異なる。
【0101】
(実施例5)
本実施例は実施例2とほぼ同じであるが、アニリン五量体、少層の六方晶窒化ホウ素(2〜5層)(厚さ約5nm〜10nm)または多層の六方晶窒化ホウ素(5〜9層)(厚さ約15nm〜20nm)、酢酸エチル及ノボラック型フェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂を使用することが異なる。
【0102】
(実施例6)
本実施例は実施例3とほぼ同じであるが、アニリン六量体、六方晶窒化ホウ素量子ドット、エタノール及メチロールビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用することが異なる。
【0103】
また、本願発明者は上記実施例4―6で得られたエポキシ複合コート層の各種性能に対するテスト・まとめなどを行い、テストの結果からこれらのエポキシ複合コート層も優れた耐食性能、耐磨耗性能及び熱安定性能を有することを証明する。
【0104】
(実施例7)
(1)0.047gのポリブチルアニリンナノファイバー(形状が図7に示すように、上記方法を参照して製造)、0.18gの六方晶窒化ホウ素ナノシート(厚さ約3〜5nm)を40mLのテトラヒドロフラン中に分散させ、1時間の超音波処理を行って均一に混合させ六方晶窒化ホウ素の分散液を得て、そして上記六方晶窒化ホウ素の分散液を30gのエポキシ樹脂(品番E44、江蘇呉江合力樹脂工場から購入)、2gのレベリング剤、2gの沈殿防止剤、3gの消泡剤及び8gのキシレン試薬中に配合し、30分機械攪拌により各種の物質を均一に混合させることによって、第1の成分を得る。
(2)7.5gのポリアミド650、6gのキシレン溶液を均一に混合させ第2の成分を得る。
(3)第1の成分と第2の成分をそのまま混合させ、高速攪拌機で30分攪拌することによって、0.5wt%六方晶窒化ホウ素を含有するエポキシ複合塗料を得る。
(4)得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を炭素鋼基材上にスプレイコーティングし、溶媒が揮発した後、厚さ約20μmの六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を得る。
【0105】
(実施例8)
(1)0.095gのポリO−メチルアニリンナノファイバー(直径約10nm、長さ約0.8μm)、0.38gの六方晶窒化ホウ素ナノリボン(厚さ約8〜10nm)を80mLのテトラヒドロフラン中に分散させ、1時間の超音波処理を行って均一に混合させ六方晶窒化ホウ素の分散液を得て、そして上記六方晶窒化ホウ素の分散液を30gのエポキシ樹脂(ビスフェノールS型エポキシ樹脂、メチロールビスフェノールF型エポキシ樹脂または水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂等)、2gのレベリング剤(ポリジメチルシランまたはポリメチルフェニルシロキサン等)、2gの沈殿防止剤(ポリアミド系ワックスまたは有機膨潤剤等)、3gのポリエーテル系消泡剤及び8gのトルエン試薬(品番E44、江蘇呉江合力樹脂工場から購入)中に配合し、30分機械攪拌により各種の物質を均一に混合させることによって、第1の成分を得る。
(2)7.5gのポリアミド650と6gのトルエン溶液を均一に混合させ第2の成分を得る。
(3)第1の成分と第2の成分をそのまま混合させ、高速攪拌機で30分攪拌することによって、1.0wt%の六方晶窒化ホウ素を含有するエポキシ複合塗料を得る。
(4)得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を炭素鋼基材上にスプレイコーティングし、溶媒が揮発した後、厚さ約20μmの六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を得る。
【0106】
(実施例9)
(1)0.19gのポリエチルアニリンナノファイバー(直径約100nm、長さ約0.7μm)、0.75gの少層の六方晶窒化ホウ素粉末を150mLのテトラヒドロフラン中に分散させ、1時間の超音波処理を行って均一に混合させ、六方晶窒化ホウ素の分散液を得て、そして上記六方晶窒化ホウ素の分散液を30gのエポキシ樹脂(o−クレゾールホルムアルデヒドエポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂またはグリシジルアミン型エポキシ樹脂等)、2gのレベリング剤(ポリアクリレート系またはシリコーンオイル等)、2gの沈殿防止剤(気相シリカ等)、3gの変性シリコーンポリマー系消泡剤及び8gのキシレン試薬中に配合し、30分機械攪拌により各種の物質を均一に混合させることによって、第1の成分を得る。
(2)7.5gのポリアミド650と6gのキシレン溶液を均一に混合させ第2の成分を得る。
(3)第1の成分と第2の成分そのまま混合させ、高速攪拌機で30分攪拌することによって、2.0wt%の六方晶窒化ホウ素を含有するエポキシ複合塗料を得る。
(4)得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料を炭素鋼基材上にスプレイコーティングし、溶媒が揮発した後、厚さ約20μmの六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を得る。
【0107】
(比較例4)
