特許第6615483号(P6615483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6615483
(24)【登録日】2019年11月15日
(45)【発行日】2019年12月4日
(54)【発明の名称】温水器
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20060101AFI20191125BHJP
【FI】
   F24H1/10 303A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-91872(P2015-91872)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-205779(P2016-205779A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】内藤 篤身
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−196551(JP,A)
【文献】 特開平08−302774(JP,A)
【文献】 特開2012−007376(JP,A)
【文献】 特開2009−270367(JP,A)
【文献】 特開2003−130469(JP,A)
【文献】 特開平03−066334(JP,A)
【文献】 特開2002−013172(JP,A)
【文献】 特開平04−203752(JP,A)
【文献】 実開昭60−004843(JP,U)
【文献】 特開2001−050591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/10
H05B 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出部から吐出される水を加熱するための加熱部と、
前記加熱部内の水位に関する情報を検出するための水位検出部と、
前記加熱部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
吐出開始の指示を受信したときに前記加熱部内の水位が所定の下限水位以上の場合、前記加熱部による加熱を開始させ、
吐出開始の指示を受信したときは前記加熱部内の水位は前記下限水位未満で、吐出開始の指示を受信した後に前記加熱部内の水位が前記下限水位以上になった場合、前記加熱部による加熱を開始させないことを特徴とする温水器。
【請求項2】
吐出開始の指示を受信したときは前記加熱部内の水位は前記下限水位未満で、吐出開始の指示を受信した後に前記加熱部内の水位が前記下限水位以上になった場合において、前記加熱部内の水位が前記下限水位以上である状態が所定時間以上継続したとき、前記制御部は、前記加熱部による加熱を開始させることを特徴とする請求項1に記載の温水器。
【請求項3】
前記加熱部による加熱中に、前記加熱部内の水位が前記下限水位未満になった場合、前記制御部は前記加熱部による加熱を停止させることを特徴とする請求項1または2に記載の温水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水器に関する。
【背景技術】
【0002】
水栓や温水洗浄便座に用いられる瞬間加熱式の温水器が知られている。この温水器は、ヒータを有する加熱部を備え、加熱部内を通過する水をヒータにより瞬間的に加熱する。
【0003】
瞬間加熱式の温水器に用いられるヒータは出力が大きいため、加熱部内を水が流れていない状態でヒータが作動する(すなわち空焚きする)と、ヒータが過加熱状態となり故障する。そのため、水位センサにより加熱部内の水位を検出し、加熱部内の水位が所定の水位以上になった場合にヒータを作動させる温水器が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−4843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の温水器は、水の吐出中に加熱部内の水位が所定の水位未満から所定の水位以上になった場合も、加熱部による加熱を開始する。しかしながら、加熱部内の水位が変動するときには空気や空気が混じった水が加熱部内に流れ込んでいる可能性が高いため、上述のように吐出中に加熱部内の水位が所定の水位以上になった場合に加熱部による加熱を開始すると空焚きとなる危険性がある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、空焚きを抑止しうる温水器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の温水器は、吐出部から吐出される水を加熱するための加熱部と、加熱部内の水位に関する情報を検出するための水位検出部と、加熱部を制御する制御部と、を備える。制御部は、吐出開始の指示を受信したときに加熱部内の水位が所定の下限水位以上の場合、加熱部による加熱を開始させ、吐出開始の指示を受信したときは加熱部内の水位は下限水位未満で、吐出開始の指示を受信した後に加熱部内の水位が下限水位以上になった場合、加熱部による加熱を開始させない。
