特許第6615478号(P6615478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6615478金属インサート部品を用いる樹脂成型品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6615478
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】金属インサート部品を用いる樹脂成型品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/32 20060101AFI20191125BHJP
   B29C 65/70 20060101ALI20191125BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20191125BHJP
【FI】
   B29C65/32
   B29C65/70
   B29C45/14
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-86371(P2015-86371)
(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2015-214146(P2015-214146A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2018年2月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-88195(P2014-88195)
(32)【優先日】2014年4月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594126676
【氏名又は名称】株式会社日昌製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100176164
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 州志
(72)【発明者】
【氏名】嶺岸 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】信太 祐介
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−101519(JP,A)
【文献】 特開2006−248091(JP,A)
【文献】 特開2003−181932(JP,A)
【文献】 特開昭52−025873(JP,A)
【文献】 特開2004−255802(JP,A)
【文献】 特開平08−296559(JP,A)
【文献】 特開2000−304132(JP,A)
【文献】 特開平08−303661(JP,A)
【文献】 特開2011−046119(JP,A)
【文献】 特開平09−251240(JP,A)
【文献】 特公昭47−046828(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 − 65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属インサート部品と樹脂とを有する樹脂成型品の製造方法であって、
前記樹脂成型品が、前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部に前記樹脂で覆われた部分と、前記樹脂で覆われない前記金属インサート部品の金属露出部分とを備え、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部には、高周波誘導波を受けて発熱する部位が、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位として、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より断面積が小さくなるように形成される部位を介して、前記金属インサート部品の外縁の最外周に設けられており、
前記金属インサート部品を用いて、射出成型、圧縮成形又はトランスファー成形によって樹脂成型を行う工程、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部において金属と樹脂との接合面に存在する樹脂を溶融させる箇所に高周波誘導装置を設けて誘導加熱を行う工程、及び
冷却工程を有することを特徴とする樹脂成型品の製造方法。
【請求項2】
前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位は、前記金属インサート部品の金属露出部分を前記金属インサート部品の外縁に向けて延長するとき、前記熱伝導を抑制するための部位と当接する部分の断面よりも小さな断面積を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項3】
前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位には、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より断面積が小さくなるように、溝、孔及び穴の少なくとも何れか1つが形成される金属インサート部品を用いることを特徴とする請求項2に記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項4】
前記高周波誘導波を受けて発熱する部位、及び前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位は、断面形状が円形若しくは楕円形、及び矩形の組合せからなる金属インサート部品を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項5】
前記高周波誘導波を受けて発熱する部位が円形若しくは楕円形の断面形状を有し、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位が矩形の断面を有する金属インサート部品を用いることを特徴とする請求項4に記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項6】
金属インサート部品と樹脂とを有する樹脂成型品の製造方法であって、
前記樹脂成型品が、前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部に前記樹脂で覆われた部分と、前記樹脂で覆われない前記金属インサート部品の金属露出部分とを備え、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部には、高周波誘導波を受けて発熱する部位が、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位として、少なくとも一部が前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より熱抵抗が大きな材料から構成される部位を介して、前記金属インサート部品の外縁の最外周に設けられており、
前記金属インサート部品を用いて、射出成型、圧縮成形又はトランスファー成形によって樹脂成型を行う工程、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部において金属と樹脂との接合面に存在する樹脂を溶融させる箇所に高周波誘導装置を設けて誘導加熱を行う工程、及び
冷却工程を有することを特徴とする樹脂成型品の製造方法。
【請求項7】
前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より熱抵抗が大きな材料が、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より熱伝導性の低い金属、樹脂及びセラミックの少なくとも何れか1つである金属インサート部品を用いることを特徴とする請求項6に記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項8】
金属インサート部品と樹脂とを有する樹脂成型品の製造方法であって、