(1)30gのエポキシ樹脂(実施例7と同じ)、2gのレベリング剤(実施例7と同じ)、2gの沈殿防止剤(実施例7と同じ)、3gの消泡剤(実施例7と同じ)を8gのキシレン試薬に溶解し、30分機械攪拌して、第1の成分を得る。
(2)7.5gのポリアミド650と6gのキシレン溶液を均一に混合させ第2の成分を得る。
(3)第1の成分と第2の成分をそのまま混合させ、高速攪拌機で30分攪拌することによって、単一のエポキシ塗料を得る。
(4)得られた単一のエポキシ塗料を炭素鋼基材上にスプレイコーティングし、溶媒が揮発した後、厚さ約20μmの単一のエポキシコート層を得る。
【0108】
(比較例5)
該比較例5は実施例7とほぼ同じであるが、第1の成分におけるポリブチルアニリンナノファイバーに代えて市販品ポリアニリンを使用することが異なる。
【0109】
図8aは本実施例7のポリブチルアニリンナノファイバー分散処理されていない六方晶窒化ホウ素の分散液の写真であり、図8bは本実施例7の代表的な六方晶窒化ホウ素の分散液の写真であり、その内六方晶窒化ホウ素がポリブチルアニリン分散処理された。ポリブチルアニリンナノファイバー分散処理されていない六方晶窒化ホウ素の分散液の顕著な沈殿が認められ、本実施例7のポリブチルアニリンナノファイバー分散処理された六方晶窒化ホウ素の分散液の顕著な沈殿が認められなかったが、これはポリブチルアニリンナノファイバーによって六方晶窒化ホウ素を均一に溶媒中分散させることができると言える。
【0110】
図9a―9dは、それぞれ比較例4で得られた単一のエポキシコート層及び実施例7―9で得られた代表的な六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層のTEM図である。結果から、単一のエポキシコート層の表面が平滑で、顕著な欠陥がなく、実施例7で得られた代表的な六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の表面に主には六方晶窒化ホウ素である多くの白い領域が均一に分布する。これはポリブチルアニリンナノファイバーの存在によって六方晶窒化ホウ素のエポキシ樹脂での凝集を低減でき、六方晶窒化ホウ素のエポキシ樹脂での分散を促進するが、六方晶窒化ホウ素のドープ含有量の増加に従い、表面に白い凝集領域(図9c及び9dに示す)が現れる。比較例5で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の断面形状と切片のTEM図から分かるように、コート層に六方晶窒化ホウ素の顕著な凝集が認められ、分布が不均一である。
【0111】
図10は、比較例4で得られた単一のエポキシコート層及び実施例7―9で得られた窒化ホウ素の含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を質量部3.5wt%のNaCl溶液中で120日浸漬した後の交流インピーダンススペクトルのボード線図であり、具体的には、本発明の含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を3.5wt%のNaCl溶液中に120日浸漬し、浸漬過程中に上海辰華CHI660E電気化学ステーションによって開放電位の変化及び電気化学交流インピーダンススペクトルを監視する。比較例4の上記単一のエポキシコート層に対して耐食性テストを行う。図10から分かるように、単一のエポキシコート層を50日浸漬した後、インピーダンスモジュールが3.5×10Ωcmから1.1×10Ωcmまで低下し、これは単一のエポキシコート層がなくなったと言える。本発明の窒化ホウ素の含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層、特に0.5〜1wt%六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層を120日浸漬しても高いインピーダンス値を有し、インピーダンスモジュールが約1.0×10Ωcmである。その他に、本発明の窒化ホウ素の含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の浸漬過程中のインピーダンスモジュールの増加傾向について、ポリアニリンナノファイバーの存在によって金属表面が不動態化され保護酸化層が形成されると考えられる。同様に比較例5で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層に対してテストを行った結果、単一のエポキシコート層と類似であり、短期間の浸漬した後インピーダンスモジュールも顕著に低下するが、低下幅が実施例7―9の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層よりも大きく高い。
【0112】
図11は比較例4の単一のエポキシコート層及び実施例7―9で得られた窒化ホウ素の含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の開放電位の浸漬時間に従う変化曲線図であり、結果から、浸漬時間の延長に従い、開放電位値が低下してゆき、且つ単一のエポキシコート層に対して、六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の開放電位がプラス側に移動することので、腐食が一層発生しにくい。同様に比較例5で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層に対してテストを行った結果、その耐腐食性能が単一のエポキシコート層よりも一定に向上したが、実施例7―9の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層よりも大きく劣化する。
