特許第6615464号(P6615464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6615464紙製試験管立て、及び紙製試験管立て封入袋密封装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6615464
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】紙製試験管立て、及び紙製試験管立て封入袋密封装置
(51)【国際特許分類】
   B01L 9/06 20060101AFI20191125BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   B01L9/06
   G01N35/04 H
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-32477(P2015-32477)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-155044(P2016-155044A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(72)【発明者】
【氏名】寺村 義和
(72)【発明者】
【氏名】登 勉
(72)【発明者】
【氏名】中谷 中
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−115340(JP,U)
【文献】 実開昭55−088836(JP,U)
【文献】 特表平08−506306(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/071420(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00−99/00
B65B 67/00−67/12
G01N 35/00−37/00
G01N 1/00− 1/44
G01N 33/48−33/98
C12M 1/00− 3/10
B32B 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験管内に保管する人の血清または血漿である液体との接触により、表面に指示薬がコーティングされ接触部が変色する部位を有することを特徴とする紙製試験管立て。
【請求項2】
前記紙製試験管立ての表面にコーティングされた指示薬が蛋白誤差を示す指示薬であることを特徴とする請求項1に記載の紙製試験管立て。
【請求項3】
前記紙製試験管立てがボール紙の切断と折り曲げで作成される2段〜4段構造の箱体であって、前記紙製試験管立てが4段構成のとき、第1段と、第2段と第3段に碁盤目状に複数の貫通穴が形成され、前記第1段と、前記第2段に形成される貫通穴径が試験管外径より大きく、試験管の挿入と取出しが自在であり、前記第3段の貫通穴は前記試験管外径より小さく、挿入された試験管の底部曲面に当接して、前記試験管の位置決めを行い、第4段が底面を形成していることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の紙製試験管立て。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
検査済みの臨床検査体の保存と、保存期間経過後の検査体の運搬と廃棄に関する。
【背景技術】
【0002】
医療領域において臨床検査後の血液・血清・血漿などの残存試料は、追加検査・確認検査・臨床研究等に利用される貴重な検体である、しかし、これらの検体は感染性を秘めた危険な試料でもある。
検査後の検体は、濃縮等による成分の変性防止等のためにキャップ或はフィルム等で密栓し、試験管立てに立て冷蔵保存されている。臨床検査に用いられる試験管立ては、耐薬品性・耐水性・耐熱性が求められるため、ステンレスやプラスチック成形で作成され堅牢で長期間使用に耐える。しかし、それらの試験管立ては高価であり、堅牢であるため洗浄処理して繰り返し使用される。
【0003】
