(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入射したX線を検出するX線検出素子が出力した電荷によりフィードバック容量が出力する電圧パルスに基づき複数のエネルギー帯ごとにカウント値を出力するフォトンカウンティング型CT用回路と、
前記X線検出素子が出力した電荷により前記フィードバック容量が出力する電圧パルスに基づき積分値を出力する積分型CT用回路と、
前記X線検出素子が出力した電荷を前記フォトンカウンティング型CT用回路に送る場合と、前記X線検出素子が出力した電荷を前記積分型CT用回路に送る場合とを切り替えるスイッチング回路と、
前記複数のエネルギー帯ごとのカウント値に基づいて前記積分値を補正する第1の補正部とを備え、
前記フィードバック容量は、前記フォトンカウンティング型CT用回路及び前記積分型CT用回路に並列接続されている、フォトンカウンティング型X線CT装置。
基準となるX線のエネルギースペクトルの特性X線によるピークを含むエネルギー帯における前記フォトンカウンティング型CT用回路が出力するカウント値を含む所定の範囲内に、前記X線検出素子に入射したX線のエネルギースペクトルの当該エネルギー帯における前記フォトンカウンティング型CT用回路が出力するカウント値が入るように、前記フォトンカウンティング型CT用回路が検出したフォトンのエネルギーに所定のエネルギー値を加算する第2の補正部を更に備え、
前記第1の補正部が行う補正は、前記第2の補正部が行う補正の後に行われる、請求項2に記載のフォトンカウンティング型X線CT装置。
基準となるX線のエネルギースペクトルと前記X線検出素子に入射したX線のエネルギースペクトルとの前記エネルギー帯における前記フォトンカウンティング型CT用回路が出力するカウント値の差の前記複数のエネルギー帯に亘る二乗和が最小となるように、前記フォトンカウンティング型CT用回路が検出したフォトンのエネルギーに所定のエネルギー値を加算する第2の補正部を更に備え、
前記第1の補正部が行う補正は、前記第2の補正部が行う補正の後に行われる、請求項2に記載のフォトンカウンティング型X線CT装置。
前記スイッチング回路は、各ビューにおいて、前記X線検出素子が出力した電荷を前記フォトンカウンティング型CT用回路に送る場合と、前記X線検出素子が出力した電荷を前記積分型CT用回路に送る場合とを切り替える、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のフォトンカウンティング型X線CT装置。
各ビューにおいて、前記フォトンカウンティング型CTオン信号が送信される期間は、前記積分型CTオン信号が送信される期間より短い、請求項6に記載のフォトンカウンティング型X線CT装置。
各ビューにおいて、前記制御回路は、前記X線検出素子に入射するX線のフォトン数が増加すると、前記フォトンカウンティング型CTオン信号が送信される期間を短くする、請求項6又は請求項7に記載のフォトンカウンティング型X線CT装置。
前記フォトンカウンティング型CT用回路及び前記積分型CT用回路に前記フィードバック容量が複数並列接続され、前記X線検出素子が出力した電荷の大きさに応じて電圧パルスの出力に使用する前記フィードバック容量が切り替えられる、請求項1から請求項8のいずれか一つに記載のフォトンカウンティング型X線CT装置。
前記スイッチング回路は、前記X線検出素子が出力した電荷により発生する電圧を増幅する第1アンプと前記X線検出素子との間に設けられたキャパシタを更に備える、請求項1から請求項9のいずれか一つに記載のフォトンカウンティング型X線CT装置。
入射したX線を検出するX線検出素子が出力した電荷によりフィードバック容量が出力する電圧パルスに基づき複数のエネルギー帯ごとにカウント値を出力するフォトンカウンティング型CT用回路と、
前記X線検出素子が出力した電荷により前記フィードバック容量が出力する電圧パルスに基づき積分値を出力する積分型CT用回路と、
前記X線検出素子が出力した電荷を前記フォトンカウンティング型CT用回路に送る場合と、前記X線検出素子が出力した電荷を前記積分型CT用回路に送る場合とを切り替えるスイッチング回路と、
前記積分値及び前記複数のエネルギー帯ごとのカウント値から、前記積分型CT用回路が動作した場合における前記複数のエネルギー帯ごとのカウント値を算出し、当該カウント値に基づいて前記積分値を補正する第1の補正部と、
を備える、フォトンカウンティング型X線CT装置。
入射したX線を検出するX線検出素子が出力した電荷によりフィードバック容量が出力する電圧パルスに基づき複数のエネルギー帯ごとにカウント値を出力するフォトンカウンティング型撮影用回路と、
前記X線検出素子が出力した電荷により前記フィードバック容量が出力する電圧パルスに基づき積分値を出力する積分型撮影用回路と、
前記X線検出素子が出力した電荷を前記フォトンカウンティング型撮影用回路に送る場合と、前記X線検出素子が出力した電荷を前記積分型撮影用回路に送る場合とを切り替えるスイッチング回路と、
前記複数のエネルギー帯ごとのカウント値に基づいて前記積分値を補正する第1の補正部と
を備え、
前記フィードバック容量は、前記フォトンカウンティング型撮影用回路及び前記積分型撮影用回路に並列接続されている、フォトンカウンティング型X線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係るフォトンカウンティング型X線CT装置及びフォトンカウンティング型X線診断装置を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、
図1、
図2及び
図3を参照しながら、第1の実施形態に係るフォトンカウンティング型X線CT装置1の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るフォトンカウンティング型X線CT装置1の構成を示す図である。
図2は、第1の実施形態に係るX線検出器3の一例を示す図である。
図3は、第1の実施形態に係る検出回路4の一例を示す図である。フォトンカウンティング型X線CT装置1は、
図1に示すように、架台装置2と、寝台装置8と、コンソール装置9とを備える。なお、フォトンカウンティング型X線CT装置1の構成は、下記の構成に限定されるものではない。
【0011】
架台装置2は、被検体PにX線を照射して後述する投影データを収集する。架台装置2は、架台制御部21と、X線発生装置22と、X線検出器3と、データ収集部5と、生成部6と、回転フレーム7とを備える。
【0012】
架台制御部21は、後述するスキャン制御部93による制御のもと、X線発生装置22及び回転フレーム7の動作を制御する。架台制御部21は、高電圧発生部211と、コリメータ調整部212と、架台駆動部213とを備える。高電圧発生部211は、後述するX線管球221に管電圧を供給する。コリメータ調整部212は、コリメータ223の開口度及び位置を調整することにより、X線発生装置22から被検体Pに照射されるX線の照射範囲を調整する。例えば、コリメータ調整部212は、コリメータ223の開口度を調整することにより、X線の照射範囲、すなわち、X線のファン角及びコーン角を調整する。架台駆動部213は、回転フレーム7を回転駆動させることにより、被検体Pを中心とした円軌道上で、X線発生装置22及びX線検出器3を旋回させる。
【0013】
X線発生装置22は、被検体Pに照射するX線を発生する。X線発生装置22は、X線管球221と、ウェッジ222と、コリメータ223とを備える。X線管球221は、高電圧発生部211から供給される管電圧により、被検体Pに照射するビーム状のX線を発生させる。X線管球221は、被検体Pの体軸方向に沿って、円錐状、角錐状の広がりを有するビーム状のX線を発生させる真空管である。このビーム状のX線は、コーンビームとも呼ばれる。X線管球221は、回転フレーム7の回転に伴って、コーンビームを被検体Pに対して照射する。ウェッジ222は、X線管球221から照射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。コリメータ223は、コリメータ調整部212の制御により、ウェッジ222によってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。
【0014】
X線検出器3は、
図2に示すように、チャンネル方向及びスライス方向に配列された複数のX線検出素子31を備える多列検出器である。チャンネル方向は回転フレーム7の円周方向、スライス方向は被検体Pの体軸方向である。X線検出素子31は、シンチレータ及びホトダイオードを有する。X線検出素子31は、入射したX線をシンチレータにより光に変換し、その光をホトダイオードにより電荷に変換する。この電荷は、後述する検出回路へ出力される。シンチレータ及びホトダイオードを有するX線検出素子31を備えるX線検出器は、間接変換型の検出器と呼ばれる。
【0015】
なお、X線検出器3は、直接変換型の検出器でもよい。直接変換型の検出器とは、X線検出素子31に入射したフォトンを直接電荷に変換する検出器である。X線検出素子31から出力される電荷は、フォトンの入射によって発生する電子が正電位の集電電極に向かって走行すること及びフォトンの入射によって発生する正孔が負電位の集電電極に向かって走行することの少なくとも一方で出力される。直接変換型の検出器の場合、X線検出素子31は、例えば、テルル化カドミウム(CdTe)系の半導体素子である。