【0008】
吐出開始の指示を受信したときに下限水位未満であった水位が吐出中に下限水位以上になった場合、空気が流れ込んだことにより加熱部内の水位が上下動し、一時的に下限水位以上になった可能性がある。つまり、配管内に残っていた空気が抜けきっていない可能性がある。これに対し、上述の態様によると、吐出開始の指示を受信したときは下限水位未満であった水位が吐出開始の指示を受信した後に下限水位以上になった場合は加熱部による加熱が開始されない。これにより、空気が抜けきっていない状態での加熱部による加熱すなわち空焚きが抑止される。
【0009】
吐出開始の指示を受信したときは加熱部内の水位は下限水位未満で、吐出開始の指示を受信した後に加熱部内の水位が下限水位以上になった場合において、加熱部内の水位が下限水位以上である状態が所定時間以上継続したとき、制御部は、加熱部による加熱を開始させてもよい。この場合、いつまでも水が温まらずに使用者が不快な思いをするのが抑止される。
【0010】
加熱部による加熱中に、加熱部内の水位が下限水位未満になった場合、制御部は加熱部による加熱を停止させてもよい。この場合、空焚きがさらに抑止される。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱部の故障を抑止しうる温水器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施の形態に係る温水器を備える水栓システムを示す斜視図である。
図2】第1の実施の形態に係る温水器を示す模式図である。
図3図2の制御部の機能および構成を示すブロック図である。
図4】水栓システムの動作を示すフローチャートである。
図5】水栓システムの動作を示すフローチャートである。
図6】水栓システムの動作を示すフローチャートである。
図7】第2の実施の形態に係る温水器を示す模式図である。
図8】水栓システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る温水器10を備える水栓システム100を示す斜視図である。水栓システム100は、洗面所やトイレなどに設置され、手洗いなどに使用される。水栓システム100は、温水器10と、吐水管12と、洗面器14と、人体検知センサ16と、を備える。人体検知センサ16は、吐水管12に取り付けられる。なお、人体検知センサ16は、洗面器14やその他の場所に取り付けられてもよい。人体検知センサ16は、吐水管12の吐水口12aの下方の領域に差し出される使用者の手を非接触で検知する。人体検知センサ16は、手を検知している間、ケーブル18を経由して温水器10に信号を送る。
【0016】
温水器10は、壁に取り付けられる。温水器10は、人体検知センサ16が手を検知している間、吐水管12にホース20を介して水を供給する。温水器10は特に、給水管(不図示)から壁に取り付けられた止水栓(不図示)を経由して供給される水を温めてから吐水管12に供給する。吐水管12は、温水器10において温められた水を吐水口12aから吐水する。洗面器14は、壁に取り付けられる。洗面器14は、吐水管12から吐水された水を受けて排水管(不図示)へ排水する。
【0017】
図2は、温水器10を示す模式図である。温水器10は、入水管30と、電磁弁32と、水位センサ36と、加熱部40と、出水管46と、制御部50と、を備える。
【0018】
止水栓から供給される水は、給水部30aと、入水管30と、加熱部40と、出水管46と、吐出部46aと、をこの順に通って吐水管12に供給される。したがって、これらは温水器10内の水路52を構成する。
【0019】
電磁弁32は入水管30に設けられる。なお、電磁弁32は、出水管46に設けられてもよい。電磁弁32は、制御部50から開弁指示を受けると開弁する。また電磁弁32は、制御部50から閉弁指示を受けると閉弁する。電磁弁32が開くと水路52を水が流れ、吐水管12に水が供給され、吐水管12の吐水口12aから吐水される。電磁弁32が閉じると水路52の水の流れが止まり、吐水管12に水が供給されなくなり、吐水管12の吐水口12aからの吐水が止まる。つまり電磁弁32は水路52を開閉する。
【0020】
水位センサ36は、加熱部40内の絶対的な水位あるいは加熱部40内の所定の基準高さに対する水位などの水位に関する情報(以下、「水位情報」と呼ぶ)を検出する。