一方、近年は検査の自動化が進み試験管立ては検査器具から検体の搬送器具・保存用器具へと、要求される機能が変化している。このため、再利用方式の試験管立ては、洗浄作業と保管管理及び保管管理場所の確保が大きな問題になっている。
また、検体の密栓作業は通常人手で行われるが、自動閉栓機が導入される例もある。しかし、自動閉栓機の導入には極めて高額な設備投資費用が必要であり、導入できる施設は限定的である。
【0004】
多くの医療施設で日常的に行われている人手によるキャップ閉栓法は、人が検体と接触する機会が多く感染の危険度が高い。また、他の検体密閉法としてアジア器材株式会社製のキャップレス試験管立て密閉法が周知であるが、この方式は気密性に乏しく検体の長期保存に適さない。保存期間を経過した検体は、ディスポ製品のグローブ・マスク・ゴーグル・ガウン等を着用した作業者により人手で一本ずつ試験管立てから取り出され、医療用廃棄物として処理されている。しかし、試験管内部の検体が飛散し付着した試験管立てに作業者が誤って触れるなど、作業者と検体との接触は避け難く、医療従事者の安全性が脅かされている。院内感染対策上からも安全な検体廃棄法の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
文献1:実用新案登録第3102034「折りたたみ式試験管立て」
文献2:特開1996−057329「簡易検査台組み立てシート」
文献3:特開2006−167569「 試験管用トレイ及び試験管立て」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検査に用いる血清及び血漿は淡黄色で透明な液体であるため、従来技術の試験管立てでは、試験管立てに血清や血漿等が飛散、付着しても目視確認は困難である。
また、従来技術による検体の密封と保存の方法は、少数検体でも容易に対応できる人手による方法が多く、専用の器具を用いない簡便法が多くの医療施設で日常的に実施されている。しかし、この方法は作業者が直接検体に接触する機会が多く、職業感染のリスクが高い。
【0007】
作業者と検体との接触機会を小さくする方法として、キャップレス試験管立て(アジア器材株式会社製)が知られており、比較的に安全な検体の保存法と言えるが、保存時における検体の気密性と試験管立ての重さに問題がある。
検体との接触機会が小さく保存時の気密性に優れた検体密閉方式としてヒート・シール装置が販売されている。しかし装置が高価、専用設置スペースが必要、一度シールを剥がすと密着性が弱まり再保存時に気密性が低下するなどの課題がある。
また、一部の検体自動搬送システムでは、キャップの閉栓を自動で行う自動閉栓装置もあるが高額、設置スペースが必要、消耗品であるキャップのコストが高いなどの問題があり通常の医療施設での導入は困難である。
【0008】
なお、検体自動搬送システムは検体の前処理、分析、検体搬出の全工程で人手を介すことなく全自動で実施できる検査システムであるが、検査終了後の検体搬出ユニットからの検体取り出し作業は、人手で試験管立てに移し替えられ、次いで、人手で一定の処理がなされた後に冷蔵設備に保管される。従って、検体自動搬送システムであっても検体取出し作業に従事する作業者は常に検体と接触する機会がある。
一方、冷蔵設備での保存期間を過ぎた検体は、試験管立てから一本ずつ取出され医療用廃棄物として破棄され、試験管立ては洗浄されて繰り返し使用される。しかし、通常の試験管立ては形状的に洗浄困難で、しかも繰り返し使用で傷や亀裂などが形成されやすく完全な洗浄を困難にする。
【0009】
本発明は試験管立てをコスト的に使い捨て可能にできる紙製試験管立てとし、作業者が試験管解放口に直接触れることなく密封シールでき、しかも、試験管内部の検体の飛散が試験管立てに付着した場合、付着したことを容易に目視確認できる紙製試験管立ての提案を行う。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、試験管内に保管する液体(血清及び血漿)が紙製試験管立てに飛散して付着した場合、付着箇所が変色する紙製試験管立ての発明である。
これにより、試験管や試験管立てを取り扱う作業者は変色部に直接触れることを避けて作業ができる。また付着が広範囲に及ぶ時などは焼却等の廃棄処分も容易であり、検体との接触を回避することができる。