【0016】
検出回路4は、
図3に示すように、スイッチング回路40と、フォトンカウンティング型CT用回路41と、積分型CT用回路42とを備える。検出回路4は、X線検出素子31ごとに設けられる。
【0017】
スイッチング回路40は、
図3に示すように、六つのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を有する。具体的には、スイッチング回路40は、n型MOSFET401n、n型MOSFET402n及びn型MOSFET403nと、p型MOSFET401p、p型MOSFET402p及びp型MOSFET403pとを含む。
【0018】
スイッチング回路40は、後述するスイッチング信号を受信して、上述した六つのMOSFETの導通状態と非導通状態とを切り替える。これにより、スイッチング回路40は、X線検出素子31が出力した電荷をフォトンカウンティング型CT用回路41に送る場合と、X線検出素子31が出力した電荷を積分型CT用回路42に送る場合とを切り替える。なお、スイッチング回路40は、各ビューにおいて、X線検出素子31が出力した電荷をフォトンカウンティング型CT用回路41に送る場合と、X線検出素子31が出力した電荷を積分型CT用回路42に送る場合とを切り替えてもよい。
【0019】
フォトンカウンティング型CT用回路41は、
図3に示すように、第1アンプ41aと、第1カウンタ41cと、フィードバック容量43と、抵抗器44とを含む。第1アンプ41aの入力端子は、p型MOSFET401pを介してX線検出素子31に接続されている。また、第1アンプ41aの入力端子は、抵抗器44のX線検出素子31側の端子と接続されている。第1アンプ41aの出力端子は、コンパレータ411、コンパレータ412及びコンパレータ413を介して第1カウンタ41cに接続されている。また、第1アンプ41aの出力端子は、抵抗器44の第1カウンタ41c側の端子と接続されている。フィードバック容量43のX線検出素子31側の端子と、抵抗器44のX線検出素子31側の端子とは、p型MOSFET402pを介して接続されている。フィードバック容量43の第1カウンタ41c側の端子と、抵抗器44の第1カウンタ41c側の端子とは、p型MOSFET403pを介して接続されている。つまり、フィードバック容量43及び抵抗器44は、第1アンプ41aに並列接続されている。換言すると、フィードバック容量43及び抵抗器44は、フォトンカウンティング型CT用回路41に並列接続されている。なお、コンパレータ411、コンパレータ412及びコンパレータ413の入力端子は、第1アンプ41aの出力端子に、コンパレータ411、コンパレータ412及びコンパレータ413の出力端子は、第1カウンタ41cの入力端子に接続されている。
【0020】
積分型CT用回路42は、
図3に示すように、第2アンプ42aと、第2カウンタ42cと、フィードバック容量43とを含む。第2アンプ42aの入力端子は、n型MOSFET401nを介してX線検出素子31に接続されている。また、第2アンプ42aの入力端子は、n型MOSFET402nを介してフィードバック容量43のX線検出素子31側の端子に接続されている。第2アンプ42aの出力端子は、A/D変換器(Analog-to-Digital Converter)42bを介して第2カウンタ42cに接続されている。つまり、フィードバック容量43は、第2アンプ42aに並列接続されている。換言すると、フィードバック容量43及び抵抗器44は、積分型CT用回路42に並列接続されている。また、第2アンプ42aの出力端子は、n型MOSFET403nを介してフィードバック容量43の第2カウンタ42c側の端子に接続されている。
【0021】
フォトンカウンティング型CT用回路41は、入射したX線を検出するX線検出素子31が出力した電荷によりフィードバック容量43が出力する電圧パルスに基づき複数のエネルギー帯ごとにカウント値を出力する。具体的には、フォトンカウンティング型CT用回路41は、次に説明するように動作する。第1アンプ41aは、X線検出素子31が出力した電荷により発生する電圧を増幅する。フィードバック容量43は、第1アンプ41aにより増幅された電圧に基づいて、電圧パルスを出力する。コンパレータ411、コンパレータ412及びコンパレータ413には、それぞれ閾値が設定されており、コンパレータ411、コンパレータ412及びコンパレータ413は、受信した電圧パルスの強度が閾値を超えている場合、電気信号を出力する。第1カウンタ41cは、コンパレータ411、コンパレータ412及びコンパレータ413が出力する電気信号を、それぞれカウントする。すなわち、第1カウンタ41cは、X線検出素子31が出力した電荷に基づいてフィードバック容量43が出力する電圧パルスをX線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯ごとにカウントする。
【0022】
積分型CT用回路42は、X線検出素子31が出力した電荷によりフィードバック容量43が出力する電圧パルスに基づき積分値を出力する。具体的には、積分型CT用回路42は、次に説明するように動作する。第2アンプ42aは、X線検出素子31が出力した電荷により発生する電圧を増幅する。フィードバック容量43は、第2アンプ42aにより増幅された電圧に基づいて、電圧パルスを出力する。この電圧パルスは、各ビューにおいてX線検出素子31が出力した全ての電荷に基づく電圧を含む。A/D変換器42bは、受信した電圧パルスをデジタル形式の電気信号に変換して出力する。第2カウンタ42cは、A/D変換器42bが出力する電気信号をカウントする。すなわち、第2カウンタ42cは、X線検出素子31が出力した電荷に基づいてフィードバック容量43が出力する電圧パルスをカウントする。
【0023】
なお、抵抗器44は、フィードバック容量43に蓄積した電荷を放電し、フィードバック容量43の飽和を防ぐ役割を果たす。
【0024】
図1に示すように、データ収集部5は、制御回路51と、フォトンカウンティング型CTデータ収集部52と、積分型CTデータ収集部53とを備える。
【0025】
制御回路51は、スイッチング回路40にスイッチング信号を送信する。具体的には、制御回路51は、上述した六つのMOSFETのゲート端子にスイッチング信号を送信する。スイッチング信号は、各ビューにおいて、X線検出素子31が出力した電荷をフォトンカウンティング型CT用回路41に送るようにスイッチング回路40を制御するフォトンカウンティング型CTオン信号と、X線検出素子31が出力した電荷を積分型CT用回路42に送るようにスイッチング回路40を制御する積分型CTオン信号とを含む。なお、以下の説明では、フォトンカウンティング型CTオン信号をPCオン信号と、積分型CTオン信号をCTオン信号と表記する場合がある。
【0026】
制御回路51がスイッチング回路40にフォトンカウンティング型CTオン信号を送信すると、n型MOSFET401n、n型MOSFET402n及びn型MOSFET403nが非導通状態となり、p型MOSFET401p、p型MOSFET402p及びp型MOSFET403pが導通状態となる。これにより、X線検出素子31が出力した電荷は、フォトンカウンティング型CT用回路41へ送られる。
【0027】
制御回路51がスイッチング回路40に積分型CTオン信号を送信すると、n型MOSFET401n、n型MOSFET402n及びn型MOSFET403nが導通状態となり、p型MOSFET401p、p型MOSFET402p及びp型MOSFET403pが非導通状態となる。これにより、X線検出素子31が出力した電荷は、積分型CT用回路42へ送られる。
【0028】
フォトンカウンティング型CTデータ収集部52は、スイッチング回路40によりX線検出素子31が出力した電荷がフォトンカウンティング型CT用回路41へ送られている場合、第1カウンタ41cのカウント値を収集する。フォトンカウンティング型CTデータ収集部52が収集したカウント値は、後述する生成部6へ送られる。なお、第1カウンタ41cのカウント値は、上述した通り、フィードバック容量43が出力する電圧パルスをX線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯ごとにカウントした結果である。
【0029】
積分型CTデータ収集部53は、スイッチング回路40によりX線検出素子31が出力した電荷が積分型CT用回路42へ送られている場合、第2カウンタ42cのカウント値を収集する。積分型CTデータ収集部53が収集したカウント値は、後述する生成部6へ送られる。なお、第2カウンタ42cのカウント値は、フィードバック容量43が出力する電圧パルスをX線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯に関係無くカウントした結果である。
【0030】