前記樹脂成型品が、前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部に前記樹脂で覆われた部分と、前記樹脂で覆われない前記金属インサート部品の金属露出部分とを備え、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部には、高周波誘導波を受けて発熱する部位が、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位として、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位と同じ断面厚さを有し、前記断面厚さ、前記熱伝導を抑制するための部位の長さ、及び前記金属インサート部品の金属露出部分を前記金属インサート部品の外縁に向けて延長するとき、前記熱伝導を抑制するための部位と当接する部分の断面厚さを、それぞれt、L、及びTとしたときに、前記t、L、及びTが下記の(1)式及び(2)式を満たすように形成される部位を介して、前記金属インサート部品の外縁の最外周に設けられており、
>t (1)
/t≧3 (2)
前記金属インサート部品を用いて、射出成型、圧縮成形又はトランスファー成形によって樹脂成型を行う工程、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部において金属と樹脂との接合面に存在する樹脂を溶融させる箇所に高周波誘導装置を設けて誘導加熱を行う工程、及び
冷却工程を有することを特徴とする樹脂成型品の製造方法。
【請求項9】
前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位には、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より断面積が小さくなるように、溝、孔及び穴の少なくとも何れか1つが形成される金属インサート部品を用いることを特徴とする請求項8に記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項10】
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部は、高周波誘導波を受けて発熱する部位、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位、及び前記樹脂で覆われていない前記金属インサート部品の金属露出部分の断面より大きな断面積で形成することにより前記金属と樹脂との接合面に存在する樹脂との投錨(アンカー)効果を発現するための部位が、前記金属インサート部品の外縁の最外周からこの順に従ってそれぞれ設けられ金属インサート部品を用いることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項11】
前記高周波誘導波を受けて発熱する部位が、金属管状体の端部外周部及び端部内周部の何れか又はそれらの両外周部に設けられる金属インサート部品を用いることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項12】
前記金属インサート部品が金属管状体であって、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面が2以上に分割されている金属インサート部品を用いることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の樹脂成型品の製造方法。
【請求項13】
前記高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面が切れ込み又は溝によって2以上に分割され、且つ、前記分割された一つの部位は、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位を含み、且つ、前記分割された一つの部位の先端部分の断面厚さ、前記高周波誘導波を受けて熱伝導を抑制するための部位の長さ、及び分割する前の前記金属インサート部品の断面厚さを、それぞれt、L、及びTとしたときに、前記t、L、及びTが下記の(3)式及び(4)式を満たす金属インサート部品を用いることを特徴とする請求項12に記載の樹脂成型品の製造方法。
>t (3)
/t≧3 (4)
【請求項14】
前記金属インサート部品は、表面に樹脂材料との接合を促すための表面処理が施されていることを特徴とする請求項1〜13の何れかに記載の樹脂成型品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘導加熱により金属と樹脂との接合面に存在する樹脂を溶融させ、接合の密着性又は接着性を高めることができる金属インサート部品及び該金属インサート部品を用いる樹脂成型品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部品と樹脂とを接合する方法に関しては、特許文献1で提案されているように、金属表面に化学的エッチング処理を施し微細な凹凸を設け、この凹凸にインサートモールド時に溶融した樹脂を浸入させ樹脂が冷却硬化した後形成されるアンカー(碇)の効果により樹脂と金属を物理的に接合させる方法や、特許文献2で提案されているように高周波加熱により金属・樹脂接合面の樹脂を溶融させ接合させる方法等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/047811号
【特許文献2】特開平5−237934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されているアンカー効果を利用する方法は、十分にその作用を発揮するために、樹脂射出成型時に溶融した樹脂の温度(粘度)と射出成型時の圧力を適正に制御する必要があるが、成型時の熱と圧力とを積極的かつ正確に調整することは困難である。これは、樹脂成型作業時の成形機ノズル内樹脂温度と金型内部各部分の樹脂温度が正確に一致しないことが一般常識として知られていることからも容易に想像できる。
【0005】
また、前記特許文献2に開示されている、高周波加熱により金属・樹脂接合面の樹脂を溶融させ結合させる方法は、高周波加熱による熱により樹脂が軟化・溶融し、樹脂層の一部が接合面の外側に押し出されることで残留応力を解消するのに好適な構成となっているが、樹脂層の一部が接合面の外側に押し出される現象は、樹脂の密度低下を招き樹脂と金属部品との間の気密性確保という観点から見た場合には不利となる。
【0006】
本発明の目的は、気密性を確保し、かつ耐久性に優れた樹脂材料と金属材料からなるインサートモールドを行うため、前記樹脂と前記金属との接合に高周波誘導加熱を利用するときに必要とされる樹脂と金属インサート接触部分の温度(粘度)を制御するために好適な接合継手構造を有する金属インサート部品及び該金属インサート部品を用いる樹脂成型品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、金属インサート部品と樹脂とを有する樹脂成型品の製造方法であって、
前記樹脂成型品が、前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部に前記樹脂で覆われた部分と、前記樹脂で覆われない前記金属インサート部品の金属露出部分とを備え、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部には、高周波誘導波を受けて発熱する部位が、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位として、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より断面積が小さくなるように形成される部位を介して、前記金属インサート部品の外縁の最外周に設けられており、
前記金属インサート部品を用いて、射出成型、圧縮成形又はトランスファー成形によって樹脂成型を行う工程、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部において金属と樹脂との接合面に存在する樹脂を溶融させる箇所に高周波誘導装置を設けて誘導加熱を行う工程、及び
冷却工程を備えることを特徴とする樹脂成型品の製造方法を提供する。