なお、紙製試験管立ては多用される折り紙式紙箱の製作方法を用い、1〜2枚に展開させた用紙を折り曲げる方法で容易に作成できる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、表面に蛋白誤差を示す指示薬がコーティングされた紙製試験管立てであり、試験管内に保管される液体は人の血清または血漿等である。
これにより、紙製試験管立ては蛋白誤差を示す指示薬がコーティングされた周知の尿試験紙と同様の機能が付与され、飛散した人の血清または血漿が紙製試験管立てに付着すると直ちに変色反応が起こり、飛散し付着部分のみ変色する。作業者はこの変色を目視で容易に確認できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は紙製試験管立てがボール紙を切断又は折り曲げて作成される2〜4段構造の箱体とする発明である。4段構造とした場合、最上部を第1段とし、最下部となる底面が第4段となり、第2段と第3段はこれらの中間に設けられる。第1段と第2段には試験管を容易に挿入できる複数の貫通穴が碁盤の目状に設けられる。第3段には試験管を貫通させない穴が碁盤の目状に設けられ、試験管の底面に当接して試験管の挿入位置を安定させる。また、第3段は挿入された試験管解放口が外力で下方に押さえられたとき 、弾力変形して試験管に作用する押圧を支え吸収する。第4層には穴を設ける必要はなく箱体の底面を形成する。
【0013】
3層構造の密封シートの第1層目は保護シートである。第2層目は試験管解放口を個別に塞ぐ円形にカットされた密封フィルムで、試験管解放口との当接面にシリコン粘着剤が塗布されている。紙製試験管立てに挿入・載置された試験管解放口を覆うように円形パターンを位置合わせして載置することで、試験管解放口を覆いシールできる。第3層目は離形シートで、第2層のシリコン粘着剤の表面を保護する。離形シートにはカッティングが施され、使用直前にカッティングにより分けられた帯状の一方を除去し、次いで残る部分を順次除去して円形パターンを露出させる。
これにより、シリコン粘着剤の塗布面を露出させた碁盤目状の円形パターンの密封フィルムが準備される。即ち本発明の3層構造の密封シートは、使用直前には第3層目が除去され、第2層の円形パターンの密封フィルムと第1層目の保護シートに調整される。
【0014】
次いで装置のプレス蓋部に保持された3層構造密封シートの第3層目の離形シートを剥がし第2層の密封フィルムを露出させる。次いで碁盤目状の円形パターンが試験管の解放口を個別に密封する様に位置合わせされ、次いで、密封装置本体のプレス蓋を閉じる。この時、プレス蓋は第1層保護シート・第2層の密封フィルムを介して試験管口を押圧する。前記紙製試験管立ての第3段は試験管に作用する押圧を受けて弾力変形する。この押圧により試験管解放口は第2層の密封フィルムにより密封される。また、プレス蓋を閉じる動作で、第1層の保護シートと封入袋のフランジ部がプレス蓋に押圧されて粘着密封される。
【0015】
封入袋の密封法は、保存検体の再利用を考慮し、通常時は剥離性及び再粘着性に優れた粘着フィルム法が好適であるが、時として強く感染性を疑う検体の廃棄時、或いは検体容器の倒壊緩和措置を考慮する必要のある時は、ヒートシール法を採用してもよい。
【発明の効果】
【0016】
蛋白誤差を示す指示薬を塗布した紙製試験管立ては、検体中のアルブミンが接触すると瞬時に変色する、これにより感染性を秘めた検体の付着状況(汚染状況)をリアルタイムで目視確認できる。
また、汚染範囲を視認する事により紙製試験管立ての廃棄或いは汚染部分の殺菌処置等、迅速な安全策が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】紙製試験管立ての概観図
図2】紙製試験管立ての組立前の展開状況
図3】試験管が挿入・載置された状態の紙製試験管立ての断面図
図4】3層構造の密封シートの断面図
図5】3層構造の密封シートの平面図
図6】円形の密封フィルムによる試験管解放口の密封シール作業説明図
図7】飛散血清による変色状況
図8】変色試験結果