【0113】
図12は比較例4の単一のエポキシコート層及び実施例7―9で得られた窒化ホウ素の含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の吸水率曲線図であり、コート層の吸水率曲線が開始期間と飽和吸水期間という2つの期間に分かれ、単一のエポキシコート層が飽和吸水後に最も高い吸水率を有し、約1%になるが、窒化ホウ素の含有量が異なる六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の吸水率が単一のエポキシコート層よりも顕著に低下し、これは均一に分散した六方晶窒化ホウ素によってエポキシコート層中にシートバリア効果が生じ、腐食媒体のコート層中の拡散を抑制したことを証明する。以上の結果から分かるように、六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層の優れた耐腐食性能について、主にポリアニリンナノファイバーと六方晶窒化ホウ素ナノシートの相乗効果から得られたものと考えられる。同様に比較例5で得られた六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層に対してテストを行った結果、その吸水率が単一のエポキシコート層よりも一定に向上したが、実施例7、8、9の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合コート層よりも大きく劣化する。
【0114】
(実施例10)
本実施例は実施例7とほぼ同じであるが、第1の成分中の六方晶窒化ホウ素ナノシートに代えて厚さ約20nmの六方晶窒化ホウ素ミクロンシートを使用すること、且つ第1の成分にポリO−プロピルアニリンナノファイバー(直径約300nm程度、長さ約5μm程度)を使用すること、第1の成分及び第2の成分中に溶媒としてアセトン及びジメチルスルホキシドを使用することが異なる。
【0115】
(実施例11)
本実施例は実施例8とほぼ同じであるが、第1の成分中の六方晶窒化ホウ素ナノリボンに代えて厚さ約12〜15nmの多層の六方晶窒化ホウ素を使用すること、且つ第1の成分にポリアニリンナノファイバー(直径約150nm程度、長さ2μm程度)を使用すること、第1の成分及び第2の成分中に溶媒としてエタノール及び酢酸エチルを使用することが異なる。
【0116】
(実施例12)
本実施例は実施例9とほぼ同じであるが、第1の成分中の少層の六方晶窒化ホウ素に代えて六方晶窒化ホウ素量子ドットを使用することが異なる。
【0117】
(実施例13)
本実施例は実施例7とほぼ同じであるが、第1の成分中の六方晶窒化ホウ素ナノシートに代えて厚さ約5〜8nmの水酸基化窒化ホウ素ナノシートを使用することが異なる。
【0118】
(実施例14)
本実施例は実施例9とほぼ同じであるが、第1の成分中の少層の六方晶窒化ホウ素に代えて厚さ約10〜15nmのフッ化窒化ホウ素を使用することが異なる。
【0119】
上記実施例10〜実施例14で得られた各六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料及び複合コート層について、本発明者が実施例7〜実施例9と同様にテストを行った結果、これらの複合防食塗料も優れた保存安定性を有し、形成した複合コート層も優れた防食性能及びバリア性を有する。
【0120】
なお、本明細書には、用語「含む」、「含有」または他の用語を使用したが、特に断らない限りに、一連の要素を含む過程、方法、物品または機器は既述の要素を含むだけでなく、明確に説明する他の要素、またはそのような過程、方法、物品または機器の固有要素も含む。
【0121】
また、以上本発明の具体的な実施形態を説明したが、当業者は、本発明の原理を逸脱しない限り、様々な改良や変更を加え、これらの改良や変更の本発明の保護範囲に含まれることは言うまでもない。
【0122】
(付記)
(付記1)
六方晶窒化ホウ素、エポキシ樹脂、オリゴアニリンまたはポリアニリンナノファイバー、塗料助剤及び溶媒を含む第1の成分と、
硬化剤を含む第2の成分と、を含む、
ことを特徴とする六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0123】
(付記2)
前記第1の成分にはオリゴアニリンを含み、その内少なくとも一部のオリゴアニリンと六方晶窒化ホウ素との物理的作用による結合によって、六方晶窒化ホウ素を前記塗料中に均一に分散させる、
ことを特徴とする付記1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0124】
(付記3)
オリゴアニリンの含有量が0.25wt%〜1wt%であり、及び/又は、六方晶窒化ホウ素の含有量が0.5wt%〜2wt%である、
ことを特徴とする付記2に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0125】
(付記4)
六方晶窒化ホウ素とオリゴアニリンの質量比が1:10〜10:1である、
ことを特徴とする付記2に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0126】
(付記5)