生成部6は、ピークシフト補正部61と、カウント値補正部62と、投影データ生成部63とを備える。なお、ピークシフト補正部61は、第2の補正部とも呼ばれる。また、カウント値補正部62は、第1の補正部とも呼ばれる。
【0031】
ピークシフト補正部61は、基準となるX線のエネルギースペクトルの特性X線によるピークを含むエネルギー帯におけるフォトンカウンティング型CT用回路41が出力するカウント値を含む所定の範囲内に、X線検出素子31に入射したX線のエネルギースペクトルの当該エネルギー帯におけるフォトンカウンティング型CT用回路41が出力するカウント値が入るように、フォトンカウンティング型CT用回路41が検出したフォトンのエネルギーに所定のエネルギー値を加算する。具体的には、ピークシフト補正部61は、基準となるX線のエネルギースペクトルの特性X線によるピークを含むエネルギー帯における第1カウンタ41cのカウント値を含む所定の範囲内に、X線検出素子31に入射したX線のエネルギースペクトルの当該エネルギー帯における第1カウンタ41cのカウント値が入るように、フォトンカウンティング型CT用回路41が検出したフォトンのエネルギーに所定のエネルギー値を加算する。また、カウント値補正部62が行う補正は、ピークシフト補正部61が行う補正の後に行われる。
【0032】
或いは、ピークシフト補正部61は、基準となるX線のエネルギースペクトルとX線検出素子31に入射したX線のエネルギースペクトルとのエネルギー帯におけるフォトンカウンティング型CT用回路41が出力するカウント値の差の複数のエネルギー帯に亘る二乗和が最小となるように、フォトンカウンティング型CT用回路41が検出したフォトンのエネルギーに所定のエネルギー値を加算する。具体的には、ピークシフト補正部61は、基準となるX線のエネルギースペクトルとX線検出素子31に入射したX線のエネルギースペクトルとのエネルギー帯における第1カウンタ41cのカウント値の差の複数のエネルギー帯に亘る二乗和が最小となるように、フォトンカウンティング型CT用回路41が検出したフォトンのエネルギーに所定のエネルギー値を加算する。また、カウント値補正部62が行う補正は、ピークシフト補正部が行う補正の後に行われる。ピークシフト補正部61が行うこれらの補正の詳細は、後述する。
【0033】
カウント値補正部62は、積分値及び複数のエネルギー帯ごとのカウント値から、積分型CT用回路が動作した場合における複数のエネルギー帯ごとのカウント値を算出し、当該カウント値に基づいて積分値を補正する。具体的には、カウント値補正部62は、第2カウンタ42cのカウント値及び第1カウンタ41cによる複数のエネルギー帯ごとのカウント値から、積分型CT用回路42が動作した場合における複数のエネルギー帯ごとのカウント値を算出し、このカウント値に基づいて第2カウンタ42cのカウント値を補正する。カウント値補正部62が行う補正の詳細は、後述する。
【0034】
投影データ生成部63は、カウント値補正部62によって補正された第2カウンタ42cのカウント値に基づいて投影データを生成する。
【0035】
回転フレーム7は、X線発生装置22とX線検出器3とを被検体Pを挟んで対向するように支持する円環状のフレームである。回転フレーム7は、架台駆動部213によって駆動され、被検体Pを中心とした円軌道上で高速で回転する。
【0036】
寝台装置8は、寝台駆動装置81と、天板82とを備える。天板82は、被検体Pが載置されるベッドである。寝台駆動装置81は、後述するスキャン制御部93による制御のもと、被検体Pが載置される天板82を体軸方向へ移動させることにより、被検体Pを回転フレーム7内で移動させる。なお、架台装置2は、例えば、天板82を移動させながら回転フレーム7を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。または、架台装置2は、天板82を移動させた後に被検体Pの位置を固定したままで回転フレーム7を回転させて被検体Pを円軌道にてスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。または、架台装置2は、天板82の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行うステップアンドシュート方式を実行する。
【0037】
コンソール装置9は、ユーザによるフォトンカウンティング型X線CT装置1の操作を受け付けると共に、架台装置2によって収集された投影データの再構成処理等、各種画像処理を行う。コンソール装置9は、入力部91と、表示部92と、スキャン制御部93と、前処理部94と、データ記憶部95と、画像再構成部96と、画像記憶部97と、制御部98とを備える。
【0038】
入力部91は、フォトンカウンティング型X線CT装置1のユーザが各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード等である。入力部91は、ユーザから受け付けた指示や設定の情報を、制御部98に転送する。表示部92は、ユーザによって参照されるモニタである。表示部92には、各種画像処理の結果、入力部91を介してユーザから各種設定を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等が表示される。
【0039】
スキャン制御部93は、制御部98による制御のもと、架台制御部21、データ収集部5、生成部6及び寝台駆動装置81の動作を制御する。具体的には、スキャン制御部93は、架台制御部21を制御することにより、フォトンカウンティングCT撮影及び積分型CT撮影を行う際に、回転フレーム7を回転させ、X線管球221からX線を照射させ、コリメータ223の開口度及び位置の調整を行う。また、スキャン制御部93は、制御部98による制御のもと、データ収集部5を制御する。また、スキャン制御部93は、制御部98による制御のもと、被検体Pの撮像時において、寝台駆動装置81を制御することにより、天板82を移動させる。
【0040】
前処理部94は、投影データ生成部63によって生成された投影データに対して、対数変換、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正、散乱線補正等の補正処理を施し、これをデータ記憶部95に格納する。なお、前処理部94により補正処理が施された投影データは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0041】
データ記憶部95は、生データ、すなわち前処理部94によって補正処理が施された投影データを記憶する。画像再構成部96は、データ記憶部95に記憶された投影データを再構成し、再構成画像を生成する。再構成方法としては、種々の方法があり、例えば、逆投影処理が挙げられる。また、逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法が挙げられる。なお、画像再構成部96は、例えば、逐次近似法により、再構成処理を行っても良い。画像再構成部96は、生成した再構成画像を画像記憶部97に格納する。
【0042】
なお、上述したデータ記憶部95及び画像記憶部97は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等で実現することができる。また、上述したスキャン制御部93、前処理部94、画像再構成部96及び制御部98は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路又はCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路で実現することができる。
【0043】
制御部98は、架台装置2、寝台装置8及びコンソール装置9の動作を制御することによって、フォトンカウンティング型X線CT装置1を制御する。制御部98は、スキャン制御部93を制御してスキャンを実行させ、架台装置2から投影データを収集する。制御部98は、前処理部94を制御して投影データに上述した補正処理を施す。制御部98は、データ記憶部95が記憶する投影データや画像記憶部97が記憶する画像データを表示部92に表示するように制御する。
【0044】
以下、
図4〜
図12を参照しながら、第1の実施形態に係るフォトンカウンティング型X線CT装置1の処理の一例について説明する。
図4は、第1の実施形態に係るフォトンカウンティング型X線CT装置1が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0045】
図4に示すように、制御部98は、投影データを収集し、収集した投影データを補正する(ステップS11)。具体的には、制御部98は、架台装置2、寝台装置8及びコンソール装置9を制御して、フォトンカウンティング型CT撮影及び積分型CT撮影を実行させる。次に、制御部98は、データ収集部5を制御して、投影データを収集させる。そして、制御部98は、生成部6を制御して、データ収集部5が収集した投影データに補正を施す。なお、ステップS11の詳細は後述する。
【0046】
制御部98は、前処理部94を制御して投影データに上述した補正処理を施す(ステップS12)。補正処理が施された投影データは、データ記憶部95に格納される。制御部98は、画像再構成部96を制御して、データ記憶部95に格納された投影データを再構成し、CT画像を生成する(ステップS13)。生成されたCT画像は、画像記憶部97に格納される。制御部98は、表示部92を制御して、画像記憶部97に格納されたCT画像を表示させる(ステップS14)。