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
<紙製試験管立ての構成について>
図1に本発明の紙製試験管立ての外観を、図2に紙製試験管立ての組み立て前の展開状況を、図3に本発明の紙製試験管立ての断面構成を示す。紙製試験管立て10は、4段構成の箱で第3段13を除きボール紙で作成される。これら第1段11と、第2段12と、箱の底面となる第4段14に用いられるボール紙の厚みは、安定した強度の維持と組み立て易さから、450g/m±15g/mが好適である。第3段13には段ボール紙が用いられる。試験管立ての第1段11と、第2段12に形成される貫通穴の径は、試験管の挿入・載置時の横揺れ防止の為に、第1段11の貫通穴より第2段12の貫通穴が3%〜5%狭く形成される。
【0019】
また試験管立ての第3段13に設置される貫通段ボール紙は、試験管の挿入・載置時の衝撃に対し緩衝作用があり、管底部曲面に当接して挿入位置を安定させる。試験管挿入時の衝撃緩和と管底部当接面の状態を安定させる為、段ボール紙の厚みは2mm±1mmとし、貫通穴の径を試験管外径より十分小さい5〜10mmとするが、この数値に限定する必要はなく試験管外径より小さければ大きな問題は生じない。また単純な円形とするのでなく、十字形のカッティングを重ねることもできる。
【0020】
試験管立ての第4段14には貫通穴は無く箱体の底面を形成する。
本発明は紙製試験管立て10を4段構成としたが、機能的には本発明の1段目11と、3段目13に相当する2段構成の紙製試験管立てであっても本発明と遜色のない機能を果たす。同様に3段構成の紙製試験管立てであって問題ない。3段構成の紙製試験管立てとした場合、本願発明の2段目12または、4段目14の何れを省略しても問題はない。
【0021】
試験管立ての組み立て時における手指殺傷の防止効果を高める為に、試験管立ての裁断面が鋭利になるのを避け、裁断面には敢えて断面にザギザな切り込みを施す。
試験管立ては、紙の特性を生かしインク等のコーティング、ロゴ・文字印刷、などを施してもよい。また、自動搬送機対応や冷蔵保管における管理の自動管理対応のためバーコードや2次元バーコードを印刷又は、貼付けてもよい。更にはICタグを取付けて、検体情報をICタグに記録させて管理してもよい。
【0022】
該試験管立ては(検体ラックとも表現する)、自動搬送機の検体搬出装置にセットして使用した場合に、ハンドリング・アームでの取出し或いは移載を考慮し、試験管立て側面にフックを設けたり、或いはアーム用の挿入穴を設けてもよい。
図2を用い4段構成の紙製試験管立ての組み立て方法の一例を説明する。
図2の場合、紙製試験管立て10は表面に碁盤の目状に挿入口15の形成された箱本体16と、中段試験管受19の2つの部材からなり次の手順で組み立てられる。
(1)中段試験管受19を箱本体16の底面に挿入する。
(2)側面折込部17を折り目に従って箱本体16の内側に折り込む。
(3)上面折込部18を折り目に従って箱本体16の内側に折り込む。
【実施例2】
【0023】
<検体による変色>
本発明の紙製試験管立て10にコーティングする蛋白検出用液は、クエン酸、クエン酸ナトリウムから成る緩衝液と、蛋白誤差を示す指示薬であるテトラブロモフェノールブルーと、指示薬の溶剤であるアセトンを使用し作成した。
蛋白検出液は、アルブミンと酸性側に調整された蛋白誤差を示す指示薬との接触により複合物を形成し、酸性色である淡黄色から塩基性色である青緑色に変色する。この変色度合いはアルブミン濃度に比例することから、蛋白検出液を用いて検出感度と変色速度、温度の影響、変色の安定性を測定した。
【0024】
蛋白検出用液、検出用器材及び滴下サンプルを次の手順で作成した。
(1)蛋白検出用液の第1液はアセトンでテトラブロモフェノールブルーを溶解、
第2液はクエン酸とクエン酸ナトリウムで緩衝液を作成し、第1液と第2液
を1:1に混和し蛋白検出用液とした。
(2)試験用紙製試験管立て(一個)及び試験用蛋白検出紙(4枚)に蛋白検出用
液をコーティングし、試験用器材を作成した。
(3)作成後の試験用蛋白検出紙を25℃の室内と4℃の冷蔵庫内に1週間(表1、
表2)、及び25℃の室内と4℃の冷蔵庫内に12週間(表3、表4)それぞれ保管した。