[2]本発明は、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位が、前記金属インサート部品の金属露出部分を前記金属インサート部品の外縁に向けて延長するとき、前記熱伝導を抑制するための部位と接する部分の断面よりも小さな断面積を有することを特徴とする前記[1]に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[3]本発明は、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位には、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より断面積が小さくなるように、溝、孔及び穴の少なくとも何れか1つが形成される金属インサート部品を用いることを特徴とする前記[2]に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[4]本発明は、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位、及び前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位が、断面形状が円形若しくは楕円形、及び矩形の組合せからなる金属インサート部品を用いることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[5]本発明は、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位が円形若しくは楕円形の断面形状を有し、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位が矩形の断面を有する金属インサート部品を用いることを特徴とする前記[4]に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[6]本発明は、金属インサート部品と樹脂とを有する樹脂成型品の製造方法であって、
前記樹脂成型品が、前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部に前記樹脂で覆われた部分と、前記樹脂で覆われない前記インサート部品の金属露出部分とを備え、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部には、高周波誘導波を受けて発熱する部位が、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位として、少なくとも一部が前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より熱抵抗が大きな材料から構成される部位を介して、前記金属インサート部品の外縁の最外周に設けられており、
前記金属インサート部品を用いて、射出成型、圧縮成形又はトランスファー成形によって樹脂成型を行う工程、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部において金属と樹脂との接合面に存在する樹脂を溶融させる箇所に高周波誘導装置を設けて誘導加熱を行う工程、及び
冷却工程を有することを特徴とする樹脂成型品の製造方法を提供する。
[7]本発明は、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より熱抵抗が大きな材料が、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より熱伝導性の低い金属、樹脂及びセラミックの少なくとも何れか1つである金属インサート部品を用いることを特徴とする前記[6]に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[8]本発明は、金属インサート部品と樹脂とを有する樹脂成型品の製造方法であって、
前記樹脂成型品が、前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部に前記樹脂で覆われた部分と、前記樹脂で覆われない前記金属インサート部品の金属露出部分とを有し、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部には、高周波誘導波を受けて発熱する部位が、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位として、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位と同じ断面厚さを有し、前記断面厚さ、前記熱伝導を抑制するための部位の長さ、及び前記金属インサート部品の金属露出部分を前記金属インサート部品の外縁に向けて延長するとき、前記熱伝導を抑制するための部位と当接する部分の断面厚さを、それぞれt、L、及びTとしたときに、前記t、L、及びTが下記の(1)式及び(2)式を満たすように形成される部位を介して、前記金属インサート部品の外縁の最外周に設けられており、
>t (1)
/t≧3 (2)
前記金属インサート部品を用いて、射出成型、圧縮成形又はトランスファー成形によって樹脂成型を行う工程、
前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部において金属と樹脂との接合面に存在する樹脂を溶融させる箇所に高周波誘導装置を設けて誘導加熱を行う工程、及び
冷却工程を備えることを特徴とする樹脂成型品の製造方法。
[9]本発明は、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位には、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より断面積が小さくなるように、溝、孔及び穴の少なくとも何れか1つが形成される金属インサート部品を用いることを特徴とする前記[8]に記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[10]本発明は、前記金属インサート部品の外縁の少なくとも一部は、高周波誘導波を受けて発熱する部位、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位、及び前記樹脂で覆われていない前記金属インサート部品の金属露出部分の断面より大きな断面積で形成することにより前記金属と樹脂との接合面に存在する樹脂との投錨(アンカー)効果を発現するための部位が、前記金属インサート部品の外縁の最外周からこの順に従ってそれぞれ設けられる金属インサート部品を用いることを特徴とする前記[1]〜[9]の何れかに記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[11]本発明は、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位が、金属管状体の端部外周部及び端部内周部の何れか又はそれらの両外周部に設けられる金属インサート部品を用いることを特徴とする前記[1]〜[5]の何れかに記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[12]本発明は、前記金属インサート部品が金属管状体であって、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面が2以上に分割されている金属インサート部品を用いることを特徴とする前記[1]〜[3]の何れかに記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[13]本発明は、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面が切れ込み又は溝によって2以上に分割され、且つ、前記分割された一つの部位が、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位を含み、且つ、前記分割された一つの部位の先端部分の断面厚さ、前記高周波誘導波を受けて熱伝導を抑制するための部位の長さ、及び分割する前の前記金属インサート部品の断面厚さを、それぞれt、L、及びTとしたときに、前記t、L、及びTが下記の(3)式及び(4)式を満たす金属インサート部品を用いることを特徴とする前記[12]に記載の樹脂成型品の製造方法。
>t (3)
/t≧3 (4)
[14]本発明は、前記金属インサート部品が、表面に樹脂材料との接合を促すための表面処理が施されていることを特徴とする前記[1]〜[13]の何れかに記載の樹脂成型品の製造方法を提供する。
[発明の効果]
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属インサート部品は、高周波誘導加熱工程を施すことによって接合の密着性又は接着性を高めることができる。それによって、従来の金属インサート構造を有する樹脂成型品と比べて、樹脂成型品の気密性を大幅に向上でき、信頼性の高い各種インサート成形品を製造することができる。
【0009】