80〜95質量部のエポキシ樹脂、0.5〜2質量部の六方晶窒化ホウ素、0.25〜1質量部のオリゴアニリン、5〜15質量部の塗料助剤を含む第1の成分と、
75〜100質量部の硬化剤、0〜25質量部の溶媒を含む第2の成分と、を含み、
第1の成分と第2の成分の質量比が100:10〜100:80である、
ことを特徴とする付記1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0127】
(付記6)
前記オリゴアニリンはアニリン三量体、アニリン四量体、アニリン五量体及びアニリン六量体中のいずれか1種類または複数種類の組合せを含む、
ことを特徴とする付記1〜5のいずれか1つに記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0128】
(付記7)
50〜79wt%のエポキシ樹脂、0.5〜2wt%の六方晶窒化ホウ素、0.25〜1wt%のポリアニリンナノファイバー、0.5〜5wt%の塗料助剤、20〜30wt%の溶媒を含む第1の成分と、
75〜100wt%エポキシ樹脂硬化剤、0〜25wt%溶媒を含む第2の成分と、を含み、
第1の成分と第2の成分の質量比が100:10〜100:80である、
ことを特徴とする付記1に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0129】
(付記8)
前記ポリアニリンナノファイバーの直径が10〜300nmであり、好ましくは10〜100nmであり、長さが0.5〜5μmであり、好ましくは0.5〜2μmである、
ことを特徴とする付記1または7に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0130】
(付記9)
前記ポリアニリンナノファイバーの材質はポリアニリンまたは置換基含有のポリアニリンから選ばれ、前記置換基はアルキル基またはアミノ基を含み、前記アルキル基はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を含む、
ことを特徴とする付記1または7に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0131】
(付記10)
前記置換基含有のポリアニリンはポリO−メチルアニリン、ポリO−エチルアニリン、ポリO−プロピルアニリン、ポリブチルアニリン及びポリO−ベンゼンジアミン中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする付記9に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0132】
(付記11)
六方晶窒化ホウ素は六方晶窒化ホウ素ナノシート、六方晶窒化ホウ素ミクロンシート、六方晶窒化ホウ素ナノリボン、層数が2〜5層の少層の六方晶窒化ホウ素、層数が5〜9層の多層の六方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素量子ドット中のいずれか1つまたはいずれか1つの誘導体を含む、
ことを特徴とする付記1、3、4、5または7に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0133】
(付記12)
前記誘導体は化学修飾された六方晶窒化ホウ素を含む、
ことを特徴とする付記11に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0134】
(付記13)
六方晶窒化ホウ素の厚さが20nm以下であり、好ましくは10nm以下である、
ことを特徴とする付記1、3、4、5または7に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0135】
(付記14)
前記エポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、メチロールビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナイロン変性エポキシ樹脂、ノボラック型フェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂、O−クレゾールホルムアルデヒドエポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエーテルエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする付記1、5または7に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0136】
(付記15)
前記硬化剤はポリアミド系硬化剤、カルダノール系硬化剤、無水物系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする付記1、5または7に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0137】
(付記16)
前記塗料助剤は沈殿防止剤、消泡剤及びレベリング剤のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする付記1、5または7に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0138】
(付記17)
