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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6615475
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】発振回路
(51)【国際特許分類】
   H03B 19/14 20060101AFI20191125BHJP
   H03B 9/12 20060101ALI20191125BHJP
   H03B 5/02 20060101ALI20191125BHJP
   H01Q 13/16 20060101ALI20191125BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   H03B19/14
   H03B9/12
   H03B5/02 B
   H01Q13/16
   H01Q21/06
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-75634(P2015-75634)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2015-213302(P2015-213302A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2018年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-86791(P2014-86791)
(32)【優先日】2014年4月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501382823
【氏名又は名称】相川 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】恩塚 辰典
(72)【発明者】
【氏名】中川 敦
(72)【発明者】
【氏名】根本 光進
(72)【発明者】
【氏名】相川 正義
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−204223(JP,A)
【文献】 特開2008−147750(JP,A)
【文献】 特開2000−201015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 19/14
H01Q 13/16
H01Q 21/06
H03B 5/02
H03B 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長がλの発振信号を出力する発振回路であって、
長さがλの第1スロットラインが形成された基板と、
前記第1スロットラインの中央位置において、前記第1スロットラインと交差して前記基板に設けられた第1負性抵抗素子と、
を備え、
前記基板には、
前記第1スロットラインにおける、前記第1負性抵抗素子からλ/4の距離の第1位置を通る、前記第1スロットラインと直交する方向に延伸した第1垂直スリットと、
前記第1スロットラインにおける、前記第1負性抵抗素子に対して前記第1垂直スリットと反対側における、前記第1負性抵抗素子からλ/4の距離の第2位置を通る、前記第1スロットラインと直交する方向に延伸した第2垂直スリットと、
前記第1垂直スリット及び前記第2垂直スリットと接続され、かつ、前記第1スロットラインと平行な水平スリットと、
が形成されている発振回路。
【請求項2】
波長がλの発振信号を出力する発振回路であって、
長さがλの第1スロットラインが形成された基板と、
前記第1スロットラインの中央位置において、前記第1スロットラインと交差して前記基板に設けられた第1負性抵抗素子と、
を備え、
前記基板には、
前記第1スロットラインにおける、前記第1負性抵抗素子からλ/4の距離の第1位置を通る、前記第1スロットラインと直交する方向に延伸した第1垂直スリットと、
前記第1スロットラインにおける、前記第1負性抵抗素子に対して前記第1垂直スリットと反対側における、前記第1負性抵抗素子からλ/4の距離の第2位置を通る、前記第1スロットラインと直交する方向に延伸した第2垂直スリットと、
前記第1垂直スリット及び前記第2垂直スリットと接続され、かつ、前記第1スロットラインと平行な、長さがλの第2スロットラインと、
が形成されており、
前記第1スロットラインと前記第2スロットラインとの間に、前記第1スロットラインと平行な、長さがλ/2の第3スロットライン及び第4スロットラインがさらに形成されており、
前記第2スロットラインの中央位置において、前記第2スロットラインと交差して前記基板に設けられた第2負性抵抗素子をさらに備え、