【0021】
加熱部40は、いわゆる瞬間式の加熱器である。加熱部40は、その内部に電気式のヒータ40aを有する。加熱部40は、制御部50から「加熱指示」を受けるとヒータ40aによる加熱を開始する。入水管30から加熱部40内に流れ込んだ水は、加熱部40内を流れる間にヒータ40aにより加熱されて所定の温度(例えば30度)に温められ、出水管46に流れ出る。加熱部40は、制御部50から「停止指示」を受けるとヒータ40aによる加熱を停止する。
【0022】
制御部50は、電磁弁32による水路52の開閉と、加熱部40による加熱と、を制御する。
【0023】
図3は、制御部50の機能および構成を示すブロック図である。これら各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0024】
制御部50は、受信部72と、水位情報取得部80と、開閉制御部74と、加熱制御部76と、を含む。受信部72は、人体検知センサ16から信号を受け取る。水位情報取得部80は、受信部72が信号を受け取ると、水位センサ36からケーブル58を介した水位情報の取得を開始し、所定の間隔(例えば0.1秒間隔)で取得し続ける。
【0025】
開閉制御部74は、電磁弁32の開閉を制御する。開閉制御部74は、受信部72が信号を受け取ると、ケーブル54を介して電磁弁32に開弁指示を送り、電磁弁32に開弁動作を開始させる。したがって、受信部72が受け取る信号は、吐出開始の指示であるといえる。開閉制御部74は特に、水位情報取得部80が水位情報の取得を開始した直後に、電磁弁32に開弁指示を送る。また、開閉制御部74は、受信部72が信号を受け取らなくなると、電磁弁32に閉弁指示を送り、電磁弁32に閉弁動作を開始させる。なお、開閉制御部74は、受信部72が信号を受け取らなくなり、かつ、後述するように加熱制御部76が加熱部40に停止指示を送った後に、電磁弁32に閉弁指示を送ってもよい。
【0026】
加熱制御部76は、加熱部40による加熱を制御する。加熱制御部76は、水位情報取得部80が水位情報を取得するたびに、その水位情報に基づいて、加熱部40内の水位が所定の水位(以下、「下限水位」と呼ぶ)以上であるか否かを判定する。ここで、下限水位とは、例えばヒータ40a全体が加熱部40内の水に浸される水位、すなわち加熱部40が空焚きするのを抑止できる水位をいう。加熱制御部76は特に、受信部72が信号を受け取ったとき(すなわち水位情報取得部80が水位情報の取得を開始したときであって電磁弁32が開弁する前)の加熱部40内の水位が下限水位以上である場合、ケーブル55を介して加熱部40に加熱指示を送り、加熱部40による加熱を開始させる。一方、加熱制御部76は、受信部72が信号を受け取ったときの加熱部40内の水位が下限水位未満である場合、加熱部40に加熱指示を送らない。つまり、加熱部40による加熱を開始させない。
【0027】
また加熱制御部76は、受信部72が信号を受け取ったときは下限水位以上であった水位がその後に下限水位未満になった場合、ケーブル55を介して加熱部40に停止指示を送り、加熱部40による加熱を停止させる。一方、加熱制御部76は、受信部72が信号を受け取ったときは下限水位未満であった水位がその後に下限水位以上になった場合、加熱部40に加熱指示を送らない。この場合、引き続き加熱されていない水が吐出される。
【0028】
また、加熱制御部76は、受信部72が信号を受け取らなくなると、加熱部40に停止指示を送り、加熱部40による加熱を停止させる。
【0029】
以上のように構成された温水器10を備える水栓システム100の動作を説明する。
図4は、温水器10を備える水栓システム100の吐水開始時の動作を示すフローチャートである。使用者が吐水管12の吐水口12aの下方の領域に手を差し出すと、人体検知センサ16はこれを検知する(S10)。水位情報取得部80は、受信部72が人体検知センサ16から信号を受け取ると、水位センサ36からの水位情報の取得を開始する(S12)。開閉制御部74は電磁弁32に開弁指示を送り(S14)、電磁弁32は開弁する(S16)。受信部72が信号を受け取ったときであって電磁弁32の開弁前(すなわち温水器10の吐出開始前)に水位センサ36によって検出される加熱部40内の水位が下限水位以上の場合(S18のY)、加熱制御部76は加熱部40に加熱指示を送る(S20)。加熱部40は、その内部を通る水の加熱を開始する(S22)。すると、加熱部40で加熱されて温められた水が温水器10から吐水管12に吐出され、吐水口12aから吐水される。水位センサ36によって検出される加熱部40内の水位が下限水位未満の場合(S18のN)、S20、S22はスキップされる。つまり、加熱制御部76は加熱部40に加熱指示を送らず、加熱部40は加熱を開始しない。この場合、温められていない水が温水器10から吐水管12に吐出され、吐水される。
