(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、「酸化染毛用第1剤」とは、酸化染料及びアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とを含み、使用時に第1剤と第2剤とを混合して用いる酸化染毛剤キットの内の、第1剤の方を指す。
【0013】
1.酸化染毛用第1剤
本発明は、(A)界面活性剤;(B)炭素原子数8〜30の脂肪族アルコールのリン酸ジエステル(本明細書において、単に「リン酸ジエステル」と表記することもある。);(C)ピバリン酸イソデシル、パルミチン酸イソプロピル、及びミリスチン酸オクチルドデシルからなる群より選択される少なくとも1種の脂肪酸エステル(本明細書において、単に「脂肪酸エステル」と表記することもある。);を含有する、酸化染毛用第1剤(本明細書において、「本発明の酸化染毛用第1剤」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0014】
界面活性剤(A)としては、酸化染毛用第1剤に採用し得る界面活性剤である限り特に限定されず、公知のものを広く採用することができる。界面活性剤(A)としては、例えば非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、白髪であってもより濃く染色することができるという観点から、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が好ましく、非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、毛髪の感触への悪影響をより低減できるという観点からは、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が好ましく、カチオン性界面活性剤がより好ましい。したがって、白髪であってもより濃く染色することができ、かつ毛髪の感触への悪影響をより低減できるという観点からは、非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を組み合わせて用いることが好ましい。また、本発明の効果をより効果的に発揮できるという観点から、本発明の酸化染毛用第1剤は、界面活性剤として、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種のみを含むことが好ましく、非イオン性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種のみを含むことがより好ましく、非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤のみを含むことがさらに好ましい。
【0015】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、親水性のポリオキシエチレンアルキルエーテル[POE(21)ラウリルエーテル、POE(7)セチルエーテル、POE(10)セチルエーテル、POE(15)セチルエーテル、POE(20)セチルエーテル、POE(23)セチルエーテル、POE(25)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(40)セチルエーテル、POE(20)ステアリルエーテル、POE(7)オレイルエーテル、POE(10)オレイルエーテル、POE(15)オレイルエーテル、POE(10)ベヘニルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(30)ベヘニルエーテル]、プロピレングリコール脂肪酸エステル(モノステアリン酸プロピレングリコールなど)、グリセリン脂肪酸エステル(ミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリルなど)、親油性のポリグリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、ジオレイン酸ポリグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリルなど)、ソルビタン脂肪酸エステル(モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタンなど)、親油性のポリオキシエチレンヒマシ油[POE(10)ヒマシ油、POE(10)硬化ヒマシ油など]、親油性のポリオキシエチレンアルキルエーテル[POE(2)セチルエーテル、POE(2)ステアリルエーテル、POE(4)ステアリルエーテル、POE(2)オレイルエーテル、POE(5)ベヘニルエーテル]、親油性のポリエチレングリコール脂肪酸エステル[モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(6E.O.)