前記第1垂直スリット及び前記第2垂直スリットは、前記第1負性抵抗素子及び前記第2負性抵抗素子を結ぶ直線と平行であり、かつ、前記第1負性抵抗素子及び前記第2負性抵抗素子を結ぶ直線からの距離がλ/4の位置に形成されている、
発振回路
【請求項3】
前記基板には、前記第3スロットラインの延長線上に、前記第1スロットラインと平行な、長さがλ/2のスロットラインが形成されている、
請求項2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記基板には、前記第1スロットラインと直交する方向の前記第1スロットラインから離れる向きの位置に、前記第1スロットラインと平行な、長さがλ/2のスロットラインが形成されている、
請求項2又は3に記載の発振回路。
【請求項5】
波長がλの発振信号を出力する発振回路であって、
長さがλの第1スロットラインと、前記第1スロットラインの延長線上に形成された長さがλの第2スロットラインと、を有する基板と、
前記第1スロットラインの中央位置において、前記第1スロットラインと交差して前記基板に設けられた第1負性抵抗素子と、
前記第2スロットラインの中央位置において、前記第2スロットラインと交差して前記基板に設けられた第2負性抵抗素子と、
を備え、
前記基板には、
前記第1スロットラインにおける、前記第1負性抵抗素子からλ/4の距離の第1位置を通る、前記第1スロットラインと直交する方向に延伸した第1垂直スリットと、
前記第1スロットラインにおける、前記第1負性抵抗素子に対して前記第1垂直スリットと反対側における、前記第1負性抵抗素子からλ/4の距離の第2位置を通る、前記第1スロットラインと直交する方向に延伸した第2垂直スリットと、
前記第2スロットラインにおける、前記第2負性抵抗素子からλ/4の距離の第3位置を通る、前記第2スロットラインと直交する方向に延伸した第3垂直スリットと、
前記第2スロットラインにおける、前記第2負性抵抗素子に対して前記第3垂直スリットと反対側に、前記第2負性抵抗素子からλ/4の距離の第4位置を通る、前記第2スロットラインと直交する方向に延伸した第4垂直スリットと、
前記第1垂直スリットと前記第4垂直スリットとを接続する第1水平スリットと、
前記第2垂直スリットと前記第3垂直スリットとを接続する第2水平スリットと、
が形成されており、
前記第1位置は、前記第2位置に比べて前記第2スロットラインから遠い位置であり、
前記第4位置は、前記第3位置に比べて前記第1スロットラインから遠い位置であり、
前記第1垂直スリット及び前記第2垂直スリットの延伸方向が、前記第1スロットラインに対して互いに反対方向であり、
前記第3垂直スリット及び前記第4垂直スリットの延伸方向が、前記第2スロットラインに対して互いに反対方向である発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振信号を放射する発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スロットラインを用いた高周波発振回路が知られている。例えば、特許文献1においては、円形状のスロットラインに2個のガンダイオードを装荷することにより発振信号を出力する発振回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−258556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、従来の発振回路700の構成を示す図である。発振回路700は、基板710に、周長が発振信号の波長に等しい円形状のスロットライン720が形成されており、スロットライン720と交差するように、2個のガンダイオード730、740が設けられている。スロットライン720の内側にバイアス電圧を印加することによりガンダイオード730及びガンダイオード740が発振を開始すると、スロットライン720におけるガンダイオード730とガンダイオード740との間には発振波動が発生し、図7の矢印が示す向きの電界が発生する。発振回路700の構成を用いることで、簡易な構成で高周波信号を発生することができる。
【0005】
しかしながら、発振回路700において、電界強度が最大となる位置における電界の向きは、図7に示すように互いに逆向きである。したがって、発振回路700は、多数の負性抵抗素子を用いて出力電力を大きくする必要がある場合に有効なファブリペロー共振器の構成を用いて空間電力合成をする用途や、所定の向きに電磁放射をさせる用途には適さない。そこで、簡易な構成で、高周波信号を所望の向きに放射させることができる発振回路が求められている。