【0030】
図5は、温水器10を備える水栓システム100の吐水中の動作を示すフローチャートである。加熱部40が水を加熱している場合において(S30のY)、加熱部40内の水位が下限水位未満になると(S32のY)、加熱制御部76は加熱部40に停止指示を送り(S34)、加熱部40は加熱を停止する(S36)。加熱部40が水を加熱している場合において(S30のY)、加熱部40内の水位が下限水位以上の場合(S32のN)、S30に戻る。つまり、加熱制御部76は、加熱部40による加熱を継続させる。加熱部40が水を加熱していない場合(S30のN)、S32〜S36はスキップされる。したがってこの場合、加熱制御部76は加熱部40に指示は送らない。つまり、仮に受信部72が信号を受け取ったとき(すなわち吐出開始前)は下限水位未満であった水位がその後(すなわち吐出中)に下限水位以上になっても、加熱制御部76は加熱部40に加熱指示を送らない。
【0031】
図6は、温水器10を備える水栓システム100の吐水終了時の動作を示すフローチャートである。使用者が吐水管12の吐水口12aの下方の領域から手を引っ込めると、人体検知センサ16が使用者の手を検知していない状態になる(S40)。加熱部40が水を加熱している場合(S42のY)、加熱制御部76は、加熱部40に停止指示を送り(S44)、加熱部40は加熱を停止する(S46)。加熱部40が水を加熱していない場合(S42のN)、S44、S46はスキップされる。開閉制御部74は、電磁弁32に閉弁指示を送り(S48)、電磁弁32は閉弁する(S50)。すると、温水器10から吐水管12に水が吐出されなくなり、吐水管12からの吐水は止まる。
【0032】
以上説明した実施の形態に係る温水器10によると、加熱制御部76は、加熱部40の水位が受信部72が信号を受け取ったときから下限水位以上であった場合は加熱部40に加熱指示を送り、受信部72が信号を受け取ったときは下限水位未満であった水位がその後に下限水位以上になった場合は加熱部40に加熱指示を送らない。ここで、施工やメンテナンスの直後には、電磁弁32を開閉すると、施工時やメンテナンス時に配管内に残った空気が温水器10に流れ込み、加熱部40内に空気や空気が混じった水が流れ込む。この場合、受信部72が信号を受け取ったときは下限水位未満であった水位が下限水位以上になっても、電磁弁32の開弁されて空気が流れ込んだことにより加熱部40内の水位が上下動し、一時的に下限水位以上になった可能性もある。つまり、配管内に残っていた空気が抜けきっていない可能性がある。このような状態で加熱部40による加熱を開始すると空焚きになる虞がある。これに対し、本実施の形態に係る温水器10では、加熱制御部76は、上述のように受信部72が信号を受け取ったときは下限水位未満であった水位がその後に下限水位以上になった場合は加熱部40に加熱指示を送らないため、加熱部40の空焚きを抑止できる。
【0033】
また、実施の形態に係る温水器10によると、加熱中に、加熱部40内の水位が下限水位未満になった場合、加熱部40に停止指示を送る。ここで、例えば、配管内に残っていた空気が抜けきっていない状態で使用者が手を差し出したり手を引っ込めたりすると、本来的には加熱部40内の水位が下限水位未満であるにもかかわらず、加熱部40内の水位が上下動することによって、偶然、加熱水以上と判定されてしまうことがある。これに対し、本実施の形態に係る温水器10では、加熱制御部76は、上述のように加熱部40内の水位が下限水位未満になった場合に、加熱部40に停止指示を送る。これにより、加熱部40による加熱が停止され、空焚きが抑止される。
【0034】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態に係る温水器110を示す模式図である。温水器110は、入水管30と、電磁弁32と、流量調整部134と、水位センサ36と、加熱部40と、出水管46と、制御部150と、流量センサ138と、を備える。
【0035】
流量調整部134は、入水管30に設けられる。流量調整部134は、減圧弁により構成され、入水管30を流れる水の流量が目標流量Q(L/min)(例えば2(L/min))となるよう調整する。これにより、入水管30や加熱部40を含む水路52を流れて吐出部46aから吐出される水の流量、ひいては吐水管12の吐水口12aから吐水される水の流量が調整される。なお、目標流量Qは、例えば流量調整部134の製造時に決まる値であってもよい。また例えば、流量調整部134は、目標流量Qを変えられる可変式の流量調整部であってもよい。この場合、温水器10を施工する作業者が目標流量Qを設定しても、温水器10を使用するユーザが目標流量Qを設定してもよい。