、ステアリン酸ジエチレングリコールなど]などの親油性の非イオン性界面活性剤;親水性のポリグリセリン脂肪酸エステル(モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリルなど)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル[モノステアリン酸POE(15)グリセリル、モノオレイン酸POE(15)グリセリルなど]、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノイソステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノオレイン酸POE(20)ソルビタンなど]、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル[モノラウリン酸POE(6)ソルビット、ヘキサステアリン酸POE(6)ソルビット、テトラステアリン酸POE(60)ソルビット、テトラオレイン酸POE(6)ソルビット、テトラオレイン酸POE(30)ソルビットなど]、ポリオキシエチレンラノリン[POEラノリン、POE(5)ラノリンアルコール、POE(10)ラノリンアルコール、POE(20)ラノリンアルコール、POE(40)ラノリンアルコール]、親水性のポリオキシエチレンヒマシ油[POE(20)ヒマシ油、POE(20)硬化ヒマシ油、POE(30)硬化ヒマシ油など]、ポリオキシエチレンステロール[POE(10)フィトステロール、POE(20)フィトステロール、POE(30)フィトステロールなど]、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル[POE(20)POP(4)セチルエーテル]、親水性のポリエチレングリコール脂肪酸エステル[モノラウリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)]などの親水性非イオン性界面活性剤;が挙げられる。なお、前記の各非イオン性界面活性剤において、「POE」はポリオキシエチレンの意味であり、その後の括弧内の数値は、酸化エチレンの付加モル数を意味している。また、「nE.O.」も、nの値が酸化エチレンの付加モル数を意味している。これらの中でも、白髪であってもより濃く染色することができるという観点から、親水性のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、親水性のポリオキシエチレン(酸化エチレンの付加モル数:10〜40、好ましくは15〜35、より好ましくは20〜30)アルキル(炭素原子数:10〜25、好ましくは12〜20、より好ましくは14〜18)エーテルがより好ましい。
【0016】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル4級アンモニウム塩[塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなど]、脂肪酸アミドアミン塩(ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドなど)などが挙げられる。これらの中でも、毛髪の感触への悪影響をより低減できるという観点からは、アルキル4級アンモニウム塩が好ましく、塩化アルキルトリメチルアンモニウムがより好ましく、塩化アルキル(炭素原子数:15〜30、好ましくは18〜26、より好ましくは20〜24)トリメチルアンモニウムがさらに好ましい。
【0017】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩(ヤシ油脂肪酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸のカリウム塩、ナトリウム塩、イソプロパノールアミン塩など)、アルキルエーテルカルボン酸塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸カリウム、ラウリルエーテル酢酸ナトリウムなど)、アシル乳酸塩(ステアロイル乳酸ナトリウム、イソステアロイル乳酸ナトリウムなど)、N−アシルサルコシン塩(ヤシ油脂肪酸サルコシン、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシナトリウムなど)、N−アシルグルタミン酸塩(ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウムなど)、N−アシルメチルアラニン塩(ヤシ油脂肪酸メチルアラニン、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウム、ラウロイルメチルアラニン、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ミリストイルメチルアラニン、ミリストイルメチルアラニンナトリウムなど)、N−アシルメチルタウリン塩(ヤシ油脂肪酸メチルタウリンカリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンカリウムマグネシウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウムなど)、アルカンスルフォン酸塩(アルカンスルフォン酸ナトリウムなど)、アルキルスルホコハク酸塩[スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウムなど]、アシルイセチオン酸塩(ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルフォン酸ナトリウムなど)、アルキル硫酸エステル塩(アルキル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸マグネシウムなど)、アルキルエーテル硫酸エステル塩(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなど)、モノアルキルリン酸エステル塩(ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウムなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウムなど)などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムが好ましく、ポリオキシエチレン(酸化エチレンの付加モル数:2〜6、好ましくは2〜4)アルキル(炭素原子数:5〜20、好ましくは8〜16、より好ましくは10〜14)エーテル硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0018】