本発明の金属インサート部品は、外縁の最外周に高周波誘導波を受けて発熱する部位を前記金属インサート部品の形状に沿って設けることにより、平面状の金属インサート樹脂成型品に適用することができる。また、金属管状体の端部外周部及び端部内周部の何れか又はそれらの両外周部に高周波誘導波を受けて発熱する部位を円周状に設けることにより、金属管状体の一端部を樹脂管状体の内側にインサートした構造、又は樹脂管状体の外側の所望の位置で接合した構造を有する樹脂成型品としての適用が可能である。このように、本発明の金属インサート部品は、様々な構造や用途を有する各種インサート樹脂成型品のの適用を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】簡単な構成のインサートモールド部品外観の一例を示す図である。
図2図1のA−A断面を示す図である。
図3】一般的な樹脂材の温度変化に対する比容積の関係を示す図である。
図4】誘導加熱の原理を模式的に示す図である。
図5】本発明の一実施例を示す図である。
図6図5の継手部2aの部分の詳細を示す図である。
図7図5に示す本発明の一実施例で用いる高周波誘導コイル6の別の配置例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態2による実施例を示す図である。
図9】本発明の金属インサート部品において、さらに投錨効果を発現するための部位を有する実施例を示す図である。
図10】第一の断面積の異なる部位の断面形状が四角形となっている本発明の別の実施例を示す図である。
図11】インサート部品の第一の断面積の異なる部位と薄肉部分の個数が異なる本発明の別の実施例を示す図である。
図12】第一の断面積の異なる部位が設定されていない本発明の別の実施例を示す図である。
図13図11において直線形状で示されていた薄肉部分が波状の形状である本発明の別の実施例を示す図である。
図14】インサート部品の断面厚さと継手部の断面厚さが同じ組み合わせを有する本発明の別の実施例を示す図である。
図15】インサート部品の断面厚さよりも継手部の断面厚さが大きい構成を有する本発明の別の実施例を示す図である。
図16】高周波誘導波を受けて発熱する部位を円筒状に設けた金属管状体による本発明の実施例を示す図である。
図17】高周波誘導波を受けて発熱する部位を円筒状に設けた金属管状体による本発明の別の実施例を示す断面図である。
図18】高周波誘導波を受けて発熱する部位の近くの外壁に切れ込み部分を設けた金属管状体による本発明の実施例を示す断面図である。
図19】高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面が2分割された金属管状体による本発明の実施例を示す断面図である。
図20】高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面が2分割された金属管状体を樹脂管状体の平板と接合する方法を示す断面図である。
図21】高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面に溝が設けられた金属管状体を樹脂管状体の平板と接合する方法を示す断面図である。
図22】本発明の実施の形態9による実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を用いて、本発明の一実施形態による樹脂材料と金属材料のインサートモールドの構成及び各部分の作用について説明する。
【0012】
図1は非常に簡単な構成のインサートモールド部品外観の一例を示している。樹脂部1とインサート金属部品2とから成っている。
【0013】
図2は前記図1のA−A断面を示していて、一般的に金属部品のインサートモールド部品の構成は、樹脂部1の内部にインサート金属部品2の継手部2aが囲まれるようにして前記インサート金属部品2が固定されている。
【0014】
ここで、前記解決しようとする問題点の項目で述べたように樹脂成型作業時には制御が困難であった、前記継手部2a周囲の樹脂に対して温度と圧力を加える方法について説明する。
【0015】
図3は一般的な樹脂材の温度変化に対する比容積の関係を示す。該グラフは横軸が樹脂温度、縦軸が比容積である、グラフ中の曲線大きく変化している部分が該樹脂の溶融現象(融点)を示していて、比容積が急激に増大する。このように樹脂材は一般に融点で比容積が大きく変化する特性を示す。
【0016】
ここで、閉じた空間内に樹脂材を閉じ込め該樹脂材の温度が上昇する場合を考えると、該樹脂材は融点で比容積が増大するが閉じた空間内に閉じ込められているので該樹脂材料は体積の変化ができず、結局該樹脂材の圧力増加現象として現れる。換言すれば、前記樹脂部1の内部にインサート金属部品2の継手部2a部分の温度を上昇させれば自ずと該部位の圧力が上昇する。
【0017】
この現象を図3のグラフ中の曲線が大きく変化している部分を例にして計算すると、圧縮率βの場合、圧力変化dPに対する比容積νの変化は、
となる。
ここで、P:圧力、ν:比容積であり、
βの逆数を体積弾性係数(bulk modulus)と呼び、Kで表す。
K=1/β なので、
と表すことができる。
この式を変形すると、圧力変化dPが下記の(5)式で表される。
【0018】
このように圧力Pは樹脂材により固有の値を示す体積弾性係数Kと比容積νとを変数とした関数であり、体積弾性係数K及び比容積νから圧力Pを導くことができる。この関係を利用して一例として、図3の特性を示す樹脂材を用いたインサートモールド部品における前記インサート部品2の継手部2a部近傍の樹脂部1を加熱し該部分近傍の樹脂が溶融した場合の圧力上昇値を求める。図3を例にするとν=0.664(mm/kg)、dν=0.686−0.664=0.022(mm/kg)である。また、本例の樹脂材では体積弾性係数K=1.63×109(Pa)なので式1に代入し計算すると、
dP=1.63×109×(0.022/0.664)≒54(MPa)
となる。このようにして、本例の樹脂の場合融点を越える温度を与えることで圧力を上昇させることができることがわかる。
【0019】
つぎに、前記インサート部品2の継手部2a部近傍の樹脂部1の加熱方法について説明する。ここで、前記継手部2a部近傍の樹脂部1を加熱することは前記インサート部品2の継手部2a部を加熱することと等価である。
【0020】
前記インサート部品2の継手部2aは前記樹脂部1の内部に設けられているので、ヒーター等を用いた前記樹脂部1の外部からの加熱が不可能な事は自明である。したがって、前記インサート部品が金属であることに着目し高周波誘導加熱を用いて加熱する方法とすることが最も合理的である。
【0021】
図4に誘導加熱の原理を模式的に示す。なお、本図では前記樹脂部1は図示されていない。前記インサート部品2近傍に高周波誘導コイル6を設け発振機7により交流電流を高周波誘導コイル6に印加すると、例えば高周波誘導コイル6に矢印B方向に電流が流れた場合インサート部品2の高周波誘導コイル6に対面する部分には矢印Bと反対向きの矢印C方向に電流が流れる。該電流がインサート部品2内部を流れるとインサート部品2の固有抵抗との作用で自己発熱することになる。また、このとき前記交流電流が高周波であれば、インサート部品2の表面付近でかつ高周波誘導コイル6に近い部分に電流が集中して流れることが高周波誘導加熱の表皮効果として一般に知られている。
【0022】
<実施の形態1>
図5は本発明の実施例のより実際に近い形態を示している。高周波誘導加熱においては高周波誘導コイル6に印加される電流により前記インサート部品2の外縁の最外周部分2bが集中して加熱されることは前述の原理のとおりであり、該高周波誘導加熱では外縁の最外周部分2bの表面温度が上昇し次いで第一の断面の異なる部位4の温度が上昇する。本発明において、この第一の断面の異なる部位4が「高周波誘導波を受けて発熱する部位」に相当する。
【0023】
本構成では前記外縁の最外周部分2bに位置する第一の断面の異なる部位4の内側に薄肉部分3を設けているため、高周波誘導加熱により加熱され温度が上昇した前記第一の断面の異なる部位4の熱が前記インサート部品2の熱伝導作用によりD方向に伝達しようとした時に、前記内側の薄肉部分3の断面積が小さいため熱抵抗が大きな部位として作用し金属のインサート部品のD方向への熱の伝達を抑制(又は阻害)するので前記第一の断面の異なる部位4の温度が集中的に上昇することになる。
【0024】