【0036】
水路52、特に入水管30を水が流れる場合、すなわち流量調整部134を水が通過する場合、流量調整部134によって調整されて目標流量Qと略同一の流量の水が入水管30を流れる。この場合、流量センサ138によって目標流量Qと略同一(誤差±A%以内)の流量が測定される。一方、入水管30を空気あるいは空気が混じった水が流れる場合、すなわち流量調整部134を空気あるいは空気が混じった水が通過する場合、空気と水の動粘度の差により、流量調整部134によって目標流量Qには調整されず、目標流量Qよりも大きい流量の空気あるいは空気が混じった水が入水管30を流れる。この場合、流量センサ138によって目標流量Qよりも大きい流量が測定される。発明者が行った実験によると、入水管30を空気が流れる場合、すなわち流量調整部134を空気が通過する場合、目標流量Qの約2倍(すなわち約2×Q(L/min))の空気が流れることが確認された。
【0037】
流量センサ138は、入水管30に設けられる。流量センサ138は、入水管30を流れる水の流量、すなわち加熱部40に流れ込む水の流量を測定する。流量センサ138は、例えば羽根車式の流量センサであり、水が流れたときの羽根車の回転数から流量を算出する。流量センサ138は、空気など、水以外の流体にも反応し、その流量を測定してしまう。したがって、流量センサ138が流体の流れを検知した場合(すなわちゼロより大きい流量を測定した場合)でも、水ではなく、空気あるいは空気が混じった水が入水管30内を流れ、加熱部40内に流れ込んでいることがある。
【0038】
制御部150は、受信部72と、水位情報取得部80と、開閉制御部74と、流量情報取得部178と、加熱制御部76と、を含む。流量情報取得部178は、電磁弁32の開弁後の所定のタイミング(例えば開閉制御部74が電磁弁32に開弁指示を送ってから0.1秒後)に、流量センサ138によって取得される流量に関する情報をケーブル156を介して取得する。
【0039】
加熱制御部76は、第1の実施の形態と同様に水位情報取得部80が水位情報を取得するたびに、加熱部40内の水位が下限水位以上であるか否かを判定する。また、加熱制御部76は、流量情報取得部78が取得した流量が後述のように設定される閾値THh(L/min)よりも小さいか否かを判定する。
【0040】
加熱制御部76は、受信部72が信号を受け取ったとき(すなわち水位情報取得部80が水位情報の取得を開始したときであって電磁弁32が開弁する前)の加熱部40内の水位が下限水位以上で、かつ、電磁弁32の開弁後の流量が閾値THhよりも小さい場合、加熱部40に加熱指示を送り、加熱部40による加熱を開始させる。一方、加熱制御部76は、「加熱部40内の水位が下限水位未満の場合」または「流量が閾値THh以上の場合」の少なくとも一方が成立する場合、加熱部40に加熱指示を送らない。つまり、加熱部40による加熱を開始させない。
【0041】
ここで、閾値THhが目標流量Qと同一または目標流量Qよりも小さいと、水路52を水が流れているにもかかわらず加熱部40に加熱指示が送られず、水が加熱されない場合がある。また、閾値THhが目標流量Qの2倍よりも大きいと、水路52を空気が流れているにもかかわらず加熱部40に加熱指示が送られ、空焚きが発生する場合がある。そこで、本実施の形態では、閾値THhは、少なくとも以下の式1を満たすよう設定される。
Q<THh<2×Q …(式1)
つまり、閾値THhは、流量センサ138の目標流量Qよりも大きく、流量センサ138の目標流量Qの2倍よりも小さい流量に設定される。
なお、閾値THhは、以下の式2を満たすよう設定されてもよい。
Q<THh<3/2×Q …(式2)
つまり、閾値THhは、流量センサ138の目標流量Qの2倍よりも、流量センサ138の目標流量Qに近い値に設定されてもよい。この場合、より確実に空焚きを抑止できる。
【0042】
また、加熱制御部76は、受信部72が信号を受け取らなくなると、加熱部40に停止指示を送り、加熱部40による加熱を停止させる。
【0043】