前記沈殿防止剤は気相シリカ、ポリアミド系ワックス及び有機ベントナイト中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする付記16に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0139】
(付記18)
前記消泡剤はジメチルシリコーンオイル、エーテルエステル化合物、変性鉱油、ポリエトキシグリセリルエーテル、低分子金属有機物及び変性シリコーンポリマー中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする付記16に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0140】
(付記19)
前記レベリング剤はエチルグリコールブチルエーテル、セルロースアセテートブチレート、ポリアクリレート系、シリコーンオイル、メチロールセルロース、ポリジメチルシラン、ポリメチルフェニルシロキサン及び変性シリコーン化合物中のいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする付記16に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0141】
(付記20)
前記溶媒はトルエン、キシレン、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール、酢酸エチル及びジメチルスルホキシドのいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含む、
ことを特徴とする付記1、5または7に記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料。
【0142】
(付記21)
付記1〜20のいずれか1つに記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の製造方法であって、
六方晶窒化ホウ素、及びオリゴアニリンまたはポリアニリンナノファイバーを溶媒中に混合させ、六方晶窒化ホウ素の分散液を得た後、六方晶窒化ホウ素の分散液とエポキシ樹脂及び塗料助剤を均一に混合させることによって第1の成分を用意するステップと、
硬化剤または硬化剤と溶媒の混合物を含む第2の成分を用意するステップと、を含む、
ことを特徴とする六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の製造方法。
【0143】
(付記22)
六方晶窒化ホウ素とオリゴアニリンを溶媒中に分散させ、攪拌または超音波処理を行い、六方晶窒化ホウ素の分散液を得た後、六方晶窒化ホウ素の分散液とエポキシ樹脂及び塗料助剤を混合・攪拌することによって第1の成分を得るステップを含む、
ことを特徴とする付記21に記載の製造方法。
【0144】
(付記23)
六方晶窒化ホウ素、及びポリアニリンナノファイバーを均一に溶媒中に分散させ、六方晶窒化ホウ素の分散液を得た後、六方晶窒化ホウ素の分散液とエポキシ樹脂、助剤及び溶媒を均一に混合させることによって第1の成分を形成するステップと、
エポキシ樹脂硬化剤をそのまま第2の成分とし、またはエポキシ樹脂硬化剤を溶媒で希釈することによって第2の成分を形成するステップと、を含む、
ことを特徴とする付記21に記載の製造方法。
【0145】
(付記24)
六方晶窒化ホウ素の分散液中で、六方晶窒化ホウ素とポリアニリンナノファイバーの質量比が1:10〜10:1である、
ことを特徴とする付記23に記載の製造方法。
【0146】
(付記25)
付記1〜20のいずれか1つに記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料からなるコート層。
【0147】
(付記26)
付記1〜20のいずれか1つに記載の六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の第1の成分と第2の成分を均一に混合させた後成膜処理を行い、そして室温で硬化することによってコート層を形成するステップを含むコート層の製造方法。
【0148】
(付記27)
六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料の第1の成分と第2の成分を均一に混合させた後基材上に塗布し、そして室温で硬化することによってコート層を形成することを特徴とする付記26に記載の製造方法。
【0149】
(付記28)
前記基材は金属基材を含むことを特徴とする付記27に記載の製造方法。
【要約】
本発明では六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料及びその製造方法並びに応用を開示する。上記防食塗料は主に六方晶窒化ホウ素、オリゴアニリンまたはポリアニリンナノファイバー、エポキシ樹脂、分散媒、塗料助剤、エポキシ樹脂硬化剤及び溶媒等で形成される。本発明が提供する六方晶窒化ホウ素エポキシ複合防食塗料は保存安定性が良く、沈みにくい等の利点を有し、且つ製造プロセスが簡単であり、安価であるので、量産に適合するだけでなく、形成したコート層のバリア性がよく、耐食性の耐久性が高く、化学工業、石油、電力、船舶、紡績、貯蔵、交通、宇宙等の分野で広い応用展望が期待されている。
【選択図】図1
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図9d
図10
図11
図12