つまり、およそ数秒程度の短時間の高周波誘導加熱では前記第一の断面の異なる部位4に接触している前記樹脂部1の樹脂材を局部的に該樹脂の融点以上に加熱することができ、同様に前記内側の薄肉部分3によるD方向への熱の伝達を抑制(又は阻害)する作用により前記インサート部品2の露出端2c部付近の温度を前記樹脂材の融点以下の温度とすることができるので、前記樹脂部1の内部の前記第一の断面の異なる部位4のみを加熱できる。本発明において、この薄肉部分3が「高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位」に相当する。
【0025】
前記の「高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位」としては、溝、孔及び穴の少なくとも何れか1つが形成されるものであっても良い。それによって、熱伝導を抑制するための部位は、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位より断面積が実質的に小さくなる。
【0026】
また、前記の「高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位」は、断面積を小さくする以外にも、少なくとも一部が前記高周波誘導波を受けて発熱する部位4より熱抵抗が大きな材料から構成することができる。例えば、図5に示す薄肉部分3に溝、孔及び穴を形成する場合は、樹脂部1を構成する樹脂の一部が前記の溝、孔及び穴の部分を埋める構造となるため、実質的に高周波誘導波を受けて発熱する部位4より熱抵抗が大きな材料で構成することと同じ機能を有する。また、薄肉部分3の周囲を、樹脂部1との接着性又は密着性が高い別の樹脂で被覆しても良い。さらに、薄肉部分3を形成する別の方法として、前記高周波誘導波を受けて発熱する部位4より熱伝導性の低い別の金属やセラミックを用いて、加締めによる接続、半田付け又はロウ付け等よる接合、若しくはセラミックの噴射又は焼結等を行っても良い。
【0027】
このように本構成では溶融した樹脂が前記露出端2c部から外部に溶出することを防止でき前記インサート部品2表面の樹脂密度が低下することが無く樹脂材の密度低下による気密性能の低下を防止することができる。
【0028】
図6に前記継手部2aの詳細を示す。
高周波誘導加熱により外縁部2b表面の矢印で範囲を示した部分に接触している前記樹脂部1溶融し接合面となる。
【0029】
また、前記薄肉部分3と前記第一の断面積の異なる部位4との断面移行部には概略円弧の一部分形状をなす形状移行部4aが設けられている。形状移行部4aの作用は工学的に良く知られた断面形状が変化する部分への応力集中緩和対応のための形状であり、該部分のみならず断面が変化する部位への形状移行部4aの設定が必要であり、図示していないが以下説明に使用する各図形状例に対しても設定が必要である。
【0030】
図7図5を例とした高周波誘導コイル6の配置例を示している。
高周波誘導加熱では、前記インサート部品2の表面付近でかつ前記高周波誘導コイル6に近い部分に電流が集中するという性質から、高周波誘導コイル6の配置は6−I、6−II、6−III等何れの位置に配置しても成立する。
【0031】
<実施の形態2>
図8に本発明の別の実施例を示す。図8の(a)に示す金属インサート部品は、高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位の薄肉部分3が高周波誘導波を受けて発熱する部位4と同じ断面形状を有する。すなわち、第一の断面積の異なる部位が設定されていない例である。薄肉部分3は高周波誘導波を受けて発熱する部位4と同じ断面厚さであるが、高周波誘導波を受けて発熱する部位4の外縁の最周辺部分2bで高周波誘導コイル6による加熱を受け取る一方で、薄肉部分3において熱抵抗値から必要とされる伝熱長さが十分に確保される場合には本発明の効果を奏することができる。すなわち、高周波誘導加熱により外縁の最周辺部分2bを加熱する時間が十分に確保されるように熱伝導を抑制するため、熱伝導を抑制する部位に相当する薄肉部分3の長さ(L)を長くすればよい。薄肉部分3における熱伝達性は、薄肉部分3の長さ(L)及び部位4の断面厚さと同じ薄肉部分3の厚さ(t)によって決まるため、両者の比(L/t)を大きくする方向で設定することが実用的である。
【0032】
図8の(b)に、薄肉部分3において断面厚さ(t)に対する長さ(L)の比を決めるときの基本的な考え方を模式図で示す。図8の(b)において、加熱点目標温度が加熱点(外縁の最周辺部分2b)の加熱温度に相当し、断面積変化点目標温度が金属インサート部品2と熱伝導を抑制するための部位の薄肉部分3との境界部分の温度に相当する。図8の(b)に示すように、薄肉部分3の断面厚さ(t)が大きくなるに伴い、薄肉部分3の部位の長さ(L)を長くすることが必要である。そこで、両者の比(L/t)と熱伝導を抑制する部位に相当する薄肉部分3の熱伝達性との関係を詳細に検討した結果、L/t≧3以上であるときに、本発明の効果を奏することが分かった。L/tが3未満であると、高周波誘導波を受けて発熱する部位4の外縁の最周辺部分2bからの熱伝導が大きくなり、金属インサート部品2と薄肉部分3との境界部分の周辺に存在する樹脂の溶融が観測された。さらに、本発明は、高周波誘導波を受けて発熱する部位4からの熱が金属インサート部品2へ伝導するのを抑制するため、熱伝導を抑制する部位として金属インサート部品の断面厚さ(T)より薄い厚さ(t)を有する薄肉部分3を設ける必要がある。
【0033】
したがって、本発明の金属インサート部品において図8の(a)に示す構造を有する場合は、下記の(1)式及び(2)式を満たすことが必要である。
【0034】
本実施の形態において、図8に示す薄肉部分3は熱伝導を抑制する機能を向上させるため、断面積が実質的に小さくなるように、さらに、薄肉部分3の内部に溝、孔及び穴の少なくとも何れか1つを形成してもよい。
【0035】
<実施の形態3>
図9は本発明の金属インサート部品において、さらに投錨効果を発現するための部位を有する実施例を示す図である。
図中の各記号、符号が図5と同一のものは図5で開示した部分名称及び作用は同一である。本実施例では第二の断面積が異なる部分5が追加された構成となっている。前記第二の断面積が異なる部分5は前記樹脂部1の内部で樹脂部に覆われていない部分に対して断面積が大きくなっている。このことにより前記樹脂部1に対して前記インサート部品2が外力を受けた場合、該5の部分のアンカー効果により前記樹脂部1と前記インサート部品2のマクロ的なずれを防止している。尚、ここでいうマクロ的とは、およその数値で10μmから数100μm以上のレンジを指している。本発明において、この第二の断面積が異なる部分5が「金属と樹脂との接合面に存在する樹脂との投錨(アンカー)効果を発現するための部位」に相当する。
【0036】
図10に示すように、前記第一の断面積の異なる部位4の断面形状が四角形となっているが該断面形状が楕円であっても三角形その他形状であっても、これまでに開示してきた該部分の作用を鑑みた場合成立することは自明である。
【0037】
同様に、図10中の第二の断面積が異なる部分5についても図10中の第一の断面積の異なる部位4の断面形状が四角形であることと同様に該部分の作用から該図中では台形断面となっているが、該断面形状が楕円であっても三角形その他形状であっても同様に成立することは自明である。
【0038】
図11は前記インサート部品2の前記第一の断面積の異なる部位4と前記薄肉部分3についてその個数が異なる例であり、図中の各記号、符号が図9と同一のものは図9で開示した部分名称及び作用は同一である。
【0039】
図11に示す例では、前記第一の断面積の異なる部位4及び前記薄肉部分3が2個ずつ設けられている例であり、各々の部位の個数が1個以上であればその作用は変わらないので前記図9で開示した例と同様に成立する。
【0040】
本発明の効果を、図9に示す形状例を用いて具体的に検証した。気密性評価の結果、インサート部品を樹脂にインサートしたのみの状態では、気密性が確保できた割合は30%だったが、高周波誘導加熱工程を施すことによって同気密性が確保できた割合が90%に向上した。一方、比較例として、高周波誘導波を受けて発熱する部位、及び前記高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位を有しない従来構造の金属インサート部品を使用して、高周波誘導加熱工程を施して同様の気密性評価を行った。その結果、従来の金属インサート部品構造では金属インサート部品に接触している樹脂に微小ボイドの発生が観測されており、気密性を確保できた割合が35%となった。従来構造では高周波誘導加熱の条件を調整しても、金属と樹脂との接合面で樹脂の溶融を最適条件で行うことが難しく、両者の接合面に存在する微小ボイド等によって密着性又は接着性を向上させる効果がほとんど得られなかったため、気密性を確保できなかったものと考えている。