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、高周波信号を発生し、所望の向きに放射させることができる発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発振回路は、波長がλの発振信号を出力する発振回路であって、長さがλの第1スロットラインが形成された基板と、前記第1スロットラインの中央位置において、前記第1スロットラインと交差して前記基板に設けられた第1負性抵抗素子と、を備え、前記基板には、前記第1スロットラインにおける、前記第1負性抵抗素子からλ/4の距離の第1位置を通る、前記第1スロットラインと直交する方向に延伸した第1垂直スリットと、前記第1スロットラインにおける、前記第1負性抵抗素子に対して前記第1垂直スリットと反対側における、前記第1負性抵抗素子からλ/4の距離の第2位置を通る、前記第1スロットラインと直交する方向に延伸した第2垂直スリットと、前記第1垂直スリット及び前記第2垂直スリットと接続され、かつ、前記第1スロットラインと平行な水平スリットと、が形成されている。
【0008】
前記基板には、前記第1スロットラインと平行な、長さがλの第2スロットラインがさらに形成されており、前記第1スロットラインと前記第2スロットラインとの間に、前記第1スロットラインと平行な、長さがλ/2の第3スロットライン及び第4スロットラインがされに形成されており、前記第2スロットラインの中央位置において、前記第2スロットラインと交差して前記基板に設けられた第2負性抵抗素子をさらに備え、前記第1垂直スリット及び前記第2垂直スリットは、前記第1負性抵抗素子及び前記第2負性抵抗素子を結ぶ直線と平行であり、かつ、前記第1負性抵抗素子及び前記第2負性抵抗素子を結ぶ直線からの距離がλ/4の位置に形成されていてもよい。
【0009】
上記の発振回路は、第2負性抵抗素子を備え、前記基板には、前記第1スロットラインの延長線上に、前記第2負性抵抗素子が交差する第2スロットラインと、前記第2スロットラインにおける、前記第2負性抵抗素子からλ/4の距離の第3位置を通る、前記第2スロットラインと直交する方向に延伸した第3垂直スリットと、前記第2スロットラインにおける、前記第2負性抵抗素子に対して前記第3垂直スリットと反対側に、前記第2負性抵抗素子からλ/4の距離の第4位置を通る、前記第2スロットラインと直交する方向に延伸した第4垂直スリットと、前記第1垂直スリットと前記第4垂直スリットとを接続する第1水平スリットと、前記第2垂直スリットと前記第3垂直スリットとを接続する第2水平スリットと、が形成されていてもよい。
【0010】
前記基板には、前記第1スロットラインの延長線上に、前記第1スロットラインと平行な、長さがλ/2のスロットラインが形成されていてもよい。また、前記基板には、前記第1スロットラインと直交する方向の前記第1スロットラインから離れる向きの位置に、前記第1スロットラインと平行な、長さがλ/2のスロットラインが形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成で、高周波信号を発生し、所望の向きに放射させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
図2】第2の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
図3】第3の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
図4A】第4の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
図4B】第4の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
図5】第5の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
図6】第6の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
図7】従来の発振回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る発振回路100の構成を示す図である。発振回路100は、基板1と、スロットライン10と、ダイオード20と、スリット31とを備え、ミリ波又はテラヘルツ波等の高周波発振信号を出力する。図1(a)は、発振回路100の平面図である。図1(b)は、発振回路100のA−A線概略断面図である。図1(a)における矢印は、スロットライン10に生じる電界の向きを示している。なお、本明細書において、図1(a)に示すように、スロットライン10と平行な方向をX方向、スロットライン10と直交する方向をY方向という。
【0014】
以下、ダイオード20にバイアス電圧を印加することにより発生する発振信号の基本周波数がfであり、発振回路100が放射する発振信号が、基本周波数fのn倍(nは整数)の高調波信号であるとして説明する。また、周波数nfの高調波信号の波長をλとする。