【0047】
次に、
図5〜
図12を参照しながら、
図4のステップS11の詳細について説明する。
図5は、第1の実施形態において、
図4のステップS11で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図6は、第1の実施形態に係る制御回路51がスイッチング回路40に送信するスイッチング信号SWの一例を示す図ある。
図7は、ピークシフト補正を施す前のX線のエネルギースペクトルを示す図である。
図8は、ピークシフト補正を施した後のX線のエネルギースペクトルを示す図である。
図9は、ピークシフト補正を説明するための図である。
図10は、カウント値補正を施す前の第2カウンタのカウント値を示す図である。
図11は、異なるX線検出素子31に入射したX線のエネルギースペクトル及びこれらに対応する第1カウンタのカウント値を示す図である。
図12は、カウント値補正を施した後の第2カウンタのカウント値を示す図である。
【0048】
図5に示すように、スキャン制御部93は、一つのビューにおける処理を開始する(ステップS1)。まず、制御回路51は、
図6に示すように、検出回路4が有するスイッチング回路40にPCオン信号を送信し、第1カウンタ41cのカウント値を収集する(ステップS2)。次に、制御回路51は、
図6に示すように、検出回路4が有するスイッチング回路40にCTオン信号を送信し第2カウンタ42cのカウント値を収集する(ステップS3)。
【0049】
ここで、
図6に示すように、それぞれのビューVにおいて、フォトンカウンティング型CTオン信号PConが送信される期間は、積分型CTオン信号CTonが送信される期間より短くなっている。これは、フォトンカウンティング型CTでは、X線検出素子31に入射するX線の線量が高い場合、X線の個々のフォトンにより発生する複数の電荷を一つの電荷としてカウントしてしまうパイルアップ(pile up)という現象が起こるためである。また、X線検出素子31に入射するX線のフォトン数は、X線発生装置22の設定や被検体の大きさ等によって変化する。したがって、制御回路51は、X線検出素子31に入射するX線のフォトン数が増加すると、フォトンカウンティング型CTオン信号PConが送信される期間を短くすることが好ましい。
【0050】
ピークシフト補正部61は、第1カウンタ41cのカウント値にピークシフト補正を施す(ステップS4)。
図7には、ターゲットにタングステンを使用したX線管球221から照射されたX線の異なるX線検出素子31におけるエネルギースペクトルSp1、エネルギースペクトルSp2及びエネルギースペクトルSp3と、タングステンのKα線のピーク位置である60keVを表す点線DLとが示されている。ピークシフト補正を施す前であるため、
図7に示したエネルギースペクトルSp1、エネルギースペクトルSp2及びエネルギースペクトルSp3の特性X線のピークは、点線DLに一致していない。これは、X線のフォトンのエネルギーが同じ場合でも、検出回路4が備えるフィードバック容量43のばらつき等により、検出回路4ごとに検出されるエネルギーがばらつくためである。このため、エネルギースペクトルSp1、エネルギースペクトルSp2、エネルギースペクトルSp3それぞれに対応する第1カウンタ41cのカウント値には、ずれが生じる。
【0051】
図8には、
図7に示したエネルギースペクトルSp1、エネルギースペクトルSp2、エネルギースペクトルSp3にピークシフト補正を施したエネルギースペクトルSp10、エネルギースペクトルSp20、エネルギースペクトルSp30と、タングステンのKα線のピーク位置である60keVを表す点線DLとが示されている。ピークシフト補正を施した後であるため、
図8に示したエネルギースペクトルSp10、エネルギースペクトルSp20及びエネルギースペクトルSp30の特性X線のピークは、点線DLに一致している。このため、エネルギースペクトルSp1、エネルギースペクトルSp2、エネルギースペクトルSp3それぞれに対応する第1カウンタ41cのカウント値には、ずれが生じない。
【0052】
なお、フォトンカウンティング型CTで実際に得られるのは、X線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯ごとのフォトンのカウント値である。
図7に示したエネルギースペクトルSp1、エネルギースペクトルSp2及びエネルギースペクトルSp3と、
図8に示したエネルギースペクトルSp10、エネルギースペクトルSp20及びエネルギースペクトルSp30とは、概念的に示したものである。
【0053】
次に、
図9を参照しながら、ピークシフト補正の詳細について説明する。
図9には、第1エネルギー帯B1、第2エネルギー帯B2、第3エネルギー帯B3及び第4エネルギー帯B4と、一つのビューにおいて異なるX線検出素子31に入射したX線のエネルギースペクトルS及びエネルギースペクトルDと、タングステンのKα線のピーク位置を表す点線DLとが示されている。ここで、エネルギースペクトルSの形状とエネルギースペクトルDの形状は異なっている。これは、異なるX線検出素子31に入射するX線が、X線管球221からX線検出素子31に入射するまでに透過した物質の種類やその経路長が異なるためである。なお、
図9に示したエネルギースペクトルS及びエネルギースペクトルDは、ピークシフト補正について説明するため、概念的に示したものである。
【0054】
上述した通り、フォトンカウンティング型CTで得られるのは、X線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯ごとのフォトンのカウント値である。したがって、エネルギースペクトルSの第1カウンタ41cによるカウント値は、第1エネルギー帯B1内の線分SL1、第2エネルギー帯B2内の線分SL2、第3エネルギー帯B3内の線分SL3及び第4エネルギー帯B4内の線分SL4で示される。また、エネルギースペクトルDの第1カウンタ41cによるカウント値は、第1エネルギー帯B1内の線分DL1、第2エネルギー帯B2内の線分DL2、第3エネルギー帯B3内の線分DL3及び第4エネルギー帯B4内の線分DL4で示される。
【0055】
図9に示すように、第3エネルギー帯B3は、タングステンのKα線のピーク位置である60keVを表す点線DLを含むエネルギー帯であり、四つのエネルギー帯の中で最も幅が小さい。このように、第3エネルギー帯B3の幅を小さく設定しておくと、特性X線によるピークが含まれるか否かによって第1カウンタ41cのカウント値が大きく異なるため、第1カウンタ41cのカウント値から特性X線によるピーク位置をある程度特定することができる。
図9では、エネルギースペクトルSの特性X線のピークは、第3エネルギー帯B3に含まれており、エネルギースペクトルDの特性X線のピークは、第3エネルギー帯B3に含まれていない。このため、
図9に線分SL3及び線分DL3で示したように、第3エネルギー帯B3における第1カウンタ41cのカウント値は、エネルギースペクトルDよりエネルギースペクトルSの方が大きくなっている。
【0056】
ピークシフト補正部61が、エネルギースペクトルDの特性X線のピークが第3エネルギー帯B3に入るように、エネルギースペクトルDを矢印A0の方向へ平行移動させたと仮定する。これは、ピークシフト補正部61が、フォトンカウンティング型CT用回路41が検出したフォトンのエネルギーに所定のエネルギー値を加算することに相当する。加算するエネルギー値は、正の値又は負の値となる。この場合、エネルギースペクトルDを持つX線の第1カウンタ41cのカウント値は、次のように変化する。第1エネルギー帯B1、第2エネルギー帯B2及び第3エネルギー帯B3では、エネルギースペクトルDで囲まれた面積が増加するため、第1カウンタ41cによるカウント値は増加する。つまり、第1エネルギー帯B1内の線分DL1、第2エネルギー帯B2内の線分DL2、第3エネルギー帯B3内の線分DL3は、それぞれ矢印A1、矢印A2、矢印A3で示した方向へ移動する。第4エネルギー帯B4では、エネルギースペクトルDで囲まれた面積が減少するため、第1カウンタ41cによるカウント値は減少する。つまり、第4エネルギー帯B4内の線分DL4は、矢印A4で示した方向へ移動する。
【0057】
つまり、ピークシフト補正部61は、エネルギースペクトルDをエネルギー方向に平行移動させることで、特性X線によるピークを含むエネルギー帯における第1カウンタ41cのカウント値のずれを低減させることができる。ピークシフト補正部61は、例えば、エネルギースペクトルDの第3エネルギー帯B3における第1カウンタ41cのカウント値が、エネルギースペクトルSの第3エネルギー帯B3における第1カウンタ41cのカウント値に一致するようにエネルギースペクトルDをエネルギー方向に平行移動させる。或いは、ピークシフト補正部61は、例えば、エネルギースペクトルDの第3エネルギー帯B3における第1カウンタ41cのカウント値が、エネルギースペクトルSの第3エネルギー帯B3における第1カウンタ41cのカウント値を含む所定の範囲内に入るようにエネルギースペクトルDをエネルギー方向に平行移動させてもよい。