以上のように構成された温水器110を備える水栓システムの吐水開始時の動作を説明する。図8は、温水器110を備える吐水システムの吐水開始時の動作を示すフローチャートである。図8は、図4に対応する。S110〜S116は、図4のS10〜S16と同様であるため、説明は省略する。水位センサ36によって検出される加熱部40内の水位が下限水位以上で(S118のY)、かつ、流量センサ138によって取得される流量が閾値THhより小さい場合(S120のY)、加熱制御部76は加熱部40に加熱指示を送る(S122)。加熱部40は、その内部を通る水の加熱を開始する(S124)。すると、加熱部40で加熱されて温められた水が温水器10から吐水管12に吐出され、吐水口12aから吐水される。水位センサ36によって検出される加熱部40内の水位が下限水位未満の場合(S118のN)、または流量センサ138によって取得される流量が閾値THh以上である場合(S120のN)、S122、S124はスキップされる。つまり、加熱制御部76は加熱部40に加熱指示を送らず、加熱部40は加熱を開始しない。この場合、温められていない水が温水器10から吐水管12に吐出され、吐水される。
【0044】
本実施の形態に係る温水器110によると、第1の実施の形態に係る温水器10によって奏される作用効果と同様の作用効果が奏される。加えて、本実施の形態に係る温水器110によると、閾値THhは流量センサ138の目標流量Qよりも大きい値に設定され、その閾値THh以上の流量が流量センサ138によって取得された場合、制御部50は加熱部40に加熱指示を送らない。したがって、加熱部40による加熱は開始されない。目標流量Qよりも大きい流量が流量センサ138によって取得された場合は入水管30や加熱部40を空気あるいは空気が混じった水が流れている可能性が高いところ、加熱部40による加熱が開始されないため、空焚きがさらに抑止される。
【0045】
また、実施の形態に係る温水器110によると、閾値THhは流量センサ138の目標流量Qの2倍よりも小さい値に設定される。このとき、流量センサ138によって取得された流量が2×Q以上である場合、流量は閾値THh以上になるため、制御部50は加熱部40に加熱指示を送らない。したがって、加熱部40による加熱は開始されない。流量センサ138によって取得された流量が2×Qである場合は加熱部40を空気が流れている可能性が高いところ、上述のように閾値THhが2×Qよりも小さい値に設定されることにより、空焚きがさらに一層抑止される。
【0046】
以上、実施の形態に係る水栓システムについて説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0047】
(変形例1)
第1、2実施の形態では、受信部72が信号(すなわち吐出開始の指示)を受け取ったときは下限水位未満であった水位がその後に下限水位以上になっても、加熱制御部76は加熱部40に加熱指示を送らない場合について説明したが、これに限られない。例えば、加熱制御部76は、受信部72が信号を受け取ったときは下限水位未満であった水位がその後に下限水位以上になり、下限水位以上の状態が第1の時間(例えば10秒)以上継続した場合、加熱部40に加熱指示を送ってもよい。ここで、施工やメンテナンスの直後には、電磁弁32を開閉すると、施工時やメンテナンス時に配管内に残った空気が温水器10に流れ込み、加熱部40内に空気や空気が混じった水が流れ込む。したがって第1の時間は、そのような空気が温水器10から抜けるのに十分な時間以上に設定されればよい。
【0048】
(変形例2)
第1の実施の形態では、水栓システム100が、手を差し出したり引っ込めたりする使用者の手動操作を非接触で検知する人体検知センサ16を備える場合について説明したが、これに限られない。水栓システム100は、接触、非接触を問わず、水位情報取得部80による水位情報の取得を開始したり開閉制御部74が電磁弁32に開弁指示を送ったりするための契機となる使用者の手動操作を検知できればよい。したがって、水栓システム100は、人体検知センサ16の代わりに、または人体検知センサ16に加えて、例えば押しボタン式の吐水スイッチなどの接触式の操作部を備えていてもよい。この場合、吐水スイッチは、吐水スイッチを押下する手動操作を検知したときに、ケーブル18を経由して制御部50に信号を送ればよい。制御部50は、この信号に基づいて加熱部40を制御すればよい。この場合、制御部が吐水スイッチから受け取る信号が吐出開始の指示であるといえる。
【0049】
また例えば、水栓システム100は、人体検知センサ16の代わりに、または人体検知センサ16に加えて、電磁弁32を開弁または閉弁させるハンドルレバーを備えていてもよい。この場合、水栓システム100は、水路52を流れる水の流量を測定する流量センサをさらに備える。ユーザがハンドルレバーを操作して電磁弁32が開弁すると、流量センサは、水路を流れる水の流量を測定し、測定した流量に関する情報を制御部に送る。制御部は、その情報に基づいて加熱部40を制御すればよい。この場合、制御部が流量センサから受け取る情報が吐出開始の指示であるといえる。なお、水栓システム100は、電磁弁32の代わりに機械的な弁を備えていてもよい。ハンドルレバーはこの機械的な弁を開弁または閉弁させてもよい。
【0050】
(変形例3)