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。アミノ酸型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシエチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシエトキシエチル−N’−カルボキシエチルエチレンジアミン二ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシメトキシエチル−N’−カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウムなどのグリシン型両性界面活性剤;ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウムなどのアミノプロピオン酸型両性界面活性剤;などが挙げられる。また、ベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタインなどのアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;ラウリルヒドロキシスルホベタインなどのスルホベタイン型両性界面活性剤;などが挙げられる。
【0019】
界面活性剤(A)は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0020】
界面活性剤(A)の含有量は、本発明の効果をより確実に発揮できるという観点から、酸化染毛用第1剤100質量%に対して、例えば0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは2〜8質量%、さらに好ましくは4〜7質量%である。より具体的な態様として、非イオン性界面活性剤の含有量は、酸化染毛用第1剤100質量%に対して、例えば2〜10質量%、好ましくは3〜8質量%、より好ましくは4〜6質量%であり、カチオン性界面活性剤の含有量は、酸化染毛用第1剤100質量%に対して、例えば0.1〜3質量%、好ましくは0.3〜2質量%、より好ましくは0.7〜1.5質量%であり、アニオン性界面活性剤の含有量は、酸化染毛用第1剤100質量%に対して、例えば0.5〜5質量%、好ましくは1〜4質量%、より好ましくは1.5〜3質量%である。
【0021】
リン酸ジエステル(B)は、炭素原子数8〜30の脂肪族アルコール2分子とリン酸とのジエステルである限り特に限定されない。
【0022】
脂肪族アルコールの炭素原子数は、白髪であってもより濃く染色することができ、かつ毛髪の感触への悪影響をより低減できるという観点から、好ましくは10〜25、より好ましくは12〜22、さらに好ましくは14〜20、よりさらに好ましくは14〜18である。
【0023】
脂肪族アルコールは、直鎖状又は分枝状であってもよいが、白髪であってもより濃く染色することができ、かつ毛髪の感触への悪影響をより低減できるという観点から、好ましくは直鎖状である。
【0024】
脂肪族アルコールは、飽和脂肪族アルコール又は不飽和脂肪族アルコールであってもよいが、白髪であってもより濃く染色することができ、かつ毛髪の感触への悪影響をより低減できるという観点から、好ましくは飽和脂肪族アルコールである。
【0025】
脂肪族アルコールとして、具体的には、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール等が挙げられる。
【0026】
リン酸ジエステル(B)は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0027】
リン酸ジエステル(B)の含有量は、特に限定されることはないが、白髪であってもより濃く染色することができ、かつ毛髪の感触への悪影響をより低減できるという観点から、酸化染毛用第1剤100質量%に対して、例えば0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、さらに好ましくは0.05〜1質量%、よりさらに好ましくは0.1〜0.5質量%、特に好ましくは0.15〜0.3質量%である。
【0028】
脂肪酸エステル(C)は、ピバリン酸イソデシル(ネオペンタン酸イソデシル)、パルミチン酸イソプロピル、及びミリスチン酸オクチルドデシルからなる群より選択される少なくとも1種の脂肪酸エステルである限り特に限定されない。
【0029】
脂肪酸エステル(C)としては、白髪であってもより濃く染色することができ、かつ毛髪の感触への悪影響をより低減できるという観点から、ピバリン酸イソデシル、ミリスチン酸オクチルドデシルが好ましく、ピバリン酸イソデシルがより好ましい。
【0030】