【0058】
また、仮にエネルギースペクトルDの全てのエネルギー帯におけるフォトン数が
図9に示した値の定数倍となっている場合、ピークシフト補正部61は、各エネルギー帯の第1カウンタ41cのカウント値の差の二乗和が最小となるようにエネルギースペクトルDをエネルギー方向に平行移動させるとよい。
【0059】
なお、上述の説明では、エネルギースペクトルSの特性X線によるピークが、タングステンのKα線のピーク位置である60keVを表す点線DLと一致している場合について説明したが、少なくともエネルギースペクトルSの特性X線によるピーク全体が、第3エネルギー帯B3に含まれていればよい。基準となるX線のエネルギースペクトル、すなわち特性X線によるピーク全体が第3エネルギー帯B3に含まれるエネルギースペクトルSの第1カウンタ41cによるカウント値を予め用意しておけば、ピークシフト補正部61は、上述した補正を行うことができる。
【0060】
カウント値補正部62は、ピークシフト補正を施した第1カウンタ41cのカウント値に基づいて、積分型CT用回路42が動作した場合における複数のエネルギー帯ごとのカウント値を算出する(ステップS5)。算出方法の詳細は、次に述べる通りである。
【0061】
第1カウンタ41cによる第1エネルギー帯B1のカウント値をnp(B1)、第2エネルギー帯B2のカウント値をnp(B2)、第3エネルギー帯B3のカウント値をnp(B3)、第4エネルギー帯B4のカウント値をnp(B4)、第1エネルギー帯B1から第4エネルギー帯B4のカウント値の合計をnpとすると、以下の式(1)が成り立つ。
【0063】
積分型CT用回路42が動作した場合における第1エネルギー帯B1のカウント値をNp(B1)、第2エネルギー帯B2のカウント値をNp(B2)、第3エネルギー帯B3のカウント値をNp(B3)、第4エネルギー帯B4のカウント値をNp(B4)、第1エネルギー帯B1から第4エネルギー帯B4のカウント値の合計をNpとすると、以下の式(2)が成り立つ。
【0065】
また、第1エネルギー帯B1から第4エネルギー帯B4のカウント値の合計np、第1エネルギー帯B1から第4エネルギー帯B4のカウント値の合計Np、第1カウンタ41cによる第kエネルギー帯Bkのカウント値np(Bk)及び積分型CT用回路42が動作した場合における第kエネルギー帯Bkのカウント値Np(Bk)(k=1,2,3,4)について、以下の式(3)の関係が成り立つ。カウント値補正部62は、式(3)を用いることで、ピークシフト補正を施した第1カウンタ41cのカウント値に基づいて、積分型CT用回路42が動作した場合における複数のエネルギー帯ごとのカウント値を算出することができる。
【0067】
カウント値補正部62は、ステップS5の算出結果に基づいて、第2カウンタ42cのカウント値を補正する(ステップS6)。具体的には、カウント値補正部62は、ステップS5の算出結果に基づいて、第2カウンタ42cのカウント値Npから、ノイズが多く含まれているエネルギー帯の積分型CT用回路42が動作した場合におけるカウント値を差し引く。以下の説明では、第1エネルギー帯B1に散乱線によるノイズが出ている場合について説明する。
【0068】
第1エネルギー帯B1に出ている散乱線によるノイズの影響を取り除くためには、第2カウンタ42cのカウント値Npから積分型CT用回路42が動作した場合における第1エネルギー帯B1のカウント値Np(B1)を差し引けばよい。ここで、第2カウンタ42cのカウント値Npから積分型CT用回路42が動作した場合における第1エネルギー帯B1のカウント値Np(B1)を差し引いた値をNp´とすると、以下の式(4)が成り立つ。
【0070】
式(3)及び式(4)から以下の式(5)を導くことができる。式(5)は、積分型CT用回路42が動作した場合における第1エネルギー帯B1のカウント値Np(B1)を第2カウンタ42cのカウント値Npから差し引いた値Np´が、第2カウンタ42cのカウント値Npと、第1カウンタ41cによる第1エネルギー帯のカウント値np(B1)、第2エネルギー帯のカウント値np(B2)、第3エネルギー帯のカウント値np(B3)及び第4エネルギー帯のカウント値np(B4)とから算出できることを意味している。
【0072】
カウント値補正部62は、式(5)を用いて、次に述べるような手順で第2カウンタ42cのカウント値を補正する。
図10には、曲線C1、曲線C2及び曲線C3が示されている。曲線C1、曲線C2及び曲線C3は、それぞれ異なるスライス方向における、補正を施す前の第2カウンタ42cのカウント値のチャンネル方向に沿った分布を示している。曲線C1、曲線C2及び曲線C3には、上述した散乱線によるノイズが含まれている。
【0073】
そこで、カウント値補正部62は、
図11に示した第1カウンタ41cのカウント値及び式(5)を用いて、積分型CT用回路42が動作した場合における第1エネルギー帯B1のカウント値Np(B1)を第2カウンタ42cのカウント値Npから差し引いた値Np´を算出する。
図11に示すように、エネルギースペクトルSp10の各エネルギー帯における第1カウンタ41cのカウント値は、線分SL10、線分SL20、線分SL30及び線分SL40で表されている。エネルギースペクトルSp20の各エネルギー帯における第1カウンタ41cのカウント値は、線分DL10、線分DL20、線分DL30及び線分DL40で表されている。エネルギースペクトルSp30の各エネルギー帯における第1カウンタ41cのカウント値は、線分CL10、線分CL20、線分CL30及び線分CL40で表されている。
【0074】
図12は、異なるスライス方向における、算出したNp´のチャンネル方向に沿った分布を示している。
図12に示された曲線C10、曲線C20及び曲線C30には、上述した散乱線によるノイズは含まれていない。
【0075】
上述の説明では、散乱線によるノイズが出ている第1エネルギー帯B1の積分型CT用回路42が動作した場合におけるカウント値Np(B1)を差し引く場合について説明したが、カウント値補正部62が行う補正は、これに限定されない。例えば、カウント値補正部62は、フォトンカウンティング型CT撮影及び積分型CT撮影を行う領域に金属が存在する場合、この金属によるピークを含むエネルギー帯の積分型CT用回路42が動作した場合におけるカウント値を、第2カウンタ42cのカウント値Npから差し引いてもよい。これにより、フォトンカウンティング型X線CT装置1は、メタルアーチファクトを低減させることができる。或いは、カウント値補正部62は、ノイズの影響が強く出ているエネルギー帯の積分型CT用回路42が動作した場合におけるカウント値を、第2カウンタ42cのカウント値Npから差し引いてもよい。
【0076】
スキャン制御部93は、ステップS1〜ステップS6の処理を行うべきビューが残っているか否かを判定する(ステップS7)。スキャン制御部93が、ステップS1〜ステップS6の処理を行うべきビューが残っていると判定した場合(ステップS7肯定)、ステップS1に戻る。スキャン制御部93が、ステップS1〜ステップS6の処理を行うべきビューが残っていないと判定した場合(ステップS7否定)、処理を終了する。
【0077】
なお、フォトンカウンティング型X線CT装置1は、
図3に示した検出回路4の代わりに、
図13に示した検出回路4xを備えていてもよい。検出回路4xは、フォトンカウンティング型CT用回路41xを有する。フォトンカウンティング型CT用回路41xは、A/D変換器41bxと、演算回路41exとを有する。検出回路4xの動作及びその他の構成は、上述した検出回路4と同様であるため、説明は省略する。
【0078】
A/D変換器41bxは、第1アンプ41cから受信した電圧パルスをデジタル形式の電気信号に変換して出力する。演算回路41exは、上述したコンパレータ411、コンパレータ412及びコンパレータ413に相当する機能及び第1カウンタ41cに相当する機能を有する回路である。演算回路41exは、上述したコンパレータ411、コンパレータ412及びコンパレータ413に相当する機能により、A/D変換器41bxが出力した電気信号を、X線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯のいずれかに振り分ける。そして、演算回路41exは、第1カウンタ41cに相当する機能により、電気信号をX線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯ごとにカウントする。
【0079】
或いは、フォトンカウンティング型X線CT装置1は、
図3に示した検出回路4の代わりに、
図14に示した検出回路4yを備えていてもよい。検出回路4yは、フォトンカウンティング型CT用回路41yを有する。フォトンカウンティング型CT用回路41yは、A/D変換器41byと、メモリ41mと、演算回路41eyとを有する。検出回路4yの動作及びその他の構成は、上述した検出回路4と同様であるため、説明は省略する。
【0080】