(4)試験用サンプルは人血清を生理食塩水にて希釈し、4.00g/dL、
2.00g/dL、1.00g/dL、0.80g/dL、
0.70g/dL、0.50g/dL、0.02g/dL、
0.00g/dLのアルブミン濃度に調整した。
(5)調整した各濃度の試験用サンプルを、蛋白検出試験用検出紙にピペットを用い各1滴滴下した。
(6)変色度合いの判定は、栄研化学株式会社製の色調表を参考とした。
【0025】
次の4種類の条件で保管された試験用蛋白検出紙を用い変色試験を行った。
(1)25℃で1週間保管した、試験用蛋白検出紙の蛋白検出感度試験結果を
表1に示す。
(2)4℃で1週間保管した、試験用蛋白検出紙の蛋白検出感度試験結果を
表2に示す。
(3)25℃で12週間保管した、試験用蛋白検出紙の蛋白検出感度試験結果を
表3に示す。
(4)4℃で12週間保管した、試験用蛋白検出紙の蛋白検出感度試験結果を
表4に示す
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
上記の表1、2、3、4の結果から、保管日数一週間、12週間共に、蛋白検出液を塗布した紙製試験管立て10に血清が接触してから変色までに要する時間は、室温保管、冷蔵庫保管と共に一秒以内と瞬時であった、また退色時間(変色状態)は
240時間以上と安定していた。
実検体の血清を滴下した、試験用紙製試験管立ての変色部位を(図7)に示す。
各濃度に希釈調整したサンプルを滴下した蛋白検出試験用検出紙(図8)は、
指示薬の淡黄色を表す為に、検出紙を切り取り白い台紙に各々貼付けた。
【0031】
第1段左から、保存条件25℃、1週間保存:4.00g/dL、2.00g/dL
1.00g/dL、0.80g/dL、0.070g/dL、0.50g/dL、0.02g/dL、0.00g/dL
第2段左から、保存条件4℃、 1週間保存:4.00g/dL、2.00g/dL
1. 00g/dL、0.80g/dL、0.070g/dL、0.50g/dL、0.02g/dL、0.00g/dL
【0032】
第3段左から、保存条件25℃、12週間保存:4.00g/dL、2.00g/dL、1.00g/dL、0.80g/dL、0.070g/dL、0.50g/dL、0.02g/dL、0.00g/dL
第4段左から保存条件4℃、 12週間保存:4.00g/dL、2.00g/dL
1. 00g/dL、0.80g/dL、0.070g/dL、0.50g/dL、0.02g/dL、0.00g/dL、各々の変色度合いを示す。
【0033】
人血清及び人血漿中のアルブミン濃度は、該蛋白検出液の検出感度0.02g/dL濃度を200倍以上上回る高濃度であることから、該蛋白検出液を塗布した紙製試験管立て10と人血清及び人血漿との接触による変色は、より高感度であり目視確認も容易である。
なお、本発明に使用する蛋白検出用液は、汎用される一般紙に容易にコーティングできるので、紙製試験管立て以外の用途に広く使用できる。例えば、検体を扱うテーブルや分析装置のサンプルプローブ周辺或いは、搬送機の検体分注装置、開栓装置等の検体飛散の発生し易い場所での検体汚染検出用インジケータとして使用出来る。
【実施例3】
【0034】
<密封シートによる試験管の密封>
密封シート30は図4に示すように3層で構成され、第1層が保護シート31、第2層が密封フィルム32、第3層が離形シート33である。
保護シート31の密封フィルム32面には剥離容易な粘着層34が塗布され、保護シート31と密封フィルム32は軽く接着される。密封フィルム32の離形シート33側面にはシリコン接着層35が塗工され、離形シート33が剥がされた状態でシリコン接着層35を試験管解放口21に粘着させることができる。また、保護シート31の粘着層34は離形シート33が剥がされた状態で図6に示す密封装置40にセットされると、封入袋43のフランジ部44と粘着し、載置された試験管立て10を密封保護する。
【0035】
密封フィルム32は、真空採血管の解放口部にシリコンオイルが残存しても粘着力を維持できるシリコン粘着剤をコーティングした、円形状10個〜200個にカッティングされた透明或いは乳白色又は有色の密封フィルムであり、外径10mm〜18mmまでの試験管を一括して密封する。