脂肪酸エステル(C)は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0031】
脂肪酸エステル(C)の含有量は、本発明の効果をより確実に発揮できるという観点から、酸化染毛用第1剤100質量%に対して、例えば0.1〜8質量%、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%、よりさらに好ましくは1.5〜3質量%である。
【0032】
本発明の効果をより効果的に発揮できるという観点から、本発明の酸化染毛用第1剤は、エステルとして、上記リン酸ジエステル(B)及び上記脂肪酸エステル(C)のみを含むことが好ましい。
【0033】
本発明の酸化染毛用第1剤は、上記した界面活性剤(A)、リン酸ジエステル(B)、及び脂肪酸エステル(C)の他に、通常、酸化染料(D)及びアルカリ剤(E)を含有する。
【0034】
酸化染料(D)には、単独での重合により発色する染料中間体、またはカップラーと組み合わせた上で重合により発色する染料中間体と前記カップラーとの組み合わせが挙げられる。染料中間体としては、酸化染毛用第1剤に配合され得るものであれば特に制限はないが、例えば、塩酸トルエン−2,5−ジアミン、塩酸パラフェニレンジアミン、オルトアミノフェノール、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、トルエン−3,4−ジアミン、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、硫酸オルトアミノフェノール、硫酸オルトクロルパラフェニレンジアミン、硫酸4,4’−ジアミノジフェニルアミン、硫酸トルエン−2,5−ジアミン、硫酸パラアミノフェノール、硫酸パラフェニレンジアミン、硫酸パラメチルアミノフェノール等が挙げられる。
【0035】
また、必要に応じて染料中間体と組み合わせられるカップラーとしては、例えば、塩酸2,4−ジアミノフェノキシエタノール、m−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、5−アミノオルトクレゾール、m−アミノフェノール、α−ナフトール、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、3,3‘−イミノジフェノール、塩酸2,4−ジアミノフェノール、塩酸メタフェニレンジアミン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、硫酸5−アミノオルトクレゾール、硫酸2,4−ジアミノフェノール、硫酸メタアミノファノール、硫酸メタフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0036】
酸化染料(D)の含有量は、所望の色調に応じて、適宜選択することができる。該含有量は、酸化染毛用第1剤100質量%に対して、例えば0.01〜5質量%、好ましくは0.02〜3質量%、より好ましくは0.05〜2質量%である。
【0037】
アルカリ剤(E)としては、酸化染毛用第1剤に配合され得るものであれば特に制限はないが、例えば、アンモニア水(例えば、濃度25〜28%)、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
【0038】
アルカリ剤(E)の含有量は、毛髪を膨張させて、染料の浸透性を高め、さらに過酸化水素の分解を促すことができる程度の含有量であれば、特に限定されない。該含有量は、アルカリ剤(E)として濃度25%のアンモニア水を用いる場合であれば、酸化染毛用第1剤100質量%に対して、例えば0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜8質量%である。
【0039】
本発明の酸化染毛用第1剤の剤形としては、特に限定されず、公知の種々の剤形、例えばクリーム状、透明ジェル状、半透明ジェル状、乳液状、液状、泡状等の剤形を採用することができる。
【0040】
本発明の酸化染毛用第1剤のpHは、通常pH6〜11に調整される。
【0041】
本発明の酸化染毛用第1剤は、上記した成分以外にも、剤形等により必要に応じて、溶媒、上記リン酸ジエステル(B)及び脂肪酸エステル(C)以外の油性成分、直接染料、酸化染料の安定化剤、乳化状態の安定化剤、pH調整剤、動植物エキス、水溶性高分子、アミノ酸及びその誘導体、タンパク質及びその誘導体、ビタミン剤、紫外線防御剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、香料等、酸化染毛用第1剤に配合し得る公知の成分を含むことができる。これらの中でも、本発明の効果をより確実に発揮できるという観点から、本発明の酸化染毛用第1剤は、さらに上記リン酸ジエステル(B)及び脂肪酸エステル(C)以外の油性成分を含むことが好ましい。
【0042】
溶媒は、特に限定されないが、通常、水である。溶媒の含有量は、酸化染毛用第1剤100質量%に対して、例えば20〜90質量%である。
【0043】
油性成分としては、特に限定されないが、例えば植物油、動物油、ロウ、石油系炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーンが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより確実に発揮できるという観点から、高級アルコールが好ましい。
【0044】