A/D変換器41byは、第1アンプ41aから受信した電圧パルスをデジタル形式の電気信号に変換して出力する。メモリ41mは、例えば、書き込み、リセット、スワップを繰り返すダブルバッファ構造のメモリである。メモリ41mは、A/D変換器41byが出力した単位時間当たりの電気信号を、例えば、10ビットのパルス列として保管し、これを演算回路41eyへ出力する。演算回路41eyは、上述したコンパレータ411、コンパレータ412及びコンパレータ413に相当する機能により、メモリ41mが出力したパルス列を、X線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯のいずれかに振り分ける。そして、演算回路41eyは、第1カウンタ41cに相当する機能により、パルス列をX線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯ごとにカウントする。
【0081】
或いは、フォトンカウンティング型X線CT装置1は、
図3に示した検出回路4の代わりに、
図15に示した検出回路4zを備えていてもよい。検出回路4zは、フォトンカウンティング型CT用回路41及び積分型CT用回路42に並列接続された複数のフィードバック容量を有する。電圧パルスの出力に使用するフィードバック容量は、X線検出素子31が出力した電荷の大きさに応じて切り替えられる。
【0082】
検出回路4zは、
図3に示したフィードバック容量43の代わりに、フィードバック容量431と、フィードバック容量432と、フィードバック容量433と、n型MOSFET701と、n型MOSFET702と、n型MOSFET703とを備える。
【0083】
フィードバック容量431のX線検出素子31側の端子と、抵抗器44のX線検出素子31側の端子とは、p型MOSFET402pを介して接続されている。フィードバック容量431の第1カウンタ41c側の端子と、抵抗器44の第1カウンタ41c側の端子とは、p型MOSFET403pを介して接続されている。つまり、フィードバック容量431は、抵抗器44及び第1アンプ41aに並列接続されている。また、フィードバック容量431の第1カウンタ41c側の端子と、p型MOSFET403pとの間には、n型MOSFET701が設けられている。
【0084】
フィードバック容量432のX線検出素子31側の端子と、抵抗器44のX線検出素子31側の端子とは、p型MOSFET402pを介して接続されている。フィードバック容量432の第1カウンタ41c側の端子と、抵抗器44の第1カウンタ41c側の端子とは、p型MOSFET403pを介して接続されている。つまり、フィードバック容量432は、抵抗器44及び第1アンプ41aに並列接続されている。また、フィードバック容量432の第1カウンタ41c側の端子と、p型MOSFET403pとの間には、n型MOSFET702が設けられている。
【0085】
フィードバック容量433のX線検出素子31側の端子と、抵抗器44のX線検出素子31側の端子とは、p型MOSFET402pを介して接続されている。フィードバック容量433の第1カウンタ41c側の端子と、抵抗器44の第1カウンタ41c側の端子とは、p型MOSFET403pを介して接続されている。つまり、フィードバック容量433は、抵抗器44及び第1アンプ41aに並列接続されている。また、フィードバック容量433の第1カウンタ41c側の端子と、p型MOSFET403pとの間には、n型MOSFET703が設けられている。
【0086】
n型MOSFET701、n型MOSFET702及びn型MOSFET703の導通状態と非導通状態の切り替えは、上述したスイッチング回路40に含まれるMOSFETの導通状態と非導通状態の切り替えから独立している。すなわち、n型MOSFET701、n型MOSFET702及びn型MOSFET703の導通状態と非導通状態の切り替えは、上述したスイッチング信号の以外に信号により行われる。また、n型MOSFET701、n型MOSFET702及びn型MOSFET703の導通状態と非導通状態の切り替えは、互いに独立している。
【0087】
n型MOSFET701、n型MOSFET702及びn型MOSFET703の導通状態と非導通状態は、X線検出素子31が出力する電荷の大きさに応じて切り替えられる。X線検出素子31が出力する電荷の大きさは、第1アンプ41aにより増幅された電圧の大きさと相関関係がある。
【0088】
例えば、X線検出素子31が出力する電荷が大きい場合、n型MOSFET701、n型MOSFET702及びn型MOSFET703が導通状態となる。これにより、フィードバック容量431、フィードバック容量432及びフィードバック容量433は、一つのフィードバック容量として、飽和することなく、X線検出素子31が出力した電荷に応じた電圧パルスを出力することができる。したがって、フォトンカウンティング型CT用回路41は、一つのフィードバック容量として働くフィードバック容量431、フィードバック容量432及びフィードバック容量433が出力する電圧パルスに基づき複数のエネルギー帯ごとに正確なカウント値を出力することができる。
【0089】
一方、X線検出素子31が出力する電荷が小さい場合、n型MOSFET701、n型MOSFET702又はn型MOSFET703が導通状態となる。これにより、フィードバック容量431、フィードバック容量432又はフィードバック容量433は、飽和することなく、X線検出素子31が出力した電荷に応じた電圧パルスを出力することができる。また、或いは、n型MOSFET701、n型MOSFET702又はn型MOSFET703が非導通状態となってもよい。この場合、フィードバック容量431、フィードバック容量432及びフィードバック容量433のうち二つが、一つのフィードバック容量として、飽和することなく、X線検出素子31が出力した電荷に応じた電圧パルスを出力することができる。
【0090】
したがって、フォトンカウンティング型CT用回路41は、フィードバック容量431、フィードバック容量432及びフィードバック容量433の少なくとも一つが出力する電圧パルスに基づき複数のエネルギー帯ごとに正確なカウント値を出力することができる。
【0091】
或いは、n型MOSFET701、n型MOSFET702及びn型MOSFET703の導通状態と非導通状態は、X線管球221に供給される管電圧や管電流の大きさに応じて切り替えられる。X線管球221に供給される管電圧や管電流の大きさは、X線検出素子31が出力する電荷の大きさ及び第1アンプ41aにより増幅された電圧の大きさと相関関係がある。
【0092】
例えば、X線管球221に供給される管電圧が大きい場合、n型MOSFET701、n型MOSFET702及びn型MOSFET703が導通状態となる。これにより、フィードバック容量431、フィードバック容量432及びフィードバック容量433は、一つのフィードバック容量として、飽和することなく、X線検出素子31が出力した電荷に応じた電圧パルスを出力することができる。したがって、フォトンカウンティング型CT用回路41は、一つのフィードバック容量として働くフィードバック容量431、フィードバック容量432及びフィードバック容量433が出力する電圧パルスに基づき複数のエネルギー帯ごとに正確なカウント値を出力することができる。
【0093】
一方、X線管球221に供給される管電圧が小さい場合、n型MOSFET701、n型MOSFET702又はn型MOSFET703が導通状態となる。これにより、フィードバック容量431、フィードバック容量432又はフィードバック容量433は、飽和することなく、X線検出素子31が出力した電荷に応じた電圧パルスを出力することができる。また、或いは、n型MOSFET701、n型MOSFET702又はn型MOSFET703が非導通状態となってもよい。この場合、フィードバック容量431、フィードバック容量432及びフィードバック容量433のうち二つが、一つのフィードバック容量として、飽和することなく、X線検出素子31が出力した電荷に応じた電圧パルスを出力することができる。
【0094】
したがって、フォトンカウンティング型CT用回路41は、フィードバック容量431、フィードバック容量432及びフィードバック容量433の少なくとも一つが出力する電圧パルスに基づき複数のエネルギー帯ごとに正確なカウント値を出力することができる。
【0095】
なお、フィードバック容量431、フィードバック容量432及びフィードバック容量433の静電容量の大きさは、任意である。また、検出回路4zが有するフィードバック容量の数は、特に限定されない。
【0096】
或いは、フォトンカウンティング型X線CT装置1は、
図3に示した検出回路4の代わりに、
図16に示した検出回路4iを備えていてもよい。検出回路4iは、
図3に示した検出回路4の代わりに、
図16に示したスイッチング回路40iを備える。スイッチング回路40iは、
図16に示すように、
図3に示したスイッチング回路40にキャパシタ711を追加したものである。すなわち、スイッチング回路40iは、X線検出素子31が出力した電荷により発生する電圧を増幅する第1アンプ41aとX線検出素子31との間に設けられたキャパシタ711を備える。
【0097】
キャパシタ711は、