【0041】
<実施の形態4>
図12は前記インサート部品2の前記第一の断面積の異なる部位4と前記薄肉部分3及び第二の断面積が異なる部分5についてその個数が異なる極端な例であり、前記第一の断面積の異なる部位4が薄肉部分3と同じ断面形状を有する場合である。図12に示す金属インサート部品は、投錨効果を発現するための部位を有する点を除けば、図8に示す金属インサート部品と基本的に同じ構成を有する。高周波誘導加熱の作用同様に、外縁の最周辺部分2bは表面部分で高周波誘導による熱を受け取る一方で、前記薄肉部分3において熱抵抗値から必要とされる伝熱長さが十分確保され、かつ、高周波誘導加熱により外縁の最周辺部分2bを加熱する時間が十分に確保できる。そのため、この構成は、図8に示す金属インサート部品と同じ効果を奏し、さらに投錨効果を発現する部位を有するため、気密性の一層の向上を図ることができる。
【0042】
当然の事ながら図13で示すように、図12中に直線形状で示されていた前記薄肉部分3が波状の形状でも同様に成立することは自明である。
【0043】
<実施の形態5>
加熱に要求される各種要件が満たされる場合に実現できる最も単純な形態を図14及び図15に示す。図14に示すように前記インサート部品2の断面厚さと前記継手部2b部の断面厚さが同じ組み合わせや、図15に示すように前記インサート部品2の断面厚さよりも前記継手部2b部の断面厚さが大きい構成も条件によっては成立する。
【0044】
上記の実施の形態1〜5において、金属インサート部品2は少なくとも薄肉部分3、第一の断面積の異なる部位4及び第二の断面積が異なる部分5に、樹脂部1を構成する樹脂との接着性又は密着性を向上させるために表面処理を施している。この表面処理は公知の既存の種々の技法を用いて行うことが可能である。例えば、金属インサート部品の表面に、特定のトリアジン化合物と、該特定のトリアジン化合物と化学反応が可能な有機化合物とを含む密着剤を用いて接着層を形成するTRI System(株式会社東亜電化の登録商標、住所:岩手県盛岡市玉山区渋民字岩鼻20−7)と称される表面処理技術によって表面処理を施すことができる。この表面処理技術は、金属表面に前記の接着層として機能する化成膜層を形成し、成形時の熱と圧力により発生する化学変化により金属と樹脂とを化学的に結合させることができる手段である。本発明は、トリアジン化合物を用いる前記の表面処理方法の他にも、シラン系、チタニウム系又はアルミニウム系のカップリング剤を用いて金属インサート部品を表面処理する方法を採用しても良い。インサート部品2の継手部2aがアルミニウムの場合は、陽極酸化による表面粗化を表面処理方法として適用することもできる。また、表面処理を必要な箇所だけ施す場合は、その部分に表面処理剤を塗布する方法の他にも、表面処理する必要な箇所だけを露出し、それ以外はマスキングする方法を採用することがっできる。
【0045】
図9に示す形状例について、トリアジン化合物を用いる前記の表面処理方法を適用した金属インサート部品と表面未処理の金属インサート部品との間で、高周波誘導加熱工程を施した後の気密性評価を行った。その結果、表面処理を行った金属インサートは気密性が確保できた樹脂モールド品の割合が上記の90%にあるのに対して、表面未処理の金属インサート部品はその割合が70%である。また、高周波誘導加熱工程を施さない場合、表面未処理の金属インサート部品は気密性が確保できた樹脂モールド品の割合が10%以下と、気密性が大幅に低下する。このように、本発明によれば、表面未処理の金属インサート部品を使用した場合でも、高周波誘導加熱工程を施すことによって、樹脂モールド品の気密性を向上することができ、さらに、金属インサート部品の表面処理を行うことによって、気密性の大幅な向上を図ることができる。
【0046】
上記で説明したように、本発明は外縁の最外周に高周波誘導波を受けて発熱する部位を金属インサート部品の形状に沿って設けた平面状の金属インサート樹脂成型品に適用できるが、それだけでなく、金属管状体の端部外周部及び端部内周部の何れか又はそれらの両外周部に高周波誘導波を受けて発熱する部位を円筒状に設けることにより、金属管状体の一端部を樹脂にインサートさせた構造を有する樹脂成型品にも適用が可能である。以下に、管状体の金属インサート部品に適用した例を説明する。
【0047】
<実施の形態6>
図16に、金属管状体の例として一端が開口された円筒形状を有する金属管について、一端開口部の端部外周部に高周波誘導波を受けて発熱する部位を円筒状に設けた金属インサート部品を示す。図16において、(a)は金属管状体8を樹脂管状体9に挿入し、両者を接合するときの断面図を示し、(b)は金属管状体8を樹脂管状体9を挿入する前の斜視図を示す。
【0048】
図16に示すように、本実施の形態による金属インサート部品は、金属管状体8の一端開口部の端部外周部に設けた高周波誘導波を受けて発熱する部位4、及び発熱する部位4からの熱伝導を抑制するための部位に相当する薄肉部分3を有する。金属管状体8と樹脂管状体9との接合は、例えば、次のようにして行う。金属管状体8を樹脂管状体9に押し込んだ後、高周波誘導コイル6を用いて高周波誘導波を受けて発熱する部位4を加熱することによって、該発熱する部位4と接触する樹脂管状体9の内壁の一部が溶け出す。必要であれば、その状態で引き続き金属管状体8の一端開口部を樹脂管状体の底部内壁10に向けて押し込み、樹脂管状体9の所望の位置まで押し込んだ時点で高周波誘導コイル4による加熱を停止する。その操作によって金属管状体8と樹脂管状体9との締め代の部分には樹脂の溶け込み部が形成され、金属管状体8と樹脂管状体9との接合を行うことができる。
【0049】
図16に示す金属管状体8は、薄肉部分3の存在により高周波誘導波を受けて発熱する部位4からの熱伝導が抑制されるため、樹脂溶け込み部が樹脂管状体9の開口部まで押し出されることなく、高周波誘導波を受けて発熱する部位4が樹脂管状体9の内壁と接触する部分で形成されるだけである。したがって、樹脂溶け込み部の密度低下を招くことがなく、金属管状体8と樹脂管状体9との間の気密性を確保することができる。さらに、図16に示す薄肉部分3は、金属管状体8の他の部分と比べて断面が薄く、金属管状体8と樹脂管状体9との接合時及び使用時に発生する応力に対して応力緩和機能を有する。したがって、本実施の形態による金属インサート部品を用いて、接合信頼性に優れる樹脂成型品を成形することができる。
【0050】
図17に、金属管状体からなる金属インサート部品の変形例として、一端開口部の端部内周部に高周波誘導波を受けて発熱する部位を円周状に設けた金属インサート部品を示す。図17に示す金属管状体11は、その内側に樹脂管状体12が挿入される点で、図16に示す金属インサート部品とは構成及び機能が異なる。
【0051】
図17において、金属管状体11の一端開口部の端部内周部には、高周波誘導波を受けて発熱する部位4が、発明する部位4からの熱伝導を抑制するための部位に相当する薄肉部分3を介して設けられている。金属管状体11と樹脂管状体12との接合は、例えば、次のようにして行う。金属管状体11を樹脂管状体12(又は樹脂管状体12を金属管状体11)に押し込んだ後、高周波誘導コイル6を用いて高周波誘導波を受けて発熱する部位4を加熱することによって、該発熱する部位4と接触する樹脂管状体12の外壁の一部が溶け出す。その操作によって金属管状体11と樹脂管状体12との締め代の部分には樹脂の溶け込み部が形成され、金属管状体11と樹脂管状体12との接合を行うことができる。
【0052】
図17に示す金属管状体11は、薄肉部分3の存在により高周波誘導波を受けて発熱する部位4からの熱伝導が抑制されるため、樹脂溶け込み部が樹脂管状体12の開口部を超えて押し出されることなく、高周波誘導波を受けて発熱する部位4が樹脂管状体12の外壁と接触する部分で形成されるだけである。したがって、図16に示す樹脂インサート部品と同じように、樹脂溶け込み部の密度低下を招くことがなく、金属管状体11と樹脂管状体12との間の気密性を確保することができる。
【0053】
図16又は図17において、高周波誘導波を受けて発熱する部位4は、金属管状体8の端部外周部又は金属管状体11の端部内周部にそれぞれ形成されているが、本発明においては金属管状体8、11の両外周部に設けてもよい。発熱する部位4を金属管状体8、11の両外周部に設ける場合は、気密性の確保という本発明の効果を奏するだけでなく、発熱する部位4の断面積又は体積が大きくなるため高周波誘導コイル6による加熱効率を高めることができる。
【0054】
<実施の形態7>