離形シート33は、2段階の剥離手段をもって密封フィルム32を露出させる、第1段階で帯離形シート33aを剥離し、第2段階でベース離形シート33bを剥離させる。露出した密封フィルム32は、密封装置40を用い試験管解放口10に押圧、密着させられる。密封シート30は、密封装置40の押圧により密封フィルム32による試験管解放口21の密封と同時に、封入袋43のフランジ部44に粘着する。
【実施例4】
【0036】
<密封装置による密封作業>
密封装置40は、密封シート30をプレス蓋42に1枚〜5枚重ねて収納でき、また封入袋43も本体41に1個〜5個重ねてセットできるので、密封作業は5回連続して実施できる。
密封装置40の高さ(深さ)調整は自在であるので、試験管の高さに合わせて密封高さを調整する。また、装置用電源は一般商用電源だけでなくバッテリー駆動も可能で、持ち運び自在で使用場所の制約を受けない。
【実施例5】
【0037】
<検体密封操作から検体の廃棄までの手順>
(1)紙製試験管立て10に試験管を挿入・載置する。
(2)密封装置40の本体41に封入袋43をセット、プレス部42に密封シート
30をセットする。このとき試験管解放口21と密封シート30が位置合わせされる。
(3)上記試験管を挿入・載置した試験管立て10を密封装置40に載置する。
(4)密封シート30の離形シート33を剥がし密封フィルム32の粘着層35を露出させる。
(5)密封装置40のプレス蓋42を押し下げ押圧を加える。
【0038】
(6)2〜3秒後、試験管解放口21は密封フィルム32でシールされ、同時に封
入袋43のフランジ部44と保護シート31が押圧により密着される、検体
は、密封フィルム32と、保護シート31で2重に密封される。
(7)検体は、2重に密封保護された状態で、所定期間冷蔵保管される。
(8)保管検体の再利用時は、封入袋43のフランジ部と密着する保護シート31は人手により容易に剥がすことができる、保護シートの一部或いは全てを剥がし、密封フィルム32で個々に密封された検体を取り出す。
(9)再利用後の検体は、再度同一の密封フィルム32で密封し、紙製試験管立て10に挿入・載置し、封入袋43に収納し保護シート31と封入袋43のフランジ部44を人手により再密着させ冷蔵庫に保管される。
(10)保存期間を経過した検体は、紙製試験管立て10から取り出すこと無く、密封状態で紙製試験管立て10ごと廃棄処理される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
紙製試験管立ては、折り曲げて組み立てることにより試験管立てとして機能する。
従来の試験管立てに比べ運搬容易、保管容易、軽量、安価など利便性と経済性に優れているために、緊急災害時の対応にも好適である。
蛋白誤差を示す指示薬をコーティングした紙製試験管立ては、検体飛散による試験管立ての汚染部位を蛋白誤差の変色反応により瞬時に視認することが可能となる。
【0040】
試験管立ての汚染部位を検出し、リアルタイムに滅菌処置等を講じることは医療従事者にとって有効な安全対策といえる。
気密性と保護性を高めた検体密封保存法の提供は、貴重な検査試料の安定性確保に有用である。
保存期間を経過した検体は、ディスポ製品のグローブ、ゴーグル、マスク、ガウン等を着けた人手により感染性廃棄物として処理されるが、医療従事者へ検体被爆のリスクは否定出来ないのが現状である。
しかし、本発明による2重に密封された保存検体の廃棄法は、廃棄の際、検体飛散を発生させることがなく、極めて安全性の高い廃棄方法である。
【符号の説明】
【0041】
10 紙製試験管立て
11 1段目
12 2段目
13 3段目
14 4段目
15 挿入口
16 箱本体
17 側面折込部
18 上面折込部
19 中段試験管受
20 試験管
21 試験管解放口
30 密封シート
31 保護シート
32 密封フィルム
33 離形シート
33a 帯離形シート
33b ベース離形シート
34 粘着層
35 シリコン接着層
40 密封装置
41 本体
42 プレス蓋
43 封入袋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8