【0015】
スロットライン10は、基板1に設けられた導体2の一部の領域を除去することにより形成されている。スロットライン10の長さは、発振回路100が放射する発振信号の波長λに等しい。
【0016】
ダイオード20は、例えばガンダイオードである。ダイオード20は、スロットライン10の中央位置において、スロットライン10と交差して基板1に設けられている。具体的には、ダイオード20のアノード及びカソードは、それぞれスロットライン10の反対側において導体2に接続されている。
【0017】
スリット31は、スリット31aと、スリット31bと、スリット31cとから構成されている。スリット31により、導体2は、ダイオード20のアノードが接続されている第1領域である導体2aと、ダイオード20のカソードが接続されている第2領域である導体2bとに分断されている。
【0018】
スリット31aは、スロットライン10における、ダイオード20からλ/4の距離の位置P1を通る、スロットライン10と直交する方向に延伸した第1垂直スリットである。スリット31bは、スロットライン10における、ダイオード20に対してスリット31aと反対側において、ダイオード20からλ/4の距離の位置P2を通る、スロットライン10と直交する方向に延伸した第2垂直スリットである。スリット31cは、スリット31a及びスリット31bと接続され、かつ、スロットライン10と平行な水平スリットである。導体2aにバイアス電圧を印加することにより、ダイオード20のアノードにバイアス電圧が印加され、ダイオード20が発振信号の発生を開始する。
【0019】
発振回路100においては、スロットライン10の長さが、周波数nfの高調波信号の波長λに等しい。したがって、ダイオード20が発振信号の発生を開始すると、スロットライン10からは、発振信号に含まれる周波数nfの高調波成分が選択的に放射される。
【0020】
また、スリット31a及びスリット31bは、スロットライン10において電界強度が最大になる、ダイオード20からλ/4の距離の位置P1及び位置P2に形成されている。位置P1及び位置P2における高調波信号の電流はゼロなので、これらの位置にスリット31a及びスリット31bを形成することにより、スロットライン10及びダイオード20により構成される発振回路の高周波信号の発振に影響しない。位置P1における電界の向き及び位置P2における電界の向きは図1におけるYの向きであり、スロットライン10においては、位相ベクトルが一様な電界分布が形成される。その結果、スロットライン10からは、周波数nfの高調波信号が、基板1の面と直交する方向(以下、Z方向という)に放射される。
【0021】
なお、図1(a)において、電界の向きを示す矢印を見やすくするために、矢印のX方向における位置と、スリット31a及びスリット31bのX方向における位置との関係をずらしている。この点については、図2から図6においても同様である。
【0022】
以上のとおり、第1の実施形態に係る発振回路100は、スロットライン10における、ダイオード20からλ/4の位置に、ダイオード20のアノードとカソードとを分離するスリット31を有する。したがって、簡易な構成で、ダイオード20の高周波発振に影響させることなくバイアス電圧を印加して発振させつつ、位相、振幅及び向きが同一の一様な電界分布を形成し、所定の向きに高周波信号を放射することができる。
【0023】
<第2の実施形態>
図2は、第2の実施形態に係る発振回路200の構成を示す図である。発振回路200は、スロットライン11、13、14と、ダイオード21とをさらに備える点で第1の実施形態に係る発振回路100と異なる。スロットライン11、13、14は、スロットライン10と平行であり、かつ、スロットライン11のX方向における位置は、スロットライン10と同じ位置である。一方、スロットライン13、14は、それぞれスロットライン10とスロットライン11との間において、スリット31a、31bの左右の近傍に配置されている。スロットライン11の長さは、周波数nfの高調波信号の波長λに等しく、スロットライン13、14の長さは、2分の1波長(λ/2)に等しい。ダイオード21は、スロットライン11の中央位置において、スロットライン11と交差して基板1に設けられている。
【0024】
スリット31a及びスリット31bは、ダイオード20及びダイオード21を結ぶ直線と平行である。また、スリット31a及びスリット31bは、ダイオード20及びダイオード21を結ぶ直線からの距離がλ/4の位置に形成されている。スロットライン11は、スリット31a及びスリット31bに接続されており、スリット31cと同様に水平スリットとして機能する。
【0025】