第2の実施の形態では特に言及しなかったが、流量調整部134(すなわち減圧弁)によって調整される流量には、流量調整部134の製造誤差に基づく誤差が生じうる。この誤差を考慮して閾値THhを設定してもよい。具体的には、流量調整部134の公称のマイナス誤差がE1(L/min)で、流量調整部134の公称のプラス誤差がE2(L/min)の場合、少なくとも以下の式3を満たすよう設定される。
(Q+E2)<THh<(2×(Q−E1)) …(式3)
【0051】
例えば流量調整部134が公称値で±10%の誤差が生じうる流量調整部である場合、流量調整部134の目標流量Qが2(L/min)のとき、流量調整部134によって調整される流量には±0.2(L/min)の誤差が生じる。つまり、流量調整部134の目標流量Qが2(L/min)のときのプラス誤差E2およびマイナス誤差E1はいずれも0.2(L/min)であり、1.8〜2.2(L/min)の水が水路52を流れる。この場合、(2+0.2)<THh<(2×(2−0.2))を満たすよう閾値THhが設定される。
【0052】
(変形例4)
第2の実施の形態では特に言及しなかったが、水路52を流れる水の流量が小さすぎると、水路52を流れる水の速度が遅くなり、水が加熱部40内を通過するのに要する時間が比較的長くなり、水が過加熱される。この場合、温水器10を使用する使用者が不快な思いをする虞がある。そのため、流量センサ138によって測定される流量が閾値THh以上であるときに加え、流量センサ138によって測定される流量が閾値THl(L/min)(<Q<THh)以下であるときにも、加熱制御部76が加熱部40に加熱指示を送らないよう構成してもよい。言い換えると、流量センサ138によって測定される流量がTHlより大きくかつTHhより小さい場合、加熱制御部76が加熱部40に加熱指示を送るよう構成してもよい。この場合、使用者が不快な思いをする恐れがある。本変形例によれば、水が過加熱されて使用者が不快な思いをするのが抑止される。
【0053】
(変形例5)
第2の実施の形態では特に言及しなかったが、すでに加熱部40による加熱が開始されているときに流量センサ138によって測定される流量が閾値THh以上になった場合、すなわち、はじめは流量が閾値THhよりも小さかったものの途中から流量が閾値THh以上になった場合、加熱制御部76は加熱部40に停止指示を送ってもよい。この場合は、加熱部40は、吐水中にもかかわらず、加熱を停止する。あるいはまた、加熱制御部76は、ヒータ40aによる加熱の出力を下げるよう加熱部40に指示してもよい。つまり、加熱部による加熱を停止せずに、その出力を下げるだけでもよい。
【0054】
(変形例6)
第2の実施の形態において、温水器10は、タッチパネル式の表示部を有する操作部をさらに備えてもよい。また、制御部150は、閾値THhの入力を受け付けるさらに入力受付部を含んでもよい。この場合、例えば温水器10を施工・メンテナンスする作業者が、操作部を介して閾値THhを入力し、入力受付部がこれを受け付ける。加熱制御部76は、入力受付部が受け付けた閾値THhに基づいて、加熱部40に加熱指示を送るか否かを判断する。
【0055】
(変形例7)
第2の実施の形態では、温水器10が流量調整部134を備える場合について説明したが、これに限られず、温水器10は流量調整部134を備えていなくてもよい。この場合、水路52を流れる水の流量は、止水栓を経由して温水器10に供給される水(すなわち水道水)の圧力によって決まる。閾値THhは、その圧力によって決まる流量よりも大きい値に設定される。これにより、流量センサ138によって測定される流量が水道水の圧力によって決まる流量よりも大きく、空気あるいは空気が混じった水が入水管30を流れて加熱部40に流れ込んでいると想定される場合、加熱制御部76は加熱部40に加熱指示を送らず、加熱部による加熱熱が開始されないことになる。すでに加熱部40による加熱が開始されている場合は、加熱制御部76は、加熱部40に停止指示を送ってもよく、あるいはヒータ40aによる加熱の出力を下げるよう加熱部40に指示してもよい。
【0056】
(変形例8)
第1、2の実施の形態では、温水器を水栓システムに用いる場合について説明したが、これに限られない。温水器は、温水洗浄便座やその他の装置・システムにも用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 温水器、 12 吐水管、 14 洗面器、 16 人体検知センサ、 32 電磁弁、 36 水位センサ、 40 加熱部、 50 制御部、 76 加熱制御部、 80 水位情報取得部、 100 水栓システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8