植物油としては、例えば、アボカド油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーム油、ヒマシ油、グレープシード油、ヤシ油、硬化油などが挙げられる。
【0045】
動物油としては、例えば、エミュー油、馬油、ミンク油などが挙げられる。ロウとしては、例えば、ホホバ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ラノリン、セラックなどが挙げられる。
【0046】
石油系炭化水素としては、例えば、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、パラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。
【0047】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸などが挙げられる。
【0048】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコール等の、炭素数10〜25のアルコールが挙げられる。
【0049】
シリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン、環状シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、メチルフェニルシリコーンなどが挙げられる。
【0050】
油性成分の含有量は、特に限定されず、適宜調節することができる。本発明の効果をより確実に発揮できるという観点から、油性成分の含有量は、酸化染毛用第1剤100質量%に対して、例えば2〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは7〜15質量%である。
【0051】
直接染料としては、特に制限はないが、例えば、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、塩酸ニトロパラフェニレンジアミン、パラニトロオルトフェニレンジアミン、ピクラミン酸、ピクラミン酸ナトリウム、硫酸2−アミノ−5−ニトロフェノール、硫酸ニトロパラフェニレンジアミン、硫酸パラニトロオルトフェニレンジアミン、硫酸パラニトロメタフェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0052】
安定化剤としては、特に制限はないが、例えば、アスコルビン酸類、チオグリコール酸類、システイン類、メルカプト化合物、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩などが挙げられる。
【0053】
pH調整剤としては、特に制限はないが、例えば、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などの酸;クエン酸Na、リン酸2Naなどの塩類;が挙げられる。
【0054】
本発明の酸化染毛用第1剤は、白髪であってもより濃く染色することができ、かつ毛髪の感触への悪影響をより低減できるので、白髪染め用に特に適している。
【0055】
2.酸化染毛剤キット
本発明は、本発明の酸化染毛用第1剤、及び酸化染毛用第2剤を含む、酸化染毛剤キット(本明細書において、「本発明の酸化染毛剤キット」と示すこともある。)に関する。
【0056】
本発明の酸化染毛用第1剤と組み合わせる対象である、酸化染毛用第2剤は、特に制限はなく、公知の成分が適宜配合された酸化染毛用第2剤を採用することができる。
【0057】
酸化染毛用第2剤は、通常、酸化剤、油性成分、界面活性剤、酸化剤の安定化剤、溶媒等を含有する。
【0058】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物などが挙げられる。これらの酸化剤は単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの酸化剤の中でも、毛髪に対するブリーチ力が優れている点で過酸化水素が好ましい。
【0059】
油性成分、界面活性剤、酸化剤の安定化剤、溶媒等のその他の成分としては、上記「1.酸化染毛用第1剤」で例示したもの、或いは公知の成分を採用することができる。
【0060】
本発明の酸化染毛剤キットにおいては、本発明の酸化染毛用第1剤と、酸化染毛用第2剤とが、それぞれ別々の容器に収容されている。
【0061】
3.染毛方法
本発明は、本発明の酸化染毛用第1剤、及び酸化染毛用第2剤を毛髪に塗布することを含む、染毛方法(本明細書において、「本発明の染毛方法」と示す場合もある。)に関する。
【0062】
塗布の態様は、本発明の酸化染毛用第1剤、及び酸化染毛用第2剤が、毛髪上で、混合された状態となるような態様である限り特に限定されない。例えば、本発明の酸化染毛用第1剤、及び酸化染毛用第2剤を混合してから毛髪に塗布する態様や、本発明の酸化染毛用第1剤を毛髪に塗布し、その後、酸化染毛用第2剤を毛髪に塗布する態様が挙げられる。
【0063】
染毛用第1剤組成物と染毛用第2剤組成物との混合比としては、希望する明るさや色味によって調節すればよいが、例えば、質量比で、1:1〜1:10程度とすることができる。
【0064】
塗布後は、通常、酸化染毛に必要な反応が十分に起こるように、一定時間(例えば15〜60分間)放置する。その後、余分な成分をシャンプー等を用いた洗髪により洗い流し、乾燥することが望ましい。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0066】