図16に示すように、X線検出素子31とp型MOSFET401pとの間に設けられている。キャパシタ711は、X線検出素子31から出てくる直流成分が第1アンプ41aに流れ込むことを防止する。このため、フィードバック容量43が出力する電圧パルスは、X線検出素子31から出てくる直流成分の影響を受けない。したがって、検出回路4iは、複数のエネルギー帯ごとに正確なカウント値を検出することができる。なお、X線検出素子31から出てくる直流成分は、例えば、暗電流である。
【0098】
或いは、フォトンカウンティング型X線CT装置1は、
図3に示した検出回路4の代わりに、
図17に示した検出回路4jを備えていてもよい。検出回路4jは、
図3に示した検出回路4の代わりに、
図17に示したスイッチング回路40jを備える。スイッチング回路40jは、
図17に示すように、
図3に示したスイッチング回路40にキャパシタ712を追加したものである。すなわち、スイッチング回路40jは、X線検出素子31が出力した電荷により発生する電圧を増幅する第1アンプ41aとX線検出素子31との間に設けられたキャパシタ712を備える。
【0099】
キャパシタ712は、
図17に示すように、p型MOSFET401pと、第1アンプ41a、フィードバック容量43及び抵抗器44との間に設けられている。キャパシタ712の役割は、上述したキャパシタ711と同様である。検出回路4jは、キャパシタ712を有するため、検出回路4iと同様の効果を奏する。
【0100】
以上、第1の実施形態に係るフォトンカウンティング型X線CT装置1の処理の一例について説明した。上述したように、フォトンカウンティング型X線CT装置1は、検出回路4ごとに第1カウンタ41cのカウント値を補正するピークシフト補正と、検出回路4ごとに第1カウンタ41cのカウント値を用いて第2カウンタ42cのカウント値を補正するカウント値補正とを行う。このため、フォトンカウンティング型X線CT装置1は、検出回路4が備えるフィードバック容量43のばらつき等により、検出回路4ごとに検出されるフォトンのエネルギーがばらつくことを抑制することができる。したがって、フォトンカウンティング型X線CT装置1は、コントラスト分解能が高い画像を得ることができる。
【0101】
また、フォトンカウンティング型X線CT装置1は、スイッチング回路40、フォトンカウンティング型CT用回路41及び積分型X線CT用回路42を備えるため、フォトンカウンティング型CT撮影のみ又は積分型CT撮影のみを行うこともできる。さらに、フォトンカウンティング型X線CT装置1は、フィードバック容量43が第1アンプ41a及び第2アンプ42aに共有させることで、検出回路4の回路規模をコンパクトにすることができる。
【0102】
なお、フォトンカウンティング型X線CT装置1が備える検出回路は、第1アンプ41a及び第2アンプ42aに共有されているフィードバック容量43を備えていなくともよい。この場合、フォトンカウンティング型CT用回路及び積分型CT用回路は、それぞれ専用のフィードバック容量を備え、具体的な構成は次のようになる。
【0103】
フォトンカウンティング型CT用回路は、第1カウンタと、第1アンプとを有する。第1カウンタは、入射したX線を電荷に変換するX線検出素子が出力した電荷に基づいてフィードバック容量が出力する電圧パルスを、X線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯ごとにカウントする。第1アンプは、入力端子がX線検出素子に接続され、出力端子が第1カウンタに接続されている。積分型CT用回路は、第2カウンタと、第2アンプとを有する。第2カウンタは、X線検出素子が出力した電荷に基づいてフィードバック容量が出力する電圧パルスをカウントする。第2アンプは、入力端子がX線検出素子に接続され、出力端子が第2カウンタに接続されている。スイッチング回路は、X線検出素子が出力した電荷をフォトンカウンティング型CT用回路に送る場合と、X線検出素子が出力した電荷を積分型CT用回路に送る場合とを切り替える。
【0104】
また、この場合、カウント値補正部は、第2カウンタのカウント値及び第1カウンタによる複数のエネルギー帯ごとのカウント値から、積分型CT用回路が動作した場合における複数のエネルギー帯ごとのカウント値を算出し、当該カウント値に基づいて第2カウンタのカウント値を補正する。
【0105】
フォトンカウンティング型CT用回路及び積分型CT用回路は、それぞれ専用のフィードバック容量を備えるフォトンカウンティング型X線CT装置1が備える検出回路も、ピークシフト補正及びカウント値補正を行うことができる。したがって、この場合でも、フォトンカウンティング型CT装置1は、コントラスト分解能が高い画像を得ることができる。また、フォトンカウンティング型CT装置1は、フォトンカウンティング型CT撮影のみ又は積分型CT撮影のみを行うこともできる。
【0106】
(第2の実施形態)
図18を参照しながら、第2の実施形態に係るフォトンカウンティング型X線診断装置100の構成について説明する。
図18は、第2の実施形態に係るフォトンカウンティング型X線診断装置100の構成を示す図である。フォトンカウンティング型X線診断装置100は、
図18に示すように、高電圧発生部110と、X線管球120と、X線絞り装置130と、天板140と、Cアーム150と、X線検出器160と、データ収集部170と、補正部180と、Cアーム回転・移動機構190と、天板移動機構200と、Cアーム・天板機構制御部210と、絞り制御部220と、画像生成部230と、画像記憶部240と、画像処理部250と、入力部260と、表示部270と、システム制御部280とを備える。
【0107】
高電圧発生部110は、X線管球120に管電圧を供給する。X線管球120は、高電圧発生部110から供給される管電圧により、被検体Pに照射するX線を発生させる。高電圧発生部110は、X線管球120に供給する電圧を調整することで、被検体Pに照射するX線の線量の調整や、被検体PへのX線照射のオン/オフの制御を行う。X線絞り装置130は、X線管球120が発生させたX線が被検体Pの関心領域へ選択的に照射されるように絞り込むための装置である。例えば、X線絞り装置130は、スライド可能な四枚の絞り羽根を有し、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線管球120が発生させたX線を絞り込む。天板140は、被検体Pが載置されるベッドである。
【0108】
Cアーム150は、X線管球120、X線絞り装置130及びX線検出器160を保持する湾曲した部材である。X線管球120及びX線絞り装置130と、X線検出器160とは、Cアーム150により被検体Pを挟んで対向するように配置される。
【0109】
X線検出器160は、マトリクス状に配列された複数のX線検出素子を備える多列検出器である。X線検出素子には、X線検出素子に入射したX線のフォトンのエネルギーを検出する検出回路が設けられている。X線検出素子の構成及び動作は、第1の実施形態に係るX線検出素子と同様である。検出回路は、スイッチング回路と、フォトンカウンティング型撮影用回路と、積分型撮影用回路とを備える。スイッチング回路の構成及び動作は、第1の実施形態に係るスイッチング回路と同様である。フォトンカウンティング型撮影用回路の構成及び動作は、第1の実施形態に係るフォトンカウンティング型CT用回路と同様である。積分型撮影用回路の構成及び動作は、第1の実施形態に係る積分型CT用回路と同様である。つまり、フォトンカウンティング型撮影用回路及び積分型撮影用回路には、フィードバック容量が並列接続されている。
【0110】
データ収集部170は、制御回路171と、フォトンカウンティング型データ収集部172と、積分型データ収集部173とを備える。
【0111】
制御回路171は、スイッチング回路にスイッチング信号を送信する。具体的には、制御回路171は、スイッチング回路が有する六つのMOSFETのゲート端子にスイッチング信号を送信する。スイッチング信号は、各X線照射において、X線検出素子が出力した電荷をフォトンカウンティング型撮影用回路に送るようにスイッチング回路を制御するフォトンカウンティング型撮影オン信号と、X線検出素子が出力した電荷を積分型撮影用回路に送るようにスイッチング回路を制御する積分型撮影オン信号とを含む。スイッチング信号を受信した六つのMOSFETの動作は、第1の実施形態に係る六つのMOSFETと同様である。
【0112】
フォトンカウンティング型データ収集部172は、スイッチング回路によりX線検出素子が出力した電荷がフォトンカウンティング型撮影用回路へ送られている場合、第1カウンタのカウント値を収集する。フォトンカウンティング型データ収集部172が収集したカウント値は、後述する補正部180へ送られる。なお、第1カウンタのカウント値は、上述した通り、フィードバック容量が出力する電圧パルスをX線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯ごとにカウントした結果である。
【0113】