図18は、金属管状体からなる金属インサート部品の例として、金属管状体の一端部に切れ込みを形成することによって、高周波誘導波を受けて発熱する部位と、前記発熱する部位からの熱伝導を抑制する部位とを、それぞれ分離して形成した金属インサート部品を示す。図18において、(a)は金属管状体13を樹脂管状体14に加熱と同時に押し込むときの断面図を示し、(b)は樹脂の溶かし込み後の状態を示す断面図である。
【0055】
図18において、金属管状体13には端部開口部近くで切れ込み部分15が設けられる。この切れ込み部分15は、金属管状体13の断面積を小さくする効果があるため、実質的に端部高周波を受けて発明する部位からの熱伝導を抑制する部位と同じ機能を有する。また、切れ込み部分15によって金属管状体13から一部分離されて形成される金属分離端部16が、高周波誘導コイル6を用いて高周波誘導波を受けて発熱する部位に相当する。
【0056】
本実施の形態において、金属管状体13と樹脂管状体14との接合は、例えば、次のようにして行う。図18の(a)に示すように、樹脂管状体14の底部近くに高周波誘導コイル6を設置し、高周波誘導コイル6による加熱と同時に金属管状体13を樹脂管状体14に押し込む。次いで、図18の(b)に示すように、金属管状体13が樹脂管状体14の底部近くに到達したとき、切れ込みによって分割された金属分離端部16は高周波誘導コイル6によって加熱されるため、樹脂管状体14の側部内壁一部及び底部内壁17が溶融し、樹脂の溶け込み部が形成され、金属管状体13と樹脂管状体14との接合を樹脂管状体14の底部内壁で行うことができる。ここで、金属分離端部16は金属管状体13の円周方向に開口部最先端部から突出して形成されており、樹脂溶け込み部18が分割された金属分離端部16の長さの範囲内で樹脂管状体14の底部円周状に均一に形成される。加えて、切れ込み部分15の存在により高周波誘導波を受けて発熱する部位に相当する金属分離端部16からの熱伝導が抑制されるため、樹脂溶け込み部18は樹脂管状体13の上部方向に押し出されることなく、金属分離端部16が樹脂管状体13の側部内壁一部及び底部内壁17と接触する部分だけで形成される。したがって、樹脂溶け込み部の密度低下を招くことがなく、金属管状体13と樹脂管状体14との接合が強固に行われ、両者の間の気密性を十分に確保することができる。
【0057】
さらに、図18に示す金属分離端部16は薄肉で形成されるため、金属管状体13と樹脂管状体14との接合時及び使用時に発生する応力に対して応力緩和機能を有する。したがって、本実施の形態による金属インサート部品を用いることによって、接合信頼性に優れる樹脂成型品を成形することができる。
【0058】
図18には切れ込み部分15を金属管状体14の外壁に設ける例を示したが、図17に示す場合と同じように金属管状体の内部に別の樹脂管状体を挿入する場合には、切れ込み部分15を金属管状体16の内壁に設けてもよい。その構造を有する金属管状体を用いて成形される樹脂成型品は、図18に示す例と同じように、気密性の確保及び接合部分の信頼性向上という効果を得ることができる。また、本実施の形態においては、実質的に高周波を受けて発明する部位からの熱伝導を抑制する部位と同じ機能を有する部分として、金属管状体の外壁又は内壁に切れ込み部分15を設ける代わりに、溝又は凹部を形成しても良い。
【0059】
<実施の形態8>
図19に、金属インサート部品の別の例として、高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面が2以上に分割された金属管状体を示す。図19において、(a)は金属管状体19を樹脂管状体20に加熱と同時に押し込み操作を行うときの断面図を示し、(b)は樹脂の溶かし込み後の状態を示す断面図である。
【0060】
図19に示す金属インサート部品には、熱伝導を抑制する部位と同じ機能を有する部分に相当する薄肉部分が、金属管状体の端部開口部近くに形成されていない。分割されたそれぞれの金属薄肉部分21a及び21bを含む金属薄肉部分21は、高周波誘導波を受けて発熱する部位の最先端部が最も薄い断面厚さを有し、金属管状体に分割根元部分に向けて、ほぼ同じか又はやや大きくなった断面厚さを有する。したがって、本実施の形態では、図8に示す金属インサート部品の例と基本的に同じ考え方に基づいて、高周波誘導波を受けて発熱する部位の外縁の最周辺部分2bで高周波誘導コイル6による加熱を受け取る一方で、分割された金属薄肉部分21aにおいて熱抵抗値から必要とされる伝熱長さが十分に確保されるように、金属薄肉部分21aの長さを規定することが必要である。すなわち、高周波誘導加熱により外縁の最周辺部分2bを加熱する時間が十分に確保されるように熱伝導を抑制するため、熱伝導を抑制する部位に相当する金属薄肉部分21aの長さ(L)を長くする。金属薄肉部分21aにおける熱伝達性は、金属薄肉部分21aの長さ(L)だけでなく、熱伝導を抑制する部位において最も薄い金属分離部分21aの先端部分の断面厚さ(t)によっても影響を受けるため、両者の比(L/t)を大きくする方向で設定することによって、本願発明の効果を奏することができる。熱伝導性は最も薄い断面厚さを有する部分が律速になることから、金属薄肉部分21aにおいて最も薄い断面厚さを有する先端部分の厚さ(t)に着目して、金属薄肉部分21aの長さ(L)との比を規定することが実用的である。
【0061】
金属薄肉部分21aの先端部分の断面厚さ(t)に対する長さ(L)の比を決めるときの基本的な考え方は、基本的に図8の(b)に示す模式図と同じであり、本実施の形態においても、両者の比(L/t)と熱伝導を抑制する部位に相当する金属薄肉部分21aの熱伝達性との関係を詳細に検討した結果、L/t≧3以上であるときに、本発明の効果を奏することが分かった。L/tが3未満であると、高周波誘導波を受けて発熱する部位の外縁の最周辺部分2bからの熱伝導が大きくなり、金属管状体19の上部方向、すなわち分割根元部分まで溶融樹脂の這い上がりが観測された。また、本発明は、高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱が管状体の金属インサート部品へ伝導するのを抑制するため、金属分離部分21aの先端部分の断面厚さ(t)を、熱伝導を抑制する部位として金属管状体の断面厚さ(T)より薄くする必要がある。
【0062】
したがって、本実施の形態の金属インサート部品において図19に示す構造を有する場合は、下記の(3)式及び(4)式を満たすことが必要である。
【0063】
本実施の形態においては、高周波誘導波を受けて発熱する部位において2分割された端部断面の中で、高周波誘導コイルにより近く位置する金属薄肉部分21aについてL/tを規定することが必要である。図19には、高周波誘導コイルにより近く位置する金属薄肉部分21aが、別の金属薄肉部分21bより薄い厚さを有する例を示しているが、逆に、薄肉部分21bより厚くなっても、上記(3)及び(4)の関係式を満たすことによって本発明の効果を奏することができる。分割された金属薄肉部分21a及び21bの両者は、本発明の効果を奏するため、基本的に上記(3)及び(4)の関係を満たすことが好ましいが、少なくとも高周波誘導コイルにより近くに位置する金属薄肉部分21aは上記(3)及び(4)の関係を満たす必要がある。
【0064】
本実施の形態において、金属管状体19と樹脂管状体20との接合は、例えば、次のようにして行う。図19の(a)に示すように、樹脂管状体20の底部近くに高周波誘導コイル6を設置し、高周波誘導コイル6による加熱と同時に金属管状体19を樹脂管状体20に押し込む。次いで、図19の(b)に示すように、金属管状体19が樹脂管状体20の底部近くに到達したとき、分離された金属薄肉部分21の外周の最周辺部分2b(高周波誘導波を受けて発熱する部位に相当する部分)は高周波誘導コイル6によって加熱され始めるため、樹脂管状体20の側部内壁の一部及び底部内壁22が溶融し、樹脂の溶け込み部23aが形成され、金属管状体19と樹脂管状体20との接合を樹脂管状体20の底部内壁22で行うことができる。ここで、金属薄肉部分21aは金属管状体19の円周方向に同一平面内で形成されており、樹脂溶け込み部23aが金属薄肉部分21aの端部で樹脂管状体20の底部円周状に一様に形成される。
【0065】