スロットライン10に生じる電界とスロットライン11に生じる電界とは、スロットライン13、14を介して相互に電磁結合することにより相互同期して、位相ベクトルが一様な電界分布が形成される。その結果、発振回路200は、スロットライン10及びスロットライン11、並びにスロットライン13及びスロットライン14からZ方向に高周波信号を放射することができる。発振回路200は、複数のスロットライン10、11に設けられた複数のダイオード20、21を有するので、発振回路100よりも強い高周波信号を放射することができる。
【0026】
<第3の実施形態>
図3は、第3の実施形態に係る発振回路300の構成を示す図である。発振回路300は、スロットライン12と、ダイオード22とをさらに備える点で第1の実施形態に係る発振回路100と異なる。また、スロットライン10とスロットライン12とを接続するスリット32及びスリット33が形成されている点でも、発振回路100と異なる。スロットライン12は、スロットライン10の延長線上において、スロットライン10と磁界結合可能な距離だけX方向に離れた位置に形成されている。スロットライン12の長さは、周波数nfの高調波信号の波長λに等しい。ダイオード22は、スロットライン12の中央位置において、スロットライン12と交差して基板1に設けられている。
【0027】
スリット32aは、スロットライン10における、ダイオード20からλ/4の距離の位置P31を通り、スロットライン10と直交する方向に延伸している。スリット32bは、スロットライン12における、ダイオード22からλ/4の距離の位置P34を通り、スロットライン12と直交する方向に延伸している。スリット32cは、スリット32a及びスリット32bと接続され、かつ、スロットライン10及びスロットライン12と平行である。
【0028】
スリット33aは、スロットライン10における、ダイオード20からλ/4の距離の位置P32を通り、スロットライン10に対してスリット32aと反対の向きに延伸している。スリット33bは、スロットライン12における、ダイオード22からλ/4の距離の位置P33を通り、スロットライン12に対してスリット32bと反対の向きに延伸している。スリット33cは、スリット33a及びスリット33bと接続され、かつ、スロットライン10及びスロットライン12と平行である。
【0029】
発振回路300においては、スリット32と、スリット33と、スロットライン10と、スロットライン12とで囲まれた領域にバイアス電圧を印加すると、ダイオード20及びダイオード22のアノードにバイアス電圧が印加され、ダイオード20及びダイオード22が発振信号の出力を開始する。ダイオード20及びダイオード22が発振信号を出力している状態において、スロットライン10とスロットライン12とは磁界結合している。その結果、ダイオード20とダイオード22とは、同一の位相ベクトルを有するように相互同期する。したがって、発振回路300は、スロットライン10及びスロットライン12から、Z方向に高周波信号を放射することができる。発振回路300は、スロットライン10とスロットライン12とがX方向に隣接しているので、発振回路200に比べてX方向の電磁波の広がりを抑制し、アンテナ利得を向上することができる。
【0030】
<第4の実施形態>
図4Aは、第4の実施形態に係る発振回路400の構成を示す図である。発振回路400においては、図2に示した発振回路200におけるスロットライン10とスロットライン11に平行に、長さがλ/2のスロットライン15が形成されている。
【0031】
すなわち、スロットライン10及びスロットライン11と直交する方向において、スロットライン10及びスロットライン11から離れる向きの位置に、スロットライン10及びスロットライン11と平行な、長さがλ/2のスロットライン15が形成されている。スロットライン10、スロットライン11、スロットライン13、スロットライン14及びスロットライン15は、Y方向において電磁結合する。
【0032】
したがって、スロットライン10及びダイオード20から構成される発振系において生じる電界と、スロットライン11、スロットライン13、スロットライン14及びスロットライン15において生じる電界とが同一の位相ベクトルを有する。その結果、発振回路400は、スロットライン10、スロットライン11、スロットライン13、スロットライン14及びスロットライン15からZ方向に高周波信号を放射することができる。また、スロットライン13、スロットライン14、スロットライン15が存在することによりアンテナゲインを向上できるので、発振回路400は、発振回路200よりも電界強度が大きい高周波信号を放射することができる。
【0033】
図4Bは、第4の実施形態に係る他の例としての発振回路410の構成を示す図である。発振回路410においては、図4Aに示した発振回路400の両側に、複数のスロットライン16が形成されている。スロットライン16は、スロットライン10、スロットライン11、スロットライン13、スロットライン14及びスロットライン15の延長線上における、これらのスロットラインと磁界結合する位置に、これらのスロットラインと平行に形成されている。それぞれのスロットライン16の長さはλ/2である。