積分型データ収集部173は、スイッチング回路によりX線検出素子が出力した電荷が積分型撮影用回路へ送られている場合、第2カウンタのカウント値を収集する。積分型データ収集部173が収集したカウント値は、後述する補正部180へ送られる。なお、第2カウンタのカウント値は、フィードバック容量が出力する電圧パルスをX線のエネルギースペクトル上に設定された複数のエネルギー帯に関係無くカウントした結果である。
【0114】
補正部180は、ピークシフト補正部181と、カウント値補正部182とを備える。
【0115】
ピークシフト補正部181は、基準となるX線のエネルギースペクトルの特性X線によるピークを含むエネルギー帯における第1カウンタのカウント値を含む所定の範囲内に、X線検出素子に入射したX線のエネルギースペクトルの当該エネルギー帯における第1カウンタのカウント値が入るように、フォトンカウンティング型撮影用回路が検出したフォトンのエネルギーに所定のエネルギー値を加算する。また、カウント値補正部182が行う補正は、ピークシフト補正部181が行う補正の後に行われる。
【0116】
或いは、ピークシフト補正部181は、基準となるX線のエネルギースペクトルとX線検出素子に入射したX線のエネルギースペクトルとのエネルギー帯における第1カウンタのカウント値の差の複数のエネルギー帯に亘る二乗和が最小となるように、フォトンカウンティング型撮影用回路が検出したフォトンのエネルギーに所定のエネルギー値を加算する。また、カウント値補正部182が行う補正は、ピークシフト補正部が行う補正の後に行われる。ピークシフト補正部181が行うこれらの補正の詳細は、後述する。
【0117】
カウント値補正部182は、第2カウンタのカウント値及び第1カウンタによる複数のエネルギー帯ごとのカウント値から、積分型撮影用回路が動作した場合における複数のエネルギー帯ごとのカウント値を算出し、このカウント値に基づいて第2カウンタのカウント値を補正する。カウント値補正部182が行う補正の詳細は、後述する。
【0118】
Cアーム回転・移動機構190は、Cアーム150を回転及び移動させるための機構である。また、Cアーム回転・移動機構190は、X線管球120とX線検出器160との距離であるSID(Source Image receptor Distance)を変更することもできる。また、Cアーム回転・移動機構190は、Cアーム150に保持されているX線検出器160を回転させることもできる。
【0119】
天板移動機構200は、天板140を移動させるための機構である。Cアーム・天板機構制御部210は、後述するシステム制御部280の制御の下、Cアーム回転・移動機構190及び天板移動機構200を制御することで、Cアーム150の回転及び移動と、天板140の移動とを調整する。絞り制御部220は、後述するシステム制御部280の制御の下、X線絞り装置130が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0120】
画像生成部230は、カウント値補正部182によって補正された第2カウンタのカウント値に基づいてX線画像を生成する。画像記憶部240は、画像生成部230によって生成されたX線画像を記憶する。画像処理部250は、画像生成部230によって生成されたX線画像に対して各種画像処理を実行する。例えば、画像処理部250は、画像生成部230から直接、X線画像を取得して、各種画像処理を行う。また、例えば、画像処理部250は、画像生成部230によって生成されたX線画像を、画像記憶部240から取得して、各種画像処理を行う。なお、画像処理部250は、画像処理後の画像データを、画像記憶部240に格納することもできる。
【0121】
入力部260は、フォトンカウンティング型X線診断装置100のユーザが各種指示や各種設定の入力に用いるマウス、キーボード、ボタン、トラックボール、ジョイスティック、フットスイッチ等である。入力部260は、ユーザから受け付けた指示を、後述するシステム制御部280に転送する。表示部270は、ユーザによって参照されるモニタである。表示部270には、各種画像処理の結果、入力部260を介してユーザから各種設定を受け付けるためのGUI等が表示される。
【0122】
システム制御部280は、フォトンカウンティング型X線診断装置100全体の動作を制御する。例えば、システム制御部280は、入力部260から転送されたユーザの指示に従って高電圧発生部110を制御し、X線管球12に供給する電圧を調整することで、被検体Pに照射されるX線の線量や、被検体PへのX線照射のオン/オフを制御する。また、例えば、システム制御部280は、ユーザの指示に従ってCアーム・天板機構制御部210を制御し、Cアーム150の回転及び移動と、天板140の移動とを調整する。また、例えば、システム制御部280は、ユーザの指示に従って絞り制御部220を制御し、X線絞り装置130が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0123】
また、例えば、システム制御部280は、ユーザの指示に従って、画像生成部230によるX線画像生成処理や、画像処理部250による画像処理等を制御する。また、例えば、システム制御部280は、ユーザの指示を受け付けるためのGUIや、画像記憶部240が記憶する画像データ等を、表示部270に表示するように制御する。
【0124】
第2の実施形態に係るフォトンカウンティング型X線診断装置100は、第1の実施形態に係るフォトンカウンティング型X線CT装置1が行う処理を行う。なお、フォトンカウンティング型X線診断装置100は、第1の実施形態に係るフォトンカウンティング型X線CT装置1が各ビューについて行う処理を、X線照射中の各フレームにおいて行ってもよい。
【0125】
以上、第2の実施形態に係るフォトンカウンティング型X線診断装置100について説明した。上述したように、フォトンカウンティング型X線診断装置100は、検出回路ごとに第1カウンタのカウント値を補正するピークシフト補正と、検出回路ごとに第1カウンタのカウント値を用いて第2カウンタのカウント値を補正するカウント値補正とを行う。このため、フォトンカウンティング型X線診断装置100は、検出回路が備えるフィードバック容量のばらつき等により、検出回路ごとに検出されるフォトンのエネルギーがばらつくことを抑制することができる。したがって、フォトンカウンティング型X線診断装置100は、コントラスト分解能が高い画像を得ることができる。
【0126】
また、フォトンカウンティング型X線診断装置100は、スイッチング回路、フォトンカウンティング型撮影用回路及び積分型X線撮影用回路を備えるため、フォトンカウンティング型撮影のみ又は積分型撮影のみを行うこともできる。さらに、フォトンカウンティング型X線診断装置100は、フィードバック容量が第1アンプ及び第2アンプに共有させることで、検出回路の回路規模をコンパクトにすることができる。
【0127】
(画像処理システム)
上述した実施形態においては、データ収集部、ピークシフト補正部及びカウント値補正部が各種処理を実行する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されない。例えば、データ収集部、ピークシフト補正部及びカウント値補正部を含む画像処理システムが、上述した各種処理を実行してもよい。ここで、画像処理システムとは、例えば、ワークステーション、PACS(Picture Archiving and Communication System)の画像保管装置(画像サーバ)、ビューワ、電子カルテシステムの各種装置等である。この場合、例えば、画像処理システムは、投影データ、フォトンカウンティング型データ、積分型データ等を収集する。また、画像処理システムは、投影データ生成部によって生成された投影データ、フォトンカウンティング型データ収集部が収集したフォトンカウンティング型データ、積分型データ収集部が収集した積分型データ等を、フォトンカウンティング型X線CT装置又はフォトンカウンティング型X線診断装置からネットワーク経由で受信すること、記録媒体を介してユーザから入力されること等により取得し、これをメモリ等に記憶する。そして、画像処理システムは、メモリ等に記憶した投影データ、フォトンカウンティング型データ、積分型データ等に対して各種処理を実行してもよい。
【0128】
上述した各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示した通りに構成されていることを要しない。すなわち、各構成要素の分散又は統合の具体的な形態は図示したものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。さらに、各構成要素の各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU及びこのCPUにおいて実行されるプログラムによって実現される。或いは、各構成要素の各処理機能は、その全部または任意の一部が、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現される。
【0129】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、コントラスト分解能が高い画像を得ることができる。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。