また、分割によって形成されたもう一つに金属薄肉部分21bについても、端部が高周波誘導コイル6を用いて加熱され、樹脂管状体20の底部内壁22を溶融させることによって、樹脂の溶け込み部23bが金属薄肉部分21bの端部で樹脂管状体20の底部内壁円周状で一様に形成される。加えて、金属薄肉部分の長さの断面厚さに対する比(L/t)が大きく、高周波誘導波を受けて発熱する部位に相当する金属薄肉部分21a及び21bのそれぞれの最周辺部分2bからの熱伝導が抑制されるため、樹脂溶け込み部23a及び23bは樹脂管状体13の上部方向に押し出されることなく、金属薄肉部分21a及び21bの先端部と樹脂管状体19の底部内壁22との接触部分及びその近傍だけに形成される。したがって、樹脂溶け込み部の密度低下を招くことがなく、金属管状体19と樹脂管状体20との接合が強固に行われ、両者の間の気密性を十分に確保することができる。
【0066】
さらに、図19に示す金属箔肉部分21a及び21bは、金属管状体19と樹脂管状体20との接合時及び使用時に発生する応力に対して応力緩和機能を有するため、本実施の形態による金属インサート部品を用いることによって、接合信頼性に優れる樹脂成型品を成形することができる。また、図19に示す接合方法においては、樹脂溶かし込み時に金属管状体19の内部にガスが溜まりやすいため、そのガスを逃すための微小な貫通孔又は貫通溝を金属薄肉部分21bの何れかの場所に設けることによって接合強度の大幅な向上を図ることができる。
【0067】
図20は、図19に示す金属インサート部品と同じ形状を有する金属管状体19を用い、金属管状体19の内部に樹脂管状体24を押し込み、高周波誘導コイル6によって金属薄肉部分21a及び21bの先端部を樹脂管状体24の外周に設けた平板25に接合する方法を示す図である。図20において、(a)は金属管状体19を樹脂管状体24に加熱と同時に押し込み操作を行うときの断面図を示し、(b)は樹脂の溶かし込み後の状態を示す断面図である。
【0068】
図20に示す接合方法は、金属管状体19を接合する樹脂管状体24の構造が異なるだけで、接合方法は基本的に図19に示すものと同じである。すなわち、金属薄肉部分21aは、分割によって金属管状体19の端部開口部の円周方向に形成されており、樹脂溶け込み部23aが金属薄肉部分21aの端部で樹脂管状体24の外周に設けた平板25に円周状で一様に形成される。また、分割によって形成されたもう一つに金属薄肉部分21bについても、端部が高周波誘導コイル6によって加熱されて樹脂管状体24の外周に設けたベース部分25を溶融させることによって、樹脂の溶け込み部23bが金属薄肉部分21bの端部で樹脂管状体24の外周に設けた平板25に円周状で一様に形成される。
【0069】
図20において、金属薄肉部分21aと21bは、それぞれ気密確保部及び固定部として機能する。さらに、金属薄肉部分21aは薄肉で形成されるため、接合部に発生する応力が緩和されるという効果が得られる。したがって、図20に示す成形方法によって得られる樹脂成型品は、図19と同じように、気密性が確保できるだけでなく、優れた信頼性を有する。
【0070】
図19及び図20には、金属管状体19において、高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面が2分割された例を示したが、本実施の形態においては、3分割以上でもよい。また、高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面を切れ込みによって分割する代わりに、溝又は凹部を形成することができる。図21には、高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面に溝を設けた金属インサート部品の例を示す。
【0071】
図21は、図20に示すものと同じ形状を有する樹脂管状体24を用い、金属管状体26の内部に樹脂管状体24を押し込み、高周波誘導コイル6を用いて溝27の形成によって作られた金属薄肉部分28a及び28bの先端部を樹脂管状体24の外周に設けた平板25に接合する方法を示す図である。図21において、(a)は金属管状体26を樹脂管状体24に加熱と同時に押し込み操作を行うときの断面図を示し、(b)は樹脂の溶かし込み後の状態を示す断面図である。ここで、金属薄肉部分28a及び28bにおいて、少なくとも28aは前記(3)及び(4)の関係式を満たすことが必要である。
【0072】
図21に示す接合方法は、樹脂管状体24において高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面の構造が異なるだけで、接合方法は基本的に図20に示すものと同じである。すなわち、図21の(b)に示すように、金属薄肉部分28aは金属管状体26の円周方向に形成されており、樹脂溶け込み部29aが金属薄肉部分28aの端部で樹脂管状体24の外周に設けた平板25に円周状で均一に形成される。また、溝27の形成によって形成されたもう一つに金属薄肉部分28bについても、端部が高周波誘導コイル6によって加熱されて樹脂管状体24の外周に設けた平板25を溶融させることによって、樹脂の溶け込み部29bが金属薄肉部分28bの端部で樹脂管状体24の外周に設けたベース部分25に円周状で一様に形成される。
【0073】
したがって、図21に示す成形方法によって得られる樹脂成型品は、図20と同じように、気密性が確保できるだけでなく、優れた信頼性を有する。また、図21に示す接合方法の場合も、図19及び図20に示す接合方法と同様に、樹脂溶かし込み時に金属管状体26の内部にガスが溜まりやすいため、そのガスを逃すための微小な貫通孔又は貫通溝を金属薄肉部分28bの何れかの場所に設けることによって接合強度の大幅な向上を図ることができる。
【0074】
<実施の形態9>
図19図21に示す管状体の金属インサート部品は、本願発明の効果を奏するため、前記(3)及び(4)の関係式を満たす必要がある。しかしながら、金属インサート部品として、例えば、図22の(a)及び(b)に示す構造を有する金属管状体は、高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面が図19図21に示す金属管状体と同じ構造を有するものであるが、前記(3)及び(4)の関係式を満たさなくても、本発明の効果を奏することができる。図22において、(a)は高周波誘導波を受けて発熱する部位の端部断面が2つに分割された金属管状体19を示し、(b)は溝の形成によって2つの金属薄肉部分が形成された金属管状体26を示す。
【0075】
図22の(a)及び(b)に示す金属管状体は、高周波誘導波を受けて発熱する部位よりも小さな断面積を有する部位となる薄肉部分3を有し、この薄肉部分3によって高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制することができる。そのため、高周波誘導波による樹脂の溶け込み部が接合面の外側に押し出されるのを防止することができ、溶け込み部の形成を容易に制御することが可能となる。それによって接合部の密着性又は接着性を高め、樹脂成型品の気密性を大幅に向上することができる。
【0076】
前記実施の形態6〜9において説明した図15図22に示す金属管状体からなる金属インサート金属は、前記実施の形態1〜4の場合と同じように、少なくとも樹脂との接合部に該当する部分に表面処理を施すことによって、樹脂との接着性又は密着性を向上させることができる。この表面処理は、前記実施の形態1〜4の場合と同様に公知の既存の種々の技法を用いて行うことが可能である。
【0077】
以上のように、本発明の金属インサート部品は高周波誘導加熱工程を施すことによって樹脂との接合面の密着性又は接着性が高まり、樹脂成型品の気密性を大幅に向上することができる。また、本発明の金属インサート部品は、高周波誘導波を受けて発熱する部位及び外高周波誘導波を受けて発熱する部位からの熱伝導を抑制するための部位の構造、形状又は設置場所等を最適化して変更することにより、様々な構造や用途を有する各種インサート樹脂成型品へ適用を広げることができる。それによって、一般家電用途だけでなく、自動車及び産業機器等の高信頼性が要求される用途に適用できる各種インサート成形品を製造することができるため、その有効性は極めて高い。
【符号の説明】
【0078】
1 樹脂部
2 インサート部品
2a 継手部
2b 外縁の最外周部分
2c 露出端
3 薄肉部分
4 第一の断面積の異なる部位(高周波誘導波を受けて発熱する部位)
5 第二の断面積が異なる部分(アンカー効果を発現する部位)
6 高周波誘導コイル
7 高周波発振機
8、11、13、19、26 金属管状体
9、12、14、20、24 樹脂管状体
10 樹脂管状体の底部内壁
15 切れ込み部分
16 金属分離端部
17、22 樹脂管状体の底部内壁
18、23、29 樹脂溶け込み部
21、28 金属薄肉部分
25 樹脂管状体の外周に設けた平板
27 溝
図1
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