(1)酸化染毛用第1剤の調製
後述の表1〜3に示す配合に従い酸化染毛用第1剤を調製した。実施例1の調製手順は次のとおりである。まず、精製水に塩化アルキルトリメチルアンモニウムを添加し、撹拌しながら加温溶解し、その後、パラフェニレンジアミン、レゾルシン、アスコルビン酸Naを加え80℃に保持した(これを水相溶液とする)。一方で、POE(25)セチルエーテル、リン酸ジセチル、ピバリン酸イソデシル、セタノールを混合し、撹拌しながら加温溶解し、80℃に保持した(これを油相溶液とする)。次に、水相溶液を撹拌しながら油相溶液を加えた。油相溶液を加えた後、撹拌しながら自然冷却し、35℃まで冷却された時点で、アンモニア水(25%水溶液)を加えた。さらに撹拌しながら自然冷却し、室温まで冷却された時点で撹拌を止め、得られた組成物を酸化染毛用第1剤の各実施例とした。他の実施例についてもこれに準じた方法で調製した。なお、表1〜3中、成分に関する数値は、酸化染毛用第1剤100質量%に対する、その成分の質量%を示し、「計100とする」とは、精製水以外の各成分の合計量に、精製水の量を加えて100質量%となるようにしたことを示す。
【0067】
(2)酸化染毛用第2剤の調製
後述の表4に示す配合に従い酸化染毛用第2剤を調製した。調製手順は次のとおりである。まず、精製水に塩化アルキルトリメチルアンモニウムを添加し、撹拌しながら加温溶解し、80℃に保持した(これを水相溶液とする)。一方で、セトステアリルアルコール、POE(25)セチルエーテル、及び流動パラフィンを混合し、撹拌しながら加温溶解し、80℃に保持した(これを油相溶液とする)。次に、水相溶液を撹拌しながら油相溶液を加えた。油相溶液を加えた後、撹拌しながら自然冷却し、40℃まで冷却された時点でヒドロキシエタンジホスホン酸液(60%水溶液)、過酸化水素水(35%水溶液)を加えた。さらに撹拌しながら自然冷却し、室温まで冷却された時点で撹拌を止め、得られた組成物を酸化染毛用第2剤の製造例とした。なお、表4中、成分に関する数値は、酸化染毛用第2剤100質量%に対する、その成分の質量%を示し、「計100とする」とは、精製水以外の各成分の合計量に、精製水の量を加えて100質量%となるようにしたことを示す。
【0068】
(3)シャンプー組成物の調製
後述の表5に示す配合に従いシャンプー組成物を調製した。調製手順は次のとおりである。まず、精製水にポリオキシエチレンアルキル(12,13)エーテル硫酸ナトリウム(3E.O.)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液、コカミドメチルMEAを添加し、撹拌しながら加温溶解し、80℃に保持した。撹拌しながら自然冷却し、40℃まで冷却された時点で、クエン酸、メチルイソチアゾリノンを加えた。さらに撹拌しながら自然冷却し、室温まで冷却された時点で撹拌を止め、得られた組成物をシャンプー組成物の製造例とした。なお、表5中、成分に関する数値は、シャンプー組成物100質量%に対する、その成分の質量%を示し、「計100とする」とは、精製水以外の各成分の合計量に、精製水の量を加えて100質量%となるようにしたことを示す。
【0069】
(4)染毛処理
上記「(1)酸化染毛用第1剤の調製」で調製した酸化染毛用第1剤5gと、上記「(2)酸化染毛用第2剤の調製」で調製した酸化染毛用第2剤5gとを、均一になるまで混ぜ合わせた。得られた混合物を付着させたハケを、1gの白髪(マタイジャパン製、Shigle Tuft(人毛白))の扇状に広げた毛束の表と裏に塗布し、30℃で30分間放置することにより染毛を行った。その後、毛束を水洗し、水洗後の毛束を、上記「(3)シャンプー組成物の調製」で調製したシャンプー組成物を用いて1回洗浄し、乾燥した。
【0070】
(5)色差測定
上記「(4)染毛処理」で処理された毛束の色差を、日本電色工業株式会社製 分光式色彩計「SE−2000」で測定した。測定されたL値を表1〜3に示す。このL値が小さいほど、毛束が濃く染まっている(すなわち染色性が良好である)ことを示す。結果を表1〜3に示す。
【0071】
(6)染色性の評価
上記「(4)染毛処理」で処理された毛束の染まり具合(濃さ)について、専門のパネラー5名により官能評価を行った。評価は、5段階(5点:非常に良い、4点:良い、3点:普通、2点:悪い、1点:非常に悪い)で行い、各パネラーの点数を合計して、以下の基準によってランク付けをした。◎および○の評価のものが製品として合格である。結果を表1〜3に示す。
<基準>
◎:点数の合計が20点以上
○:点数の合計が15点以上20点未満
△:点数の合計が10点以上15点未満
×:点数の合計が10点未満。
【0072】
(7)感触の評価
上記「(4)染毛処理」で処理された毛束に手ぐしを通した際の感触について、専門のパネラー5名により官能評価を行った。評価は、5段階(5点:まったく引っかかりを確認できない、4点:ひっかかりを確認できない、3点:ひっかかりを確認できるかどちらともいえない、2点:ひっかかりが確認できる、1点:はっきりとひっかかりが確認できる)で行い、各パネラーの点数を合計して、以下の基準によってランク付けをした。◎および○の評価のものが製品として合格である。結果を表1〜3に示す。
<基準>
◎:点数の合計が20点以上
○:点数の合計が15点以上20点未満、
△:点数の合計が10点以上15点未満
×:点数の合計が10点未満。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】