【0034】
発振回路410における複数のスロットラインは、X方向及びY方向において電磁結合する。したがって、スロットライン10及びダイオード20から構成される発振回路400の発振系において生じる電界と、周囲の複数のスロットライン16において生じる電界とが同一の位相ベクトルを有する。その結果、発振回路410は、スロットライン10、スロットライン11、スロットライン13、スロットライン14、スロットライン15及びスロットライン16からZ方向に高周波信号を放射することができる。また、複数のスロットライン16が存在することによりアンテナゲインを向上させて、発振回路410は、発振回路400よりも電界強度が大きい高周波信号を放射することができる。
【0035】
<第5の実施形態>
図5は、第5の実施形態に係る発振回路500の構成を示す図である。発振回路500においては、複数の発振回路400がX方向及びY方向に並べられて構成されている。ただし、相互同期の電磁結合範囲を考慮して、Y方向に隣接する2つの発振回路400がスロットライン15を共用している。
【0036】
4つの発振回路400は、X方向及びY方向において電磁結合することにより、それぞれのスロットラインにおいて生じる電界が同一の位相ベクトルを有する。発振回路500は、複数の発振回路400を有するとともに、生じる電界の位相が同一なので、発振回路400に比べてより鋭いビームの高周波信号をZ方向に放射することができる。
【0037】
<第6の実施形態>
図6は、第6の実施形態に係る発振回路600の構成を示す図である。発振回路600は、発振回路500とスリットの構成が異なっており、その他の構成は同じである。具体的には、発振回路600においては、発振回路500における一部のスリット31に代えて、スリット34、スリット35、スリット36及びスリット37が形成されている。
【0038】
発振回路600は、複数のスリットと、これらのスリットの終端部が接続されたスロットラインとにより囲まれた領域に、全てのダイオードのアノードが接続されている。すなわち、発振回路600においては、複数のスリット及び複数のスロットラインにより、複数のダイオードのアノードが接続された第1領域R1と、複数のダイオードのカソードが接続された第2領域R2とに二分されている。したがって、第1領域R1内の任意の1箇所にバイアス電圧をかけると、全てのダイオードにバイアス電圧が印加される。その結果、発振回路600においては、簡易な給電回路により、多数のダイオードを発振させることができる。
【0039】
さらに、発振回路600においては、全てのスロットラインにおいて、X方向及びY方向において電磁結合することにより、それぞれのスロットラインに生じる電界が相互同期する。その結果、発振回路600においては、位相ベクトルが一様な電界分布が形成され、多数の同期励振したスロットラインから鋭いビームの高周波信号を放射することができる。
【0040】
上記の各実施形態においては、放射機能を有するスロットライン共振器を用いているので、隣接する発振回路間の相互同期発振を容易に実現できる。そして、両面放射であるために、ファブリペロー共振タイプの空間電力合成も可能である。さらに、可変反射鏡等と組み合わせることによって、周波数可変制御やFSK等のRF直接変調機能も実現することができる。
【0041】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0042】
例えば、上記の実施形態においては、ガンダイオードを装荷した場合の構成について説明したが、HEMT等の3端子素子から構成される負性抵抗回路や、負性抵抗回路を含むMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)をスロットライン共振器に電磁結合させることにより構成してもよい。
また、垂直スロットは、図1に示したようにスロットラインとT字状に交差してもよく、図3に示したようにスロットラインを突き抜けて、スロットラインと十字状に交差してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1・・・基板
2・・・導体
10、11、12、13、14、15・・・スロットライン
20、21・・・ダイオード
31、32、33、34、35、36、37・・・スリット
100、200、300、400、500、600、700・・・発振回路
710・・・基板
720・・・スロットライン
730、740・・・ガンダイオード
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7